JPH10206384A - マルチキャピラリー電気泳動装置 - Google Patents

マルチキャピラリー電気泳動装置

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Publication number
JPH10206384A
JPH10206384A JP9019968A JP1996897A JPH10206384A JP H10206384 A JPH10206384 A JP H10206384A JP 9019968 A JP9019968 A JP 9019968A JP 1996897 A JP1996897 A JP 1996897A JP H10206384 A JPH10206384 A JP H10206384A
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JP
Japan
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capillary
optical system
sample
fluorescence
electrophoresis
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Application number
JP9019968A
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English (en)
Inventor
Yoshihide Hayashizaki
良英 林崎
Shin Nakamura
伸 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimadzu Corp
Kagaku Gijutsu Shinko Jigyodan
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Original Assignee
Shimadzu Corp
Kagaku Gijutsu Shinko Jigyodan
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
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Publication date
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Priority to EP98100389A priority patent/EP0854362A3/en
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Priority to US09/006,933 priority patent/US6120667A/en
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 信頼性を保ちつつ、同時に泳動させて検出で
きるキャピラリーの本数をより多くして処理能力を高め
る。 【解決手段】 サンプルステージ68がサンプルタイタ
ープレート66をキャピラリーアレイ端2aに移動させ
接触させた後、両電極54,58間に高圧が所定時間印
加されて試料の注入が行なわれる。その後、泳動用リザ
ーバ62がキャピラリーアレイ端2aに接触し、泳動が
開始される。泳動分離されたDN断片が被検出部2cを
通過する際、励起・受光光学系10が走査されて試料を
標識している4種類の蛍光物質からの蛍光が光電子増倍
管で検出される。励起・受光光学系10は落射光学系と
共焦点光学系を備えて高速に走査される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はサンガー反応を用
い、プライマー又はターミネータを蛍光物質で標識した
DNAフラグメント(断片)試料を電気泳動させ、泳動
途中でDNAフラグメント試料からの蛍光を検出して塩
基配列を決定するオンライン式の電気泳動装置に関する
ものである。特に、本発明は泳動ゲルを充填した複数の
キャピラリーカラムを用いて複数の試料を同時に電気泳
動させるマルチキャピラリーDNAシーケンサの電気泳
動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】人ゲノムのような長大な塩基配列をもつ
DNAの塩基配列決定には、高感度で、高速で、かつ大
処理能力をもったDNAシーケンサが必要となる。その
1つの方法として、平板状のスラブゲルを用いたものに
代わってゲルを充填したキャピラリーカラムを複数本配
列したマルチキャピラリーDNAシーケンサが提案され
ている。キャピラリーカラムは、スラブゲルに比べて、
試料の取扱いや注入が容易であるだけでなく、高速に泳
動させて高感度で検出できる。つまり、スラブゲルで高
電圧を印加すれば、ジュール熱の影響によりバンドが広
がったり、温度勾配が生じるなどの問題が生じるが、キ
ャピラリーカラムではそのような問題は少なく、高電圧
を印加して高速泳動をさせても、バンドの広がりが少な
く高感度検出ができるのである。
【0003】サンガー法によって処理すれば、その末端
がA(アデニン)、G(グアニン)、T(チミン)、C
(シトシン)からなる4種類のDNAフラグメント試料
が生成される。処理能力を上げるためには複数のキャピ
ラリーカラムで同時に電気泳動させる必要があるが、そ
の場合、末端塩基別の試料を異なるキャピラリーカラム
で泳動させると、キャピラリーカラム間の泳動速度の差
が塩基配列決定の誤差となる。そのため、各キャピラリ
ーカラムには4種類の末端塩基のDNAフラグメントを
含んだ試料を注入し、複数のキャピラリーカラムで同時
に泳動させなければならない。その際、末端塩基の異な
る4種類のDNAフラグメントを識別するために、2種
類以上の蛍光物質で標識することが行なわれている。
【0004】末端塩基の異なるDNAフラグメントを識
別するための標識物質としてFAM、JOE、TAMR
A及びROXの4種類の発蛍光団をそれぞれ異なるDN
Aフラグメントに標識として用いる方法(Anal. Chem.
