JPH11170792A - 転写方法 - Google Patents

転写方法

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JPH11170792A
JPH11170792A JP35202097A JP35202097A JPH11170792A JP H11170792 A JPH11170792 A JP H11170792A JP 35202097 A JP35202097 A JP 35202097A JP 35202097 A JP35202097 A JP 35202097A JP H11170792 A JPH11170792 A JP H11170792A
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JP35202097A
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Reiko Suga
玲子 菅
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Dai Nippon Printing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 転写シートによる装飾で化粧材等の転写製品
を得る際に、被転写基材に予め防水用の下地塗装をする
のを省略する。 【解決手段】 防水層4を、装飾層3等からなる転写層
2の最外層として設けた転写シートSにより、被転写基
材Bに防水層を含む転写層2を転写して化粧板等の転写
製品Dを得る。また、防水層は反硬化状態で転写しても
良い。また、特に凹凸表面の被転写基材の場合には、被
転写基材の凹凸表面に、転写シートの転写層側を対向さ
せ、固体粒子を転写層の支持体側に衝突させ、その衝突
圧を転写圧として利用して、転写シートを基材凹凸表面
に圧接した後、支持体1を剥離して化粧板等の転写製品
を得る様にすると良い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、住宅の外装及び内
装材、家具等に用いる化粧材等の転写製品を製造する為
の転写方法に関する。特に被転写基材への防水目的の下
地塗装が不要となり、しかも被転写基材がALC板等と
多孔性の場合に適し、特に外装用途等に適した化粧材等
の転写製品を効率良く製造できる転写方法に関する。ま
た更に、被転写基材が凹凸表面の場合にも適し、意匠性
の高い化粧材等の転写製品を効率良く製造できる転写方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、化粧材の基材面に直刷り法、ラミ
ネート法、転写法等により絵柄等の装飾を施した化粧材
が種々の用途で使用されている。この場合、例えば外装
用途等で、基材内部からの水分やアルカリ分等の流出成
分の滲み出しの遮断、或いは逆に外部からの水分等の滲
み込みの遮断、或いは基材表面の目止め等が要求される
場合、予め基材に防水層や目止層、或いはこれら両機能
を持つ防水目止層を下地塗装していた。例えば特公平7
−113258号公報では、刷毛塗りやスプレー塗装に
よって防水目止層を基材側に下地塗装してから、その上
に転写ローラにより転写シートからの絵柄を転写してい
た。
【0003】一方、絵柄装飾は、基材の表面が平面なら
ば容易にできるが、凹凸表面に対しては格別の工夫によ
り絵柄装飾を施す事が必要であった。例えば、窓枠、面
縁材等の柱状で基材装飾面が二次元的凹凸〔円柱の様に
一方向(母線、或いは高さ方向に直交する方向)にのみ
曲率を有する形状〕の場合に適用できる曲面装飾技術の
一つが、特公昭61−5895号公報に提案されてい
る。すなわち、同号公報の技術はラミネート法による表
面装飾法であり、片面に接着剤を塗布した表装シートを
供給し、一方基材を表装シートの供給速度と同調した速
度で水平に搬送し、併設した多数の押え治具にて表装シ
ートの端部が貼着されない状態を維持しつつ表装シート
の接着剤塗布面側を基材に対して小面積毎に段階的に押
圧し、表装シートを基材面に加熱貼着するものである。
なお、この方法はラッピング加工法と言われている。ま
た、表面凹凸がエンボス形状等の三次元的凹凸(すなわ
ち、半球面の様に2方向に曲率を有する形状)の場合に
適用できる曲面装飾技術としては、例えば特開平5−1
39097号公報に提案されている。すなわち、同号公
報の技術は転写法による表面装飾法であり、転写シート
の支持体として熱可塑性樹脂フィルムを用い、該支持体
上に剥離層、絵柄層、及び接着層を順次設けた構成の転
写シートを、凹凸表面を有する基材上に設置し、支持体
の裏面からゴム硬度60°以下のゴム製の熱ローラで押
圧して、絵柄を転写することによって化粧材を得るもの
である。また、支持体と剥離層間に転写時の熱で発泡す
る発泡層を設け、この発泡も利用して基材の凹凸表面に
追従させようとするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、被転写
基材に下地塗装が必要な場合、上記特公平7−1132
58号公報に開示の方法では、絵柄等の転写工程の他
に、被転写基材への下地塗装工程も必要で、工程が2工
程となり作業能率上好ましくない。特に、被転写基材が
ALC板等の多孔性の場合では、塗料が乾燥固化前に滲
み込み、塗膜厚を一定にコントロールすることが困難で
あった。しかも、下地塗装を厚塗りする場合は、その乾
燥に長時間を要するので、絵柄等の転写工程と下地塗装
工程とは、インラインで同時処理が出来なかった。ま
た、基材面が平面ならば問題無いが、基材面が凹凸表面
の場合には、下地塗装が固化するまでに塗料が凸部から
凹部へ流入して、塗膜の膜厚が不均一になる傾向もあっ
た。
【0005】一方、前記特開平5−139097号公報
では、防水層や目止層となる下地塗装無しで転写してい
るが、その場合には基材内部からの水分等の滲み出しや
外部から基材内部への水分等の滲み込みの遮断性能、或
いは基材表面の目止め性能等が不充分な化粧材しか得ら
れなかった。また、絵柄装飾においては、上記の様な従
来の方法では、特公昭61−5895号公報に開示の技
術では、二次元的曲面までしか対応できず、また、特開
平5−139097号公報が提案する技術では、三次元
的曲面も対応できるが、基本的に回転する熱ローラのゴ
ムによる弾性変形を利用して表面凹凸に追従させる為
に、浅いエンボス形状は良いとしても大きな表面凹凸に
は適用できない。その上、被転写基材の凹凸の隅角部に
よって軟質のゴムローラが損耗し易い。また、転写シー
トに発泡層を設ける構成では、転写シートが複雑高価に
なり過ぎる。また、全体として平板状の基材に限定され
るといった問題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、上記課題を解決
すべく、本発明では、支持体上に、転写層として装飾層
を設けた転写シートによって、被転写基材に転写層を転
写する転写方法において、被転写基材内部からの水分等
の滲み出しの遮断や、外部からの水分等の滲み込みの遮
断を少なくとも目的とする防水層として、(A)(メ
タ)アクリル酸アルキルエステル単独重合体系エマルシ
ョン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル−スチレン
共重合体系エマルション、(メタ)アクリル酸アルキル
エステル−酢酸ビニル共重合体系エマルション、及び、
セメントフィラーエマルションから選んだエマルション
による塗膜、または、(B)アクリル系樹脂、アクリル
−ウレタン系樹脂、及び塩化ビニル系樹脂から選んだ樹
脂を用いた有機溶剤系塗料による塗膜、を転写層の最外
層として設けた転写シートにより、防水層を含む転写層
を被転写基材に転写する様にした。その結果、被転写基
材に下地塗装を施すこと無く、装飾層等を転写すると同
時に、防水層も被転写基材に転写で形成できる様にし
た。従って、下地塗装工程やその為の下地塗装設備が不
要になり、塗料飛散が無い為に塗料使用量を大幅に減ら
せる他、作業環境の保全にもなる。また、設備的にも簡
略化できる。更に、被転写基材が凹凸表面の場合でも、
直接塗装で塗料が凸部から凹部へ流入し、塗膜厚が不均
一になっていた事が解消する。なお、被転写基材が多孔
質の場合には、転写層の最外層は防水層としてだけで無
く、防水目止層としても使用できる。
【0007】また、第2の発明は上記発明において、防
水層が半硬化状態、半乾燥状態のいずれか一方又は両方
の未完了状態で、転写シートを被転写基材に圧接して転
写する様にして、防水層の被転写基材への密着を向上さ
せた。
【0008】また、被転写基材が段差の小さい凹凸表面
の場合には、転写圧の印加方法は従来のゴム製転写ロー
ラ等でも良いが、第3の発明では、上記第1又は第2の
発明において、転写圧に固体粒子衝突圧を利用すること
で、凹凸表面への転写に優れた曲面転写方法となる。即
ち、凹凸表面を有する被転写基材の凹凸表面側に、転写
シートの転写層側を対向させ、該転写シートの支持体側
に固体粒子を衝突させ、その衝突圧を利用して、被転写
基材の凹凸表面への転写シートの圧接を行い、転写層が
被転写基材に接着後、転写シートの支持体を剥離除去す
ることで、転写層を被転写基材に転写する様にした。こ
の転写方法によれば、被転写基材の表面凹凸が大きい場
合にまでも、その凹部内部も含めて転写できる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
の転写方法を詳述する。図1の如く、本発明の転写方法
では、支持体1と転写層2とからなる転写シートSにお
いて、転写層2は少なくとも装飾層3の他に、転写層の
最外層として防水層4を設けたものを使用する。そし
て、上記転写シートSの転写にて、被転写基材B上に防
水層4を介して装飾層3が積層された転写製品として化
粧材D等が得られる。(概念図である同図では、被転写
基材Bは、実際の被転写面が平面、凹凸面に拘らず、平
面として表している。)転写圧には、被転写基材表面が
平面乃至は凹凸が少ない場合は弾性体ローラによるロー
ラ圧を用いても良いが、ローラ圧では不可能な凹凸表面
の場合には、新規な転写圧の印加方法である固体粒子衝
突圧を用いると良い。後述する様に、固体粒子は噴出器
から噴出させて転写シート支持体側に衝突させる。噴出
器から噴出させるには、気体や液体等の流体(固体粒子
加速流体)と共に噴出させたり、或いは羽根車等で加速
して噴出させる。
