JPH107641A - イソシアネート化合物の製造方法 - Google Patents

イソシアネート化合物の製造方法

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JPH107641A
JPH107641A JP15993996A JP15993996A JPH107641A JP H107641 A JPH107641 A JP H107641A JP 15993996 A JP15993996 A JP 15993996A JP 15993996 A JP15993996 A JP 15993996A JP H107641 A JPH107641 A JP H107641A
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reaction
isocyanate compound
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JP15993996A
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Takashi Okawa
大川  隆
Hideo Igarashi
秀雄 五十嵐
Tomoo Tsujimoto
智雄 辻本
Yutaka Kanbara
豊 神原
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Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
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Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ホルムアミド化合物と炭酸ジメチルとを出発原
料としてウレタン化合物を合成し、次いで該ウレタン化
合物の熱分解によって対応するイソシアネート化合物を
製造する方法において、工業的に有利にイソシアネート
を高収率で長期間安定して製造できる方法を提供する。 【解決手段】ホルムアミド化合物と炭酸ジメチルの反応
をメタノールの存在下、反応蒸留形式で行い、ウレタン
化合物の熱分解反応を不活性溶媒と芳香族スルホンアミ
ド化合物の存在下で反応を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホルムアミド化合
物と炭酸ジメチルとを出発原料としてウレタン化合物を
合成し、次いで該ウレタン化合物の熱分解によって対応
するイソシアネート化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】イソシアネート化合物は、極めて反応性
に富む物質であり、ポリウレタンフォーム、エラストマ
ー、塗料、接着剤、グラビアインキ、眼鏡レンズ等、広
い分野で工業製品の製造原料として用いられている。イ
ソシアネート化合物は、工業的にはアミン化合物とホス
ゲンとの反応で製造されている。ホスゲン法は、毒性の
強いホスゲンの取扱いや大量に副生する塩酸の処理、装
置の腐食等に問題がある。またホスゲン法により製造さ
れたイソシアネート化合物には通常、数百ppmの加水
分解性塩素が含まれており、ポリウレタンおよびポリウ
レア製品の耐候性、耐熱性、耐黄変性等に悪影響を与え
る。
【0003】近年、このような背景からホスゲン法に代
るイソシアネート化合物の工業的製造法の開発が望まれ
ている。ホルムアミド化合物を出発原料するイソシアネ
ート化合物の製造法としては、直接イソシアネート化合
物を得る一段法と、第一反応工程でウレタン化合物を製
造し、次に第二反応工程でウレタン化合物を熱分解させ
てイソシアネート化合物を得る二段法とが提案されてい
る。
【0004】一段法としては、ホルムアミド化合物の脱
水素反応によりイソシアネート化合物を得る方法があ
る。米国特許第 3,960,914号は、ホルムアミド化合物を
非水溶性の溶媒中、Pd等の白金族系触媒の存在下で脱
水素する方法であるが、反応速度は小さく、イソシアネ
ート化合物の選択率は30%と低い欠点がある。特開昭54
-39018号は、Ag系触媒存在下、ホルムアミド化合物を
特定の接触時間で気相脱水素させる方法であるが、イソ
シアネート化合物の収率は21%と低く実用性に乏しい。
また、米国特許 3,277,140号は、ヘテロ環式窒素化合物
の存在下、ホルムアミド化合物を臭素等のハロゲンと反
応させる方法であるが、イソシアネート化合物の収率は
充分でなく、また生成するイソシアネート化合物1モル
当たり4倍モルのヘテロ環式窒素化合物がハロゲン化物
として消費されるので経済的に好ましくない。
【0005】二段法の第一反応工程のホルムアミド化合
物からウレタン化合物を製造する方法として、米国特許
4,661,217号に、アルコール溶媒中、NaBrを支持電
解質として、グラファイト電極上でホルムアミド化合物
を酸化して対応するウレタン化合物を製造する方法が開
示されている。この方法は比較的高い収率でウレタン化
合物を得ることができるが、電極の劣化が著しいため工
業的規模での実施が難しい面がある。
【0006】一方、本発明とは出発原料が異なるが、ア
ミン化合物と炭酸ジメチルとの反応によりウレタン化合
物を製造する方法も知られている(特公昭51-33095号、
特開昭57-82361号、米国特許 4,395,565号)。この方法
は、ルイス酸触媒、鉛、チタン或いはジルコニウム系触
媒、アルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコラート
触媒等の存在下、アミン化合物と炭酸ジメチルとを反応
させる方法である。実施例によれば、一般的に、反応速
度は小さく、また副反応でN−メチル体が生成し易いた
めウレタン化合物の空時収率が低い欠点がある。
【0007】特開平 1-85956号には、N−メチル化反応
が起こりにくい脂肪族または脂環族ウレタン化合物の製
造方法が開示されている。この特許ではアミン化合物1
モルに対して4倍モル以上の炭酸ジメチルを用い、アミ
ン化合物とアルカリ金属アルコラートまたはアルカリ土
類金属アルコラート触媒とを連続または間欠的に添加す
る。しかしながら、ウレタン化合物を高収率で得るに