1994, 66, 1021-1026(引用例1)参照)や、FAMと
JOEの2種類を比率を異ならせて用いることによりコ
ード化して4種類のDNAフラグメントを識別する方法
(Anal. Chem. 1992,64, 2149-2154(引用例2)参照)
が提案されている。いずれにしても、マルチキャピラリ
ーDNAシーケンサの処理能力を上げるためには、多色
蛍光標識によって識別できるようにした末端塩基の異な
る4種類のDNAフラグメントを含む試料を各キャピラ
リーカラムに注入し、複数のキャピラリーカラムで複数
の試料を同時に泳動させることが背景となっている。
【0005】複数のキャピラリーカラムで同時に泳動さ
せ、試料から発生する蛍光を検出する光学系の一例は、
キャピラリーカラムの配列の側面側から励起光ビームを
入射し、キャピラリーカラム配列の垂直方向からCCD
(電荷結合素子)カメラで蛍光を検出するものである
(引用例1参照)。そこでは、キャピラリーカラム表面
での散乱に基づくバックグラウンド信号を除去するため
に、励起光を入射する位置では泳動されてきた試料がキ
ャピラリーカラムを出てシースフローとなるようにして
いる。引用例1の方法では、シースフローを形成してい
るので、ビーム強度の減衰は少ないが、シースフロー状
態にするためのキャピラリーカラムのセッティングが難
しく、マルチ化しにくい問題がある。
【0006】他の例は、励起光が1本のキャピラリーカ
ラムを照射するように励起光学系で集光し、キャピラリ
ーカラム中の試料からの蛍光を受光光学系で検出する。
励起光学系と受光光学系はともに固定しておいて、キャ
ピラリーカラムが励起光を横切るようにキャピラリーカ
ラムの配列を走査することによって、複数のキャピラリ
ーカラム中の試料からの蛍光を順次検出するものである
(引用例2参照)。引用例2の方法では、キャピラリー
アレイを機械的に動かせて走査するため、キャピラリー
カラムがよじれ、マルチ化の本数に制約を受けやすい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】これらの提案された方
法では、同時に泳動を行なうキャピラリーカラムの本数
に限界があり、一度に分析できる試料の数に制約を受
け、処理能力の点でなお改良の余地がある。キャピラリ
ーアレイからの蛍光をCCDやCID(電荷注入装置)
の撮像素子で検出する場合には、撮像素子の画素数の制
約もあって検出できるキャピラリーカラム本数に制限が
ある。またCCDやCIDの撮像素子は光電子増倍管に
比べて感度も低い。標識を2種類の螢光物質で行ないそ
の比率を異ならせる方法では、2色の信号強度比によっ
て塩基の種類を識別しなければならず、信頼性に問題が
ある。
【0008】多数のキャピラリーカラムを用いた場合、
それぞれに異なる試料を注入するのが容易ではない。ま
た、キャピラリーカラム端を試料注入用容器の試料に浸
し電圧を印加する方法などにより注入した後、そのキャ
ピラリーカラム端を泳動用のバッファ液の入ったリザー
バに移し換えなければならず、試料注入から泳動開始に
至るまでに手間がかかり、自動化ができれば好都合であ
る。
【0009】キャピラリー電気泳動装置では、1本のキ
ャピラリーカラムのみを用いた装置ではキャピラリーカ
ラムの温度を一定に保つようにしたものはあるが、マル
チキャピラリー電気泳動装置では温度を一定に保ってい
るものはない。そのため、泳動時の温度変化によって泳
動速度がばらついたり、検出される塩基の間隔が変動
(コンプレッション)するなどして、塩基配列決定の誤
差となる。
【0010】本発明の第1の目的は、信頼性を保ちつ
つ、同時に泳動させて検出できるキャピラリーの本数を
より多くして処理能力を高めることである。本発明の第
2の目的は、多数のキャピラリーカラムへの試料注入か
ら泳動までを自動化することである。本発明の第3の目
的は、泳動中の温度変化による塩基配列決定誤差を防ぐ
ことである。
【0011】
【課題を解決するための手段】信頼性を保ちつつ、同時
に泳動させて検出できるキャピラリーカラムの本数をよ
り多くするために、本発明では4種類の末端塩基の異な
るDNAフラグメントを4種類の蛍光物質を用いてそれ
ぞれ異なる蛍光物質で標識する。そして、マルチキャピ
ラリーアレイ泳動部は、一端側が試料注入側となってキ
ャピラリーカラム端が2次元的に配列されてバッファ液
に浸され、他端が別のバッファ液に浸されるとともに、