【0010】〔被転写基材〕被転写基材の材質は任意で
あり、例えば、板材であれば、ケイ酸カルシウム板、中
空押し出しセメント板等の押し出しセメント板、スラグ
セメント板、ALC(軽量気泡コンクリート)板、GR
C(硝子繊維強化コンクリート)板、パルプセメント
板、スレート板等の非陶磁器窯業系板、木材単板や木材
合板、パーティクルボード、集成材、木質中密度繊維板
(MDF)等の木質板、また、鉄、アルミニウム、銅等
の金属板、陶磁器(陶磁器板等)や土器等のセラミック
ス、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、
フェノール樹脂等から成る発泡樹脂成形品等でも良い。
なお、本発明では防水層は装飾層等と同時に転写形成す
るので、被転写基材には予め設ける必要はない。
【0011】被転写基材としては、被転写面が平坦な平
面でももちろん適用できるが、転写圧に固体粒子衝突圧
を用いる場合には、被転写面が凹凸表面であり、特にそ
の凹凸が三次元的である被転写基材に真価を発揮する。
従来の回転接触する押さえ治具(前述の特公昭61−5
895号公報)や、ゴム製の転写ローラ(前述の特開平
5−139097号公報参照)では、その回転軸による
方向性を本質的に有しているために、適用できる表面凹
凸形状が制約される。即ち前者では、1軸方向にのみ曲
率を有する二次元的凹凸に限定され、また、後者では2
軸方向に曲率を有する三次元的凹凸への転写が可能でも
その三次元形状は任意の方向に均質に適用できない。例
えば、木目導管柄の長手方向は、転写シートの送り方向
に平行にしないと、導管凹部には旨く転写できない。し
かも、後者は基材形状は平板状に事実上限定され、それ
以外は基材形状毎にその都度合わせた特殊形状の転写ロ
ーラとでもしない限り不可能である。ところが、流体的
に振る舞うことができる固体粒子群の衝突圧を利用する
と、表面凹凸の三次元的形状に対して圧力印加領域の面
的な方向性を本質的に持たない。(この方向性とは、圧
力が印加される被転写基材上のポイントの時間的位置変
化の方向のことである。)従って、転写シートや被転写
基材の送り方向(転写圧印加方向)に凹凸がある形状を
持つ被転写基材でも構わない。すなわち、送り方向のみ
又は幅方向のみ等と一方向にのみ凹凸がある二次元的凹
凸、送り方向及び幅方向の両方等と2方向に凹凸がある
三次元的凹凸にも適用できることを意味する。なお、固
体粒子群の衝突圧が方向性を持たない点は、枚葉の転写
シートを被転写基材上に載置し一つずつ圧接密着する様
に、固体粒子を噴出する噴出器を移動、又は噴出器固定
で転写シートと被転写基材とを移動させて、衝突圧が印
加される領域が移動していく様子を考えれば、容易に理
解できる。
【0012】また、被転写基材は全体として(包絡面形
状が)平板状の板材だけでなく、断面が円弧状に凸又は
凹に送り方向又は幅方向に湾曲した二次元的凹凸を有す
る基材でも良く、またその湾曲面にさらに細かい三次元
的な表面凹凸があってもよい。なお、本発明では、被転
写基材の円弧状等の二次元的な凹凸に対して、それを例
えば幅方向として、或いは送り方向として転写するかは
作業性等を考慮して任意にできる。また、大柄な凹凸に
重畳して微細な凹凸を有する凹凸表面の被転写基材、或
いは凹凸表面の凹部底部や凹部内側面に転写すべき面を
有する被転写基材も可能である。前記大柄な凹凸と微細
な凹凸とは、例えば図2の如く被転写基材の凹凸が大柄
な凹凸401、402とその凸部402上にある微細な
凹凸403とからなるもので、大柄の凹凸形状は段差が
1〜10mm、凹部の幅が1〜10mm、凸部の幅が5
mm以上のもので構成されるものであり、微細な凹凸形
状は、段差及び幅ともに大柄な凹凸形状よりも小さく、
具体的には段差が0.1〜5mm程度、凹部の幅及び凸
部の幅が0.1mm以上で、大柄な凹凸形状の凸部の幅
の1/2未満程度である。大柄な凹凸と微細な凹凸との
組み合わせの凹凸から成り、且つ三次元的な表面凹凸を
持つ化粧材の凹凸模様の具体例としては、例えば、大柄
な凹凸として目地、溝等を有するタイル、煉瓦、石等の
二次元配列模様を有し、その上に微細な凹凸としてスタ
ッコ調、リシン調等の吹き付け塗装面の凹凸模様、花崗
岩の劈開面やトラバーチン大理石板等の石材表面の凹凸
等の石目調凹凸模様、或いは大柄な凹凸模様として目
地、溝、簓、サネ等を有する羽目板模様、浮造木目板模
様を有し、その上に微細凹凸として導管溝、浮出した年
輪、ヘアライン等を有する木目調の凹凸模様が挙げられ
る。なお、凹凸面を構成する各面は、平面のみから、曲
面のみらか、或いは平面と曲面の組み合わせと任意であ
る。従って、本発明の被転写基材上の曲面とは、断面が
下駄の歯形の様に複数の平面のみから構成される曲面を
持たない凹凸面も意味する。また、本発明でいう曲率と
は、立方体の辺或いは頂点の周辺の様に角張っている曲
率無限大(曲率半径=0)の場合も包含する。なお、被
転写基材表面を所望の凹凸とするには、プレス加工、エ
ンボス加工、押し出し加工、切削加工、成形加工等によ
れば良い。
【0013】〔転写シート〕図1の如く、転写シートS
は支持体1と転写移行する転写層2とから成り、該転写
層2は少なくとも装飾層3と(転写シートの形態での)
最外層となる防水層4とから成る。なお、衝突圧印加の
為の固体粒子加速流体が液体の場合は、支持体や転写層
には、該液体に対して不溶性の物を用いる。例えば、液
体が水であれば、水溶性樹脂等を除けば、一般の転写シ
ートとして使用している材料から下記に従い適宜選択使
用すれば良い。但し、水又は水溶液の使用は防水層がエ
マルションでは無く、有機溶剤系塗料による場合が良
い。
【0014】(支持体)上記支持体には、被転写基材の
転写すべき被転写面が平面的表面であったり、或いは二
次元的凹凸表面までであれば、延伸性が無い紙(但し、
固体粒子加速流体が液体の場合は、該液体に対して不溶
性のものを選ぶ)等でも良い。しかし、被転写面が凹凸
表面を成し、その凹部内部にまで転写したり、被転写面
が非平面の三次元的凹凸表面の場合は、少なくとも転写
時には延伸性の有る支持体を用いる。(この様な場合の
転写は、特に固体粒子衝突圧による転写が好ましい。)
転写シート全体の延伸性は、主に支持体の延伸性に支配
される。延伸性のある支持体としては、従来公知の熱可
塑性樹脂フィルムの他に、室温でも延伸するゴム膜も使
用できる。熱可塑性樹脂フィルムの場合、装飾層等の転
写層形成時には延伸性が殆どなく、転写時には、加熱に
より充分な延伸性を発現し、且つ冷却後は変形した形状
を保持し続け、弾性による形状の復元を生じない転写シ
ートとして、従来公知の通常の転写シート同様に容易
に、本発明で用い得る転写シートは用意出来る。支持体
の具体例としては、延伸性の点で、従来多用されている
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムでも、表
面凹凸形状次第で、加熱条件、衝突圧条件等の設定によ
って、必要充分な延伸性を発現させることができる。も
ちろん、被転写面が平面ならば、延伸性を発現させずに
使用できる。ただ、より低温・低圧で延伸性が発現し易
い好ましい支持体としては、例えば、エチレン・テレフ
タレート・イソフタレート共重合体ポリエステル、ポリ
ブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹
脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテ
ン、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体等のポ
リオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、
アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、或いは天然ゴム、合成
ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系
熱可塑性エラストマー等を単体又は混合物で、単層又は
異種の複層とした樹脂フィルムを用いることがてきる。
これら樹脂フィルムは低延伸又は無延伸の物が好まし
い。例えば、具体的にはポリプロピレン系熱可塑性エラ
ストマーフィルムは、延伸特性に優れ且つ廃棄燃焼時に
塩酸ガスを発生せず環境対策的にも好ましい支持体の一
つである。支持体の厚さは、通常20〜200μmであ
る。
【0015】なお、転写圧に固体粒子衝突圧を用い、且
つ固体粒子加速流体として液体を用いる場合は、転写時
に接する該液体に対して、膨潤はするが不溶である樹脂
フィルムも使用できる。この様な膨潤性且つ不溶性樹脂
フィルムの例としては、液体として水又は水溶液を用い
る場合には、特開昭54−150208号公報、特公昭
61−3276号公報等に開示される様な、ポリビニル
アルコール系フィルムであって、平均重合度300〜3
000、鹸化度65〜97mol%、厚さ20〜200
μmのフィルムが代表的なものである。
【0016】また、支持体には必要に応じ、その転写層
側に転写層との剥離性を向上させる為、離型層を設けて
も良い。この離型層は支持体を剥離時に支持体と共に転
写層から剥離除去される。離型層としては、例えば、シ
リコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタ
ン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス等の単体又はこ
れらを含む混合物が用いられる。
【0017】また、転写層に接する側の支持体面に凹凸
模様を設ければ、転写後の転写層表面に凹凸模様を賦形
することもできる。凹凸模様は、例えば、砂目、梨地、
ヘアライン、万線状溝、花崗岩の劈開面の凹凸模様、木
目導管溝、木目年輪模様、布目の表面テクスチュア、皮
絞、文字、幾何学模様等である。なお、凹凸模様の形成
は、支持体の樹脂シートに対して、熱プレスによるエン
ボス加工、サンドブラスト加工、ヘアライン加工をした
り、或いは支持体に、離型性の有る樹脂をバインダーと
するインキ(2液硬化ウレタン、シリコーン樹脂、メラ
ミン樹脂、紫外線又は電子線で架橋する多官能アクリレ
ート又はメタクリレートのモノマー又はプレポリマー等
からなる)を用いて所望の凹凸模様に、シルクスクリー
ン印刷等で盛り上げ印刷して賦形層を設け、賦形層を有
する支持体とする方法等がある。なお、賦形層は上記離
型層の機能を有する。
【0018】(転写層:装飾層、剥離層)転写層は、装
