JPH11179437A - 曲げ加工用マンドレルと押し通し曲げ加工法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 形材の押し通し曲げ加工において、小さい半
径の曲げ加工の際の座屈や皺の発生を防止し、且つ多種
類の形材の曲げ加工を低コストで可能とする。 【構成】 形材１の内径・形状と一致した形状の棒状マ
ンドレル部１１とマンドレル先端部１２との間に、同じ
形状の複数のスライス状のコマ２０を弾性体製のカラー
２５を介して配置して棒状マンドレル部と先端部とを結
合する可撓性の連結線３０で連接して屈曲可能な数珠状
マンドレル部１３を構成する。 【効果】 棒状マンドレル部を固定金型２出口近傍に、
数珠状マンドレル部１３を可動金型に到る曲げ加工域に
配置して曲げ加工することにより、皺発生や断面変形を
効果的に防止して小さい半径の曲げ加工ができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の車両のフレ
ーム材や建築用部材或いはエクステリア部品等に用いら
れるＡｌ合金押し出し形材等の中空の形材を押し通し曲
げにより二次元または三次元的に曲げ加工する技術に関
し、特にこれらの部材を小さな曲げ半径でその断面形状
を高精度に保って曲げ加工する技術に関する。

【０００２】

【従来の技術】Ａｌ合金の押出形材等の中空の形材は構
造材その他の部材として広く用いられているが、これら
の用途に応じて２次元或いは３次元の立体形状に曲げ加
工した形状を求められることが少なくない。このため、
曲げ加工の曲率や曲げ方向に自由度のある押し通し曲げ
（マルチベンダー）が多く用いられるが、中空構造の形
材が曲げ加工に伴って断面形状が変形したり、皺が発生
することを防止するため曲げ加工に際して中空材の内側
から支持してその断面形状を保持するいわゆるマンドレ
ルが使用されてきた。これらのマンドレルは、加工対象
とする中空材の種類や曲げ加工の程度等によって使い分
けられている。

【０００３】例えば、図１に示すマンドレルは最も一般
的に使用されているもので、図１（ａ）に示すように中
空形材１の内部にマンドレル１０を固定金型の出口から
若干突出させた位置に配置して押し通し曲げを行い、固
定金型出口近傍で形材内面を支持して形材が内側に向け
て座屈する変形や皺の発生を防止し、また、曲げの外側
では形材が潰れる変形を防止する。このタイプのマンド
レルは、構造が単純なため製作が容易であり作業性も良
好であるが、一定の形状であるため、押通し曲げを行う
固定金型と可動金型との間の曲げ加工域に配置して曲げ
加工に追従して作用することはできず、小さい曲げ半径
の加工を行う場合等には、その皺の発生や断面の変形を
防止することはできなかった。

【０００４】このような欠点を解消するため、更に固定
金型と可動金型との間で形材内面を支持するマンドレル
構造として実公平５−１０９８１号公報や実開平６−４
１９２１号公報等に開示されるような、いわゆる首振り
マンドレルが用いられており、例えば図１（ｂ）に示す
ように数個のマンドレルピース１５を数珠繋ぎに構成
し、各ピース同士を自在継ぎ手となる凹凸嵌合によって
連結した可変形式のものが用いられている。首振りマン
ドレルによれば、連接された各マンドレルピースは曲げ
加工に伴ってその軸線に沿って矢印に示すように屈曲で
きるため固定金型と可動金型との間の曲げ加工域にこれ
らのマンドレルを挿入することができ、小さい曲げ半径
の加工においても曲げに伴う断面の変形を防止する効果
があるが、球状のマンドレルピース同士の間にはその連
結構造上隙間があり、この箇所での形材との接触が保た
れないため形材の皺の発生を防止できず、曲げ形状も連
続した滑らかな曲線とならない。