は、アミン化合物に対してアルコラート触媒を多く使用
せざるを得ないため触媒費が嵩む欠点がある。またアル
コラート触媒は、第二反応工程においてウレタン化合物
の熱分解反応を阻害するので、これを中和すると共に、
中和塩を完全に除去することが必要である。従って、ア
ルコラート触媒の使用量が多いとウレタン化合物の回収
および精製工程に大きな負荷が掛かる。更に過剰の炭酸
ジメチルを使用するので、経済的には反応生成液中の未
反応炭酸ジメチルは回収し再使用することが必要になる
が、炭酸ジメチルとメタノールとは共沸組成物を形成
し、メタノールとの沸点差が2℃以下と小さいため未反
応炭酸ジメチルの分離回収には複雑な蒸留プロセスが必
要で固定費が嵩む欠点もある。
【0008】第二反応工程のウレタン化合物を熱分解す
る方法としては、気相法と液相法とがあるが、工業的に
は液相法が有利であることが知られている。ウレタン化
合物の熱分解反応は可逆反応でその平衡は高温側程イソ
シアネート化合物の生成に有利となる。このため反応条
件が苛酷で種々の不可逆的副反応が併発し、例えば、尿
素類、カルボジイミド類、ウレチジオン類、イソシアヌ
レート類等が容易に生成する。これらの副反応はイソシ
アネート化合物の収率を低下させるのみならず、固形物
の析出により反応装置の閉塞等を招き長時間の安定運転
を困難にする。そこで、ウレタン化合物の熱分解反応を
促進させ、且つ副反応を抑制しイソシアネート化合物を
高収率で得る方法として触媒、安定剤等の使用が種々提
案されている。
【0009】すなわちウレタン化合物の熱分解反応に触
媒を用いる方法としては、例えば、特公昭57-45736号に
は、元素の周期律表IB、IIB、III A、IVA、IVB、
VBおよびVIII族の金属原子より成る群から選ばれた1
種または2種以上の金属またはそれらの化合物を溶媒中
に溶解させた触媒が開示されている。特開昭54-88201号
には、アルカリ土類金属およびその金属化合物を触媒と
して用いる方法が記載されている。特開昭 57-158747号
には、周期律表の銅族、亜鉛族、アルミニウム族、炭素
以外の炭素族、チタン族元素の単体またはこれらの元素
の酸化物または硫化物から選ばれた単体または化合物を
1種または2種以上を溶媒中で不均一触媒として用いる
方法が開示されている。特開平7-258194号には有機スル
ホン酸およびその塩を触媒として用いる方法が記載され
ている。また安定剤を用いる方法としては、例えば特開
昭 57-123159号には、カルボン酸クロライド、スルホン
酸エステル等のアルキル化剤が提案されている。特開平
1-125359号には、安定剤として亜リン酸トリエステルを
用いる方法が記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記の如くホルムアミ
ド化合物を出発原料するイソシアネート化合物の製造法
の工業化は困難であり、またアミン化合物と炭酸ジメチ
ルとの反応によりウレタン化合物を製造する方法も多く
の課題を有している。本発明者は、先に無触媒または触
媒の存在下、ホルムアミド化合物と炭酸ジメチルとを反
応させてウレタン化合物を得る新規な製造法を提案した
(特開平3-200756号および特開平4-235954号)。この方
法は高温反応では特に触媒を必要とせず、また低温反応
でもアルコラート触媒が少なくて済むので経済的であ
り、且つ反応生成液からのウレタン化合物の回収および
精製が容易にできる特徴がある。更に未反応炭酸ジメチ
ルと生成するギ酸メチルとが共沸組成物を形成しないの
で、未反応炭酸ジメチルを容易に回収し再使用できる。
しかしながら工業化するためには、更にウレタン化合物
の空時収率を向上することと、副生したギ酸メチルが分
解してメタノールが生成すると炭酸ジメチルとの共沸物
が生成して分離が困難となるため、ギ酸メチルの分解を
抑制することが望まれる。
【0011】通常、ウレタン化合物の熱分解反応は、充
填塔またはオルダーショウタイプの反応器を用いて行わ
れる。原料のウレタン化合物は、反応槽の溶媒中または
塔中段へ供給して熱分解される。生成したイソシアネー
ト化合物とメタノールは塔内で溶媒と分離された後、1
段目の凝縮器でイソシアネート化合物、次いで2段目の
凝縮器でメタノールが各々回収される。一方、反応槽か
ら溶媒を連続的または間欠的に抜出し、副反応で生成し
た高沸物は薄膜式蒸発器等により分離した後、溶媒等の
有効成分は反応槽へ循環使用される。
【0012】発明者らはウレタン化合物の熱分解反応に
おいて従来技術の方法を適用し、ガラス製及びステンレ
ス製の充填塔タイプの反応器を用いて長時間の流通反応
を行った結果、反応装置の材質によって反応の様子が大
きく異なることが判った。すなわち、ガラス反応装置を
用いた場合、充填塔および反応槽内への重合物付着は殆
どなく、イソシアネート化合物が高収率で得られた。し
かしながら反応温度が高いので、ウレタンの熱分解に工
業用装置としてガラス製反応装置を使用するのは困難で
ある。一方、ステンレス反応装置を用いた場合には、イ
ソシアネート化合物の収率が低いのみならず、充填塔お
よび反応槽内に重合物が多く付着し、長時間の安定運転
が困難であった。特にメタキシリレンジイソシアネート
の如く不安定なイソシアネート化合物の場合には、充填
塔内にハルツが付着し閉塞した。工業用装置の好ましい
材質として炭素鋼製、ステンレス製、ハステロイ製等が
挙げられるが、これら材質の反応装置においてウレタン
化合物の熱分解反応を行った場合には、重合物の副生が
多く、反応装置内への重合物の付着が避けられない。こ
のためイソシアネート化合物を高収率で長期間安定的に
製造することが困難である。
【0013】本発明の目的は、ホルムアミド化合物と炭
酸ジメチルとを出発原料としてウレタン化合物を合成
し、次いで該ウレタン化合物の熱分解によって対応する
イソシアネート化合物を製造する方法において、以上の
如き種々の課題を解決し、工業的に有利にイソシアネー
トを高収率で長期間安定して製造できる方法を提供する
ことにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らはホルムアミ
ド化合物と炭酸ジメチルとからイソシアネート化合物を
工業的に有利に製造する方法を開発すべく鋭意研究を重
ねた結果、ホルムアミド化合物と炭酸ジメチルの反応
