JPH1062311A - 車両用路面摩擦係数推定装置 - Google Patents

車両用路面摩擦係数推定装置

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JPH1062311A
JPH1062311A JP8221603A JP22160396A JPH1062311A JP H1062311 A JPH1062311 A JP H1062311A JP 8221603 A JP8221603 A JP 8221603A JP 22160396 A JP22160396 A JP 22160396A JP H1062311 A JPH1062311 A JP H1062311A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 車両の走行状態に応じて路面摩擦係数を推定
する車両用路面摩擦係数推定装置に関し、車両の走行す
る路面状況(路面摩擦係数)を的確に把握して車両の種
々の走行制御をより適切に行なうことができるようにす
る。 【解決手段】 車両の走行状態を検出する車両状態検出
手段と、該車両状態検出手段で検出された該車両の定常
走行中における走行状態から路面の凹凸状態を示すパラ
メータと滑り易さを示すパラメータとを算出する定常パ
ラメータ算出手段210と、上記の両パラメータの値か
ら路面状態を一元的に表す他のパラメータの各状態に対
応した指標を算出する路面指標算出手段220と、該路
面指標算出手段220により算出された指標を継続して
累積的に求めて累積評価することで路面摩擦係数を算出
する路面摩擦係数算出手段230とを有するように構成
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の走行する路
面の摩擦係数を推定する装置に関し、特に、車両の走行
状態に応じて路面摩擦係数を推定することで、推定精度
の向上を図った、車両用路面摩擦係数推定装置にに関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の走行性能を高めたり、走
行に関する人為的な操作を補助したりするために、様々
な走行制御が開発されている。かかる走行制御には、例
えばトラクションコントロール等と称されるエンジン出
力制御や、左右輪や前後輪間での差動制限制御や、さら
には、左右輪や前後輪間でのトルク配分制御(動力伝達
制御)なども既に開発されている。
【0003】例えば、自動車の駆動輪である左右輪間
に、旋回時等に生じる差動を許容するための差動機構が
設けられているが、この差動機構では、左右輪のうちの
一方の車輪が例えば砂にはまるなどして空転すると、こ
の一方の車輪のみが回転して他方の車輪はほとんど回転
しなくなって、路面に駆動トルクを伝達できない状態が
生じることがある。
【0004】そこで、このような場合に、その差動を制
限できる差動制限機構(LSD=リミテットスリップデ
フ)が開発されている。このような左右輪の差動制限機
構には、左右輪の回転速度差に比例するタイプのもの
や、入力トルクに比例するタイプのものがある。左右輪
回転速度差比例タイプには、液体の粘性を利用したVC
(ビスカスカップリング)式LSDなどのものがあり、
車両の走行安定性を向上しうる利点がある。一方、入力
トルク比例タイプのものには、一般的なLOM(ロック
オートマチック)式LSDなどのフリクションタイプの
ものなどのメカニカルタイプのものがあり、車両の旋回
性能を向上しうる利点がある。
【0005】しかしながら、上述のような各種の差動制
限機構では、その差動制御特性が物性などによって定ま
っており、必ずしも常に適切に差動制御を行なえるよう
に差動制御特性を調整できるようにはなっていない。ま
た、LSDを電子制御化したいわゆる電子制御LSDと
呼ばれるシステムもあるが、このようなものにおいても
車輪間のトルク移動は、高速側から低速側へのみに限ら
れており、したがって、例えば特に車両の旋回走行中等
に、その走行性能を十分に高めることまではできないも
のと考えられる。
【0006】そこで、本出願人は、大きなトルクロスや
エネルギロスを招かずに車両の種々の走行状態において
左右輪間でのトルク配分を行なえるようにすべく、例え
ば特開平5−131855号,特開平7−108840
号,特開平7−108841号,7−108842号,
特開平7−108843号,特開平7−156681号
の各公報等に開示されているような、車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置を提案した。
