JPH11154782A - 厚膜配線の形成方法 - Google Patents

厚膜配線の形成方法

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JPH11154782A
JPH11154782A JP31936797A JP31936797A JPH11154782A JP H11154782 A JPH11154782 A JP H11154782A JP 31936797 A JP31936797 A JP 31936797A JP 31936797 A JP31936797 A JP 31936797A JP H11154782 A JPH11154782 A JP H11154782A
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静晴 渡辺
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誠人 戸瀬
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洋 鷹木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 線幅が微細で膜厚の大きい厚膜配線を能率的
に形成できる方法を提供する。 【解決手段】 焼成により厚膜配線となる金属粉末を含
む光硬化型組成物9を透明板4の溝3内に埋め込み、溝
3内の光硬化型組成物9に基板2を接触させた状態で透
明板4側から紫外線10を照射して光硬化反応を生じさ
せ、それによって、光硬化型組成物9を硬化させるとと
もに基板2に接着させる。その後、透明板4を基板2か
ら分離して、硬化した光硬化型組成物9を基板2側に転
写し、次いで、光硬化型組成物9を焼成することによっ
て、厚膜配線を基板2上に形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、厚膜配線の形成
方法に関するもので、特に、線幅が微細でありながら膜
厚の比較的大きい厚膜配線の形成に適した、厚膜配線の
形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この発明にとって興味ある厚膜配線とし
ては、たとえば、電子部品単体やこれらを集合した高機
能化モジュール基板上に形成される厚膜伝送線路などが
ある。たとえばセラミック基板上に、微細な伝送線路を
形成するための方法として、所望のパターンをもって導
電性ペーストを、たとえばスクリーン印刷等によりセラ
ミック基板上に付与し、乾燥後に焼成する方法が一般的
に知られている。また、スクリーン印刷以外の印刷方法
では、印刷版として凹版を構成する金属シリンダを用い
る直刷式、凹版とパッドとを用いる転写式なども一般的
に知られている。
【0003】一方、金属微粉末を光硬化型の有機ビヒク
ル中に分散させた感光性ペーストを基板上に付与して感
光性ペースト膜を形成し、フォトリソグラフィ技術を用
いてこの感光性ペースト膜をパターニングすることによ
り、微細な厚膜配線を形成する方法が、たとえば特公平
8−3057号公報および特開平9−142878号公
報に記載されている。
【0004】薄膜配線の形成にあっては、セラミック基
板上に、スパッタリングによりチタンやニクロム等の下
地給電膜を成膜し、フォトレジストでパターニングした
後、選択的に無電解または電解めっきし、レジスト除去
後、下地給電膜をエッチングする、セミアディティブ
法、あるいは、セラミック基板上にパターニングされた
フォトレジストを形成した後、金属を蒸着し、レジスト
を除去する、リフトオフ法が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
たスクリーン印刷方式では、導電性ペーストが有する粘
性に起因する印刷にじみや印刷版自身によってもたらさ
れる印刷解像度の問題で、線幅50μm以下の微細厚膜
配線を形成することは困難である。また、直刷式では、
シリンダと基板との界面での印刷にじみが生じやすく、
また、転写式では、パッドから基板への転写時に印刷に
じみやパターン歪みが生じやすく、そのため、いずれの
方式も、微細配線の形成が困難である。また、得られる
膜厚も2〜5μmと薄く、低配線抵抗化を可能とする厚
い膜(10μm以上)の形成は、期待できない。
【0006】よって、これらの印刷技術に頼る限り、近
年の回路用電子部品や高機能モジュール基板等の小型