【０００５】首振りマンドレルとしては、更にこれらの
マンドレルピースの間の間隔を狭くする構造が提案さ
れ、例えば、実開平６−４１９２１号公報記載のもの
は、首振りマンドレルのマンドレルピースを図１（ａ）
の球状のものから自在継ぎ手に円筒リング状のプラグを
嵌合したものとして中空材内面の支持面を広くしてその
間隔を小さくしている。また、特公昭６３−２８６９３
号公報には、セグメント状のマンドレルピースをクサビ
材に嵌合すると共にクサビ材をワイヤーケーブルを通し
た円筒又は球体に被嵌した構造が記載されている。しか
しながら、これらは形材が曲げ形状に沿う形状の金型に
沿って曲げられる回転引き曲げ等に関するもので曲げ形
状も単純な一定の曲げ形状であるから、これらのマンド
レルの作用は曲げに際して形材が潰れる等の変形を防止
するためその内側から支持すれば足りるのであって、中
空材の曲げにおいて従来より行われていた砂等を充填す
るものと変わりはない。これに対して、押し通し曲げに
おいては、曲げ加工域となる固定金型と可動金型との間
で曲げと共に圧縮力が働いて、これが形材の座屈や皺発
生の原因となり、しかも曲げ加工の曲率や曲げの方向も
曲げ加工の進行と共に立体的に変わるためこれら従来の
マンドレルでは、形材の座屈や皺の発生を効果的に防止
した曲げ加工はできない。また、これらの構造は形材内
面を支持するマンドレルピースの連接構造が複雑であ
り、マンドレルピースは曲げ加工する形材の種別や断面
形状に合わせて用意する必要があるため加工コストの非
常に高いものとなる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
問題を解消すべく案出されたものであり、押し通し曲げ
加工において、小さな曲げ半径で曲げ加工される形材の
座屈や皺の発生を防止し、また製造が容易でコストを低
減し且つ取扱いが容易で作業性の優れた押し通し曲げ加
工用マンドレルの提供及びこれらのマンドレルを用いた
形材の座屈や皺発生のない小さい半径の曲げ加工に適し
た曲げ加工方法を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、その目的を達
成するため、曲げようとする形材の内径・形状と一致し
た形状の棒状マンドレル部とマンドレル先端部との間
に、同じく形材の内径・形状と一致した形状を有する複
数のスライス状のコマを変形可能な弾性体製のカラーを
介して配置して棒状マンドレル部と先端部とを結合する
可撓性の連結線で連接して屈曲可能な数珠状マンドレル
部を構成し、マンドレルを固定するロッドを棒状マンド
レル部に設けてなる押し通し曲げ加工用マンドレルであ
り、また、上記マンドレル先端部と棒状マンドレル部と
の間にコマを挿通する線状復元バネを設けてなるもので
ある。

【０００８】更に、棒状マンドレル部とマンドレル先端
部との間に複数のスライス状のコマを配置して屈曲可能
な数珠状マンドレル部を構成したマンドレルを用いて曲
げ加工する押し通し曲げにおいて、棒状マンドレル部先
端を固定金型出口又はそれより少し突出して配設し、先
端部に接するコマは少なくとも可動金型内に至るように
して曲げ加工する押し通し曲げ加工法である。

【０００９】

【作用】上記請求項１記載のマンドレルは、棒状マンド
レル部が、固定金型側に配置され曲げ加工しようとする
形材の内径・形状に一致する一定形状を保つため、固定
金型出口近傍の曲げ加工に際して曲げと圧縮力の集中す
る領域で形材内面から強固に支持することができ、断面
形状の変形に対して強い拘束力を発揮して座屈や皺の発
生を防止することができる。また、数珠状マンドレル部
は曲げ加工に対応して曲がることにより曲げ領域の形材
内面に密接して均一に支持することができるため、固定
金型と可動金型との間の更に曲げ加工の加わる領域での
皺の発生や断面形状の変形を抑制することができる。そ
して、上記の先端部、コマ、カラー及び棒状マンドレル
部を可撓性の連結線で連接してなるマンドレルの簡単な
構造は、種々の形材の曲げ加工に対応するマンドレルを
安価に製造可能であって、曲げ加工のコストを低減する
ことができる。また、上記の線状復元バネは、曲げ加工
後に形材から抜き出した状態でマンドレルの形状を直状
に復元し、次の曲げ加工のための形材への挿入配設作業
を容易とする。

【００１０】更に、第３項記載の曲げ加工方法は、曲げ
と圧縮力の集中する固定金型出口近傍の形材内面を形材
の内面形状を保つ棒状マンドレル部で支持して形材の座
屈及び皺発生を有効に防止し、固定金型から可動金型に
到る曲げ領域で形材内面を屈曲可能な数珠状マンドレル
部で密接支持せしめてその曲げによる皺発生や断面形状
の変形を防止するものであり、より曲率半径の小さい曲
げ加工を形材の断面形状を保持して滑らかな曲線に沿っ
た形状で行うことを可能とするものである。

