JP3970399B2 - ダイヤモンド形成用基体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン等の基体の表面に、合成ダイヤモンド薄膜を形成するためのダイヤモンド薄膜形成用基体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンドは硬度が高く、耐熱性、耐薬品性及び耐放射線性が優れており、また電気的には優れた絶縁体である。そして、ダイヤモンドの禁制帯幅は、約5.4eVとシリコン及びゲルマニウム等の禁制帯幅よりも大きく、またダイヤモンドはドーピングにより半導体化が可能である。このため、ダイヤモンドは耐高温半導体としての応用が期待されている。また、ダイヤモンドは紫外光、可視光及び赤外光の広い波長範囲にわたり光学的に透明であるため、光学窓材料への応用も期待されている。上述したようにダイヤモンドは機能性材料として優れた特性を有しているので、半導体ダイヤモンド薄膜を使用したダイオード及びトランジスタ等の電子デバイスの研究開発が進められている。
【0003】
従来、このような半導体ダイヤモンド薄膜を効率よく形成方法としてCVD法があり、炭化水素等の炭素源と水素との混合ガスを、熱フィラメント、マイクロ波プラズマ、直流放電プラズマ、直流アーク放電等により励起し、半導体ダイヤモンド薄膜を合成する方法の開発が進んでいる。しかし、CVD法によるダイヤモンド合成法では、合成開始時の核発生が一般的に104個/cm2以下と少なく、平滑なダイヤモンド薄膜を合成することが困難であり、また主に基体表面温度が600〜1000℃で、原子状水素と炭素源となるラジカル等の活性種が存在する雰囲気中でないと初期の核発生は起こりにくいため、一般的に合成されたダイヤモンド膜の構成結晶粒の粒径が大きくなり、その結果、膜表面の凹凸は大きく、また合成ダイヤモンドの形成される面積も小さくなっていた。
【0004】
特に、複雑な形状をした基体の場合、均一なダイヤモンド膜を表面に被覆することは困難であった。その問題を解決するために、CVD法を用いて半導体ダイヤモンド薄膜を合成する場合、半導体ダイヤモンド薄膜を成長させようとする基体に、予め前処理を施して核発生密度を高めようとするさまざまな試みがなされている。
【0005】
核発生密度を高める前処理方法として、ダイヤモンド微粉等を用いて基体表面に傷つけ処理を行う方法(特開昭62−226889号公報等)、酸エッチングによる基体表面処理法(特開昭63−100182号公報等)やダイヤモンド微粒子を基体表面に予め分散させておく方法(特開昭63−166798号公報)がある。さらに、特開平2−184597号公報にはカーボンブラックを予め基体表面に分散させる方法、特開平5−132394号公報には炭素質微粒とエステル溶剤とからなる処理剤を基体に塗布し、熱処理を施す方法、あるいは特開平6−183891号公報にはグリセリドまたは/及びポリエチレングリコールまたは/及びダイヤモンド微粒子の塗布液を基体に塗り、熱処理する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
基体の前処理の方法として、特開昭62−226889号公報に開示されるダイヤモンド微粉末による基体傷つけ方法の発明によると、傷つけ処理により基体に極僅かなダイヤモンドクラスターが表面に残留し、ダイヤモンド合成の際にそれらがダイヤモンド成長の核の役割を果たしていることがこれまでの研究結果から明らかになった。従って、良質なダイヤモンド薄膜を効率良く形成するためには、前処理によってダイヤモンドクラスターの基体へ吸着密度を如何に増大させるかが大きなキーポイントとなっている。しかしながら、ダイヤモンドで基体を傷つける方法では、ダイヤモンドクラスターを制御することは困難であり、偶発的な現象に基づいてダイヤモンド形成しているのに過ぎないので、緻密で平滑性の高いダイヤモンドを形成することができなかった。