両バッファ液間を通して泳動電圧が印加されるようにな
っており、かつ他端側にキャピラリーカラムが1列に配
列された被検出部を備えたものとする。励起・受光光学
系は、励起光をキャピラリーアレイの被検出部の1本の
キャピラリーカラムに集光光学系により投光するととも
にキャピラリーカラム内を泳動する試料から発生する蛍
光を同じ集光光学系により受光する落射光学系と、キャ
ピラリーカラム内を泳動する試料から発生する蛍光をそ
の落射光学系とともに結像する共焦点光学系と、その共
焦点光学系による蛍光像からの蛍光を4種類の標識蛍光
物質のそれぞれに対応する波長ごとに空間的に4つに分
割する分割・分光光学系と、その4分割された蛍光をそ
れぞれ検出する光電子増倍管又はアバランシェ・フォト
ダイオードからなる光検出器とを備えたものとする。さ
らに、キャピラリーアレイの被検出部で全てのキャピラ
リーカラムからの蛍光を検出するために、励起・受光光
学系を被検出部でのキャピラリーアレイの面に平行で泳
動方向と直交する一直線に沿って往復方向に移動させる
走査機構を備える。
【0012】4種類の蛍光物質を用いてDNAフラグメ
ントを標識するので、信頼性が高くなる。励起・受光光
学系が落射光学系と共焦点光学系を備えたものとしたこ
とにより、構成が簡単になり、励起・受光光学系の走査
速度を高めることができる。それにより、走査幅が広く
なってマルチキャピラリーアレイ泳動部の被検出部に配
置できるキャピラリーカラムの本数、すなわち同時に泳
動させるキャピラリーカラム本数を増やすことができ
る。高速走査を行なった場合は光検出器の応答速度や感
度が問題となるが、光検出器として光電子増倍管やアバ
ランシェ・フォトダイオードを用いることにより、CC
DやCIDの撮像素子に比べて応答速度も感度も高く、
高速走査に対応することができる。その結果として、キ
ャピラリーカラムの外径にもよるが、500本程度のキ
ャピラリーアレイを用いた4色蛍光同時検出が可能にな
り、1回の塩基配列解読数が大幅に向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】励起・受光光学系の分割・分光光
学系の好ましい第1の局面は、共焦点光学系による蛍光
像からの蛍光を4つの光束に分割するレンズ系と、分割
された光束のそれぞれの光路上に配置された各標識蛍光
物質用の異なる4つの蛍光用分光フィルターとを備えた
ものである。
【0014】励起・受光光学系の分割・分光光学系の好
ましい第2の局面は、共焦点光学系による蛍光像からの
蛍光を分光する分散素子と、その分散素子により分光さ
れた標識蛍光物質のそれぞれに対応する4つの波長の蛍
光を光検出器のそれぞれに導く光学系とを備えたもので
ある。
【0015】本発明では、さらに、多数のキャピラリー
カラムへの試料注入から泳動までを自動化することが好
ましい。そのための好ましい局面では、マルチキャピラ
リーアレイ泳動部の試料注入側では2次元的に配列され
たキャピラリーカラム端が下向きに固定され、そのキャ
ピラリーカラム端の下方にはそのキャピラリーカラム端
の配列と対応して、試料が収容された試料容器が2次元
的に配列されて各キャピラリーカラムに電圧が印加され
る試料注入用リザーバ、及び泳動用バッファ液が収容さ
れて全キャピラリーカラムに電圧が印加される泳動用リ
ザーバが配置され、両リザーバのいずれかをキャピラリ
ーカラム端の下方に位置決めするための水平方向の移動
と、リザーバをキャピラリーカラム端方向に接近させた
り引き離したりするための垂直方向の移動とを行なうリ
ザーバ移動機構を備えている。
【0016】試料注入用リザーバと泳動用リザーバをリ
ザーバ移動機構で切り換えてキャピラリーカラム端と接
触させるようにすることによって、キャピラリーカラム
端への試料注入も含めた電気泳動操作を自動化すること
ができるようになる。
【0017】本発明では、さらに、泳動中の温度変化に
よる塩基配列決定誤差を防ぐ手段を備えていることが好
ましい。そのための好ましい局面では、マルチキャピラ
リーアレイ泳動部のマルチキャピラリーアレイを収容す
るチャンバーと、そのチャンバーを一定温度に保つ温調
機構とをさらに備えている。キャピラリーアレイを温調
することにより、泳動速度の変動に起因するコンプレッ
ションを起こさないような温度条件に制御することがで
きる。
【0018】
【実施例】図1は一実施例を概略的に示す側面断面図で
