JPH11140723A - 吸湿性に優れた3成分複合繊維 - Google Patents

吸湿性に優れた3成分複合繊維

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JPH11140723A
JPH11140723A JP10236899A JP23689998A JPH11140723A JP H11140723 A JPH11140723 A JP H11140723A JP 10236899 A JP10236899 A JP 10236899A JP 23689998 A JP23689998 A JP 23689998A JP H11140723 A JPH11140723 A JP H11140723A
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polymer
fiber
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hot water
hygroscopic
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JP10236899A
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Yoshitaka Aranishi
荒西義高
Nobuyoshi Handa
半田信義
Jiro Amano
天野慈朗
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】仮撚加工や撚糸加工のような糸加工を行った場
合にも、染色工程における鞘部の割れを生じない、商品
価値の高い吸湿性合成繊維を提供すること。 【解決手段】鞘成分が繊維形成性を有する熱可塑性ポリ
マー(A)よりなり、芯成分が、30℃×90%R.H.におけ
る吸湿率が10.0%以上であるポリマー(B)と熱水に可
溶のポリマー(C)とからなる3成分複合繊維によって
達成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は吸湿性に優れた熱可
塑性合成繊維に関する。さらに詳しくはインナー、中
衣、スポーツ衣料などの衣料用素材に特に好適な、吸湿
性、染色堅牢性、耐候性に優れた3成分複合繊維を高次
加工性良好に提供するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルやポリアミドに代表される
熱可塑性合成繊維は、機械的強度、耐薬品性、耐熱性な
どに優れるため、衣料用途や産業用途などを中心に広く
使用されている。
【0003】しかしながら、これらの合成繊維はきわめ
て吸湿性が低いため、インナー、中衣、スポーツ衣料な
どのように、直接的に肌に触れた状態で、あるいは肌に
近い状態で着用される場合には快適性において天然繊維
よりも著しく劣るという欠点を有している。
【0004】この欠点を解消するため、例えば特開昭48
-8270号公報に提案されているように、側鎖にオキシア
ルキレングリコールを有するジオールの共重合、特開平
2-26985号公報におけるスルホン酸金属塩含有ジカルボ
ン酸の共重合など、ポリエステルに吸湿性能を有する化
合物を共重合する方法が提案されている。しかし、吸湿
成分を共重合することによって繊維全体が改質されてし
まうことになるため、染色堅牢度および耐候性が低下し
たり、優れた機械的特性というポリエステル本来の特性
が失われてしまうという大きな問題を有している。
【0005】また、特開昭61-282476号公報、特公昭59-
17224号公報にみられるように、ポリエステル繊維にア
クリル酸やメタアクリル酸をグラフト重合して、それら
のカルボキシル基をアルカリ金属で置換することにより
吸湿性を付与する方法が知られているが、染色堅牢度や
耐光性の低下、吸湿部分が繊維表層に付着していること
による布帛風合いの硬化などの問題を潜在的に有してい
ることから、実用化には至っていない。
【0006】これらの問題を解決するため、吸湿性を有
する吸湿性樹脂を芯部とし、ポリエステルの鞘部で覆っ
た芯鞘型複合繊維が特開平2-99612号公報、特開平4-361
616号公報、特開平4-341617号公報等に提案されてい
る。しかしながらこれらの複合繊維を用いた場合、精練
や染色などの熱水処理時に芯部の吸湿性樹脂が水を吸水
して大きく膨潤するため、繊維表面にひび割れ(鞘割
れ)を生じ、吸湿性樹脂の外部への流出や、繊維のフィ
ブリル化による毛羽の発生等、布帛品位が低下する欠点
があった。
【0007】また、特開平6-13660号公報では吸湿性の
芯部と繊維形成性ポリマーの鞘部からなる芯鞘複合繊維
を用い、熱水処理して芯部を膨潤させた後、乾燥させる
ことによって中空部を形成させる吸湿繊維の製造方法
が、また特開平7-278964号公報では、芯部が膨潤しても
鞘割れを起こさないよう繊維形成性共重合ポリエステル
またはポリアミド類を中間層に配した複合繊維が提案さ
れている。しかし、いずれの場合にも、熱水処理時の芯
