JPH11108889A - キャピラリー電気泳動装置 - Google Patents

キャピラリー電気泳動装置

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JPH11108889A
JPH11108889A JP9265333A JP26533397A JPH11108889A JP H11108889 A JPH11108889 A JP H11108889A JP 9265333 A JP9265333 A JP 9265333A JP 26533397 A JP26533397 A JP 26533397A JP H11108889 A JPH11108889 A JP H11108889A
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capillary
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electrophoresis
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Kazunari Imai
一成 今井
Susumu Watanabe
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Hitachi Ltd
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、ゲルを交換することなく複数
回の分析に繰り返し使用する場合でも、データの信頼性
を確保することができるキャピラリー電気泳動装置を提
供することにある。 【解決手段】電気泳動媒体が充填された複数のキャピラ
リー20に導入された試料は、電気泳動分離され、複数
の試料成分が検知器ユニット60によってレーザ励起多
波長蛍光検出により光学的に検知される。キャピラリー
判定手段200は、検知器ユニットによって検出された
試料中の各成分に対応する信号ピークの中の所定のシン
グルピーク(例えば、345Gのグアニン(G)のシン
グルピーク)の半値幅を求め、この求められた半値幅が
所定の基準レベルよりも狭いときに、キャピラリー20
の状態が良好であると判定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、核酸,蛋白,糖等
を分離分析する電気泳動装置に関し、特に、主として電
気泳動媒体に高分子ゲルをキャピラリーに充填したもの
を用い、DNA(核酸)等の検出,塩基配列決定等に好
適なキャピラリー電気泳動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から電気泳動を利用した分析は多く
利用されているが、その中で重要な分析はDNAの塩基
配列決定である。塩基配列決定には、従来は、2枚のガ
ラスの平板の間に、ポリアクリルアミドゲルを挟んで形
成させた電気泳動媒体を用いていた。それに対して、最
近、例えば、特開平6−138037号公報等に記載さ
れているように、取り扱いを容易にし、短時間で分析を
行うことができるキャピラリーにゲルを充填させた電気
泳動媒体を用いる方法が開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
方法では、キャピラリーを電気泳動媒体に用いる場合も
含め、充填されたゲルは1測定ごとに消耗され、毎回取
り替えるようにしている。ゲルの交換は、内径100μ
m以下のキャピラリー内にゲルをシリンダ等を用いて加
圧・圧入する方法を用いるが、多数のキャピラリーのゲ
ルを充填する作業は時間を要するものである。また、毎
回キャピラリーを交換する場合には、キャピラリーの交
換作業は手作業となるため、複数の試料を自動的に分析
することは困難であった。
【0004】交換作業を減らし、自動化を進めるために
は、同一のゲルで複数回繰返し使用できるようにすれば
よいが、単純に繰り返し使用するだけでは、性能の劣化
が起こるため、データの信頼性が確保できないという問
題があった。
【0005】本発明の目的は、ゲルを交換することなく
複数回の分析に繰り返し使用する場合でも、データの信
頼性を確保することができるキャピラリー電気泳動装置
を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、電気泳動
媒体が充填された複数のキャピラリーと、これらのキャ
ピラリーに導入され、電気泳動分離された複数の試料成
分を光学的に検知する検知器とを有し、上記キャピラリ
ーの両端に電圧を印加し、キャピラリーの一方の端に導
入した試料を他の端に向けて移動させながら、分離展開
し、試料中の各成分を分離分析するキャピラリー電気泳
動装置において、上記キャピラリーの状態の良否を判定
するキャピラリー判定手段を備えるようにしたものであ
る。かかる構成により、ゲルを交換することなく複数回
の分析に繰り返し使用する場合でも、データの信頼性を
確保し得るものとなる。
【0007】(2)上記(1)において、好ましくは、
上記キャピラリー判定手段は、上記検知器によって検出
された試料中の各成分に対応する信号ピークの中の所定
のシングルピークの半値幅を求め、この求められた半値
幅が所定の基準レベルよりも狭いときに、上記キャピラ
リーの状態が良好であると判定するようにしたものであ
る。かかる構成により、特定のシングルピークの半値幅
を求めることにより、キャピラリーの状態判定を容易に
行い得るものとなる。
【0008】(3)上記(2)において、好ましくは、
上記検知器は、レーザ励起多波長蛍光検出により電気泳
動分離された複数の試料成分を光学的に検知するととも
に、上記キャピラリー判定手段がキャピラリーの状態の
良否判定に用いる所定のシングルピークは、検出される
複数の試料成分のピークの中で、その蛍光スペクトルが
短波長側に極大ピークを有するものとしたものである。
かかる構成により、他の試料成分のピークの影響を低減
して、半値幅を求め得るものとなる。
【0009】(4)上記(3)において、好ましくは、
さらに、上記キャピラリー判定手段がキャピラリーの状
態の良否判定に用いる所定のシングルピークの両側に表
れるピークが、検出される複数の試料成分のピークの中
で、その蛍光スペクトルが長波長側に極大ピークを有す
るものとしたものである。かかる構成により、他の試料
成分をピークの影響を受けることなく、半値幅を求め得
るものとなる。
【0010】(5)上記(2)において、好ましくは、
上記検知器は、レーザ励起多波長蛍光検出により電気泳
動分離された複数の試料成分を光学的に検知するととも
に、上記キャピラリー判定手段がキャピラリーの状態の
良否判定に用いる所定のシングルピークは、検出される
複数の試料成分のピークの中で、その蛍光スペクトルが
短波長側から2番目に極大ピークを有するとし、このピ
ークの両側に表れるピークが、検出される複数の試料成
分のピークの中で、その蛍光スペクトルが長波長側に極
大ピークを有するものとしたものである。かかる構成に
より、短波長側に極大ピークを有するものがない場合で
も、所定のピークを用いたキャピラリーの状態の良否の
判定を行い得るものとなる。
【0011】(6)上記(2)において、好ましくは、
上記キャピラリー判定手段がキャピラリーの状態の良否
判定に用いる所定のシングルピークは、上記キャピラリ
ーに導入された標準試料の中の所定のピークとしたもの
である。かかる構成により、既に既知のピークを用いる
ことができるため、容易にキャピラリーの状態の良否の
判定を行い得るものとなる。
【0012】(7)上記(2)において、好ましくは、
上記キャピラリー判定手段がキャピラリーの状態の良否
判定に用いる所定のシングルピークは、上記複数のキャ
ピラリーにそれぞれ導入された未知試料の中の所定のピ
ークであり、複数の未知試料の所定のピークを用いてキ
ャピラリーの状態の良否を判定するようにしたものであ
る。かかる構成により、標準試料を用いることなくキャ
ピラリーの状態の良否を判定できるため、一度に分析可
能な試料数を増加し得るものとなる。
【0013】(8)上記(1)において、好ましくは、
上記キャピラリー判定手段は、上記キャピラリーの両端
に泳動電圧を印加としたときに流れる泳動電流を検出
し、この泳動電流が、所定の基準レベルの範囲内にある
ときに、上記キャピラリーの状態が良好であると判定す
るようにしたものである。かかる構成により、泳動電流
を検出するという簡便な方法で、キャピラリーの状態の
良否を判定し得るものとなる。
【0014】(9)上記(8)において、好ましくは、