【0007】この左右輪間トルク移動制御装置は、同軸
上に配設された2つの回転体を互いに回転速度の異なる
状態で摺接させると、回転速度の高い方の回転体から回
転速度の低い方の回転体へとトルクが伝達するという特
性を利用したものである。すなわち、この装置は、例え
ば、差動装置に入力された回転速度又は一方の車輪軸の
回転速度を高速並びに低速に変速して出力する変速機構
と、この変速機構のそれぞれの出力を受けて差動装置又
は一方の車輪軸とは異なる回転速度で回転する複数の変
速連動部材と、左右輪のうちの他方の車輪軸と等しい速
度で回転する等速連動部材と、これらの変速連動部材と
等速連動部材との間に設けられた湿式多板クラッチ等の
複数のトルク伝達カップリングをそなえたものである。
【0008】このような装置では、左右輪が例え等速で
回転していても、トルク伝達カップリングにおいては、
変速連動部材側と等速連動部材側とで回転速度が異なる
ため、湿式多板クラッチを係合させるなどしてトルク伝
達カップリングを作用させれば、変速連動部材側と等速
連動部材側とのうち速度の高い方から速度の低い方へと
トルクが伝達される。変速機構による変速度合を一定以
上に大きくしておけば、旋回時に回転速度の低い内輪側
から回転速度の高い外輪側へのトルク伝達も実現する。
【0009】また、例えば湿式多板クラッチのようなト
ルク伝達カップリングでは、それぞれの湿式多板クラッ
チの係合の切換並びに係合度合等の制御を行なうことに
より、一方の車輪軸への伝達トルクを増加又は減少させ
たり、他方の車輪軸への伝達トルクを増加又は減少させ
たりすることができる。したがって、伝達トルク容量を
可変制御できるため、左右輪において所望の方向へ所望
の伝達トルク容量でトルクを伝達させることができる。
【0010】このような装置は、左右輪が駆動輪であっ
ても従動輪であっても適用でき、左右輪が駆動輪であれ
ば、エンジンからの駆動力の左右輪への配分を調整する
ことができ、左右輪が従動輪であれば、トルク伝達によ
って、トルク伝達をされる側の車輪は駆動力を受けるこ
とになり、トルク伝達をする側の車輪は制動力を受ける
ことになる。
【0011】いずれにしても、左右の各車輪と路面との
間で発揮される駆動力又は制動力の大きさを左右不均衡
にし、これにより、車両にヨーモーメントを発生させて
車両の挙動を制御することができる。また、このような
トルク伝達制御は左右輪間のみならず前後輪間でも考え
られる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のよう
な車両の左右輪間や前後輪間でトルクの伝達制御(動力
伝達制御)を行なう装置においては、車両の走行状況に
対応したトルク伝達制御を行なう必要がある。つまり、
車両が直進中か旋回中か、加速中か減速中か、また、各
車輪にスリップがあるか否か、等に応じてトルク伝達制
御を行なうことが、車両の走行性能を向上させることに
なる。
【0013】しかしながら、より適切な制御を行なうに
は、車両が走行する路面状況を把握することが必要にな
る。つまり、走行路面が滑り易いか否かによっては、ト
ルク伝達制御の制御効果も異なるものと考えられ、必要
とする制御効果を適切に得るには、路面状況をの把握し
路面状況に基づいたトルク伝達制御(動力伝達制御)を
行なうことが必要になる。
【0014】このような路面状況は、いわゆる路面摩擦
係数(路面μ)として表すことができるが、この路面状
況(路面摩擦係数)の把握は、上述のようなトルク伝達
制御(動力伝達制御)のみならず、自動車における種々
の走行制御において有効なものになる。本発明は、上述
の課題に鑑み創案されたもので、車両の走行する路面状
況(路面摩擦係数)を的確に把握できるようにして、例
えば自動車における種々の走行制御をより適切に行なう
ことができるようにした、車両用路面摩擦係数推定装置
を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1記載
の本発明の車両用路面摩擦係数推定装置は、車両の走行
状態を検出する車両状態検出手段と、該車両状態検出手
段で検出された該車両の定常走行中における走行状態か
ら路面の凹凸状態を示すパラメータと滑り易さを示すパ
ラメータとを算出する定常パラメータ算出手段と、上記
の両パラメータの値から路面状態を一元的に表す他のパ
ラメータの各状態に対応した指標を算出する路面指標算
出手段と、該路面指標算出手段により算出された指標を
継続して累積的に求めて累積評価することで路面摩擦係