【0007】
そのために、特開昭63−166798号公報、特開平5−132394号公報、特開平6−183891号公報等に開示された発明がなされたが、いずれの場合も有機膜の膜中にダイヤモンド微粉末を分散させたり、ダイヤモンドでないカーボンブラックを基体に分散させたりする方法では、原理的に高密度のダイヤモンド微粒子を基体上に乗せることが不可能であった。
【0008】
これらの問題点に鑑み、本発明の目的は、初期の核発生密度を飛躍的に増大させ、緻密で平滑性が高く、大面積のダイヤモンド薄膜を容易に得ることのできるダイヤモンド薄膜形成用基体の製造方法及びそれに用いるダイヤモンド微粒子の有機単分子被覆方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るダイヤモンド形成用基体の製造方法は、基体の表面を水酸基化処理する工程と、両末端にSiCl 3 基、COOH基、Si(OCH 2 CH 3 ) 3 基、Si(OCH 3 ) 3 基、PH 2 O 3 基の群から少なくとも1種以上から選択された有機単分子で表面が被覆されたダイヤモンド微粒子が分散された溶液に、前記基体を浸漬する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
また、前記有機単分子でダイヤモンド微粒子の表面を被覆する工程は、ダイヤモンド微粒子を硝酸溶液或いは硫酸と過酸化水素水との混合液に浸漬して、前記ダイヤモンド微粒子表面を酸化する工程と、純水に浸漬することにより、前記ダイヤモンド微粒子表面を水酸基化処理する工程と、前記有機単分子を含有した溶液に前記ダイヤモンド微粒子を浸漬する工程とからなることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記水酸基化処理の工程前に、前記ダイヤモンド微粒子を硫酸と過酸化水素水との混合液に浸漬することによって、ダイヤモンド微粒子中に存在する不純物を除去する工程と、フッ化水素酸溶液に浸漬することによりダイヤモンド微粒子表面を清浄化する工程を有することを特徴とする。
【0013】
上述の方法を用いることによって、ダイヤモンド微粒子表面を変成することによって、ダイヤモンドを成長させる基体表面に有機単分子で表面が被覆されたダイヤモンド微粒子を高密度に吸着させる方法を見出した。さらに、ダイヤモンド微粒子同士が有機単分子を介してネットワーク的に結合させることにより、2次元ダイヤモンド微粒子膜を作製することができ、それをダイヤモンドを成長させる基体表面上に展開することができるため、ダイヤモンド微粒子を高密度に基体上に塗布することが可能であることを見出した。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係るダイヤモンド微粒子表面への有機単分子の被覆は、以下に記述する工程で実現させることができる。
ダイヤモンド微粒子は火薬などの衝撃圧力を用いて作製されているため、ダイヤモンド微粒子中には、ダイヤモンド微粒子以外の不純物が多く、精製しきれなかったFe、Cu、Cr、或いはAl等の金属、グラファイト、アモルファスカーボン、不飽和炭化水素化合物、ケイ酸塩、アルミナ等が混ざっており、さらにダイヤモンド微粒子の表面には有機系不純物が付着している。
【0015】
そこで、まず、ダイヤモンド微粒子を濃硫酸と20%過酸化水素水とを3:7の割合で混合した溶液に投入し、金属、無機物、有機物等の不純物を除去すると共に、ダイヤモンド微粒子表面の付着物を除去する。浸漬時間は、投入後気泡の発生が停止するまで行うが、約1〜5時間が好ましく、約3〜4時間がより好ましい。次に、純水で上記ダイヤモンド微粒子を洗浄する。
