JPH11206075A - 希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法 - Google Patents

希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法

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JPH11206075A
JPH11206075A JP10017996A JP1799698A JPH11206075A JP H11206075 A JPH11206075 A JP H11206075A JP 10017996 A JP10017996 A JP 10017996A JP 1799698 A JP1799698 A JP 1799698A JP H11206075 A JPH11206075 A JP H11206075A
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magnet
rare earth
rotor
powder
rare
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JP10017996A
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English (en)
Inventor
Fumitoshi Yamashita
文敏 山下
Yoshikazu Yamagata
芳和 山縣
Hiromichi Fujimoto
弘道 藤本
Sunao Hashimoto
直 橋本
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 正確に温度制御した熱間でホウ素−ネオジミ
ウム−鉄系磁石粉体を高度に磁化し、この磁化したホウ
素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体を熱可塑性樹脂の冷却
固化により、粉体間に空隙なく強固に固定する。同時に
冷却固化過程での収縮力を磁石と回転子鉄心との間に作
用させ、両者を機械的に強固に一体化する。すなわち、
接着レスで、錆やダスト対策のための表面被覆処理工
程、着磁工程などを不要とする高信頼性、高効率モータ
のための希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法を提供
する。 【解決手段】 ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体を
含む樹脂磁石の溶融ストランドを、積層電磁鋼板の回転
子鉄心磁石スロット内に均質に磁場中射出充填または磁
場中押出充填し、然る後、冷却固化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、同期モータや交流
サーボモータなどの高効率化のための希土類樹脂磁石埋
設型回転子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、省資源、省エネルギーの観点から
高信頼性、並びに高効率モータとして、積層電磁鋼板の
ような回転子鉄心の複数磁石スロットに磁石を埋設し、
磁石トルクに加えてリラクタンストルクを利用する所謂
磁石埋設型回転子を搭載したモータが注目されている。
【0003】図1,図2は、回転子鉄心に磁石を埋設し
た構成の、所謂磁石埋設型回転子の断面図である。ここ
で、図1はUSP4,139,790号公報に開示された
突極比ρ>1の逆突極性の磁石埋設型回転子、図2はU
SP3,979,821号公報に開示された突極比ρ<1
の突極性の磁石埋設型磁石回転子である。
【0004】但し、図中、1,1bはスロットに埋設し
た磁石、2,2bは積層電磁鋼板などの回転子鉄心、
3,3bは回転軸スロット、4,4bは磁気バリアスロ
ット、5はアルミニウム2次導体スロットである。ま
た、ここで言う突極比ρとは、q軸方向(d軸に対し電
気角で90度回転した方向)のインダクタンスLqと、
d軸方向(磁極の中心とロータの中心とを結ぶ方向)の
インダクタンスLdとの比Lq/Ldである。LqとL
dに差があることは、永久磁石による磁石トルクととも
にリラクタンストルクも発生することを意味する。ここ
で、磁石トルクは、鎖交磁束ψに電気的に直角方向の電
流Iqを掛け合わせることで発生する。
【0005】また、リラクタンストルクはインダクタン
スと電流によって発生する磁束Ld・Id、Lq・Iq
に各々電気的に直角な電流Iq、Idを掛合わせること
で発生する。すなわち、磁石トルクとリラクタンストル
クの和であるモータの発生トルクは下記(1)式で示さ
れる。
【0006】 T=ψ・Iq+(Lq−Ld)Iq×Id=ψ・Icosβ±(I/|I|) 0.5(Lq−Ld)I2×sin2β ………(1) 但し、(1)式中、ψ・Icosβは磁石トルク、(I
/|I|)0.5(Lq−Ld)I2t×sin2βはリ
ラクタンストルク、ψは鎖交磁束、Iは合成電流、βは
電流位相、(I/|I|)は符号、Ldはd軸インダク
タンス、Lqはq軸インダクタンス、Iqはq軸電流、
Idはd軸電流である。
【0007】磁石トルクψ・Icosβは電流と磁石に
よって発生するトルク、リラクタンストルク(I/|I
|)0.5(Lq−Ld)I2t×sin2βは電機子電
流によって生成される磁束と電機子電流との相互作用に
よって得られるトルクである。そして、図1に示す突極
比ρ>1の逆突極性ではLd<Lqであり、磁石トルク
と同一方向のリラクタンストルクが発生する。このリラ
クタンストルクを利用する方が小型、高効率モータとし
て有利である。
【0008】上記、図2の逆突極性の磁石埋設型回転子