上記キャピラリー判定手段は、試料をキャピラリーに導
入してキャピラリーの両端に電圧を印加した時に検出さ
れる本泳動時の泳動電流を用いて、上記キャピラリーの
状態の良否を判定するようにしたものである。
【0015】(10)上記(8)において、好ましく
は、上記キャピラリー判定手段は、試料をキャピラリー
に導入することなくキャピラリーの両端に電圧を印加し
た時に検出される予備泳動時の泳動電流を用いて、上記
キャピラリーの状態の良否を判定するようにしたもので
ある。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図1〜図11を用いて、本
発明の一実施形態によるキャピラリー電気泳動装置の構
成及び動作について説明する。最初に、図1を用いて、
本実施形態によるキャピラリー電気泳動装置の全体構成
について説明する。図1は、本発明の一実施形態による
キャピラリー電気泳動装置の全体構成を示すブロック図
である。
【0017】最初に全体の構成について説明する。移動
機構10の上には、バッファ(電解液)を収容した泳動
バッファ槽12が配置されている。泳動バッファ槽12
の中には、白金電極13が張架されており、白金電極1
3は、バッファと接触している。また、移動機構10の
上には、サンプルトレイホルダ14を介して、3個のサ
ンプルトレイ100A,100B,100Cが配置され
ている。サンプルトレイ100Aは、図2を用いて後述
するように、48個の試料容器を備えている。サンプル
トレイ100Aは、止めネジS1,S2によってサンプ
ルトレイホルダ14に固定されており、サンプルトレイ
ホルダ14から取り外し可能である。サンプルトレイ1
00Aの底部は、SUSのような導電性金属で構成され
ており、SUSのような導電性金属で構成されてサンプ
ルトレイホルダ14と電気的に導通している。サンプル
トレイ100B,100Cも同様にして、48個の試料
容器を備えており、サンプルトレイ100B,100C
の底部は、サンプルトレイホルダ14と電気的に導通し
ている。
【0018】移動機構10は、上下移動用モータ16Z
を用いて、上下スライドガイド18Zに沿って、Z軸方
向に上下移動可能である。また、移動機構10は、前後
移動用モータ16Xを用いて、前後スライドガイド18
Xに沿って、X軸方向に前後移動可能である。上下移動
用モータ16Z及び前後移動用モータ16Xは、制御装
置80によって制御される。また、3個のサンプルトレ
イ100A,100B,100Cを覆うようにして、塩
化ビニルやアクリル樹脂等の透明なカバー19が配置さ
れており、試料容器に保持された試料の蒸発の抑制や外
部からのゴミの混入を防止している。
【0019】48本のキャピラリー20が並列的に配置
されており、その内部には、分離用の架橋ポリアクリル
アミドゲルが電気泳動媒体として充填されている。キャ
ピラリー20の下端側はキャピラリ押さえ22により固
定され、その下端は泳動バッファ槽12内のバッファに
挿入されている。キャピラリー20の上端側は、キャピ
ラリ押さえ24により固定され、その上端は、カプラ2
6に接続固定されている。
【0020】キャピラリー20の長さは、30cmとし
ている。キャピラリー20に充填された架橋ポリアクリ
ルアミドゲルは、全アクリルアミドおよびビス−アクリ
ルアミドから成っている。全アクリルアミドは、全ゲル
に対して5重量%、全アクリルアミドに対するビスーア
クリルアミドの重量は10%である。
【0021】カプラ26は、接地側の電極プラグ32に
接続され、電極プラグ32は、高電圧電源30の接地極
に接続されている。また、サンプルトレイホルダ14
は、高圧側の電極プラグ34と接続され、バッファ槽1
2の白金電極13は、高圧側の電極プラグ36と接続さ
れ、電極プラグ34,36は、高電圧電源30の高圧
(−)極に接続されている。
【0022】カプラ26は、シースフローセル40に接
続されている。シースフローセル40には、シース液タ
ンク42の中に保持されたシース液44が、重力によっ
て導入される。キャピラリー20の中で泳動分離され、
キャピラリー20の泳動終端部から流出する分離された
試料は、シース液によって各キャピラリーの試料成分が
互いに分離されたまま上部側に運ばれる。
【0023】シースフローセル40の側面方向(図示Y
方向)からは、レーザ50から出射したレーザ光が、レ
ンズ42によって平行光束にコリメートされた上で、照
射され、シースフローセル40中の分離された試料を励
起する。レーザ50とレンズ52の間には、シャッタ5
4が設けられており、試料の励起を選択的に行えるよう
になっている。
【0024】レーザ光照射によって発生した蛍光は、Y
軸方向に直交するX軸方向から取り出され、検知器ユニ
ット60によって検知される。検知器ユニット60は、
図2を用いて後述するように、集光レンズ62と、フィ
ルタ64と、結像レンズ66と、光センサ68によって
構成されている。レーザ光照射によって発生した蛍光
は、集光レンズ62によって集光され、フィルタ64に
よって検出すべき波長の光が選択され、さらに、結像レ
ンズ66によって、2次元CCDセンサ等の光センサ6
8上に結像する。光センサ68によって検出された信号
は、信号処理装置70に送られ、信号処理され、蛍光の
波長により末端塩基の種類を識別し、計測信号をもとに
核酸試料の塩基配列が解析される。
【0025】DNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列の
決定では、一般的に4波長の計測が行われる。各極大波
長が、それぞれ、DNA断片の末端の塩基の種類に対応
するように、予め反応操作で蛍光色素が結合される。
【0026】また、光センサ68によって検出された信
号は、キャピラリー判定装置200に入力する。キャピ
ラリー判定装置200は、光センサ68によって検出さ
れた信号の中の特定のピークの半値幅を求め、求められ
た半値幅が基準となるレベルよりも狭い場合には、キャ
ピラリー20の状態が良好であると判定し、また、基準
となるレベルよりも広い場合には、キャピラリー20の
状態が不良であると判定する。キャピラリー判定装置2
00における判定方法の詳細については、図4以降を用
いて後述する。キャピラリー判定装置200による判定
結果は、表示部210に表示される。オペレータは、表
示部210に表示されたキャピラリー20の判定結果に
基づいて、分析の継続やキャピラリーの交換等を判断
し、この判断に基づく指示を入力手段220からキャピ
ラリー判定装置200に入力する。
【0027】また、後述するように、キャピラリー判定
装置200は、高電圧電源30と電極プラグ32の間に
接続された電流検出回路90によって検出された電流値
に基づいてもキャピラリー20の状態の良否判定を行う
ことができる。検出された電流値が、基準となるレベル
よりも高い場合には、キャピラリー20の状態が良好で
あると判定し、また、基準となるレベルよりも低い場合
には、キャピラリー20の状態が不良であると判定す
る。この電流値に基づく良否判定の方法についても、後
述する。
【0028】シースフローセル40の上端部には、ドレ
インアダプタ46が取り付けられており、キャピラリー
20からシースフローセル40内に流入した試料を、廃
液として、ドレインチューブ47を通って、ドレイン瓶
49に排出する。ドレインチューブ47の途中には、オ
リフィスや複数本のキャピラリーから構成されるフロー
コントローラが設けられており、ドレインチューブ47
の流路抵抗を一定として、流量を制御している。
【0029】次に、本実施形態による電気泳動分析装置
の全体的な動作について説明する。最初に、測定前の予
備泳動を行う。予備泳動においては、標準試料及び分析
試料はキャピラリー20の中には導入されない。キャピ
ラリー20の下端をバッファ槽12内に挿入し、高電圧
電源30からキャピラリー20の両端に電圧を印加し
て、キャピラリー20を平衡化させる。予備泳動におい
ては、電源30から印加する電圧は120V/cmとす
る。キャピラリー20の長さが30cmの場合、電源3
0からキャピラリー20の両端には、3600Vを印加
する。予備泳動の時間は、20分である。
【0030】一方、サンプルトレイ100A,100
B,100Cのそれぞれ48個の試料容器の内、1個の
試料容器には、予め標準試料が所定量分注されている。
ここで、標準試料としては、例えば、M13mp18を
用いている。これ以外にも、例えば、pUC18や、p
GEMを標準試料として用いることができる。また、残
りの47個の試料容器には、所定量の分析試料が分注さ