飾層及び防水層以外に、更に適宜、剥離層等も構成要素
とすることもある。装飾層はグラビア印刷、シルクスク
リーン印刷、オフセット印刷等の従来公知の方法、材料
で絵柄等を印刷した絵柄層、アルミニウム、クロム、
金、銀等の金属を公知の蒸着法等を用いて部分的或いは
全面に形成した金属薄膜層等であり、用途に合わせたも
のを用いる。絵柄としては、被転写基材の表面凹凸等に
合わせて、木目模様、石目模様、布目模様、タイル調模
様、煉瓦調模様、皮絞模様、文字、幾何学模様、全面ベ
タ等を用いる。なお、絵柄層用インキは、バインダー等
からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これに適宜
加える各種添加剤からなる。バンイダーには、アクリル
樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル
樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹
脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いる。着色剤の
顔料としては、チタン白、カーボンブラック、弁柄、黄
鉛、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリド
ン、イソインドリノン、フタロシアニンブルー等の有機
顔料を用いる。また、剥離層を、支持体乃至は離型層と
装飾層との間の剥離性を調整する為、また、転写後の装
飾層の表面保護の為等に、これら層間に設けるのは、従
来公知の転写シートと同様である。剥離層には、例え
ば、上記絵柄層用インキのバインダーに用いる樹脂等が
用いられる。なお、この剥離層は転写時に装飾層と共に
被転写基材側に転写され、装飾層の表面を被覆する。ま
た、被転写基材表面と転写シートとの間に抱き込まれて
残留する空気を抜き易くする為に、必要に応じて転写シ
ート全面に転写シート全層を貫通する小孔を多数穿設し
ても良い。
【0019】(転写層:防水層)防水層4は、被転写基
材内部からの水分、アルカリ分、可塑剤等の流出成分の
滲み出しの遮断或いは外部からの水分等の滲み込み防止
の機能を少なくとも目的する層である。防水層は、転写
層の最外層として設けておき、転写シートから被転写基
材に転写して、しかもこの防水層で転写層を被転写基材
面に密着固定させる。また、防水層は被転写基材との接
着機能を有することは当然として、この他、着色(装
飾)や被転写基材面の隠蔽機能を持たせてもよい。防水
層を着色層とすれば、被転写基材の凹部にまで転写する
ことで、被転写基材の目地部分の塗装を省略することも
できる。そして、本発明の転写方法では、この様な防水
層付きの転写シートを用いる事によって、装飾層等を転
写すると同時に、防水層も被転写基材に転写形成できる
効果が得られる。従って、下地塗装工程やその為の下地
塗装設備が不要になり、塗料飛散が無い為に塗料使用量
を大幅に減らせる他、作業環境の保全効果も得られる。
また、設備的にも簡略化できる。更に、被転写基材が凹
凸表面の場合でも、従来は直接塗装で塗料が凸部から凹
部へ流入し、塗膜厚が不均一になっていた事を解消で
き、下地塗装厚の不均一化によって転写による装飾が損
なわれる事もない。なお、防水層は、少なくとも上記機
能を有する層であるが、この他の機能を兼ね備えていて
も良い。例えば、被転写基材表面の目止め。即ち、被
転写基材表面の凹凸を充填して表面を平滑化したり、被
転写基材内部の表面近傍の多孔質の孔内の充填。被転
写基材の伸縮時又は外力による応力の吸収・緩和等の機
能である。例えば、被転写基材がALC板等で多孔質の
場合には、本発明における防水層は、防水目止層として
機能する層として使用できる。しかし、被転写基材が多
孔質でなく目止が不要であれば、転写層の最外層として
転写する防水層自体がたとえ防水目止層としての機能を
有していても、実際に用いる機能は防水層としてであ
る。この点から、本発明では、転写層の最外層が最低限
備えるべき機能によって防水層と称してある。なお、目
止層(防水目止層)としても使用すれば、従来、被転写
基材表面を平滑面とする為に行っていた、サンディング
加工等の平滑化処理を省く事もできる効果も得られる。
【0020】防水層は転写層の最外層となるので、転写
シートを巻取等で保管時にブロッキングしない様に、室
温では固体で接着性・粘着性がなく、転写時は加熱によ
り軟化して接着力を発現するものが好ましい(後述セメ
ントフィラーエマルションの場合を除く)。なお、室温
では流動性があって接着性・粘着性が有り、室温で流動
状態の組成物の塗工により、転写シートに転写時にイン
ラインで防水層を設けて、この未乾燥等の未完了状態の
防水層を有する転写シートを用いて、転写することも可
能である(後述セメントフィラーエマルションの場
合)。但し、いずれの場合ににしろ、被転写基材に対す
る下地塗装に代わって、転写シートとなるシートに防水
層を形成する為の下地塗工はする。本発明は、防水層を
直接に設ける面がシートで平面である為に、被転写基材
が凹凸表面を有する場合には、被転写基材に施した下地
塗装が凸部から凹部に流入して、塗膜厚が不均一になる
傾向を防ぐのに有効である。従って、防水層としては、
転写時に設けて転写シートとする方法でも良いが、より
好ましくは、事前にオフラインで、即ち転写シート製造
時に設ける方法が良い。
【0021】上記の様な防水層を形成する為の組成物と
しては、樹脂成分と、これに必要に応じて適宜、シリ
カ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク等の充填剤、顔料
や染料等の着色剤、硬化触媒、安定剤、可塑剤、粘着付
与剤、分散剤等の各種添加剤、分散溶媒、希釈溶剤等か
ら成る塗料を用いることができる。具体的には、(メ
タ)アクリル酸アルキルエステル単独重合体系エマルシ
ョン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル−スチレン
共重合体系エマルション、(メタ)アクリル酸アルキル
エステル−酢酸ビニル共重合体系エマルション等のアク
リル樹脂系の水分散型エマルションが、防水性の点で好
ましい。なお、ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリ
ル酸又はメタクリル酸を意味し、また、アルキルとして
は、メチル、エチル、プロピル、ブチル等がある。ま
た、エマルションでも、セメントフィラーエマルション
(セメントフィラー)成るセメントと樹脂エマルション
とを混合させた水分散型のエマルションも、防水性の点
で好ましい。但し、このセメントフィラーエマルション
は、固化すると接着力が無くなり、事前に転写シートの
形態で保存等の取扱が出来ないので、転写の直前に転写
シートに塗工して完全固化前に使用する。或いは、(メ
タ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、又は、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとスチレン、酢酸
ビニル等との共重合体からなるアクリル系樹脂、アクリ
ル−ウレタン系樹脂、及び塩化ビニル単独重合体、塩化
ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂の中
から選んだ単数種又は複数種の樹脂を有機溶剤に溶解し
て用いた有機溶剤系塗料も、防水性或いは塗布適性の点
で好ましい。
【0022】上記エマルション又は有機溶剤系塗料は、
熱可塑性樹脂、或いは熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂とし
て使用することができる。熱可塑性樹脂は熱融着により
被転写基材に接着する。また、硬化性樹脂でも硬化前の
熱可塑性を有する状態の樹脂(組成物)では、少なくと
も初期接着は熱融着できる。なお、セメントフィラーエ
マルションはセメントフィラーの水和反応によって硬化
し、被転写基材に接着する。そして、エマルションや有
機溶剤系塗料では半乾燥状態の未完了状態で、転写シー
トを被転写基材に圧接しても良い。また、エマルション
や有機溶剤系塗料がイソシアネート等の架橋剤等の硬化
剤を含み硬化性の場合は、硬化反応が一部進行してはい
るが完全硬化していない半硬化状態の未完了状態で、転
写シートを被転写基材に圧接しても良い。また、或い
は、半硬化状態で且つ半乾燥状態の未完了状態で、転写
シートを被転写基材に圧接しても良い。このように、乾
燥や硬化の未完了状態で転写シートを被転写基材に圧接
する場合において、転写シートを被転写基材から剥離し
て転写を完了するタイミングは、少なくとも転写シート
の支持体のみが剥離可能な程度まで防水層を含む転写層
が被転写基材に接着する程度にまで、防水層の乾燥や硬
化(架橋反応、重合反応、水和反応等)が進み固化が進
行して固着した時点以降であれば、何時でも良い。この
様な半硬化状態、半乾燥状態、或いは半硬化状態且つ半
乾燥状態等の(硬化や乾燥の)未完了状態の防水層とし
て、転写シートを被転写基材に圧接することによって、
防水層の被転写基材への密着性を向上できる。また、防
水層と装飾層等の隣接する他の転写層との密着性も向上
し、ひいては転写層全体の密着性が向上する。そして、
被転写基材がALC板等の多孔質な場合では、防水層の
一部が多孔質内部にまで含浸できるので(しかし、被転
写基材に直接に下地塗装する場合の様に含浸しすぎる事
はない)、被転写基材への含浸による密着効果も得ら
れ、密着性が向上する。
【0023】防水層を、転写シートに施すには、水分散
型のエマルションの場合は、水を分散媒とした分散液の
形態で、有機溶剤系の場合は、有機溶剤の溶媒に溶解し
た溶液の形態で施す。塗工法としては、従来公知の塗工
法であるグラビアロールコート、ナイフコート、カーテ
ンフローコート、スプレーコート等により施せば良い。
なお、防水層の塗布量は、その組成、転写する被転写基
材の種類及び表面状態(目止め機能も兼用させるか等)
で異なるが、通常10〜200g/m2 (固形分)程度
である。 (以下、次の文書ファイルに続く)
【0024】〔転写方法〕本発明の転写方法における転
写圧の押圧手段は特に限定されず、被転写基材の被転写
面の凹凸形状や、被転写面全体形状である包絡面形状等
によって、従来公知の転写法の中から適宜な方法を選択
しても良い。例えば、前述の特開平5−139097号