化、高密度化への対応が不可能であると言っても過言で
はない。一方、前述した感光性ペーストを用い、フォト
リソグラフィ技術に基づいてパターニングする方法によ
れば、上述の印刷法と比較して、より微細な配線の形成
が可能で、たとえば線幅50μm以下の微細な配線の形
成も可能である。
【0007】しかしながら、前述した印刷法における導
電性ペーストの印刷および乾燥の各工程に対応する工程
として、フォトリソグラフィ法では、導電性ペースト塗
布、プリベーク、露光、ポストベーク、現像、洗浄、お
よび乾燥の各工程といった多くの工程が必要である。ま
た、フォトリソグラフィ法では、基板全面に導電性ペー
スト膜を形成して、露光および現像することにより、所
望の配線パターンを形成するため、印刷法に比べて、使
用する導電性ペースト量が多くなるという問題もある。
これらのことは、生産コストの上昇を招き、加えて、現
像液処理時に発生する処理液廃棄費用や処理液中に混合
した金属微粉末の回収および再生処理費用等を考慮に入
れると、大幅なコスト上昇は避けられない。
【0008】また、スパッタリングや蒸着を用いる前述
したセミアディティブ法やリフトオフ法によれば、微細
な配線が可能であるが、たとえば線幅20μmで膜厚5
μm以上の厚い膜の形成は困難である。また、装置コス
トが高く、かつプロセスが複雑であるため、生産性に劣
るという課題を有している。そこで、この発明の目的
は、上述した問題を解決し得る、厚膜配線の形成方法を
提供しようとすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、基体上に厚
膜配線を形成するための方法に向けられるものであっ
て、上述した技術的課題を解決するため、次のような工
程を備えることを特徴としている。すなわち、この発明
に係る厚膜配線の形成方法は、(1) 基体、所望の厚
膜配線のパターンに対応するパターンを有する溝が表面
に形成された、紫外線を透過する透明板、および、金属
粉末と有機バインダと光重合開始剤と光硬化性モノマー
とを含む光硬化型組成物をそれぞれ用意する、第1の工
程と、(2) 透明板の表面に形成された溝に、光硬化
型組成物を埋め込む、第2の工程と、(3) 透明板の
溝が形成された表面側に基体を配置し、溝内の光硬化型
組成物を基体に接触させる、第3の工程と、(4) 透
明板側から光硬化型組成物に紫外線を照射して光硬化型
組成物を硬化させるとともに、光硬化型組成物を基体に
接着させる、第4の工程と、(5) 透明板を基体から
分離して、硬化した光硬化型組成物を基体側に転写す
る、第5の工程と、(6) 光硬化型組成物を焼成する
ことによって、厚膜配線を基体上に形成する、第6の工
程とを備えることを特徴としている。
【0010】この発明において、透明板は、好ましく
は、石英ガラスからなる。また、好ましくは、透明板の
少なくとも溝の内壁面には、シリコーン系樹脂またはフ
ッ素系樹脂がコーティングされている。また、金属粉末
の平均粒径は、好ましくは、0.5〜5μmである。ま
た、好ましくは、基体は、セラミック板または生のセラ
ミックシートである。
【0011】
【発明の実施の形態】図1ないし図5は、この発明の一
実施形態による厚膜配線の形成方法を説明するためのも
のである。この方法は、図5に示すように、所望のパタ
ーンを有する厚膜配線1が形成された基板2を製造しよ
うとするものである。この方法を実施するため、図1に
示すような所望のパターンを有する溝3が表面に形成さ
れた透明板4が用意される。なお、溝3のパターンは、
形成しようとする厚膜配線1のパターンに対応してい
る。
【0012】透明板4は、一般的には、ガラスから構成
されるが、紫外線を透過する性質を有するものであれ
ば、どのような材質から構成されてもよい。好ましく
は、透明板4は、幅広い波長領域で高い透過率を有する
材質から構成される。以下の表1には、透明板4の材質
となり得るソーダガラスと合成石英ガラスとについて、
波長200〜450nmの領域における透過率(%)が
示されている。
【0013】
【表1】
【0014】表1に示すように、透明板4の材質とし
て、たとえば、合成石英ガラスを用いれば、波長200
〜450nmの領域において、90%以上の高い透過率
を有するので、幅広い紫外線に対応することができる。
このような透明板4の表面に微細な溝3を形成するた
め、たとえば、ケミカルエッチング法、リアクティブイ
オンエッチング法(RIE法)、レーザ法等の加工方法