【0016】
さらに、上記濃硫酸と過酸化水素水との混合溶液への浸漬処理、純水洗浄により、ダイヤモンド微粒子の表面には酸化物が形成されているため、この酸化物を除去するために、40%フッ化水素酸溶液でエッチング処理を施す。処理時間は、好ましくは1時間〜1日の範囲で、より好ましくは3〜4時間程度である。溶液濃度は、40%に限らず他の濃度でも構わないが、溶液濃度に応じて処理時間を変える必要がある。そして、純水によりダイヤモンド微粒子をリンスする。これにより、ダイヤモンド微粒子表面を清浄化する。
【0017】
次に、ダイヤモンド微粒子表面を水酸基化処理するには、以下の手順を経る。ダイヤモンド微粒子の表面を清浄化した工程を経たダイヤモンド微粒子を約30秒間濃硝酸中或いは、濃硫酸と20%過酸化水素水とを3:7の割合で混合した溶液に投入してダイヤモンド微粒子表面を酸化処理し、その後、ダイヤモンド微粒子を純水に浸漬することによりダイヤモンド微粒子表面に水酸基を形成する。
【0018】
この後、ダイヤモンド微粒子を不活性中で乾燥させ、少なくとも二つのSiCl3基あるいはCOOH基あるいはSi(OCH2CH3)3基あるいはSi(OCH3)3基もしくはPH2O3基から選択されたものを両末端に有する有機単分子を含む溶媒中に投入することにより、ダイヤモンド微粒子表面が有機単分子で覆われる。有機分子の濃度については、1mMから1Mが使われるが、好ましくは1〜10mMが好ましい。
【0019】
このようにして得られたダイヤモンド微粒子の分散溶液中に、予め表面を水酸基化処理したシリコン基体を投入することにより、ダイヤモンド微粒子を高密度に吸着させることができる。得られたダイヤモンド微粒子が吸着したシリコン基体を使って、従来のCVD法を用いて合成ダイヤモンド薄膜の形成を行う。このような本発明の製造方法を用いることにより非常に緻密で平滑なダイヤモンド薄膜が作製することが可能である。
【0020】
初期核の発生密度での比較すると、基体表面に何も前処理をしない場合に比べて、ダイヤモンド微粉による傷つけ処理を施した場合及び特開平6−18389号公報の前処理を施した場合には10倍以上の高密度発生が得られるが、本発明の基体表面の前処理をすると20倍以上の高密度発生が得られることが分かった。
【0021】
以下に、実施の形態により詳説する。
[実施の形態1]
図1に、本発明に係るダイヤモンド薄膜形成用基体の製造方法を説明する図を示す。図1に示すように粒径0.05〜0.25μmφダイヤモンド微粒子1を濃硫酸と20%過酸化水素水とを3:7の割合で混合した溶液が入っている第1槽2に投入し、約4時間放置することにより金属、有機物等の不純物を除去する。その後、このダイヤモンド微粒子1を純水槽(図示せず)の純水で洗浄した。
【0022】
次いで、得られたダイヤモンド微粒子1を、第2槽3の40%フッ化水素酸溶液中に投入し、約6時間放置することによりダイヤモンド微粒子1の表面酸化物を除去した。その後、再び純水槽(図示せず)の純水にダイヤモンド微粒子1を投入し洗浄した。
【0023】
次に、得られたダイヤモンド微粒子1を濃硝酸溶液の入った第3槽4に約30秒浸漬し、ダイヤモンド微粒子1の表面に薄い酸化膜を形成させた後、純水槽に浸漬してダイヤモンド微粒子1の表面の酸化膜を水酸基に変える水酸基化処理した後、窒素乾燥を行った。
【0024】
次に、クロロホルムとへキサデカンとを3:7の割合で混合した溶媒に、オクタジトリクロロシランCl3Si(CH2)8SiCl3を1mMを溶かし込んだ溶液の入った第4槽5に、ダイヤモンド微粒子1を約2時間浸漬した。これにより、ダイヤモンド微粒子1の表面にオクタジトリクロロシラン単分子膜が形成された。作製されたダイヤモンド微粒子1を漉し取り、クロロホルムとへキサデカンとを3:7の割合で混合した溶液の入った第5層6に投入した。
