JPH11109154A - 有機・無機高分子複合体およびその製造方法 - Google Patents

有機・無機高分子複合体およびその製造方法

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JPH11109154A
JPH11109154A JP28911297A JP28911297A JPH11109154A JP H11109154 A JPH11109154 A JP H11109154A JP 28911297 A JP28911297 A JP 28911297A JP 28911297 A JP28911297 A JP 28911297A JP H11109154 A JPH11109154 A JP H11109154A
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JP
Japan
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organic
polystyrene
inorganic
polymer composite
inorganic polymer
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JP28911297A
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English (en)
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Yoshiki Nakajo
善樹 中條
Masaaki Kobayashi
正明 小林
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TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高分子光導波路や他の光集積回路用材料に使
用可能な低光損失(いわゆる、透明であること)であ
り、精密な屈折率制御が可能であり、環境特性の一つで
ある耐熱性、耐湿性が優れており、また、所定の膜厚に
成膜可能であり、合成が簡易であって、コストが低い有
機・無機高分子複合体およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 シリカマトリクス構造を有する無機マト
リックス中にポリスチレンが分散された構造を有し、前
記無機マトリクスのシリカゲル成分が有する官能基と、
ポリスチレンのフェニル基との間にフェニル基−フェニ
ル基相互作用を有する有機・無機高分子複合体とし、こ
れにより光導波路等を得ることとした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光集積回路・光通信
等に用いられる光導波路や、プラスチック光ファイバ等
の光部品として使用可能な有機・無機高分子複合体およ
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光信号の伝送媒体である光導波路として
最も一般的に知られている光学部品に、光ファイバを挙
げることができる。光ファイバには低光損失、広帯域特
性が求められ、この点から石英、多成分ガラス、無機単
結晶等の無機系材料が広く使用されている。近年B−I
SDNなどの大容量情報処理が必要な情報通信分野にお
いて、電気配線が有する伝送帯域の限界に対処するもの
として光配線方法が提案されており、その一つに平面基
板上に形成される高分子光導波路が考えられている。
【0003】高分子光導波路の基本材料となる有機系高
分子は、無機系材料に比べて多くの機能性化合物、官能
基の導入が可能であることや、材料コストが低く、加工
性がよい等の特徴を持つので、光学用材料として現在ま
でに数多くの開発がなされている。例えば黒川隆志らの
アプライド オプティクス(Appl.Opt. )第17巻、4
号、646頁〜647頁、1978年や、特公昭61−
13201号公報には、選択的光重合法により、ポリカ
ーボネート中に含ませたドーパント(アクリル系モノマ
ーの一つであるアクリル酸メチル)を光照射により選択
的に重合、あるいはポリマーと反応させることで屈折率
を変化させ、パターン状の光導波路を作製する手法が開
示されている。しかしこれらの選択的光重合法では、紫
外線の照射条件を厳密に定める必要性があり、また、溶
媒の揮発条件によりモノマー含量が変化して屈折率が微
妙に変化するといった欠点がある。
【0004】またポリメチルメタクリレートの分子中の
水素について重水素化やフッ素化処理を行い、光導波路
を試作して光伝搬損失を測定したところ、0.1dB/cm
以下という低損失化が達成できた旨の報告が吉村了行ら
のエレクトロニクス レターズ(Electron.Lett.)、第
28巻、2135頁〜2136頁、1992年に掲載さ
れており、またこの内容が特公平6−43464号公報
に開示されている。しかしポリメチルメタクリレート系
のガラス転移温度は一般に100℃前後である。このた
め実際の光部品としての信頼性を考慮したとき、耐熱温
度の上限は70℃程度であると考えられている。したが
って実用的には不安が残る。またポリメチルメタクリレ
ートは吸湿性が比較的高く、飽和吸湿率が2%程度にも
達する。したがって高湿度環境下では水のOH基の伸縮
振動吸収が光損失に影響を与えることが報告されている
(例えば、戒能俊邦、ポリマー プリプリンツ ジャパ
ン(Polymer Preprints Japan)、第32巻、第4号、1
983年、第2525頁に掲載)。すなわちポリメチル
メタクリレートを用いた場合には使用環境条件の湿度変
化により光伝搬損失が変動するといった問題が指摘され
ている。
【0005】有機系高分子の耐熱性の向上に加え、さら
なる低損失化、耐湿性の改善をも目的に、水素原子を重
水素原子に置換したポリシロキサンを用いた光導波路が
特開平3−188402号公報に、また分子中の水素原
子の一部または全部をフッ素化したポリイミドを用いた
高分子光導波路が特開平4−328504号公報にそれ
ぞれ開示されている。これらの高分子を用いた場合、2
00℃以上の耐熱性や近赤外波長領域での低損失化を達
成できる光導波路を提供できる。しかし高分子光導波路
に適用する材料の低コスト化を図る上では、重水素化処
理等を施した高分子のみを用いるのが妥当であるとする
のは疑問である。
【0006】このように光導波路に関する従来の技術で
は前記のような有機高分子化合物のみ、あるいはガラス
導波路に代表されるように無機高分子材料のみを用いた