を用いることができる。一例として、ケミカルエッチン
グ法を用いる場合、次のように、透明板4が処理され
る。
【0015】図2に示すように、透明板4上には、Cr
およびCr2 3 膜5が形成され、その上に、フォトレ
ジスト膜6が形成されている。フォトリソグラフィ技術
を適用して、透明板4の表面に、溝3を形成することを
可能にするためである。フォトレジスト膜6には、フォ
トリソグラフィ技術により、形成しようとする溝3に対
応する部分にギャップが形成され、これによって、フォ
トレジスト膜6が所望のレジストパターンを形成するよ
うにされる。
【0016】次いで、たとえば硝酸セリウム第2アンモ
ニウム溶液によって、CrおよびCr2 3 膜5がギャ
ップ部分においてエッチング除去される。さらに、たと
えばフッ酸および硝酸の水溶液によって、たとえば合成
石英ガラスからなる透明板4がギャップ部分において所
望の深さまでエッチングされ、それによって、溝3が形
成される。その後、たとえばKOH水溶液で残存するフ
ォトレジスト膜6が剥離され、再び硝酸セリウム第2ア
ンモニウム溶液で残存するCrおよびCr2 3 膜5が
除去される。
【0017】このようにして、図1に示すような溝3を
形成した透明板4が得られる。好ましくは、後述する光
硬化型組成物の、透明板4の表面に対する離型性を高め
るため、透明板4の表面、より特定的は、少なくとも溝
3の内壁面は、シリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂で
コーティングされる。このコーティングのため、たとえ
ば、市販のシリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂を用い
て、これをスプレーする方法、この溶液に漬ける方法、
あるいは、この溶液を刷毛等により塗布する方法を適用
できる。
【0018】また、厚膜配線1の材料となる光硬化型組
成物が用意される。光硬化型組成物は、金属粉末を、有
機バインダと光重合開始剤と光硬化性モノマーとからな
る有機ビヒクル中に分散させたものである。上述の金属
粉末としては、厚膜配線1が高周波伝送線路として用い
られるときには、この高周波伝送線路での伝送損失をで
きるだけ低減できる低抵抗の金属が用いられることが好
ましい。この点で、金属粉末のための金属としては、た
とえば、Au、Ag、Pd、PtおよびCuからなる群
から選ばれた少なくとも1種が有利に用いられる。
【0019】また、金属粉末の平均粒径は、好ましく
は、0.5〜5μmの範囲内に選ばれる。金属粉末の平
均粒径の好ましい範囲は、以下の表2に示したデータに
基づいて求められたものである。表2には、金属粉末と
して平均粒径0.1μm、0.5μm、1.0μm、
3.0μm、5.0μmおよび7.0μmの各Ag粉末
をそれぞれ用いながら、Ag粉末75wt%および有機ビ
ヒクル25wt%の配合比で光硬化型組成物を用意し、後
述する工程に従って、露光量500mj/cm2 をもっ
て、各光硬化型組成物により厚膜配線1を基板2上に形
成したときの厚膜配線1の基板2に対する接着性、基板
2上の厚膜配線1のライン精度、および基板2上での厚
膜配線1の表面状態を評価した結果が示されている。表
2において、◎は「非常に良好」、○は「良好」、×は
「悪い」、および、−は「データなし」を示している。
【0020】
【表2】
【0021】表2からわかるように、金属粉末の平均粒
径が0.5μm未満となると、紫外線照射時において、
光硬化型組成物の、基板2に接触する面およびその近傍
では、光硬化反応を生じさせるに足る光量が得られず、
厚膜配線1の基板2への接着性が損なわれる。他方、金
属粉末の平均粒径が5μmを超えると、光硬化型組成物
を透明板4の微細な溝3に均一に埋め込むことが困難と
なり、また、基板2上の厚膜配線1の表面状態が粗くな
り、パターン精度も低下する。その結果、厚膜配線1を
高周波伝送線路に用いたとき、ノイズ発生の原因とな
る。
【0022】また、有機ビヒクル中に含有される有機バ
インダとしては、たとえば、エチレン性不飽和基を有す
るエポキシアクリレートやポリエステルアクリレート等
のアクリル系重合体のポリマーやオリゴマーを主成分と
するものを用いることができる。また、光重合開始剤と
しては、紫外線照射によってフリーラジカルを発生させ
るものであればよく、たとえば、アントラキノン系、ベ
ンゾフェノン系、アンスラキノン系、等の炭素環系化合