ポリマーの外周は繊維形成性ポリマーに密着しており、
繊維形成性ポリマーの膨潤度は吸湿ポリマーの膨潤度よ
りも格段に小さいため、鞘割れを完全に防ぐことはでき
ず、高次工程でのトラブルや商品価値の低下を生じやす
い欠点を有している。
【0008】そこで、前もって溶融紡糸の段階から吸湿
性の芯成分に隣接する中空部を設けておく方法が、特開
平9-111579号公報また特開昭52-55721号公報により提案
されている。中空部を設けることによって芯部の吸湿ポ
リマーの膨潤スペースが確保されており、これによって
染色等の熱水処理時の鞘割れが抑制される一定の効果が
認められる。しかし、本発明者らの検討によれば、この
ように溶融紡糸の段階から中空部を有する複合繊維の場
合には、仮撚加工や撚糸加工といった繊維に剪断応力が
加えられる糸加工処理を行うと、中空部が存在するため
断面形状は大きく変化し中空部の潰れが生じる傾向にあ
る。その結果、仮撚加工や撚糸加工を行った場合には、
実質的に芯成分の吸湿ポリマーと鞘成分の繊維形成性ポ
リマーが密着した状態で構造が固定されてしまい、その
後の染色工程においては結果的に芯部の膨張による鞘割
れが生じてしまう問題を有している。すなわち、前もっ
て中空部を設けた複合繊維は、現在布帛の風合い出しに
は欠かせない加工となっている仮撚加工や撚糸加工が行
えないという大きな欠点を有しており、その利用の範囲
はきわめて限られているといわざるを得ない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記
従来技術の問題点を克服し、仮撚加工や撚糸加工のよう
な糸加工処理を行った場合にも、染色工程における鞘部
の割れを生じない、商品価値の高い吸湿性合成繊維を提
供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記した本発明の目的
は、鞘成分が繊維形成性を有する熱可塑性ポリマー
(A)よりなり、芯成分が、30℃×90%R.H.における吸
湿率が10.0%以上であるポリマー(B)と熱水に可溶の
ポリマー(C)とから構成されることを特徴とする吸湿
性に優れた3成分複合繊維によって達成できる。
【0011】
【発明の実施の形態】鞘成分として用いられる繊維形成
性ポリマー(A)としては、ポリエチレン、ポリプロピ
レン等のポリオレフィン類、ナイロン6、ナイロン66
等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
ブチレンテレフタレート等のポリエステル類が挙げられ
るが、溶融紡糸可能であって繊維形成性を有するポリマ
ーであれば特に制限されるものではない。これらのポリ
マーの中でも衣料用合成繊維として最も汎用性の高い、
エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポ
リエステル系重合体が好適に用いられる。この場合、繊
維の機械的特性を保持するため、70モル%以上がエチレ
ンテレフタレート繰り返し単位からなることが望ましい
が、本発明の目的を損なわない範囲で他の第3成分が共
重合されていてもよい。例えばテレフタル酸の代わりに
用いうる化合物としては、イソフタル酸、2,6-ナフタレ
ンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アジピン
酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、5-
ナトリウムスルホイソフタル酸、5-テトラブチルホスホ
ニウムイソフタル酸等の芳香族、脂肪族、脂環族ジカル
ボン酸およびそれらの誘導体を挙げることができる。エ
チレングリコールの代わりに用いうるジオール化合物と
しては、プロピレングリコール、テトラメチレングリコ
ール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレング
リコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレング
リコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのよう
な芳香族、脂肪族、脂環族のジオール化合物を挙げるこ
とができる。なお、これらのポリマーには必要に応じ
て、例えば艶消し剤、制電剤、消臭剤、微細孔形成剤等
を含有せしめてもよい。
【0012】芯部を構成する成分である吸湿性ポリマー
(B)は、本発明の3成分複合繊維に吸湿性を与える役
割を有している。該吸湿性ポリマー(B)の30℃×90%
R.H.における吸湿率は10.0%以上であることが必要であ
り、これより吸湿率が低いポリマーを用いた場合にはた
とえ複合比を高くしたとしても、望ましい吸湿特性を有
する繊維を得ることは困難である。吸湿性ポリマー
(B)の30℃×90%R.H.における吸湿率は、より好まし
くは15.0%以上、最も好ましくは20.0%以上である。こ
こで、30℃×90%R.H.の吸湿率(以下MR30と略す)と
は、絶乾状態のポリマー重量をWd(g)、30℃×90%R.H.