ある。キャピラリーアレイ2は分離媒体のゲルが充填さ
れた複数のキャピラリーカラムが配列されたものであ
り、その一端側(下端側)2aが試料注入側となってカ
セットホルダー4により二次元的に配列されて固定され
ており、試料注入用リザーバの試料又は泳動用の下側リ
ザーバのバッファ液と接触する。キャピラリーアレイ2
の他端側(上端側)2bはキャピラリーカラムが一列に
配列されており、先端で上側リザーババッファ液と接触
する。キャピラリーアレイ2のその他端側にはキャピラ
リーカラムが一列に配列されてカセットホルダー6によ
り支持されている被検出部2cが設けられている。キャ
ピラリーアレイ2、キャピラリーカラムの下端側を二次
元的に配列するためのカセットホルダー4、及び被検出
部2cでキャピラリーカラムを一列に配列するためのカ
セットホルダー6は図2に詳細に示されている。
【0019】キャピラリーカラムは、石英ガラスやホウ
ケイ酸ガラス(例えばパイレックス)等を材質とするも
のであり、外形が200〜300μm、内径が75〜1
00μmのものである。キャピラリーカラムはその外周
をSiO2など、紫外領域から近赤外領域の励起光によ
っては蛍光を発生しないか、発生しても蛍光測定の妨げ
にならない程度である無蛍光材質の被膜により被覆され
たものが好ましい。その場合には、被検出部2cでも被
膜を除去する必要がない。それに対し、キャピラリーカ
ラムが被膜として蛍光を発する樹脂被膜をもったもので
ある場合は、被検出部2cではその被膜を除去してお
く。キャピラリーアレイ2にはそのようなキャピラリー
カラムが96〜480本配列されている。
【0020】キャピラリーカラム内には分離媒体のゲル
として、ポリアクリルアミドゲル、リニアアクリルアミ
ドゲル、ポリエチレンオキサイド(PEO)ゲルなどが
充填されている。各キャピラリーカラムには末端塩基別
に異なる螢光物質FAM、JOE、TAMRA、RO
X、R6G、R−110などの螢光物質から選ばれた4
種類の蛍光物質により標識された4種類のDNAフラグ
メントを含む試料がそれぞれ注入され、同時に電気泳動
がなされる。
【0021】標識蛍光物質を励起するための励起光源と
して、アルゴンガスレーザ装置8が設けられている。ア
ルゴンガスレーザ装置8は出力が40〜100mWで、
マルチラインタイプであり、488nmや514.5n
mなどの波長のレーザ光を同時に発振する。
【0022】励起・受光光学系10は、図3(A)に詳
細に示されたものである。14はレーザ装置8からのレ
ーザビーム12を被検出部2cのキャピラリーアレイの
面に垂直に照射するミラー、16は中央部に穴をもち、
その穴から励起光ビームを透過させ、鏡面で蛍光を反射
させるトンネルミラー、18は励起光を1本のキャピラ
リーカラムに集光して投光するとともに、そのキャピラ
リーカラムを泳動中の試料から発生する蛍光を受光する
集光レンズである。集光レンズ18は励起光の投光と蛍
光の受光を同じレンズで行なうものであり、落射光学系
を構成している。集光レンズ18で集光された蛍光はト
ンネルミラー16の鏡面で反射される。
【0023】20はその反射光から励起光成分を遮蔽
し、蛍光を透過させる光学フィルター、22は検出視野
を限定するためのピンホールスリット、24は光学フィ
ルター20を透過した蛍光をピンホールスリット22の
位置に結像させる絞りレンズ24である。キャピラリー
カラムでの蛍光発生点がピンホ−ルスリット22の位置
に結像されることにより、共焦点光学系を構成してい
る。励起光除去のための光学フィルター20としては、
エッジフィルターや色ガラスを利用することができる。
ピンホールスリット22は検出視野を小さくして隣接す
るキャピラリーカラムからの迷光侵入を防ぐためのもの
である。
【0024】ピンホールスリット22での蛍光像を4つ
の光束に分割するために、図3(B)に詳細に示される
レンズパネル26が配置されている。レンズパネル24
は単レンズをカットして張りあわせたものや、ガラスモ
ールド成形品として製作することができる。その4つに
分割された光束のそれぞれの光路上には図3(C)に詳
細に示される各標識蛍光物質用の異なる分光用フィルタ
ーからなるフィルターパネル28が配置されている。フ
ィルターパネル28はバンドパスフィルターであり、各
標識蛍光物質に対応した4種類の波長特性の異なるフィ
ルターがそれぞれの光路上にくるように並列配置された
