JPH11189411A - 廃液処理方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 都市ガス等の塩素化合物を含むゴミの焼却ガ
ス中に含まれる飛灰で、ガス中の塩化水素を中和するた
め、石灰吹込み処理による塩化カルシウムを含むもの
の、水洗により生ずる洗浄廃液の有効な処理法を提供す
る。 【解決手段】 洗浄廃液に硫酸を加えて液中の塩化カル
シウムを二水石膏と塩酸に分解し、二水石膏は分離回収
し、塩酸を含む液はさらに硫酸を加えて抽出蒸留し、気
相は冷却して塩酸として回収し、釜残は冷却して析出す
る硫酸塩を除去した後残液である硫酸は抽出蒸留に循環
使用する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば焼却炉の
飛灰を湿式処理するときに発生する塩化カルシウムを主
溶質とした廃液を処理する方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】塩素を含む都市ゴミ等を焼却する設備で
発生する燃焼排ガス中には塩化水素が含まれ、これを中
和処理するために石灰が投入されている。このような場
合、燃焼ガスに伴われる飛灰中には、本来のゴミの燃焼
灰分以外に、中和生成物である多量の塩化カルシウム
や、未反応の石灰（消石灰）が混在する。

【０００３】このような飛灰の処理方法として、飛灰に
水を加えて塩化カルシウムなどの可溶成分を水に溶解さ
せた後固液分離して固体の飛灰回収ケーキはセメント原
料とし、液体はその中に含まれる重金属をｐＨ調整、薬
品等による凝集沈澱等で除去して基本的には無害化した
後、河川などに放流する方法がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近で
は、焼却設備からの排水を無くすることが要求されてき
ている。本発明の目的は、上記飛灰の処理において放流
水を零にし併せて飛灰中の塩化カルシウムを形を変えて
有効に回収する方法を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明は次のようである。 １．燃焼排ガスから補集される塩化カルシウムを多量に
含む飛灰を水洗して生ずる塩化カルシウムを主な溶質と
する洗浄廃液の処理方法において、 （１）洗浄廃液に硫酸を加えて液中の塩化カルシウムを
二水石膏と塩酸に分解する工程 （２）分解生成物を二水石膏と塩酸液とに固液分離する
工程 （３）分離した塩酸液に硫酸を加えて塩化水素ガスを抽
出蒸留し、気相は冷却して塩酸とし、釜残は冷却して析
出する硫酸塩を除去した後前記抽出蒸留に循環使用する
工程を含むことを特徴とする処理方法。

【０００６】

【発明の実施の形態】都市ゴミ等の焼却炉から発生する
飛灰は、本来の焼却灰の他に、ガス中の塩化水素ＨＣｌ
を中和させるためにガス中に投入された石灰Ｃａ（Ｏ
Ｈ）₂ が反応して生成された塩化カルシウムＣａＣｌ₂
と、未反応の石灰が大量に混在する。

【０００７】そこで、この飛灰を水で洗浄すると、塩化
カルシウムは水に溶解するので、それを固液分離した固
型物には塩化カルシウムを含まず、セメント原料として
利用可能となる。

【０００８】液相側には、塩化カルシウムの他に、少量
の塩化カリウム、塩化ナトリウム、重金属等が溶解して
いる。

【０００９】この中の重金属を、液のｐＨ調整や、薬品
による凝集沈殿等で除去すれば、残りの水溶液は基本的
には無害であるから放流することができる。

【００１０】この溶液の量を減らす目的で煮沸すれば、
ある程度（２０〜３０重量％）までは、比較的容易に濃
縮することが可能である。しかしこれから完全に水を蒸
発させて、塩化物を固化物として固定するには大量の熱
量と大規模な装置を必要とする。しかも固化した塩化物
は混合物でなんら価値がなく、捨て場に困るのは液の場
合と同様である。