公報等で採用している、ゴムローラを用いるローラ転写
法である。しかし、従来は被転写基材に直接形成してい
た防水層を転写によって形成するという本発明の特徴が
より活かされるのは、被転写基材の被転写面が凹凸表面
の場合である。すなわち、凹凸表面の場合は、被転写基
材に対して防水層を下地塗装する従来法では、下地塗装
が固化する迄に、塗料が凸部から凹部へ流入して、塗膜
の膜厚が不均一になる傾向があり、これに対して、転写
によって被転写基材に防水層を形成する方法では、塗膜
厚が不均一になる事が解消できるからである。このよう
な被転写面が凹凸表面の場合でも、凹凸が小さくその形
状次第では、ローラ転写法である程度は対応は可能であ
る。
【0025】〔固体粒子衝突圧による転写法〕しかし、
上記の様な被転写基材の被転写面が凹凸表面の場合に特
に適している新規な転写方法が、固体粒子衝突圧による
転写法である。この転写法は、ローラ転写法等では不可
能な大きな三次元形状等の表面凹凸の基材にも転写でき
る方法である。以下、固体粒子衝突圧による転写法につ
いて詳述する。
【0026】(固体粒子)固体粒子Pとしては、ガラス
ビーズ、セラミックビーズ、炭酸カルシウムビーズ、ア
ルミナビーズ、ジルコニアビーズ、アランダムビーズ、
コランダムビーズ等の無機粉体である非金属無機粒子、
鉄、又は炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄合金、アルミニウ
ム、又はジュラルミン等のアルミニウム合金、チタン、
亜鉛等の金属ビーズ等の金属粒子、或いは、フッ素樹脂
ビーズ、ナイロンビーズ、シリコーン樹脂ビーズ、ウレ
タン樹脂ビーズ、尿素樹脂ビーズ、フェノール樹脂ビー
ズ、架橋ゴムビーズ等の樹脂ビーズ等の有機粒子等、或
いは金属等の無機粒子と樹脂とからなる無機物・樹脂複
合粒子等を使用することができる。なお、液体の水を固
体粒子加速流体に使う場合は、固体粒子には、水で錆や
腐食しないステンレスビーズや、ガラスビーズ、セラミ
ックビーズ、樹脂ビーズ等の非金属が好ましい。形状は
球形状が好ましいが、回転楕円体形状、多面体形状、鱗
片状、無定形、その他の形状のものでも用い得る。固体
粒子の粒径としては、通常10〜1000μm程度であ
る。
【0027】なお、固体粒子は加熱手段や冷却手段を兼
用することもできる。加熱された加熱固体粒子を用いれ
ば、転写シートの加熱による延伸性の向上や、防水層の
熱融着を転写シートの押圧と共に行うこともできる。こ
の場合、衝突圧印加前に他の加熱方法で、ある程度まで
転写シート、被転写基材を加熱しておいても良い。ま
た、固体粒子は、転写シートが被転写基材に密着後の冷
却促進目的で、防水層の熱融着時の温度よりも低温の固
体粒子を冷却固体粒子として用いる事もできる。また、
固体粒子はその一部又は全部を加熱固体粒子、冷却固体
粒子として用いたり、加熱固体粒子を衝突させた後、冷
却固体粒子を衝突させる等と、併用しても良い。また、
他の加熱方法で転写シートや被転写基材、防水層等の加
熱を要するものを充分に加熱しておき、これに冷却固体
粒子を用いて、転写シートの成形と接着及び冷却を殆ど
同時に行うこともできる。固体粒子を加熱又は冷却する
には、固体粒子の貯蔵をホッパ等の形態のタンクに貯蔵
する場合は、貯蔵中に加熱又は冷却しておけば良い。ま
た、固体粒子が輸送管を通過中に加熱又は冷却しても良
い。
【0028】(固体粒子による衝突圧印加)固体粒子を
転写シートに衝突させて衝突圧を印加し、転写シートを
被転写基材に押圧するには、固体粒子を噴出する固体粒
子噴出手段としての噴出器から、多数の固体粒子を連続
して転写シートに向かって噴出させて、転写シートに衝
突圧を印加する。多数の固体粒子は固体粒子群として転
写シートに衝突する。噴出器には、代表的には羽根車や
吹出ノズルを用いる。羽根車はその回転により固体粒子
を加速し、吹出ノズルは固体粒子加速流体として高速の
流体流で固体粒子を搬送し加速する。羽根車や吹出ノズ
ルには、サンドブラスト或いはショットブラスト、ショ
ットピーニング等とブラスト分野にて使用されているも
のを流用できる。例えば羽根車には遠心式ブラスト装
置、吹出ノズルには加圧式や吸引式ブラスト装置、ウェ
ットブラスト装置等である。遠心式ブラスト装置は羽根
車の回転力で固体粒子を加速し噴出する。加圧式ブラス
ト装置は、圧縮空気に混合しておいた固体粒子を、空気
と共に噴出する。吸引式ブラスト装置は、圧縮空気の高
速流で生ずる負圧部に固体粒子を吸い込み、空気と共に
噴出する。ウェットブラスト装置は、固体粒子を液体と
混合して噴出する。また、噴出器には、吹出ノズルや羽
根車以外にも、重力による自由落下を利用して固体粒子
を加速する方法、磁性体粒子を磁場によって加速する方
法等を採用することも可能である。なお、羽根車、重
力、磁場を用いた噴出器の場合は、真空中で固体粒子を
転写シートに向かって噴出させる事も可能である。
【0029】(羽根車)図3〜図6に、噴出器の粒子加
速器として用い得る羽根車の一例の概念図を示す。これ
らは、ブラスト分野にて使用されている遠心式ブラスト
装置に該当する。図面では、羽根車812は、複数の羽
根813がその両側を2枚の側面板814で固定され、
且つ回転中心部は羽根813が無い中空部815となっ
ている。更に、この中空部815内に方向制御器816
を内在する。方向制御器816は、外周の一部が円周方
向に開口した開口部817を有し中空筒状で羽根車81
2の回転軸芯と同一回転軸芯で、羽根車とは独立して回
動自在となっている。羽根車使用時は、方向制御器の開
口部を適宜の方向に向くように固定して、固体粒子の噴
出方向を調整する。更に、この方向制御器の内部に、内
部中空で羽根車812の回転軸芯と同一回転軸芯のもう
一つの羽根車が散布器818として内在する(図5参
照)。散布器818は外側の羽根車812と共に回転す
る。そして、前記側面板814の回転中心には回転軸8
19が固定され、回転軸819は、軸受820で回転自
在に軸支され電動機等の回転動力源(図示略)によって
駆動回転され、羽根車812が回転する。また回転軸8
19は、羽根813を間に有する2枚の側面板814間
には貫通しておらず、軸無しの空間を形成している。そ
して、散布器818の内部に固体粒子Pがホッパ等から
輸送管を通って供給される。通常、固体粒子は、羽根車
の上方(直上又は斜上方)から供給する。散布器内に供
給された固体粒子は散布器の羽根車で外側に飛び散る。
飛び散った固体粒子は、方向制御器816の開口部81
7によって許された方向にのみ放出され、外側の羽根車
812の羽根813と羽根813との間に供給される。
そして、羽根813に衝突し、羽根車812の回転力で
加速され、羽根車から噴出する。
【0030】なお、固体粒子の噴出方向は、図3〜図4
では略鉛直下方であるが、図7(B)の様に水平方向、
或いは斜下方(図示略)等としても良い。図6(A)及
び図6(B)に方向制御器816の開口部817の向き
の設定より固体粒子の噴出方向を調整する噴出方向制御
の概念図を示す(図6(A)、(B)では方向制御器は
それぞれ図示の位置で固定されている)。なお、方向制
御器816は、その開口部の円周方向、幅方向の大きさ
を調整することで、固体粒子の噴出量を調整することも
できる。なお、図4に於いては、回転軸819は側面板
814の外側のみで中空部815にまで貫通していない
構成となっているが、この他、中空部の直径より細い回
転軸を該中空部にまで貫通させたり、外周に固体粒子通
り抜け用の開口部を設けた中空筒状の回転軸の内部自身
を中空部とする構成などでも良い(図示略)。羽根81
3の形は、図3〜図6の様な長方形の平板(直方体)が
代表的であるが、この他、湾曲曲面板、スクリュープロ
ペラ等のプロペラ形等を用いる事も可能であり、用途、
目的に応じて選択する。又、羽根の数は複数枚、通常最
大10枚程度までの範囲から選択する。羽根車の形状、
枚数、回転速度、及び固体粒子の質量や供給速度と供給
方向、方向制御器の開口部サイズ及び向きの組み合わせ
により、加速された固体粒子の噴出(吹出)方向、噴出
速度、投射密度、噴出拡散角等を調整する。
【0031】また、図7は、羽根車の別の一例を示す概
念図である。同図の羽根車812aは、複数の平板状の
羽根813aがその両側を2枚の側面板814aで固定
された構造である。通常、固体粒子Pは、羽根車の上方
(直上又は斜上方)から供給する。また、側面板814
aは回転軸819aに対して幅方向の噴出方向の規制も
する。羽根車の形状、枚数、回転速度、及び固体粒子の
質量や供給速度と供給方向の組み合わせにより、加速さ
れた固体粒子の噴出(吹出)方向、噴出速度、投射密
度、噴出拡散角等を調整する。固体粒子の噴出方向は鉛
直下方(図示略)、水平方向(図7)、或いは斜下方
(図示略)等が可能である。
【0032】また、上記した羽根車812、812a等
の羽根車には、更に必要に応じ、固体粒子の噴出取出部
分のみ開口させ、それ以外の羽根車周囲を被覆する噴出
ガイド(不図示)を備える事で、固体粒子の噴出方向を
揃えたりする固体粒子噴出方向制御を行うこともでき
る。噴出ガイドの開口部の形状は、例えば、中空の円柱
状、多角柱状、円錐状、多角錐状、魚尾状等である。噴
出ガイドは、単一開口部を有するものでも良いし、或い
は内部がハニカム(蜂の巣)状に区画されたものでも良
い。
【0033】羽根車812、812a等の羽根車の寸法
は、通常直径5〜60cm程度、羽根の幅は5〜20c
m程度、羽根の長さは、ほぼ羽根車の直径程度、羽根車
の回転数は500〜5000〔rpm〕程度である。固
体粒子の噴出速度は10〜50〔m/s〕程度、投射密
度(基材単位面積当たりに衝突させる固体粒子の総重
量)は10〜150〔kg/m2 〕程度である。
【0034】また、羽根車の羽根の材質は、セラミッ
ク、或いはスチール、高クロム鋳鋼、チタン、チタン合
金等の金属等から適宜選択すれば良い。固体粒子は羽根
に接触して加速されるので、羽根には、耐摩耗性のよい
高クロム鋳鋼、セラミックを用いると良い。
【0035】(吹出ノズル)固体粒子を流体と共に噴出
する固体粒子噴出手段として、図8に吹出ノズルを用い
た噴出器840の一例の概念図を示す。なお、同図に示
す噴出器840は固体粒子加速流体として気体を用い、
固体粒子噴出時に該気体と固体粒子を混合して噴出する
形態の噴出器の一例である。同図の噴出器840は、固
体粒子Pと流体Fを混合する誘導室841と、誘導室8
41内に流体Fを噴出する内部ノズル842と、ノズル