れている。試料の収容されたサンプルトレイ100A,
100B,100Cは、サンプルトレイホルダ14に止
めネジS1,S2により固定される。制御装置80は、
上下移動モータ16Zを駆動して、移動機構10をZ1
方向に下降する。キャピラリー20の下端が、バッファ
槽12から充分に離れた位置で移動機構10の下降を停
止する。次に、制御装置80は、前後移動モータ16X
を駆動して、移動機構10をX1方向に移動する。サン
プルトレイ100Aが、キャピラリー20の真下にくる
と、移動機構10の移動を停止する。さらに、制御装置
80は、上下移動モータ16Zを駆動して、移動機構1
0をZ2方向に上昇する。そして、キャピラリー20の
先端がサンプルトレイ100Aの中の試料容器中の試料
に挿入される位置で、移動機構10の上昇を停止する。
移動機構10の上下移動動作及び前後移動動作における
位置決めは、移動機構10に設けられたスイッチ等の位
置検出機構を用いてなされる。
【0031】キャピラリー20の下端が試料中に挿入さ
れている状態で、サンプルトレイ100Aとカプラ26
の間に高電圧電源30から高電圧を印加することによ
り、試料容器中の試料は、キャピラリー20内に導入さ
れる。試料の導入時には、電源30から印加する電圧
は、50V/cmで10秒間とする。これによって、試
料容器100Aに収容された標準試料及び分析試料がキ
ャピラリー20内に導入される。
【0032】次に、制御装置80は、上下移動モータ1
6Zを駆動して、移動機構10をZ1方向に下降する。
キャピラリー20の下端が、サンプルトレイ100Aか
ら充分に離れた位置で移動機構10の下降を停止する。
次に、制御装置80は、前後移動モータ16Xを駆動し
て、移動機構10をX2方向に移動する。バッファ槽1
2が、キャピラリー20の真下にくると、移動機構10
の移動を停止する。さらに、制御装置80は、上下移動
モータ16Zを駆動して、移動機構10をZ2方向に上
昇する。そして、キャピラリー20の先端がバッファ槽
12の中のバッファに挿入される位置で、移動機構10
の上昇を停止する。移動機構10の上下移動動作及び前
後移動動作における位置決めは、移動機構10に設けら
れたスイッチ等の位置検出機構を用いてなされる。
【0033】キャピラリー20の下端がバッファ中に挿
入されている状態で、白金電極13とカプラ26の間に
高電圧電源30から高電圧を印加することにより、キャ
ピラリー20に導入されている試料は、電気泳動により
分離される。電気泳動電圧は、120V/cmとする。
検知器ユニット60は、分離された各DNA断片成分を
検出する。検出には、レーザ励起蛍光検出が用いられ
る。信号処理ユニット70は、検知器ユニット60によ
って検出された蛍光の波長により末端塩基の種類を識別
し、DNA断片成分に基づいて、試料DNAの塩基配列
を決定する。
【0034】また、試料の電気泳動分析時には、キャピ
ラリー20の状態の監視も行われる。キャピラリー判定
装置200は、検出器ユニット60によって検出された
各DNA断片成分の中の特定ピークの半値幅を計算し
て、この計算された半値幅に基づいて、キャピラリー2
0の状態の良否を判定する。
【0035】サンプルトレイ100Aの中の試料の分析
が終了すると、上述したのと同様の手順で、サンプルト
レイ100B,100C内の試料がキャピラリー20に
導入され、電気泳動分離される。
【0036】一つの試料の分析には、約2時間程度を要
するため、図1に示すように、サンプルトレイホルダ1
4上に、3個のサンプルトレイ100A,100B,1
00Cを設置することにより、約6時間の自動分析が可
能となる。サンプルトレイの数は3個に限らず、さらに
多くてもよいものである。
【0037】また、電気泳動分離された試料の光学的な
検出方法としては、蛍光検出に限らず、吸光度検出など
を用いることもできる。
【0038】次に、図2及び図3を用いて、本実施形態
による検知器ユニット60の詳細な構成及び受光面にお
ける像について説明する。最初に、図2を用いて、本実
施形態による検知器ユニット60の詳細な構成について
説明する。図2は、本発明の一実施形態によるキャピラ
リー電気泳動分析装置に用いる検知器ユニットの構成を
示す光学系のブロック図である。
【0039】DNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列決
定では、一般的に4波長の計測が行われる。各極大波長
が、それぞれDNA断片の末端の塩基の種類に対応する
よう予め反応操作で、蛍光色素が結合される。
【0040】発光点EPから発する蛍光は、レンズ62
で集光される。発光点EPは、図1に示したキャピラリ
ー20によって分離された試料に、レーザ50からの光
を照射することにより発せられた蛍光である。レンズ6
2は、図示の例では、1枚のレンズとして示している
が、複数枚のレンズによって構成することができる。レ
ンズ62の焦点位置に発光点EPが位置するように、発
光点EPとレンズ62とを配置することにより、レンズ
62によって集光された光は、平行光束となり、検知器
ユニット60に導かれる。
【0041】ここで、図1との相関をとる意味で、キャ
ピラリー20の延在する方向をZ軸方向とし、レンズ6
2によって平行光束となった光軸をX軸とする。また、
図1に示したように、複数本のキャピラリー20は、紙
面に垂直なY軸方向に平行に配置されているものとす
る。
【0042】検知器ユニット60は、集光レンズ62
と、フィルター64と、直角プリズム65A〜65D
と、結像レンズ66A,66Bと、空間フィルタ(スリ
ット)67A,67Bと、4個の1次元光センサ68A
〜68Dによって構成されている。
【0043】フィルター64は、バンドパスフィルター
であり、4種類の波長の光を選択するフィルター64
A,64B,64C,64Dから構成されている。フィ
ルター64Aは、第1の波長λ1の光を選択するもので
あり、波長λ1は、例えば、520nmであり、核酸構
成成分であるプリン塩基の一つであるグアニン(G)の
蛍光ピーク波長である。フィルター64Bは、第3の波
長λ3の光を選択するものであり、波長λ3は、例え
ば、580nmであり、核酸構成成分であるプリン塩基
の一つであるチミン(T)の蛍光ピーク波長である。フ
ィルター64Cは、第2の波長λ2の光を選択するもの
であり、波長λ2は、例えば、540nmであり、核酸
構成成分であるプリン塩基の一つであるアデニン(A)
の蛍光ピーク波長である。フィルター64Dは、第4の
波長λ4の光を選択するものであり、波長λ4は、例え
ば、605nmであり、核酸構成成分であるプリン塩基
の一つであるシトシン(C)の蛍光ピーク波長である。
フィルター64A,64B,64C,64Dのバンドパ
スは、20nmである。
【0044】フィルター64を通過した光束は、4個の
直角プリズム65A,65B,65C,65Dによっ
て、直角に曲げられるとともに、4本の光束に分割され
る。即ち、本実施形態における光学系においては、1本
の光束を4本の光束に分割するようにしている。
【0045】4本の光束は、レンズ66A,66Bによ
って収束し、1次元光センサ68A,68B,68C,
68Dの受光面に結像する。即ち、1個の発光点EPか
ら発せられた光は、4種類の波長の光をフィルター64
A〜64Dによって選択された後、4個の1次元光セン
サ68A〜68Dによって、それぞれ4種類の波長に対
する蛍光の光強度が検知される。ここで、キャピラリー
20が例えば、48本平行に配置されている場合、1次
元光センサ68は、48個の受光面を有している。48
個の受光面は、Y軸方向(紙面に垂直な方向)に配置さ
れている。従って、48本のキャピラリー20の中の4
8個の発光点から発せられた光は、4種類の波長の光を
フィルター64A〜64Dによって選択された後、4個
の1次元光センサ68A〜68Dの上の48個の受光面
によって、それぞれ4種類の波長に対する蛍光の光強度
が検知される。
【0046】また、レンズ66A,66Bと、1次元光
センサ68A,68B,68C,68Dとの間には、空
間フィルター(スリット)67A,67Bが配置されて
おり、迷光を防止している。
【0047】次に、図3を用いて、本実施形態における
発光点と1次元光センサの受光面に形成された像の関係
について説明する。図3は、本発明の一実施形態による
多色蛍光検出電気泳動分析装置における発光点と1次元
光センサの受光面に形成された像の関係の説明図であ
る。
【0048】図3(A)は、発光点の様子を示してい
る。ここでは、説明の都合上、キャピラリー20の本数
