JPH10306109A - 有機・無機高分子複合体の製造方法 - Google Patents

有機・無機高分子複合体の製造方法

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JPH10306109A
JPH10306109A JP13431197A JP13431197A JPH10306109A JP H10306109 A JPH10306109 A JP H10306109A JP 13431197 A JP13431197 A JP 13431197A JP 13431197 A JP13431197 A JP 13431197A JP H10306109 A JPH10306109 A JP H10306109A
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divinylbenzene
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inorganic polymer
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JP13431197A
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Yoshiki Nakajo
善樹 中條
Masaaki Kobayashi
正明 小林
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高分子光導波路や他の光集積回路用材料とし
て、低光損失で精密な屈折率制御が可能であり、耐熱
性、耐湿性に優れ、所定の膜厚に成膜可能で材料の合成
が簡易であり、材料コストが低く、耐溶剤性を有する有
機・無機高分子複合体の製造方法を実現する。 【解決手段】 シロキサン結合を有する無機マトリック
ス中に少なくともジビニルベンゼンを含有する重合体が
分散された構造の有機・無機高分子複合体を合成する際
に、加水分解性有機基を有する有機ケイ素化合物を用い
て前記無機マトリクスを合成すると共に、前記重合体の
重合を行う製造方法によりIPN構造の有機・無機高分
子複合体を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光集積回路・光通信
等に用いられる光導波路や、プラスチック光ファイバ等
の光部品として使用可能な有機・無機高分子複合体の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光信号の伝送媒体である光導波路として
最も一般的に知られている光学部品に、光ファイバを挙
げることができる。光ファイバには低光損失、広帯域特
性が求められ、この点から石英、多成分ガラス、無機単
結晶等の無機系材料が広く使用されている。近年、B−
ISDNなどの大容量情報処理が必要な情報通信分野に
おいて、電気配線が有する伝送帯域の限界に対処するも
のとして光配線方法が提案されており、その一つに平面
基板上に形成される高分子光導波路が考えられている。
【0003】高分子光導波路の基本材料となる有機系高
分子は、無機系材料に比べて多くの機能性化合物、官能
基の導入が可能であることや、材料コストが低く、加工
性がよい等の特徴を持つので、光学用材料として現在ま
でに数多くの開発がなされている。例えば黒川隆志らの
アプライド オプティクス(Appl.Opt. )第17巻、4
号、646頁〜647頁、1978年や、特公昭61−
13201号公報には、選択的光重合法により、ポリカ
ーボネート中に含ませたドーパント(アクリル系モノマ
ーの一つであるアクリル酸メチル)を光照射により選択
的に重合、あるいはポリマーと反応させることで、屈折
率を変化させ、パターン状の光導波路を作製する手法が
開示されている。しかし、これらの選択的光重合法で
は、紫外線の照射条件を厳密に定める必要性があり、ま
た、溶媒の揮発条件によりモノマー含量が変化して屈折
率が微妙に変化するといった欠点がある。
【0004】また、ポリメチルメタクリレートの分子中
の水素について重水素化やフッ素化処理を行い、光導波
路を試作して光伝搬損失を測定したところ、0.1dB/c
m 以下という低損失化が達成できた旨の報告が吉村了行
らのエレクトロニクス レターズ(Electron.Lett.)、
第28巻、2135頁〜2136頁、1992年に掲載
されており、また、この内容が特公平6−43464号
公報に開示されている。しかし、ポリメチルメタクリレ
ート系のガラス転移温度は一般に100℃前後である
が、実際の光部品としての信頼性を考慮したとき、耐熱
温度の上限は70℃程度であると考えられ実用的には不
安が残る。また、ポリメチルメタクリレートは吸湿性が
比較的高く、飽和吸湿率が2%程度にも達する。したが
って、高湿度環境下では水のOH基の伸縮振動吸収が光
損失に影響を与えることが報告されている(例えば、戒
能俊邦、ポリマー プリプリンツ ジャパン(Polymer P
reprints Japan),第32巻、第4号,1983年,第
2525頁に掲載)。すなわち、ポリメチルメタクリレ
ートを用いた場合には、使用環境条件の湿度変化により
光伝搬損失が変動するといった問題が指摘されている。
【0005】有機系高分子の耐熱性の向上に加え、さら
なる低損失化、耐湿性の改善を目的としたものとして、
水素原子を重水素原子に置換したポリシロキサンを用い
た光導波路が特開平3−188402号公報に、分子中
の水素原子の一部または全部にフッ素化したポリイミド
を用いた高分子光導波路が特開平4−328504号公
報にそれぞれ開示されている。これらの高分子を用いた
場合、200℃以上の耐熱性を有し、近赤外波長領域で
の低損失化を達成した光導波路を提供できる。しかし、
高分子光導波路に適用する材料の低コスト化を図る上で
は、重水素化処理等を施した高分子のみを用いるのが妥
当であるとするのは疑問である。
【0006】このように光導波路に関する従来の技術で
は、前記のような有機高分子化合物のみ、あるいはガラ
ス導波路に代表されるように無機高分子材料のみを用い
たものが主である。
【0007】ところで、有機材料と無機材料とを組み合
わせたいわゆる複合材料が、数多く知られている。例え
ば、有機高分子に無機物を添加するフィラーの考え方
や、金属表面を有機高分子で修飾するコーティング手法
は、工業的に幅広く利用されている。これらの複合材料
には、それぞれの素材の特性を維持しつつ、さらに新し
い機能を付加させようとするところに特徴がある。これ
に対し、異なった材料を分子レベルで組み合わせて複合
化させると、前述の基本的な素材とは全く異なった新し
い材料が期待できる。すなわち、複合材料では、材料と
しての特性、例えば機械的特性、熱的特性などが一般に
その集合体の性質として発現することから、注目を集め
ている。
【0008】このような複合材料を光部品に適用した報
告がある。例えば、インテグレーテッド オプティクス
アンド オプティカル コミュニケーション 国際会
議(Integrated Optics and Optical Communication )
1995講演予稿集、TuD1−5,71頁には、シロ
