JPH1111947A - アンチモンドープ酸化錫粉末の製造方法とこれを含む塗料 - Google Patents

アンチモンドープ酸化錫粉末の製造方法とこれを含む塗料

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JPH1111947A
JPH1111947A JP9170302A JP17030297A JPH1111947A JP H1111947 A JPH1111947 A JP H1111947A JP 9170302 A JP9170302 A JP 9170302A JP 17030297 A JP17030297 A JP 17030297A JP H1111947 A JPH1111947 A JP H1111947A
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ato
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トモ子 岡
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水熱法によりATO微粒子の分散液および粉
末を製造する方法において、3価のアンチモン化合物を
用いても、酸化剤を使用せずに導電性と分散性の高いA
TO微粒子を得ることができる方法を提供する。 【解決手段】 錫化合物と3価アンチモン化合物とを含
有する微粒子スラリー(例、錫塩とアンチモン塩の酸性
水溶液をアルカリで加水分解させることにより形成した
錫とアンチモンの水和酸化物の共沈スラリー) を、超臨
界水で、即ち、374 ℃以上の温度で水熱処理し、必要に
より分散粒子を分離する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性と分散性の
いずれにも優れた微細なアンチモンドープ酸化錫粉末お
よびその分散液の製造方法と、この粉末を含有する透明
導電性塗料とに関する。
【0002】
【従来の技術】アンチモンドープ酸化錫(以下、ATO
と略記)は、少量の酸化アンチモンを含有する酸化錫で
あって、導電性を示す酸化物半導体の1種である。CV
Dやスパッタリングといった気相法で成膜したATO膜
を透明導電膜として利用する以外に、ATO粉末も導電
性粉末として利用されてきた。例えば、プラスチック、
ゴム、塗料などの基材に帯電防止性または導電性を付与
するためにATO粉末を配合することが行われてきた。
ATO粉末の平均粒径が0.2 μm (=200 nm) 以下であ
れば粉末自体が透明であるので、基材の色調または透明
性を損なうことなく基材に導電性を付与することができ
る。
【0003】従来の一般的なATO粉末の製造方法は、
加水分解性の錫化合物とアンチモン化合物とを原料とす
る共沈焼成法であった。この方法では、錫およびアンチ
モンの化合物を同じ溶液中で同時に加水分解させる
(例、中和によって)ことにより、錫とアンチモンの各
水和酸化物を共沈させる。この共沈物を回収し、洗浄し
て付着する塩を除去した後、焼成により脱水して酸化物
にすると、ATO粉末が得られる。しかし、この方法で
は一般に400 ℃以上の高温で焼成しないと粉末が導電性
を示さないため、焼成中にATO粒子が粗大化したり、
二次凝集が起こり易く、平均粒径が0.2 μm以下で分散
性に優れたATO粉末を得ることが困難である。そのた
め、こうして得られたATO粉末を含有させた透明導電
膜は、透明性が不十分となることが多かった。
【0004】この点を改善するため、錫化合物とアンチ
モン化合物とを含有する微粒子スラリー (例、上記の共
沈物の水分散液) を170 ℃以上、400 ℃以下の温度で水
熱処理してATO微粒子の分散液を得ることが、特開平
2−105875号公報に提案されている。この水熱処理によ
り、粉末化する場合でも400 ℃より低温の焼成温度で導
電性のATO粉末を得ることが可能になる。
【0005】同様の水熱処理を利用した方法 (但し、水
熱処理するのは錫化合物とアンチモン化合物とを含有す
る水溶液でもよく、水熱処理温度は 100〜370 ℃) にお
いて、水熱処理の前に過酸化水素を添加するとATO粉
末の導電性が高くなることが、特開平2−221124号公報