【００１１】本発明は、上記のような欠点を除き、洗浄
廃液を零とするとともに、廃液中の成分を有価物の形で
回収できるものである。

【００１２】図１は本発明を説明するフローチャートで
ある。先ず水洗槽１で飛灰を水で洗浄する。これを固液
分離した固相分の飛灰回収ケーキには水溶性の塩素化合
物を含まず、ケーキはこのままセメント原料とすること
ができる。次に、もし必要であれば、液相分を重金属処
理槽２で薬品等で処理して重金属を沈澱させ、固液分離
して除去する。ここまでは公知の技術であり、従来はこ
の無害となった溶液を廃棄している。本発明では、この
水溶性の塩素化合物を含む溶液を分解槽３に導き、溶液
中の塩化カルシウムとほぼ当量の硫酸を投入する。これ
によって、溶液中の前記塩素化合物は二水石膏ＣａＳＯ
₄ ・２Ｈ₂ Ｏとカリウム、ナトリウム等の少量の塩類を
溶解した塩酸に変わる。

【００１３】これを固液分離すると、固体側に二水石膏
が回収され、液体側は上記の少量の塩類を溶解した塩酸
液となる。

【００１４】この溶液を単純に加熱しただけでも塩酸と
水が蒸発して塩酸が回収できるが、公知のように約２０
重量％塩酸溶液は１０８℃に共沸点をもち、この濃度以
下の溶液と平衡にある塩酸ガス濃度はきわめて小さい。
そこで本発明では、これに更に抽出蒸留槽４で硫酸を加
えて加熱蒸留する。このときの硫酸添加量は、塩酸の蒸
発ガスと平衡している液の３５〜４０重量％程度が望ま
しい。

【００１５】ここに使用する硫酸は後述するように循環
させるので、基本的には消耗せず、少量含まれる塩化物
が硫酸塩に変換するために僅かに消費されるだけであ
る。

【００１６】このように塩酸液に硫酸を混入して蒸留す
る方法を抽出蒸留と言い、これによって塩酸液の共沸点
が移動もしくは消失し、高濃度の塩酸を蒸留により得ら
れることは公知である。たとえば添加された硫酸の濃度
が１０ｍｏｌ％（約３７重量％）のときの平衡曲線によ
ると、全圧が１気圧のときの蒸気側の塩酸濃度１０ｍｏ
ｌ％（約１８．２重量％）に平衡する液の塩酸濃度は
３．５ｍｏｌ％（約４．７重量％）である。

【００１７】抽出蒸留槽４から蒸留された塩酸ガスはつ
いでガス冷却装置５で冷却されて高純度の塩酸を回収す
ることができる。一方、抽出蒸留槽４の釜残には、塩酸
よりはるかに硫酸の濃度の高くなった液が残り、これを
残液冷却装置６で冷却する。

【００１８】カリウム、ナトリウムの硫酸塩および塩化
物の、１０℃における水に対する溶解度は、 硫酸カリウム ８．５％ 塩化カリウム ３３％ 硫酸ナトリウム（１０水） ９．１％ 塩化ナトリウム ３６％ であり、いずれも硫酸塩が塩化物よりはるかに溶解度が
低い。

【００１９】前記の硫酸濃度の高くなった残液中では、
カリウムやナトリウムは、硫酸カリウムＫ₂ＳＯ₄や硫酸
ナトリウムＮａ₂ＳＯ₄のような硫酸塩だけでなく、硫酸
水素カリウムＫＨＳＯ₄や硫酸水素ナトリウムＮａＨＳ
Ｏ₄のような、いわゆる酸性塩との混合溶解液として存
在する。

【００２０】これらの酸性塩は溶解度が高いので、これ
を加味した液中のカリウム、ナトリウムの溶解量は大き
いが、硫酸塩と酸性塩の比率がｐＨによってほぼ一定で
あるから、これをある温度まで冷却した場合、硫酸塩の
過飽和分が析出し、残りの液を後述のようにもとの抽出
蒸留槽に戻すと、そこで新たな塩化カリウム、塩化ナト
リウムと出会って再びカリウム、ナトリウムの硫酸塩と
酸性塩の混合溶解液が発生する。

【００２１】したがって残液冷却装置で冷却された釜残
を固形分離して得られた固形物はすべて硫酸塩であり、
これをセメント原料としてセメントキルンに投入した場
合、Ｎａ₂ＳＯ₄，Ｋ₂ＳＯ₄、はそれぞれＮａ₂Ｏ＋Ｓ
Ｏ₂，Ｋ₂Ｏ＋ＳＯ₂、に分解し、ＳＯ₂はセメント原料中
の石灰と化合して石膏となり、セメントの品質に悪影響
を与えることはない。液相分は、必要により硫酸を補給
して抽出蒸留塔へ戻す。