開口部843から固体粒子P及び流体Fを噴出する吹出
ノズル部844からなる。圧縮機又は送風機(不図示)
から適宜加圧タンク(不図示)を経て送られる流体F
を、内部ノズル842から噴出し誘導室841を経てノ
ズル844のノズル開口部843から噴出する際に、噴
出器内の誘導室841にて、高速で流れる流体流の作用
で負圧を作り、この負圧により固体粒子を流体流に導き
混合し、流体流で固体粒子を加速、搬送して、ノズル8
44のノズル開口部843から流体流と共に噴出するも
のである。なお、吹出ノズルには、固体粒子加速流体と
して液体を用いる吹出ノズル等もある。液体の場合は、
例えばポンプ(不図示、流体が液体の場合)により、流
体と固体粒子とを加圧タンク(不図示)に混合貯蔵して
おき、この混合液を吹出ノズルのノズル開口部から噴出
するもの等が使用される。
【0036】ノズル開口部の形状は、中空の円柱状、多
角柱状、円錐状、多角錐状、魚尾状等の形状のものを用
いる。吹出ノズルは、単一開口部を有するものでも良い
し、或いは内部がハニカム(蜂の巣)状に区画されたも
のでも良い。流体圧は吹付圧力で通常0.1〜100k
g/cm2 程度である。流体流の流速は、液流では通常
1〜20m/秒程度、気流では通常5〜80m/秒程度
である。誘導室やノズル部等の噴出器の材質は、セラミ
ック、スチール、チタン、チタン合金等から固体粒子、
流体の種類によって適宜選択すれば良い。流体が液体の
場合は、錆、溶解、腐食等を生じない材料を選ぶ。例え
ば流体が水ならば、ステンレス鋼、チタン、チタン合
金、合成樹脂、セラミックを用いる。但し、表面に防水
加工すれば、スチール等でも良い。なお、固体粒子は噴
出器内壁に接触して通過するので、固体粒子に金属ビー
ズや無機粒子を用いる場合には粒子が硬質であるので、
耐摩耗性のよいセラミックを用いると良い。固体粒子に
樹脂ビーズを用いる場合には金属粒子に比べれは軟質で
あるので、ステンレス鋼でも良い。
【0037】(流体)流体Fは、固体粒子加速流体とし
て、固体粒子を該流体流によって加速、搬送して、該流
体と共に固体粒子を固体粒子噴出手段から噴出させる場
合(吹出ノズル等)に用いる。流体Fは固体粒子を加速
する固体粒子加速流体である。流体には気体、液体とも
に利用可能であるが、通常は取扱いが容易な気体を用い
る。気体としては、空気が代表的であるが、炭酸ガス、
窒素等でも良い。液体としては、必ずしも限定されない
が、不燃性、乾燥の容易性、無毒性、低価格、入手の容
易性、等から水は好ましい材料の一つである。この他、
フロン、グリセリン、シリコーン油等の不燃性の液体も
使用できる。液体を(気体もそうであるが)転写シート
に固体粒子と共に衝突させることができる。当然の事な
らがら、液体は気体よりも密度が高い為、気体よりも液
体の方が、流体流で固体粒子を加速する場合に加速し易
く、しかも液体が転写シートに衝突する場合に、気体と
等速度の衝突でも、衝突圧は気体に比べてより大きく且
つ実用性のある衝突圧が得られる。(また、固体粒子と
の密度差も少ないので固体粒子の搬送もし易い。)従っ
て、液体の場合は、転写圧として固体粒子の衝突圧以外
に、液体の衝突圧も利用でき、その分より大きな転写圧
を印加でき、その結果、転写シートを被転写基材の表面
凹凸形状へ追従させ成形する成形効果により大きなもの
が得られる。また、衝突圧印加時の加熱又は冷却手段と
して流体を用いる場合、気体よりも液体の方が比熱が大
きいので、より大きな加熱又は冷却効果が得られる。ま
た、液体が水の様な電気伝導体の場合は、気体の場合に
比べて静電気帯電に対する防爆対策もより容易となる。
【0038】(衝突圧印加形態)噴出器は、1個のみの
使用でも衝突圧印加領域の面積次第では可能だが、要求
する面積が大きい場合には複数用いて、転写シートに衝
突する固体粒子の衝突領域が所望の形状となる様にする
と良い。被転写基材を搬送しながら衝突圧を与える場合
は、例えば、転写シート及び被転写基材の送り方向に直
交して幅方向に一直線状に複数列を配置して、幅方向に
直線状で幅広の帯状形状の衝突領域とする。或いは、図
9(A)の噴出器32の配置は千鳥格子状の配置であ
り、図9(B)は一列配置だが、幅方向中央部は送り方
向の上流側で衝突する様にした配置である。図9(B)
の配置では、転写シートの被転写基材への衝突圧による
圧接は幅方向中央部から始まり、順次、幅方向両端部に
向かって圧接されて行く。この様にすると、幅方向中央
部に空気を抱き込んだまま、転写シートが被転写基材に
密着することを防止できる。図9の様に噴出器を幅方向
に複数個配列する場合には、個々の噴出器の加圧領域が
互いに一部重複し、全幅にわたってもれなく加圧できる
様に配列することが好ましい。図9(B)にそのような
配列の一例を示す。該図に於いて、点線部分が(有効)
加圧領域を示す。また、衝突圧印加時間を長くするに
は、噴出器は、転写シート及び被転写基材の送り方向に
向かって2列以上配置する多段配置が好ましい。
【0039】また、衝突圧は、必ずしも衝突領域内で全
て均一にする必要はない。図10は、転写シートの搬送
方向に直交する幅方向の中央部が最大の衝突圧で、幅方
向両端部に行くに従って衝突圧が低下する山型圧力分布
の設定例である。この設定は、圧が高い所(同図では中
央部)から低い所(同図では両側部)に向かって順次段
階的に圧接が進行することを助ける。但し、図10の如
き圧力分布とする場合、被転写基材上に於ける衝突圧
は、所望の凹凸面への転写が完全に行えて、なお且つ圧
過剰による転写シートの歪み、被転写基材の変形、破損
等の生じない適正圧力範囲内に全て納まる様に調整す
る。なお、ゴム製転写ローラによる曲面転写方法では、
転写ローラの中央部直径を太めとすれば、圧力的には中
央部は強くできるが、中央部と両端部とで円周長が異な
ってしまい、接触して圧印加され転写シートの送りを均
一に出来ない。衝突圧の調整は、噴出器から転写シート
に衝突する固体粒子の速度、単位時間当たりの衝突する
固体粒子数、投射量、及び1粒子の質量を制御すること
で調整する。これらのうち、固体粒子の速度を調整する
には、例えば羽根車を用いる噴出器の場合は、羽根車の
回転数、羽根車の直径等で調整する。また、吹出ノズル
を用いる噴出器の場合は、バルブの開閉量、バルブに連
結する固体粒子を搬送する管の内径の大小、圧力調整器
(レギュレータ)等を用いて噴出器直前の流体圧(流体
単体、又は流体と固体粒子との混合物)の調整により、
噴出する固体粒子及び流体流の速度を制御することで調
整する。
【0040】(噴出器の被転写基材に対する配置方法)
羽根車を用いた噴出器の場合は、固体粒子の噴出方向
は、原理的に羽根車回転軸に平行方向にはあまり広がら
ず、該回転軸に直交方向に広がる傾向がある。一方、吹
出ノズルの場合は、噴出する固体粒子の広がりは、羽根
車による噴出器の場合よりも広がりが少なく、且つ広が
っても通常はどの方向にも均一で等方的である。このよ
うな噴出器の特性を考慮して、噴出器の配置は決めれば
良い。しかし、一つの噴出器で所望の衝突領域の大きさ
に出来ない時は、噴出器を複数用いれば良い。この様
に、複数の噴出器を被転写基材の被転写面に対して配置
する場合は、各噴出器は被転写基材に平行にし、且つ各
噴出器の噴出方向が被転写基材の法線方向になる様な配
置が基本である。この様な平行配置は、被転写基材の被
転写面の包絡面に垂直に固体粒子を衝突させ、基本的に
衝突圧を最大に有効利用できるからである。従って、被
転写基材を搬送しながら衝突圧を与える場合は、例え
ば、図11の様に、被転写基材Bの被転写面の包絡面
(の搬送方向に直角の断面形状)が円型になる円筒状の
凸曲面であれば、複数の噴出器32を用意し各噴出器が
主として受け持つ個別の衝突面(凸曲面の接平面)に対
して、略垂直に固体粒子が衝突する様に、噴出器の向き
を近接する被転写基材面の包絡面の法線方向にして配置
すると良い。この様に噴出器の配置は、対象とする被転
写基材の凹凸形状に合わせて、噴出器の噴出方向を固体
粒子がなるべく垂直に衝突する様に合わせると良い。た
だ、噴出器の向きは、転写シート支持体側面に対して必
ずしも垂直にする必要はない。また、噴出器は多めに設
けておき、製造する被転写基材によっては、一部の噴出
器は停止させても良い。
【0041】(固体粒子の実際的な使用法)また、実際
に固体粒子を用いて転写する際は、固体粒子は周囲の雰
囲気中に飛散させずに使用するのが好ましい。この為に
は、固体粒子衝突圧による転写圧を押圧する衝突空間を
周囲空間と隔離するチャンバ(隔離室)内で、固体粒子
を転写シートに衝突させて転写圧を加える(後述図12
参照)等すると良い。支持体の剥離は、チャンバ外でも
良い。
【0042】(転写シート、被転写基材等の加熱)転写
圧に固体粒子衝突圧を用いる場合でも、転写ローラにゴ
ムローラを用いる従来公知のローラ転写法と同様に、転
写シート上の防水層の接着力の活性化(熱可塑性樹脂や
半硬化状態で熱可塑性を有する硬化性樹脂の場合)、転
写シートの延伸性向上等の為に、転写圧押圧中やその前
に、転写シートや被転写基材等を適宜加熱することがで
きる。被転写基材を加熱することは、転写シートの防水
層が強固に被転写基材に接着するのを助けたり、転写シ
ートを熱して延伸性を向上させたりする場合に、熱せら
れた転写シート温度が低下するのを防止できる。
【0043】例えば、衝突圧印加前では、転写シート
は、ヒータ加熱、誘電加熱、熱風加熱、ローラ加熱(連
続帯状の場合)、赤外線輻射加熱等の任意の従来公知の
加熱手段で加熱すれば良い。また、被転写基材も転写シ
ート同様に従来公知の任意の加熱手段で加熱すれば良
い。例えば誘導加熱や誘電加熱は基材内部から加熱でき
るが、一方、ヒータ加熱、赤外線加熱、熱風加熱は、凹
凸表面側からの加熱が効率的である。また、被転写基材
は裏面側からも加熱してもよい。裏面側からの加熱は、
熱容量の大きい基材を速やかに加熱したり、或いは、衝
突圧印加中の加熱として、転写シートや接着剤となる防
水層が衝突圧の印加完了まで冷えることを防止して所定
の温度に保つ場合に有効である。裏面側からの加熱方法
は、基材搬送装置に加熱手段を持たせたり、或いは被転
写基材を基材置き台に載置して搬送する場合は、その基
材置き台の加熱による。基材搬送装置の加熱手段として
は、基材搬送に駆動回転ローラ列を用いる場合は加熱ロ
ーラやローラ間にヒータ等の熱源を配置する。加熱ロー
ラは、例えばローラ内を中空にして熱水等の加熱媒体を
流通させたり、誘導加熱を利用する。また、基材搬送装
置にゴムベルトを用いる場合は、ゴムとしてシリコーン