の製造方法として、例えば特開昭63−98108号公
報には回転子鉄心としての積層電磁鋼板に設けたスキュ
ー構造の複数磁石スロットに方形棒状磁石を空隙なく挿
入する方法や、2%のエポキシ結合剤を含むUSP4,
496,396号公報に開示されたような、ホウ素−ネ
オジミウム−鉄系急冷磁石粉体を粉末形態で積層電磁鋼
板の磁石スロット内に充填して強圧縮し、さらに300
℃でエポキシを重合硬化する、所謂、スロット内圧縮成
形磁石による方法が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、図1に示す突
極比ρ>1の逆突極性(Ld<Lq)で、磁石トルクと
同一方向のリラクタンストルクが発生する構造の磁石埋
設型回転子において、固定子側の逆磁界が入り込むq軸
方向の磁束は磁石に作用し易く、磁石の減磁耐力に課題
があった。
【0010】さらに、例えば、難着磁性として知られる
ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石の様な方形棒状磁石を
回転子鉄心に設けた磁石スロットに挿入する場合、予め
着磁した磁石を挿入するのが一般的である。その際、磁
石の一部が機械的に欠損し、破片やダストが発生する
と、当該モータの固定子との空隙部分や軸受部分などモ
ータの摺動部に飛散して重大な事故を引起こす危険性が
ある。
【0011】一方、回転子鉄心としての積層電磁鋼板に
設けた複数磁石スロット内に2%のエポキシ結合剤を含
むホウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉体を粉末形態
で充填し、強圧縮し、さらにエポキシ結合剤を重合硬化
する。所謂、スロット内圧縮成形磁石で製造する方法
は、ホウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉体を強圧縮
する際に積層電磁鋼板が変形したり、積層電磁鋼板との
間に生じる摩擦による圧力損失により、圧縮圧力がスロ
ット奥深くまで伝達せず、低い圧粉体密度と低い残留磁
化Jrの磁石しか得られない。
【0012】さらに、このような状況では僅か2%のエ
ポキシ結合剤でホウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉
体を完全に結合することはできず、当該磁石の機械的強
度が低いため磁石埋設型回転子全体の機械的強度に対す
る信頼性に悪影響を及ぼす。そればかりか、磁石スロッ
トの奥深くに存在するホウ素−ネオジミウム−鉄系急冷
磁石粉体の防錆処理やダスト対策を施して錆やダストに
対する信頼性を確保することも困難であった。また、何
れの場合も従来からよく用いられているフェライト系磁
石に比べて著しく難着磁性であるから、ホウ素−ネオジ
ミウム−鉄系急冷磁石粉体の持つ本来の磁力を十分に活
用することもできない。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、希土類磁石粉
体を含む樹脂磁石の溶融ストランドを回転子鉄心磁石ス
ロット内磁場中射出充填し、当該希土類粉体が磁化した
状態で冷却固化するので高信頼性、高効率のモータを提
供することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、上記欠点に鑑みてなさ
れたもので、図1に示すような逆突極性(Ld<Lq)
で、マグネットトルクと同一方向のリラクタンストルク
が発生する構造の磁石埋設型回転子において、積層電磁
鋼板のような回転子鉄心に設けた磁石スロット内に希土
類樹脂磁石の溶融ストランドを射出または押出で磁場中
埋設する磁石埋設型回転子を提供する。
【0015】つまり、希土類磁石粉体を含む樹脂磁石の
溶融ストランドを回転子鉄心磁石スロット内へ磁場中射
出または押出で充填し、当該希土類磁石粉体が磁化した
状態で冷却固化する希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造
方法である。そして、必要に応じて磁石スロット内への
充填完了後に、充填時と同一方向の瞬間強磁界を印加し
たり、或いはまた、樹脂磁石の溶融ストランドの吐出温
度を当該希土類磁石粉体のキュリー点の温度差以上とし
て難着磁性の希土類磁石粉体の磁化を強めることもでき
る。
【0016】なお、上記希土類磁石粉体はホウ素−ネオ
ジミウム−鉄系磁石粉体、すなわち溶湯合金を急冷凝固
したホウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉体、熱間据
込み(Die-Up-Setting)または水素分解/再結晶したホ
ウ素−ネオジミウム−鉄系異方性磁石粉体などが、必要
に応じて適宜カーボンファンクショナルシラン処理して
使用される。
【0017】また、一方の溶融ストランド中の希土類磁
石粉体の充填キャリヤはポリアミド12、液晶ポリマ
ー、PPS(ポリフェニレンサルファイド)の群から選
ばれる熱可塑性樹脂が使用され、磁石スロット内への充
填時には、これらの熱可塑性樹脂が希土類磁石粉体のキ
ャリヤとなり、磁石スロット内で冷却固化することで特
定方向に磁化した希土類磁石粉体を強固に固定化した希
土類樹脂磁石を構成する。
【0018】なお、高信頼性で、しかも高効率のモータ
を提供するために1)熱可塑性樹脂で希土類磁石粉体を
電気的に絶縁し、磁石の電気抵抗を≧10-1Ωcmとし、
一方の回転子鉄心を積層電磁鋼板とする。すると、磁石
埋設型回転子の回転による渦電流損失低減に効果的であ
る。2)回転子鉄心の磁石スロットの構成を、突極比ρ
>1の逆突極性構造としてマグネットトルクと同一方向
のリラクタンストルクが発生する構造の磁石埋設型回転
子とする。3)必要に応じて回転子鉄心のスラスト
(軸)方向端部に係合部を設けた積層電磁鋼板の回転子