【0025】
最後に、予めダイヤモンド微粒子1を、水酸基化処理するのとほぼ同じ方法で水酸基化処理を施したシリコン基体7(40×40×0.6mm)を第5槽6に投入し、約2時間放置することで、ダイヤモンド微粒子1がシリコン基体7の表面に化学吸着した。
【0026】
図2にダイヤモンド微粒子11がシリコン基体12に吸着した様子の模式図を示す。図2では、ダイヤモンド微粒子の表面が有機単分子13で被覆されていることによって、ダイヤモンド微粒子同士をネットワーク的に結合させることができるため、ダイヤモンド微粒子を高密度に基体上に塗布することが可能となることを表している。
【0027】
このシリコン基体の表面をフーリエ変換赤外分光法により調べた結果を図3に示す。図3に示されるように、CH2の対称振動2851cm-1及び非対称振動2918cm-1及びCH3の対称振動2895cm-1及び非対称振動2958cm-1に吸収が見られた。また、このシリコン基体の表面をAFM観察した結果を図4に示す。図4に示すように、直径が数百Åから0.2μmの凹凸が観察された。これらの結果よりダイヤモンド微粒子1がシリコン基体7表面に高密度に吸着したことが分かった。このダイヤモンド微粒子1の吸着したシリコン基体7を、熱フィラメント法気相ダイヤモンド合成反応装置(容量40リットル)内のWフィラメントの近傍(Wフィラメントとシリコン基体間隔3mm)に設置した。装置内雰囲気はアセトンを2vol%含む水素ガスで満たし、装置内の圧力は80Torrに保った。
【0028】
その後、Wフィラメント温度を1100℃程度に保ち、20分間、シリコン基板7の熱処理を行った。その後、装置内雰囲気はそのままで、Wフィラメント温度を2100℃にし、シリコン基体7の温度を750℃に上昇させ、30分間ダイヤモンドの合成を行った。シリコン基体7の表面を観察した結果、Wフィラメントからの直線距離が13mm以内の領域のシリコン基体7の表面に粒径1〜2μmφのダイヤモンド粒が多数点在し、Wフィラメントからの直線距離が8mm以内の領域のシリコン基体7の表面でのダイヤモンド核発生密度は3×1011個/cm2であり、合成されたダイヤモンド粒は互いに結合しており、完全な膜状になっていることを確認した。合成ダイヤモンドの膜厚は3μm、薄膜表面の最大粗さRmaxは0.1μmであった。また、これらの析出物についてラマン分光法を用いて解析した結果、ダイヤモンドによる鋭い1333cm-1のピークシフトを確認した。
【0029】
本実施例ではシリコン基体の全面に対して水酸基化処理を行ったが、部分的に水酸基化処理を行うことによって、水酸基化処理を行った部分のみにダイヤモンド微粒子を吸着させても構わない。この場合には、気相ダイヤモンド合成での条件を適宜制御することによって、ダイヤモンド微粒子が吸着した部分にのみ合成ダイヤモンド薄膜を形成することができる。
【0030】
[実施の形態2]
粒径0.05〜0.25μmφダイヤモンド微粒子1を濃硫酸と20%過酸化水素水とを3:7の割合で混合した溶液の入った第1槽2に投入し、約4時間放置することにより金属、有機物等の不純物を除去する。そして、このダイヤモンド微粒子1を純水槽(図示せず)の純水で洗浄した。
【0031】
さらに、得られたダイヤモンド微粒子1を第2槽3の40%フッ化水素酸溶液の中に投入し、約6時間放置することによりダイヤモンド微粒子1の表面酸化物を除去した。そして、再び純水槽(図示せず)の純水にダイヤモンド微粒子1を投入し、洗浄した。
【0032】
次に、得られたダイヤモンド微粒子1を、濃硫酸と20%過酸化水素水とを3:7の割合で混合した溶液の入った第3槽4に約1時間浸漬し、ダイヤモンド微粒子1の表面に薄い酸化膜を形成させた後、純水槽に浸漬して、ダイヤモンド微粒子1の表面の酸化物を水酸基に変えた後、窒素乾燥を行った。