ものが主である。
【0007】ところで有機材料と無機材料とを組み合わ
せたいわゆる複合材料が数多く知られている。例えば有
機高分子に無機物を添加するフィラーの考え方や、金属
表面を有機高分子で修飾するコーティング手法は工業的
に幅広く利用されている。これらの複合材料にはそれぞ
れの素材の特性を維持しつつ、さらに新しい機能を付加
させようとするところに特徴がある。これに対し異なっ
た材料を分子レベルで組み合わせて複合化させると前述
の基本的な素材とは全く異なった新しい材料が期待でき
る。すなわち複合材料では材料としての特性、例えば機
械的特性、熱的特性などが一般にその集合体の性質とし
て発現することから注目を集めている。
【0008】このような複合材料を光部品に適用した報
告がある。例えばインテグレーテッド オプティクス
アンド オプティカル コミュニケーション 国際会議
(Integrated Optics and Optical Communication )1
995講演予稿集、TuD1−5、71頁には、SiO
2 のネットワーク骨格中にメタクリレート基を置換基と
して導入した化合物(登録商標名ORMOCER)で光
導波路を試作した報告が記載されている。
【0009】また金属酸化物ゲルの3次元微細骨格中
に、特定の有機高分子を均一に分散させた複合体が知ら
れている。例えば特開平3−212451号公報には、
アミド結合を有する非反応性ポリマーの存在下、加水分
解重合性を有する有機金属化合物をゲル化させることに
より生成した金属酸化物ゲルの微細骨格をマトリックス
とし、その中にアミド結合を有する高分子が均一に分散
された構造の有機・無機複合体が得られ、この複合体が
透明であって膜状等に成形できる旨が記載されている。
また特開平5−85860号公報には、加水分解性無機
化合物を加水分解重合して得られた無機酸化物のマトリ
ックス中に、ウレタン結合を有する非反応性ポリマーが
均一に分散した有機・無機複合透明均質体が開示されて
いる。一般に単純に有機物と無機物を混合させても、有
機成分と無機成分との相溶性が劣るためにこれらの複合
体は不均質となり、有機高分子と無機物質が相分離して
しまうことになる。このため有機高分子と無機物質との
特性が有効に発現しない場合が多い。上記各公報に記載
された複合体ではマトリックス中に分散される高分子
が、アミド結合やウレタン結合などを有する高分子、特
に水溶性ポリマーに限定されている。これらの水溶性ポ
リマーは水分に対する親和性が強いため吸湿性がポリメ
チルメタクリレートよりも高いと判断される。したがっ
て上記各公報に記載された複合体は、用途が限定されて
しまう。
【0010】特開平6−322278号公報には、上記
特開平3−212451号公報や特開平5−85860
号公報に開示された内容をさらに発展させ、汎用の有機
ポリマーを無機高分子と複合化可能とし、透明性、均質
性に優れた無機・有機複合ポリマー組成物を得ることが
開示されている。しかしこの複合ポリマー組成物を製造
する際には、汎用の有機ポリマーに加え、アミド結合を
有するポリマー(オキサゾリンのポリマーまたはポリビ
ニルピロリドン)を添加する必要がある。具体的には、
有機金属化合物の加水分解重合反応溶液中にアミド結合
を有するポリマーおよび汎用の有機ポリマーを共存さ
せ、前記有機金属化合物を加水分解重合する。このよう
にして得られる複合ポリマー組成物も水溶性ポリマーが
含有されることになるため、上記特開平3−21245
1号公報や特開平5−85860号公報に記載された複
合体と同様に、吸湿性の点で問題がある。
【0011】一方ポリメチルメタクリレートと同様に、
光学材料への適用が検討されてきた高分子材料としてポ
リスチレンがある。ポリスチレンは非水溶性ポリマーで
あり、透明性に優れ、吸湿性が低いことが知られてい
る。しかしポリスチレンのガラス転移温度は80℃程度
であり、ポリメチルメタクリレート同様に耐熱性が劣る
といった問題がある。ポリスチレンと無機材料とを複合
化することにより耐熱性の向上が期待されるが、従来ポ
リスチレンとシリカゲルとの有機・無機高分子複合体を
得ることはできなかった。無機マトリックスを合成する
のに用いられる加水分解性有機基を有する有機ケイ素化
合物を不特定に選択し、有機成分の原料として高分子量
のポリスチレンを用いて有機・無機高分子複合体を合成
しようとしても、相分離してしまう。これはポリスチレ
ンが水素結合受容基を持たないため一般的なシリカゲル
との相互作用が非常に弱いことに起因するからであっ
た。
【0012】なお、ポリスチレンではなくポリスチレン
共重合体を用い、かつシランカップリング剤を介在させ
てシリカゲルとの有機・無機高分子複合体を合成した例
が、ジャーナル オブ マテリアル リサーチ(J.Mate
r.Res.)、第8巻、第5号、1993年、第1143頁
に報告されている。この報告では、SiO2のネットワ
ーク構造中にポリスチレン構造を共有結合的に導入する
ことによって、有機・無機高分子複合体を合成してい
る。そして、共有結合的に結合させるために、スチレン
単独の重合体ではなく、スチレンと3−(トリメトキシ
シリル)プロピルメタクリレートとを共重合させた中間
体を合成し、これをシリカゲルと反応させている。この
方法では中間体の合成プロセスを追加する必要が生じ
る。そして、メタクリレート構造も構造単位に加わるこ
とから、ポリスチレン−シリカゲル系に比較して、吸湿
率の劣化が予想される。さらに上記報告では、ポリスチ
レン系材料とシリカゲルとで構成される有機・無機高分
子複合体が光学材料として適しているか、また、これら
を適用した光導波路や他の光集積回路を作製することが
可能であるのかといった検討はなされていない。
【0013】さらに特開平5−194683号公報で
は、ラジカル重合性ビニル化合物をケイ酸オリゴマーの
存在下で重合させることにより得られる複合体組成物を
開示している。この複合体組成物はラジカル重合性ビニ
ル化合物をケイ酸オリゴマーの存在下で重合させて得ら
れると記載されている。またこの複合体組成物は、ラジ
カル重合性ビニル化合物または、その部分重合体中にケ
イ酸オリゴマーを溶解した混合溶液を調製する第一工程
と、次いでケイ酸オリゴマーの縮合反応と、ラジカル重
合性ビニル化合物または、その部分重合体のラジカル重
合を実施する第二工程からなる製造方法によって得られ
ることが示されている。
【0014】ここで用いられているラジカル重合性ビニ
ル化合物としては公知のラジカル重合が可能な単量体が
使用され、またケイ酸オリゴマーとしては水ガラスまた
はメタケイ酸ソーダから調製された、直鎖状、分枝状ま