鉄心とし、当該磁石スロット内に磁場充填、冷却固化し
た希土類樹脂磁石の収縮力で磁石と回転子鉄心を機械的
に一体化する。すると、磁石埋設型回転子全体の剛性が
高まり高速回転での信頼性確保に効果的である。
【0019】以上のように、本発明にかかる希土類樹脂
磁石埋設型回転子の製造方法は、ホウ素−ネオジミウム
−鉄系磁石粉体の希土類元素、遷移金属元素の資源バラ
ンスが有利である。また、ホウ素−ネオジミウム−鉄系
磁石粉体を含む樹脂磁石の溶融ストランドを、積層電磁
鋼板の回転子鉄心磁石スロット内に均質に磁場中射出充
填または磁場中押出充填し、然る後、冷却固化する。す
なわち正確に温度制御した熱間でホウ素−ネオジミウム
−鉄系磁石粉体を高度に磁化し、この磁化したホウ素−
ネオジミウム−鉄系磁石粉体を熱可塑性樹脂の冷却固化
により、粉体間に空隙なく強固に固定するので錆とダス
トに強い。或いは冷却固化過程での収縮力が磁石と回転
子鉄心との間に作用して機械的に強固に一体化する。し
たがって、接着レスで、錆やダスト対策のための表面被
覆処理工程、着磁工程などを不要とする高信頼性、高効
率モータのための希土類樹脂磁石埋設型回転子を製造す
ることができる。
【0020】以下、本発明をさらに詳しく説明する。本
発明で言う希土類磁石粉体とは、1−5SmCo、2−
17SmCoなど希土類コバルト磁石粉体や、2−17
−3SmFeNなどの希土類−鉄窒化物磁石粉体も対象
となるが希土類元素、遷移金属元素などの合金組成から
みた資源バランス、当該磁石粉体固有の磁気ポテンシャ
ル、磁石埋設型回転子製造との適合性などの観点から実
質的にはホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体が好まし
い。
【0021】ここで言う、ホウ素−ネオジミウム−鉄系
急冷磁石粉体とは、例えばJ.F.Herbest,“Rare Earth-I
ron-Boron Materials ; A New Era in Permanent Magne
ts"Ann.Rev.Sci. Vol-16.(1986)に記載されているよう
にNd:Fe:Bを2:14:1に近い割合で含む溶湯
合金を急冷凝固し、適宜熱処理により結晶粒径20〜1
00nmのNd2Fe14B相を結晶化させたもので一般
的に残留磁化Jr=8kG,固有保磁力HCJ≧8kOe
で磁気的には等方性である。
【0022】さらにホウ素−ネオジミウム−鉄系合金を
ベースに、その溶湯合金を急冷凝固した合金組成REx
−Fey−Bz−Siu−Tvで示されるFe3B基ホ
ウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉体も、本発明で言
うホウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉体に含まれ
る。ただし、REはNd,Prなどの希土類元素、Tは
Cr,Vなどを表す。そして特表平6−505366号
公報に開示されるように、ハード磁性相とソフト磁性相
の各スピンの交換結合により構成される磁石粉体であ
り、例えば、合金組成Nd3.5Dy1Fe73Co3Ga1
18.5では残留磁化Jr=1.2kG、固有保磁力HCJ
3kOeで、しかもHCJの80%以上まで減磁界を加え
てもJrの70%以上の値までJrがリコイルする強い
交換スプリング磁石特性を示す。
【0023】一方、ホウ素−ネオジミウム−鉄系異方性
磁石粉体とは、例えばM.Doser,V.Panchanathan;"Pulver
izing anisotropic rapidly solidified Nd-Fe-B mater
ialsfor bonded magnet"; J.Appl.Phys.70(10),15(199
1)にあるように、ホウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁石
粉体をホットプレスしたフルデンス磁石を熱間据込み加
工(Dei-Up-Setting)で磁気異方化したのち、このバル
ク磁石を水素吸蔵粉砕した磁石粉体。或いはR.Nakayam
a, T.Takeshita et al; Magnetic properties and micr
ostructures of Nd-Fe-B magnet powder produced by h
ydrogen treatment., J.Appl.Phys. 70(7)(1991)に記
載されているような水素分解/再結晶磁石粉体である。
例えば、合金組成Nd12.3Dy0.3Fe64.6Co12.3
6.0Ga0.6Zr0.1では残留磁化Jr≧11.5kG,
固有保磁力HCJ≧15kOeで磁気的に強い一軸異方性
を持っている。
【0024】なお、上記、ホウ素−ネオジミウム−鉄系
磁石粉体類を適度に混合しても減磁曲線に段が生じるこ
となく、それぞれのJr値、HCJ値の中間の任意の値を
選択することができる。したがって、希土類樹脂磁石埋
設型回転子の設計思想や実使用条件に応じて高Jr型か
ら高HCJ型とすることができる。
【0025】ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体を熱
可塑性樹脂、例えばポリアミド−12粉体と混合し、当
該混合粉体をエクストルーダーで混練し、そのダイスヘ
ッドに吐出した樹脂磁石の溶融ストランドをホットカッ
ターで切断したペレットを用いて積層電磁鋼板などの回
転子鉄心の磁石スロット内へ磁場中射出充填するか、或
いは直接、溶融ストランドを回転子鉄心の磁石スロット
内へ磁場中押出充填する。そして当該希土類磁石粉体が
磁化した状態で冷却固化して磁石埋設型回転子を製造す
る。
【0026】ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体の固