【００１１】

【発明の実施の態様】図２は、Ａｌ合金の押出し形材等
の中空被加工材１内に本発明のマンドレル１０を配置し
て、固定金型２から可動金型３に向けて該形材を押し通
して両金型の間の間隔と角度で決まる曲げ曲線に沿って
曲げ加工する状態を示す。マンドレル１０は、ロッド５
に固定された棒状マンドレル部１１とマンドレル先端部
１２及びその間の複数個のコマ２０を連ねた数珠状マン
ドレル部１３とからなる。コマ２０はスライスされた片
状の部材で、棒状マンドレル部と共に形材内面の形状に
沿った外形形状を有し、形材内面を支持して加工の際の
断面形状の変形を拘束するため硬質の材料からなる。本
実施例にあっては、コマ２０、棒状マンドレル部１１、
マンドレル先端部１２にはアセタール・コポリマーより
なるジュラコン（商標名）を用いたが同様の他の材料で
もよい。

【００１２】コマ２０同士及び棒状マンドレル部とマン
ドレル先端部の間には弾力性のある材料からなるカラー
２５を配置し、ワイヤーロープ等からなる可撓性の連結
線３０をコマ及びカラーの中心部に設けた孔に通して連
接し、該ロープを先端部及び棒状マンドレル部に固定し
て弾力性のあるカラーを介して屈曲自在な数珠状マンド
レル部１３を構成する。このため、マンドレル１０全体
は、一定形状の棒状マンドレル部と屈曲自在な数珠状マ
ンドレル部との２つの部分からなる。なお、本実施例に
あっては、カラー２５を軟質塩化ビニール樹脂により形
成した。

【００１３】図３に本発明のマンドレルの詳細な構造を
示す。先端部１２と棒状マンドレル部１１との間のスラ
イス状のコマ２０は弾性材料からなるカラー２５を介し
て密に配置され、これらの中心部に設けた通孔を通る鋼
製ワイヤロープ等の強靭な可撓性のある材料製の連結線
３０で一体に連結されているため、数珠状マンドレル部
１３は曲げ加工域でカラーの弾性によって滑らかに曲が
り、曲げ形状に沿うことができる。連結線３０は先端部
１２と棒状マンドレル部１１とでネジ孔４０を挿通する
止めネジ４１により締め付け固定され、コマ２０を弾性
体からなるカラー２５を介して連ねた数珠状マンドレル
部１３を屈曲自在に構成する。先端部、コマ及び棒状マ
ンドレル部に挿通孔を設けて、ピアノ線等の線状復元バ
ネ３５をこれらに摺動自在に配置することにより、曲げ
加工後曲げ加工された形材から取り出したマンドレルの
形状を直状に復元可能とし、次の曲げ加工に際して形材
内へのマンドレル１０の挿入配設作業を容易に行うこと
ができる。

【００１４】本発明の対象とする押し通し曲げにおいて
は、固定金型出口近傍で曲げ曲線の内側になる中空形材
内方に向けて曲げと圧縮力が集中するため座屈や皺を発
生し、また、金型間では更に曲げ変形を受けるに従って
断面の変形や皺を生じる。本発明のマンドレルは、図２
に示すようにその基部の棒状マンドレル部が固定金型の
出口近傍に配置されており、硬質の材料で形成されてい
るため金型出口近傍で形材内面から受ける変形力に対向
してその形状を保って形材内面を密接支持することがで
きる。このため、棒状マンドレル部は形材の断面形状の
変形に対して強固に拘束作用を発揮して座屈や皺発生を
効果的に抑制することができる。また、固定金型と可動
金型との間には数珠状マンドレル部１３が配置されてい
て曲げ曲線に沿って曲がり、形材内面を均一一様に支持
すると共に、皺等の発生する曲げの内側では各コマの間
隔が狭く密接して連続した支持面を形成するため、その
強固な拘束力により断面変形に対して効果的に抑制し、
皺のない連続した滑らかな曲げ曲線に沿う曲げ加工を可
能とする。

【００１５】本発明は、このように固定金型出口近傍に
おいては、棒状マンドレルと同様の強い拘束力による座
屈や皺の発生防止効果を発揮し、一方金型の間の曲げ領
域では数珠状マンドレルが首振りマンドレルと同様に曲
げ曲線に沿って曲がり、しかもそのマンドレルピースの
間隔が狭く且つ滑らかに曲線に沿って曲がることができ
るため、従来の首振りマンドレルよりも均一一様に形材
内面を支持拘束することにより、曲げ加工された形材
は、その断面形状を厳密に維持してしかも滑らかな曲線
に沿う曲げ成形がされる。特に、曲げの内側ではコマの
間隔が狭められて連続した支持面を形成するため、座屈
や皺の発生に対して効果的にその拘束作用を発揮でき
る。