物を用いることができる。
【0023】また、光硬化性モノマーは、反応希釈剤と
して用い、フリーラジカルによって連鎖成長付加重合し
てポリマーを形成する付加重合性のエチレン系不飽和化
合物の単独またはいくつかの組合せからなるもので、そ
の一般的に用いられるものとして、(メタ)アクリル酸
のエステル類がある。このような光硬化型組成物中に、
金属粉末の焼結性を高めるための焼結助剤として、ガラ
スフリットを添加することもできる。また、分散剤、沈
降防止剤、消泡剤、シランカップリング剤、可塑剤、顔
料(染料)等の有機系の添加剤を添加することもでき
る。
【0024】次に、図3に示すように、透明板4の溝3
が形成された表面上に、上述の光硬化型組成物を適当量
載せ、たとえばスキージ7を矢印8で示すように適当な
移動速度で移動させることにより、溝3内に光硬化型組
成物9を埋め込むことが行なわれる。このとき、スキー
ジ7として硬度の低いものを使用すると、溝3に埋め込
まれた光硬化型組成物9が掻き取られてしまうので、ス
キージ7を用いる場合には、硬度が高く、変形の小さい
材質のものを選択することが望ましい。
【0025】次に、図4に示すように、透明板4の溝3
が形成された表面側に基板2を配置し、溝3内の光硬化
型組成物9を基板2に接触させる。このとき、透明板4
と基板2とを密着させることが好ましい。次に、同じく
図4に示すように、透明板4側から溝3内の光硬化型組
成物9に紫外線10が照射される。これによって、光硬
化型組成物9は硬化され、基板2に接着した状態とな
る。紫外線10としては、たとえば、高圧水銀灯やメタ
ルハライドランプを光源とした波長領域のものを用いる
ことができ、これらによれば、2〜2000mj/cm2
の範囲の光量であっても、秒単位の高速で硬化させるこ
とが可能である。また、揮発成分を含まず、低温で硬化
させることができることも、このような光硬化型組成物
9の特徴の一つである。
【0026】次に、透明板4を基板2から分離すること
によって、図5に示すように、光硬化型組成物9を基板
2側に転写する。そして、基板2を焼成工程に付すこと
によって、光硬化型組成物9が焼成される。この焼成さ
れた光硬化型組成物9が、厚膜配線1となる。焼成プロ
ファイルは、有機ビヒクル中に分散させた金属粉末の成
分および粒子径や基板2の材質等によって適宜変更され
ることができる。また、焼成は、通常、空気中で行なう
が、たとえばCuを金属粉末として用いる場合には、酸
化を防止するため、不活性雰囲気中で行なわれる。
【0027】なお、基板2としては、通常、たとえばア
ルミナ基板のようなセラミック基板が用いられるが、こ
れに代えて、生のセラミックシートが用いられ、上述し
た光硬化型組成物9の焼成工程において、基板2となる
セラミックシートが同時に焼成されるようにしてもよ
い。また、基板2は、セラミック以外の材質からなるも
のでもよい。
【0028】また、上述した実施形態では、厚膜配線1
が形成される基体として、基板2が示されたが、たとえ
ば回路用電子部品のように、板の形態を有しないものが
基体とされてもよい。
【0029】
【実施例】2インチ角の合成石英ガラス板の上に、Cr
およびCr2 3 をスパッタリングで厚さ0.085μ
mに成膜し、その上にフォトレジストを厚さ1μmに塗
布した市販品を用い、これに、フォトリソグラフィ技術
を適用して、ライン/ギャップが10μm/30μmの
レジストパターンを形成した。
【0030】次に、ギャップ(レジストで形成したライ
ンとラインとの間)部分において、厚さ0.085μm
のCrおよびCr2 3 膜を硝酸セリウム第2アンモニ
ウム溶液でエッチング除去した。さらに、フッ酸および
硝酸の水溶液(HF:H2 NO:H2 O=10:5:1
85)で合成石英ガラスをギャップ部分において30μ
mの深さまでエッチングした。そして、KOH水溶液で
残存するフォトレジスト膜を剥離し、再び硝酸セリウム
第2アンモニウム溶液で残存するCrおよびCr2 3
膜5を除去した。
【0031】このようにして、ライン/溝が10μm/
30μmであり、かつ深さが30μmの微細な溝を有す
るガラス板を作製し、試料1として、このガラス板に表
面処理を施さないもの、試料2として、フッ素樹脂によ
る表面処理を施したもの、試料3として、シリコーン樹
脂による表面処理を施したものをそれぞれ用意した。な
お、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂による表面処理
