JPH11180797A - ダイヤモンド形成用基体の製造方法 - Google Patents

ダイヤモンド形成用基体の製造方法

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JPH11180797A
JPH11180797A JP9354698A JP35469897A JPH11180797A JP H11180797 A JPH11180797 A JP H11180797A JP 9354698 A JP9354698 A JP 9354698A JP 35469897 A JP35469897 A JP 35469897A JP H11180797 A JPH11180797 A JP H11180797A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 合成ダイヤモンド薄膜を形成する場合におい
て、合成初期の核発生密度が低いため、緻密で平滑性が
高く、大面積のダイヤモンド薄膜を容易に得ることがで
きなかった。 【解決手段】 上記課題を解決するために、気相法によ
りダイヤモンドを合成するためダイヤモンド薄膜形成用
基体の製造方法として、表面を有機単分子で被覆したダ
イヤモンド微粒子が分散された溶液中に、表面が水酸基
化処理された基体を浸漬する方法を見い出した。このこ
とによって、ダイヤモンド微粒子同士が、有機単分子を
介してネットワーク的に結合させることにより、2次元
ダイヤモンド微粒子膜を作製し、それを基体表面上に吸
着させることにより、ダイヤモンド微粒子を高密度に基
体上に塗布することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコン等の基体
の表面に、合成ダイヤモンド薄膜を形成するためのダイ
ヤモンド薄膜形成用基体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドは硬度が高く、耐熱性、耐
薬品性及び耐放射線性が優れており、また電気的には優
れた絶縁体である。そして、ダイヤモンドの禁制帯幅
は、約5.4eVとシリコン及びゲルマニウム等の禁制
帯幅よりも大きく、またダイヤモンドはドーピングによ
り半導体化が可能である。このため、ダイヤモンドは耐
高温半導体としての応用が期待されている。また、ダイ
ヤモンドは紫外光、可視光及び赤外光の広い波長範囲に
わたり光学的に透明であるため、光学窓材料への応用も
期待されている。上述したようにダイヤモンドは機能性
材料として優れた特性を有しているので、半導体ダイヤ
モンド薄膜を使用したダイオード及びトランジスタ等の
電子デバイスの研究開発が進められている。
【0003】従来、このような半導体ダイヤモンド薄膜
を効率よく形成方法としてCVD法があり、炭化水素等
の炭素源と水素との混合ガスを、熱フィラメント、マイ
クロ波プラズマ、直流放電プラズマ、直流アーク放電等
により励起し、半導体ダイヤモンド薄膜を合成する方法
の開発が進んでいる。しかし、CVD法によるダイヤモ
ンド合成法では、合成開始時の核発生が一般的に104
個/cm2以下と少なく、平滑なダイヤモンド薄膜を合
成することが困難であり、また主に基体表面温度が60
0〜1000℃で、原子状水素と炭素源となるラジカル
等の活性種が存在する雰囲気中でないと初期の核発生は
起こりにくいため、一般的に合成されたダイヤモンド膜
の構成結晶粒の粒径が大きくなり、その結果、膜表面の
凹凸は大きく、また合成ダイヤモンドの形成される面積
も小さくなっていた。
【0004】特に、複雑な形状をした基体の場合、均一
なダイヤモンド膜を表面に被覆することは困難であっ
た。その問題を解決するために、CVD法を用いて半導
体ダイヤモンド薄膜を合成する場合、半導体ダイヤモン
ド薄膜を成長させようとする基体に、予め前処理を施し
て核発生密度を高めようとするさまざまな試みがなされ
ている。
【0005】核発生密度を高める前処理方法として、ダ
イヤモンド微粉等を用いて基体表面に傷つけ処理を行う
方法(特開昭62−226889号公報等)、酸エッチ
ングによる基体表面処理法(特開昭63−100182