キサンのネットワーク骨格中にメタクリレート基を置換
基として導入した化合物(登録商標名ORMOCER)
で光導波路を試作した報告が記載されている。
【0009】また、金属酸化物ゲルの3次元微細骨格中
に、特定の有機高分子を均一に分散させた複合体が知ら
れている。例えば、特開平3−212451号公報に
は、アミド結合を有する非反応性ポリマーの存在下、加
水分解重合性を有する有機金属化合物をゲル化させるこ
とにより、生成した金属酸化物ゲルの微細骨格をマトリ
ックスとしてその中にアミド結合を有する高分子が均一
に分散された構造の有機・無機複合体が得られることが
記載されており、また、この複合体が透明であって膜状
等に成形できる旨が記載されている。また、特開平5−
85860号公報には、加水分解性無機化合物を加水分
解重合して得られた無機酸化物のマトリックス中に、ウ
レタン結合を有する非反応性ポリマーが均一に分散した
有機・無機複合透明均質体が開示されている。しかし、
単純に有機物と無機物を混合させても、有機成分と無機
成分との相溶性が劣るためにこれらの複合体は不均質と
なり、有機高分子と無機物質が相分離してしまうことに
なる。このため、有機高分子と無機物質との特性が有効
に発現しない場合が多い。そのため、上記各公報に記載
された複合体では、マトリックス中に分散される高分子
がアミド結合やウレタン結合などを有するもの、特に、
水溶性ポリマーに限定されている。これらの水溶性ポリ
マーは水分に対する親和性が強いため、吸湿性がポリメ
チルメタクリレートよりも高いと判断される。このた
め、上記各公報に記載された複合体は、用途が限定され
てしまう。
【0010】特開平6−322278号公報には、上記
特開平3−212451号公報や特開平5−85860
号公報に開示された内容をさらに発展させ、汎用の有機
ポリマーを無機高分子と複合化可能とし、透明性、均質
性に優れた無機・有機複合ポリマー組成物を得ることが
開示されている。しかし、この複合ポリマー組成物を製
造する際には、汎用の有機ポリマーに加え、アミド結合
を有するポリマー(オキサゾリンのポリマーまたはポリ
ビニルピロリドン)を添加する必要がある。具体的に
は、有機金属化合物の加水分解重合反応溶液中にアミド
結合を有するポリマーおよび汎用の有機ポリマーを共存
させ、前記有機金属化合物を加水分解重合する。このよ
うにして得られる複合ポリマー組成物も、水溶性ポリマ
ーが含有されることになるため、上記特開平3−212
451号公報や特開平5−85860号公報に記載され
た複合体と同様に、吸湿性の点で問題がある。
【0011】一方、ポリメチルメタクリレートと同様に
光学材料への適用が検討されてきた高分子材料として、
ポリスチレンがある。ポリスチレンは非水溶性ポリマー
であり、透明性に優れ、吸湿性が低いことが知られてい
る。しかし、ポリスチレンのガラス転移温度は80℃程
度であり、ポリメチルメタクリレート同様に耐熱性が劣
るといった問題がある。ポリスチレンと無機材料とを複
合化することにより耐熱性の向上が期待されるが、従
来、ポリスチレンとシリカゲルとの有機・無機高分子複
合体を得ることはできなかった。これは、ポリスチレン
が水素結合受容基を持たないため、シリカゲルとの相互
作用が弱く、相分離を起こしてしまうからであった。
【0012】なお、ポリスチレンではなくポリスチレン
共重合体を用い、かつシランカップリング剤を介在させ
てシリカゲルとの有機・無機高分子複合体を合成した例
が、ジャーナル オブ マテリアル リサーチ(J.Mate
r.Res.)、第8巻,第5号,1993年,第1143頁
に報告されている。この報告では、SiO2 の三次元ネ
ットワーク構造中にポリスチレン構造を共有結合的に導
入することによって、有機・無機高分子複合体を合成し
ている。そして、共有結合的に結合させるために、スチ
レン単独の重合体ではなく、スチレンと3−(トリメト
キシシリル)プロピルメタクリレートとを共重合させた
中間体を合成し、これをシリカゲルと反応させている。
この方法では中間体の合成プロセスを追加する必要が生
じる。そして、メタクリレート構造も構造単位に加わる
ことから、ポリスチレン−シリカゲル系に比較して、吸
湿率の劣化が予想される。さらに、上記報告では、ポリ
スチレン系材料とシリカゲルとで構成される有機・無機
高分子複合体が光学材料として適しているか、また、こ
れらを適用した光導波路や他の光集積回路を作製するこ
とが可能であるのかといった検討はなされていない。
【0013】さらに、特開平5−194683号公報で
は、ラジカル重合性ビニル化合物を、ケイ酸オリゴマー
の存在下で重合させることにより得られる複合体組成物
を開示している。この複合体組成物はラジカル重合性ビ
ニル化合物をケイ酸オリゴマーの存在下で重合させて得
られると記載されている。またこの複合体組成物は、ラ
ジカル重合性ビニル化合物または、その部分重合体中に
ケイ酸オリゴマーを溶解した混合溶液を調製する第一工
程と、次いでケイ酸オリゴマーの縮合反応と、ラジカル
重合性ビニル化合物または、その部分重合体のラジカル
重合を実施する第二工程からなる製造方法によって得ら
れることが示されている。
【0014】ここで用いられているラジカル重合性ビニ
ル化合物としては、公知のラジカル重合が可能な単量体
が使用され、またケイ酸オリゴマーとしては水ガラスま
たはメタケイ酸ソーダから調製された、直鎖状、分枝状
またはハシゴ状の構造を有し、分子量数百万から数万の
部分縮合体が適当であると記載されている。
【0015】この方法では、あらかじめシロキサン結合
を有する無機マトリックスの部分構造体を準備してお
き、これを縮重合反応にて無機マトリックスの合成を完
成させ、かつラジカル重合性ビニル化合物またはその部
分重合体のラジカル重合も実施することにより、複合体
を合成するものである。
【0016】有機ケイ素化合物として、分子量数百万か
ら数万のケイ酸オリゴマーを用いて合成プロセスを開始
している。この方法ではケイ酸オリゴマーの精製工程も
しくは分子量分布を調製する工程が加わることになり、
作業工程が複雑化してしまう。また、ラジカル重合性ビ
ニル化合物としてスチレンやジビニルベンゼンが該当す
る化合物として列挙されているが、実施例においてスチ
レンやジビニルベンゼンを用いた複合体の合成方法は記
載されていない。さらに上記公報では、ポリスチレン系
材料とシリカゲルとで構成される有機・無機高分子複合
体が光学材料として適しているか、また、これらを適用
した光導波路や他の光集積回路を作製することが可能で
あるのかといった検討はなされていない。
【0017】このような観点から我々は、特願平8−2
80357号において、高分子光導波路や他の光集積回
路用材料として適用可能な有機・無機高分子複合体およ
びその製造方法を提供するに至った。この発明において
開示された内容は、シロキサン結合を有する無機マトリ
ックス中にポリスチレンが分散された構造を有する有機
・無機高分子複合体であり、この有機・無機高分子複合
体はスチレンモノマーの重合によりポリスチレンを合成
すると共に、加水分解性有機基を有するアルキルアルコ
キシシラン等の有機ケイ素モノマー化合物から前記無機