の雰囲気下で24時間調湿したポリマーの重量をW30(g)と
すると、下式4にて定義することができる。 MR30(%)= ((W30-Wd)/ Wd)×100 (式4) また、このような吸湿性ポリマー(B)の具体例として
は、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリ
エーテルエステルアミドなどの、ポリエーテル繰り返し
単位を有する共重合ポリマー、セルロースアセテート、
セルロースプロピオネートなどの熱可塑性セルロース誘
導体ポリマーなどが例示できる。さらには、ポリアクリ
ル酸ソーダ、ポリNビニルピロリドン、ポリアクリル
酸、ポリアルキレングリコール等の水溶性ポリマーの一
部を架橋して非水溶性としたポリマーも用いることがで
きる。安定した製糸性の観点からは、ポリエーテルエス
テル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミ
ド、架橋ポリアルキレングリコールが好ましく用いられ
るが、中でもポリエーテルエステルがきわめて高い吸湿
特性を示し、また紡糸・延伸性、耐熱性に優れている。
ここで、特に好ましいポリエーテルエステルとしては、
ポリエステルに分子量が600〜20000のポリアルキレング
リコールを30〜97重量%共重合したポリマーを挙げるこ
とができる。ポリエーテルエステルの酸成分としてはテ
レフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボ
ン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカ
ルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボ
ン酸等を用いることができる。またグリコール成分とし
てはエチレングリコール、プロピレングリコール、テト
ラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペ
ンチルグリコール等のジオールの他、熱可塑性を損なわ
ない範囲でトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリッ
ト酸、ペンタエリスリトールのようなポリオールを使用
することができる。
【0013】芯部を構成するもうひとつの成分である熱
水可溶ポリマー(C)は、吸湿性ポリマー(B)と共に
複合繊維の芯部を構成する成分であって、染色工程、特
に仮撚加工や撚糸加工を行った後の染色工程において鞘
割れを生じないために、必要不可欠の構成要素である。
すなわち、本発明の熱水可溶ポリマー(C)を配した3
成分複合繊維を用いた場合には、繊維に剪断応力が加わ
る糸加工を行った場合にも、糸加工の段階では繊維に中
空部が存在しないため糸の断面変化も小さく、熱水可溶
ポリマー(C)の占める面積も確保されている。その後
の熱水処理の段階においては、吸湿性ポリマー(B)の
膨潤に先立って熱水可溶ポリマー(C)の繊維外への溶
出が生じるため、その結果、芯部の膨潤鞘割れを抑制す
ることができ、また優れた吸湿特性を付与するために必
要な中空部も形成させることができるものである。
【0014】熱水可溶ポリマー(C)として用いうるポ
リマーとしては、溶融紡糸可能な重合体であって熱水に
可溶なポリマーであれば特に制限されない。ここで熱水
可溶のポリマーとは、95℃の大過剰の熱水浴中で当該ポ
リマーを1時間処理した際に、その重量の80%以上が溶
解するものをいう。
【0015】このようなポリマーの具体例としては、ポ
リアルキレングリコール、スルホイソフタル酸共重合ポ
リエステル、ポリアルキレングリコール共重合ポリエス
テル、ポリビニルアルコール系ポリマー、水溶性ポリア
ミド類等を挙げることができる。紡糸性、工程通過性、
熱水可溶性の観点から好ましいものとしては、ポリアル
キレングリコール、スルホイソフタル酸共重合ポリエス
テル、ポリアルキレングリコール共重合ポリエステルを
挙げることができる。
【0016】ポリアルキレングリコールはその曳糸性の