号公報等)やダイヤモンド微粒子を基体表面に予め分散
させておく方法(特開昭63−166798号公報)が
ある。さらに、特開平2−184597号公報にはカー
ボンブラックを予め基体表面に分散させる方法、特開平
5−132394号公報には炭素質微粒とエステル溶剤
とからなる処理剤を基体に塗布し、熱処理を施す方法、
あるいは特開平6−183891号公報にはグリセリド
または/及びポリエチレングリコールまたは/及びダイ
ヤモンド微粒子の塗布液を基体に塗り、熱処理する方法
が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】基体の前処理の方法と
して、特開昭62−226889号公報に開示されるダ
イヤモンド微粉末による基体傷つけ方法の発明による
と、傷つけ処理により基体に極僅かなダイヤモンドクラ
スターが表面に残留し、ダイヤモンド合成の際にそれら
がダイヤモンド成長の核の役割を果たしていることがこ
れまでの研究結果から明らかになった。従って、良質な
ダイヤモンド薄膜を効率良く形成するためには、前処理
によってダイヤモンドクラスターの基体へ吸着密度を如
何に増大させるかが大きなキーポイントとなっている。
しかしながら、ダイヤモンドで基体を傷つける方法で
は、ダイヤモンドクラスターを制御することは困難であ
り、偶発的な現象に基づいてダイヤモンド形成している
のに過ぎないので、緻密で平滑性の高いダイヤモンドを
形成することができなかった。
【0007】そのために、特開昭63−166798号
公報、特開平5−132394号公報、特開平6−18
3891号公報等に開示された発明がなされたが、いず
れの場合も有機膜の膜中にダイヤモンド微粉末を分散さ
せたり、ダイヤモンドでないカーボンブラックを基体に
分散させたりする方法では、原理的に高密度のダイヤモ
ンド微粒子を基体上に乗せることが不可能であった。
【0008】これらの問題点に鑑み、本発明の目的は、
初期の核発生密度を飛躍的に増大させ、緻密で平滑性が
高く、大面積のダイヤモンド薄膜を容易に得ることので
きるダイヤモンド薄膜形成用基体の製造方法及びそれに
用いるダイヤモンド微粒子の有機単分子被覆方法を提供
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係るダイヤモン
ド形成用基体の製造方法は、基体の表面を水酸基化処理
する工程と、有機単分子で表面が被覆されたダイヤモン
ド微粒子が分散された溶液に、前記基体を浸漬する工程
とを有することを特徴とする。
【0010】また、前記有機単分子でダイヤモンド微粒
子の表面を被覆する工程は、ダイヤモンド微粒子を硝酸
溶液或いは硫酸と過酸化水素水との混合液に浸漬して、
前記ダイヤモンド微粒子表面を酸化する工程と、純水に
浸漬することにより、前記ダイヤモンド微粒子表面を水
酸基化処理する工程と、有機単分子を含有した溶液に前
記ダイヤモンド微粒子を浸漬する工程とからなることを
特徴とする。
【0011】さらに、前記水酸基化処理の工程前に、前
記ダイヤモンド微粒子を硫酸と過酸化水素水との混合液
に浸漬することによって、ダイヤモンド微粒子中に存在
する不純物を除去する工程と、フッ化水素酸溶液に浸漬
することによりダイヤモンド微粒子表面を清浄化する工
程を有することを特徴とする。
【0012】また、前記有機単分子は、両末端にSiC
3基、COOH基、Si(OCH2CH33基、Si
(OCH33基、PH23基の群から少なくとも1種以
上から選択されたものであることを特徴とする。
【0013】上述の方法を用いることによって、ダイヤ
モンド微粒子表面を変成することによって、ダイヤモン
ドを成長させる基体表面に有機単分子で表面が被覆され
たダイヤモンド微粒子を高密度に吸着させる方法を見出
した。さらに、ダイヤモンド微粒子同士が有機単分子を
介してネットワーク的に結合させることにより、2次元
ダイヤモンド微粒子膜を作製することができ、それをダ
イヤモンドを成長させる基体表面上に展開することがで
きるため、ダイヤモンド微粒子を高密度に基体上に塗布
することが可能であることを見出した。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明に係るダイヤモンド微粒子