マトリックスを合成する工程を経て得られたものであ
る。
【0018】しかしながら、前記手法により合成される
シロキサン結合を有する無機マトリックス中にポリスチ
レンが分散した有機・無機高分子複合体の欠点として、
耐有機溶剤性が低いことが指摘される。例えばこの有機
・無機高分子複合体をテトラヒドロフラン等の有機溶媒
中に放置すると、有機・無機高分子複合体中のポリスチ
レンが有機溶媒中に溶解してしまう。これはポリスチレ
ン自体の耐有機溶剤性が低い性質が有機・無機高分子複
合体においてそのまま発現した結果であり、有機・無機
高分子複合体を構成するポリスチレンと無機マトリック
スの相互作用が低いことを意味している。
【0019】高分子光導波路や他の光集積回路用材料に
要求される項目は、低光損失(いわゆる、透明であるこ
と)であり、精密な屈折率制御が可能であり、環境特性
の一つである耐熱性、耐湿性が優れていること等であ
る。また、高分子光導波路を作製する場合は、材料が希
望する所定の膜厚に成膜可能であることや、材料の合成
が簡易であること、材料コストが低いことも重要な項目
である。加えて洗浄工程や、パターニング工程といった
作製工程上、材料は様々な有機溶媒中でさらされること
になるので、これら工程において問題がないような耐溶
剤性を有していなくてはならない。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高分
子光導波路や他の光集積回路用材料として、低光損失で
精密な屈折率制御が可能であり、耐熱性、耐湿性に優
れ、所定の膜厚に成膜可能で材料の合成が簡易であり、
材料コストが低く、耐溶剤性を有する有機・無機高分子
複合体の製造方法を実現することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(6)のいずれかの構成によって達成される。 (1) シロキサン結合を有する無機マトリックス中に
少なくともジビニルベンゼンを含有する重合体が分散さ
れた構造の有機・無機高分子複合体を合成する際に、加
水分解性有機基を有する有機ケイ素化合物を用いて前記
無機マトリクスを合成すると共に、前記重合体の重合を
行う有機・無機高分子複合体の製造方法。 (2) 前記重合体は、スチレンとジビニルベンゼンと
の共重合によるスチレン−ジビニルベンゼン共重合体で
ある上記(1)の有機・無機高分子複合体の製造方法。 (3) 前記加水分解性有機基を有する有機ケイ素化合
物は、下記式Iで表わされる化合物である上記(1)ま
たは(2)の有機・無機高分子複合体の製造方法。 式I (R1m Si(OR24-m (式中、R1 はアルキル基またはアリール基を表わす。
2 は低級アルキル基を表わし、R1 およびR2 は、そ
れぞれそれらが複数存在する場合、互いに異なっていて
もよい。mは1または2の整数を示す。) (4) 加水分解性有機基を有する有機ケイ素化合物の
加水分解反応溶液中に、ジビニルベンゼンモノマーまた
はスチレンモノマーとジビニルベンゼンモノマーを存在
させて、前記ジビニルベンゼンモノマーまたはスチレン
モノマーとジビニルベンゼンモノマーとを重合させる工
程を有する上記(1)〜(3)のいずれかの有機・無機
高分子複合体の製造方法。 (5) 前記重合体の構成成分であるスチレンとジビニ
ルベンゼンの各モノマーの重量組成比が、ジビニルベン
ゼンモノマーに対し、スチレンモノマーが0〜95wt%
(ただし95wt%を含まず)である上記(1)〜(4)
のいずれかの有機・無機高分子複合体の製造方法。 (6) 前記有機・無機高分子複合体は、光導波路に用
いられる上記(1)〜(5)のいずれかの有機・無機高
分子複合体の製造方法。
【0022】
【作用および効果】本発明の有機・無機高分子複合体で
は、含有される有機高分子の特徴、すなわちジビニルベ
ンゼン含有重合体の吸湿性の低さが消失することなく反
映されるため、耐湿性が良好である。このため、本発明
の有機・無機高分子複合体を光学材料として使用して作
製された光集積回路部品を用いることで、耐環境性の優
れた光信号伝送回路を構築することが可能となる。本発
明では、このような有機・無機高分子複合体を、有機ケ
イ素化合物の加水分解反応溶液中に少なくともジビニル
ベンゼンモノマーを存在させ、好ましくはスチレンモノ
マーを共存させて、ジビニルベンゼンモノマーを含有す
る重合体を合成させる方法により実現した。
【0023】これに対し、有機成分の原料としてジビニ
ルベンゼンモノマー、またはスチレンモノマー及びジビ
ニルベンゼンモノマーではなく、ポリスチレンまたはポ
リジビニルベンゼンを用いた場合、前述したように単純
に混合させて有機・無機高分子複合体を合成しようとし
ても有機成分と無機成分が相分離してしまい透明かつ均
質な有機・無機高分子複合体を合成することができな
い。また、前述したように、メタクリレート構造単位を
もつポリスチレン共重合体を有機成分の原料として用い
れば、シリカゲルと有機成分とが共有結合した複合体の
製造は可能であるが、この場合にはメタクリレート構造
単位による耐湿性の低下が問題となってしまう。
【0024】さらに本発明のシロキサン結合を有する無
機マトリックス中に、少なくともジビニルベンゼンを含
有する重合体、好ましくはスチレンとジビニルベンゼン
共重合体が分散された構造を有する有機・無機高分子複
合体は、シロキサン骨格とジビニルベンゼンを含有する
重合体、好ましくはスチレン−ジビニルベンゼン共重合
体とIPN(Interpenetrating Network)構造を形成す
ることにより、有機溶剤によって有機成分が抽出されに
くくなる。従って耐有機溶剤性が著しく改善する。本発
明ではこのような有機・無機高分子複合体を、スチレン
とジビニルベンゼンの各モノマー重量組成比を、ジビニ
ルベンゼンモノマーに対し、スチレンモノマーが0〜9
5wt%(ただし95wt%を含まず)とし、有機ケイ素化
合物の加水分解反応溶液中にジビニルベンゼンモノマー
あるいは、スチレンモノマーとジビニルベンゼンモノマ
ーを共存させて、前記ジビニルベンゼンモノマーあるい
はスチレンモノマーとジビニルベンゼンを重合(共重
合)させる方法により実現した。
【0025】これに対し、有機成分の原料としてスチレ
ンモノマーのみを用い、有機ケイ素化合物の加水分解反
応溶液中にスチレンモノマーを共存させて、前記スチレ
ンモノマーを重合させる方法で合成して得られた有機・
無機高分子複合体は、耐有機溶剤性が低い。これはポリ
スチレンの場合、シロキサン骨格とポリスチレンがIP
N構造を形成できないことにより、有機溶媒により有機
・無機高分子複合体中のポリスチレンが容易に抽出され
てしまうからである。さらにスチレンとジビニルベンゼ
ンの各モノマー重量組成比を、ジビニルベンゼンモノマ
ーの重量に対し、スチレンモノマーの重量が95wt%を
超えるものとして得られた有機・無機高分子複合体も同
様の結果となる。このことはスチレン−ジビニルベンゼ
ン共重合体中のジビニルベンゼンの含有率を一定以上に
しないとIPN構造化した意義がないことを示唆してい
る。つまり耐有機溶剤性が改善しないことを意味する。
なお、ジビニルベンゼンホモポリマーの場合でも、スチ
レン−ジビニルベンゼン共重合体がシロキサン骨格とI