【0033】
次に、エタノール溶媒に溶かし込んだオクタデシルビスフォスフォン酸O3H2P(CH2)18PH2O3を1mM溶かし込んだ溶液の入った第4槽5に、上記水酸基化処理を行ったダイヤモンド微粒子1を約2時間浸漬した。これにより、ダイヤモンド微粒子1の表面にオクタデシルビスフォスフォン酸単分子膜が形成された。作製されたダイヤモンド微粒子1を漉し取り、第5槽6の純エタノール溶液に投入した。
【0034】
最後に、予めダイヤモンド微粒子1を水酸基化処理した方法と同じ方法で、水酸基化処理を施したシリコン基体7(40×40×0.6mm)を、有機単分子膜で被覆されたダイヤモンド微粒子1の分散されている純エタノール溶液の入った第5槽6に投入し、約2時間放置することにより、ダイヤモンド微粒子1がシリコン基坂7表面に化学吸着した。
【0035】
このシリコン基体7の表面をフーリエ変換赤外分光法により調べたところ、CH2の対称振動2851cm-1及び非対称振動2918cm-1及びCH3の対称振動2895cm-1及び非対称振動2958cm-1に吸収が見られる。また、このシリコン基体7の表面をAFM観察した結果、直径が数百Åから0.2μmの凹凸が観察された。これらの結果より、ダイヤモンド微粒子1がシリコン基体7の表面に高密度に吸着したことが分かった。
【0036】
このダイヤモンド微粒子1が吸着したシリコン基体7を、ECRマイクロ波プラズマCVD装置内に載置した。装置内の真空引きを10-7Torrまで行った後、シリコン基体7の温度を700℃まで加熱した。次に、CVD装置内雰囲気をメタンガス3sccm、水素ガスを300sccm導入し、装置内の圧力は50Torrに保った。その後、マイクロ波プラズマを2.45GHz、1.3KWで発生させ、ダイヤモンド薄膜を6時間合成した。
【0037】
合成したダイヤモンド薄膜が形成されたシリコン基体7の表面を観察した結果、シリコン基体7の表面のダイヤモンド核発生密度は3×1011個/cm2であり、ダイヤモンド粒は互いに結合しており、完全な膜状になっていることを確認した。合成ダイヤモンドの膜厚は3μm、薄膜表面の最大粗さRmaxは0.1μmであった。また、これらの析出物についてラマン分光法を用いて解析した結果、ダイヤモンドによる鋭い1333cm-1のピークシフトを確認した。
【0038】
[実施の形態3]
粒径0.05〜0.25μmφのダイヤモンド微粒子1を、濃硫酸と20%過酸化水素水とを3:7の割合で混合した溶液の入った第1槽2に投入し、約4時間放置することにより金属、有機物等の不純物を除去する。そして、このダイヤモンド微粒子1を純水槽(図示せず)の純水で洗浄した。
【0039】
さらに、得られたダイヤモンド微粒子1を、第2槽3の40%フッ化水素酸溶液の中に投入し、約6時間放置することによりダイヤモンド微粒子1の表面酸化物を除去した。そして、再び純水槽(図示せず)の純水にダイヤモンド微粒子1を投入し洗浄した。
【0040】
次に、得られたダイヤモンド微粒子1を濃硝酸溶液の入った第3槽4に約30秒浸漬し、ダイヤモンド微粒子1表面に薄い酸化膜を形成させた後、純水に浸漬して前記酸化膜を水酸基に変えた後、窒素乾燥を行った。
【0041】
次に、エタノール溶媒に溶かし込んだオクタデシルビスカルボン酸HOOC(CH2)18COOHを1mM溶かし込んだ溶液の入った第4槽5に、上記水酸基化処理を行ったダイヤモンド微粒子1を約2時間浸漬した。これにより、ダイヤモンド微粒子1の表面にオクタデシルビスカルボン酸単分子層が形成された。作製されたダイヤモンド微粒子1を漉し取り、第5槽6の純エタノール溶液に投入した。
【0042】