は、それぞれが含有されている液をスプレーにより吹き
付けることにより行なった。
【0032】他方、金属粉末を含有した光硬化型組成物
を作製するため、黄色蛍光灯室にて、平均粒径が2.0
μmのAg微粉末75wt%、ならびに、有機バインダ、
光重合開始剤および光硬化性モノマーが含まれている市
販のエポキシアクリレート系光硬化性樹脂組成物25wt
%を混合し、攪拌擂潰機および3本ロールミルで混練し
た。
【0033】次いで、前述した試料1〜3に係る各ガラ
ス板の溝が形成された表面上に、上述の光硬化型組成物
を載せ、テフロン(商品名)製のスキージを用い、スキ
ージ圧2kg/cm2 、スキージスピード5mm/秒、およ
びアタック角25度の条件で、光硬化型組成物をガラス
板の溝内に埋め込んだ。次に、アルミナ基板をガラス板
の溝が形成された表面側に密着させ、ガラス板側からア
ルミナ基板へ紫外線が照射されるように、これを紫外線
発生装置上にセットし、405nmの波長の紫外線を5
00mj/cm2 の露光量になるように照射した。
【0034】次に、ガラス板をアルミナ基板からゆっく
りと離した後、アルミナ基板を焼成炉に投入した。焼成
炉としては、ベルト式焼成炉を用い、その焼成雰囲気を
空気とし、焼成プロファイルについては、昇温速度50
℃/分、最高焼成温度900℃、最高焼成温度保持時間
10分、および冷却速度50℃/分の各条件となるよう
に設定した。
【0035】このようにして、アルミナ基板上に微細な
厚膜配線を形成した。得られた試料1〜3に係る各厚膜
配線を、以下の表3に示すような項目について評価し
た。なお、評価項目の「ライン解像度」において、◎は
「非常に良好」、○は「良好」を示している。また、
「溝の幅」等の評価項目に関して、表3中に記載された
数字の単位は、すべて「μm」である。
【0036】
【表3】
【0037】表3から、試料1〜3に係る各厚膜配線
は、大きな膜厚を有しながら、微細な線幅を与えている
ことがわかる。特に、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂
による表面処理を施したガラス板を用いた試料2および
3によれば、このような表面処理を施していないガラス
板を用いた試料1に比べて、アスペクト比が1.0に近
く、より大きな膜厚を与えることができる。
【0038】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、焼成
により厚膜配線となる金属粉末を含む光硬化型組成物を
透明板の溝内に埋め込み、溝内の光硬化型組成物に基体
を接触させた状態で透明板側から紫外線を照射して光硬
化反応を生じさせ、それによって、光硬化型組成物を硬
化させるとともに基体に接着させ、その後において、硬
化した光硬化型組成物を基体側に転写するので、得られ
た厚膜配線において、にじみやパターン歪みが発生する
余地が実質的にない。
【0039】また、硬化前の光硬化型組成物を基体に接
触させた状態で硬化させることにより、光硬化型組成物
が基体に接着されるので、得られた厚膜配線は、基体と
の密着性を優れたものとすることができる。また、透明
板に形成される溝の断面寸法ないしは形状に対応した断
面寸法ないしは形状の厚膜配線が形成されるので、溝の
断面寸法ないしは形状を変更することにより、任意の断
面寸法ないしは形状を有する厚膜配線を形成することが
できる。このことは、溝の断面寸法および形状を選ぶこ
とにより、たとえば、線幅25μmに対して膜厚20μ
mというように、微細な線幅でありながら大きな膜厚を
有する、すなわちアスペクト比が1.0に近い厚膜配線
の形成が可能であるということを意味する。
【0040】したがって、この発明に係る方法で形成さ
れた厚膜配線によれば、低損失かつ低抵抗の高周波伝送
線路を実現でき、近年の回路用電子部品や高機能モジュ
ール基板等の小型化、高密度化に十分対応することがで
きる。また、この発明によれば、光硬化型組成物に関し
て、必要な部分に必要最小限の量だけ付与すればよく、
また、工程数に関しても、それほどの増加を招かず、さ
らに、装置に関しても、それほど高額なものが必要でな
いので、生産性に優れ、また、製造コスト的にも有利で
ある。
【0041】この発明において、透明板として石英ガラ
スが用いられると、透明板に対して、たとえば波長20
0〜450nmといった広い領域において、高い透過率
を与え得るので、透明板の溝内の光硬化型組成物を硬化