PN構造化した状態と同様な効果があるため、スチレン
モノマーの量は0〜95wt%の範囲が好ましい。
【0026】本発明に用いる有機・無機高分子複合体で
は、物理的特性の一つである熱的特性、例えばガラス転
移温度が、その複合体の性質として発現するため、有機
高分子自体が有する熱的特性を大きく改善できる。この
ため、高温条件下にさらされても有機・無機高分子複合
体の劣化・変質がない。したがって、本発明における有
機・無機高分子複合体を用いた導波路は、有機高分子だ
けで作製した導波路に比較して、耐熱性が著しく良好と
なる。
【0027】また、本発明の有機・無機高分子複合体
は、マトリックスであるシロキサン骨格中に有機高分子
が均一に分散した構造を有するため、透明性が良好であ
る。このため、光導波路に適用した場合、損失を著しく
小さくできる。
【0028】また、本発明の有機・無機高分子複合体に
おいて、有機成分と無機成分との比率を適宜設定するこ
とにより、屈折率を広範囲にわたって精密かつ容易に制
御することができる。したがって、本発明の有機・無機
高分子複合体を適用して光導波路を作製するにあたり、
光導波路構造中のコア部分およびクラッド部分の屈折率
制御を精密かつ容易に行うことができる。この際、最終
組成はほぼ仕込比どおりとなるので、屈折率制御が容易
であり、屈折率のばらつきも小さい。
【0029】さらに、本発明に用いるそれぞれの高分子
構造中の一部または全部の水素原子を、重水素原子やハ
ロゲン原子等で置換すれば、可視光領域から近赤外波長
領域に至るまで、損失の極めて低い特性を得ることが可
能となる。この場合、全構成成分を置換する必要は必ず
しもないので、製造法も簡易となる。
【0030】なお、各高分子単位構造中にアルキル基、
アリール基、ハロゲン原子等の置換基を適宜導入した場
合でも、屈折率の制御が可能である。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明の有機・無機高分子複合体
は、シロキサン結合を有する無機マトリックス中にジビ
ニルベンゼンを含有する重合体、好ましくはスチレン−
ジビニルベンゼン共重合体が分散された構造を有する。
【0032】前記ジビニルベンゼン含有重合体、または
スチレン−ジビニルベンゼン共重合体は、ジビニルベン
ゼンモノマー、好ましくはスチレン及びジビニルベンゼ
ンモノマーを重合することにより合成されたものであ
る。ここで、ジビニルベンゼンモノマーは、p−,m
−,o−ジビニルベンゼンモノマーを含み、これらはい
ずれのものを用いてもよく、これらを2種以上用いると
きの量比も任意である。スチレンとジビニルベンゼンを
共重合させる場合、各モノマーの重量組成比は、好まし
くはジビニルベンゼンモノマーの重量に対し、スチレン
モノマーの重量を0〜95wt%の範囲とする。スチレン
モノマー及びジビニルベンゼンモノマーについて、特に
断りがない限り単にスチレン及びジビニルベンゼンと称
する。
【0033】スチレン及びジビニルベンゼンの置換体と
しては、フェニル基の水素原子の少なくとも1個が重水
素原子、フッ素原子、塩素原子、低級アルキル基または
アリール基で置換されたものなどが考えられる。この場
合の低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基といった
炭素数1〜4程度のアルキル基が好ましい。この低級ア
ルキル基は置換基を有していてもよい。アルキル基の好
ましい置換基としては、例えば、重水素原子や、フッ素
原子、塩素原子等が挙げられる。置換アルキル基の具体
例としては、その重水素置換したアルキル基を含め、例
えば、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタ
フルオロエチル基等が特に好ましい。前記アリール基と
しては、フェニル基、ナフチル基等が好ましい。このア
リール基は置換基を有していてもよい。アリール基の置
換基としては、例えば、前記重水素原子や、フッ素原
子、塩素原子等が好ましい。置換アリール基の具体例と
しては、4−メチルフェニル基や、4−フルオロフェニ
ル基が好ましい。また、これら置換基中の水素原子を重
水素化したものも含むことができる。このようなスチレ
ン及びジビニルベンゼンは、1種または2種以上を使用
することができる。
【0034】シロキサン結合を有する無機マトリックス
は、加水分解性有機基を有する有機ケイ素化合物から合
成されたシリカゲルである。
【0035】有機ケイ素化合物としては、少なくとも2
つの加水分解性有機基を有するものが好ましい。特に好
ましい有機ケイ素化合物は、下記式Iで表されるもので
ある。 式I (R1mSi(OR24-m
【0036】上記式Iにおいて、R1 は低級アルキル基
またはアリール基を表し、R2 は低級アルキル基を表
し、mは0〜2の整数を表す。R1 はmの値に従い複数
存在するときは互いに異なっていてもよい。すなわち、
1 が複数存在する場合、R1は1種からなっていても
よく、2種からなっていてもよい。また、R2 も、1種
からなっていてもよく、2種以上からなっていてもよ
い。
【0037】R1 で表される低級アルキル基およびアリ
ール基は、置換基を有してもよい。R1 で表される低級
アルキル基は、炭素数1〜4程度のものが好ましい。R
2 で表される低級アルキル基も、炭素数1〜4程度のも
のが好ましい。R2 に用いるアルキル基、アリール基と
しては、上記スチレンの説明において挙げたものが好ま
しい。
【0038】このような有機ケイ素化合物としては、例
えば、トリメトキシシラン,トリエトキシシラン,トリ
プロポキシシラン,テトラメトキシシラン,テトラエト
キシシラン,テトラプロポキシシラン,メチルトリメト
キシシラン,エチルトリメトキシシラン,プロピルトリ
メトキシシラン,メチルトリエトキシシラン,エチルト
リエトキシシラン,プロピルトリエトキシシラン,ジメ
チルジメトキシシラン,ジエチルジエトキシシラン,γ
−クロロプロピルトリメトキシシラン,γ−クロロプロ
ピルトリエトキシシラン,γ−メルカプトプロピルトリ
メトキシシラン,γ−メルカプトプロピルトリエトキシ
シラン,γ−アミノプロピルトリエトキシシラン,フェ
ニルトリメトキシシラン,フェニルトリエトキシシラ
ン,フェニルトリプロポキシシラン,ジフェニルジメト
キシシラン,ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられ
る。
【0039】これらのうち好ましい有機ケイ素化合物
は、例えば、テトラメトキシシラン,テトラエトキシシ
ラン,メチルトリメトキシシラン,エチルトリメトキシ
シラン,メチルトリエトキシシラン,エチルトリエトキ
シシラン,ジメチルジメトキシシラン,ジエチルジエト
キシシラン,フェニルトリメトキシシラン,フェニルト
リエトキシシラン,ジフェニルジメトキシシラン,ジフ
ェニルジエトキシシラン等であり,特に,フェニルトリ
メトキシシランやフェニルトリエトキシシランなどフェ
ニル基を持つものは、スチレンのフェニル基との相互作
用により、より均一な複合体が得られることが期待でき
る点で好ましい。
【0040】なお、これらの有機ケイ素化合物には、屈
折率制御のためや組成物の硬度の調整のために、m=3