数を算出する路面摩擦係数算出手段とを有することを特
徴としている。
【0016】また、請求項2記載の本発明の車両用路面
摩擦係数推定装置は、車両の走行状態を検出する車両状
態検出手段と、該車両状態検出手段で検出された該車両
の定常走行中における走行状態から路面状態を示す第1
のパラメータを算出する定常パラメータ算出手段と、該
車両状態検出手段で検出された該車両の定常走行以外の
特定走行中における走行状態から路面状態を示す第2の
パラメータを算出する特定パラメータ算出手段と、該定
常パラメータ算出手段により算出された該第1のパラメ
ータを継続して累積的に求めて累積評価するとともにこ
の累積した第1のパラメータと該第2のパラメータとを
総合して路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出手段
とを有することを特徴としている。
【0017】なお、好ましくは、上記の車両が、前輪又
は後輪の左右車輪間に関連して設けられ、動力装置から
の駆動力を該左右車輪に伝達し、あるいは、該左右車輪
の回転に伴う回転力を該左右車輪間で授受させて、該左
右車輪の回転推進力を変化させる回転推進力配分調整機
構と、該回転推進力配分調整機構がそなえられた側の左
駆動輪及び右駆動輪の回転速度を検出する左輪側回転速
度検出手段及び右輪側回転速度検出手段と、該回転推進
力配分調整機構がそなえられない側の左駆動輪及び右駆
動輪の回転速度を検出する左輪側回転速度検出手段及び
右輪側回転速度検出手段と、操舵角と車体速とに基づい
て上記の前輪及び後輪の左右回転速度差の理論値を算出
する基準回転速度差算出手段とを有するように構成し
て、上記の路面状態を示すパラメータを、該回転推進力
配分調整機構がそなえられた側の左輪側回転速度検出手
段及び右輪側回転速度検出手段からの検出情報と、該回
転推進力配分調整機構がそなえられない側の左輪側回転
速度検出手段及び右輪側回転速度検出手段からの検出情
報と、に基づいて算出される該車両回転数差(凹凸状態
を示すパラメータ)と、該回転推進力配分調整機構がそ
なえられた側の左輪側回転速度検出手段及び右輪側回転
速度検出手段からの検出情報と、該回転推進力配分調整
機構がそなえられない側の左輪側回転速度検出手段及び
右輪側回転速度検出手段からの検出情報と、該基準回転
速度差算出手段からの算出情報と、該回転推進力配分調
整機構における作動状態と、に基づいて算出される該車
両の駆動輪のトルク移動(動力移動)による路面μ判定
値(滑り易さを示すパラメータ)とする。
【0018】また、上記の他のパラメータの各状態に対
応した指標とは、各状態の発生程度を示すものとするこ
とが好ましい。さらに、路面摩擦係数推定条件(路面μ
判定条件)を設定するとともに、路面μ判定条件を満た
した場合には周期的に路面摩擦係数(路面μ)を更新
し、路面μ判定条件を満たさない場合には、そのときの
路面摩擦係数(路面μ)として、前回(直近)の路面摩
擦係数(路面μ)を採用することが、好ましい。
【0019】さらに、好ましくは、上記指標の累積値
に、各状態に対応した重み付けを行なって路面摩擦係数
を算出する。また、好ましくは、上記の特定走行中と
は、車両の発進走行時及び非線形走行時である。また、
上記特定パラメータ算出手段が、車両の発進時におい
て、以下のような路面摩擦係数となるように第2のパラ
メータを設定することが、好ましい。
【0020】つまり、車両の直進発進時には1輪でも滑
りを生じた場合には、低い路面摩擦係数となるように第
2のパラメータを設定する。また、一定の加速度以上で
車輪が滑らなかった場合には、高い路面摩擦係数となる
ように第2のパラメータを設定する。車輪の振動成分が
大きい場合には、中程度か低い路面摩擦係数となるよう
に第2のパラメータを設定する。
【0021】さらに、トルクの移動方向と後輪左右の速
度差から路面がμスプリット状態であるか否かを判別
し、μスプリット状態であれば、低い路面摩擦係数とな
るように第2のパラメータを設定する。また、上記特定
パラメータ算出手段が、発進走行時及び非線形走行時と
いった特定走行状態において、以下のような路面摩擦係
数となるように第2のパラメータを設定することが、好
ましい。
【0022】つまり、タイヤ(車輪)の滑り度合が大き
く且つ上記車両に生じる横加速度が第1所定値以下の場
合には、路面摩擦係数の低い路面(低μ路)と判断し、
低い路面摩擦係数となるように第2のパラメータを設定
する。また、上記車両に生じる横加速度が第2所定値よ
りも大きい場合には、路面摩擦係数の高い路面(高μ