は5本の場合について例示しており、キャピラリー20
の中では、分離された試料に、レーザからの光を照射す
ることにより、蛍光が発生しており、発光点EPを形成
している。
【0049】図3(B)は、1次元光センサ68A〜6
8Dの受光面に形成された発光点EPの像を示してい
る。1次元光センサ68A〜68Dの受光面に形成され
た像は、それぞれ、異なる波長の光に対する像である。
【0050】本実施形態では、必要な情報だけが、1次
元光センサ68A〜68Dの受光面に結像され、それを
そのまま活用できるため、処理が単純化できる。
【0051】以上説明したように、本実施形態において
は、4個の直角プリズム65A〜65Dを用いて、光束
を分割している。1次元光センサ68Aと1次元光セン
サ68Bの間の距離L1は、大きい方がよく、1次元光
センサを基板上に配置した検知器の大きさが、50mm
あるとすれば、距離L1は、50mm程度必要である。
ここで、本実施形態においては、平行光束中に配置した
直角プリズムを用いて、光束を分割しているため、直角
プリズム65Aと直角プリズム65Bの距離L2は、自
由に変えることができるため、距離L2を50mm程度
に広げることは容易に行える。
【0052】また、本実施形態においては、1個の検知
器ユニット60によって4種類の波長の光を同時に測定
するようにしているため、レンズ62と発光点EPの間
の距離L3は、レンズ62の焦点距離を短くすることに
よって、容易に短くすることができるため、発光点EP
の光を検知器ユニット60に取り込む立体角を大きくす
ることができるため、検出感度を向上することができ
る。
【0053】また、光束を分割する手段として、直角プ
リズム65を使用しており、直角プリズム65の1辺を
光学ベースに平行に設置することにより、容易に光軸を
一致させることができるため、製作が容易となる。
【0054】なお、フィルター64A〜64Dの配置す
る位置としては、レンズ62と直角プリズム65との間
の代わりに、平行光束中である直角プリズム65とレン
ズ66との間に配置してもよいものである。また、レン
ズ66と空間フィルタ67の間は、収束光束であるが、
この位置にフィルタ64を配置するようにしてもよいも
のである。
【0055】また、レンズ62は、発光点EPから発せ
られた光を平行光束としているが、ほぼ平行光束である
多少収束するような光束としてもよいものである。
【0056】また、直角プリズム65の代わりに、平面
ミラーを用いてもよいものである。
【0057】さらに、空間フィルタ(スリット)は、必
要に応じて、レンズ66の前後または直角プリズム65
の前後に挿入される。
【0058】次に、図4〜図11を用いて、本実施形態
によるキャピラリー判定装置200におけるキャピラリ
ーの状態の判定方法について説明する。最初に、図4を
用いて、電気泳動分離分析によって得られるクロマトグ
ラムについて説明する。
【0059】図4は、本発明の一実施形態によるキャピ
ラリー電気泳動装置によって得られるクロマトグラムの
模式図である。
【0060】図4において、横軸は、塩基長(bas
e)を示しており、縦軸は検出された蛍光の信号強度を
示している。なお、検出器ユニット60の光センサ68
から得られる信号は、横軸を時間(time)とし、縦
軸を信号強度とするものであるが、この横軸を時間(t
ime)から塩基長(base)に換算して図示してい
る。
【0061】図4において、同図(A)は、用いたキャ
ピラリーの状態が良好な場合のクロマトグラムを示して
いる。即ち、塩基長bnに現れるシングルピークは、半
値幅wの狭いシャープなピークを示している。また、塩
基長biと塩基長bi+1に現れるピークは、互いにその底
辺付近で重なりあうマルチピークとなっているが、それ
でも、2つのピークはその頂部において分離しており、
2つのピークから構成されることは明確である。
【0062】一方、図4(B)は、用いたキャピラリー
の状態が不良な場合のクロマトグラムを示している。即
ち、塩基長bnに現れるシングルピークは、半値幅wが
広がっている。また、塩基長biと塩基長bi+1に現れる
ピークは、互いに重なりあうマルチピークであるが、2
つのピークからなるものか、それとも、シングルピーク
であるかの判別が定かでなくなっている。
【0063】そこで、本実施形態においては、シングル
ピークの半値幅wに基づいて、検出された半値幅wが、
基準となる半値幅w0よりも狭い場合には、キャピラリ
ーが良好であると判定し、半値幅wが、基準となる半値
幅w0よりも広い場合には、キャピラリーが不良である
と判定するようにしている。
【0064】次に、図5を用いて、末端塩基をレーザ光
励起した場合に検出される蛍光スペクトルについて説明
する。図5は、本発明の一実施形態によるキャピラリー
電気泳動装置を用いて、各末端塩基から得られる蛍光ス
ペクトルである。なお、図5において、横軸は波長(n
m)であり、縦軸は蛍光強度(任意単位)を示してい
る。
【0065】核酸構成成分であるプリン塩基の一つであ
るグアニン(G)の蛍光ピーク波長は、527nmであ
る。核酸構成成分であるプリン塩基の一つであるアデニ
ン(A)の蛍光ピーク波長は、555nmである。ま
た、核酸構成成分であるプリン塩基の一つであるチミン
(T)の蛍光ピーク波長は、577nmである。さら
に、核酸構成成分であるプリン塩基の一つであるシトシ
ン(C)の蛍光ピーク波長は、602nmである。
【0066】例えば、グアニン(G)の蛍光スペクトル
は、ピークの極大波長を中心として、短波長側と長波長
側を比較すると、短波長側では、比較的シャープに信号
強度が変化し、長波長側で緩やかに信号強度が変化する
特性を示す。これは、他のアデニン(A)、チミン
(T)、シトシン(C)についても同様である。一方、
検知器ユニット60に用いるバンドパスフィルタ64の
バンドパスは、20nmであり、4種類のバンドパスフ
ィルタ64A,64B,64C,64Dの中心波長は、
520nm,550nm,580nm,605nmであ
る。図5において、図中斜線で示した領域が、バンドパ
スフィルタ64A,64B,64C,64Dの光透過領
域である。グアニン(G)、アデニン(A)、チミン
(T)、シトシン(C)については、それぞれの蛍光ス
ペクトルの極大ピーク波長とバンドパスフィルタの中心
波長をほぼ一致させている。
【0067】従って、キャピラリーの良否判定のために
用いる特定ピークとして、シトシン(C)を用いると、
中心波長が605nmでバンドパスが20nmのバンド
パスフィルタを用いた場合、図示するように、波長59
5nm〜615nmの波長の蛍光の中には、グアニン
(G)や、アデニン(A)や、チミン(T)の蛍光成分
が混じることになり、正確にシトシン(C)だけの半値
幅を測定することは困難である。
【0068】一方、キャピラリーの良否判定のために用
いる特定ピークとして、グアニン(G)を用いると、中
心波長が520nmでバンドパスが20nmのバンドパ
スフィルタを用いた場合、図示するように、波長510
nm〜530nmの波長の蛍光の中には、アデニン
(A)や他の塩基の蛍光の影響は殆どないため、グアニ
ン(G)を用いることにより、正確にグアニン(G)だ
けの半値幅を測定することが可能である。従って、グア
ニン(G)のシングルピークを用いることが、キャピラ
リーの状態の良否判定をするためには、もっとも好まし
いものである。
【0069】しかしながら、グアニン(G)のシングル
ピークが適当な塩基長にない場合もある。そのような場
合には、アデニン(A)のシングルピークを用いること
ができる。但し、アデニン(A)の蛍光スペクトルは、
グアニン(G)の蛍光スペクトルが重畳するため、判定
に用いるアデニン(A)の塩基長の短塩基長側と長塩基
長側に、グアニン(G)のピークがないことが条件とな
る。また、チミン(T)の蛍光スペクトルもアデニン
(A)と重畳するため、判定に用いるアデニン(A)の
塩基長の短塩基長側と長塩基長側に、チミン(T)のピ
ークがないことが条件となる。換言すると、判定に用い
るアデニン(A)のシングルピークの両側の塩基長に、
シトシン(C)のピークがある場合には、それらの蛍光
の影響は受けないため、このアデニン(A)のシングル
ピークをキャピラリーの状態の良否判定に用いることが
できる。
【0070】以上整理すると、キャピラリーの状態の良
否判定に用いる特定ピークは、シングルピークであるこ
とが必要である。そして、その特定ピークは、検出され
る複数の塩基のピークの中で、その蛍光スペクトルが短
波長側に極大ピークを有するものとする必要がある。最