たはハシゴ状の構造を有し、分子量数百万から数万の部
分縮合体が適当であると記載されている。
【0015】この方法ではあらかじめ無機マトリックス
の部分構造体を準備しておき、これを縮重合反応にて無
機マトリックスの合成を完成させ、かつラジカル重合性
ビニル化合物またはその部分重合体のラジカル重合も実
施することにより、複合体を合成するものである。
【0016】有機ケイ素化合物として、分子量数百万か
ら数万のケイ酸オリゴマーを用いて合成プロセスを開始
している。この方法ではケイ酸オリゴマーの精製工程も
しくは分子量分布を調製する工程が加わることになり、
作業工程が複雑化する。また、ラジカル重合性ビニル化
合物としてスチレンが該当する化合物として列挙されて
いるが、実施例においてスチレンを用いた複合体の合成
方法は記載されていない。さらに上記公報では、ポリス
チレン系材料とシリカゲルとで構成される有機・無機高
分子複合体が光学材料として適しているか、また、これ
らを適用した光導波路や他の光集積回路を作製すること
が可能であるのかといった検討はなされていない。
【0017】このような観点から我々は、特願平8−2
80357において、高分子光導波路や他の光集積回路
用材料として適用可能な有機・無機高分子複合体および
その製造方法を提供するに至った。この発明において開
示された内容は、シリケート及び、シルセスキオキサン
骨格構造を有する無機マトリックス中にポリスチレンが
分散された構造を有する有機・無機高分子複合体であ
り、この有機・無機高分子複合体はスチレンモノマーの
重合によりポリスチレンを合成すると共に、加水分解性
有機基を有するアルキルアルコキシシラン等の有機ケイ
素モノマー化合物から前記無機マトリックスを合成する
工程を経て得られたものである。
【0018】しかしながら前記手法により合成される無
機マトリックス中にポリスチレンが分散した有機・無機
高分子複合体の欠点として低重合度のポリスチレンしか
得られないことが指摘される。例えば特願平8−280
357の実施例で開示しているようにポリスチレンの重
合度は数10程度であり、重量平均分子量にして約数1
000程度しかない。このようなポリスチレンを用いて
薄膜化やキャスティングを行うと、クラックが生じやす
く実用的に問題がある。さらにこの有機・無機高分子複
合体をテトラヒドロフラン等の有機溶媒中に放置する
と、有機・無機高分子複合体中のポリスチレンが有機溶
媒中に容易に溶解してしまう。これは本来ポリスチレン
自体の耐有機溶剤性が低いことに起因しているが、この
有機・無機高分子複合体では、ポリスチレンの分子量が
低いことがその性質をさらに増長させた結果となってお
り、有機・無機高分子複合体を構成するポリスチレンと
無機マトリックスの相互作用が低いことを意味してい
る。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】高分子光導波路や他の
光集積回路用材料に要求される項目は、低光損失(いわ
ゆる、透明であること)であり、精密な屈折率制御が可
能であり、環境特性の一つである耐熱性、耐湿性が優れ
ていること等である。また、高分子光導波路を作製する
場合は、材料が希望する所定の膜厚に成膜可能であるこ
とや、材料の合成が簡易であることや、材料コストが低
いことも重要な項目である。したがって、本発明の目的
は、高分子光導波路や他の光集積回路用材料としての前
記要求項目を満たす有機・無機高分子複合体およびその
製造方法を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(6)のいずれかの構成によって達成される。 (1) シリカマトリクス構造を有する無機マトリック
ス中にポリスチレンが分散された構造を有し、前記無機
マトリクスのシリカゲル成分が有する官能基と、ポリス
チレンのフェニル基との間にフェニル基−フェニル基相
互作用を有する有機・無機高分子複合体。 (2) 前記シロキサン構造を有する無機マトリックス
を合成するのに用いられる加水分解性有機基を有する有
機ケイ素化合物が、下記式Iで表わされる化合物である
請求項1及び2の有機・無機高分子複合体。 式I (R1m Si(OR2n (式中、R1 で示される置換基はアリール基を表わし、
2 は低級アルキル基を表わす。mおよびnは、m+n
=4、m≦2となる整数を表す。) (3) 前記シロキサン構造を有する無機マトリックス
と、ポリスチレンとの重量比が、加水分解性有機基を有
する有機ケイ素化合物:ポリスチレン換算で、1〜1
0:10〜1である上記(1)または(2)の有機・無
機高分子複合体。 (4) 前記ポリスチレンの重合度が100以上である
上記(1)〜(3)のいずれかの有機・無機高分子複合
体。 (5) 光導波路に用いられる上記(1)〜(4)のい
ずれかの有機・無機高分子複合体。 (6) 上記(1)〜(4)のいずれかの有機・無機高
分子複合体を製造する方法であって、加水分解性有機基
を有する有機ケイ素化合物溶液中に、溶解状態のポリス
チレンを共存させて、前記有機ケイ素化合物を加水分解
させる工程を有する有機・無機高分子複合体の製造方
法。
【0021】
【作用および効果】鋭意実験・検討した結果、有機成分
の原料として高分子量のポリスチレンを用い、フェニル
基等に代表されるアリール基を有しかつ、加水分解性有
機基を有する有機ケイ素化合物を選択することにより、
有機成分と無機成分が相分離せず、透明性に優れ・均質
な有機・無機高分子複合体を合成できることが判明し
た。これは従来の有機・無機高分子複合体において適用
されてきた水素結合による相互作用ではなく、シリカゲ
ル成分が有するアリール基のような官能基と、ポリスチ
レンのフェニル基とのフェニル基−フェニル基(π−
π)相互作用に基づく有機・無機高分子複合体である。
【0022】本発明の有機・無機高分子複合体では、含
有される有機高分子の特徴、すなわちポリスチレンの吸
湿性の低さが消失することなく反映されるため、耐湿性
が良好である。このため、本発明の有機・無機高分子複
合体を光学材料として使用して作製された光集積回路部
品を用いることにより、耐環境性の優れた光信号伝送回
路を構築することが可能となる。本発明では、このよう
な有機・無機高分子複合体を、フェニル基等に代表され
るアリール基を有しかつ、加水分解性有機基を有する有
機ケイ素化合物の加水分解反応溶液中にポリスチレンを
共存させて、合成させることにより実現した。一方、前
述したように、メタクリレート構造単位をもつポリスチ
レン共重合体を有機成分の原料として用いれば、シリカ
ゲルと有機成分とが共有結合した複合体の製造は可能で