路)と判断し、高い路面摩擦係数となるように第2のパ
ラメータを設定する。
【0023】
〔目次〕
1.本装置のシステム概要 1.1本装置のハードウェア構成の概念 1.2本装置のハードウェア構成 1.3本装置の制御概要 1.4本装置の制御により得ようとする作用及び効果 2.本装置の制御内容 2.1入力演算処理 2.2ドリフト判定ロジック 2.3車両運動制御ロジック 2.3.1目標ΔN追従制御 2.3.2加速旋回制御 2.3.3タックイン対応制御 2.3.4操舵過渡応答制御 2.4路面μ推定 2.4.1定常旋回時の路面μ推定 2.4.2非線形旋回時の路面μ推定 2.4.3発進時の路面μ推定 2.4.4出力値設定 2.5アクチュエータ駆動 2.5.3インジケータ表示制御 2.5.4出力値設定 3.本装置の動作及び本装置による効果 3.1本装置の動作 3.2本装置による効果 3.2.2車両用路面摩擦係数推定装置の効果 3.2.3車両用路面摩擦係数(路面μ)対応制御の効
果 〔実施形態〕 1.本装置のシステム概要 1.1本装置のハードウェア構成の概念 まず、本装置のハードウェア構成の概念を説明すると、
本車両用左右輪間動力伝達制御装置は、同軸上に配設さ
れた2つの回転体を互いに回転速度の異なる状態で摺接
させると、回転速度の高い方の回転体から回転速度の低
い方の回転体へとトルクが伝達するという特性を利用し
たものである。
【0024】このように左輪側と右輪側との間で、左輪
側の方が右輪側よりも大きい状態であれば、左輪側から
右輪側へのトルク伝達を容易に行なうことが、右輪側の
方が左輪側よりも大きい状態とであれば、右輪側から左
輪側へのトルク伝達を容易に行なうことができる。そこ
で、本来、左右輪が等速で回転する領域においても、左
輪側の方が右輪側よりも大きい状態を実現するには、例
えば左輪側に左輪側の回転速度VLを高速に変速する変
速機構を設ければ、左右輪が等速で回転していても、こ
の変速機構の出力を受ける左輪側部材と、右輪と等しい
速度VRで回転する右輪側部材との間では、左輪側の回
転速度が右輪側よりも大きい状態を実現できる。また、
例えば右輪側に右輪側の回転速度VRを低速に変速する
変速機構を設ければ、左右輪が等速で回転していても、
左輪と等しい速度VLで回転する左輪側部材と、この変
速機構の出力を受ける右輪側部材との間では、左輪側の
回転速度が右輪側よりも大きい状態を実現できる。
【0025】また、右輪側についても、これと左右対称
に構成すれば、右輪側の方が左輪側よりも大きい状態を
常に実現することができる。車両の旋回時には、旋回内
輪は旋回外輪よりも低速回転になるが、変速機構の変速
比の設定に応じて、車両の旋回時にも、内輪側の回転部
材を外輪側の回転部材よりも高い速度に変速することが
できる。
【0026】そして、このように速度差を与えられた左
輪側回転部材と右輪側回転部材との間にトルク伝達カッ
プリングを設ければ、このトルク伝達カップリングを適
当に作用させることで、一定の走行条件下では、左輪側
から右輪側へも、右輪側から左輪側へも常時トルク伝達
を行なうことができる。もちろん、最大舵角での旋回時
にも内輪側の駆動トルクが外輪側に伝達されるように、
変速機構による変速比を設定すれば、全走行条件下で、
左輪側から右輪側へも、右輪側から左輪側へも常時トル
ク伝達を行なうことができる。
【0027】また、湿式多板クラッチ機構などのトルク
伝達容量可変型のカップリングでは、係合圧力(押圧力
P)等に応じて伝達トルク量を調整することができる。
ところで、右輪側と左輪側との間に介装する変速機構及
びカップリングは、右輪側と左輪側との間に直接設ける
他に、例えば駆動輪の場合には、デファレンシャルの入
力部分と車輪側(右輪側又は左輪側)との間に、これら
の変速機構及びカップリングを設けるようにして、デフ
ァレンシャルの入力部分を介して、左輪側と右輪側との
間での動力伝達(トルク移動)を実現してもよい。
【0028】このような原理による車両の左右輪間での
動力伝達(トルク移動)は、左右輪が駆動輪であっても
従動輪であっても適用でき、左右輪が駆動輪であれば、
エンジンからの駆動力の左右輪への配分を調整すること
になり、左右輪が従動輪であれば、トルク伝達によっ
て、トルク伝達をされる側の車輪は駆動力を受けること
になり、トルク伝達をする側の車輪は制動力を受けるこ
とになる。いずれにしても、左右の各車輪と路面との間
で発揮される駆動力又は制動力の大きさを左右不均衡に
制御して、これにより、車両にヨーモーメントを発生さ
せて車両の挙動を制御することができる。