をメタノールの存在下、反応蒸留形式で行うことによ
り、ウレタン化合物の空時収率が向上し、また生成する
ギ酸メチルの分解が著しく抑制されること、更にウレ
タン化合物の熱分解反応において芳香族スルホンアミド
化合物を用いることにより金属製反応装置でも重合物の
副生が避けられ、工業用装置においてイソシアネートを
高収率で長期間安定して製造できるようになることを見
出し、本発明を完成するに至った。
【0015】即ち本発明は、ホルムアミド化合物と炭酸
ジメチルを反応させ、得られたウレタン化合物を熱分解
してイソシアネート化合物を得る方法において、ホルム
アミド化合物と炭酸ジメチルを反応させる第一反応工程
をメタノール共存下で行い、生成するギ酸メチルを反応
蒸留により系外に抜出すことを特徴とするイソシアネー
ト化合物の製造方法、およびウレタン化合物を熱分解し
てイソシアネート化合物を得る第二反応工程を、不活性
溶媒と、一般式:Xn −Ar −SO2 −NH2(Ar は
ベンゼン、ナフタレン等の芳香核、Xは低級アルキル
基、またはアミノ基、nは 0〜3 の整数であり、nが2
以上の場合Xは同一でも各々異なっても良い)なる化合
物の存在下で反応を行う方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のイソシアネート化合物の
製造方法は次の化学式で表される。第一反応工程の (I)
式では、ホルムアミド化合物と炭酸ジメチルとから対応
するウレタン化合物とギ酸メチルとが生成する。第二反
応工程の(II)式では、該ウレタン化合物の熱分解により
対応するイソシアネート化合物とメタノールとが生成す
る。
【化1】 R (NHCOH)n +n(CH3 O)2 CO= R(NHCOOCH3 ) n + nHCOOCH3 (I) R(NHCOOCH3 ) n = R(NCO) n + nCH3 OH (II)
【0017】本発明の主原料となるホルムアミド化合物
は、芳香族系ホルムアミド化合物と脂肪族系ホルムアミ
ド化合物であるが、特に本発明においてホルムアミド基
2個を有する脂肪族ホルムアミド化合物が好ましく用い
られる。脂肪族系ホルムアミド化合物には、分子構造上
で分類すると、鎖状脂肪族ホルムアミド化合物、脂環式
ホルムアミド化合物、ホルムアミド基が飽和の炭素に結
合し骨格に芳香環を有するホルムアミド化合物等があ
る。工業的に有用なイソシアネート化合物に対応する原
料としては、例えば1,6-ヘキサメチレンビスホルムアミ
ド、 N,N'-[1,3-シクロヘキシルビス(メチレン)]ビ
スホルムアミドおよび同構造の 1,4- 異性体、3-ホルム
アミドメチル-3,5,5- トリメチル-1- ホルムアミドシク
ロヘキサン、N,N'- [1,3-フェニレンビス(メチレ
ン)]ビスホルムアミドおよび同構造の1,4- 異性体等
が挙げられる。これらの脂肪族系ジホルムアミド化合物
から付加価値の高い脂肪族系ジイソシアネート化合物が
得られるが、本発明方法によって汎用性の芳香族系ジイ
ソシアネート化合物を製造することもできる。
【0018】副原料の炭酸ジメチルは、市販品をそのま
ま、または必要に応じて精製して用いられる。本発明に
おける炭酸ジメチルの使用量は、ホルムアミド化合物の
ホルムアミド基の 1モルに対して 1〜20モルの範囲、好
ましくは1〜10モルの範囲である。1モル未満の使用量
では、未反応ホルムアミド化合物が残り、また20モルよ
り多い量では空時収率が低下するので実用的ではない。
【0019】ホルムアミド化合物と炭酸ジメチルを反応
させる第一反応工程の反応温度は30〜200 ℃、好ましく
は50〜170 ℃の範囲である。ホルムアミド化合物と炭酸
ジメチルとを反応温度 120℃以上で反応させる場合、特
に触媒を必要としない。これ以下の反応温度では、反応
速度が小さくなるので、第一反応工程の触媒としてアル
カリ金属アルコラートまたはアルカリ土類金属アルコラ
ートを使用するのが好ましい。これらの具体例として
は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バ
リウム等のメチラートおよびエチラート等が挙げられ
る。実用的には、入手の容易さおよび安価な面でナトリ
ウムメチラートが好適である。触媒は、固体または溶液
の状態で使用できるが、市販品であるナトリウムメチラ
ートのメタノール溶液が最も好ましい。ナトリウムメチ
ラート触媒を使用する場合、反応液の溶液濃度として、
0.01〜5 重量%、好ましくは 0.05 〜1 %の範囲であ
る。
【0020】ホルムアミド化合物と炭酸ジメチルを無溶
媒下で反応させて対応するウレタン化合物を製造するこ
とができるが、本発明によりこの反応にメタノールを共
存させることにより生成するギ酸メチルの分解が大幅に
抑制される。本発明により第一反応工程において共存さ
せるメタノールの使用量は、ホルムアミド化合物1モル
に対して 0.1〜20モル比、好ましくは 1〜10モル比の範
囲である。この範囲より少ない場合は、ギ酸メチルの分
解を抑制する効果が小さく、この範囲より多い場合には
ウレタン化合物の空時収率が小さくなる。なお主原料の
ホルムアミド化合物が固体である場合、または反応後に
生成するウレタン化合物が固体として析出する場合に
は、溶媒を使用することもできる。ここで使用できる溶
媒は、原料、触媒および生成するウレタン化合物に対し
て不活性であることが必要であり、具体例としては、メ
タノール以外の例えば、エタノール、プロパノール等の
アルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエ
ーテル類、ベンゼン、トルエン等の炭化水素等が挙げら
れる。これらの溶媒の使用量は必要最少量とするのが好
ましく、通常はホルムアミド化合物に対して 0.1〜10重
量倍の範囲である。
【0021】第一反応工程のホルムアミド化合物と炭酸
ジメチルの反応は、平衡反応であるが、本発明によって
メタノール共存下において生成したギ酸メチルを系外に
抜出すことにより、ウレタン化合物の空時収率が向上す
ると共に、生成したギ酸メチルのの分解が大幅に抑制さ
れる。回分反応の操作では、例えばホルムアミド化合
物、メタノール、および必要に応じて触媒又は溶媒を反
応器内に仕込み、所定の反応温度に昇温した後、炭酸ジ
メチルを添加し反応の進行と共に生成するギ酸メチル蒸