も短波長側の特定ピークがない場合には、蛍光スペクト
ルが次に短波長側に極大ピークを有するものとする。但
し、この場合には、この特定ピークの両側の塩基長に、
蛍光スペクトルの極大ピークが短波長側及び長波長側の
隣接する塩基のピークが無い必要がある。
【0071】次に、図6及び図7を用いて、実際に得ら
れるクロマトグラムを用いて、キャピラリーの状態の良
否判定に用いる特定ピークの選定の具体例について説明
する。図6及び図7は、本発明の一実施形態によるキャ
ピラリー電気泳動装置において測定される標準試料の電
気泳動分離分析によって得られたクロマトグラムであ
る。
【0072】ここで、本実施形態においては、解析塩基
長は、0塩基長(base)から300塩基長(bas
e)とする。このような解析塩基長においては、キャピ
ラリーの状態の良否判定に用いる特定ピークは、解析塩
基長の範囲の中で、最大塩基長側,即ち、上述の例で
は、300塩基長付近のシングルピークを用いる。
【0073】そして、図6は、標準試料としてM13m
p18を用いた場合の、236塩基長から300塩基長
付近のクロマトグラムを示しており、図7は、301塩
基長から365塩基長付近のクロマトグラムを示してい
る。即ち、300塩基長を中心として、±65塩基長の
範囲を示している。図6及び図7において、横軸は塩基
長(base)であり、縦軸は蛍光強度(任意単位)を
示している。また、図6及び図7において、Gはグアニ
ンを示しており、Aはアデニンを示しており、Tはチミ
ンを示しており、Cはシトシンを示している。
【0074】最初に、図6において、300塩基長(b
ase)付近で、グアニン(G)のシングルピークを捜
すと、288G若しくは345Gがグアニン(G)のシ
ングルピークである。また、300塩基長(base)
から少し離れるが、258G若しくは260Gもグアニ
ン(G)のシングルピークである。しかも、288G,
345G,258G若しくは260Gの短塩基長側およ
び長塩基長側にある塩基は、シトシン(C)である。図
5において説明したように、シトシン(C)の蛍光スペ
クトルは、グアニン(G)の蛍光スペクトルとは波長領
域が異なるため、両側にシトシン(C)があるグアニン
(G)のシングルピークが最も好ましいものである。
【0075】288G,345Gのグアニン(G)のシ
ングルピークについて比較すると、288Gは、短塩基
長側に1つのシトシン(C)が存在し、長塩基長側に2
つのシトシン(C)が存在するのに対して、345G
は、短塩基長側にも、長塩基長側にも2つのシトシン
(C)が存在する。従って、他の塩基の影響を受けにく
いという観点からは、345Gのグアニン(G)のシン
グルピークの方が、288Gのグアニン(G)のシング
ルピークよりも、キャピラリーの状態の良否を判定に用
いるには好ましいものである。
【0076】また、277G,279G,303G,3
05G,307G等のグアニン(G)のシングルピーク
は、その両側に、チミン(T)やアデニン(A)が存在
するため、キャピラリーの状態の良否を判定に用いるに
は、上述した345Gに比べて好ましくないものであ
る。しかしながら、345Gのグアニン(G)のような
適当なシングルピークがない場合には、使用することも
できる。
【0077】なお、例えば、292G,293Gや29
4Gは、3塩基長のマルチピークであり、296Gや2
97Gは、2塩基長のマルチピークであるため、キャピ
ラリーの状態の良否判定には用いないものである。
【0078】さらに、適当なグアニン(G)のシングル
ピークがない場合には、アデニン(A)のシングルピー
クの中から適当なピークを選択する必要がある。例え
ば、309Aのアデニン(A)のシングルピークは、短
塩基長側にも、長塩基長側にもシトシン(C)が存在す
るため、他の塩基の影響を受けにくいという観点から
は、キャピラリーの状態の良否を判定に用いることがで
きる。312Aや291Aのアデニン(A)のシングル
ピークは、長塩基長側にもグアニン(G)が存在するた
め、キャピラリーの状態の良否を判定に用いるには好ま
しくないものである。
【0079】以上説明したように、標準試料として、M
13mp18を用い、解析塩基長を300塩基長とする
場合には、345G若しくは288Gのグアニン(G)
のシングルピークを用いることが好ましいものである。
【0080】ここで、標準試料として、M13mp18
を用い、解析塩基長を600塩基長とする場合には、上
述した要件を満たすグアニン(G)のシングルピークを
用いるようにする。また、標準試料として、pUC18
やpGEMを用いる場合には、その解析塩基長に応じ
て、適当なグアニン(G)やアデニン(A)のシングル
ピークを用いることができる。
【0081】次に、図8を用いて、本実施形態によるキ
ャピラリー電気泳動装置によって検出された特定のシン
グルピークの半値幅を用いてキャピラリーの状態の良否
を判定する基準となる半値幅レベルについて説明する。
図8は、本発明の一実施形態によるキャピラリー電気泳
動装置におけるシングルピークの半値幅の説明図であ
る。
【0082】図8は、2つの隣合うピークが完全に分離
された状態のクロマトグラムを示している。ここで、ピ
ーク1の底辺の幅をW1とし、ピーク2の底辺の幅をW2
とし、ピーク1の極大値が現れる時間をtR1とし、ピー
ク2の極大値が現れる時間をtR2とし、ピーク1とピー
ク2の極大値間の時間をΔtとすると、2つのピークの
分離度Rsは、以下の式で与えられる。
【0083】 Rs=(2(tR2−tR1))/(W1+W2) …… (1) 分離度Rsが1より大きい状態が、2つのピークが完全
に分離した状態である。そこで、本実施形態において
は、Rsが0.5以上のときに、キャピラリーの状態が
良好であると判断し、これより小さくなると、キャピラ
リーの状態が不良であると判断している。
【0084】ここで、上式におけるW1,W2,tR1,t
R2やΔtを、本実施形態によるキャピラリー電気泳動装
置によって得られたクロマトグラムから求めるには時間
が掛かり、キャピラリーの状態の判定に用いるにはこの
ままでは不適当である。そこで、この分離度の考え方
を、電気泳動分離された塩基のピークの半値幅に換算す
るようにしている。即ち、上式において、tR2−tR1,
即ち、Δtは、核酸の電気泳動分離分析においては、1
塩基長に相当する。隣合うピーク1,ピーク2の底辺の
幅を等しいものと仮定して、W1=W2=Wとする。する
と、上式は、以下のようになる。
【0085】 Rs=Δt/W=1塩基長/W …… (2) ここで、Wそのものを自動的に検出するよりは、半値幅
を検出する方が容易であるため、半値幅W/2は、 W/2=1塩基長/2・Rs=1塩基長 …… (3) (Rs=0.5として) 図8(B)は、電気泳動分離された塩基のピークを示し
ており、横軸は時間である。電気泳動分離された塩基の
シングルピークのピーク値をHとし、その2分の1であ
るH/2を与えるピークの幅ΔTが、シングルピークの
半値幅となる。上述した考え方に基づいて、半値幅ΔT
に換算してみると、半値幅ΔTが8.5s以上のとき
は、キャピラリーの状態が良好であると判定できること
になる。
【0086】また、上述した考えを、実際に電気泳動分
離された核酸中の塩基の半値幅に換算することも可能で
ある。即ち、図8(C)は、キャピラリー20によって
電気泳動分離された塩基の状態を模式的に表している。
分析試料が、キャピラリー20の図示左側から導入さ
れ、電気泳動分離されると、キャピラリー20の末端部
で分離された塩基は、それぞれの半値幅ΔLを有するこ
とになる。図8(D)は、電気泳動分離された塩基の蛍
光スペクトルを示しており、横軸は、分離された塩基の
長さLを示している。半値幅ΔLは、上述した半値幅Δ
Tから以下のようにして求めることができる。
【0087】即ち、キャピラリーの全長をlとし、判定
に用いるシングルピークがキャピラリーの末端に現れる
時間をTとすると、345Gのグアニン(G)の移動速
度vは、以下の式で表せる。
【0088】v=l/T …… (4) また、シングルピークの半値幅ΔLは、 ΔL=v・ΔT …… (5) =(ΔT/T)・l …… (6) 例えば、345Gのグアニン(G)の場合、時間Tは、
5654sであり、キャピラリーの全長lは30cmで
あるので、ΔTが8.5sの場合、ΔLは、0.45m
mとなる。即ち、345Gのグアニン(G)のシングル
ピークの半値幅ΔLが0.45mm以上のときは、キャ
ピラリーの状態が良好であると判定できることになる。
【0089】なお、以上の説明においては、その前提条