表面への有機単分子の被覆は、以下に記述する工程で実
現させることができる。ダイヤモンド微粒子は火薬など
の衝撃圧力を用いて作製されているため、ダイヤモンド
微粒子中には、ダイヤモンド微粒子以外の不純物が多
く、精製しきれなかったFe、Cu、Cr、或いはAl
等の金属、グラファイト、アモルファスカーボン、不飽
和炭化水素化合物、ケイ酸塩、アルミナ等が混ざってお
り、さらにダイヤモンド微粒子の表面には有機系不純物
が付着している。
【0015】そこで、まず、ダイヤモンド微粒子を濃硫
酸と20%過酸化水素水とを3:7の割合で混合した溶
液に投入し、金属、無機物、有機物等の不純物を除去す
ると共に、ダイヤモンド微粒子表面の付着物を除去す
る。浸漬時間は、投入後気泡の発生が停止するまで行う
が、約1〜5時間が好ましく、約3〜4時間がより好ま
しい。次に、純水で上記ダイヤモンド微粒子を洗浄す
る。
【0016】さらに、上記濃硫酸と過酸化水素水との混
合溶液への浸漬処理、純水洗浄により、ダイヤモンド微
粒子の表面には酸化物が形成されているため、この酸化
物を除去するために、40%フッ化水素酸溶液でエッチ
ング処理を施す。処理時間は、好ましくは1時間〜1日
の範囲で、より好ましくは3〜4時間程度である。溶液
濃度は、40%に限らず他の濃度でも構わないが、溶液
濃度に応じて処理時間を変える必要がある。そして、純
水によりダイヤモンド微粒子をリンスする。これによ
り、ダイヤモンド微粒子表面を清浄化する。
【0017】次に、ダイヤモンド微粒子表面を水酸基化
処理するには、以下の手順を経る。ダイヤモンド微粒子
の表面を清浄化した工程を経たダイヤモンド微粒子を約
30秒間濃硝酸中或いは、濃硫酸と20%過酸化水素水
とを3:7の割合で混合した溶液に投入してダイヤモン
ド微粒子表面を酸化処理し、その後、ダイヤモンド微粒
子を純水に浸漬することによりダイヤモンド微粒子表面
に水酸基を形成する。
【0018】この後、ダイヤモンド微粒子を不活性中で
乾燥させ、少なくとも二つのSiCl3基あるいはCO
OH基あるいはSi(OCH2CH33基あるいはSi
(OCH33基もしくはPH23基から選択されたもの
を両末端に有する有機単分子を含む溶媒中に投入するこ
とにより、ダイヤモンド微粒子表面が有機単分子で覆わ
れる。有機分子の濃度については、1mMから1Mが使
われるが、好ましくは1〜10mMが好ましい。
【0019】このようにして得られたダイヤモンド微粒
子の分散溶液中に、予め表面を水酸基化処理したシリコ
ン基体を投入することにより、ダイヤモンド微粒子を高
密度に吸着させることができる。得られたダイヤモンド
微粒子が吸着したシリコン基体を使って、従来のCVD
法を用いて合成ダイヤモンド薄膜の形成を行う。このよ
うな本発明の製造方法を用いることにより非常に緻密で
平滑なダイヤモンド薄膜が作製することが可能である。
【0020】初期核の発生密度での比較すると、基体表
面に何も前処理をしない場合に比べて、ダイヤモンド微
粉による傷つけ処理を施した場合及び特開平6−183
89号公報の前処理を施した場合には10倍以上の高密
度発生が得られるが、本発明の基体表面の前処理をする
と20倍以上の高密度発生が得られることが分かった。
【0021】以下に、実施の形態により詳説する。 [実施の形態1]図1に、本発明に係るダイヤモンド薄
膜形成用基体の製造方法を説明する図を示す。図1に示
すように粒径0.05〜0.25μmφダイヤモンド微
粒子1を濃硫酸と20%過酸化水素水とを3:7の割合
で混合した溶液が入っている第1槽2に投入し、約4時
間放置することにより金属、有機物等の不純物を除去す
る。その後、このダイヤモンド微粒子1を純水槽(図示
せず)の純水で洗浄した。
【0022】次いで、得られたダイヤモンド微粒子1
を、第2槽3の40%フッ化水素酸溶液中に投入し、約
6時間放置することによりダイヤモンド微粒子1の表面
酸化物を除去した。その後、再び純水槽(図示せず)の
純水にダイヤモンド微粒子1を投入し洗浄した。
【0023】次に、得られたダイヤモンド微粒子1を濃
硝酸溶液の入った第3槽4に約30秒浸漬し、ダイヤモ
ンド微粒子1の表面に薄い酸化膜を形成させた後、純水
