JPH1076388A - フェライト系耐熱鋼管の溶接構造 - Google Patents

フェライト系耐熱鋼管の溶接構造

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JPH1076388A
JPH1076388A JP23313496A JP23313496A JPH1076388A JP H1076388 A JPH1076388 A JP H1076388A JP 23313496 A JP23313496 A JP 23313496A JP 23313496 A JP23313496 A JP 23313496A JP H1076388 A JPH1076388 A JP H1076388A
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昌光 橋本
Koji Tamura
広治 田村
Kazutaka Suzaki
一孝 須崎
Teruo Koyama
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フェライト系耐熱鋼管の長手溶接部のクリー
プ破断やクリープ損傷を低減することができるフェライ
ト系耐熱鋼管の溶接構造を提供すること。 【解決手段】 フェライト系耐熱鋼板を曲げて鋼管10
を作成する場合、MIG溶接を用い溶接金属13a、1
3bで溶接を行う。この長手溶接時、溶接入熱により熱
影響部(HAZ)14a、14bが生成される。内圧が
作用する長手溶接には、内圧による周方向応力がHAZ
14a、14bに対して垂直に働く。一方、フェライト
系耐熱鋼では溶接入熱によりHAZ14a、14bと母
材11との境界14a1 、14b1 において軟化する領
域が生じ、上記内圧により溶接部のクリープ破断やクリ
ープ損傷が生じるが、HAZ14aとHAZ14bとの
なす角θを140度以上としてクリープ破断やクリープ
損傷を低減することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、火力発電プラン
ト、高速増殖炉等に使用されるフェライト系耐熱鋼管の
溶接構造に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、火力プラント、高速増殖炉等に使
用される鋼材の使用温度、使用圧力は上昇する傾向にあ
る。このため、当該鋼材には、高温での使用に適したフ
ェライト系耐熱鋼管が使用されるようになってきた。こ
のような鋼管には、フェライト系耐熱鋼板(調質された
フェライト系高Cr耐熱鋼板等)を曲げ、長手方向を被
覆アーク溶接、TIG溶接、MIG溶接等の溶接方法で
作成されるものがある。この溶接方法を図6および図7
により説明する。
【0003】図6は溶接前の鋼管の一部を示す図、図7
は溶接された鋼管の溶接構造を示す図である。各図で、
1はフェライト系耐熱鋼管(以下、単に鋼管という。)
11はその母材(フェライト系耐熱鋼板)を示す。図6
に示す2aはフェライト系耐熱鋼板を曲げた後に鋼管1
の外面(図では上側、以下同じ)から加工された開先、
2bは鋼管1の内面(図では下側、以下同じ)から加工
された開先である。これら開先2a、2bを用いて溶接
が行われる。図7に溶接後の溶接部が示されている。3
aは外面からの溶接の溶接金属、3bは内面からの溶接
の溶接金属である。4a、4bは各溶接の溶接入熱によ
って生成した熱影響部(HAZ)、4a1 、4b1 はH
AZ4a、4bと母材11との境界を示す。AはHAZ
4aの境界4a1 とHAZ4bの境界4b1 との重なり
部を示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】フェライト系耐熱鋼板
を曲げ、軸方向の長手溶接により鋼管を作成する場合、
内圧が作用する長手溶接には、内圧による周方向応力
が、溶接入熱により生成したHAZ4a、4bに対して
垂直に働く。ところで、フェライト系耐熱鋼では、溶接
に際し、溶接入熱によりHAZ4a、4bと母材11と
の境界4a1 、4b1 において軟化する領域が生じ、溶
接部のクリープ破断強度が母材11に比べて低下するこ
とが明らかになった。これは、母材11については適正
な成分設計や適正な熱処理により良好な特性が得られる
ようになっているものの、HAZ4a、4bにおいては
溶接入熱により組織が変化して母材11と同等のクリー
プ特性が得られないためである。
【0005】又、フェライト系耐熱鋼板の板曲げ溶接に
より鋼管を作成する場合、開先の加工の困難さから、図
6および図7に示すように、鋼管の外面と内面の両方か
ら溶接を行う場合がある。この場合、図7に示すように
両方のHAZ4a、4bが重なる部分Aが生じる。そし
て、境界4a1 、4b1 に生じる軟化域は、母材11や
溶接金属3a、3bに比べてクリープ変形し易いので、