あるが、この場合にはメタクリレート構造単位による耐
湿性の低下が問題となってしまう。
【0023】本発明に用いる有機・無機高分子複合体で
は、物理的特性の一つである熱的特性、例えばガラス転
移温度が、その複合体の性質として発現するため、有機
高分子自体が有する熱的特性を大きく改善できる。この
ため、高温条件下にさらされても有機・無機高分子複合
体の劣化・変質がない。したがって、本発明における有
機・無機高分子複合体を用いた導波路は、有機高分子だ
けで作製した導波路に比較して、耐熱性が著しく良好と
なる。
【0024】本発明の有機・無機高分子複合体の製造方
法は、 フェニル基等に代表されるアリール基を有しか
つ、加水分解性有機基を有する有機ケイ素化合物を有機
溶媒中に溶解させた溶液と、共通の有機溶媒に溶解させ
たポリスチレンとを均一に混合させ、ゾル・ゲル法によ
る加水分解重合を進行させる方法である。従来の有機・
無機高分子複合体の製造方法すなわち、フェニル基等の
アリール基を有しない有機ケイ素化合物の反応溶液中
に、ポリスチレンを共存させて加水分解重合する方法で
は、均質、透明な有機・無機高分子複合体は製造するこ
とができない。これは前述の通り、ポリスチレンには水
素結合受容基がないのでシリカゲルとの相互作用が弱
く、相分離を起こしてしまうからである。もう一つの方
法として、ポリスチレンの前駆体であるスチレンのラジ
カル重合と、有機ケイ素化合物のゾル・ゲル法による加
水分解重合とを同時に進行させる方法がある。この方法
と本発明の製造方法とを比較すると、本発明の製造方法
では、ポリスチレンを合成するためのスチレンのラジカ
ル重合工程を省くことができるので合成工程が大幅に簡
略化できる。さらにその方法で合成されたポリスチレン
の重合度は数10程度であるのに対し、本発明の有機・
無機高分子複合体の製造方法ではその約100倍以上の
重合度のポリスチレンを使用して有機・無機高分子複合
体を合成できるので、薄膜作製時にみられるクラック等
の発生を大幅に抑制することができる。
【0025】また、本発明の有機・無機高分子複合体
は、マトリックスであるシロキサン骨格中にポリスチレ
ンが均一に分散した構造を有するため、透明性が良好で
ある。このため、光導波路に適用した場合、損失を著し
く小さくできる。
【0026】また本発明の有機・無機高分子複合体にお
いて、有機成分と無機成分との比率を適宜設定すること
により、屈折率を広範囲にわたって精密かつ容易に制御
することができる。したがって、本発明の有機・無機高
分子複合体を適用して光導波路を作製するにあたり、光
導波路構造中のコア部分およびクラッド部分の屈折率制
御を精密かつ容易に行うことができる。この際、最終組
成はほぼ仕込比どおりとなるので、屈折率制御が容易で
あり、屈折率のばらつきも小さい。
【0027】さらに、本発明に用いるそれぞれの高分子
構造中の一部または全部の水素原子を、重水素原子やハ
ロゲン原子等で置換すれば、可視光領域から近赤外波長
領域に至るまで、損失の極めて低い特性を得ることが可
能となる。この場合、全構成成分を置換する必要は必ず
しもないので、製造法も簡易となる。
【0028】なお、各高分子単位構造中にアルキル基、
アリール基、ハロゲン原子等の置換基を適宜導入した場
合でも、屈折率の制御が可能である。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明の有機・無機高分子複合体
は、シリカマトリクス構造を有する無機マトリックス中
にポリスチレンが分散された構造を有する。
【0030】前記ポリスチレンは、重合度500〜30
00程度の通常一般的に市販されているポリスチレンで
ある。本発明におけるポリスチレンは、ホモポリマーで
あってもコポリマーであってもよく、ポリスチレン単位
が、10〜100wt%存在することが好ましい。コポリ
マーとしては、ポリスチレン置換体、ポリ−α−メチル
スチレン、ポリ−4−メチルスチレンやポリジビニルベ
ンゼン等とのブロック共重合体などが好ましい。ポリス
チレンは他のポリマーにポリスチレンがグラフとした共
重合体であってもよい。骨格ポリマー鎖としてはポリジ
ビニルベンゼン、ポリカーボネートや、ポリオレフィン
系高分子等が使用できる。以下、スチレン系ポリマーを
単にポリスチレンと称することがある。
【0031】ポリスチレンの置換体としては、フェニル
基の水素原子の少なくとも1個が重水素原子、フッ素原
子、塩素原子、低級アルキル基またはアリール基で置換
されたものなどが考えられる。この場合の低級アルキル
基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル
基、イソプロピル基、ブチル基といった炭素数1〜4程
度のアルキル基が好ましい。この低級アルキル基は置換
基を有していてもよい。アルキル基の好ましい置換基と
しては、例えば、重水素原子や、フッ素原子、塩素原子
等が挙げられる。置換アルキル基の具体例としては、そ
の重水素置換したアルキル基を含め、例えば、ジクロロ
メチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル
基等が特に好ましい。前記アリール基としては、フェニ
ル基、ナフチル基等が好ましい。このアリール基は置換
基を有していてもよい。アリール基の置換基としては、
例えば、前記重水素原子や、フッ素原子、塩素原子等が
好ましい。このようなポリスチレンは、1種または2種
以上を使用することができる。
【0032】シリカマトリクスである無機マトリックス
は、加水分解性有機基を有する有機ケイ素化合物から合
成されたシリカゲルである。
【0033】有機ケイ素化合物としては、下記式Iで表
されるものである。 式I (R1m Si(OR2n (式中、R1 で示される置換基はアリール基を表わし、
2 は低級アルキル基を表わす。mおよびnは、m+n
=4かつm≦2となる整数を表す。)
【0034】上記式Iで示されたアルコキシシランは、
2官能型、3官能型、4官能型のアルコキシシランを示
している。シリカマトリクス構造である無機マトリクス
は、これらの1種または2種以上のアルコキシシランを
用いて合成することができる。このように複数種類の有
機ケイ素化合物を用いて合成することにより、屈折率の
制御や組成物の硬度を調整することも可能である。
【0035】2官能型の有機ケイ素化合物としては、下
記式IIで表される化合物が好ましい。 式II (R12Si(OR22
【0036】上記式IIにおいて、2つあるR1 はアリー
ル基を表わす。R2 は低級アルキル基を表わす。また、
2 は1種からなっていてもよく、2種類からなってい