観点から、平均分子量が20000以上のものが好ましい。
より好ましくは分子量50000以上、さらに好ましくは100
000以上のものが使用できる。これら分子量の高いポリ
アルキレングリコールはポリエチレンオキサイドとよば
れることもある。
【0017】熱水に可溶のスルホイソフタル酸共重合ポ
リエステルとしては具体的には、例えば下記(イ)およ
び(ロ)の重合体を例示することができる。 (イ)主たる酸成分であるテレフタル酸の他に、8〜15m
ol%の5-ナトリウムスルホイソフタル酸、および5〜40m
ol%のイソフタル酸を用い、主たるジオール成分として
エチレングリコールを用いて得られる共重合ポリエステ
ル。
【0018】(ロ)主たる酸成分であるテレフタル酸の
他に、1〜15mol%の5-ナトリウムスルホイソフタル酸、
および20mol%以下のイソフタル酸を用い、主たるジオ
ール成分としてエチレングリコールとビスフェノールA
のエチレンオキサイド付加物を用いて得られる共重合ポ
リエステル。
【0019】また、ポリアルキレングリコール共重合ポ
リエステルは、そのポリエステル部分が主として脂肪族
ポリエステルからなることが、優れた水溶性の観点から
好ましい。ポリエステル部分を構成するジカルボン酸と
しては、具体的にはアジピン酸、セバシン酸、1,4-シク
ロヘキサンジカルボン酸などがあげられる。これらポリ
アルキレングリコールを有する共重合ポリエステルは、
高温の溶融紡糸に耐え、熱水あるいは冷水にも容易に溶
解するため、好ましい熱水可溶ポリマーであるといえ
る。
【0020】本発明の3成分複合繊維は、繊維の断面に
おいて、繊維形成性ポリマー(A)の占める面積の比率
SA(%)、吸湿性ポリマー(B)の占める面積の比率SB
(%)、熱水可溶ポリマー(C)の占める面積の比率SC
(%)が下記式1〜3を同時に満足することが望ましい。 40 ≦ SA ≦ 90 (式1) 5 ≦ SB ≦ 55 (式2) 5 ≦ SC ≦ 55 (式3) 繊維の強度が低い場合、製織工程の通過性が劣り、毛羽
が多発し布帛の商品価値を著しく低下させる原因とな
る。繊維形成性ポリマー(A)は、吸湿性ポリマー
(B)および熱水可溶ポリマー(C)に比較して優れた
機械的性質を有しているので、該繊維形成性ポリマー
(A)は繊維断面積全体の少なくとも40%、好ましくは
60%以上を占めることが望ましい。
【0021】熱水可溶ポリマー(C)は熱水処理にて溶
出し、繊維内部に空隙部を生じさせる役割を有してい
る。この空隙部は最終製品の吸湿特性に大きく影響を及
ぼし、繊維断面の空隙部が全体の5%に満たない場合に
は、吸湿性ポリマー(B)としていかに高い吸湿特性を
有するポリマーを用いたとしても、繊維形成性ポリマー
に阻まれて吸湿時に膨潤することが困難になるため、望
ましい吸湿特性を有する最終製品は得られない。そのた
め、熱水可溶ポリマー(C)が繊維断面において占める
割合SBは5%以上であることが望ましい。ただし、SB
高くしていくことは繊維形成性ポリマー(A)の割合を
低くする傾向、すなわち繊維強度を低下させる方向にな
るので、その上限は55%、好ましくは40%以下が望まし
い。
【0022】吸湿性ポリマー(B)が繊維断面において
占める割合SCは、吸湿性ポリマーそのものの有する吸湿
特性によって若干異なるが、最終製品に望ましい吸湿特
性を付与するためには、少なくとも5%以上、好ましく
は10%以上であることが望ましい。ただし、SCを高くし
ていくことは繊維形成性ポリマー(A)の割合を低くす
る傾向、すなわち繊維強度を低下させる方向になるの
で、その上限は55%、好ましくは40%以下であることが
望ましい。
【0023】複合繊維の断面における各ポリマーの配列
に関しては、繊維形成性ポリマー(A)が芯成分を構成
するポリマー(B)および(C)を被覆しており、芯成
分を形成するポリマー(B)および(C)はサイドバイ
サイド型に接合してなること、すなわち、少なくともそ
の周の一部が隣接して存在することが望ましい。これは
熱水可溶ポリマー(C)が溶出された後の中空部を吸湿