ものである。各フィルターの透過波長は、塩基A,G,
C,Tを標識している蛍光物質の発光波長に対応したも
のである。それぞれのフィルターを透過した蛍光を検出
するために、それぞれの光路上には4つの光電子増倍管
30が配置されている。
【0025】ミラー14、トンネルミラー16、集光レ
ンズ18、光学フィルター20、ピンホールスリット2
2、絞りレンズ24、レンズパネル26、フィルターパ
ネル28及び光電子増倍管30を含む励起・受光光学系
は、走査機構32のステージに取りつけられており、被
検出部2cでの全てのキャピラリーカラムからの蛍光を
検出するために、被検出部2cでのキャピラリーアレイ
の面に平行で、泳動方向と直交する一直線(図1では紙
面垂直方向、図3(A)では上下方向)に沿って往復方
向に移動させられるようになっている。レーザービーム
12がミラー14に入射する方向は、この励起・受光光
学系の走査方向と平行になるように設定されており、励
起・受光光学系の走査によってもレーザービーム12の
光軸が変動しないようになっている。
【0026】キャピラリーアレイ2を一定温度に保つた
めに、図4に示されるように、発泡ポリウレタンなどの
断熱材40で囲まれた泳動チャンバー42が設けられ、
キャピラリーアレイ2はその泳動チャンバー42内に収
容されている。泳動チャンバー42にはペルチェ素子4
4が設けられて電子加熱冷却が行なわれるようになって
いる。46,48はぺルチェ素子の内側と外側のファン
である。泳動チャンバー42内には温度センサーとして
白金抵抗体や熱電対が設けられており、その温度センサ
ーの検出出力をペルチェ素子44にフィードバックして
PID制御することにより、泳動チャンバー42内を一
定温度に保つようになっている。
【0027】泳動チャンバー42のカバー50は、図5
(A)に示されるように、上端の丁番52を中心として
開閉できるようになっている。カバー50には上側電極
54が取りつけられており、図5(B)に示されるよう
に、カバー50を被せた状態で上側電極54が上側リザ
ーバ56のバッファ液に接触する。上側リザーバ56の
バッファ液にはキャピラリーアレイ2の上端2bが浸さ
れている。図1に示されるように、泳動チャンバー42
の下側には下側電極58が取りつけられており、試料注
入用リザーバ又は泳動用の下側リザーバのバッファ液が
キャピラリーアレイ2の下端2aに接触する位置まで押
し上げられたときに、下側電極58がその下側のリザー
バ内のバッファ液に接触してキャピラリーアレイ2の下
端2aと導通するようになっている。両電極54,58
を通して電源及び制御ボックス60の高圧電源装置から
両リザーバのバッファ液間に試料注入用電圧又は泳動電
圧が印加される。その電源電圧は例えば30kVで、電
流容量は10〜30mAである。
【0028】図6は下側に配置される2つのリザーバ6
2,64を示したものであり、泳動用リザーバ62と試
料注入用リザーバ64が水平面内に並べて、X−Zサン
プルステージ68上に支持されている。X−Zサンプル
ステージ68は、いずれかのリザーバ62,64をキャ
ピラリーアレイ2の下端2aの下方に位置決めする水平
方向(X方向:図1では紙面垂直方向)の移動と、リザ
ーバ内のバッファ液をキャピラリーアレイ2の下端2a
に接触させたり、下端2aから引き離したりするための
垂直方向(Z方向:図1では上下方向)の移動を行な
う。
【0029】リザーバ62,64にはバッファ液が収容
され、リザーバ64にはキャピラリーアレイ2の下端2
aのキャピラリー端の配列に対応したウエルが形成され
たサンプルタイタープレート66が乗せられる。サンプ
ルタイタープレート66はウエルの底が貫通し、その貫
通した底にはメンブレンが張られ、それぞれのウエルの
メンブレン上には試料が吸着されている。リザーバ64
中のバッファ液がメンブレンと接触し、バッファ液を通
して下側電極58からキャピラリーアレイ2の下端2a
のキャピラリー端に試料注入用の電圧が印加される。両
リザーバ62,64には下側電極用スペース68,70
が設けられており、そのスペースに下側電極58が入っ
たときに下側電極58がリザーバ内のバッファ液と接触
する。
【0030】サンプルタイタープレート66は貫通した
ウエルの底に試料を吸着させたメンブレンを設けたもの
のほか、底をもつウエルに試料を入れ、各ウエルに泳動
電圧が印加されるようにしたものでもよい。その場合に