に記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した水熱処理を利
用する方法 (以下、水熱法という) では、400 ℃以上の
高温での焼成を行う必要がないので、平均粒径が数〜数
十nm (=mμ) といった非常に微細で分散性に優れたA
TO粉末を得ることができる。また、水熱処理で得られ
たATO微粒子の分散液を濃度調整するだけで、或いは
適当なバインダー(有機または無機樹脂) を含有する液
体と混合するだけで、塗料化することができる。
【0007】しかし、この水熱処理法にも次のような問
題点があった。まず、水熱処理に非常に時間がかかる。
例えば、特開平2−105875号公報の実施例では、水熱処
理温度が350 ℃と高い場合でも、5時間の処理時間が必
要である。特開平2−221124号公報の実施例では、水熱
処理温度がより低いため、20〜37時間という長い処理時
間をかけている。水熱処理は加圧下にバッチ式で実施さ
れるため、このように長い処理時間は処理効率を悪化さ
せ、工業的製造にとって非常に不利である。
【0008】次に、水熱処理を、酸化物換算で5重量%
以下といった低濃度のスラリーまたは溶液として実施す
る必要がある (濃度が高くなると、液の流動性が低下
し、均一に処理できない) ので、1回の処理で製造でき
るATOの量が少なくなり、この点でも処理効率が悪
い。また、塗料に望ましいATO粉末濃度は一般にこれ
より高いので、塗料化に際しては、水熱処理で得られた
ATO粉末分散液を濃縮する必要がある。また、この分
散液からATO粉末を回収する場合にも、蒸発除去すべ
き分散媒の量が増える。従って、濃縮または分散媒の蒸
発に多大のエネルギーコストを要する。
【0009】さらに、水熱処理に供するアンチモン化合
物が、5価アンチモン化合物ではなく3価アンチモン化
合物であると、水熱処理後に得られたATOの導電性が
著しく低下する。ATOの導電性は、酸素空孔に加え
て、酸化錫 (SnO2) 結晶のSn4+格子点の一部をSb5+が置
換することで発揮される。従って、ATOの導電性に寄
与するアンチモン成分は、5価アンチモン (Sb5+) に限
られる。
【0010】原料が3価アンチモン化合物であっても、
水熱処理中にアンチモンの一部は5価に酸化され、酸化
錫の結晶格子中にSb5+がドープされるが、その酸化の程
度が不十分であるため、ドープされる5価アンチモンの
量は少なく、そのため水熱処理後のATOの導電性は非
常に低くなる。前述した共沈・焼成法では、400 ℃以上
の温度で大気中にて焼成することで、水和酸化物から無
水の酸化物への脱水に加えて、3価の酸化アンチモンか
ら5価の酸化アンチモンへの酸化も同時に起こるので、
導電性の高いATOが得られる。しかし、水熱処理では
この酸化が十分に起こらないため、得られたATOの導
電性が低くなるものと考えられる。
【0011】水熱処理の場合、アンチモン原料として5
価アンチモン化合物を使用すれば、このような問題は起
こらない。しかし、アンチモン化合物の多くは3価のア
ンチモン化合物であり、5価の安定なアンチモン化合物
はハロゲン化物ぐらいしかない。しかも、5価のハロゲ
ン化アンチモン、例えば、五塩化アンチモンには、大気
中では直ちに塩化水素を発生しながら加水分解し、取扱
いが難しいという問題点がある。従って、アンチモン原
料としては3価アンチモン化合物を使用することが有利
である。
【0012】3価アンチモン化合物を用いても、水熱処
理の前に酸化剤で処理してアンチモン化合物を5価に酸
化しておけば、水熱処理後に導電性の高いATOを得る
ことができるが、工程が複雑になり、また残留する酸化
剤が透明導電膜やバインダーに悪影響を及ぼす懸念があ
る。
【0013】よって、本発明は、水熱法による微粒子状
のATO分散液およびATO粉末の製造方法において、
3価アンチモン化合物を用いても、酸化剤を使用せずに
導電性と分散性の高いATO微粒子が得られる方法を開
発することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、水熱処理
を水の臨界温度 (374 ℃) より高温で行う、即ち、超臨
界水で処理すると、水の酸化力が増し、アンチモンが3
価化合物でも水熱処理中に酸化される3価アンチモンの