HAZ4a、4bが重なる部分Aにクリープ変形が集中
する。このため、当該重なる部分Aのクリープ損傷が進
み、上記軟化域で亀裂が発生し易くなっている。
【0006】本発明の目的は、上記従来技術における課
題を解決し、内圧を受けるフェライト系耐熱鋼管の長手
溶接部のクリープ破断やクリープ損傷を低減することが
できるフェライト系耐熱鋼管の溶接構造を提供すること
にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述のように、内圧を受
ける長手溶接の鋼管においては、最大応力成分である周
方向応力が溶接部に垂直に働く。このため、HAZが傾
いているとせん断成分が働き、HAZとHAが重なって
いる部分は幾何学的にクリープ変形が集中し易くなり、
この結果、当該重なっている部分のクリープ損傷が進
み、上記軟化域で亀裂が発生し易くなる。本発明者等は
この点に着目して本発明に想到したものである。即ち、
本発明は、フェライト系耐熱鋼板を曲げて溶接すること
により構成されるフェライト系耐熱鋼管の溶接構造にお
いて、当該フェライト系耐熱鋼管の外面からの溶接によ
る熱影響部と内面からの溶接による熱影響部とのなす角
が140度から180度までの間のいずれかとすること
によって上記の目的を達成する。
【0008】
【作用】フェライト系耐熱鋼板を曲げ、軸方向の長手溶
接により鋼管を作成する場合、鋼管の外面と内面の両方
から溶接を行う。この場合、外面からの溶接による熱影
響部と内面からの溶接による熱影響部とのなす角が14
0度から180度までの間のいずれか、好ましくは18
0度とする。これにより、HAZの傾きによるせん断成
分を小さくし、HAZとHAZの重なり部分のクリープ
変形の集中を緩和し、クリープ破断やクリープ損傷を低
減することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施例に基
づいて説明する。図1は本発明の実施例に係るフェライ
ト系耐熱鋼管の溶接構造を示す図、図2は図1に示す溶
接を行うための開先加工を示す図である。各図で、10
は本実施例の溶接構造をもつ鋼管、11は図6、7に示
すものと同じ母材、13a、13bは外面および内面か
らの溶接の溶接金属、14a、14bは外面および内面
からの溶接の溶接入熱により生成されるHAZ、14a
1 、14b1 はHAZ14a、14bと母材11との境
界を示す。又、図2における12a、12bはそれぞれ
外面側、内面側の開先を示す。
【0010】本実施例では、母材11として、9Cr−
1Mo鋼板が使用され、鋼管寸法は外径:762mm、
肉厚:100mmである。又、開先形状における図2に
示す各寸法は、W1 =13mm、W2 =8mm、R1
(曲率半径)=5mm、R2 (曲率半径)=5mm、H
2 =12mm、H12=3mmである。さらに、溶接は、
溶接電流:220A、溶接電圧:26V、溶接方法:狭
開先MIG、シールドガス:(Ar+CO2 )、予熱:
220℃で行った。
【0011】溶接は、まず、鋼管10の内面から狭開先
MIGで行い、その後、鋼管10の外面から同様に狭開
先MIGで行った。ここで、鋼管の溶接(特に内面から
の溶接)に狭開先MIGを使用したのは、溶接入熱を抑
えてHAZ14a、14bを鋼管10の円周方向に対し
て垂直に形成させるためである。なお、溶接入熱が大き
いと、HAZ14a、14bを垂直に形成するのが困難
となり、HAZ14aとHAZ14bとのなす角が小さ
くなってくるので、溶接入熱はできる限り抑えた方がよ
い。
【0012】上記溶接の断面のマクロ組織観察の結果、
HAZ14aとHAZ14bとのなす角θは約165度
であった。そして、クリープ損傷解析(解析温度=60
0℃、内圧=59MPa)によるこの溶接構造のクリー
プ寿命は19700時間であり、通常の溶接により得ら
れる溶接構造(θ=135度)の同一条件下におけるク
リープ寿命13800時間に比較して、より長いクリー
プ寿命を有することが判った。
【0013】このように、本実施例では、HAZとHA
Zとのなす角を大きくすることにより、クリープ破断強
度を向上させ、クリープ損傷を低減することができ、ひ
いては、溶接構造の信頼性を向上させることができる。
【0014】なお、上記実施例の説明では、狭開先MI
G溶接を行う例について説明したが、狭開先の溶接が可
能であれば、溶接はMAG溶接、TIG溶接、電子ビー
ム溶接等を使用することができる。
【0015】図3および図4は鋼管の溶接構造の有限要
素法によるクリープ損傷解析結果を示す図であり、図3
はHAZとHAZの角度がない場合(180度の場
合)、図4はHAZとHAZの角度がある場合の解析結
果を示す。図3に示す各部分において、図1に示す各部
分に相当する部分には、図1と同一符号が付してあり、
図4に示す各部分において、図7に示す各部分に相当す
る部分には、図7と同一符号が付してある。