はリザーバ64にはバッファ液を入れる必要はなく、ウ
エルの試料がキャピラリーアレイ2の下端2aと接触す
るまでサンプルタイタープレート66が押し上げられた
とき、下側電極58がウエルの電極と接触できるように
しておけばよい。
【0031】電源及び制御ボックス60は、試料注入及
び泳動用の高圧電源のほか、レーザ装置の電源装置や制
御基板を備えている。その制御基板は、図7に示される
ように、CPU80、光電子増倍管30からの検出信号
をデジタル信号に変換してCPU80に取り込むA/D
変換器82、CPU80からの指示により各部と信号の
授受を行なうI/Oインターフェース84、及び泳動チ
ャンバー42の温度制御を行なう温度コントローラ86
を備えている。I/Oインターフェース84は、温度コ
ントローラ86、試料注入用及び泳動用の高圧電源、走
査機構32のセンサー及びモータ、X−Zサンプルステ
ージ68のセンサー及びモータ、レーザ装置の電源、イ
ンターロック用安全スイッチ、表示灯などと接続されて
いる。CPU80は外部のパーソナルコンピュータ88
と接続され、パーソナルコンピュータ88でデータ処理
が行なわれる。
【0032】次に、この実施例の動作について説明す
る。試料はサンガー反応を用いて調製されたDNA断片
試料であり、末端塩基の種類に応じてプライマー又はタ
ーミネータが異なる蛍光物質で標識されている。その試
料はサンプルタイタープレート66に用意する。
【0033】キャピラリーアレイ2の各キャピラリーカ
ラムにはアクリルアミドモノマー溶液又はロングレンジ
ャー(アクリルアミドを主成分とするゲル原料で、アメ
リカFMC社の商品名)モノマー溶液を電気泳動ゲル組
成に調製したものを真空ポンプやアスピレーターを用い
て負圧吸引し、ゲル重合させる。キャピラリーアレイ2
をカセットホルダー4,6により図1の泳動装置の所定
の位置に装着する。
【0034】上下のリザーバ56,62,64にバッフ
ァ液を入れて泳動装置に装着し、試料を入れたサンプル
タイタープレート66は下側リザーバ64に装着して試
料とバッファ液とを接触させる。
【0035】その後、パーソナルコンピュータ88から
シーケンス開始が入力されると、サンプルステージ68
がサンプルタイタープレート66をキャピラリーアレイ
端2aの下方に移動させ、サンプルタイタープレート6
6を上昇させてキャピラリーアレイ端2aをサンプルタ
イタープレート66中の試料に接触させる。その後、両
電極54,58間に高圧が所定時間印加されて試料の注
入が行なわれる。
【0036】試料注入後、サンプルステージ68が作動
し、泳動用リザーバ62がキャピラリーアレイ端2aの
位置に位置決めされてキャピラリーアレイ端2aが泳動
用バッファ液に浸された後、両電極54,58間に高電
圧が印加されて泳動が開始される。泳動中はコンプレッ
ションを起こさないように泳動チャンバー42内を40
〜60℃の一定温度になるように制御される。
【0037】泳動分離されたDN断片が被検出部2cを
通過する際、励起・受光光学系10が走査されて試料を
標識している蛍光物質からの蛍光が検出される。このと
き、フィルターパネル28の4つのフィルターを通過し
て4つの光電子増倍管30で検出された蛍光による信号
の強度比により、その蛍光標識が判別されて塩基が同定
される。励起・受光光学系10の走査速度は、250〜
500mm/秒で、1回の走査を1秒以下で行なうのが
好ましい。
【0038】キャピラリーアレイ2の各々のキャピラリ
ーカラムの同定は、走査機構32にエンコーダを設けて
おき、そのエンコーダから得られる出力パルスを用いて
行なうことができる。そのようにして求められたキャピ
ラリーカラム位置と蛍光信号が対比させられる。各キャ
ピラリーカラムごとの信号が波形処理され、移動度補正
などの補正処理が行なわれて各キャピラリーカラムごと
の塩基配列が決定される。移動度補正は標識蛍光物質の
分子量の違いにより泳動移動度が若干異なることがある
ため、それを補正する処理である。
【0039】この実施例では各リザーバにバッファ液を
入れて泳動装置に装着する用にしているが、各リザーバ
を予め泳動装置に設置しておき、ノズルやポートを介し
てバッファ液を各リザーバに自動的に注入したり排出し
たりする送・排液手段を泳動装置に設けて、バッファ液
の入れ換えの自動化を図るようにしてもよい。
【0040】図8は励起光源のレーザ装置8からの励起