件として、キャピラリーの長さが30cm,その内径が
75μmであり、キャピラリーに充填する架橋ポリアク
リルアミドゲルは、全アクリルアミドおよびビス−アク
リルアミドから成り、全アクリルアミドは、全ゲルに対
して5重量%、全アクリルアミドに対するビスーアクリ
ルアミドの重量は10%であり、電気泳動分離時にキャ
ピラリーに印加する電気泳動電圧は120V/cmであ
り、解析塩基長が300塩基長(base)であり、3
00塩基長付近のシングルピークを判定に用いるという
ものである。これらの条件が異なると、キャピラリーの
状態の良否判定の基準となる半値幅ΔL,ΔTも異なる
ものとなる。例えば、上述した条件の中で、解析塩基長
を600塩基長(base)とすると、半値幅ΔLは
0.35mmとなる。
【0090】しかしながら、一般のキャピラリー電気泳
動装置においては、用いるキャピラリーの長さ,内径、
用いるゲルの種類、電気泳動電圧、解析塩基長等は予め
定まっているものであるため、これらの条件が定まれ
ば、キャピラリーの状態の良否判定の基準となる半値幅
ΔL,ΔTも予め求めておくことができる。
【0091】次に、図9を用いて、上述した本実施形態
による判定方法を用いて、本実施形態によるキャピラリ
ー判定装置200がキャピラリーの状態の良否を判定す
る具体的方法について説明する。図9は、本発明の一実
施形態によるキャピラリー電気泳動装置におけるキャピ
ラリー判定装置の判定処理を示すフローチャートであ
る。
【0092】ステップ910において、制御装置80
は、予備泳動を開始する。即ち、測定前にキャピラリー
20を平衡化させるため、分析試料をキャピラリー20
に注入せずに、高電圧電源30からキャピラリー20の
両端に電圧印加のみ行う。予備泳動の条件は、120V
/cmで、20分間とする。
【0093】ステップ920において、制御装置80
は、キャピラリーに分析試料及び標準試料を導入する。
分析試料及び標準試料は、サンプルトレイ100に収容
されており、キャピラリー20をバッファ槽12からサ
ンプルトレイ100に接続替えし、高電圧電源30を制
御装置80により制御して、電圧印加させて試料をキャ
ピラリー20に導入する。導入条件は、50V/cmで
10秒間とする。
【0094】ステップ930において、制御装置80
は、再び、キャピラリー20をサンプルトレイ100か
らバッファ槽12に接続替えし、高電圧電源30を制御
し、電圧印加させて試料中の各DNA断片成分をキャピ
ラリー20中に電気泳動させる。電気泳動電圧を120
V/cmとする。検知器ユニット60は、各DNA断片
成分の分離を検出する。信号処理ユニット70は、試料
DNAの塩基配列の決定をする。
【0095】ステップ940において、キャピラリー判
定装置200は、特定ピークの半値幅計算をする。特定
ピークは、上述したように、345Gのグアニン(G)
のシングルピークを選定して半値幅ΔLを計算する。
【0096】次に、ステップ950において、キャピラ
リー判定装置200は、求められた半値幅ΔLに基づい
て、キャピラリーの状態の良否を判定する。ここでは、
例えば、半値幅ΔLが0.45mm以下であれば良好と
判断する。判定が良好であれば、ステップ920に戻
り、同じキャピラリー20を用いた次の測定に移行す
る。また、半値幅が0.45mmを越えれば不良とし、
ステップ960に進む。
【0097】ステップ960において、キャピラリー判
定装置200は、表示部210に、異常メッセージを表
示する。
【0098】ここで、図10を用いて、本実施形態にお
ける表示部210に表示される異常メッセージの一例に
ついて説明する。図10は、本発明の一実施形態による
キャピラリー電気泳動装置における異常メッセージの表
示例の説明図である。
【0099】図10に示すように、表示部210の測定
結果表示部210Aには、測定結果である半値幅(図示
の例では、0.55mm)が表示され、基準値表示部2
10Bには、基準値である半値幅(図示の例では、0.
45mm)が表示されるとともに、クロマトグラム表示
部210Cに検出されたピークのクロマトグラムが表示
される。
【0100】さらに、判定表示部210Dには、判定結
果に対するメッセージが表示され、図示の例では、「半
値幅が広すぎます。チェックしてください」と表示され
ている。判定表示部210Dの下には、判断入力ダイア
ログ210Eが表示される。
【0101】ステップ970において、オペレータは、
図10に示した判定結果に基づいて、キャピラリーの使
用を続行するか終了するかを判断する。続行若しくは終
了の選択は、入力部220を用いて、判断入力ダイアロ
グ210Eの「続行する」若しくは「終了する」のボタ
ンをマウス等でクリックすることで行われる。続行する
場合には、ステップ920に戻って、次の試料の分析が
行われ、終了する場合には、その時点で終了し、キャピ
ラリーの交換を行う。
【0102】次に、図11を用いて、本実施形態によっ
て行われたキャピラリーの判定結果の一例について説明
する。図11は、本発明の一実施形態によるキャピラリ
ー電気泳動装置におけるキャピラリーの判定結果の一例
の説明図である。
【0103】図11に示すように、第1回目の電気泳動
分析において、半値幅は0.26mmとなっており、判
定結果は「良」となっている。以後、第5回目までは、
半値幅は、0.45mm以下であり、判定結果は「良」
となっている。しかしながら、第6回目には、検出され
た半値幅は0.47mmとなったため、判定結果は、
「否」となっている。この結果に基づいて、第6回目ま
での分析は自動的に繰り返し行われるとともに、オペレ
ータの判断により、以降の繰り返し測定を中止する。
【0104】なお、以上の説明では、標準試料の特定ピ
ーク、例えば、M13mp18の345Gのシングルピ
ークを用いて、キャピラリーの状態の良否を判定するよ
うにしている。しかしながら、標準試料を用いる方法で
は、図1に示したように、サンプルトレイ100に48
個の試料を収容できる場合、その内の1個には標準試料
を収容する必要があるため、同時に分析できる試料数が
47個となる。
【0105】それに対して、以下に説明するように、標
準試料を用いることなく、即ち、分析試料中のシングル
ピークを用いても、キャピラリーの状態の良否判定を行
うことができる。キャピラリー判定装置200は、検知
器ユニット60から得られた信号に基づいて、図6や図
7に示したようなクロマトグラムを求める。そして、キ
ャピラリー判定装置200は、解析塩基長付近のシング
ルピークであり、そのピークは、検出される複数の塩基
のピークの中で、その蛍光スペクトルが短波長側に極大
ピークを有するもの、若しくは最も短波長側の特定ピー
クがない場合には、蛍光スペクトルが次に短波長側に極
大ピークを有するものとし、このピークの両側の塩基長
に、蛍光スペクトルの極大ピークが短波長側及び長波長
側の隣接する塩基のピークが無いピークを、キャピラリ
ーの状態の良否判定に用いる特定ピークとする。特定ピ
ークの塩基長が300塩基長付近であれば、基準となる
半値幅ΔLを0.45mmとし、600塩基長付近であ
れば、半値幅ΔLを0.35mmとするように、塩基長
毎に半値幅ΔLの基準値を定めておくことにより、標準
試料の特定ピークを用いる場合と同様にして、キャピラ
リー状態の良否判定を行うことができ、サンプルトレイ
に収容できる試料数が48の場合には、分析試料数を4
8個とでき、同時に分析可能な試料数を増加することが
できる。
【0106】試料数が48個の場合、48本のキャピラ
リーのすべてについて、上述したキャピラリーの状態の
良否判定を行う。キャピラリーの交換は、1本ずつ行う
のは手間がかかるため、同時に48本行うようにしたほ
うが好ましく、そのため、48本のキャピラリーの判定
の結果として、全体の80%(即ち、48本のキャピラ
リーの内、39本)のキャピラリーが良好であると判定
された場合には、キャピラリーの交換は行わず、それ以
上に不良キャピラリーの本数が増えた場合に、全体のキ
ャピラリーの交換を行うようにする。
【0107】また、キャピラリーの状態は、全体的にほ
ぼ同様に変化すると考えられるため、全てのキャピラリ
ーについて同時に判定することなく、例えば、図1に示
すように、48本の並列配置されたキャピラリー20の
場合、両端の2本と中央の1本の合計3本のキャピラリ
ーのように、代表的なキャピラリーの状態の良否判定を
行うようにしてもよいものである。このようにすること
により、キャピラリー判定装置200の判定処理の負担
を軽減することが可能となる。