のモノアルコキシシランを必要に応じて添加してもよ
い。これらの有機ケイ素化合物は部分的に重合していて
もよい。使用する化合物の重合度は1〜30程度が好ま
しい。有機ケイ素化合物は異種のものを2種類以上使用
でき、その際の混合比は任意である。
【0041】ジビニルベンゼン、必要によりスチレン、
および有機ケイ素化合物は有機溶媒に溶解され、反応溶
液とされる。好ましくは両者を溶解可能な共通有機溶媒
が使用される。有機溶媒としては例えば、ヘキサン、オ
クタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式
炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭
化水素;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ト
リクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素;酢酸メチ
ル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチ
ルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサ
ン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテ
ル類;非プロトン性極性溶媒(例えば、N−メチルピロ
リドン、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルアセ
トアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチ
ルスルホキシド等のスルホキシド類等);あるいはこれ
らの混合溶媒等があげられる。
【0042】本発明の有機・無機高分子複合体は有機成
分としてジビニルベンゼンを含有する重合体、好ましく
はスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を含むので、複
合体中のシリカゲル含有率の高低にそれほど依存せず均
質な複合体が得られるという特色がある。本発明の有機
・無機高分子複合体における有機成分(ジビニルベンゼ
ン含有重合体)と無機成分(シリカゲル)との割合は、
両成分の特性を損なわない範囲内であれば特に制限はな
いが、例えば、ジビニルベンゼン含有重合体100重量
部に対しシリカゲルが好ましくは20〜1000重量
部、より好ましくは50〜500重量部程度である。ジ
ビニルベンゼン含有重合体に対するシリカゲルの割合が
前記範囲を外れると、複合化の意義が少なくなる。有機
・無機高分子複合体の物理的特性の中で、ガラス転移温
度は、その複合体の性質として発現するため、複合体に
使用する有機高分子自体が有していた熱的特性を大きく
改善できる。したがって、シリカゲルが少なすぎると、
有機・無機高分子複合体のガラス転移温度がジビニルベ
ンゼン含有重合体自体のガラス転移温度とほぼ同一とな
り、変化が生じているとは判断できなくなってきて、複
合化する意義がなくなってくる。逆にシリカゲルが多す
ぎても、有機成分添加の意義がなくなってくる。有機・
無機高分子複合体のガラス転移温度は、好ましくは10
0℃以上、特に120〜150℃程度の範囲が好まし
い。
【0043】本発明の有機・無機高分子複合体の製造方
法は、有機モノマーであるジビニルベンゼン、またはス
チレンとジビニルベンゼンのラジカル重合と、有機金属
化合物のゾル・ゲル法による加水分解重合とを同時に進
行させることに特徴がある。本発明の有機・無機高分子
複合体の製造に、従来の有機・無機高分子複合体の製造
方法を用いた場合、すなわち、有機ケイ素化合物の加水
分解重合反応溶液中にジビニルベンゼン含有重合体を共
存させて有機ケイ素化合物を加水分解重合する方法を用
いた場合には、均質、透明な有機・無機高分子複合体は
製造することができない。これは前述の通り、本発明で
用いるジビニルベンゼン、必要によりスチレンが水素結
合受容基を持たないため、シリカゲルとの相互作用が弱
く、相分離を起こしてしまうからである。
【0044】ジビニルベンゼンモノマー、またはスチレ
ン及びジビニルベンゼンモノマーの重合には、一般的な
ビニルモノマーのラジカル重合法、例えば、溶液重合、
懸濁重合、塊状重合等を用いることができるが、本発明
では溶液重合を用いることが好ましい。重合開始剤とし
ては通常のものを使用することができ、例えば、ジ−t
ert−ブチルペルオキシドやメチルエチルケトンペル
オキシド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物や、2、
2’−アゾビスイソブチロニトリル、2−カルバモイル
−アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物を挙げること
ができる。
【0045】有機ケイ素化合物は、ジビニルベンゼンモ
ノマー、またはスチレン及びジビニルベンゼンモノマー
の存在下、反応溶液中で公知の方法に従い、ゾル・ゲル
法により加水分解重合され、シリカゲルが生成する。こ
の重合は、酸触媒の存在下で行うことが望ましい。酸触
媒としては無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸
等);有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、
トリフルオロ酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸や、メ
タンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスル
ホン酸等のスルホン酸等)が使用できる。
【0046】ジビニルベンゼンモノマー、またはスチレ
ン及びジビニルベンゼンモノマーの重合および有機ケイ
素化合物の加水分解重合は、攪拌下、室温〜60℃程度
までの温度範囲内で行うことができる。不活性ガスの存
在下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、加
水分解重合に伴って生成するアルコールを除去しながら
重合してもよい。これらの重合により、シリカゲルの三
次元微細構造中のナノメートルオーダーの領域にジビニ
ルベンゼン含有重合体が均一に分散した構造が得られ
る。この構造は、原子間力顕微鏡によって確認すること
ができる。また、有機・無機高分子複合体から焼成など
により有機成分を除去した後、窒素吸着法を用いて測定
することにより、シリカゲル中においてジビニルベンゼ
ン含有重合体が存在していた細孔の寸法を求めることが
できる。この細孔の径は、通常、数十ナノメートル程度
以下である。
【0047】薄膜状の有機・無機高分子複合体を作製す
る場合には、まず、前記反応溶液が一定の組成系、反応
条件下で、所望の粘度に到達した後、ガラス・石英・シ
リコンなどの平面基板上に前記反応溶液を滴下し、スピ
ンコートする。この際、あらかじめ溶液粘度、基板の回
転数、その回転時間と、膜厚との関係を把握しておくこ
とにより、所望の膜厚の有機・無機高分子複合体薄膜が