槽に浸漬してダイヤモンド微粒子1の表面の酸化膜を水
酸基に変える水酸基化処理した後、窒素乾燥を行った。
【0024】次に、クロロホルムとへキサデカンとを
3:7の割合で混合した溶媒に、オクタジトリクロロシ
ランCl3Si(CH28SiCl3を1mMを溶かし込
んだ溶液の入った第4槽5に、ダイヤモンド微粒子1を
約2時間浸漬した。これにより、ダイヤモンド微粒子1
の表面にオクタジトリクロロシラン単分子膜が形成され
た。作製されたダイヤモンド微粒子1を漉し取り、クロ
ロホルムとへキサデカンとを3:7の割合で混合した溶
液の入った第5層6に投入した。
【0025】最後に、予めダイヤモンド微粒子1を、水
酸基化処理するのとほぼ同じ方法で水酸基化処理を施し
たシリコン基体7(40×40×0.6mm)を第5槽
6に投入し、約2時間放置することで、ダイヤモンド微
粒子1がシリコン基体7の表面に化学吸着した。
【0026】図2にダイヤモンド微粒子11がシリコン
基体12に吸着した様子の模式図を示す。図2では、ダ
イヤモンド微粒子の表面が有機単分子13で被覆されて
いることによって、ダイヤモンド微粒子同士をネットワ
ーク的に結合させることができるため、ダイヤモンド微
粒子を高密度に基体上に塗布することが可能となること
を表している。
【0027】このシリコン基体の表面をフーリエ変換赤
外分光法により調べた結果を図3に示す。図3に示され
るように、CH2の対称振動2851cm-1及び非対称
振動2918cm-1及びCH3の対称振動2895cm
-1及び非対称振動2958cm-1に吸収が見られた。ま
た、このシリコン基体の表面をAFM観察した結果を図
4に示す。図4に示すように、直径が数百Åから0.2
μmの凹凸が観察された。これらの結果よりダイヤモン
ド微粒子1がシリコン基体7表面に高密度に吸着したこ
とが分かった。このダイヤモンド微粒子1の吸着したシ
リコン基体7を、熱フィラメント法気相ダイヤモンド合
成反応装置(容量40リットル)内のWフィラメントの
近傍(Wフィラメントとシリコン基体間隔3mm)に設
置した。装置内雰囲気はアセトンを2vol%含む水素
ガスで満たし、装置内の圧力は80Torrに保った。
【0028】その後、Wフィラメント温度を1100℃
程度に保ち、20分間、シリコン基板7の熱処理を行っ
た。その後、装置内雰囲気はそのままで、Wフィラメン
ト温度を2100℃にし、シリコン基体7の温度を75
0℃に上昇させ、30分間ダイヤモンドの合成を行っ
た。シリコン基体7の表面を観察した結果、Wフィラメ
ントからの直線距離が13mm以内の領域のシリコン基
体7の表面に粒径1〜2μmφのダイヤモンド粒が多数
点在し、Wフィラメントからの直線距離が8mm以内の
領域のシリコン基体7の表面でのダイヤモンド核発生密
度は3×1011個/cm2であり、合成されたダイヤモ
ンド粒は互いに結合しており、完全な膜状になっている
ことを確認した。合成ダイヤモンドの膜厚は3μm、薄
膜表面の最大粗さRmaxは0.1μmであった。ま
た、これらの析出物についてラマン分光法を用いて解析
した結果、ダイヤモンドによる鋭い1333cm-1のピ
ークシフトを確認した。
【0029】本実施例ではシリコン基体の全面に対して
水酸基化処理を行ったが、部分的に水酸基化処理を行う
ことによって、水酸基化処理を行った部分のみにダイヤ
モンド微粒子を吸着させても構わない。この場合には、
気相ダイヤモンド合成での条件を適宜制御することによ
って、ダイヤモンド微粒子が吸着した部分にのみ合成ダ
イヤモンド薄膜を形成することができる。
【0030】[実施の形態2]粒径0.05〜0.25
μmφダイヤモンド微粒子1を濃硫酸と20%過酸化水
素水とを3:7の割合で混合した溶液の入った第1槽2
に投入し、約4時間放置することにより金属、有機物等
の不純物を除去する。そして、このダイヤモンド微粒子
1を純水槽(図示せず)の純水で洗浄した。
【0031】さらに、得られたダイヤモンド微粒子1を
第2槽3の40%フッ化水素酸溶液の中に投入し、約6
時間放置することによりダイヤモンド微粒子1の表面酸
化物を除去した。そして、再び純水槽(図示せず)の純