最後に、予めダイヤモンド微粒子1を水酸基化処理した方法と同じ方法で水酸基化処理を施したシリコン基体7(40×40×0.6mm)をこの溶液に投入し、約2時間放置することで、ダイヤモンド微粒子1がシリコン基体7の表面に化学吸着した。このシリコン基体7の表面をフーリエ変換赤外分光法により調べたところ、CH2の対称振動2851cm-1及び非対称振動2918cm-1及びCH3の対称振動2895cm-1及び非対称振動2958cm-1に吸収が見られた。また、このシリコン基体7の表面をAFM観察した結果、粒径が数百Åから0.2μmの凹凸が観察された。これらの結果より、ダイヤモンド微粒子1がシリコン基体7の表面に選択的に吸着したことが分かった。
【0043】
このダイヤモンド微粒子1が、吸着したシリコン基体7をECRマイクロ波プラズマCVD装置内に設置した。装置内の真空引きを10-7Torrまで行った後、シリコン基体7の温度を700℃まで加熱した。
次に、装置内雰囲気をメタンガス3sccm、水素ガスを300sccm導入し、装置内の圧力は50Torrに保った。その後、マイクロ波プラズマを2.45GHz、1.3KWで発生させ、合成ダイヤモンド薄膜を形成した。
【0044】
合成ダイヤモンド薄膜形成後、シリコン基体7の表面を観察した結果、シリコン基体7の表面のダイヤモンド核発生密度は3×1011個/cm2であり、ダイヤモンド粒は互いに結合しており、完全な膜状になっていることを確認した。合成したダイヤモンドの膜厚は3μm、薄膜表面の最大粗さRmaxは0.1μmであった。また、これらの析出物についてラマン分光法を用いて解析した結果、ダイヤモンドによる鋭い1333cm-1のピークシフトを確認した。
【0045】
[実施の形態4]
粒径0.05〜0.25μmφダイヤモンド微粒子1を、濃硫酸と20%過酸化水素水とを3:7の割合で混合した溶液の入った第1槽2に投入し、約4時間放置することにより金属、有機物等の不純物を除去する。そして、このダイヤモンド微粒子1を純水槽(図示せず)の純水で洗浄した。
さらに、得られたダイヤモンド微粒子1を、第2槽3の40%フッ化水素酸溶液中に投入し、約6時間放置することによりダイヤモンド微粒子1の表面酸化物を除去した。そして、再び純水槽の純水にダイヤモンド微粒子1を投入し洗浄した。
【0046】
次に、得られたダイヤモンド微粒子1を、濃硝酸溶液の入った第3槽4に約30秒浸漬し、ダイヤモンド微粒子1の表面に薄い酸化膜を形成させた後、純水に浸漬して水酸基化処理を行った後、窒素乾燥を行った。
次に、0.02Mのドデシルビスメトキシシラン酸(OCH3)3Si(CH2)12Si(OCH3)3を20mM、6.6mMの塩酸、及び0.3Mの純水をテトラヒドロフラン溶媒に溶かし込んだ溶液とシクロへキサンを1対20の割合で混合して作製した溶液の入った第4槽5に、ダイヤモンド微粒子1を約1時間浸漬した。これにより、ダイヤモンド微粒子1の表面にドデシルビスメトキシシラン単分子層が形成された。作製されたダイヤモンド微粒子1を漉し取り、第5槽6のテトラヒドロフラン溶液に投入した。
【0047】
最後に、予めダイヤモンド微粒子1の表面を水酸基化処理した方法と同じ方法で、表面を水酸基化処理を施したシリコン基体7(40×40×0.6mm)をこの溶液に投入し、約2時間放置することで、ダイヤモンド微粒子1がシリコン基体7の表面に化学吸着した。
【0048】
このシリコン基体7の表面をフーリエ変換赤外分光法により調べたところ、CH2の対称振動2851cm-1及び非対称振動2918cm-1及びCH3の対称振動2895cm-1及び非対称振動2958cm-1に吸収が見られた。また、このシリコン基体7の表面をAFM観察した結果、直径が数百Åから0.2μmの凹凸が観察された。これらの結果より、ダイヤモンド微粒子1がシリコン基体7の表面に選択的に吸着したことが分かった。
【0049】