得られるようにスピンコート条件を設定する。スピンコ
ート後、窒素雰囲気下で加熱することにより溶媒を除去
して硬化させる。この加熱は、70〜150℃程度の範
囲内において、まず、低温域に温度を保持し、次いで高
温域に温度を保持する構成で行うことが好ましい。この
ような方法により、均質でかつ所望の厚さの薄膜が作製
できる。
【0048】本発明では、ジビニルベンゼン含有重合体
とシリカゲルとの比率や置換基効果などにより有機・無
機高分子複合体の屈折率を制御できるため、屈折率の選
択の幅が広くなる。したがって、使用可能な有機成分と
無機成分とから、安定な屈折率が得られる組み合わせを
選択し、導波路構造中のコア部分用とクラッド部分用と
に適用すればよい。
【0049】本発明の有機・無機高分子複合体を適用し
た光導波路の構造は、一般の光導波路構造と同一でよ
い。一般の光導波路構造としては、例えば、ファイバ
型、スラブ型、リッジ型、埋め込み型等がある。光導波
路のコア部分とクラッド部分との寸法および両部分の屈
折率の関係は、光の波長や使用するモードに応じて適宜
決定すればよいが、コア部分とクラッド部分との比屈折
率差は、一般に0.2〜1.0%程度であることが好ま
しい。
【0050】埋め込み型光導波路の製造方法について、
図1を参照しながら説明する。図1は、本発明による埋
め込み型光導波路の作製方法の一例を示すものである。
1は平面基板、2は下部クラッド層、3はコア層、4は
アルミニウム薄膜、5はレジスト層、6は上部クラッド
層を示す。
【0051】(a)まず、有機・無機高分子複合体の前
駆体反応溶液を、ガラス、石英、シリコン等からなる平
面基板1上にスピンコートにより薄層状に塗布する。次
いで、窒素雰囲気下で上記したように70〜150℃程
度で加熱して溶媒を除去し、所望の膜厚となるように硬
化させる。これにより、下部クラッド層2が形成され
る。
【0052】(b)この下部クラッド層2の上に、コア
層3を形成する。コア層3の形成方法は、下部クラッド
層2の形成方法と同一とすればよいが、コア層3は下部
クラッド層2とは屈折率が異なるため、この場合の前記
前駆体反応溶液にはコア層3用のものを用いる。なお、
コア層3の屈折率は、下部クラッド層2のそれより、通
常、0.2〜1.0%程度大きくする。
【0053】(c)コア層3の上に、蒸着法によりアル
ミニウム薄膜4を形成する。
【0054】(d)アルミニウム薄膜4上にフォトレジ
ストを塗布し、プリベーク、露光、現像、ポストベーク
を行って、所定パターンのレジスト層5を得る。
【0055】(e)次いで、アルミニウム剥離専用のエ
ッチャントで、レジスト層5に被覆されていない部分の
アルミニウム薄膜を除去する。
【0056】(f)さらに、レジスト層5およびアルミ
ニウム薄膜4で保護されていないコア層3の有機・無機
高分子複合体をドライエッチング方法で除去する。次
に、コア層3の上部に存在するアルミニウム薄膜を、ア
ルミニウム剥離専用のエッチャントで剥離・除去する。
このとき、アルミニウム薄膜上に残存しているレジスト
層5も同時に除去され、コア層3のパターニングが完了
する。
【0057】(g)最後に、下部クラッド層2およびパ
ターニングされたコア層3の上に、上部クラッド層6を
形成する。上部クラッド層6の形成方法は、下部クラッ
ド層2のそれと同一とすればよく、また、上部クラッド
層6の屈折率は下部クラッド層2のそれと同一とするこ
とが好ましい。このようにして、クラッド層およびコア
層が有機・無機高分子複合体で形成された埋め込み型光
導波路が得られる。
【0058】図2は、本発明の有機・無機高分子複合体
をコア層3に適用したリッジ型光導波路の一例の断面図
である。この例では、下部クラッド層2として、コア層
3よりも屈折率が小さいシリコン酸化膜をスパッタリン
グまたは蒸着法で形成してある。下部クラッド層2形成
後は、図1と同様な工程により製造するが、上部クラッ
ド層6は設けない。この場合、空気が上部クラッド層と
して働くことになる。
【0059】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0060】有機・無機高分子複合体の製造例1 ジビニルベンゼンモノマー0.1g、テトラメトキシシ
ラン2.0gおよび重合開始剤として2、2’−アゾビ
スイソブチロニトリル(AIBN)をアセトン(20m
l)に溶解した。AIBN/スチレンは、モル比で1/
10とした。得られた溶液を攪拌しながら、酸触媒とし
て0.1N−HClをテトラメトキシシランの2〜4当
量分程度添加し、窒素雰囲気下、室温で5時間攪拌して
反応溶液を調製した。次いで、窒素雰囲気下、反応溶液
を60℃に24時間保って重合反応を行い、さらに室温
で24時間以上放置して、ゲル化およびゲルの熟成を行
った。次いで、100℃に48時間維持して溶媒を除去
し、有機・無機高分子複合体サンプル1を得た。
【0061】上記サンプル1の熱重量分析(TGA)よ
り重量損失を求めた結果、45%〜55%の範囲内であ
った。この重量損失は、TGAの際の加熱に伴う重量減
少が落ち着いたところでの値であり、これからサンプル
1中の有機成分の比率がわかる。この重量損失から、最
終組成がほぼ仕込比どおりとなっていることがわかる。
有機・無機高分子複合体サンプル1からスチレン−ジビ
ニルベンゼン共重合体を分離するために、クロロホルム
やテトラヒドロフランを用いて溶媒抽出を行った。溶媒
抽出の結果、ジビニルベンゼン重合体成分を検出するこ
とができなかった。
【0062】なお、上記サンプル1では、可視光領域に
おいてポリメチルメタクリレートやポリスチレンと同等
の光透過率が得られることが確認された。
【0063】さらに上記サンプル1のガラス転移温度を
TMAおよびDSC熱分析装置(セイコー電子工業製、
TMA−300型および、DSC−220C型)で測定
したところ、100℃以上であった。以上分析したよう
に、本発明により透明でかつ耐熱性に優れた有機・無機
高分子複合体が得られることがわかる。
【0064】有機・無機高分子複合体の製造例2 スチレンモノマー1.0g、ジビニルベンゼンモノマー
0.1g(スチレンモノマーの重量に対し、ジビニルベ
ンゼンモノマーの重量を10%)、テトラメトキシシラ
ン2.0gおよび重合開始剤として2、2’−アゾビス
イソブチロニトリル(AIBN)をアセトン(20ml)
に溶解した。AIBN/スチレンは、モル比で1/10
とした。得られた溶液を攪拌しながら、酸触媒として
0.1N−HClをテトラメトキシシランの2〜4当量
分程度添加し、窒素雰囲気下、室温で5時間攪拌して反
応溶液を調製した。次いで、窒素雰囲気下、反応溶液を
60℃に24時間保って重合反応を行い、さらに室温で
24時間以上放置して、ゲル化およびゲルの熟成を行っ
た。次いで、100℃に48時間維持して溶媒を除去
し、有機・無機高分子複合体サンプル2を得た。
【0065】このサンプルは、上記製造例1のサンプル
と同様に、透明でかつ耐熱性に優れたものであった。こ
のサンプルのガラス転移温度は、100℃以上であっ
た。
【0066】有機・無機高分子複合体の製造例3 有機・無機高分子複合体の製造例2で使用したテトラメ
トキシシランの替わりに、フェニルトリメトキシシラン