性ポリマー(B)の膨潤スペースとして有効に活用する
ことができ、吸湿特性に優れた製品とすることができる
からである。また、熱水可溶ポリマー(C)の繊維中か
らの熱水溶出性は繊維表面からの距離に依存するので、
サイドバイサイド型に接合した芯部を繊維中心よりも偏
って存在させ、熱水可溶ポリマー(C)が吸湿性ポリマ
ー(B)に比較して、より繊維表層側に位置するように
偏芯構造となっていることがより好ましい。
【0024】また、熱水可溶ポリマー(C)と吸湿性ポ
リマー(B)はサイドバイサイド型ではなく、繊維形成
性ポリマー(A)が最外層を、熱水可溶ポリマー(C)
が中間層を、吸湿性ポリマー(B)が最内層をそれぞれ
形成し、三重芯鞘構造をなしている複合繊維としてもよ
い。この場合にも、熱水処理にて熱水可溶ポリマー
(C)の少なくとも一部が溶解除去され、最終製品とし
ては吸湿性ポリマー(B)に隣接する中空部が生じて、
鞘割れや吸湿性不足等の問題を生じることなく、商品価
値の高い吸湿性合成繊維を得ることができるのである。
【0025】また、芯部を繊維中心よりも偏って存在さ
せ偏芯構造とすることも、好ましく適用できる。偏芯構
造とした場合には、熱水可溶ポリマー(B)が繊維表面
の近くに存在することになるため、その後の溶脱処理が
容易になるばかりでなく、吸湿ポリマー(B)と繊維表
面との距離が近くなることによって吸湿性能が優れると
いう効果がある。
【0026】本発明の3成分複合繊維を紡糸する方法
は、従来公知の方法が適用できる。すなわち、3成分を
それぞれ別々に溶融して、溶融したポリマー流を保温さ
れている配管を通じて口金パックへと導入し、所定の繊
維断面が得られるよう設計された紡糸口金を通じて紡出
する。紡出した繊維は、所定の速度で引き取った後、一
旦パッケージに巻き上げ、得られた未延伸糸を通常の延
伸機にて延伸する。或いは、引取った後、巻取ることな
く連続して延伸を行う方法を用いてもよいし、4000m/分
以上の高速で引取り、一挙に所望の繊維性能をうる方法
を採用してもよい。
【0027】得られた延伸糸はそのまま、あるいは仮撚
加工、撚糸加工などの糸加工を行った後、製織あるいは
編立てを行う。仮撚加工に関しては、上記方法によって
得られた延伸糸を用いて仮撚加工を行っても良いが、25
00〜3500m/min程度の紡糸速度で巻き取り、部分的に配
向が進んだ未延伸糸(POY)を得て、これを用いて仮撚
延伸加工を行うようにしてもよい。得られた布帛、編地
は、アルカリ減量処理、染色処理等が行われた後、最終
の製品となる。
【0028】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的にかつ
より詳しく説明する。なお、実施例中の物性は以下の方
法によって測定した。
【0029】A.ポリエステルの固有粘度(IV) 25℃のオルソクロロフェノール溶液を用いて常法により
測定した。
【0030】B.染色堅牢性 染色後の布帛(5cm×5cm)をアセトンに6時間浸漬
し、浸漬後のアセトンの着色度合いを比較した。アセト
ンの着色度合いは無色(5級)→濃色(1級)の5段階
に分けて判断した。アセトンの着色度合いが小さいほど
染色堅牢性が良好である(数字が大きいほど良好)。
【0031】C.布帛の吸湿特性(△MR) 30℃×90%R.H.時の吸湿率(MR30)と20℃×65%R.H.時
の吸湿率(MR20)との差で与えられる△MRを式6により
求めて、布帛の吸湿特性のパラメーターとした。MR30
よびMR20は、布帛を約1g用意し、その絶乾時の重量
(Wd)と30℃×90%R.H.および20℃×65%R.H.の雰囲気
下、恒温恒湿機(ナガノ科学機械製 LH-20-11M)中に24
時間放置後の重量(それぞれW30, W20とする)との重量
変化から、それぞれ式4および式5により求めた。
【0032】 MR30(%)=((W30 - Wd)/ Wd)×100 (式4) MR20(%)=((W20 - Wd)/ Wd)×100 (式5) △MR(%)= MR30−MR20 (式6) この、△MRは軽〜中作業(あるいは軽〜中運動)を行っ