有保磁力HCJの温度係数βは単磁区臨界寸法以上ではN
2Fe14B結晶粒子径にもよるが−0.4〜−0.6
%/℃、キュリー温度Tcは310〜465℃程度であ
る。
【0027】本発明は、上記希土類磁石粉体を含む樹脂
磁石の溶融ストランドを回転子鉄心の磁石スロット内へ
磁場中射出または押出しで充填し、当該希土類磁石粉体
が磁化した状態で冷却固化する希土類樹脂磁石埋設型回
転子の製造方法であり、必要に応じて磁石スロットへの
充填完了後に、充填時と同一方向の瞬間強磁界を印加し
たり、或いはまた、溶融ストランドの吐出温度を当該希
土類磁石粉体のキュリー温度以上として希土類磁石粉体
の磁化を強めることもできる。
【0028】この方法は、ポリアミド−12のような溶
融熱可塑性樹脂がキャリヤになってホウ素−ネオジミウ
ム−鉄系磁石粉体を積層電磁鋼板の回転子鉄心磁石スロ
ット内に空隙なく充填することができる。そして熱可塑
性樹脂の冷却固化の収縮力の作用により、磁石粉体を磁
石スロット内で強固に固定化すると同時に、当該磁石と
積層電磁鋼板とを機械的に一体化することができる。
【0029】したがって、希土類磁石粉体を強圧縮する
ことで積層電磁鋼板を変形させることなく、また磁石ス
ロット内奥深くまで均質に破損なしに磁化した磁石を埋
設することができる。さらに、磁石スロット内に埋設し
た磁石は希土類磁石粉体が、ほぼ完全に冷却固化した熱
可塑性樹脂で覆われているため破損やダストが発生する
危惧もなく、耐錆性確保のための特別な表面被覆も不要
である。
【0030】上記、磁石を埋設する回転子鉄心の磁石ス
ロット形状は、本発明にかかる希土類樹脂磁石埋設型回
転子を、どのような駆動方式のモータとするかで異なる
が、突極比ρ>1の逆突極性(Ld<Lq)として、磁
石トルクと同一方向のリラクタンストルクが発生する構
成とすることは小型、高効率モータを提供するうえで重
要である。
【0031】次に、本発明で言う回転子鉄心は打抜き加
工などで所定形状の複数磁石スロットを設けた積層電磁
鋼板が好適である。この理由は樹脂磁石の溶融ストラン
ドを磁石スロット内に磁場中充填した後の、冷却固化過
程で磁石と回転子鉄心を機械的に一体化することができ
ることと、渦電流損失低減のためである。また、図1,
図2のように磁石を埋設する磁石スロット以外に回転軸
スロット、磁気抵抗バリアスロット、アルミニウム2次
導体スロットなどを設けた構造であっても差し支えな
い。
【0032】次に、当該回転子鉄心の複数磁石スロット
内にホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体を含む樹脂磁
石の溶融ストランドを磁場中射出充填または押出充填に
より、空隙なく均質に埋設するための好適な熱可塑性樹
脂としてはポリアミド−12、PPS(ポリフェニレン
サルファイド)を挙げることができる。
【0033】次に、ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉
体の表面処理に使用するカーボンファンクショナルシラ
ンとは下記(3)式で示される。
【0034】YRSiX3………(3) 但し、上式中Yは加水分解基、Xは有機官能基、Rは脂
肪族残基であり、γ−グリシドキシプロピルトリエトキ
シシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N
−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエト
キシシランなどが好ましく用いられる。この様なカーボ
ンファンクショナルシランでホウ素−ネオジミウム−鉄
系磁石粉体の表面処理を行う理由は、当該粉体の酸化を
抑制し、磁場中射出充填或いは磁場中押出充填時の熱安
定性を確保しつつ、冷却固化したホウ素−ネオジミウム
−鉄系磁石粉体の固定を、より強固にするためである。
実際の表面処理では加水分解基の分解を促進させるべく
水を併用し、低級アルコール類を溶媒としてホウ素−ネ
オジミウム−鉄系磁石粉体表面に単分子膜以上のカーボ
ンファンクショナルシランを成膜することが好ましい。
【0035】以上のように、本発明にかかる希土類樹脂
磁石埋設型回転子の製造方法は、ホウ素−ネオジミウム
−鉄系磁石粉体の希土類元素、遷移金属元素の資源バラ
ンスが有利である。また、ホウ素−ネオジミウム−鉄系
磁石粉体を含む樹脂磁石の溶融ストランドを、積層電磁
鋼板のような回転子鉄心磁石スロット内に均質に磁場中
射出充填または磁場中押出充填し、然る後、冷却固化す
る。すなわち正確に温度制御した熱間で高HCJ型のホウ
素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体であっても高度に磁化
することができる。また、磁化したホウ素−ネオジミウ
ム−鉄系磁石粉体を熱可塑性樹脂の冷却固化により、粉
体間に空隙なく強固に固定するので錆とダストに強い。
或いは冷却固化過程での収縮力が磁石と回転子鉄心との
間に作用して機械的に磁石と回転子鉄心とが強固に一体
化する。したがって、接着レスで、錆やダスト対策のた
めの表面被覆処理工程、着磁工程などを不要とする高信
頼性、高効率モータのための希土類樹脂磁石埋設型回転
子を製造することができる。
【0036】以下、本発明をさらに詳しく説明する。但
し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0037】[ペレットの製造]合金組成Nd12Fe77
Co56,および合金組成、Nd13.8Fe80.06.2
急冷凝固し、非晶質部分を結晶化した。この、ホウ素−
ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉体A1,A2の50kOe
パルス着磁後のVSMによる残留磁化Jrは各々8.