光ビームが励起・受光光学系10の走査によってもずれ
ないようにするための他の実施例を示したものである。
ここでは、レーザ装置8からのレーザビームがカップラ
ー90により結合された光ファイバ92を経てコリメー
タ94から図3に示されたトンネルミラー16に入射さ
れる。コリメータ94は走査される励起・受光光学系1
0に固定されている。図8の実施例では、レーザ装置8
の方向を厳密に設定しなくても、励起光ビームが励起・
受光光学系10の走査によってずれることはない。
【0041】図9は励起・受光光学系10における分割
・分光光学系の他の実施例を示したものである。図3の
実施例ではピンホールスリット22に結像した蛍光を4
つに分割した後に分光するために、レンズパネル26と
フィルターパネル28を用いているのに対し、図9の実
施例ではピンホールスリット22に結像した蛍光像を凹
面グレーティング96で分割と分光を同時に行なってい
る。98はピンホールスリット22を透過した蛍光を凹
面グレーティング96の方向に反射するための平面ミラ
ーである。凹面グレーティング96による分光の結像位
置には、4つの標識蛍光物質に対応した波長位置からの
蛍光を受光するバンドルファイバ100の一端が配置さ
れており、バンドルファイバ100の他端は4つの光電
子増倍管又はアバランシェ・フォトダイオード30に導
かれている。
【0042】
【発明の効果】本発明では4種類の蛍光物質を用いてD
NAフラグメントを標識するので、信頼性が高くなる。
励起・受光光学系が落射光学系と共焦点光学系を備えた
ものとしたことにより、構成が簡単になり、励起・受光
光学系の走査速度を高めることができる。そして、光検
出器として応答速度や感度の高い光電子増倍管やアバラ
ンシェ・フォトダイオードを用いているので、高速走査
に対応することができる。その結果として、同時に泳動
させることのできるキャピラリーカラム本数を増やすこ
とができる。試料注入用リザーバと泳動用リザーバをリ
ザーバ移動機構で切り換えてキャピラリーカラム端と接
触させるようにすれば、キャピラリーカラム端への試料
注入も含めた電気泳動操作を自動化することができるよ
うになる。マルチキャピラリーアレイ泳動部のマルチキ
ャピラリーアレイを収容するチャンバーと、そのチャン
バーを一定温度に保つ温調機構とを備えることにより、
泳動速度の変動に起因するコンプレッションを防ぎ、塩
基配列決定誤差を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例を概略的に示す側面断面図である。
【図2】キャピラリーアレイとカセットホルダを示す斜
視図である。
【図3】(A)は一実施例における励起・受光光学系を
示す側面断面図、(B)はそこで用いられるレンズパネ
ルを示す斜視図、(C)はそこで用いられるフィルタパ
ネルを示す斜視図である。
【図4】(A)は温度制御機構を備えた泳動チャンバー
を示す正面断面図、(B)は側面断面図である。
【図5】同泳動チャンバーのカバーを示す側面断面図で
あり、(A)はカバーを開けた状態、(B)は閉じた状
態である。
【図6】下側に配置される2つのリザーバを示す図であ
り、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図7】電源及び制御ボックスに設けられる制御基板を
示すブロック図である。
【図8】他の実施例における励起光ビームを供給する機
構を示す平面図である。
【図9】さらに他の実施例における励起・受光光学系を
示す側面断面図である。
【符号の説明】
2 キャピラリーアレイ 2c 被検出部 8 アルゴンガスレーザ装置 10 励起・受光光学系 12 レーザビーム 18 集光レンズ 22 ピンホ−ルスリット 24 絞りレンズ 26 レンズパネル 28 フィルターパネル 30 光電子増倍管 42 泳動チャンバー 44 ペルチェ素子 56,62,64 リザーバ 66 サンプルタイタープレート 68 X−Zサンプルステージ
フロントページの続き (72)発明者 林崎 良英 茨城県つくば市高野台3丁目1番1 理化 学研究所 ライフサイエンス筑波研究セン ター内 (72)発明者 中村 伸 京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所三条工場内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゲルが充填された複数のキャピラリーカ