た際の、衣服内温湿度(30℃×90%R.H.)と外気温湿度
(20℃×65%R.H.)における吸湿度差に対応しており、
△MRの値が大きいほど吸湿特性が優れており、着用時の
快適性が良好であることを意味する。
【0033】参考例1 (吸湿性ポリマー(B)の重
合) 吸湿性ポリマー(B)として用いるポリエーテルエステ
ルは以下のようにして得た。テレフタル酸ジメチル194
部、エチレングリコール113部、およびテトラブチルチ
タネート0.05部を加え、140〜230℃でメタノールを留出
しつつエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル
0.1部のエチレングリコール溶液および分子量4000のポ
リエチレングリコール768部(70重量%)、抗酸化剤と
してIrganox1010(チバガイギー製)0.1部、消泡剤とし
てシリコーン0.1部およびテトラブチルチタネート0.05
部を加え、1.0mmHgの減圧下250℃の条件下で4時間重合
を行い、得られたポリマーを吐出し、細断してチップ状
にした。このポリマーのMR30は42%であった。
【0034】実施例1 繊維形成性ポリマー(A)として固有粘度(IV)が0.
65のポリエチレンテレフタレートを、吸湿性ポリマー
(B)として参考例1で重合したポリエーテルエステル
を、熱水可溶ポリマー(C)として12モル%の5-ナトリ
ウムスルホイソフタル酸と25モル%のイソフタル酸を共
重合した共重合ポリエステルを用いた。これらポリマー
は別々のスクリュー押出機で溶融し、各々ギヤポンプで
計量して複合口金パックへ送り込み、先ずポリマー
(B)とポリマー(C)をサイドバイサイド型に接合さ
せて同一のポリマー流とした後、該ポリマー流をポリマ
ー(A)により被覆させて、芯部と鞘部が同心円状とな
るよう紡出した。各ポリマーの吐出量は、断面における
面積比率(%)がA/B/C=70/15/15となるように
調節した。口金より紡出された糸状は1350m/minで引き
取って一旦巻上げた後、この未延伸糸を通常の延伸機に
て延伸倍率2.8倍で延伸して、75D-24fの3成分複合繊維
を得た。
【0035】該3成分複合繊維を用いて撚数3500T/m、
熱板温度200℃にて仮撚捲縮加工を行い、得られた仮撚
加工糸を経糸および緯糸として製織し、生機を得た。該
生機は、助剤としてNaOH 1g/l、トリポリリン酸ナトリ
ウム2g/l、界面活性剤2g/lを溶解させた95℃の熱水中
で、浴比1:30の条件で60分間熱水処理を行った。その
後、中間セットを行い、分散染料3%owfにて染色、仕上
げセットを施して羽二重織物を得た。
【0036】この布帛試料の吸湿率差を測定したところ
△MRは4.5%であり、良好な吸湿特性を有していた。ま
た、繊維の断面を観察したところ、熱水可溶ポリマーは
約半量が溶出しており、中空部を形成していることが確
認された。また、アセトン抽出法による染色堅牢度は5
級であり、染色堅牢性は良好であった。
【0037】実施例2〜4 各ポリマー成分の構成比率(%)を変更したこと以外
は、実施例1と同様の方法で、3成分複合繊維を得た。
実施例1と同様に、得られた繊維に仮撚加工を施し、熱
水処理を行った後、中間セット、染色後、最終セットを
施して羽二重織物を得た。
【0038】各々の織物特性を表1に示したが、吸湿性
ポリマー(B)の比率を8%とした水準(実施例3)で
は、△MRが3.1%であり、若干吸湿性が低くなる。ま
た、熱水可溶ポリマー(C)の比率を8%とした水準
(実施例4)では染色堅牢度が4級となり、染色堅牢性
が若干低くなった。しかし、いずれの場合にも吸湿性繊
維として満足できる水準を有するものであった。
【0039】実施例5 サイドバイサイド型に張り合わされた芯部を繊維中心よ
り偏芯させるように口金装置を用い、ポリマー構成をA
/B/C=70/20/10としたこと以外は、実施例1と同様
の方法で3成分複合繊維を得た。未延伸糸の断面は図2