2.0gを用い、これ以外は上記製造例2のサンプル2
と同様にして有機・無機高分子複合体サンプル3を作製
した。このサンプルは、上記製造例2のサンプルと同様
に、透明でかつ耐熱性に優れたものであった。このサン
プル3のガラス転移温度は、100℃以上であった。
【0067】有機・無機高分子複合体の製造例4 有機・無機高分子複合体の製造例2で使用したテトラメ
トキシシラン2.0gの替わりに、テトラメトキシシラ
ンとフェニルトリメトキシシランとを総量で2.0g用
い、これ以外は上記製造例2のサンプル2と同様にして
有機・無機高分子複合体サンプル3を作製した。このサ
ンプルは、上記製造例2のサンプル2と同様に、透明で
かつ耐熱性に優れたものであった。このサンプル4のガ
ラス転移温度は、100℃以上であった。
【0068】有機・無機高分子複合体の製造例5 有機・無機高分子複合体の製造例2で使用したジビニル
ベンゼン0.1gの替わりに、ジビニルベンゼン0.0
5g(スチレンモノマーの重量に対し、ジビニルベンゼ
ンモノマーの重量を5%)を用い、これ以外は上記製造
例2のサンプル2と同様にして有機・無機高分子複合体
サンプル5を作製した。このサンプルは、上記製造例2
のサンプル2と同様に、透明でかつ耐熱性に優れたもの
であった。このサンプル5のガラス転移温度は、100
℃以上であった。
【0069】なお、上記製造例で得られた有機・無機高
分子複合体を600℃で焼成し、得られた多孔質シリカ
の細孔分布を窒素吸着法で測定した結果、1.5〜2.
5nmに鋭い細孔分布を有することが確認された。このこ
とは、ジビニルベンゼン重合体、またはスチレン−ジビ
ニルベンゼン共重合体がナノメートルオーダーのスケー
ルで均一にシリカゲル中に分散していることを示してい
る。このようにゾル・ゲル反応系中での重合法を用いる
ことで、シリカゲルとの相互作用の弱い系でも均一な高
分子複合体が得られることがわかる。
【0070】光導波路の製造例 以下の手順で光導波路を作製した。
【0071】まず、3インチのシリコン基板上に、上記
製造例2のサンプル2で使用した反応溶液を滴下し、加
熱乾燥後の膜厚が20μm になるようにスピンコートし
た。その後、100℃に50時間、続いて150℃に5
0時間保持することにより溶媒を除去し、下部クラッド
層とした。
【0072】次に、下部クラッド層上に、上記製造例4
で使用した反応溶液を用いた以外は上記した下部クラッ
ド層形成の際と同様にして、コア層を形成した。このコ
ア層は、クラックの発生がなく、無色透明で均質なもの
であった。
【0073】次に、EB蒸着機でアルミニウム薄膜を2
000A の厚さとなるように蒸着した後、レジスト処理
を行った。まず、一般のポジ型レジストをスピンコート
で塗布した後、110℃に2分間保持することによりプ
リベークを行った。次に、線幅が8μm で全長50mmの
フォトマスクを通じて紫外線露光を行い、専用のレジス
ト現像液で未露光部分を除去した。次に、135℃に3
0分間保持することによりポストベークを行った後、レ
ジストコートされていない部分のアルミニウム薄膜を専
用のエッチャントで除去した。洗浄乾燥後、酸素ガスを
用いたRIEドライエッチング処理を行い、コア層部分
を断面矩形のリッジ型(長さ50mm、幅8μm 、高さ8
μm )となるようにエッチングした。
【0074】エッチング後、コア層上部にあるアルミニ
ウム薄膜のマスクを専用のエッチャントで溶解した。次
に、上記した下部クラッド層形成の際と同様にして上部
クラッド層を形成した。このようにして埋め込み型の光
導波路を得た。
【0075】この光導波路の光伝搬損失を、波長130
0nmの光を用いてカットバック法で測定した。測定の結
果、この導波路の光伝搬損失は0.5dB/cm 以下であっ
た。なお、各クラッド層とコア層とについて、屈折率を
プリズムカプラー(米国メトリコン社製型式2010)
で測定した。この結果、コア層とクラッド層との間の比
屈折率差は、0.3〜1%の範囲にあった。
【0076】この光導波路を85℃の環境下に100時
間静置してから取り出し、光損失変化を測定した結果、
吸熱による樹脂の劣化・変質に基づく損失増は全くな
く、耐熱性の高いことが確認された。
【0077】また、60℃、90%R.H.の環境下に
100時間静置してから同様の測定を行った結果、吸湿
による樹脂の劣化・変質に基づく損失増は全くなく、耐
湿性の高いことが確認された。
【0078】薄膜の評価 次に、有機・無機高分子複合体薄膜について、下記
(a)〜(d)の評価を行った。
【0079】(a)成膜性および有機・無機高分子複合
体の評価結果(その1) 上記製造例1のサンプル1を合成した反応溶液を用い、
スピンコート法で形成した薄膜は、加熱乾燥後、クラッ
クの発生がなく、無色透明で均質であり、エタノールや
アセトンに対して不溶化していた。さらに、この薄膜を
粉砕し、ソックスレー抽出によりジビニルベンゼン重合
体を分離しようとしたが、ジビニルベンゼン重合体を抽
出することはできなかった。
【0080】(b)成膜性および有機・無機高分子複合
体の評価結果(その2) 上記製造例2で合成した反応溶液を用い、上記(a)と
同様にして形成した薄膜は、加熱乾燥後、クラックの発
生がなく、無色透明で均質であり、エタノールやアセト
ンに対して不溶化していた。さらに、この薄膜を粉砕
し、ソックスレー抽出によりスチレン−ジビニルベンゼ
ン共重合体を分離しようとしたが、スチレン−ジビニル
ベンゼン共重合体を抽出することはできなかった。
【0081】(c)成膜性および有機・無機高分子複合
体の評価結果(その3) 上記製造例3で合成した反応溶液を用い、上記(a)と
同様にして形成した薄膜は、加熱乾燥後、クラックの発
生がなく、無色透明で均質であり、エタノールやアセト
ンに対して不溶化していた。さらに、この薄膜を粉砕
し、ソックスレー抽出によりスチレン−ジビニルベンゼ
ン共重合体を分離しようとしたが、スチレン−ジビニル
ベンゼン共重合体を抽出することはできなかった。
【0082】(d)成膜性および有機・無機高分子複合
体の評価結果(その4) 上記製造例4で合成した反応溶液を用い、上記(a)と
同様にして形成した薄膜は、加熱乾燥後、クラックの発
生がなく、無色透明で均質であり、エタノールやアセト
ンに対して不溶化していた。さらに、この薄膜を粉砕
し、ソックスレー抽出によりスチレン−ジビニルベンゼ
ン共重合体を分離しようとしたが、スチレン−ジビニル
ベンゼン共重合体を抽出することはできなかった。
【0083】(e)成膜性および有機・無機高分子複合
体の評価結果(その5) 上記製造例5で合成した反応溶液を用い、上記(a)と
同様にして形成した薄膜は、加熱乾燥後、クラックの発
生がなく、無色透明で均質であり、エタノールやアセト
ンに対して不溶化していた。さらに、この薄膜を粉砕
し、ソックスレー抽出によりスチレン−ジビニルベンゼ
ン共重合体を分離しようとしたが、スチレン−ジビニル
ベンゼン共重合体を抽出することはできなかった。
【0084】なお、上記(a)、(b)、(c)、
(d)および(e)でそれぞれ作製した薄膜の屈折率を
測定したところ、1.50±0.1の範囲にあった。
【0085】比較例1 スチレンモノマー1.0g、テトラメトキシシラン2.