気を系外に抜出して分縮させる反応蒸留型式により好適
に実施される。また反応系内のギ酸メチルを積極的に抜
出すため窒素ガス等の不活性ガスを搬送剤として用いる
ことができる。一方、連続反応操作では、例えばホルム
アミド化合物、炭酸ジメチル、メタノール、および必要
に応じて触媒または溶媒をラインミキサー等を通して反
応器へ供給し、所定の滞留時間で反応させた後、反応器
から反応生成液を抜出すと同時に、生成したギ酸メチル
蒸気を系外に抜出して分縮させる方法が実施される。ま
た回分反応操作と同様に、窒素等の搬送剤を反応器に吹
込み、ギ酸メチルを積極的に系外に抜出すこともでき
る。
【0022】第一反応工程で得られた反応生成液中のウ
レタン化合物は、蒸留、蒸発、中和、水洗浄、溶媒抽
出、晶析等の単位操作を種々組み合せ処理することによ
って粗製ウレタン化合物を回収し、更に精製することが
できる。具体的には、反応生成液をフラッシュ蒸留によ
り未反応炭酸ジメチル、メタノール、ギ酸メチルを留去
して粗製ウレタン化合物を回収する。粗製ウレタン化合
物は薄膜式蒸発器を用いて高沸点副生物を分離し、第二
反応工程の原料として使用することができる。また別法
として、粗製ウレタン化合物と後述する第二反応工程の
反応槽から抜出される缶出液とを一緒に薄膜式蒸発器に
供給することにより、粗製ウレタン化合物と缶出液中の
高沸点副生物を同時に除去することもできる。
【0023】第一反応工程でアルカリ金属またはアルカ
リ土類金属アルコラート触媒を用いた場合は、粗製ウレ
タン化合物は反応生成液を酸で中和し、そのまま、また
は析出した中和塩を濾過した後、母液をフラッシュ蒸留
によって未反応炭酸ジメチル、メタノール、ギ酸メチル
を留去して回収する。この粗製ウレタン化合物をそのま
ま又は非水溶性の溶媒に一旦溶かした状態で水洗浄処理
して過剰の酸および中和塩を水層に抽出した後、有機層
と水層とに分液し、有機層の溶媒を留去してウレタン化
合物を回収する。この際に少量のウレタン化合物が水層
に溶解するが、同じ溶媒を使用し逆抽出によって回収で
きる。有機層および逆抽出した液はフラッシュ蒸留によ
り溶媒および水分を除去してウレタン化合物を回収す
る。ここで使用される酸は、例えばギ酸、酢酸、安息香
酸等の有機酸、または塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等の鉱
酸が挙げられる。また、非水溶性の溶媒は、例えば、n
−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キ
シレン等の炭化水素化合物である。これらの反応生成液
からのウレタン化合物の分離回収法は、各単位操作をバ
ッチ式、連続式または両者を組み合せて好適に実施でき
る。
【0024】一方、フラッシュ蒸留により回収された低
沸点成分より、最初にギ酸メチルを蒸留分離する。次に
メタノールは炭酸ジメチルとの共沸組成物として炭酸ジ
メチルから容易に蒸留分離される(沸点差:約28℃)。
第一反応工程で生成したギ酸メチルは一部分解してメタ
ノールとなるが、本発明において未反応炭酸ジメチル
は、メタノールと炭酸ジメチルとの共沸組成物からギ酸
メチルの分解に見合うメタノール分を抜き出して、その
まま循環使用できるので、特に共沸分離プロセスは必要
としない。
【0025】次に第二反応工程のウレタン化合物の熱分
解反応について説明する。本発明では第一反応工程で得
たウレタン化合物を、不活性溶媒と、一般式:Xn −A
r −SO2 −NH2 (Ar はベンゼン、ナフタレン等の
芳香核、Xは低級アルキル基、またはアミノ基、nは 0
〜3 の整数であり、nが2以上の場合Xは同一でも各々
異なっても良い)なる化合物の存在下で熱分解すること
によりイソシアネート化合物とメタノールが得られる。
上記の一般式で示される化合物の具体例としては、ベン
ゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、ジメチ
ルベンゼンスルホンアミド、スルファニルアミド、ナフ
タレンスルホンアミド等があり、1種または2種以上を
組合わせて使用することができる。これらの化合物の使
用量は、ウレタン化合物に対して0.0001〜10重量%、好
ましくは 0.001〜1 重量%の範囲である。この範囲より
使用量が少ない場合には反応装置内での重合物の付着を
抑制する効果が小さく、この範囲より多くしてもそれ以
上の効果がないことから不経済となる。
【0026】第二反応工程に用いられる不活性溶媒は、
生成するイソシアネート化合物よりも高沸点を有するも
のが望ましい。このような不活性溶媒を用いることによ
り、生成したイソシアネート化合物とメタノールとの混
合蒸気を選択的に反応器から追出し、それらの凝縮温度
の差を利用して、一段目でイソシアネート化合物、二段
目でメタノールを凝縮させ、各々回収される。この溶媒
には生成するイソシアネート化合物に対して沸点差が40
℃以上大きいものが好適である。これより沸点差が小さ
い場合は、イソシアネート化合物の留分中に溶媒が多く
同伴されるので、イソシアネート化合物の精製工程の負
荷が増大する。第二反応工程に用いられる溶媒の具体例
としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジドデシル、
フタル酸ジフェニル等のエステル、ジベンジルトルエ
ン、ピレン、トリフェニルメタン、フェニルナフタリ
ン、ベンジルナフタリン、水素化トリフェニル等の炭化
水素類が挙げられ、特に熱媒体として用いられる芳香族
炭化水素類が好ましい。これらの溶媒の使用量は、ウレ
タン化合物に対して 0.1〜10重量倍であり、好ましくは
0.5〜5 重量倍である。
【0027】第二反応工程において上記一般式で示され
る化合物と不活性溶媒を用いることによりステンレス製
などの金属製反応装置を用いることができる。第二反応
工程においてウレタン化合物の熱分解反応を金属製反応
装置を用いて実施する場合には、特に金属イオン等の触
媒は必要としないが、脂肪族系イソシアネートを製造す
る場合には、触媒として鉄、ニッケル、コバルト、亜
鉛、錫等の中から選ばれた金属イオンや、有機スルホン
酸化合物を好適に用いることができる。
【0028】ウレタン化合物を熱分解させる反応の温度
は 150〜350 ℃、好ましくは 200〜300 ℃の範囲であ