【0108】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、所定のシングルピークの半値幅を用いて、キャピラ
リーの状態の良否を判定することができる。従って、キ
ャピラリーに充填されたゲルを交換することなく複数回
の分析に繰り返し使用する場合でも、データの信頼性を
確保することができる。
【0109】次に、図12〜図14を用いて、本発明の
他の実施形態によるキャピラリー電気泳動装置について
説明する。本実施形態によるキャピラリー電気泳動装置
の全体的なシステム構成は、図1に示したものと同様で
ある。第1の実施形態においては、キャピラリー判定装
置200は、検知器ユニット60によって検出された信
号に基づいて、キャピラリーの状態の良否を判定するよ
うしていたのに対して、本実施形態においては、図1に
示すように、電流検出手段90によって、泳動電流を検
出し、キャピラリー判定装置200は、検出された泳動
電流に基づいて、キャピラリーの状態の良否を判定する
ようにしている。
【0110】上述したように、キャピラリーの状態が不
良になると、ピークの半値幅が広がることになる。キャ
ピラリーが不良となる原因は、種々考えられるが、例え
ば、キャピラリーに充填されたゲル中にボイドが発生す
ることや、ゲルに分析試料が付着することや、ゲルのネ
ットワークが切れること等がある。この中で、最も大き
な要素が、ゲル中のボイドの発生である。キャピラリー
に充填されたゲル中にボイドが発生すると、ボイドの前
の位置で分離されていた塩基はボイドを避けるようにし
て泳動を続けることとなり、ボイドを避ける際に、分離
状態が悪化する。この結果は、半値幅の広がりとなって
検出される。
【0111】一方、キャピラリーの中のゲルにボイドが
発生すると、その部分の電気伝導度が異なるため、電気
が流れ難くなるものと考えられる。そこで、本願発明者
らは、半値幅の増減と、泳動電流の相関について研究を
進めたところ、両者には相関が見られることが判明し
た。泳動電流は、キャピラリーの初期状態では低く、分
析を繰り返すに従って、増加することが判明した。そし
て、上述したようなキャピラリーの内径や長さ、充填す
るゲルの種類等を同じ条件にして、標準試料のM13m
p18の345Gのピークの半値幅ΔLが0.45mm
となるとき、泳動電流について求めたところ、2.8μ
Aであった。即ち、泳動電流が2.8μAより大きいと
きは、キャピラリーの状態は良好であると判断でき、
2.8μAよりも小さくなると、キャピラリーの状態は
不良であると判断できる。
【0112】また、電気泳動には、実際に分析試料の電
気泳動を行う本泳動以外に、キャピラリーの平衡をとる
ための予備泳動があるが、予備泳動時の泳動電流を用い
ても、同様の判定を行うことができる。上述したような
キャピラリーの内径や長さ、充填するゲルの種類等を同
じ条件にして、標準試料のM13mp18の345Gの
ピークの半値幅ΔLが0.45mmとなるとき、予備泳
動の泳動電流について求めたところ、3.5μAであっ
た。即ち、予備泳動の泳動電流が3.5μAより小さい
ときは、キャピラリーの状態は良好であると判断でき、
3.5μAよりも高くなると、キャピラリーの状態は不
良であると判断できる。
【0113】ここで、図12を用いて、本実施形態によ
る泳動電流による判定方法を用いて、キャピラリー判定
装置200がキャピラリーの状態の良否を判定する具体
的方法について説明する。図12は、本発明の他の実施
形態によるキャピラリー電気泳動装置におけるキャピラ
リー判定装置の判定処理を示すフローチャートである。
なお、図9と同一符号は、同一処理を示しており、本実
施形態においては、図9に示した処理にくわえて、ステ
ップ1210〜1250の泳動電流値による判定処理が
追加されているので、特に、これらの処理について説明
する。
【0114】ステップ910において、制御装置80
は、予備泳動を開始する。即ち、測定前にキャピラリー
20を平衡化させるため、分析試料をキャピラリー20
に注入せずに、高電圧電源30からキャピラリー20の
両端に電圧印加のみ行う。予備泳動の条件は、120V
/cmで、20分間とする。
【0115】ステップ1210において、キャピラリー
判定装置200は、電流検出手段90によって検出され
た電流値を測定する。
【0116】次に、ステップ1220において、キャピ
ラリー判定装置200は、測定された予備泳動の電流幅
に基づいて、キャピラリーの状態の良否を判定する。こ
こでは、例えば、電流値が3.5μA以下であれば良好
と判断する。判定が良好であれば、ステップ920に進
み、本泳動の測定に移行する。また、電流値が3.5μ
Aを越えれば不良とし、ステップ1230に進む。
【0117】ステップ1230において、キャピラリー
判定装置200は、表示部210に、異常メッセージを
表示する。
【0118】ここで、図13を用いて、本実施形態にお
ける表示部210に表示される異常メッセージの一例に
ついて説明する。図13は、本発明の他の実施形態によ
るキャピラリー電気泳動装置における異常メッセージの
表示例の説明図である。
【0119】図13に示すように、表示部210の測定
結果表示部210Aには、測定結果である電流値(図示
の例では、4.5μA)が表示され、基準値表示部21
0Bには、基準値である電流値の範囲(図示の例では、
2.8μA〜3.5μA)が表示される。
【0120】さらに、判定表示部210Dには、判定結
果に対するメッセージが表示され、図示の例では、「電
流値が高すぎます。チェックしてください」と表示され
ている。判定表示部210Dの下には、判断入力ダイア
ログ210Eが表示される。
【0121】ステップ1240において、オペレータ
は、図13に示した判定結果に基づいて、キャピラリー
の使用を続行するか終了するかを判断する。続行若しく
は終了の選択は、入力部220を用いて、判断入力ダイ
アログ210Eの「続行する」若しくは「終了する」の
ボタンをマウス等でクリックすることで行われる。続行
する場合には、ステップ920に進んで、本泳動が行わ
れ、終了する場合には、その時点で終了し、キャピラリ
ーの交換を行う。
【0122】ステップ920において、制御装置80
は、キャピラリーに分析試料及び標準試料を導入する。
分析試料及び標準試料は、サンプルトレイ100に収容
されており、キャピラリー20をバッファ槽12からサ
ンプルトレイ100に接続替えし、高電圧電源30を制
御装置80により制御して、電圧印加させて試料をキャ
ピラリー20に導入する。導入条件は、50V/cmで
10秒間とする。
【0123】ステップ930において、制御装置80
は、再び、キャピラリー20をサンプルトレイ100か
らバッファ槽12に接続替えし、高電圧電源30を制御
し、電圧印加させて試料中の各DNA断片成分をキャピ
ラリー20中に電気泳動させる。電気泳動電圧を120
V/cmとする。検知器ユニット60は、各DNA断片
成分の分離を検出する。信号処理ユニット70は、試料
DNAの塩基配列の決定をする。
【0124】さらに、ステップ1250において、本泳
動時の電流値を判定する。判定値が所定値より大きい場
合には、ステップ1230,1240と進み、上述した
以上メッセージの表示及び処理続行の判定を行う。
【0125】また、ステップ940以降において、キャ
ピラリー判定装置200は、特定ピークの半値幅による
キャピラリーの状態の良否を判定を行う。
【0126】次に、図14を用いて、本実施形態によっ
て行われたキャピラリーの判定結果の一例について説明
する。図14は、本発明の他の実施形態によるキャピラ
リー電気泳動装置におけるキャピラリーの判定結果の一
例の説明図である。
【0127】図14に示すように、予備泳動の電気泳動
分析において、予備泳動の電流値は3.2μAとなって
おり、基準レベルである3.5μA以下であるため、判
定結果は「良」となっている。次に、本泳動の第1回目
においては、本泳動の電流値は3.0μAとなってお
り、以後、第5回目までは、電流値は、2.8μA以上
であり、判定結果は「良」となっている。しかしなが
ら、第6回目には、検出された電流値は2.7μAとな
ったため、判定結果は、「否」となっている。この結果
に基づいて、第6回目までの分析は自動的に繰り返し行
われるとともに、オペレータの判断により、以降の繰り
返し測定を中止する。
【0128】なお、以上の説明では、電流検出手段90
が検出する電流値は、48本のキャピラリー20を流れ
る電流の総和であるため、キャピラリー判定装置200
は、1本当たりの電流値に換算して、キャピラリーの状
態を判定するようにしている。電流検出手段90が個々