てもよい。
【0037】R1 で表されるアリール基は、フェニル
基、ナフチル基等が好ましく、置換基を有してもよい。
このような置換基としては重水素原子、炭素数1〜2程
度の低級アルキル基等が挙げられる。R2 で表される低
級アルキル基も、炭素数1〜4程度のものが好ましい。
2 に用いるアルキル基、アリール基としては、上記ポ
リスチレンの説明において挙げたものが好ましい。
【0038】このような有機ケイ素化合物としては、例
えば、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエト
キシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジナフチ
ルジメトキシシラン、ジナフチルジエトキシシラン、ジ
ナフチルジプロポキシシラン、ナフチルフェニルジエト
キシシラン等が挙げられる。
【0039】3官能型の有機ケイ素化合物としては、好
ましくは下記式IIIで示されるものがある。
【0040】式III (R3 )Si(OR43
【0041】上記式IIIにおいて、2つあるR3 はアリ
ール基を表わし、前記R1 と同義である。R4 は低級ア
ルキル基を表わし、前記R2 と同義である。
【0042】このような有機ケイ素化合物としては、例
えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエト
キシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ナフチル
トリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン等が
挙げられる。
【0043】4官能型の有機ケイ素化合物としては、好
ましくは下記式IVで示されるものがある。
【0044】式IV Si(OR54
【0045】上記式IVにおいて、R5 は前記R2 と同義
である。
【0046】このような有機ケイ素化合物としては、例
えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、
テトラプロポキシシラン等が挙げられる。
【0047】前記2官能型の有機ケイ素化合物と、3官
能型や4官能型の有機ケイ素化合物とを混合して用いる
場合、それぞれ単独で添加してもいよいし、両者を併用
してもよい。2官能型の有機ケイ素化合物に対する3官
能型や4官能型の有機ケイ素化合物の混合比は任意であ
る。好ましくは3官能型、4官能型の有機ケイ素化合物
は、重量比で80%以下、より好ましくは50%以下が
好ましい。また、3官能型と、4官能型の有機ケイ素化
合物を併用する場合の混合比も任意である。
【0048】これらの有機ケイ素化合物は部分的に重合
していてもよい。使用する化合物の重合度としては、好
ましくは1〜30程度である。
【0049】ポリスチレンおよび有機ケイ素化合物は有
機溶媒に溶解され、反応溶液とされる。好ましくは両者
を溶解可能な共通有機溶媒が使用される。有機溶媒とし
ては例えば、 ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香
族炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホル
ム、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素;メチ
ルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、ジメトキシ
エタン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジ
メチルエーテル等のエーテル類、あるいはこれらの混合
溶媒等があげられる。これらのうちでは、均一で透明性
の良好な複合体が得られやすいことから、特にエーテル
類が好ましい。
【0050】本発明の有機・無機高分子複合体は有機成
分としてポリスチレンを含むので、複合体中のシリカゲ
ル含有率の高低にそれほど依存せず均質な複合体が得ら
れるという特色がある。本発明の有機・無機高分子複合
体における有機成分(ポリスチレン)と無機成分(アル
コキシシラン類)との割合は、両成分の特性を損なわな
い範囲内であれば特に制限はないが、例えば仕込み比
で、ポリスチレン100重量部に対しシリカゲルが好ま
しくは10〜1000重量部、より好ましくは20〜5
00重量部程度である。ポリスチレンに対するシリカゲ
ルの割合が前記範囲を外れると、複合化の意義が少なく
なる。有機・無機高分子複合体の物理的特性の中で、ガ
ラス転移温度は、その複合体の性質として発現するた
め、複合体に使用する有機高分子自体が有していた熱的
特性を大きく改善できる。したがって、シリカゲルが少
なすぎると、有機・無機高分子複合体のガラス転移温度
がポリスチレン自体のガラス転移温度とほぼ同一とな
り、変化しているとは判断できず、複合化する意義が少
ない。逆にシリカゲルが多すぎても、有機成分添加の意
義がなくなってくる。
【0051】本発明の有機・無機高分子複合体の製造方
法は、フェニル基等のアリール基を有しかつ、加水分解
性有機基を有する有機ケイ素化合物を有機溶媒中に溶解
させた溶液と、有機成分として共通の有機溶媒に溶解さ
せたポリマーとを均一に混合させ、ゾル・ゲル法による
加水分解重合を進行させることに特徴がある。これは前
述の通り、従来の製造方法、すなわち、不特定の有機ケ
イ素化合物の反応溶液中に、ポリスチレンを共存させて
有機ケイ素化合物を加水分解重合する方法では、均質、
透明な有機・無機高分子複合体は製造することができな
い。また別方法を用いたとしても、合成方法が複雑にな
ったり、低重合度のポリスチレンしか得ることができな
い。
【0052】有機ケイ素化合物は、ポリスチレンの存在
下、反応溶液中で公知の方法に従い、ゾル・ゲル法によ
り加水分解重合され、シリカゲルが生成する。この重合
は、酸触媒の存在下で行うことが望ましい。酸触媒とし
ては無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等);
有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフ
ルオロ酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸や、メタンス
ルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸
等のスルホン酸等)が使用できる。
【0053】有機ケイ素化合物の加水分解重合は、攪拌