0gおよび重合開始剤として2、2’−アゾビスイソブ
チロニトリル(AIBN)をアセトニトリル(20ml)
に溶解した。AIBN/スチレンは、モル比で1/10
とした。得られた溶液を攪拌しながら、酸触媒として
0.1N−HClをテトラメトキシシランの2〜4当量
分程度添加し、窒素雰囲気下、室温で5時間攪拌して反
応溶液を調製した。次いで、窒素雰囲気下、反応溶液を
60℃に1時間保って重合反応を行い、さらに室温で2
4時間以上放置して、ゲル化およびゲルの熟成を行っ
た。次いで、100℃に48時間維持して溶媒を除去
し、有機・無機高分子複合体サンプル5を得た。
【0086】有機・無機高分子複合体サンプル5からポ
リスチレンを分離するために、アセトニトリルを用いて
抽出を行った。抽出処理後の溶液を1H−NMR分析し
た結果より、ポリスチレン成分を検出した。
【0087】比較例2 精製した市販のポリスチレン2.0g、フェニルトリメ
トキシシラン2.0gおよび酸触媒である0.1N−塩
酸0.5mlを、テトラヒドロフランに溶解・添加した。
得られた溶液を30℃に維持しながら1時間攪拌した。
その後、室温で24時間以上放置してゲル化およびゲル
の熟成を行ったところ、ポリスチレンが析出して相分離
した不均一な生成物のみ得られ、透明な有機・無機高分
子複合体は得ることができなかった。
【0088】比較例3 重量平均分子量約10、000のポリスチレンのガラス
転移温度を測定した結果、75℃であり、本発明の有機
・無機高分子複合体に比べ、耐熱性が著しく低いことが
確認された。
【0089】比較例4 スチレンモノマー1.0g、ジビニルベンゼンモノマー
0.04g(スチレンモノマーの重量に対し、ジビニル
ベンゼンモノマーの重量を4%)、テトラメトキシシラ
ン2.0gおよび重合開始剤として2、2’−アゾビス
イソブチロニトリル(AIBN)をアセトン(20ml)
に溶解した。AIBN/スチレンは、モル比で1/10
とした。得られた溶液を攪拌しながら、酸触媒として
0.1N−HClをテトラメトキシシランの2〜4当量
分程度添加し、窒素雰囲気下、室温で5時間攪拌して反
応溶液を調製した。次いで、窒素雰囲気下、反応溶液を
60℃に24時間保って重合反応を行い、さらに室温で
24時間以上放置して、ゲル化およびゲルの熟成を行っ
た。次いで、100℃に48時間維持して溶媒を除去
し、有機・無機高分子複合体サンプル6を得た。
【0090】有機・無機高分子複合体サンプル6からス
チレン−ジビニルベンゼン共重合体を分離するために、
アセトニトリルを用いて抽出を行った。抽出処理後の溶
液を1H−NMR分析した結果より、スチレン−ジビニ
ルベンゼン共重合体成分を検出した。
【0091】以上の実施例の結果から、本発明の効果が
明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機・無機高分子複合体を使用した埋
め込み型光導波路の作製方法の一例を示す工程図であ
る。
【図2】本発明の有機・無機高分子複合体を使用したリ
ッジ型光導波路の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 平面基板 2 下部クラッド層 3 コア層 4 アルミニウム薄膜 5 レジスト層 6 上部クラッド層
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G02B 6/12 C08L 25/02 6/13 G02B 6/12 N // C08L 25/02 M

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シロキサン結合を有する無機マトリック
    ス中に少なくともジビニルベンゼンを含有する重合体が
    分散された構造の有機・無機高分子複合体を合成する際
    に、 加水分解性有機基を有する有機ケイ素化合物を用いて前
    記無機マトリクスを合成すると共に、 前記重合体の重合を行う有機・無機高分子複合体の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 前記重合体は、スチレンとジビニルベン
    ゼンとの共重合によるスチレン−ジビニルベンゼン共重
    合体である請求項1の有機・無機高分子複合体の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記加水分解性有機基を有する有機ケイ
    素化合物は、 下記式Iで表わされる化合物である請求項1または2の
    有機・無機高分子複合体の製造方法。 式I (R1m Si(OR24-m (式中、R1 はアルキル基またはアリール基を表わす。
    2 は低級アルキル基を表わし、R1 およびR2 は、そ
    れぞれそれらが複数存在する場合、互いに異なっていて
    もよい。mは1または2の整数を示す。)
  4. 【請求項4】 加水分解性有機基を有する有機ケイ素化
    合物の加水分解反応溶液中に、 ジビニルベンゼンモノマーまたはスチレンモノマーとジ
    ビニルベンゼンモノマーを存在させて、 前記ジビニルベンゼンモノマーまたはスチレンモノマー
    とジビニルベンゼンモノマーとを重合させる工程を有す
    る請求項1〜3のいずれかの有機・無機高分子複合体の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 前記重合体の構成成分であるスチレンと
    ジビニルベンゼンの各モノマーの重量組成比が、 ジビニルベンゼンモノマーに対し、スチレンモノマーが
    0〜95wt%(ただし95wt%を含まず)である請求項
    1〜4のいずれかの有機・無機高分子複合体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 前記有機・無機高分子複合体は、光導波
    路に用いられる請求項1〜5のいずれかの有機・無機高
    分子複合体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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