【0016】上記図3および図4に示す解析は、鋼板と
して上記実施例と同様、9Cr−1Mo鋼板を選択し、
鋼管の外径=500mm、肉厚=100mm、解析温度
=600℃、内圧=59MPa、図4に示す場合のHA
ZとHAZの角度θ=140度として行った。図3およ
び図4に示す解析結果は、約4000時間クリープ後の
相当応力の分布を示すものである。この相当応力の分布
は色合いの濃淡で示され、相当応力は濃いほど大きく、
淡いほど小さい。この濃淡と相当応力との関係が図3の
左側に示されている。
【0017】上記の解析結果から、図4に示すように、
HAZとHAZとのなす角θが小さい場合、HAZとH
AZとが重なった部分B(この部分Bの拡大図が右側に
取り出されている)に高い相当応力が発生している。こ
れは上述のように、この部分にクリープ変形が集中し易
いためであり、この部分のHAZの軟化域に亀裂が発生
し易いのも、上記の高い応力に起因している。ところ
が、図3に示すようにHAZとHAZとの角度が180
度の場合には、相当応力の高い個所は発生していない。
したがって、HAZとHAZとのなす角が大きくなり、
直線に近づくほど、この部分に発生する相当応力は小さ
くなり、クリープ損傷を受け難くなる。このことは、溶
接構造のクリープ破断寿命又はクリープ損傷に対してH
AZとHAZとのなす角が180度に近い方が有利であ
ることを示している。
【0018】図5はHAZとHAZとのなす角度θに対
する有限要素法解析により得られるクリープ寿命を示す
図であり、横軸に角度θが、縦軸にクリープ寿命がとっ
てある。選択した鋼板、鋼管の寸法、解析温度、内圧は
それぞれ図3、図4に示す場合と同じである。図5か
ら、クリープ寿命は、角度θが小さくなるほど、即ち、
HAZとHAZとのなす角度が鋭角になるほど減少して
いることが判る。特に、角度θが140度付近でクリー
プ寿命が大きく減少しており、このことから、クリープ
破断やクリープ損傷を低減するためには、HAZとHA
Zとのなす角度は140度以上であることが必要とな
る。逆に、角度θが140度以上であれば、溶接構造の
内圧によるクリープ破断やクリープ損傷を低減すること
ができ、溶接構造の信頼性を向上させることができるこ
ととなる。
【0019】
【発明の効果】以上述べたように、本発明では、フェラ
イト系耐熱鋼管の外面からの溶接による熱影響部と内面
からの溶接による熱影響部とのなす角度を140度から
180度までの間のいずれかとしたので、溶接構造の内
圧によるクリープ破断やクリープ損傷を低減することが
でき、ひいては、溶接構造の信頼性を向上させることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るフェライト系耐熱鋼管の
溶接構造を示す図である。
【図2】図1に示す溶接を行うための開先加工を示す図
である。
【図3】鋼管の溶接構造の有限要素法によるクリープ損
傷解析結果を示す図である。
【図4】鋼管の溶接構造の有限要素法によるクリープ損
傷解析結果を示す図である。
【図5】HAZとHAZとのなす角度θに対する有限要
素法解析により得られるクリープ寿命を示す図である。
【図6】溶接前の鋼管の一部を示す図である。
【図7】溶接された鋼管の溶接構造を示す図である。
【符号の説明】
10 鋼管 11 母材 13a、13b 溶接金属 14a、14b HAZ 14a1 、14b1 境界
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/22 C22C 38/22 (72)発明者 小山 輝夫 広島県呉市宝町3番36号 バブコツク日立 株式会社呉研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェライト系耐熱鋼板を曲げて溶接する
    ことにより構成されるフェライト系耐熱鋼管の溶接構造
    において、当該フェライト系耐熱鋼管の外面からの溶接
    による熱影響部と内面からの溶接による熱影響部とのな
    す角度が140度から180度までの間のいずれかであ
    ることを特徴とするフェライト系耐熱鋼管の溶接構造。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記角度は、180
    度であることを特徴とするフェライト系耐熱鋼管の溶接
    構造。
  3. 【請求項3】 請求項1において、前記溶接は、狭開先
    MIG溶接であることを特徴とするフェライト系耐熱鋼
    管の溶接構造。
JP23313496A 1996-09-03 1996-09-03 フェライト系耐熱鋼管の溶接構造 Expired - Lifetime JP3712797B2 (ja)

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