ゴム等の耐熱性ゴムを用い、これを、誘電加熱、赤外線
加熱する等の方法が有る。また、基材置き台の加熱は、
それを搬送する基材搬送装置によって加熱したり、基材
置き台を載置する台(搬送せず静置で衝突圧印加する)
を加熱台として加熱したり、基材置き台に電熱ヒータ等
の加熱手段を設けても良い。
【0044】また、衝突圧印加中の加熱は、固体粒子に
加熱固体粒子を用いたり、噴出器の間隙に分散してヒー
タ等の熱源を設けたり、吹出ノズルによる噴出器では、
その固体粒子加速流体も加熱流体を用いることができ
る。もちろん、衝突圧の押圧前及び押圧中の加熱、或い
は押圧中のみの加熱でも良く適宜使い分ける。但し、熱
風加熱は、衝突空間を周囲と隔離するチャンバ内で行う
と内部に気体が流入しチャンバ内圧力バランスに影響す
るので、チャンバ外で行う方が好ましい。それは、空気
をチャンバ内に入れることになり、固体粒子加速用に空
気を用いる場合も含めて、固体粒子回収用の真空ポンプ
36(図12参照)の負荷増にもなり、固体粒子漏出防
止の為のチャンバ内の負圧の維持を邪魔し、また、固体
粒子を攪拌するからである。また固体粒子の流れを攪乱
することになるからである。
【0045】チャンバ使用時の加熱は、チャンバの外部
又は内部、或いは外部及び内部で行えば良い。外部及び
内部の加熱では、充分な予熱が必要な場合でも、被転写
基材を搬送する場合は長い搬送距離を使って加熱するこ
とができる。また、長い基材加熱装置をチャンバの内部
に設ける為に、チャンバ自身の内容積が大きくなるなら
ば、基材加熱装置の一部又は全部をチャンバの外部に設
けて、チャンバの内容積を小さくした方が、固体粒子の
飛散、回収等を考慮した取扱上は有利だからである。チ
ャンバの内部で加熱する利点は、衝突圧印加の直前ま
で、或いは衝突圧印加中までも、加熱できることであ
り、特に熱容量が大きい被転写基材をその被転写面近傍
のみ効果的に予熱しようとする場合等である。
【0046】(防水層の強制冷却)防水層が、熱可塑性
樹脂等の熱融着で少なくとも初期接着が行われる熱融着
型の樹脂からなる場合は、転写シートが被転写基材に密
着後に防水層を強制冷却すれば、凹部内部にまで追従、
成形された転写シートの固着化を促進して、転写シート
に復元力がある場合に圧解放後、転写シートが元の形状
に戻ることを防止し、転写シート(の支持体)の剥離除
去をより早くできるので、転写抜け防止や生産速度向上
が図れる。この為には、衝突圧印加中に、衝突圧を開放
しないまま冷却固体粒子を用いたり、或いは固体粒子加
速流体を用いる場合は冷却流体を用いたり、衝突圧印加
後に、風冷等の他の冷却手段を用いて防水層を冷却する
と良い。被転写基材の熱容量が大の場合は、冷却固体粒
子及び冷却流体以外にも、低温流体の吹き付け、基材搬
送用のローラやベルトコンベア或いは基材置き台等の冷
却により、被転写基材を裏面から冷却できる。或いは、
チャンバ内でのこれら冷却の後にチャンバ外で、或いは
チャンバ内では冷却せずにチャンバ外のみで、表や裏か
らの冷風吹き付け等で冷却しても良い。なお、これは転
写シートの冷却にも言える。
【0047】(支持体の剥離)なお、支持体を剥離する
タイミングは、衝突圧の解除以降、支持体が剥離時応力
で切断や塑性変形をし無い程度に冷却し、防水層が冷却
や硬化反応で固化し転写シートが被転写基材に固着した
時点以降に行えば良い。
【0048】(空気抜き)転写圧印加前に、防水層が接
着性を発現しないならば、或いは、その様な時間的過程
が使えるならば、被転写基材と転写シートとの非粘着の
接触を行えるので、転写シートを被転写基材の凹凸表面
に接触させて、転写シートと被転写基材間の空隙の空気
を強制的に抜き取る、「空気抜き」をすると良い。空気
抜きで、転写シートと被転写基材間の空気が転写時に残
留する「エア噛み」、更にはそれに起因する転写抜けを
防げる。空気抜きは、例えば図12の装置では、吸引排
気ノズル91及び真空ポンプ92等からなる吸引排気装
置90で行う。吸引排気ノズル91は、転写シートの転
写層側で、且つ搬送される被転写基材の搬送方向に沿う
両辺に隣接する両側に(図12(B)参照)、被転写基
材の搬送方向に沿って設け、転写シートと被転写基材間
の空気を、真空ポンプ92で吸引し排気すれば良い。吸
引排気ノズル91の開口部外周は例えばブラシで囲いブ
ラシ先端を被転写基材及び転写シートに接触させれば、
それらの搬送に支障なく空気抜きできる。また、空気抜
きは衝突圧印加中まで行うのが良い。なお、空気抜きと
転写シートの予熱とのタイミングは、転写シートが予熱
されて軟化する速度、軟化の度合いにもより、どちらを
先に開始しても良いが、両方を同時に開始しても良い。
空気抜きは、被転写基材の被転写面が例えば岩肌調やス
タッコ調等の凹凸面の場合は効果的である。
【0049】(チャンバ使用での一形態)前述した如
く、固体粒子はチャンバ内で衝突させて飛散防止する事
が好ましいが、更に固体粒子は循環再利用する事が実際
的であり好ましい。そこで、次に、本発明の転写方法の
一形態として、凹凸表面へも転写できる固体粒子衝突圧
を利用する曲面転写方法について、チャンバを使用し且
つ固体粒子を循環再利用しながら連続的に転写する場合
の曲面転写装置の一例の概念図を示す図12に従い、本
発明を更に詳述する。
【0050】同図の装置は、連続帯状の転写シートSを
用い、包絡面形状が平板状の凹凸表面を有する被転写基
材Bに、防水層と共に装飾層等を転写する装置である。
同図では、固体粒子Pは、固体粒子噴出手段である噴出
器32から、衝突圧印加部30のチャンバ33内におい
て噴出させて、転写シートSの支持体側に衝突させ衝突
圧を加える。噴出器32は、例えば前述した羽根車利用
のものである。衝突圧印加部30は、固体粒子を貯蔵し
噴出器32に供給するホッパ31、噴出器32、チャン
バ33、衝突圧の固体粒子のホッパまでの帰還路である
ドレン管34、固体粒子を気体と分離する分離装置3
5、回収固体粒子の搬送気体を吸引排気する真空ポンプ
36等を備える。チャンバ33は、転写シート及び被転
写基材の出入口を除いて、衝突圧にさらされる転写シー
ト及び被転写基材、噴出器の少なくとも開口部を外部か
ら覆い、固体粒子を外部の作業雰囲気中に漏らさないよ
うにしている。この為、チャンバ内部は好ましくは外部
よりも気圧を低く(負圧)する。
【0051】そして、転写は次の様にして行う。先ず、
板状の被転写基材Bは、駆動回転ローラ列、無限軌道式
のコンベアベルト等から成る基材搬送装置10で一枚ず
つ搬送し、基材加熱装置41で加熱された後、衝突圧印
加部30のチャンバ33内に搬送、供給される。転写シ
ートSは、シート送出装置21、シート支持装置22、
シート排出装置23等からなるシート供給装置20によ
り搬送する。先ず、転写シートSは、シート送出装置2
1にセットされた供給ロールから巻き出され、ガイドロ
ーラを経て衝突圧印加部30のチャンバ33内に入る。
なお、転写時にインラインで防水層を形成して転写シー
トとする場合は、(防水層形成前の)転写シートがシー
ト送出装置21から衝突圧印加部30に供給される間
に、塗工装置(図示せず)で塗工し、更に乾燥を要す場
合は、乾燥装置(図示せず)で乾燥後に、衝突圧印加部
に供給する。
【0052】さらに、転写シートSはチャンバ33内に
入ったところで図12(B)に示す如く、幅方向両端を
シート支持装置22で挟持されつつ(図12(A)では
図示略)、その転写層側の面を搬送される被転写基材B
側に向ける様に対向して被転写基材Bの上方を僅かに空
間を開けて(衝突圧等を作用させない何もしない状態の
場合)、搬送される被転写基材Bと平行に等速度で移送
され、衝突圧を受けて被転写基材Bに接触させるまでの
間、両者の間隙を維持しながら搬送される。シート支持
装置22は、被転写基材の横幅よりも広幅とした転写シ
ートの両端を表裏両面から挟持しながら転写シートの移
送に合わせて回転するベルト等から成る。ここでは被転
写基材は包絡面が略平板状なので、シート支持装置によ
る上記間隙にて、衝突圧による転写シートの被転写基材
への完全な接触は、幅方向中央部では時間的に先に幅方
向の両端近傍は遅れて行われる様にしてある。これは、
被転写基材と転写シート間(特にその中央部付近)に空
気を残して密着しない様にするための策の一つである。
なお、転写シートを被転写基材の近傍を等速度で移送す
る際に、被転写基材に対して僅かに離すか又は接触状態
として移送するかは、被転写基材の表面凹凸の形状、被
転写基材の予熱温度と、転写シートの熱変形性、固体粒
子の衝突圧、防水層を熱融着等させるに必要な要求加熱
温度等を適宜勘案して選択する。そして、シート支持装
置で挟持搬送されて衝突圧の印加を受けるまでに、ヒー
タ加熱、赤外線加熱、誘電加熱、誘導加熱、熱風加熱等
によるシート加熱装置40で、転写シートは加熱されて
軟化し、衝突圧印加時に延伸され易くなる。なお、同図
ではシート加熱装置はチャンバ内に設けてあるので、熱
風加熱の場合は、風量は少なくした方が良い。それは、
空気をチャンバ内に入れることになり、後述する様な、
チャンバ内の負圧の維持を邪魔し、また、固体粒子を攪
拌するからである。なお、基材加熱装置で加熱されて衝
突圧印加部に供給される被転写基材によっても、転写シ
ートは間接的に加熱される。シート加熱装置による加熱
は、転写シートの予熱不要時は省略できる。
【0053】一方、固体粒子Pはホッパ31からチャン
バ33内にある噴出器32に供給され、そこで図3〜図
5の様な羽根車によって加速されてチャンバ33内で転
写シートSに向かって噴出する。そして、転写シート
は、噴出器から噴出する固体粒子の衝突にさらされる。
ここでは、被転写基材は包絡面が略平板状なので、固体
粒子は転写シートの支持体側に概ね垂直に衝突させる分
を主体成分とし、被転写基材及び転写シートが搬送され
る全幅を衝突領域とする。そして、被転写基材及び転写
シートが搬送されるにつれて、長手方向の全領域が順次
衝突圧にさらされて行く。なお、シート支持装置は、固
体粒子が、転写シートの幅方向両端から回り込んで、転
写シートと被転写基材間に流入する事も防止する。そし
て、転写シートは、固体粒子衝突圧で被転写基材に押圧
され、被転写基材の凹凸表面の凹部内へも転写シートは
延ばされて変形することで、被転写基材の凹凸表面形状
に追従して成形されて、防水層により転写層が被転写基
材に密着する。
【0054】一方、転写シートへの衝突に供された後の
固体粒子は、その一部はシート支持装置22の側面を迂
回して、チャンバ33の下部に落下する。また、残りの