2、7.9kG、固有保磁力HCJは各々9.4、16.
8kOeであった。
【0038】一方、合金組成Nd12.3Dy0.3Fe64.6
Co12.36.0Ga0.6Zr0.1を水素分解/再結晶した
ホウ素−ネオジミウム−鉄系異方性磁石粉体BのJrは
11.8kG,固有保磁力HCJは15.2kOeであっ
た。
【0039】上記ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体
1,A2およびBを窒素雰囲気中で105μmに粗粉砕
したところ、A1,A2は何れも比表面積は0.05〜
0.07g/m2、Bは0.08〜0.09g/m2であ
った。この比表面積に基づき単分子膜を形成する量のγ
−アミノプロピルトリメトキシシラン(2HN−C36
−Si[OCH33、比重d25℃0.94、分子量22
1.3、単分子膜被覆面積332m2/g)を使用し
た。すなわち、磁石粉体100gに対し、γ−アミノプ
ロピルトリメトキシシラン0.0022gの−OCH3
基を加水分解し、−SiOH基とするために必要なイオ
ン交換水0.005gをエタノール0.243gで希釈
し、混合した後、130℃に加熱した。すると赤外分光
分析(IR)で−OCH3基の吸収スペクトル(νCH
845cm-1)が消滅し、−SiOH基(νCH3350cm
-1)を確認した。すなわち、本発明で言うカーボンファ
ンクショナルシラン処理したホウ素−ネオジミウム−鉄
系磁石粉体を得た。
【0040】次いで、上記ホウ素−ネオジミウム−鉄系
磁石粉体A1またはBと、ポリアミド−12粉体、ステ
アリン酸カルシウム粉体、ヒドラジン系酸化防止剤を、
各々91:7.9:0.05:0.05(重量比)に計
量し、ヘンシェルミキサーを用いて均質になるまで混合
した。また、ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体A2
と、PPS粉体、ステアリン酸カルシウム粉体、ヒドラ
ジン系酸化防止剤を、各々95:4.9:0.05:
0.05(重量比)に計量し、ヘンシェルミキサーを用
いて均質になるまで混合した。
【0041】次いで、スクリュー径20mmの単軸エクス
トルーダを用い、ポリアミド−12では280℃、PP
Sでは340℃で溶融混練し、ダイスヘッドから吐出し
たホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体を含む樹脂磁石
の溶融ストランドをホットカットしてペレットを得た。
【0042】[希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造1]
図3のような突極比ρ>1の逆突極性(Ld<Lq)
で、マグネットトルクと同一方向のリラクタンストルク
が発生する構造に8極のアーク状磁石スロットb2と回
転軸スロットb3を設けた板厚0.5mm、外径80mmの
打抜き電磁鋼板b1を用意した。そして、この電磁鋼板
b1を50mmに積層して回転子鉄心b0とした。但し、
この磁石スロットは幅3.5および1.8mmの円弧状で
1極当たりが2層構造になっている。
【0043】図4は、本発明にかかる磁場中射出充填装
置の要部構成図である。但し、図中1は射出スクリュ
ー、2は加熱シリンダー、3は射出ノズル、4は1極当
たり50turnの励磁コイル、5は非磁性部材と磁性部材
とを組合わせた金型で励磁コイル4を内臓し、回転子鉄
心b0を装填できるキャビティを備えている。6は金型
5に設けた冷却管、7は金型5の型締めと開放を行う油
圧シリンダーである。さらに、直流電源81とパルス電
源82は切替えスイッチを介して励磁コイル4と電気的
に接続されている。
【0044】図5は、図4のA−A’断面構成図であ
る。金型5は非磁性部材51と磁性部材52とで構成さ
れ、励磁コイル4を回転子鉄心の回転軸スロットb3に
対して放射状に配置されている。そして励磁コイル4は
非磁性絶縁部材53により固定している。また、冷却管
6は励磁コイル4の外側に近接配置している。
【0045】そして、直流電源81またはパルス電源8
2から励磁コイル4に通電すると、励磁コイル4の発生
磁束は、回転子鉄心b0を構成する電磁鋼板b1を通過
して磁石スロットb2に磁場をつくる。
【0046】上記回転子鉄心b0を図4の磁場中射出充
填装置の金型5のキャビティに装填し、油圧シリンダー
7で金型5を型締めした。そしてカーボンファンクショ
ナルシラン処理したホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉
体A1またはBを含むポリアミド−12ペレットa1を
射出スクリュー1の回転と280℃に加熱したシリンダ
ー2からの熱伝導で可塑化したポリアミド−12ペレッ
トa2とし、これを射出スクリュー1の後退により射出
ノズル3へ移送した。
【0047】次に、直流電源81から直流電流(max
100A)を励磁コイル4に通電し、回転子鉄心の磁石
スロットb2に10kOeの連続磁場を発生させた。そ
して、回転停止した射出スクリュー1を射出ノズル3方
向へ前進させ、射出ノズル3から希土類磁石のポリアミ
ド−12溶融ストランドを吐出した。吐出したポリアミ
ド−12溶融ストランドは金型5に設けたスプルー、ラ
ンナー、ゲートを介して直接回転子鉄心の磁石スロット
b2に磁場中射出充填した。
【0048】磁石スロットb2への磁場中射出充填の完
了は射出スクリュー1の位置または圧力センサーで検知
できる。ポリアミド−12可塑化ペレットa2は磁石ス
ロットb2中でポリアミド−12が冷却固化し、既に磁
化したホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体は、そのま
ま磁石スロットに埋設された希土類磁石a0となる。こ
の際に磁場中射出充填したこの段階で、直流電源81か