る。この範囲より反応温度が低い場合には反応速度が小
さく、またこの範囲より高い場合には副反応が増大する
ので好ましくない。反応圧力は上記反応温度において生
成するイソシアネート化合物が気化し得る圧力であり、
通常は 1〜500 Torrである。反応時間はウレタン化合物
の種類、反応温度、圧力、反応型式等によって異なる
が、通常は 0.5〜5 時間である。
【0029】第二反応工程においてウレタン化合物を熱
分解する反応操作は槽型又は管型反応器を用い回分式に
よっても実施できるが、工業的には流通式が有利であ
る。流通式では、例えば外部還流型又は内部還流型の多
段式蒸留塔を反応装置として使用し、所謂反応蒸留型式
で実施するのが好ましい。たとえば撹拌機を備えた蒸留
釜の反応槽に溶媒と上記一般式で示される化合物を仕込
み、減圧下で加熱して沸騰状態に維持する。原料槽は窒
素雰囲気とする。ウレタン化合物が常温で固体の場合は
加温し溶液状態を保持する。その際ウレタン化合物の変
質を最小限にするため、加熱温度はウレタン化合物の融
点付近とし、原料槽での滞留時間を短くするのが望まし
い。原料液は定量ポンプを用いて反応槽に連続的に供給
する。生成したイソシアネート化合物が不安定で重合等
の変質を起こし易い性質の場合は、上記一般式で示され
る化合物をそのまま又はイソシアネート化合物、溶媒等
に溶解させて多段塔の頂部へも連続的または間欠的に供
給するのが好ましい。触媒として金属イオンを併用する
場合は、金属化合物をイソシアネート化合物、溶媒等に
溶解させて反応槽へ供給する。
【0030】反応槽で発生する蒸気には、例えば二官能
基を有するウレタン化合物の場合、メタノール、ジイソ
シアネート化合物、中間体のモノイソシアネート化合物
および溶媒が含まれるが、外部還流型又は内部還流型の
多段塔を経ることにより、メタノールとジイソシアネー
ト化合物とに富んだ蒸気に濃縮される。この蒸気は先ず
メタノールの沸点以上の温度に保持された凝縮器に導入
しジイソシアネート化合物を回収する。次にメタノール
の沸点以下の温度に保持された凝縮器に導入しメタノー
ルを回収する。一段目の凝縮器で回収されたジイソシア
ネート化合物は、更に必要に応じて蒸留精製することに
より高純度のジイソシアネート化合物を得ることができ
る。
【0031】一方、反応槽内において副反応により高沸
物が生成するが、これが蓄積するとイソシアネート基と
付加反応を起こすので収率が低下するのみならず、反応
槽に重合物が析出または付着し長時間の運転が困難とな
る。このため反応槽内の溶媒を連続的または間欠的に抜
出し高沸点物を除去する必要がある。この方法として、
例えば缶出液をフラッシュ蒸発させ、蒸発器の釜残とし
て高沸点副生物を分離し、一方、ジイソシアネート化合
物、モノイソシアネート化合物、未反応ウレタン化合物
および溶媒を含む蒸気は凝縮させて反応槽へ循環使用す
る。
【0032】
【実施例】以下に実施例により本発明を更に詳しく説明
する。但し本発明はこれらの実施例により制限されるも
のではない。
【0033】(第一反応工程:ウレタン化合物の合成お
よび精製実験) 実施例1 反応器として、電磁式撹拌機、熱電対保護管、圧力計、
窒素ガス吹込み用ノズルおよび還流冷却器を備えたステ
ンレス製(SUS-304)、1リットルのオートークレーブを
使用した。窒素ボンベ、圧力調整器、および窒素吹込み
ノズルを配管で連結した。還流冷却器出口、流量調節
弁、メタノール・ドライアイスにより冷却したコールド
トラップ、ガスメーターおよび廃ガスパージ用のベント
を配管で連結した。反応器に N,N'-[1,3-シクロヘキシ
ルビス(メチレン)]ビスホルムアミド(以後、1,3-B
FCと略称する) 198g 、炭酸ジメチル 360g およびメ
タノール 64gを仕込み密閉した。このとき、1,3-BFC
1モルに対するメタノールの添加量は 2モル比となる。
反応器を電気炉内に設置し、反応器内を窒素ガスで置換
した後、圧力調整器を通して 10kg/cm2 G に加圧した。
撹拌および電気炉の加熱を開始すると同時に、流量調節
弁を用いて廃ガスを 0.5リットル/min の流速でパージ
し、生成したギ酸メチルを系外に抜出した。反応器内の
温度が 155℃に達した後、その状態を 4時間保持した。
【0034】反応後に冷却し、反応生成液とトラップ内
に溜まった液を液体クロマトグラフおよびガスクロマト
グラフの内部標準法で分析した結果、1,3-BFC基準の
N,N'- [1,3-シクロヘキシルビス(メチレン)]ビス
カルバミン酸メチル(以後、1,3-BUCと略称する)収
率は 99.4%となり、他は中間体のモノカルバミン酸メチ
ル化合物であった。反応生成液およびトラップ内には、
理論的に生成するギ酸メチルの 94.8%が含まれていた。
この反応生成液をロータリーエバポレーターを用い、常
圧、続いて減圧下で加熱してギ酸メチル、メタノールお
よび未反応炭酸ジメチルを留去させて溶融状態の粗製
1,3- BUCを回収した。次に粗製ウレタン化合物をト
ルエン溶媒に溶かして 30%wt濃度に調製した後、温度 7
0 ℃に保持して水で3回洗浄し、有機層と水層とに分液
した。有機層はロータリエバレーターを用い、常圧、続
いて減圧下で加熱してトルエンを留去させ白色結晶であ
る精製 1,3- BUCを得た。
【0035】実施例2 実施例1と同様な方法で、反応器に N,N'- [1,3-フェ
ニレンビス(メチレン)]ビスホルムアミド(以後、M
XDFと略称する) 192g 、炭酸ジメチル 360g および
メタノール 96gを仕込み、反応圧力 10kg/cm2 G 、反応
温度 155℃、廃ガスの流速 0.5リットル/min 、反応時
間 4hrの条件で反応させた。このとき、MXDF 1モル
に対するメタノールの添加量は 3モルとなる。反応後、
反応生成液およびトラップ内の液を液体クロマトグラフ
およびガスクロマトグラフの内部標準法により分析し
た。その結果、MXDF基準の N,N'−[1,3-フェニレ
ンビス(メチレン)]ビスカルバミン酸メチル(以後、
MXDUと略称する)収率は98.9%となり、他は中間体
のモノカルバミン酸メチル化合物であった。
【0036】実施例3 実施例1と同様な方法で、反応器に1,6-ヘキサメチレン
ビスホルムアミド(以後、HMDFと略称する) 172g