部分は転写シート支持体上に載置されたまま下流側に移
送された後、チャンバ33とは基材搬送装置10の上部
のみ別室に区画された第2チャンバ71に入る。そし
て、そこでは、スリットノズル状の除去装置(兼冷却装
置)70から転写シート及び被転写基材上に向かって空
気を吹き付け、転写シート上に残留する固体粒子を転写
シート端部から第2チャンバ71下部に吹き落とす。ま
た、除去装置70から吹き出す空気には室温の空気を使
い、その空気を冷風として、固体粒子除去と同時に、被
転写基材及び転写シートを、転写シートの支持体が剥離
可能な温度にまで冷却させる。従って、除去装置は転写
シートや防水層、被転写基材等の冷却装置の役割も果た
す。チャンバの下部に集まった固体粒子は、そこからド
レン管34で吸引され元のホッパ31に収集される。ま
た、固体粒子の回収搬送用としてチャンバ中の空気も、
固体粒子と共にドレン管34で吸引され、ホッパ上部の
気流と固体粒子の分離装置35に搬送される。該分離装
置35では図示の如く、気流で搬送されて来た固体粒子
は水平方向に装置空洞内に放出され、気体に対して密度
の大きい固体粒子は自重で下方に落下し、気体はそのま
ま水平に流れて、フィルターで気流と共に移動しようと
する残余の固体粒子を濾過した上で、真空ポンプ36で
系外に排出される。この様にして固体粒子が、転写シー
ト及び被転写基材が出入りするチャンバ出入口開口部か
ら、空気と共に周囲に流出しない様にする。また、固体
粒子のチャンバ系外への流出防止、及び固体粒子のチャ
ンバからホッパへの逆流防止には、チャンバ内を外部よ
り低圧にすると良い。このチャンバの圧力調整は、前記
真空ポンプ36の排気量、更に気体を吹き出す除去装置
(兼冷却装置)からチャンバ内に入る気体量、及び排風
機(図示せず)をチャンバに適宜接続してその排気量等
によるチャンバ外に流出する気体量と、噴出器から固体
粒子と共にチャンバ内に入る気体量(特に、気体を固体
粒子加速流体として用いる吹出ノズル等の噴出器の場
合)、更に送風機(図示せず)をチャンバに適宜接続し
てチャンバ内に入れる気体量(特に、羽根車による噴出
器の場合)等とのバランスを調整する事で行う。
【0055】そして、密着した被転写基材と転写シート
とが、除去装置70で固体粒子除去と強制冷却されて第
2チャンバ71を出た後、転写シート(の支持体)を、
剥離ローラ60により被転写基材から剥離除去する。そ
の結果、転写シートの転写層として防水層及び装飾層等
が被転写基材の凹凸表面に転写形成された、転写製品と
して化粧材D等が得られる。一方、剥離ローラ通過後の
転写シート(の支持体)は、シート排出装置23に排出
ロールとして巻き取る。
【0056】なお、上記シート加熱装置40、基材加熱
装置41、除去装置(兼冷却装置)70、吸引排気装置
90等は必要に応じて適宜使用すると良い。また、液体
を固体粒子加速流体に用いた吹出ノズルを噴出器とする
場合は、冷却装置とは別にその上又は下流に、或いは冷
却装置自身と兼用で、乾燥機を設けて、例えば室温又は
温風の空気を吹き付けて、液体を乾燥、又は吹き飛ばし
て除去する。
【0057】〔その他〕以上、本発明の転写方法を、転
写圧の押圧方法では曲面転写も可能な曲面転写方法を主
体に説明して来たが、本発明は上記説明に限定されるも
のではない。例えば、固体粒子衝突圧による転写方法と
して図12の装置による曲面転写方法の説明では、転写
シートの被転写基材への圧接は、転写シートの被転写基
材への圧接は、連続帯状の転写シート及び枚葉の被転写
基材を用い、両者を一体的に搬送移動させつつ、固定の
噴出器で固体粒子衝突圧を連続印加する形態であった
が、転写シートの被転写基材への圧接は、その時だけ転
写シート及び被転写基材を停止させて、基材一個ごとに
間欠的に行っても構わない(これらに対して例えば噴出
器を移動させる)。また、被転写基材及び転写シートと
もに枚葉の形態で供給する形態でも構わない。また、噴
出器の固体粒子噴出方向と転写シート及び被転写基材と
の位置関係は、両者ともに水平面内に載置し、その上方
から鉛直方向に真下に固体粒子を噴き出す位置関係に限
定されない。転写シート支持体側面と噴出方向が垂直関
係を維持したとしても、転写シートの載置又は搬送方向
は、水平面内以外にも、斜面内、鉛直面内(図7
(B))等があり、また転写シートが水平面内でも、支
持体側が下側、すなわち、下から上に固体粒子を噴出さ
せ衝突させても良い。もちろん、転写シート支持体面に
対して角度をもって固体粒子を噴出しても良い。また、
衝突圧印加前に、弾性体ローラによる転写シートの被転
写基材への押圧を予備的に行っても良い。また、チャン
バ内は窒素等の不活性ガスを充満させて、接着剤等に電
離放射線硬化性樹脂を用いる場合に、空気中の酸素、水
蒸気等が該樹脂の硬化を阻害するのを防止しても良い。
【0058】〔転写製品の用途〕本発明で得られる化粧
材等の転写製品の用途は、転写された装飾面が凹凸面、
特に三次元形状等の凹凸表面の物品であるような各種用
途に用いられ得る。例えば、化粧材として、サイディン
グ等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の外装、壁面、
天井、床等の建築物の内装、窓枠、扉、手摺、敷居、鴨
居等の建具類の表面化粧、箪笥等の家具やテレビ受像機
等の弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動
車、電車等の車両内装材、航空機や船舶等の内装材等の
各種分野で用いられ得る。化粧材は化粧板等として利用
される。なお、化粧材も含めて転写製品の形状は、平
板、曲面板、棒状体、立体物等と任意である。また、特
に本発明では防水層を形成できるので、転写製品の用途
として、例えば、被転写基材にALC板等の非陶磁器窯
業系板を用いたサイディング等の外装用途の化粧板や、
浴室、厨房等の水回りの化粧材等が好適である。
【0059】〔後加工〕なお、転写後の化粧材等の転写
製品の表面に、耐久性、意匠感等を付与する為に、更に
透明保護層を塗装する等しても良い。この様な透明保護
層としては、ポリ4フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリ
デン等のフッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアク
リル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂の1種又は2
種以上等をバインダーとし、これに必要に応じて、ベン
ゾトリアゾール、超微粒子酸化セリウム等の紫外線吸収
剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、
着色顔料、体質顔料、滑剤等を添加した塗料を用いる。
また、外装用途では、無機系塗料を用いることもでき
る。塗工はスプレー塗装、フローコート、軟質ゴムロー
ルやスポンジロールを使用したロールコート等で行う。
透明保護層の膜厚は1〜100μm程度である。
【0060】
【実施例】次に実施例及び比較例により本発明を更に説
明する。
【0061】(実施例1)先ず、三次元的表面凹凸を有
する被転写基材Bとして、図2(A)の平面図及び図2
(B)の要部拡大斜視図に例示する様な、大柄な凹凸と
して深さ1.5mm、開口幅5mmの目地の溝状凹部4
01と、煉瓦積み模様の1辺が縦50mmで横150m
mの平坦凸部402とを有し、微細な凹凸として平坦凸
部上にJIS−B−0601の10点平均粗さで0.7
mmの梨地調の微細凹凸403を有する、大柄な凹凸と
微細な凹凸とが重畳した三次元的表面凹凸を有する厚さ
12mmのケイ酸カルシウム板を用意した。一方、転写
シートSは、支持体に厚さ100μmのポリプロピレン
系熱可塑性エラスマトーフィルムの片面に、転写層とな
る装飾層として、カーボンブラック、酸化鉄、チタン
白、キナクリドン、イソインドリノンからなる顔料と、
アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との1
対1(重量比)混合物からなるバインダーを用いたイン
キで、煉瓦模様の絵柄を全面にグラビア印刷し、更にそ
の上に、顔料として酸化チタンを10重量部添加した白
色の2液硬化型アクリル樹脂系エマルションを全面に塗
工後、60℃に加熱して乾燥と共に室温(25℃)に於
いて非粘着である指触乾燥性と熱可塑性を同時に有する
程度の半硬化状態まで反応を進めて、膜厚250μm
(乾燥時)の防水層を全面にわてって設けた、転写シー
トを用意した。
【0062】そして、ローラ転写法によって、上記被転
写基材の平坦凸部に対してのみ上記転写シートを用い
て、装飾層及び防水層からなる転写層を転写した。転写
ローラは、鉄芯の表面をシリコーンゴムで被覆した軟質
ゴムローラからなる弾性体ローラを加熱ローラとして用
いた。転写製品として得られた化粧材は、表面凹凸の平
坦凸部のみ従来の下地塗装に代わって防水層付きで絵柄
が転写されていた。更に、この化粧材の転写層の表面
に、0.5重量%のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
を含むポリフッ化ビニリデンのエマルション塗料を乾燥
時厚さ10μmに塗布して、透明保護層を形成して、透
明保護層付きの化粧材を得た。
【0063】(比較例1)実施例1で転写シートの防水
層に用いたのと同一の2液硬化型アクリル樹脂系エマル
ションを、実施例1で用意した被転写基材の凹凸表面側
に刷毛塗りで塗布した後、60℃に加熱して乾燥と共に
半硬化状態まで反応を進めて、膜厚がおよそ250μm
(乾燥時)の防水層を全面にわたって設けた。加熱時間
は30分であった。そして、実施例1同様にローラ転写
法によって転写した。転写製品として得られた化粧材
は、表面凹凸の平坦凸部のみ下地として防水層付きで絵
柄が転写された。なお、この化粧材には更に実施例1同
様に透明保護層を形成し、透明保護層付きの化粧材とし
た。
【0064】(比較例2)比較例1に於いて、防水層の
塗布形成を刷毛塗りに代えて軟質ゴムローラによるロー
ラ塗工で形成した他は、比較例1と同様にして、ローラ
転写法にて転写した。化粧材は、表面凹凸の平坦凸部の
み防水層付きで絵柄が転写された。なお、この化粧材に
は更に実施例1同様に透明保護層を形成し、透明保護層
付きの化粧材とした。
【0065】(実施例2)実施例1において、転写圧の
押圧方法をローラ圧から固体粒子衝突圧に変更して転写
した。被転写基材は実施例1と同じものを用いた。ま