【００２２】抽出蒸留槽４で蒸発し、ガス冷却装置５で
回収される塩酸の濃度は、抽出蒸留槽４に流入する塩酸
濃度で定まり、濃度の高い塩酸を回収しようとすると、
分解槽３に流入する塩化カルシウムの濃度を高める必要
がある。

【００２３】それには、たとえば水洗槽で水洗した後の
固液分離した液の１部を水洗槽に循環させるか、分解槽
に入る液を加熱濃縮し、蒸発する水分は水洗槽の水洗液
に使用することなどで、容易に操作できる。

【００２４】以上説明したように洗浄に使用した水は、
二水石膏中および塩酸中の水として回収することができ
るので基本的には放流する廃液を零にすることができ
る。

【００２５】

【実施例】実施例１ 本発明の１実施例を図１を参照しながら説明する。燃焼
排ガスに消石灰を投入し、排ガス中の塩素および塩素化
合物を処理して得られた原料飛灰（飛灰２９５重量部，
Ｃａ（ＯＨ）₂３５０重量部，ＣａＣｌ₂３２８重量部，
重金属５重量部，ＫＣｌ／ＮａＣｌ ５０重量部）（以
下部および％はすべて重量基準である）を水洗槽１で水
１７４５部で洗浄し、飛灰回収ケーキを回収し、ついで
濾液を重金属処理槽２で重金属安定剤を加えて重金属を
回収した後の濾液を、本実施例の原料洗浄廃液とした。
この廃液組成は次のようである。

【００２６】 ＣａＣｌ₂ ３２８部 ＫＣｌ／ＮａＣｌ ５０部水 １０９５部 計 １４７３部 この液を分解槽３に装入し、６０％硫酸４８７部を加え
て反応させ、ＣａＣｌ₂を石膏と塩酸に分解し、析出し
た二水石膏５４６部（うち付着水５０部）を分離回収し
た。塩酸を含む濾液の組成は次のようである。

【００２７】 ＨＣｌ ２１５部 ＫＣｌ／ＮａＣｌ ５０部 ＣａＳＯ₄（溶解分） １３部水 １１３６部 計 １４１４部 上記濾液を抽出蒸留槽４に装入し、後述する硫酸濃度約
３８％の循環液１７７７部と、補給６０％硫酸６８部と
を加え、１１３℃で蒸留した。ガス相はガス冷却装置５
に導き、３０℃に冷却して１８．４％の塩酸１３２８部
を得た。釜残は残液冷却装置６で１０℃まで冷却し固液
分離して、水７７部，二水石膏１６部を含む硫酸塩（Ｋ
₂ＳＯ₄／Ｎａ₂ＳＯ₄）１５４部からなる固形物と、次の
組成の液を分離した。

【００２８】Ｋ／Ｎａの酸性／中性 硫酸塩 １８５部 ＨＣｌ ６７部 Ｈ₂ＳＯ₄ ６０２部水 ９２３部 合計 １７７７部 この液は前述のように循環液として抽出蒸留槽に戻し
た。

【００２９】

【発明の効果】以上詳細に述べたように本発明によれば
塩化カルシウムを含む飛灰の処理において廃棄されるべ
き塩化カルシウム溶液を、利用価値のある二水石膏と塩
酸の形で回収し、しかも無排水とすることができるの
で、環境保全上きわめて有利な方法である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の廃液処理方法を用いた一連の飛灰の処
理装置の構成の一例を示すフローシートである。

【符号の説明】

１ 水洗槽 ２ 重金属処理槽 ３ 分解槽 ４ 抽出蒸留槽 ５ ガス冷却装置 ６ 残液冷却装置

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃焼排ガスから捕集される塩化カルシウ
   ムを多量に含む飛灰を水洗して生ずる塩化カルシウムを
   主な溶質とする洗浄廃液の処理方法において、１．洗浄
   廃液に硫酸を加えて液中の塩化カルシウムを二水石膏と
   塩酸に分解する工程 ２．分解生成物を二水石膏と塩酸液とに固液分離する工
   程 ３．分離した塩酸液に硫酸を加えて塩化水素ガスを抽出
   蒸留し、気相は冷却して塩酸とし、釜残は冷却して析出
   する硫酸塩を除去した後前記抽出蒸留に循環使用する工
   程を含むことを特徴とする処理方法。