のキャピラリーの電流値を検出可能な場合には、個々の
キャピラリーの電流値に基づいて、キャピラリーの状態
の良否判定を行うようにする。
【0129】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、泳動電流を用いて、容易にキャピラリーの状態の良
否を判定することができる。従って、キャピラリーに充
填されたゲルを交換することなく複数回の分析に繰り返
し使用する場合でも、データの信頼性を確保することが
できる。
【0130】
【発明の効果】本発明によれば、キャピラリー電気泳動
装置において、ゲルを交換することなく複数回の分析に
繰り返し使用する場合でも、データの信頼性を確保する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるキャピラリー電気泳
動装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるキャピラリー電気泳
動分析装置に用いる検知器ユニットの構成を示す光学系
のブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による多色蛍光検出電気泳
動分析装置における発光点と1次元光センサの受光面に
形成された像の関係の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態によるキャピラリー電気泳
動装置によって得られるクロマトグラムの模式図であ
る。
【図5】本発明の一実施形態によるキャピラリー電気泳
動装置を用いて、各末端塩基から得られる蛍光スペクト
ルである。
【図6】本発明の一実施形態によるキャピラリー電気泳
動装置において測定される標準試料の電気泳動分離分析
によって得られたクロマトグラムである。
【図7】本発明の一実施形態によるキャピラリー電気泳
動装置において測定される標準試料の電気泳動分離分析
によって得られたクロマトグラムである。
【図8】本発明の一実施形態によるキャピラリー電気泳
動装置におけるシングルピークの半値幅の説明図であ
る。
【図9】本発明の一実施形態によるキャピラリー電気泳
動装置におけるキャピラリー判定装置の判定処理を示す
フローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態によるキャピラリー電気
泳動装置における異常メッセージの表示例の説明図であ
る。
【図11】本発明の一実施形態によるキャピラリー電気
泳動装置におけるキャピラリーの判定結果の一例の説明
図である。
【図12】本発明の他の実施形態によるキャピラリー電
気泳動装置におけるキャピラリー判定装置の判定処理を
示すフローチャートである。なお、図9と同一
【図13】本発明の他の実施形態によるキャピラリー電
気泳動装置における異常メッセージの表示例の説明図で
ある。
【図14】本発明の他の実施形態によるキャピラリー電
気泳動装置におけるキャピラリーの判定結果の一例の説
明図である。
【符号の説明】
10…移動機構 12…泳動バッファ槽 13…白金電極 14…サンプルトレイホルダ 16…モータ 18…スライドガイド 19…カバー 20…キャピラリー 22,24…キャピラリ押さえ 26…カプラ 30…高電圧電源 40…シースフローセル 44…シース液 50…レーザ 60…検知器ユニット 64…フィルタ 68…光センサ 70…信号処理装置 80…制御装置 90…電流検出手段 100…サンプルトレイ 200…キャピラリー判定装置

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電気泳動媒体が充填された複数のキャピラ
    リーと、 これらのキャピラリーに導入され、電気泳動分離された
    複数の試料成分を光学的に検知する検知器とを有し、 上記キャピラリーの両端に電圧を印加し、キャピラリー
    の一方の端に導入した試料を他の端に向けて移動させな
    がら、分離展開し、試料中の各成分を分離分析するキャ
    ピラリー電気泳動装置において、 上記キャピラリーの状態の良否を判定するキャピラリー
    判定手段を備えたことを特徴とするキャピラリー電気泳
    動装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載のキャピラリー電気泳動装置
    において、 上記キャピラリー判定手段は、上記検知器によって検出
    された試料中の各成分に対応する信号ピークの中の所定
    のシングルピークの半値幅を求め、この求められた半値
    幅が所定の基準レベルよりも狭いときに、上記キャピラ
    リーの状態が良好であると判定することを特徴とするキ
    ャピラリー電気泳動装置。
  3. 【請求項3】請求項2記載のキャピラリー電気泳動装置
    において、 上記検知器は、レーザ励起多波長蛍光検出により電気泳
    動分離された複数の試料成分を光学的に検知するととも
    に、 上記キャピラリー判定手段がキャピラリーの状態の良否
    判定に用いる所定のシングルピークは、検出される複数
    の試料成分のピークの中で、その蛍光スペクトルが短波
    長側に極大ピークを有するものとすることを特徴とする
    キャピラリー電気泳動装置。
  4. 【請求項4】請求項3記載のキャピラリー電気泳動装置
    において、さらに、 上記キャピラリー判定手段がキャピラリーの状態の良否
    判定に用いる所定のシングルピークの両側に表れるピー
    クが、検出される複数の試料成分のピークの中で、その
    蛍光スペクトルが長波長側に極大ピークを有するものと
    することを特徴とするキャピラリー電気泳動装置。
  5. 【請求項5】請求項2記載のキャピラリー電気泳動装置
    において、 上記検知器は、レーザ励起多波長蛍光検出により電気泳
    動分離された複数の試料成分を光学的に検知するととも
    に、 上記キャピラリー判定手段がキャピラリーの状態の良否
    判定に用いる所定のシングルピークは、検出される複数
    の試料成分のピークの中で、その蛍光スペクトルが短波
    長側から2番目に極大ピークを有するとし、このピーク
    の両側に表れるピークが、検出される複数の試料成分の
    ピークの中で、その蛍光スペクトルが長波長側に極大ピ
    ークを有するものとすることを特徴とするキャピラリー
    電気泳動装置。
  6. 【請求項6】請求項2記載のキャピラリー電気泳動装置
    において、 上記キャピラリー判定手段がキャピラリーの状態の良否
    判定に用いる所定のシングルピークは、上記キャピラリ
    ーに導入された標準試料の中の所定のピークであること
    を特徴とするキャピラリー電気泳動装置。
  7. 【請求項7】請求項2記載のキャピラリー電気泳動装置
    において、 上記キャピラリー判定手段がキャピラリーの状態の良否
    判定に用いる所定のシングルピークは、上記複数のキャ
    ピラリーにそれぞれ導入された未知試料の中の所定のピ
    ークであり、複数の未知試料の所定のピークを用いてキ
    ャピラリーの状態の良否を判定することを特徴とするキ
    ャピラリー電気泳動装置。
  8. 【請求項8】請求項1記載のキャピラリー電気泳動装置
    において、 上記キャピラリー判定手段は、上記キャピラリーの両端
    に泳動電圧を印加としたときに流れる泳動電流を検出
    し、この泳動電流が、所定の基準レベルの範囲内いある
    ときに、上記キャピラリーの状態が良好であると判定す
    ることを特徴とするキャピラリー電気泳動装置。
  9. 【請求項9】請求項8記載のキャピラリー電気泳動装置
    において、 上記キャピラリー判定手段は、試料をキャピラリーに導
    入してキャピラリーの両端に電圧を印加した時に検出さ
    れる本泳動時の泳動電流を用いて、上記キャピラリーの
    状態の良否を判定することを特徴とするキャピラリー電
    気泳動装置。
  10. 【請求項10】請求項8記載のキャピラリー電気泳動装
    置において、 上記キャピラリー判定手段は、試料をキャピラリーに導
    入することなくキャピラリーの両端に電圧を印加した時
    に検出される予備泳動時の泳動電流を用いて、上記キャ
    ピラリーの状態の良否を判定することを特徴とするキャ
    ピラリー電気泳動装置。
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