た、転写シートは、実施例1の転写シートの絵柄を煉瓦
模様に代えて、被転写基材の凹凸面形状と位置同調した
目地部が余白となった煉瓦積み模様の絵柄としたものを
用いた。該絵柄の余白部は、防水層の白色の色が占める
事になる。そして転写は、図12に示す様な曲面転写装
置で行った。噴出器には図3〜図5の様な羽根車を用い
た噴出器を使用し、上記被転写基材Bを、その凹凸面を
上にして搬送用ローラ列からなる基材搬送装置10上に
載置して搬送し、基材加熱装置41で被転写基材を加熱
して、衝突圧印加部30に供給した。一方転写シートS
も、シート供給装置20により、その支持体側を上にし
て、しかも絵柄の目地部と被転写基材の目地状の溝状凹
部とが位置合わせ(見当合わせ)される様にして衝突圧
印加部に供給した。被転写基材Bが衝突圧印加部のチャ
ンバ33に入ったところで、転写シートを被転写基材に
接近させた。そして、1対のエンドレスベルト状のシー
ト支持装置22で転写シートの幅方向両端を表裏で挟持
した。その状態で、転写シートの支持体側から電熱線ヒ
ータによる輻射熱を用いたシート加熱装置40で、転写
シートの予熱による軟化と、転写シートの防水層の加熱
による接着力発現と、更なる被転写基材の加熱を行っ
た。
【0066】次いで、固体粒子Pとして平均粒径0.4
mmの球形状の亜鉛球を、噴出器32から噴出させて転
写シートの支持体側に衝突させて、転写シートを被転写
基材に圧接した。噴出器の羽根車の回転数は3600
〔rpm〕、固体粒子の噴出速度は35〔m/s〕であ
った。そして、転写シートが目地の凹部内にまで延ばさ
れて熱融着し、チャンバ33から続いてその下流側に設
けた第2チャンバ71内に於いて除去装置(兼冷却装
置)70で冷風を吹き付けて、接着剤となる防水層を冷
却してその接着温度以下に冷却すると共に、転写シート
上に残留した固体粒子を転写シート端部からチャンバ下
部に向かって落として除去した後、転写シートの支持体
を剥離ローラ60で剥がし取り、転写製品として化粧材
Dを得た。転写圧に固体粒子衝突圧を用いた為に、化粧
材は平坦凸部以外に目地部の溝状凹部内も含めて、被転
写基材の表面凹凸に追従して下地として防水層付きで絵
柄が転写されていた。なお、この化粧材には更に実施例
1同様に透明保護層を形成し、透明保護層付きの化粧材
とした。
【0067】(実施例と比較例の比較評価結果)実施例
1及び実施例2では、防水層は転写シートから転写する
為に、比較例1及び比較例2の如く被転写基材に直接塗
工形成する場合に比べて、防水層の下地塗装工程が省略
できた。また、実施例1及び2では、被転写基材が凹凸
表面であっても、被転写基材に直接に防水層の下地塗装
しないので、凸部から凹部へ塗料が流れ落ちることが無
く、また防水層が乾燥するまでの間に被転写基材内への
不均一な吸収が無い為に、転写シート上に形成した均一
な厚みの防水層を被転写基材に転写でき、防水層の厚み
のコントロールが容易であった。更に、転写に固体粒子
衝突圧を用いる実施例2では、被転写基材の凹凸表面の
凹部内部にまでも、防水層及び装飾層からなる転写層を
転写できた。
【0068】
【発明の効果】本発明によれば、被転写基材に下地塗
装を施すこと無く、装飾層等を転写すると同時に、防水
層を被転写基材に形成できる。その結果、被転写基材に
下地塗装する工程を省略でき、下地塗装用の塗装設備も
不要となり、塗料飛散が無い為に塗料使用量を大幅に減
らせる他、作業環境の保全効果も得られる。また、設備
的にも簡略化でき、作業能率も向上する。更に、被転写
基材が凹凸表面の場合でも、従来は直接塗装で塗料が凸
部から凹部へ流入し、塗膜厚が不均一になっていた事を
解消でき、下地塗装厚の不均一化によって転写による装
飾が損なわれる事もない。また、本発明によれば、被転
写基材の熱容量等に関係無く、転写と同時のインライン
の防水層の(転写シートとなるシートに対する)形成も
行える。これに対して、被転写基材が厚いなど熱容量が
大きい場合では、従来の被転写基材への防水層の直接塗
装では、塗装後の加熱乾燥や加熱硬化は、被転写基材の
加熱に熱が奪われ、加熱乾燥・硬化時間が長くなり、塗
装工程は、装飾層のみの転写工程にインランイで同時に
行えなかった。また、被転写基材がALC板等で多孔質
の場合には、本発明の防水層は、防水目止層としても使
用できる。 また、転写シート上の防水層を、半硬化状態や半乾燥
状態の硬化や乾燥の未完了状態の防水層のままで、転写
シートを被転写基材に圧接して転写すれば、防水層の被
転写基材への密着性や、防水層と装飾層等の隣接する他
の転写層との密着性、ひいては転写層全体の密着性を向
上できる。また、被転写基材がALC板等の多孔質な場
合では、防水層の一部のみを多孔質内部にまで含浸させ
られるので、被転写基材への含浸による密着効果も得ら
れ、密着性が向上する。
【0069】更に、被転写基材の基材面が凹凸表面の
場合には、転写圧として固体粒子衝突圧を用いることに
よって、大きな三次元的凹凸表面が下地塗装として防水
層付きで装飾された化粧材等の転写製品が容易に得られ
る曲面転写法を実現できる。もちろん、窓枠、サッシ等
の二次元的凹凸も可能であり、平板状の板材以外にも、
瓦の様に全体として(包絡面形状が)波うち形状のも
の、或いは凸又は凹に湾曲した形状のものでも容易に得
られる。しかも、大柄な凹凸表面の凸部上、凹部内(底
部や凸部と底部の連結部分である側面)も転写できる。
また、大柄な凹凸の凸部上に、更に微細な凹凸模様(例
えば、ヘアライン、梨地等)が有る場合でも、その微細
凹凸の凹部内にまで、転写にて防水層付きで装飾でき
る。また、従来のゴムローラ押圧方式の様に、被転写基
材の凹凸部によるローラ等部品の損耗も無い。以上の結
果、従来に無く極めて意匠性に優れた化粧材等の転写製
品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転写方法を概説する概念図。
【図2】被転写基材の三次元表面凹凸の一例を示す説明
図であり、(A)は平面図、(B)は要部拡大斜視図。
【図3】羽根車を用いた噴出器の一形態を説明する概念
図(正面図)。
【図4】図3の羽根車部分の斜視図。
【図5】図3の羽根車内部を説明する概念図。
【図6】羽根車にて噴出方向を調整する説明図。
【図7】羽根車を用いた噴出器の別の形態を説明する概
念図であり、(A)は正面図、(B)は側面図。
【図8】吹出ノズルによる噴出器の一形態を説明する概
念図。
【図9】噴出器の各種配置形態を示す平面図。(A)は
千鳥格子状に並べた配置、(B)は中央部は上流側にし
て、両端になるにつれて下流側にずらした配置。
【図10】衝突圧に幅方向分布を設けた説明図。
【図11】噴出器の向きの一形態を示す流れ方向からみ
た側面図。
【図12】本発明の転写方法を実施し得る曲面転写装置
の一例の概念図で、(A)は基材搬送方向の側面から見
た図で、(B)は(A)の装置の噴出器部分を基材搬送
方向から見た概略装置図。
【符号の説明】
1 支持体 2 転写層 3 装飾層 4 防水層 10 基材搬送装置 20 シート供給装置 21 シート送出装置 22 シート支持装置 23 シート排出装置 30 衝突圧印加部 31 ホッパ 32 噴出器 33 チャンバ 34 ドレン管 35 分離装置 36 真空ポンプ 40 シート加熱装置 41 基材加熱装置 60 剥離ローラ 70 除去装置(兼冷却装置) 71 第2チャンバ 90 吸引排気装置 91 吸引排気ノズル 92 真空ポンプ 812、812a羽根車 813、813a 羽根 814、814a 側面板 815 中空部 816 方向制御器 817 開口部 818 散布器 819、819a 回転軸 820 軸受 840 吹出ノズルを用いた噴出器 841 誘導室 842 内部ノズル 843 ノズル開口部 844 ノズル 401 溝状凹部 402 平坦凸部 403 微細凹凸 B 被転写基材 D 化粧材(転写製品) F 流体 P 固体粒子 S 転写シート

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持体上に、転写層として装飾層を設け
    た転写シートによって、被転写基材に転写層を転写する
    転写方法において、 被転写基材内部からの水分等の滲み出しの遮断や、外部
    からの水分等の滲み込みの遮断を少なくとも目的とする
    防水層として、 (A)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単独重合体
    系エマルション、(メタ)アクリル酸アルキルエステル
    −スチレン共重合体系エマルション、(メタ)アクリル
    酸アルキルエステル−酢酸ビニル共重合体系エマルショ
    ン、及び、セメントフィラーエマルションから選んだエ
    マルションによる塗膜、または、 (B)アクリル系樹脂、アクリル−ウレタン系樹脂、及
    び塩化ビニル系樹脂から選んだ樹脂を用いた有機溶剤系
    塗料による塗膜、を転写層の最外層として設けた転写シ
    ートにより、防水層を含む転写層を被転写基材に転写す
    る、転写方法。
  2. 【請求項2】 防水層が半硬化状態、半乾燥状態のいず
    れか一方又は両方の未完了状態で、転写シートを被転写
    基材に圧接して転写する、請求項1記載の転写方法。
  3. 【請求項3】 被転写基材が凹凸表面を有し、該凹凸表
    面側に転写シートの転写層側を対向させ、該転写シート
    の支持体側に固体粒子を衝突させ、その衝突圧を転写圧
    に利用して、被転写基材の凹凸表面への転写シートの圧
    接を行い、転写層が被転写基材に接着後、転写シートの
    支持体を剥離除去することで、防水層を含む転写層を被
    転写基材に転写する、請求項1又は2記載の転写方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013183558A1 (ja) * 2012-06-05 2013-12-12 日本曹達株式会社 転写箔

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WO2013183558A1 (ja) * 2012-06-05 2013-12-12 日本曹達株式会社 転写箔
CN104334348A (zh) * 2012-06-05 2015-02-04 日本曹达株式会社 转印箔

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