水にダイヤモンド微粒子1を投入し、洗浄した。
【0032】次に、得られたダイヤモンド微粒子1を、
濃硫酸と20%過酸化水素水とを3:7の割合で混合し
た溶液の入った第3槽4に約1時間浸漬し、ダイヤモン
ド微粒子1の表面に薄い酸化膜を形成させた後、純水槽
に浸漬して、ダイヤモンド微粒子1の表面の酸化物を水
酸基に変えた後、窒素乾燥を行った。
【0033】次に、エタノール溶媒に溶かし込んだオク
タデシルビスフォスフォン酸O32P(CH218PH2
3を1mM溶かし込んだ溶液の入った第4槽5に、上
記水酸基化処理を行ったダイヤモンド微粒子1を約2時
間浸漬した。これにより、ダイヤモンド微粒子1の表面
にオクタデシルビスフォスフォン酸単分子膜が形成され
た。作製されたダイヤモンド微粒子1を漉し取り、第5
槽6の純エタノール溶液に投入した。
【0034】最後に、予めダイヤモンド微粒子1を水酸
基化処理した方法と同じ方法で、水酸基化処理を施した
シリコン基体7(40×40×0.6mm)を、有機単
分子膜で被覆されたダイヤモンド微粒子1の分散されて
いる純エタノール溶液の入った第5槽6に投入し、約2
時間放置することにより、ダイヤモンド微粒子1がシリ
コン基坂7表面に化学吸着した。
【0035】このシリコン基体7の表面をフーリエ変換
赤外分光法により調べたところ、CH2の対称振動28
51cm-1及び非対称振動2918cm-1及びCH3
対称振動2895cm-1及び非対称振動2958cm-1
に吸収が見られる。また、このシリコン基体7の表面を
AFM観察した結果、直径が数百Åから0.2μmの凹
凸が観察された。これらの結果より、ダイヤモンド微粒
子1がシリコン基体7の表面に高密度に吸着したことが
分かった。
【0036】このダイヤモンド微粒子1が吸着したシリ
コン基体7を、ECRマイクロ波プラズマCVD装置内
に載置した。装置内の真空引きを10-7Torrまで行
った後、シリコン基体7の温度を700℃まで加熱し
た。次に、CVD装置内雰囲気をメタンガス3scc
m、水素ガスを300sccm導入し、装置内の圧力は
50Torrに保った。その後、マイクロ波プラズマを
2.45GHz、1.3KWで発生させ、ダイヤモンド
薄膜を6時間合成した。
【0037】合成したダイヤモンド薄膜が形成されたシ
リコン基体7の表面を観察した結果、シリコン基体7の
表面のダイヤモンド核発生密度は3×1011個/cm2
であり、ダイヤモンド粒は互いに結合しており、完全な
膜状になっていることを確認した。合成ダイヤモンドの
膜厚は3μm、薄膜表面の最大粗さRmaxは0.1μ
mであった。また、これらの析出物についてラマン分光
法を用いて解析した結果、ダイヤモンドによる鋭い13
33cm-1のピークシフトを確認した。
【0038】[実施の形態3]粒径0.05〜0.25
μmφのダイヤモンド微粒子1を、濃硫酸と20%過酸
化水素水とを3:7の割合で混合した溶液の入った第1
槽2に投入し、約4時間放置することにより金属、有機
物等の不純物を除去する。そして、このダイヤモンド微
粒子1を純水槽(図示せず)の純水で洗浄した。
【0039】さらに、得られたダイヤモンド微粒子1
を、第2槽3の40%フッ化水素酸溶液の中に投入し、
約6時間放置することによりダイヤモンド微粒子1の表
面酸化物を除去した。そして、再び純水槽(図示せず)
の純水にダイヤモンド微粒子1を投入し洗浄した。
【0040】次に、得られたダイヤモンド微粒子1を濃
硝酸溶液の入った第3槽4に約30秒浸漬し、ダイヤモ
ンド微粒子1表面に薄い酸化膜を形成させた後、純水に
浸漬して前記酸化膜を水酸基に変えた後、窒素乾燥を行
った。
【0041】次に、エタノール溶媒に溶かし込んだオク
タデシルビスカルボン酸HOOC(CH218COOH
を1mM溶かし込んだ溶液の入った第4槽5に、上記水
酸基化処理を行ったダイヤモンド微粒子1を約2時間浸
漬した。これにより、ダイヤモンド微粒子1の表面にオ
クタデシルビスカルボン酸単分子層が形成された。作製
されたダイヤモンド微粒子1を漉し取り、第5槽6の純
エタノール溶液に投入した。
【0042】最後に、予めダイヤモンド微粒子1を水酸
基化処理した方法と同じ方法で水酸基化処理を施したシ