ら励磁コイル4への連続通電からパルス電源82のパル
ス通電(波高値Ip15kA)に切替える。すると、パ
ルス通電により励磁コイル4には、磁化方向と同一の≧
20kOeの瞬間強磁界が加わりホウ素−ネオジミウム
−鉄系磁石粉体の磁化は、さらに高まる。
【0049】図5はホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉
体Aを含む希土類樹脂磁石を磁石スロットに埋設した磁
石埋設型回転子と積層電磁鋼板からなる回転子鉄心との
境界部分のマクロ組織をSEM(走査型電子顕微鏡)観
察した断面図である。
【0050】図から明らかなように希土類樹脂磁石は積
層電磁鋼板を強圧縮により変形させることなく、当該磁
石スロット奥深くまで均質に磁場中充填され、ホウ素−
ネオジミウム−鉄系磁石粉体はポリアミド−12により
空隙なく強固に固定されている。またポリアミド−12
の冷却固化に伴う収縮力は積層電磁鋼板b2からなる回
転子鉄心と希土類磁石とを機械的に強固に一体化してい
る。したがって、磁気回路として高いパーミアンス係数
を確保することができる。さらに、磁石スロット内に埋
設した希土類樹脂磁石は磁石粉体が、ほぼ完全に冷却固
化したポリアミド−12で覆われているため破損やダス
トが発生する危惧もなく、耐錆性確保のための特別な表
面被覆も不要である。
【0051】次に、上記回転子鉄心の磁石スロットに埋
設した磁化したままの希土類樹脂磁石を径5mm高さ2mm
に切出して振動型試料磁力計:VSM(測定磁界±15
kOe)で室温の磁気特性とアルキメデス法による密度
を(表1)に示す。なお、表中HCJ欄の(%)は、磁化
冷却固化した磁石スロット内の希土類樹脂磁石の磁化率
を示す。すなわち、磁場中射出充填と、充填後の熱間パ
ルス電流による同一方向瞬間強磁界による磁石粉体への
磁化率を、もとのホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体
の固有保磁力HCJで除した、所謂、着磁率である。
【0052】
【表1】 ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体は磁石埋設型回転
子の加工段階で、やや磁気特性が低下するが、磁場中射
出充填と、充填後の熱間パルス電流による同一方向瞬間
強磁界による磁化で、もとの磁石粉体のHCJの95%程
度、すなわち、ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体本
来の磁力を十分に引き出すことができる。なお、上記回
転子鉄心磁石スロット内の希土類樹脂磁石の電気抵抗を
四探針法で測定したところ4〜7×10-1Ωcmであっ
た。
【0053】[希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造2]
図6は、本発明にかかる磁場中押出充填装置の要部構成
図である。
【0054】但し、図中1は押出スクリュー、2は加熱
シリンダー、3は押出ノズル、4は1極当たり50turn
の励磁コイル、5は非磁性部材と磁性部材とを組合わせ
た金型で励磁コイル4を内臓し、回転子鉄心b0を装填
できるキャビティを備えている。6は金型5に設けた冷
却管、7は金型5の型締めと開放を行う油圧シリンダー
である。さらに、直流電源81とパルス電源82は切替
えスイッチを介して励磁コイル4と電気的に接続されて
いる。
【0055】図5は、図6のA−A’断面構成図であ
る。金型5は非磁性部材51と磁性部材52とで構成さ
れ、励磁コイル4を回転子鉄心の回転軸スロットb3に
対して放射状に配置されている。そして励磁コイル4は
非磁性絶縁部材53により固定している。また、冷却管
6は励磁コイル4の外側に近接配置している。
【0056】そして、直流電源81またはパルス電源8
2から励磁コイル4に通電すると、励磁コイル4の発生
磁束は、回転子鉄心b0を構成する電磁鋼板b1を通過
して磁石スロットb2に磁場をつくる。
【0057】上記回転子鉄心b0を図4の磁場中押出充
填装置の金型5のキャビティに装填し、油圧シリンダー
7で金型5を型締めした。そしてカーボンファンクショ
ナルシラン処理したホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉
体A2を含むPPSペレットa1を押出スクリュー1の
回転と340℃に加熱したシリンダー2からの熱伝導で
可塑化したペレットa2とし、押出スクリュー1の後退
によりPPS可塑化ペレットa2を押出ノズル3へ移送
した。なお、ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体A2
はコバルトフリーで、走査型熱量計(DSC)によれ
ば、そのキュリー温度Tcは310℃±10degであ
る。
【0058】次に、直流電源81から直流電流(max
100A)を励磁コイル4に通電し、回転子鉄心の磁石
スロットb2に10kOeの連続磁場を発生させた。そ
して、回転停止した押出スクリュー1を押出ノズル3方
向へ前進させて押出ノズル3から希土類磁石のPPS溶
融ストランドを吐出した。ホウ素−ネオジミウム−鉄系
磁石粉体A2のキュリー温度以上に加熱したPPS溶融
ストランドは回転子鉄心の磁石スロットb2に直接磁場
中押出充填される。なお、充填時に電磁鋼板b1に接す
るPPS溶融ストランドは磁石スロット内部よりも急速
に冷却固化するもののキュリー温度以下に達するまでに
磁化することができる。
【0059】磁石スロットb2への磁場中押出充填の完
了は押出スクリュー1の位置または圧力センサーで検知
できる。PPS可塑化ペレットa2は磁石スロットb2
内で回転子鉄心の接触面から固化冷却が進み、PPSで