、炭酸ジメチル 450g およびメタノール 64gを仕込
み、反応圧力 10kg/cm2 G 、反応温度 155℃、廃ガスの
流速 0.5リットル/min 、反応時間 3hrの条件で反応さ
せた。このときのHMDF 1モルに対するメタノールの
添加量は 2モルとなる。その結果、HMDF基準の1,6-
ヘキサメチレンビスカルバミン酸メチル(以後、HMD
Uと略称する)収率は 98.8%となり、他は中間体のモノ
カルバミン酸メチル化合物であった。
【0037】実施例4 充填塔(ディクソンパッキンを充填し、段数:8 段)タ
イプの 500ml、ガラス製の撹拌式槽型反応器2個を直列
に連結し、常圧下の2槽連続反応を行った。各充填塔の
凝縮器、メタノール・ドライアイスにより冷却したコー
ルドトラップ、ガスメーターおよび廃ガス用のベントを
配管で連結した。定量ポンプの3台を使用し、熔融状態
のホルムアミド化合物、炭酸ジメチルのメタノール溶液
及び 28%ナトリウムメチラートのメタノール溶液を別々
に1槽目の反応器へ供給した。1槽目の反応生成液は所
定の滞留液量を保持しつつポンプを用いて2槽目の反応
器へ供給した。2槽目の反応生成液は所定の滞留液量を
保持し電磁式調節弁を用いて受器へ連続的に抜出した。
1槽目の充填塔頂部の凝縮器は温度 35 ℃に保持し全還
流状態とした。一方、2槽目の凝縮器は温度 35 ℃に保
持し還流比 2で留分を抜出した。1,3-BFC 99g/hr 、
炭酸ジメチル 180g/hr、メタノール 64g/hr および 28%
ナトリウムメチラートのメタノール溶液 2g/hrの供給速
度、各反応器での滞留時間 2hr、1槽目の反応温度75℃
および2槽目の反応温度80℃の条件で流通反応を行っ
た。このときの1,3-BFC 1モル当たりの炭酸ジメチル
は 4倍モル比、メタノールは 4倍モル比、ナトリームメ
チラートは 0.02 モル比となる。
【0038】定常状態に達した後、反応生成液および各
トラップ内に溜まった液をサンプリングし、液体クロマ
トグラフ及びガスクロマトグラフの内部標準法で分析し
た。その結果、1,3-BFC基準の1,3-BUC収率は 99.
2%となり、他は中間体のモノカルバミン酸メチル化合物
であった。反応生成液およびトラップ内には、理論的に
生成するギ酸メチルの 95.6%が含まれていた。この反応
生成液に 50%硫酸水溶液を添加して中和した後、ロータ
リーエバポレーターを用い、常圧、続いて減圧下で加熱
してギ酸メチル、メタノールおよび未反応炭酸ジメチル
を留去させて溶融状態の粗製1,3-BUCを回収した。次
に粗製ウレタン化合物をトルエン溶媒に溶かして 30wt%
濃度に調製した後、温度70℃に保持して水で3回洗浄
し、有機層と水層とに分液した。有機層はロータリーエ
バポレーターを用い、常圧、続いて減圧下で加熱してト
ルエンを留去させ白色結晶である精製1,3-BUCを得
た。
【0039】比較例1 実施例1においてメタノールを添加しない以外は同様な
方法で行った。即ち、反応器に1,3-BFC 198g および
炭酸ジメチル 360g を仕込み、反応圧力 10kg/cm2 G 、
反応温度 155℃、廃ガスの流速 0.5リットル/min 、反
応時間 4hrの条件で反応させた。その結果、1,3-BFC
基準の1,3-BUC収率は 98.2%となり、他は中間体のモ
ノカルバミン酸メチル化合物であった。反応生成液およ
びトラップ内には理論的に生成するギ酸メチルの 77.2%
のギ酸メチルが含まれていた。
【0040】比較例2 実施例1に対し、窒素ガス 10kg/cm2 G を充填した後、
密閉し生成したギ酸メチルを系外に抜出さずに実施し
た。即ち、1,3-BFC 192g 、炭酸ジメチル 360g およ
びメタノール 64gを仕込み、反応温度 155℃、反応時間
4hrの条件で反応させた。その結果、1,3-BFC基準の
1,3-BUC収率は 89.2%となり、他は中間体のモノカル
バミン酸メチル化合物であった。
【0041】(第二反応工程:ウレタン化合物の熱分解
実験) 実施例5 反応器として、充填塔(ディクソンパッキンを充填し、
段数:8 段)、原料供給ノズル、反応生成液抜出しノズ
ル、熱電対保護管および熱媒循環用のジャケットを備え
た 500ml、の電磁撹拌式オートクレーブを使用し、流通
反応によりウレタン化合物の熱分解実験を行った。反応
装置は全てステンレス製(SUS-304)とした。充填塔頂に
は、凝縮器、メタノール・ドライアイスにより冷却した
トラップ、真空ポンプおよび廃ガス用のベントを配管で
連結した。缶出液抜出しノズルには、電磁式調節弁、受
器、トラップ、真空ポンプおよび廃ガス用のベントを配
管で連結した。充填塔頂部の凝縮器は温度60℃の温水を
循環し、還流比1の条件で反応生成液を受器へ抜出すよ
うに設定した。実験後、反応槽内の重合物付着状態を調
べる為秤量したステンレス製(SUS-304)の金網を設置し
た。また充填塔内の重合物付着量を調べるため充填物は
予め秤量してから塔に充填した。
【0042】窒素ガスで置換した恒温(140 ℃)原料槽
に、ウレタン化合物である1,3-BUCとバーレルサーム
400(主成分:ジベンジルトルエン)とを1:2の重量
比に仕込んだ後、1,3-BUCに対して 400ppm になるよ
うにp−トルエンスルホンアミド(以後、p−TSAと
略称する)を添加し、原料液を調製した。原料槽には窒
素ガスを微量流した。反応槽に、p−TSA 200ppm を
含むバーレルサーム400 を 300g 仕込んだ。反応槽を撹
拌し、内容液温度を 250℃、系内の圧力を20mmHgに保持
しながら、原料液は定量ポンプを用いて 128g/hrの流速
で反応器へ連続供給した。反応で生成したイソシアネー
ト化合物およびメタノールは受器およびコールドトラッ
プで各々捕集した。缶出液抜出しラインは、圧力 10mmH
g に保持し、缶出液は反応槽の滞留液量が 340mlを維持
するように電磁式調節弁を用いて連続的に受器へ抜出し
た。
【0043】反応開始後、所定時間毎に各受器およびコ
ールドトラップの液量を測定すると共に、液体クロマト
グラフおよびガスクロマトグラフを用い内部標準法で組
成分析を行った。定常状態においてデータを解析した結
果、1,3-BUC反応率 99.1%において、 N,N'- [1,3-
シクロヘキシルビス(メチレン)]ビスイソシアネート