このダイヤモンド微粒子1の吸着したシリコン基体7を、ECRマイクロ波プラズマCVD装置内に設置した。装置内の真空引きを10-7Torrまで行った後、シリコン基体7の温度を700℃まで加熱した。次に、該装置内雰囲気をメタンガス3sccm、水素ガスを300sccm導入し、装置内の圧力は50Torrに保った。その後、マイクロ波プラズマを2.45GHz、1.3kWで発生させ、ダイヤモンド薄膜を8時間合成した。
【0050】
8時間の合成後、シリコン基体7の表面を観察した結果、シリコン基体7の表面のダイヤモンド核発生密度は3×1011個/cm2であり、ダイヤモンド粒は互いに結合しており、完全な膜状になっていることを確認した。合成ダイヤモンドの膜厚は3μm、薄膜表面の最大粗さRmaxは0.1μmであった。また、これらの析出物についてラマン分光法を用いて解析した結果、ダイヤモンドによる鋭い1333cm-1のピークシフトを確認した。
【0051】
本実施の形態では、有機単分子膜として両末端を同じ官能基を有するものを用いたが、SiCl3基、COOH基、Si(OCH2CH3)3基、Si(OCH3)3基、PH2O3基などの基であれば異なっていても構わない。
【0052】
【発明の効果】
上記のように、ダイヤモンド微粒子の表面を水酸基化処理後、有機単分子で被覆すると共に、ダイヤモンド薄膜を形成させるシリコン基体の表面を水酸基化処理して、有機単分子で表面が被覆されたダイヤモンド微粒子を、シリコン基体の表面に化学吸着させることにより、高密度でダイヤモンド微粒子を吸着させて、ダイヤモンド薄膜合成用の核を形成することができ、表面が滑らかで、大面積の欠陥のないダイヤモンド薄膜を合成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイヤモンド薄膜形成用基体の製造方法を説明するための図である。
【図2】本発明に係る有機単分子で被覆処理したダイヤモンド微粒子を吸着後のシリコン基体表面の模式図である。
【図3】本発明に係るダイヤモンド微粒子を吸着後のシリコン基体表面の赤外吸収スペクトルである。
【図4】本発明に係るダイヤモンド微粒子を吸着後のシリコン基体表面のAFM観察の結果の図である。
【符号の説明】
1 ダイヤモンド微粒子
2 第1槽
3 第2槽
4 第3槽
5 第4槽
6 第5槽
7 シリコン基体
11 ダイヤモンド微粒子
12 シリコン基体
13 有機単分子
Claims (3)
- 基体の表面を水酸基化処理する工程と、両末端にSiCl 3 基、COOH基、Si(OCH 2 CH 3 ) 3 基、Si(OCH 3 ) 3 基、PH 2 O 3 基の群から少なくとも1種以上から選択された有機単分子で表面が被覆されたダイヤモンド微粒子が分散された溶液に、前記基体を浸漬する工程とを有することを特徴とするダイヤモンド形成用基体の製造方法。
- 前記有機単分子でダイヤモンド微粒子の表面を被覆する工程は、ダイヤモンド微粒子を硝酸溶液或いは硫酸と過酸化水素水との混合液に浸漬して、前記ダイヤモンド微粒子表面を酸化する工程と、純水に浸漬することにより、前記ダイヤモンド微粒子表面を水酸基化処理する工程と、前記有機単分子を含有した溶液に前記ダイヤモンド微粒子を浸漬する工程とからなることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド形成用基体の製造方法。
- 前記水酸基化処理の工程前に、前記ダイヤモンド微粒子を硫酸と過酸化水素水との混合液に浸漬することによって、ダイヤモンド微粒子中に存在する不純物を除去する工程と、フッ化水素酸溶液に浸漬することによりダイヤモンド微粒子表面を清浄化する工程を有することを特徴とする請求項2に記載のダイヤモンド形成用基体の製造方法。
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