リコン基体7(40×40×0.6mm)をこの溶液に
投入し、約2時間放置することで、ダイヤモンド微粒子
1がシリコン基体7の表面に化学吸着した。このシリコ
ン基体7の表面をフーリエ変換赤外分光法により調べた
ところ、CH2の対称振動2851cm-1及び非対称振
動2918cm-1及びCH3の対称振動2895cm-1
及び非対称振動2958cm-1に吸収が見られた。ま
た、このシリコン基体7の表面をAFM観察した結果、
粒径が数百Åから0.2μmの凹凸が観察された。これ
らの結果より、ダイヤモンド微粒子1がシリコン基体7
の表面に選択的に吸着したことが分かった。
【0043】このダイヤモンド微粒子1が、吸着したシ
リコン基体7をECRマイクロ波プラズマCVD装置内
に設置した。装置内の真空引きを10-7Torrまで行
った後、シリコン基体7の温度を700℃まで加熱し
た。次に、装置内雰囲気をメタンガス3sccm、水素
ガスを300sccm導入し、装置内の圧力は50To
rrに保った。その後、マイクロ波プラズマを2.45
GHz、1.3KWで発生させ、合成ダイヤモンド薄膜
を形成した。
【0044】合成ダイヤモンド薄膜形成後、シリコン基
体7の表面を観察した結果、シリコン基体7の表面のダ
イヤモンド核発生密度は3×1011個/cm2であり、
ダイヤモンド粒は互いに結合しており、完全な膜状にな
っていることを確認した。合成したダイヤモンドの膜厚
は3μm、薄膜表面の最大粗さRmaxは0.1μmで
あった。また、これらの析出物についてラマン分光法を
用いて解析した結果、ダイヤモンドによる鋭い1333
cm-1のピークシフトを確認した。
【0045】[実施の形態4]粒径0.05〜0.25
μmφダイヤモンド微粒子1を、濃硫酸と20%過酸化
水素水とを3:7の割合で混合した溶液の入った第1槽
2に投入し、約4時間放置することにより金属、有機物
等の不純物を除去する。そして、このダイヤモンド微粒
子1を純水槽(図示せず)の純水で洗浄した。さらに、
得られたダイヤモンド微粒子1を、第2槽3の40%フ
ッ化水素酸溶液中に投入し、約6時間放置することによ
りダイヤモンド微粒子1の表面酸化物を除去した。そし
て、再び純水槽の純水にダイヤモンド微粒子1を投入し
洗浄した。
【0046】次に、得られたダイヤモンド微粒子1を、
濃硝酸溶液の入った第3槽4に約30秒浸漬し、ダイヤ
モンド微粒子1の表面に薄い酸化膜を形成させた後、純
水に浸漬して水酸基化処理を行った後、窒素乾燥を行っ
た。次に、0.02Mのドデシルビスメトキシシラン酸
(OCH33Si(CH212Si(OCH33を20
mM、6.6mMの塩酸、及び0.3Mの純水をテトラ
ヒドロフラン溶媒に溶かし込んだ溶液とシクロへキサン
を1対20の割合で混合して作製した溶液の入った第4
槽5に、ダイヤモンド微粒子1を約1時間浸漬した。こ
れにより、ダイヤモンド微粒子1の表面にドデシルビス
メトキシシラン単分子層が形成された。作製されたダイ
ヤモンド微粒子1を漉し取り、第5槽6のテトラヒドロ
フラン溶液に投入した。
【0047】最後に、予めダイヤモンド微粒子1の表面
を水酸基化処理した方法と同じ方法で、表面を水酸基化
処理を施したシリコン基体7(40×40×0.6m
m)をこの溶液に投入し、約2時間放置することで、ダ
イヤモンド微粒子1がシリコン基体7の表面に化学吸着
した。
【0048】このシリコン基体7の表面をフーリエ変換
赤外分光法により調べたところ、CH2の対称振動28
51cm-1及び非対称振動2918cm-1及びCH3
対称振動2895cm-1及び非対称振動2958cm-1
に吸収が見られた。また、このシリコン基体7の表面を
AFM観察した結果、直径が数百Åから0.2μmの凹
凸が観察された。これらの結果より、ダイヤモンド微粒
子1がシリコン基体7の表面に選択的に吸着したことが
分かった。
【0049】このダイヤモンド微粒子1の吸着したシリ
コン基体7を、ECRマイクロ波プラズマCVD装置内
に設置した。装置内の真空引きを10-7Torrまで行
った後、シリコン基体7の温度を700℃まで加熱し
た。次に、該装置内雰囲気をメタンガス3sccm、水
素ガスを300sccm導入し、装置内の圧力は50T