割合が増大し、得られたATOの導電性が著しく増大す
ることを見出した。さらに、このような超臨界水での処
理では、処理濃度を例えば30重量%程度と高濃度にする
ことができ、また数分以内のごく短時間で処理が完了す
ることも判明した。そして、処理時間がこのように短け
れば、処理温度が400 ℃を超えても、ATO粒子の分散
性には実質的な悪影響がないこともわかった。
【0015】ここに、本発明は、4価錫と3価アンチモ
ンの各水和酸化物を含有する微粒子スラリーを超臨界水
で処理することを特徴とするアンチモンドープ酸化錫粉
末分散液の製造方法、およびこの処理後にATO粉末を
分離することを特徴とするアンチモンドープ酸化錫粉末
の製造方法である。
【0016】本発明はまた、上記方法で得られたアンチ
モンドープ酸化錫粉末またはその分散液を含有すること
を特徴とする、透明導電性塗料にも関する。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の方法は、錫とアンチモン
のそれぞれ水和酸化物を含有する微粒子スラリーを超臨
界水で水熱処理することを特徴とする。処理に供するス
ラリーは、錫およびアンチモンの各水和酸化物を平均粒
径が0.2 μm以下の微粒子状で含有しているものが望ま
しい。
【0018】このような水和酸化物の微粒子スラリー
は、従来の共沈焼成法について説明したのと同様に、加
水分解性の錫およびアンチモン化合物を同じ溶液中で加
水分解させて錫とアンチモンの水和酸化物を共沈させる
ことにより調製できる。
【0019】なお、錫とアンチモンのいずれについて
も、加水分解生成物は従来より慣用的に「水酸化物」或
いは錫の場合には「錫酸」とも呼ばれてきたが、正確に
は「水和酸化物」であるので、本明細書では水和酸化物
と称することにする。
【0020】原料となる加水分解性の錫またはアンチモ
ン化合物としては、塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの無機
化合物、ならびに有機酸塩 (例、酢酸塩) 、アルコキシ
ド、アセチルアセトン錯体などの有機金属化合物のいず
れでもよい。
【0021】水和酸化物を共沈させるための加水分解
は、例えば、錫化合物とアンチモン化合物とを一緒に水
および/またはアルコールに溶解 (必要により塩酸等の
酸を添加する) させた酸性溶液と、アルカリ水溶液
(例、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の
水溶液またはアンモニア水) とを混合することにより実
施することができる。
【0022】加水分解法は上記方法に限られるものでは
なく、例えば、特開平2−221124号公報に記載されてい
るように、錫化合物とアンチモン化合物の一方をアルカ
リ性水溶液 (例、錫酸ナトリウム水溶液または酒石酸ア
ンチモンカリウム水溶液) とし、他方を酸性水溶液
(例、塩化アンチモンまたは塩化錫) として、両者の水
溶液を混合する方法なども採用できる。また、アルコキ
シドの場合には、ゾル−ゲル法として知られるように、
錫とアンチモンの各アルコキシドを含有するアルコール
溶液に水および/または酸を加えて加水分解させること
ができる。
【0023】アンチモン化合物は、5価アンチモン化合
物も使用可能ではあるが、前述したように種類が少な
く、しかも取扱いが厄介であるので、本発明では3価ア
ンチモン化合物を使用する。超臨界水は酸化力が強いの
で、3価アンチモン化合物を使用しても、超臨界水によ
る処理中に5価アンチモンに酸化されるので、3価アン
チモン化合物でも不都合はない。加水分解原料として好
ましい3価アンチモン化合物の例は、三塩化アンチモ
ン、硫酸アンチモン、オキシ塩化アンチモンなどであ
る。
【0024】一方、錫化合物は、ATO結晶構造の骨格
を形成し、量的にもアンチモン化合物より多いので、2
価化合物(第一錫化合物)では超臨界水を用いても完全
に酸化できないので、4価錫化合物(第二錫化合物)を
使用する。好ましい錫化合物の例は、塩化第二錫、硫酸
第二錫、硝酸第二錫等である。
【0025】錫化合物とアンチモン化合物の割合は、導
電性の点から、Sb/(Sn+Sb) の原子比が0.02〜0.2 とな