【００１６】本発明のマンドレルにおいては、マンドレ
ル先端部、コマ及び棒状マンドレル部は形材内面に直接
接触すると共に支持拘束するため、前述のようにアセタ
ール・コポリマー（熱可塑性樹脂）等のような比較的硬
質の材料で構成するが、被加工材の材質や肉厚等の曲げ
加工の際の負荷によっても適宜選択すればよい。カラー
は軟質塩化ビニールのようなコマに比較して弾性に富む
材料で構成されるが、曲げの負荷に対してコマを滑らか
な曲線に沿って向きを変えるため、加工条件に応じてそ
の材質を選択する。また、コマやカラーの幅は、曲げ半
径の大きさや維持すべき曲げ曲線の滑らかさ、或いは曲
げ加工の負荷等に応じて選択することができる。曲げ半
径が大きい場合等にはコマやカラーの幅も比較的広くし
ても皺の発生を抑制した滑らかな曲げ成形ができるが、
曲げ半径が小さい場合等には、コマやカラーの幅をなる
べく小さくし、コマの間隔を小さく且つ密にすることに
より形材内面を均一且つ密に支持拘束して、断面形状の
変形のない滑らかな曲線の曲げ加工を行うことができ
る。

【００１７】本発明のマンドレルは、このように曲げの
加工条件の変更に対して、コマやカラーの幅を変えてこ
れらを交換し、組替えることにより容易に対応すること
ができる。また、これらマンドレルの構造が簡単であ
り、断面形状や寸法の異なる形材の曲げ加工に対して
も、コマやカラー等の構成部品の形状、構造が単純なた
めその製造は容易でコストも安くできるものであり、多
種多様な形材に合わせて上記加工条件に応じたマンドレ
ルを品揃えすることができ、総じて曲げ加工のコストも
低減できる。

【００１８】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、押し通し曲げによるＡｌ合金押出し形材等の中空の
形材の曲げ加工を、皺の発生を防止して正確な断面形状
を保ち、しかも小さい曲げ半径の曲げ加工を容易に行う
ことができるものであり、これらの形材の曲げ加工を、
コストを低減し且つ高い生産性を発揮することができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 従来のマンドレル：棒状マンドレル（ａ）、
数珠状首振りマンドレル（ｂ）

【図２】 本発明のマンドレルの構造及び加工態様

【図３】 本発明マンドレルの構造詳細

【符号の説明】

１：形材 ２：固定金型 ３：可動金型 ５：ロ
ッド １０：マンドレル １１：棒状マンドレル部
１２：マンドレル先端部 １３：数珠状マンドレ
ル部 １５：数珠状マンドレル ２０：コマ ２
５：カラー ３０：連結線 ３５：線状復元バネ
４０：ネジ孔 ４１：止めネジ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 樋野 治道 静岡県庵原郡蒲原町蒲原１丁目34番１号 日本軽金属株式会社グループ技術センター 内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 曲げようとする形材の内径・形状と一致
   した形状の棒状マンドレル部とマンドレル先端部との間
   に、同じく形材の内径・形状と一致した形状を有する複
   数のスライス状のコマを変形可能な弾性体製のカラーを
   介して配置して棒状マンドレル部と先端部とを結合する
   可撓性の連結線で連接して屈曲可能な数珠状マンドレル
   部を構成し、マンドレルを固定するロッドを棒状マンド
   レル部に設けてなる押し通し曲げ加工用マンドレル。
2. 【請求項２】 上記先端部と棒状マンドレル部との間に
   コマを挿通する線状復元バネを設けてなる請求項１記載
   の押し通し曲げ加工用マンドレル。
3. 【請求項３】 棒状マンドレル部とマンドレル先端部と
   の間に複数のスライス状のコマを配置して屈曲可能な数
   珠状マンドレル部を構成したマンドレルを用いて曲げ加
   工する押し通し曲げにおいて、 棒状マンドレル部先端を固定金型出口又はそれより少し
   突出して配設し、先端部に接するコマは少なくとも可動
   金型内に至るようにして曲げ加工する押し通し曲げ加工
   法。