に示す形状であった。実施例1と同様に、得られた繊維
に仮撚加工を施し、熱水処理を行った後、中間セット、
染色後、最終セットを施して羽二重織物を得た。
【0040】織物特性は表1に示した通り、△MRが4.9
%、染色堅牢度が5級であり、優れた特性を有している
ことが分かった。
【0041】実施例6 繊維形成性ポリマー(A)が最外層を、熱水可溶ポリマ
ー(C)が中間層を、吸湿性ポリマー(B)が最内層を
それぞれ形成し、三重芯鞘構造をなすように口金装置を
用いること以外は、実施例1と同様の方法で3成分複合
繊維を得た。未延伸糸の断面は図3に示す形状であっ
た。実施例1と同様に、得られた繊維に仮撚加工を施
し、95℃で60分間熱水処理した後、中間セット、染色
後、最終セットを施して羽二重織物を得た。
【0042】織物特性は表1に示した通り、吸湿特性
(△MR)、染色堅牢性ともに優れたものであった。
【0043】実施例7 熱水可溶ポリマーとして分子量約10万のポリエチレン
オキサイド(明成化学工業(株)性アルコックスR-15
0)を用いる他は実施例1と同様にして、3成分複合繊
維を得た。得られた繊維に仮撚加工を施し、熱水処理を
行った後、中間セット、染色後、最終セットを施して羽
二重織物を得た。
【0044】織物特性は表1に示した通り、△MRが4.
2%、染色堅牢度が5級であり、優れた特性を有してい
ることが分かった。
【0045】実施例8 熱水可溶ポリマーとしてポリエチレングリコール共重合
ポリエステル(第一工業製薬(株)性パオゲンPP-150)
を用いる他は実施例1と同様にして、3成分複合繊維を
得た。得られた繊維に仮撚加工を施し、熱水処理を行っ
た後、中間セット、染色後、最終セットを施して羽二重
織物を得た。
【0046】織物特性は表1に示した通り、△MRが4.
8%、染色堅牢度が5級であり、優れた特性を有してい
ることが分かった。
【0047】比較例1 熱水可溶ポリマー(C)を用いず、ポリマー構成をA/
B/C=66/29/0とし、吸湿ポリマー(B)に隣接し
て5%の中空部が存在するように、2成分芯鞘複合中空
口金を用いる以外は、実施例1記載の条件と同様に複合
繊維を得た。未延伸糸の断面は図4に示す形状であっ
た。得られた繊維に仮撚加工を施し、95℃で20分間熱水
中にてリラックス精練した後、中間セット、染色後、最
終セットを施して羽二重織物を得た。
【0048】仮撚加工によって中空部が潰れたことによ
り、精練・染色の熱水処理時に鞘割れが発生して、染色
堅牢度が1級ときわめて劣るものであった。
【0049】比較例2 吸湿性ポリマー(B)として、30℃×90%R.H.における
吸湿率が4.2%であるナイロン6を用いること以外は、
実施例1記載の条件と同様に複合繊維を得た。得られた
繊維に仮撚加工を施し、95℃で20分間熱水中にてリラッ
クス精練した後、中間セット、染色後、最終セットを施
して羽二重織物を得た。
【0050】織物特性を表1に示したが、△MRは0.6%
であり、吸湿性の乏しいものであった。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】本発明の3成分複合繊維は、着用快適性
を得るのに十分な吸湿性、高い染色堅牢性および耐候性
を有している。また、本発明の3成分複合繊維は、熱水
処理の工程において吸湿性ポリマーの膨潤に先立って熱
水可溶ポリマーの溶出が生じるため、仮撚加工や撚糸加
工のような繊維に剪断応力がかかる糸加工処理を行った
場合にも、芯部の膨潤鞘割れを抑制することができる。
そのため、インナー、下着、裏地等の中衣用や、シャツ
・ブラウス、スポーツウェア、スラックス等の外衣用、
さらにはシーツ、布団カバー等の寝装用など、きわめて
広い分野に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる複合繊維の一例を示す断面図で
ある。
【図2】本発明で用いる複合繊維の一例を示す断面図で
ある。
【図3】本発明で用いる複合繊維の一例を示す断面図で
ある。
【図4】従来公知の芯鞘型複合中空繊維の一例を示す断