る範囲内が好ましい。共沈のための加水分解反応条件は
特に制限されないが、温度は通常は室温ないし反応系の
沸点までが好ましく、より好ましくは30〜90℃の範囲内
である。
【0026】共沈時の加水分解反応速度 (例えば、錫塩
とアンチモン塩を含む酸性水溶液をアルカリ水溶液と混
合して加水分解する場合には、混合速度) や反応温度に
より、共沈する水和酸化物の粒径、従って、最終的に得
られるATOの粒径を制御することができる。即ち、混
合速度が早いほど、また温度が低いほど、共沈物の粒径
が小さくなる傾向がある。
【0027】加水分解が終了すると、錫の水和酸化物と
アンチモンの水和酸化物との共沈物からなる微粒子が分
散した分散液が得られる。共沈微粒子の粒径はサブミク
ロンと小さいので、得られた分散液は一般にゾル状態を
呈する。この共沈微粒子を好ましくは洗浄して、中和で
副生する塩などの付着イオンを除去する。この洗浄は、
濾過、デカンテーション、溶媒蒸発といった適当な方法
で共沈物を分離してからイオン交換水などを用いて水洗
することにより実施できる。或いは、分散液のまま、イ
オン交換法、透析法といった手段で洗浄してもよい。洗
浄は、分散液または洗液の電気伝導度が50μS以下にな
るまで行うことが好ましい。但し、溶媒がアルコールを
含有している場合には、次の水熱処理を行う前にアルコ
ールを蒸発させて除去しておく。
【0028】洗浄した共沈物 (水和酸化物の形態の錫化
合物とアンチモン化合物) の分散液を次いで水熱処理す
る。本発明では、この水熱処理を超臨界水を用いて、即
ち、水の臨界温度 (374 ℃) より高温で行う。かかる超
臨界水による水熱処理は、例えば、処理すべき分散液を
オートクレーブのような密閉装置に入れ、水の臨界温度
より高温に加熱することにより実施することができる。
好ましい水熱処理温度は 380〜450 ℃である。
【0029】このように水熱処理温度が高いため、分散
液の流動性が高くなるので、処理する分散液の固形分濃
度が高くなっても、液の流動性を確保することができ
る。その結果、分散液の固形分濃度が50重量%までであ
れば水熱処理が可能となり、従来の5重量%以下といっ
た濃度で処理する場合より処理効率が著しく向上する。
処理する分散液の固形分濃度は好ましくは10〜50重量
%、より好ましくは25〜45重量%である。
【0030】水熱処理に供する分散液のpHは4以上と
することが好ましい。分散液の固形分濃度やpHは、水
熱処理の前に、必要に応じて、水の添加または蒸発、或
いは酸またはアルカリの添加により調整することができ
る。水熱処理時間は、処理条件が上記のように超臨界条
件であるため、通常は10秒〜1時間、好ましくは1分〜
10分とごく短時間でよい。
【0031】この水熱処理により、分散液中の錫および
アンチモンの水和酸化物はいずれも脱水を受けて酸化物
に転化され、ATOになる。従って、ATO微粒子が分
散した分散液が得られる。
【0032】本発明では超臨界水で水熱処理を行うこと
により、上記の酸化物への転化に加えて、超臨界水が持
つ酸化力により、3価アンチモンの大半が5価アンチモ
ンに酸化される。その結果、従来のように例えば350 ℃
以下で水熱処理する場合に比べて、導電性が著しく向上
したATOが生成する。また、超臨界水による処理で
は、処理時間がごく短いため、処理温度が400 ℃を超え
る高温になっても微粒子の凝集が起こりにくく、ATO
の分散性は良好に保持される。
【0033】水熱処理により生成したATO分散液は、
必要に応じて水および/またはアルコールなどの水混和
性有機溶媒を添加して固形分濃度を塗料に適した濃度
(通常は10〜20重量%) に調整すると共に、必要に応じ
て適当な透明バインダーを添加混合して、水系の透明導
電性塗料とすることができる。必要であれば、溶媒の水
を有機溶媒に完全または不完全に置換してもよい。
【0034】バインダーとしては水溶性または水混和性
のものが好ましい。かかるバインダーの例としては、ゼ
ラチン、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂等
の水溶性バインダー、アクリル系、ポリエステル系、ポ
リウレタン系などの水分散性樹脂、ならびにエチルシリ
ケートなどのアルコキシシランもしくはその部分加水分