orrに保った。その後、マイクロ波プラズマを2.4
5GHz、1.3kWで発生させ、ダイヤモンド薄膜を
8時間合成した。
【0050】8時間の合成後、シリコン基体7の表面を
観察した結果、シリコン基体7の表面のダイヤモンド核
発生密度は3×1011個/cm2であり、ダイヤモンド
粒は互いに結合しており、完全な膜状になっていること
を確認した。合成ダイヤモンドの膜厚は3μm、薄膜表
面の最大粗さRmaxは0.1μmであった。また、こ
れらの析出物についてラマン分光法を用いて解析した結
果、ダイヤモンドによる鋭い1333cm-1のピークシ
フトを確認した。
【0051】本実施の形態では、有機単分子膜として両
末端を同じ官能基を有するものを用いたが、SiCl3
基、COOH基、Si(OCH2CH33基、Si(O
CH33基、PH23基などの基であれば異なっていて
も構わない。
【0052】
【発明の効果】上記のように、ダイヤモンド微粒子の表
面を水酸基化処理後、有機単分子で被覆すると共に、ダ
イヤモンド薄膜を形成させるシリコン基体の表面を水酸
基化処理して、有機単分子で表面が被覆されたダイヤモ
ンド微粒子を、シリコン基体の表面に化学吸着させるこ
とにより、高密度でダイヤモンド微粒子を吸着させて、
ダイヤモンド薄膜合成用の核を形成することができ、表
面が滑らかで、大面積の欠陥のないダイヤモンド薄膜を
合成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイヤモンド薄膜形成用基体の製
造方法を説明するための図である。
【図2】本発明に係る有機単分子で被覆処理したダイヤ
モンド微粒子を吸着後のシリコン基体表面の模式図であ
る。
【図3】本発明に係るダイヤモンド微粒子を吸着後のシ
リコン基体表面の赤外吸収スペクトルである。
【図4】本発明に係るダイヤモンド微粒子を吸着後のシ
リコン基体表面のAFM観察の結果の図である。
【符号の説明】
1 ダイヤモンド微粒子 2 第1槽 3 第2槽 4 第3槽 5 第4槽 6 第5槽 7 シリコン基体 11 ダイヤモンド微粒子 12 シリコン基体 13 有機単分子

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体の表面を水酸基化処理する工程と、
    有機単分子で表面が被覆されたダイヤモンド微粒子が分
    散された溶液に、前記基体を浸漬する工程とを有するこ
    とを特徴とするダイヤモンド形成用基体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記有機単分子でダイヤモンド微粒子の
    表面を被覆する工程は、ダイヤモンド微粒子を硝酸溶液
    或いは硫酸と過酸化水素水との混合液に浸漬して、前記
    ダイヤモンド微粒子表面を酸化する工程と、 純水に浸漬することにより、前記ダイヤモンド微粒子表
    面を水酸基化処理する工程と、 有機単分子を含有した溶液に前記ダイヤモンド微粒子を
    浸漬する工程とからなることを特徴とする請求項1に記
    載のダイヤモンド形成用基体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記水酸基化処理の工程前に、前記ダイ
    ヤモンド微粒子を硫酸と過酸化水素水との混合液に浸漬
    することによって、ダイヤモンド微粒子中に存在する不
    純物を除去する工程と、フッ化水素酸溶液に浸漬するこ
    とによりダイヤモンド微粒子表面を清浄化する工程を有
    することを特徴とする請求項2に記載のダイヤモンド形
    成用基体の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記有機単分子は、両末端にSiCl3
    基、COOH基、Si(OCH2CH33基、Si(O
    CH33基、PH23基の群から少なくとも1種以上か
    ら選択されたものであることを特徴とする請求項1乃至
    3のいずれかに記載のダイヤモンド形成用基体の製造方
    法。
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