下、室温〜60℃程度までの温度範囲内で行うことがで
きる。不活性ガスの存在下で行ってもよく、減圧下で行
ってもよい。また、加水分解重合に伴って生成するアル
コールを除去しながら重合してもよい。これらの重合に
より、シリカゲルの微細構造中のナノメートルオーダー
の領域に、ポリスチレンが均一に分散した構造が得られ
る。この構造は、原子間力顕微鏡によって確認すること
ができる。また、有機・無機高分子複合体から焼成など
により有機成分を除去した後、窒素吸着法を用いて測定
することにより、シリカゲル中においてポリスチレンが
存在していた細孔の寸法を求めることができる。この細
孔の径は、通常、数十ナノメートル程度以下である。
【0054】薄膜状の有機・無機高分子複合体を作製す
る場合には、まず、前記反応溶液が一定の組成系、反応
条件下で、所望の粘度に到達した後、ガラス・石英・シ
リコンなどの平面基板上に前記反応溶液を滴下し、スピ
ンコートする。この際、あらかじめ溶液粘度、基板の回
転数、その回転時間と、膜厚との関係を把握しておくこ
とにより、所望の膜厚の有機・無機高分子複合体薄膜が
得られるようにスピンコート条件を設定する。スピンコ
ート後、窒素雰囲気下で加熱することにより溶媒を除去
して硬化させる。この加熱は、70〜150℃程度の範
囲内において、まず、低温域に温度を保持し、次いで高
温域に温度を保持する構成で行うことが好ましい。この
ような方法により、均質でかつ所望の厚さの薄膜が作製
できる。
【0055】本発明では、ポリスチレンとシリカゲルと
の比率や置換基効果などにより有機・無機高分子複合体
の屈折率を制御できるため、屈折率の選択の幅が広くな
る。したがって、使用可能な有機成分と無機成分とか
ら、安定な屈折率が得られる組み合わせを選択し、導波
路構造中のコア部分用とクラッド部分用とに適用すれば
よい。
【0056】本発明の有機・無機高分子複合体を適用し
た光導波路の構造は、一般の光導波路構造と同一でよ
い。一般の光導波路構造としては、例えば、ファイバ
型、スラブ型、リッジ型、埋め込み型等がある。光導波
路のコア部分とクラッド部分との寸法および両部分の屈
折率の関係は、光の波長や使用するモードに応じて適宜
決定すればよいが、コア部分とクラッド部分との比屈折
率差は、一般に0.2〜1.0%程度であることが好ま
しい。
【0057】埋め込み型光導波路の製造方法について、
図1を参照しながら説明する。図1は本発明による埋め
込み型光導波路の作製方法の一例を示すものである。1
は平面基板、2は下部クラッド層、3はコア層、4はア
ルミニウム薄膜、5はレジスト層、6は上部クラッド層
を示す。
【0058】(a)まず、有機・無機高分子複合体の前
駆体反応溶液を、ガラス、石英、シリコン等からなる平
面基板1上にスピンコートにより薄層状に塗布する。次
いで、窒素雰囲気下で上記したように70〜150℃程
度で加熱して溶媒を除去し、所望の膜厚となるように硬
化させる。これにより、下部クラッド層2が形成され
る。
【0059】(b)この下部クラッド層2の上に、コア
層3を形成する。コア層3の形成方法は、下部クラッド
層2の形成方法と同一とすればよいが、コア層3は下部
クラッド層2とは屈折率が異なるため、この場合の前記
前駆体反応溶液にはコア層3用のものを用いる。なお、
コア層3の屈折率は、下部クラッド層2のそれより、通
常、0.2〜1.0%程度大きくする。
【0060】(c)コア層3の上に、蒸着法によりアル
ミニウム薄膜4を形成する。
【0061】(d)アルミニウム薄膜4上にフォトレジ
ストを塗布し、プリベーク、露光、現像、ポストベーク
を行って、所定パターンのレジスト層5を得る。
【0062】(e)次いで、アルミニウム剥離専用のエ
ッチャントで、レジスト層5に被覆されていない部分の
アルミニウム薄膜を除去する。
【0063】(f)さらに、レジスト層5およびアルミ
ニウム薄膜4で保護されていないコア層3の有機・無機
高分子複合体をドライエッチング方法で除去する。次
に、コア層3の上部に存在するアルミニウム薄膜を、ア
ルミニウム剥離専用のエッチャントで剥離・除去する。
このとき、アルミニウム薄膜上に残存しているレジスト
層5も同時に除去され、コア層3のパターニングが完了
する。
【0064】(g)最後に、下部クラッド層2およびパ
ターニングされたコア層3の上に、上部クラッド層6を
形成する。上部クラッド層6の形成方法は、下部クラッ
ド層2のそれと同一とすればよく、また、上部クラッド
層6の屈折率は下部クラッド層2のそれと同一とするこ
とが好ましい。このようにして、クラッド層およびコア
層が有機・無機高分子複合体で形成された埋め込み型光
導波路が得られる。
【0065】図2は、本発明の有機・無機高分子複合体
をコア層3に適用したリッジ型光導波路の一例の断面図
である。この例では、下部クラッド層2として、コア層
3よりも屈折率が小さいシリコン酸化膜をスパッタリン
グまたは蒸着法で形成してある。下部クラッド層2形成
後は、図1と同様な工程により製造するが、上部クラッ
ド層6は設けない。この場合、空気が上部クラッド層と
して働くことになる。
【0066】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0067】有機・無機高分子複合体の製造例1 市販のポリスチレン(重合度1000〜1400)、
0.5gをテトラヒドロフラン2.5mlに溶解した。
続いてジフェニルジメトキシシランを0.025gと、
トリフェニルジメトキシシラン0.025gとを添加し
た。得られた溶液を攪拌しながら、酸触媒として0.1
N−HClを0.04mlを加え、窒素雰囲気下、室温
で2時間攪拌して反応溶液を調製した。次いで、窒素雰
囲気下、反応溶液を40℃で1時間、50℃で1時間、
70℃で1時間、80℃で120時間保ってゲルの熟成
を行いかつ、溶媒を除去して表1に示す有機・無機高分
子複合体サンプルNo. 1を得た。
【0068】
【表1】
【0069】表1のサンプルNo. 1は、透明でかつ、ク
ラックの発生しない有機・無機高分子複合体が得られた
ことがわかる。なお、表1に示す各サンプルでは、可視
光領域においてポリメチルメタクリレートやポリスチレ
ンと同等の光透過率が得られることが確認された。
【0070】表1のサンプルNo. 1の有機・無機高分子
複合体のガラス転移温度をTMAおよびDSC熱分析装
置(セイコー電子工業製、TMA−300型および、D
SC−220C型)で測定したところ、100±10℃
であった。
【0071】有機・無機高分子複合体の製造例2 有機・無機高分子複合体の製造例1で使用したテトラヒ