解物が挙げられる。バインダーの添加量は、ATO 100
重量部当たり10〜1000重量部、好ましくは10〜300 重量
部程度が適当である。
【0035】但し、本発明の透明導電性塗料において、
バインダーは必ずしも必要ではない。ATOが非常に微
粒子で凝集性が強いため、塗料がバインダーを含有して
いなくても、溶媒除去後にATO微粒子の凝集力だけで
皮膜形成が可能である。即ち、この場合には、塗料の塗
布後に塗膜を乾燥させて溶媒を除去すると、実質的にA
TO微粒子のみからなる皮膜を形成することができる。
【0036】このATO微粒子のみからなる皮膜は、必
要であれば、皮膜強度を増大させるためにバインダーだ
けを含有するクリアー塗料でオーバーコートする。それ
により、皮膜のATO微粒子間の間隙にオーバーコート
中のバインダーの一部が浸透して、ATO微粒子を結合
するので、皮膜が強化される。また、このオーバーコー
トが低屈折率であると、低反射性のATO皮膜になる。
【0037】オーバーコート用の塗料のバインダーは特
に制限されず、水溶性または水混和性でなくてもよい。
好ましいオーバーコート用のバインダーは、屈折率が低
く、皮膜硬度が高いことからアルコキシシラン類であ
る。
【0038】この塗料には、ATO粉末とバインダーと
溶媒 (水および/または有機溶媒)の他に、塗料に慣用
される1種もしくは2種以上の添加剤を含有していても
よい。かかる添加剤の例は、pH調整剤 (酸、アルカ
リ、緩衝剤等) 、界面活性剤、シランカップリング剤、
消泡剤、溶媒が水の場合の乾燥促進用の水混和性有機溶
媒などがある。
【0039】また、水熱処理で得られたATO分散液か
ら、分散媒の水を蒸発させて除去するか、または可能で
あれば濾過等の手段により、分散しているATO微粒子
を分離すると、ATO粉末を得ることができる。こうし
て得られたATO粉末の平均粒径は0.2 μm以下、通常
は0.1 μm以下であり、典型的には2〜50 nm の範囲内
である。水熱処理時間が短いため、粒径が比較的よく揃
っている。ATO粉末の平均粒径は、前述のように、原
料化合物の共沈時の加水分解条件によって主に制御する
ことができる。
【0040】得られたATO粉末は、上記と同様に塗料
化することもできる。但し、この場合には溶媒やバイン
ダーは水性のものに限られず、塗料一般に使用されてい
る各種の溶媒やバインダーが使用可能である。また、こ
のATO粉末は、帯電防止性または導電性を付与するた
めにプラスチックやゴムに練り込むといった用途にも使
用できる。この場合の練り込み量は、樹脂またはゴム中
の量に対して10〜300重量%程度が適当である。その
他、本発明のATO粉末は、熱線遮蔽、トナー電荷調整
剤といった用途にも使用できる。
【0041】
【実施例】
(実施例1)60重量%塩化スズ(SnCl4) 水溶液 390gと60
重量%三塩化アンチモン(SbCl3)水溶液36gとを混合
し、この混合液と3N水酸化ナトリウム水溶液とを、80
℃の水5リットル中に、液pHを6〜7を維持するよう
にして60分かけて同時に添加することにより、錫の水和
酸化物とアンチモンの水和酸化物との共沈物からなる微
粒子が分散した分散液 (ゾル) を得た。
【0042】この分散液に6N塩酸を加えて液のpHを
3に調整した後、液の電気伝導度が50μS 以下になるま
でイオン交換水を用いたデカンテーションにより分散液
を洗浄した。
【0043】得られたpH3の分散液に純水を加えて微
粒子の固形分濃度を30重量%にし、NaOH水溶液を加えて
pHを6に調整した後、オートクレーブに入れ、400 ℃
で5分間の超臨界水による水熱処理を行った。冷却後、
水熱処理した分散液を取り出し、得られたケーキをオー
ブン中で乾燥した後、ポットミルで解砕して、平均粒径
が10 nm のATO粉末を得た。このATO粉末をSEM
で顕微鏡観察したが、粒子の凝集はほとんど見られなか
った。
【0044】別に、上記の水熱処理で得られたATO分
散液に純水を加えて固形分を18.5重量%に調整した後、
この分散液100 gにバインダー溶液として13.2wt%ゼラ
チン水溶液100 gを加えて混合することにより、水系の
透明導電性塗料を調製した。この塗料を#3のワイヤー
バーでポリエステルフィルム (厚み100 μm、ヘーズ2.