固定化したホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体A2
キュリー温度以下になる。すると、ホウ素−ネオジミウ
ム−鉄系磁石粉体は磁石スロット内で磁化されながら回
転子鉄心の磁石スロットに埋設された希土類磁石a0と
なる。この際にホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体A
2のキュリー温度以下に達した段階で直流電源81から
励磁コイル4への連続通電からパルス電源82のパルス
通電(波高値Ip15kA)に切替える。すると、パル
ス通電により励磁コイル4には、磁化方向と同一の≧2
0kOeの瞬間強磁界が加わりホウ素−ネオジミウム−
鉄系磁石粉体の磁化は、さらに高まる。
【0060】次に、上記回転子鉄心の磁石スロットに埋
設した磁化したままの希土類樹脂磁石を径5mm高さ2mm
に切出して振動型試料磁力計:VSM(測定磁界±15
kOe)で室温の磁気特性とアルキメデス法による密度
を(表2)に示す。なお、表中HCJ欄の(%)は、磁化
冷却固化した磁石スロット内の希土類樹脂磁石の磁化率
を示す。すなわち、磁場中押出充填と、充填後の熱間パ
ルス電流による同一方向瞬間強磁界による磁石粉体への
磁化率を、もとのホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体
の固有保磁力HCJで除した値、所謂、着磁率である。
【0061】
【表2】 ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体は磁石埋設型回転
子の加工段階で、やや磁気特性が低下する。しかし、高
CJ型ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体であって
も、当該磁石粉体のキュリー温度以下で、連続磁場また
は/および熱間パルス電流による瞬間強磁界で、もとの
磁石粉体のHCJの実に98.2%の磁化を与えることが
できる。なお、上記回転子鉄心磁石スロット内の希土類
樹脂磁石の電気抵抗を四探針法で測定したところ2〜5
×10-1Ωcmであった。
【0062】[比較例1]4−4’ジフェニルメタンジ
イソシアネートの−NCO基をメチルエチルケトンオキ
シムで封止したブロックイソシアネートと分子中にアル
コール性水酸基を有するジグリシジルエーテルビスフェ
ノールA型固体エポキシとを化学当量比(NCO/OH
=1)としたアセトン溶液と、ホウ素−ネオジミウム−
鉄系磁石粉体A1とを湿式混合した。その後、アセトン
を揮発させ2重量%の固体エポキシバインダーを含有す
るホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体A11とした。
【0063】図3の積層電磁鋼板の回転子鉄心磁石スロ
ットにホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体A11を粉末
形態で充填し、6ton/cm2の圧力で強圧縮した。ホウ素
−ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉体A11を強圧縮すると
積層電磁鋼板が変形し、積層電磁鋼板との間に生じる摩
擦による圧力損失により、圧縮圧力がスロット奥深くま
で伝達せず、回転子鉄心端面から20mm以上深いところ
ではグリーン体とすることもできなかった。すなわち、
この方法は回転子鉄心とホウ素−ネオジミウム−鉄系急
冷磁石粉体A11とを確かに空隙なく満たすけれども、ホ
ウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉体A11自体を空隙
なく磁石スロットに充填することはできない。
【0064】また、当該磁石の機械的強度が低いため磁
石埋設型回転子全体の機械的強度に対する信頼性に悪影
響を及ぼす。そればかりか、回転子鉄心の磁石スロット
の奥深くに存在するホウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁
石粉体の防錆処理やダスト対策を施して錆やダストに対
する信頼性を確保することも困難であった。また、何れ
の場合も従来からよく用いられているフェライト系磁石
に比べて著しく難着磁性であるから、ホウ素−ネオジミ
ウム−鉄系急冷磁石粉体の持つ本来の磁力を十分に活用
することもできない。なお、上記回転子鉄心端面付近の
磁石スロット内の希土類樹脂磁石の電気抵抗を四探針法
で測定したところ10-2Ωcmであった。したがって、ホ
ウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉体の持つ本来の磁
力を十分に活用して高信頼性、並びに高効率モータのた
めの希土類樹脂磁石埋設型回転子を製造することができ
ない。
【0065】[比較例2]希土類樹脂磁石埋設型回転子
の製造2と磁場なし以外は同一条件で作成したものを、
室温で瞬間強磁界(波高値Ip15kA)で着磁した
が、磁石の固有保磁力HCJは12.5kOeしか得られ
ず、着磁率では74%程度でしかなかった。したがっ
て、ホウ素−ネオジミウム−鉄系急冷磁石粉体の持つ本
来の磁力を十分に活用して高信頼性、並びに高効率モー
タのための希土類樹脂磁石埋設型回転子を製造すること
ができない。
【0066】
【発明の効果】以上のように、本願請求項1〜11、1
3記載の発明にかかる希土類樹脂磁石埋設型回転子の製
造方法は、ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体の希土
類元素、遷移金属元素の資源バランスが有利である。ま
た、ホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体を含む樹脂磁
石の溶融ストランドを、積層電磁鋼板のような回転子鉄