(以後、1,3-BICと略称する)選択率は 90.5%、中間
体のモノイソシアネート化合物選択率は 2.1% となっ
た。この流通反応実験を10時間継続して原料供給を停止
した。イソシアネート化合物の留出が終了したことを確
認した後、高い温度の状態で槽内の液を全量抜出した。
反応装置は、アセトンによる全還流下での洗浄、次いで
乾燥して開放し、槽内の金網および充填剤の重量を測定
した。その結果、充填物 55.2gへの重合物付着量は 0.0
1g以下、金網 27.4gへの重合物付着量は 0.01g以下であ
った。
【0044】比較例3 実施例5において、p−TSAを使用しない以外は、同
様な方法で実施した。その結果、1,3-BUC反応率 99.
4%において1,3-BIC選択率は 83.4%、中間体のモノイ
ソシアネート化合物選択率は4.4%となった。充填物 54.
3gへの重合物付着量は 0.12g、金網 28.5gへの重合物付
着量は 0.55gであった。
【0045】実施例6 原料槽に、1,3-BUCとバーレルサーム 400とを1:2
の重量比に仕込んだ後、1,3-BUCに対してp−トルエ
ンスルホン酸は 50ppmおよびp−TSAは 200ppm を添
加し、原料液を調製した。反応槽に、p−トルエンスル
ホン酸 25ppmおよびp−TSA 100ppm を仕込んだ以外
は、実施例5と同様な方法で行った。その結果、1,3-B
IC反応率 99.8%において1,3-BIC選択率は 95.0%、
モノイソシアネート化合物選択率は 1.5% となった。充
填物 54.3gへの重合物付着量は 0.01g以下、金網 28.4g
への重合物付着量は 0.01g以下であった。
【0046】実施例7 原料槽に1,3-BUCとバーレルサーム 400とを1:1の
重量比に仕込んだ後、1,3-BUCに対してジラウリン酸
ジブチル錫 50ppmおよびp−TSA 400ppm を添加し、
原料液を調製した。反応槽に、ジラウリン酸ジブチル錫
50ppmおよびpーTSA 400ppm を含むバーレルサーム
400 を 300g 仕込み、原料液の流速を 160g/hrとした以
外は、実施例5と同様な方法で行った。その結果、1,3-
BUC反応率 99.6%において1,3-BIC選択率は 93.8
%、モノイソシアネート化合物選択率は1.8%となった。
充填物 53.6gへの重合物付着量は 0.01g以下、金網 28.
1gへの重合物付着量は 0.01g以下であった。
【0047】実施例8 実施例5で使用した反応装置の充填塔頂部へp−TSA
を N,N'- [1,3-フェニレンビス(メチレン)]ジイソ
シアネート(以後、MXDIと略称する)の溶液として
供給するためpーTSA槽、定量ポンプおよび配管を設
置した。原料槽には、MXDUとバーレルサーム 400と
を1:3の重量比に仕込んだ後、MXDUに対してp−
TSA 600ppm を添加し、原料液を調製した。pーTS
A槽には、0.5wt%のp−TSAを含むMXDI溶液を調
製した。反応槽には、p−TSA200ppm を含むバーレ
ルサーム400 を300g仕込んだ。原料液を流速 100g/hrで
反応槽へ供給すると同時に、p−TSAのMXDI溶液
を 3g/hrの流速で充填塔頂部へ供給した。その他は、実
施例5と同様な条件で実施した。その結果、MXDU反
応率 99.2%においてMXDI収率は 88.1%、中間体のモ
ノイソシアネート化合物選択率は 2.1% となった。充填
物 55.1gへの重合物付着量は 0.01g以下、金網 28.2gへ
の重合物付着量は 0.01g以下であった。
【0048】実施例9 原料槽にMXDUとバーレルサーム 400とを1:3の重
量比に仕込んだ後、MXDUに対してジラウリン酸ジブ
チル錫 75ppmおよびp−TSA 600ppm を添加し、原料
液を調製した。p−TSA槽には、0.5wt%のp−TSA
を含むMXDI溶液を調製した。反応槽には、ジラウリ
ン酸ジブチル錫 25ppmおよびp−TSA200ppm を含む
バーレルサーム 400を300g仕込んだ。原料液を流速 120
g/hrで反応器へ供給すると同時に、p−TSAのMXD
I溶液を流速 3.6g/hrで充填塔頂部へ供給した。その他
は、実施例5と同様な方法で行った。その結果、MXD
U反応率 99.1%においてMXDI選択率は 91.5%、モノ
イソシアネート化合物選択率は 1.4% となった。充填物
49.3gへの重合物付着量は 0.01g以下、金網 29.1gへの
重合物付着量は 0.02gであった。
【0049】実施例10 実施例5においてウレタン化合物として1,3-BUCの代
りにHMDUを使用し、反応圧力 30mmHg とした以外
は、同様な方法で実施した。その結果、HMDU反応率
99.5%において1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート選
択率は 92.1%、モノイソシアネート化合物選択率は2.2%
となった。充填物 54.2gへの重合物付着量は 0.01g以
下、金網 27.8gへの重合物付着量は 0.01g以下であっ
た。
【0050】比較例4 実施例9において反応槽および充填塔頂部へp−TSA
を添加しない以外は、同様な方法で行った。その結果、
MXDU反応率 99.0%においてMXDI選択率は 63.8
%、モノイソシアネート化合物選択率3.1%となった。充
填物 56.4gへの重合物付着量は 33.0gとなり、充填塔内
はほぼ閉塞状態であった。金網 28.3gへの重合物付着量
は2.2gであった。
【0051】(粗製イソシアネート化合物の精製工程:
蒸留実験) 実施例11 2 リットルのガラス製充填塔(SUS-316製のスルーザパッ
ク充填、段数:14段)を使用し、ウレタン化合物の熱
分解実験で得られた粗製1,3-BICの回分蒸留実験を行
った。原料の粗製1,3-BICには、1,3-BIC 96.9%の
他に、モノイソシアネート化合物と微量の副生物が含ま
れていた。蒸留釜の操作圧力 1 Torr 、温度 144〜174
℃、還流比 10 〜5 の条件で行った結果、主留分として
ガスクロマトグラフ分析による純度 99.9%の 1,3BIC
を回収率 93.2%で取得した。1,3-BICの蒸留収支は 9
9.3%であった。この精製1,3-BICのNCO含有率 43.