面図である。
【符号の説明】
A:繊維形成性ポリマー(A)成分 B:吸湿性ポリマー(B)成分 C:熱水可溶ポリマー(C)成分

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鞘成分が繊維形成性を有する熱可塑性ポリ
    マー(A)よりなり、芯成分が、30℃×90%R.H.におけ
    る吸湿率が10.0%以上であるポリマー(B)と熱水に可
    溶のポリマー(C)とから構成されることを特徴とする
    吸湿性に優れた3成分複合繊維。
  2. 【請求項2】繊維の断面において、繊維形成性ポリマー
    (A)の占める面積の比率SA(%)、吸湿性ポリマー
    (B)の占める面積の比率SB(%)、熱水可溶ポリマー
    (C)の占める面積の比率SC(%)が下記式1〜3を同時
    に満足することを特徴とする請求項1記載の吸湿性に優
    れた3成分複合繊維。 40 ≦ SA ≦ 90 (式1) 5 ≦ SB ≦ 55 (式2) 5 ≦ SC ≦ 55 (式3)
  3. 【請求項3】繊維形成性ポリマー(A)が芯成分を構成
    するポリマー(B)および(C)を被覆しており、芯成
    分を形成するポリマー(B)および(C)はサイドバイ
    サイド型に接合してなることを特徴とする請求項1また
    は2記載の吸湿性を有する3成分複合繊維。
  4. 【請求項4】繊維形成性ポリマー(A)が最外層を、熱
    水可溶ポリマー(C)が中間層を、吸湿性ポリマー
    (B)が最内層をそれぞれ形成し、三重芯鞘構造をなし
    ていることを特徴とする請求項1または2記載の吸湿性
    を有する3成分複合繊維。
  5. 【請求項5】吸湿性ポリマー(B)と熱水可溶ポリマー
    (C)よりなる芯成分が、繊維中心より偏心して存在し
    ており、熱水可溶ポリマー(C)が吸湿性ポリマー
    (B)に比較して、より繊維表層側に位置していること
    を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の吸湿性
    に優れた3成分複合繊維。
  6. 【請求項6】繊維形成性ポリマー(A)がエチレンテレ
    フタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステル系
    重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか
    1項記載の吸湿性に優れた3成分複合繊維。
  7. 【請求項7】吸湿性ポリマー(B)がポリエーテルエス
    テル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミ
    ド、架橋ポリアルキレングリコールから選ばれる少なく
    とも1種の熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請
    求項1〜6のいずれか1項記載の吸湿性に優れた3成分
    複合繊維。
  8. 【請求項8】熱水可溶ポリマー(C)がポリアルキレン
    グリコール、スルホイソフタル酸共重合ポリエステル、
    ポリアルキレングリコール共重合ポリエステルから選ば
    れる少なくとも1種の熱可塑性ポリマーであることを特
    徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の吸湿性に優
    れた3成分複合繊維。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7238423B2 (en) 2004-12-20 2007-07-03 Kimberly-Clark Worldwide, Inc. Multicomponent fiber including elastic elements

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