心磁石スロット内に均質に磁場中射出充填または磁場中
押出充填し、然る後、冷却固化する。すなわち正確に温
度制御した熱間で高HCJ型のホウ素−ネオジミウム−鉄
系磁石粉体であっても高度に磁化することができる。ま
た、磁化したホウ素−ネオジミウム−鉄系磁石粉体を熱
可塑性樹脂の冷却固化により、粉体間に空隙なく強固に
固定するので錆とダストに強い。或いは冷却固化過程で
の収縮力が磁石と回転子鉄心との間に作用して機械的に
磁石と回転子鉄心とが強固に一体化する。したがって、
接着レスで、錆やダスト対策のための表面被覆処理工
程、着磁工程などを不要とする高信頼性、高効率モータ
のための希土類樹脂磁石埋設型回転子を製造することが
できる。
【0067】請求項12記載の発明は、磁石埋設型回転
子全体の剛性が高まり高速回転での信頼性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】永久磁石を埋設した構成の磁石回転子の断面図
【図2】永久磁石を埋設した構成の磁石回転子の断面図
【図3】突極比ρ>1の磁石スロットと回転軸スロット
を設けた打抜き電磁鋼板を示す図
【図4】磁場中射出充填装置の要部構成図
【図5】磁場中射出/押出充填装置の要部断面図
【図6】磁石と積層電磁鋼板との境界部分の断面図
【図7】磁場中押出充填装置の要部構成図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 橋本 直 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】希土類磁石粉体を含む樹脂磁石の溶融スト
    ランドを回転子鉄心磁石スロット内へ磁場中射出充填
    し、当該希土類磁石粉体が磁化した状態で冷却固化する
    希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法。
  2. 【請求項2】希土類磁石粉体を含む樹脂磁石の溶融スト
    ランドを回転子鉄心磁石スロット内へ磁場中押出充填
    し、当該希土類磁石粉体が磁化した状態で冷却固化する
    希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法。
  3. 【請求項3】回転子鉄心磁石スロット内に希土類磁石粉
    体を含む溶融ストランドの磁場中充填が完了した後、充
    填時と同一方向の瞬間強磁界を印加して磁石スロット内
    の希土類磁石粉体の磁化を強める請求項1または2記載
    の希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法。
  4. 【請求項4】希土類磁石粉体を含む樹脂磁石の溶融スト
    ランドを回転子鉄心磁石スロット内へ磁場中射出または
    押出充填する際に、溶融ストランドの吐出温度が当該希
    土類磁石粉体のキュリー温度以上で、当該キュリー温度
    以下に冷却固化される段階で磁石スロット内の希土類磁
    石粉体を磁化する希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方
    法。
  5. 【請求項5】希土類磁石粉体が、ホウ素−ネオジミウム
    −鉄系急冷磁石粉体である請求項1、2または3記載の
    希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法。
  6. 【請求項6】希土類磁石粉体が、ホウ素−ネオジミウム
    −鉄系異方性磁石粉体である請求項1または2記載の希
    土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法。
  7. 【請求項7】ホウ素−ネオジミウム−鉄系異方性磁石粉
    体が水素分解/再結晶したホウ素−ネオジミウム−鉄系
    異方性磁石粉体である請求項6記載の希土類樹脂磁石埋
    設型回転子の製造方法。
  8. 【請求項8】溶融ストランド中の希土類磁石粉体キャリ
    ヤがポリアミド12、PPS(ポリフェニレンサルファ
    イド)から選ばれる熱可塑性樹脂である請求項1または
    2記載の希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法。
  9. 【請求項9】カーボンファンクショナルシラン処理した
    希土類磁石粉体である請求項1または2記載の希土類樹
    脂磁石埋設型回転子の製造方法。
  10. 【請求項10】回転子鉄心磁石スロット内の希土類樹脂
    磁石の電気抵抗が≧10-1Ωcmである請求項1または2
    記載の希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法。
  11. 【請求項11】回転子鉄心を積層電磁鋼板とし、磁石ス
    ロット内に磁場充填、冷却固化した希土類樹脂磁石の収
    縮力で機械的に一体化する請求項1または2記載の希土
    類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法。
  12. 【請求項12】回転子鉄心のスラスト(軸)方向端部に
    係合部を設け、磁石スロット内に磁場充填、冷却固化し
    た希土類樹脂磁石の収縮力で回転子全体の剛性を高める
    請求項1または2記載の希土類樹脂磁石埋設型回転子の
    製造方法。
  13. 【請求項13】回転子鉄心磁石スロットの構成が、突極
    比ρ>1の逆突極性構造である請求項1または2記載の
    希土類樹脂磁石埋設型回転子の製造方法。
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