1%(理論値:43.3%)、色相APHAは 5以下、加水分解
性塩素は 1 ppm以下であった。
【0052】
【発明の効果】本発明方法により、ホルムアミド化合物
と炭酸ジメチルとを原料として、加水分解性塩素を含ま
ない高品質のイソシアネート化合物を高収率で、経済的
且つ安定的に製造できる。即ち本発明方法は、第一工程
のウレタン合成では、メタノール共存下において生成す
るギ酸メチルを反応蒸留型式で系外に抜出すことによ
り、ウレタン化合物の空時収率が大幅に向上すると共
に、ギ酸メチルの分解率が抑制される。また第二工程の
ウレタン熱分解では、安定剤としてp−トルエンスルホ
ンアミド等を添加することにより、金属材質の反応装置
を用いても副反応は少なく、重合物の付着が抑制される
ので、高収率で、且つ長時間安定してイソシアネート化
合物を製造することができる。従って本発明方法によ
り、加水分解性塩素を含まない高品質のイソシアネート
化合物を、極めて工業的に有利に製造することができ、
本発明の工業的意義は大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神原 豊 新潟県新潟市太夫浜字新割182番地 三菱 瓦斯化学株式会社新潟研究所内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ホルムアミド化合物と炭酸ジメチルを反応
    させ、得られたウレタン化合物を熱分解してイソシアネ
    ート化合物を得る方法において、ホルムアミド化合物と
    炭酸ジメチルを反応させる第一反応工程をメタノール共
    存下で行い、生成するギ酸メチルを反応蒸留により系外
    に抜出すことを特徴とするイソシアネート化合物の製造
    方法。
  2. 【請求項2】第一反応工程において、ホルムアミド化合
    物1モルに対して 0.1〜 20 モル比の範囲でメタノール
    を共存させる請求項1記載のイソシアネート化合物の製
    造方法。
  3. 【請求項3】第一反応工程の反応生成液をフラッシュ蒸
    発により未反応炭酸ジメチル等の低沸点化合物を除去し
    てウレタン化合物を回収する請求項1記載のイソシアネ
    ート化合物の製造方法。
  4. 【請求項4】第一反応工程の反応生成液を酸で中和し、
    そのまま、または析出した塩を濾過分離した後に、フラ
    ッシュ蒸発により未反応炭酸ジメチル等の低沸点化合物
    を除去してウレタン化合物を回収する請求項4記載のイ
    ソシアネート化合物の製造方法。
  5. 【請求項5】回収されたウレタン化合物を蒸留または水
    洗浄して精製する請求項3または請求項4記載のイソシ
    アネート化合物の製造方法。
  6. 【請求項6】ウレタン化合物を熱分解してイソシアネー
    ト化合物を得る第二反応工程を、不活性溶媒と、一般
    式:Xn −Ar −SO2 −NH2 (Ar はベンゼン、ナ
    フタレン等の芳香核、Xは低級アルキル基、またはアミ
    ノ基、nは 0〜3の整数であり、nが2以上の場合Xは
    同一でも各々異なっても良い)なる化合物の存在下で熱
    分解反応を行う請求項1記載のイソシアネート化合物の
    製造方法。
  7. 【請求項7】第二反応工程に金属材質の反応装置を用い
    る請求項6記載のイソシアネート化合物の製造方法。
  8. 【請求項8】第二反応工程の不活性溶媒が、生成するイ
    ソシアネート化合物より高沸点を有するものである請求
    項6のイソシアネート化合物の製造方法。
  9. 【請求項9】第二反応工程で使用する一般式:Xn −A
    r −SO2 −NH2 なる化合物がp−トルエンスルホン
    アミドである請求項6記載のイソシアネート化合物の製
    造方法。
  10. 【請求項10】第二反応工程で得た粗製イソシアネート
    化合物を蒸留により精製する請求項6記載のイソシアネ
    ート化合物の製造方法。
  11. 【請求項11】第二反応工程で反応槽から抜出した缶出
    液を、そのまま、または第一反応工程からのウレタン化
    合物と共にフラッシュ蒸発させ、フラッシュ留分を反応
    槽へ循環使用する請求項6記載のイソシアネート化合物
    の製造方法。
  12. 【請求項12】ホルムアミド化合物が脂肪族または脂環
    族ホルムアミドである請求項1〜11何れか記載のイソ
    シアネート化合物の製造方法。
  13. 【請求項13】ホルムアミド化合物が N,N'-[1,3-フェ
    ニレンビス(メチレン)]ビスホルムアミドまたは N,
    N'-[1,3-シクロヘキシルビス(メチレン)]ビスホル
    ムアミドである請求項12記載のイソシアネート化合物
    の製造方法。
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