するため、幅広い紫外線を適用することができる。ま
た、この発明において、透明板の少なくとも溝の内壁面
に、シリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂がコーティン
グされていると、光硬化型組成物の、透明板に対する離
型性を高めることができ、したがって、線幅がより微細
で膜厚のより大きな厚膜配線を再現性良く形成するため
に有利である。
【0042】また、この発明において、光硬化型組成物
に含まれる金属粉末の平均粒径が、0.5〜5μmの範
囲内に選ばれると、得られた厚膜配線の基板に対する接
着性を優れたものとし、また、基板上の厚膜配線のライ
ン精度が高められ、さらに、基板上での厚膜配線の表面
状態を優れたものとし、高周波伝送線路に用いたときの
ノイズ発生を抑制することができる。
【0043】また、この発明において、基体として、セ
ラミック板または生のセラミックシートが用いられる
と、この発明を実施することにより、高機能モジュール
基板のように、厚膜配線を有する基板を能率的に製造す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による厚膜配線の形成方
法において用意される、溝3が表面に形成された透明板
4を図解的に示す断面図である。
【図2】図1に示した溝3をフォトリソグラフィ技術に
より形成するためにCrおよびCr2 3 膜5ならびに
フォトレジスト膜6が形成された透明板4を図解的に示
す断面図である。
【図3】透明板4の溝3内に光硬化型組成物9を埋め込
む工程を図解的に示す断面図である。
【図4】透明板4の溝3内の光硬化型組成物9に基板2
を接触させながら、光硬化型組成物9に紫外線10を照
射する工程を図解的に示す断面図である。
【図5】基板2側に転写された光硬化型組成物9を焼成
して厚膜配線1とする工程を図解的に示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1 厚膜配線 2 基板(基体) 3 溝 4 透明板 6 スキージ 9 光硬化型組成物 10 紫外線
フロントページの続き (72)発明者 鷹木 洋 京都府長岡京市天神二丁目26番10号 株式 会社村田製作所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に厚膜配線を形成するための方法
    であって、 基体、所望の厚膜配線のパターンに対応するパターンを
    有する溝が表面に形成された、紫外線を透過する透明
    板、および、金属粉末と有機バインダと光重合開始剤と
    光硬化性モノマーとを含む光硬化型組成物をそれぞれ用
    意する、第1の工程と、 前記透明板の表面に形成された前記溝に、前記光硬化型
    組成物を埋め込む、第2の工程と、 前記透明板の前記溝が形成された表面側に前記基体を配
    置し、前記溝内の前記光硬化型組成物を前記基体に接触
    させる、第3の工程と、 前記透明板側から前記光硬化型組成物に紫外線を照射し
    て前記光硬化型組成物を硬化させるとともに、前記光硬
    化型組成物を前記基体に接着させる、第4の工程と、 前記透明板を前記基体から分離して、硬化した前記光硬
    化型組成物を前記基体側に転写する、第5の工程と、 前記光硬化型組成物を焼成することによって、厚膜配線
    を前記基体上に形成する、第6の工程とを備える、厚膜
    配線の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記透明板は、石英ガラスからなる、請
    求項1に記載の厚膜配線の形成方法。
  3. 【請求項3】 前記透明板の少なくとも前記溝の内壁面
    には、シリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂がコーティ
    ングされている、請求項1または2に記載の厚膜配線の
    形成方法。
  4. 【請求項4】 前記金属粉末の平均粒径は、0.5〜5
    μmである、請求項1ないし3のいずれかに記載の厚膜
    配線の形成方法。
  5. 【請求項5】 前記基体は、セラミック板または生のセ
    ラミックシートである、請求項1ないし4のいずれかに
    記載の厚膜配線の形成方法。
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