ドロフラン中に溶解したポリスチレン溶液に、ジフェニ
ルジメトキシシラン0.05gを用い、上記製造例1の
条件と同一にして表1に示す有機・無機高分子複合体サ
ンプルNo. 2を得た。を作製した。このサンプルは、上
記製造例1のサンプルNo. 1と同様に、透明でかつ耐熱
性に優れたものであった。このサンプルのガラス転移温
度は、100±5℃であった。
【0072】有機・無機高分子複合体の製造例3 有機・無機高分子複合体の製造例1で使用したテトラヒ
ドロフラン中に溶解したポリスチレン溶液に、ジフェニ
ルジメトキシシラン0.25gと、フェニルトリメトキ
シシラン0.25gとを用い、上記製造例1の条件と同
一にして表1に示す有機・無機高分子複合体サンプルN
o. 3を作製した。このサンプルは、上記製造例1のサ
ンプルNo. 1と同様に、透明でかつ耐熱性に優れたもの
であった。このサンプルのガラス転移温度は、100±
10℃であった。
【0073】有機・無機高分子複合体の製造例4 有機・無機高分子複合体の製造例1で使用したテトラヒ
ドロフラン中に溶解したポリスチレン溶液に、ジフェニ
ルジメトキシシラン0.5gとフェニルトリメトキシシ
ラン0.5gとを用い、上記製造例1の条件と同一にし
て表1に示す有機・無機高分子複合体サンプルNo. 4を
作製した。このサンプルは、上記製造例1のサンプルN
o. 1と同様に、透明でかつ耐熱性に優れたものであっ
た。このサンプルのガラス転移温度は、100±10℃
であった。
【0074】有機・無機高分子複合体の製造例5 有機・無機高分子複合体の製造例1で使用したテトラヒ
ドロフラン中に溶解したポリスチレン溶液に、ジフェニ
ルジメトキシシラン2.5gと、フェニルトリメトキシ
シラン2.5gとを用い、上記製造例1の条件と同一に
して表1に示す有機・無機高分子複合体サンプルNo. 5
を作製した。このサンプルは、上記製造例1のサンプル
No. 1と同様に、透明でかつ耐熱性に優れたものであっ
た。このサンプルのガラス転移温度は、100±10℃
であった。
【0075】有機・無機高分子複合体の製造例6 有機・無機高分子複合体の製造例1で使用したテトラヒ
ドロフラン中に溶解したポリスチレン溶液に、ジナフチ
ルジメトキシシラン0.25g、フェニルトリメトキシ
シラン0.25gとを用い、上記製造例1の条件と同一
にして表1に示す有機・無機高分子複合体サンプルNo.
6を作製した。このサンプルは、上記製造例1のサンプ
ルNo. 1と同様に、透明でかつ耐熱性に優れたものであ
った。このサンプルのガラス転移温度は、100±10
℃であった。
【0076】有機・無機高分子複合体の製造例7 有機・無機高分子複合体の製造例1で使用したテトラヒ
ドロフラン中に溶解したポリスチレン溶液に、ジフェニ
ルジメトキシシラン0.5gを用い、上記製造例1の条
件と同一にして表1に示す有機・無機高分子複合体サン
プルNo. 7を作製した。このサンプルは、上記製造例1
のサンプルNo. 1と同様に、透明でかつ耐熱性に優れた
ものであった。
【0077】なお、上記製造例で得られた有機・無機高
分子複合体サンプルNo. 1〜6を600℃で焼成し、得
られた多孔質シリカの細孔分布を窒素吸着法で測定した
結果、1.5〜2.5nmに細孔分布を有することが確認
された。このことは、ポリスチレンがナノメートルオー
ダーのスケールで均一にシリカゲル中に分散しているこ
とを示している。このようにゾル・ゲル反応系中での重
合法を用いることで、シリカゲルとの相互作用の弱い系
でも均一な高分子複合体が得られることがわかる。
【0078】光導波路の製造例 以下の手順で光導波路を作製した。
【0079】まず、3インチのシリコン基板上に、上記
製造例1で作製したサンプルNo. 1の反応溶液を滴下
し、加熱乾燥後の膜厚が20μm になるようにスピンコ
ートした。その後、100℃に50時間、続いて150
℃に50時間保持することにより溶媒を除去し、下部ク
ラッド層とした。
【0080】次に、下部クラッド層上に、上記製造例2
で作製したサンプルNo. 2の反応溶液を用いた以外は上
記した下部クラッド層形成の際と同様にして、コア層を
形成した。このコア層は、クラックの発生がなく、無色
透明で均質なものであった。
【0081】次に、EB蒸着機でアルミニウム薄膜を2
000A の厚さとなるように蒸着した後、レジスト処理
を行った。まず、一般のポジ型レジストをスピンコート
で塗布した後、110℃に2分間保持することによりプ
リベークを行った。次に、線幅が8μm で全長50mmの
フォトマスクを通じて紫外線露光を行い、専用のレジス
ト現像液で未露光部分を除去した。次に、135℃に3
0分間保持することによりポストベークを行った後、レ
ジストコートされていない部分のアルミニウム薄膜を専
用のエッチャントで除去した。洗浄乾燥後、酸素ガスを
用いたRIEドライエッチング処理を行い、コア層部分
を断面矩形のリッジ型(長さ50mm、幅8μm 、高さ8
μm )となるようにエッチングした。
【0082】エッチング後、コア層上部にあるアルミニ
ウム薄膜のマスクを専用のエッチャントで溶解した。次
に、上記した下部クラッド層形成の際と同様にして上部
クラッド層を形成した。このようにして埋め込み型の光
導波路を得た。
【0083】この光導波路の光伝搬損失を、波長850
nmの光を用いてカットバック法で測定した。測定の結
果、この導波路の光伝搬損失は0.5dB/cm 以下であっ
た。なお、各クラッド層とコア層とについて、屈折率を
プリズムカプラー(米国メトリコン社製型式2010)
で測定した。この結果、コア層とクラッド層との間の比
屈折率差は、0.3〜1%の範囲にあった。
【0084】この光導波路を85℃の環境下に100時
間静置してから取り出し、光損失変化を測定した結果、
吸熱による樹脂の劣化・変質に基づく損失増は全くな
く、耐熱性の高いことが確認された。
【0085】また60℃、90%R.H.の環境下に1
00時間静置してから同様の測定を行った結果、吸湿に
よる樹脂の劣化・変質に基づく損失増は全くなく、耐湿
性の高いことが確認された。
【0086】薄膜の評価 次に、有機・無機高分子複合体薄膜について、下記
(a)〜(c)の評価を行った。
【0087】(a)成膜性および有機・無機高分子複合
体の評価結果(その1) 上記製造例1のサンプルNo. 1の反応溶液を用い、スピ
ンコート法で形成した薄膜は、加熱乾燥後、クラックの
発生がなく、無色透明で均質であり、低級アルコール系
溶媒に対して不溶化していた。さらに、この薄膜から溶
媒抽出によりポリスチレンを分離し、ポリスチレンの重
合度を測定したところ、約1400であった。