0 %) に塗工し、放置して塗膜を乾燥させ、透明導電膜
を形成した。
【0045】(実施例2)実施例1において、超臨界水に
よる水熱処理時間を2分間とすること以外は同様にして
ATO粉末を得た。
【0046】(実施例3)実施例1において、超臨界水に
よる水熱処理時間を30分間とすること以外は同様にして
ATO粉末を得た。
【0047】(実施例3)実施例1において、水熱処理を
450 ℃で5分間行ったこと以外は同様にして、ATO粉
末を得た。
【0048】(比較例1)実施例1において、水熱処理を
200 ℃で5分間行ったこと以外は同様にして、ATO粉
末を得た。
【0049】(比較例2)実施例1において、水熱処理を
300 ℃で5分間行ったこと以外は同様にして、ATO粉
末を得た。
【0050】(比較例3)実施例1において、水熱処理を
200 ℃で5時間行ったこと以外は同様にして、ATO粉
末を得た。
【0051】以上の実施例および比較例で得られた各A
TO粉末について、下記の要領で粉末抵抗と5価アンチ
モン (Sb5+) 比率を調べた。得られた試験結果は表1に
まとめて示す。また、実施例1と同様にして形成した透
明導電膜の表面抵抗値も表1に一緒に示す。
【0052】(試験方法) 粉末抵抗 ATO粉末をアリール50 kg/cm2 で円柱状に成形し、得
られた成形体の厚み方向の直流電流を測定して、次式に
より粉末の比抵抗を求めた。
【0053】比抵抗=電流測定値×5 (電極定数)/成
形体厚み (cm) Sb5+比率 ATO粉末試料 0.5gに濃硫酸20 ml を加えて溶解させ
た溶液Aと、ATO粉末試料 0.5gに濃硫酸20 ml を加
えて溶解させた後、濾紙を加えて強熱還元した溶液Bを
調製した。A、Bの各溶液を放冷後、それぞれに純粋20
0 mlと6N塩酸約40 ml を加え、煮沸した後、純水を加
えて、全量を400 mlにする。水冷後、 0.1N過マンガン
酸カリウム水溶液での滴定によりアンチモン定量を行っ
た。
【0054】溶液AからはSb3+の量Aが、溶液Bからは
全アンチモン (Sb3++Sb5+) の量Bがわかる。これらの
測定値から、 (B−A) /B×100 によりSb5+比率
(%) を求めた。
【0055】
【表1】
【0056】表1からわかるように、水熱処理温度が水
の臨界点より低温では、水熱処理後のSb5+比率が50%よ
り低く、そのためATO粉末の導電性が低い (粉末抵抗
が高い) が、処理温度が水の臨界点より高温になると、
水熱処理後のSb5+比率が高まり、ATO粉末の導電性が
著しく向上することがわかる。ATO粉末の導電性が高
くなる結果、これから形成した透明導電膜の導電性も高
くなった。
【0057】
【発明の効果】本発明の方法によれば、3価のアンチモ
ン化合物を原料として、特に酸化剤による酸化処理を行
わずに、導電性に優れたATO粉末およびその分散液を
製造することができる。
【0058】さらに、本発明の方法では、水熱処理を超
臨界水で行うことにより、従来法に比べて極めた短時間
で水熱処理が完了し、かつ処理時の分散液濃度を高くす
ることができるので、製造効率が非常に高くなる。ま
た、処理時間が短いことから、ATO粉末の凝集が避け
られ、分散性の高いATO粉末およびその分散液が得ら
れるので、これから形成された透明導電膜の透明性も改
善される。また、分散性に優れていることから、ATO
粉末をプラスチックやゴムに練り込む際にも、作業が容
易で、また均一に練り込むことができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 4価錫と3価アンチモンの各水和酸化物
    を含有する微粒子スラリーを超臨界水で処理することを
    特徴とするアンチモンドープ酸化錫粉末分散液の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 4価錫と3価アンチモンの各水和酸化物
    を含有する微粒子スラリーを超臨界水で処理した後、分
    散しているATO粉末を分離することを特徴とするアン
    チモンドープ酸化錫粉末の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の方法で得られた
    アンチモンドープ酸化錫粉末またはその分散液を含有す
    ることを特徴とする、透明導電性塗料。
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