    ラムが配列され、4種類の蛍光物質により識別可能に標
    識された4種類の末端塩基の異なるDNAフラグメント
    を含む複数の試料が1つずつ前記キャピラリーカラムに
    注入されて、全てのキャピラリーカラムで同時に電気泳
    動されるマルチキャピラリーアレイ泳動部と、前記マル
    チキャピラリーアレイ泳動部のキャピラリーアレイの面
    に対し、その垂直方向から泳動方向と直交する直線上に
    励起光を照射し、励起光により励起された試料からの蛍
    光を受光し、その蛍光の波長特性を検出する励起・受光
    光学系とを備えたマルチキャピラリー電気泳動装置にお
    いて、 前記マルチキャピラリーアレイ泳動部は、一端側が試料
    注入側となってキャピラリーカラム端が2次元的に配列
    されてバッファ液に浸され、他端が別のバッファ液に浸
    されるとともに、両バッファ液間を通して泳動電圧が印
    加されるようになっており、かつ他端側にキャピラリー
    カラムが1列に配列された被検出部を備えており、 前記励起・受光光学系は、励起光をキャピラリーアレイ
    の前記被検出部の1本のキャピラリーカラムに集光光学
    系により投光するとともにキャピラリーカラム内を泳動
    する試料から発生する蛍光を同じ集光光学系により受光
    する落射光学系と、キャピラリーカラム内を泳動する試
    料から発生する蛍光をその落射光学系とともに結像する
    共焦点光学系と、その共焦点光学系による蛍光像からの
    蛍光を4種類の標識蛍光物質のそれぞれに対応する波長
    ごとに空間的に4つに分割する分割・分光光学系と、そ
    の4分割された蛍光をそれぞれ検出する光電子増倍管又
    はアバランシェ・フォトダイオードからなる光検出器と
    を備えており、 キャピラリーアレイの前記被検出部で全てのキャピラリ
    ーカラムからの蛍光を検出するために、前記励起・受光
    光学系を前記被検出部でのキャピラリーアレイの面に平
    行で泳動方向と直交する1直線に沿って往復方向に移動
    させる走査機構を備えていることを特徴とするマルチキ
    ャピラリー電気泳動装置。
  2. 【請求項2】 前記励起・受光光学系の分割・分光光学
    系は、共焦点光学系による蛍光像からの蛍光を4つの光
    束に分割するレンズ系と、分割された光束のそれぞれの
    光路上に配置された各標識蛍光物質用の異なる4つの蛍
    光用分光フィルターとを備えている請求項1に記載のマ
    ルチキャピラリー電気泳動装置。
  3. 【請求項3】 前記励起・受光光学系の分割・分光光学
    系は、共焦点光学系による蛍光像からの蛍光を分光する
    分散素子と、その分散素子により分光された標識蛍光物
    質のそれぞれに対応する4つの波長の蛍光を前記光検出
    器のそれぞれに導く光学系とを備えている請求項1に記
    載のマルチキャピラリー電気泳動装置。
  4. 【請求項4】 前記マルチキャピラリーアレイ泳動部の
    試料注入側では2次元的に配列されたキャピラリーカラ
    ム端が下向きに固定され、そのキャピラリーカラム端の
    下方にはそのキャピラリーカラム端の配列と対応して、
    試料が収容された試料容器が2次元的に配列されて各キ
    ャピラリーカラムに電圧が印加される試料注入用リザー
    バ、及び泳動用バッファ液が収容されて全キャピラリー
    カラムに電圧が印加される泳動用リザーバが配置され、 両リザーバのいずれかを前記キャピラリーカラム端の下
    方に位置決めするための水平方向の移動と、リザーバを
    キャピラリーカラム端方向に接近させたり引き離したり
    するための垂直方向の移動とを行なうリザーバ移動機構
    を備えている請求項1,2又は3に記載のマルチキャピ
    ラリー電気泳動装置。
  5. 【請求項5】 前記マルチキャピラリーアレイ泳動部の
    マルチキャピラリーアレイを収容するチャンバーと、そ
    のチャンバーを一定温度に保つ温調機構とをさらに備え
    ている請求項1,2,3又は4に記載のマルチキャピラ
    リー電気泳動装置。
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