【0088】(b)成膜性および有機・無機高分子複合
体の評価結果(その2) 上記製造例2のサンプルNo. 2の反応溶液を用い、上記
(a)と同様にして形成した薄膜は、加熱乾燥後、クラ
ックの発生がなく、無色透明で均質であり、低級アルコ
ール系溶媒に対して不溶化していた。また、上記(a)
と同様にして重合度を測定した結果、約1300であっ
た。
【0089】(c)成膜性および有機・無機高分子複合
体の評価結果(その3) 上記製造例3のサンプルNo. 3の反応溶液を用い、上記
(a)と同様にして形成した薄膜は、加熱乾燥後、クラ
ックの発生がなく、無色透明で均質であり、低級アルコ
ール系溶媒に対して不溶化していた。また、上記(a)
と同様にして重合度を測定した結果、約1300であっ
た。
【0090】なお、上記(a)、(b)および、(c)
でそれぞれ作製した薄膜の屈折率を測定したところ、
1.50±0.1の範囲にあった。
【0091】比較例1 市販のポリスチレン(重合度1000〜1400)、
0.5gをテトラヒドロフラン2.5mlに溶解し、さ
らに、メチルトリメトキシシランを0.05gを添加し
た。得られた溶液を攪拌しながら、酸触媒として0.1
N−HClを0.04mlを加え、窒素雰囲気下、室温
で2時間攪拌して反応溶液を調製した。次いで、窒素雰
囲気下、反応溶液を40℃で1時間、50℃で1時間、
70℃で1時間、80℃で120時間保ってゲルの熟成
を行いかつ、溶媒を除去して表1に示す有機・無機高分
子複合体サンプルNo. 8を得た。
【0092】表1のサンプルNo. 8は、不透明で白濁化
しており、ポリスチレンとシリカゲル成分とが相分離し
た状態となった。
【0093】比較例2 市販のポリスチレン(重合度1000〜1400)、
0.5gをテトラヒドロフラン2.5mlに溶解し、さ
らに、イソブチルトリメトキシシランを0.05gを添
加した。得られた溶液を攪拌しながら、酸触媒として
0.1N−HClを0.04mlを加え、窒素雰囲気
下、室温で2時間攪拌して反応溶液を調製した。次い
で、窒素雰囲気下、反応溶液を40℃で1時間、50℃
で1時間、70℃で1時間、80℃で120時間保って
ゲルの熟成を行いかつ、溶媒を除去して表1に示す有機
・無機高分子複合体サンプルNo. 9を得た。
【0094】表1のサンプルNo. 9は、不透明で白濁化
しており、ポリスチレンとシリカゲル成分とが相分離し
た状態となった。
【0095】比較例3 市販のポリスチレン(重合度1000〜1400)、
0.5gをテトラヒドロフラン2.5mlに溶解し、さ
らに、テトラメトキシシランを0.05gを添加した。
得られた溶液を攪拌しながら、酸触媒として0.1N−
HClを0.04mlを加え、窒素雰囲気下、室温で2
時間攪拌して反応溶液を調製した。次いで、窒素雰囲気
下、反応溶液を40℃で1時間、50℃で1時間、70
℃で1時間、80℃で120時間保ってゲルの熟成を行
いかつ、溶媒を除去して表1に示す有機・無機高分子複
合体サンプルNo. 10を得た。
【0096】表1のサンプルNo. 10は、不透明で白濁
化しており、ポリスチレンとシリカゲル成分とが相分離
した状態となった。
【0097】比較例4 重量平均分子量約10、000のポリスチレンのガラス
転移温度を測定した結果、75℃であり、本発明の有機
・無機高分子複合体に比べ、耐熱性が著しく低いことが
確認された。
【0098】以上の実施例の結果から、本発明の効果が
明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機・無機高分子複合体を使用した埋
め込み型光導波路の作製方法の一例を示す工程図であ
る。
【図2】本発明の有機・無機高分子複合体を使用したリ
ッジ型光導波路の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 平面基板 2 下部クラッド層 3 コア層 4 アルミニウム薄膜 5 レジスト層 6 上部クラッド層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリカマトリクス構造を有する無機マト
    リックス中にポリスチレンが分散された構造を有し、 前記無機マトリクスのシリカゲル成分が有する官能基
    と、ポリスチレンのフェニル基との間にフェニル基−フ
    ェニル基相互作用を有する有機・無機高分子複合体。
  2. 【請求項2】 前記シロキサン構造を有する無機マトリ
    ックスを合成するのに用いられる加水分解性有機基を有
    する有機ケイ素化合物が、下記式Iで表わされる化合物
    である請求項1及び2の有機・無機高分子複合体。 式I (R1m Si(OR2n (式中、R1 で示される置換基はアリール基を表わし、
    2 は低級アルキル基を表わす。mおよびnは、m+n
    =4、m≦2となる整数を表す。)
  3. 【請求項3】 前記シロキサン構造を有する無機マトリ
    ックスと、ポリスチレンとの重量比が、 加水分解性有機基を有する有機ケイ素化合物:ポリスチ
    レン換算で、1〜10:10〜1である請求項1または
    2の有機・無機高分子複合体。
  4. 【請求項4】 前記ポリスチレンの重合度が100以上
    である請求項1〜3のいずれかの有機・無機高分子複合
    体。
  5. 【請求項5】 光導波路に用いられる請求項1〜4のい
    ずれかの有機・無機高分子複合体。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかの有機・無機高
    分子複合体を製造する方法であって、 加水分解性有機基を有する有機ケイ素化合物溶液中に、
    溶解状態のポリスチレンを共存させて、前記有機ケイ素
    化合物を加水分解させる工程を有する有機・無機高分子
    複合体の製造方法。
JP28911297A 1997-10-06 1997-10-06 有機・無機高分子複合体およびその製造方法 Pending JPH11109154A (ja)

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JP2006501523A (ja) * 2002-10-03 2006-01-12 ルーメラ・コーポレーション ポリマー微細構造及びポリマー導波路の製造方法
JP2008111081A (ja) * 2006-10-31 2008-05-15 Central Glass Co Ltd 有機無機ハイブリッドガラス状物質

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