【0029】1.2本装置のハードウェア構成 次に、このような理論による本車両用左右輪間動力伝達
制御装置のハードウェア構成について図1,図2を参照
して説明する。 1.2.1本装置にかかる車両の動力伝達系の構成 本実施形態の車両用左右輪間動力伝達制御装置は、図1
に示すように、四輪駆動車の後輪にそなえられる。
【0030】図1において、符号2はエンジンであり、
このエンジン2の出力はトランスミッション4及び中間
ギア機構6を介して差動歯車機構(=センタディファレ
ンシャル、以下、センタデフという)8に伝達されるよ
うになっている。このセンタデフ8の出力は、一方にお
いて前輪用の差動歯車機構(=フロントディファレンシ
ャル、以下、フロントデフという)10を介して車軸1
2L,12Rから左右の前輪14,16に伝達され、他
方においてベベルギヤ機構18,プロペラシャフト20
及びベベルギヤ機構22,後輪用の差動歯車装置(=リ
ヤディファレンシャル、以下、リヤデフという)24を
介して車軸26L,26Rから左右の後輪28,30に
伝達されるようになっている。本左右輪間動力伝達制御
装置の回転推進力配分調整機構(又は、回転力調整手
段、以下、トルク移動機構という)50はこのリヤデフ
24の部分に設けられている。
【0031】センタデフ8は、従来周知のものと同様
に、デファレンシャルピニオン8A,8Bと、これらの
デファレンシャルピニオン8A,8Bと噛合するサイド
ギヤ8C,8Dとからなり、デファレンシャルピニオン
8A,8Bから入力された回転トルクは、サイドギヤ8
C,8Dに伝達され、サイドギヤ8Cからは前輪側へ、
サイドギヤ8Dからは後輪側へと、それぞれの差動を許
容されながら伝達されるようになっている。
【0032】ここでは、サイドギヤ8Cからは前輪用出
力軸32を介して前輪側のフロントデフ10へ、サイド
ギヤ8Dからは後輪用出力軸34及びベベルギヤ機構1
8を介してプロペラシャフト20から後輪側へトルクが
伝達される。このセンタデフ8には、その前輪側出力部
と後輪側出力部との差動を拘束(又は制限)することに
より前輪側と後輪側とのエンジンの出力トルク(回転推
進力)の配分を制御しうる差動制限手段〔即ち、リミテ
ッドスリップデフ(LSD)〕としてビスカスカップリ
ングユニット(VCU)36が付設されている。
【0033】このVCU36は、前輪用出力軸32と後
輪用出力軸34との間に介装されており、差動状態に応
じた力で、前輪側と後輪側との差動を制限することで、
前後輪の軽負荷側だけが空転して重負荷側に回転トルク
が伝達されないような事態を回避しうるようになってい
る。 1.2.2本装置の回転推進力配分調整機構の構成 ところで、本左右輪間動力伝達制御装置は、デフキャリ
ア51内に設けられた回転推進力配分調整機構(トルク
移動機構)50と、その制御手段(又は回転推進力配分
制御手段)である油圧ユニット38及び電子制御ユニッ
ト(以下、ECUという)42とから構成されるが、こ
こで、リヤデフ24及びこのリヤデフ24と車軸26
L,26Rとの間に嵌挿されたトルク移動機構50の構
成を、図2を参照して説明する。
【0034】図2に示すように、入力軸52がプロペラ
シャフト20の後端に結合されており、入力軸52には
ドライブピニオンギヤ54が一体回転するように結合さ
れている。このドライブピニオンギヤ54には、デファ
レンシャルケース(デフケース)58の外周に設けられ
たクラウンギヤ56が噛合しており、エンジンの出力
は、入力軸52からドライブピニオンギヤ54,クラウ
ンギヤ56を介してリヤデフ24に伝えられるようにな
っている。
【0035】リヤデフ24は、従来周知のものと同様
に、デフケース58内に設けられた2対のピニオン、即
ち、デファレンシャルピニオン60A,60Bと、これ
らのデファレンシャルピニオン60A,60Bと噛合す
るサイドギヤ62,64とからなり、デファレンシャル
ピニオン60A,60Bから入力された回転トルクは、
サイドギヤ62,64に伝達され、サイドギヤ62から
は左輪側の回転軸66へ、サイドギヤ64からは右輪側
の回転軸68へと、それぞれの差動を許容されながら伝
達されるようになっている。また、左右の回転軸66,
68は、図1に示すように、左右の後輪28,30に結
合した車軸26L,26Rに連結されている。
【0036】本実施形態のトルク移動機構50は、後輪
の左右駆動輪で駆動力を配分するリヤデフ24のデフケ
ース58と右輪側回転軸68との間に設けられており、
変速機構70と伝達容量可変制御式トルク伝達機構90
とから構成され、デフケース58を介して、左輪側と右
輪側との間での回転推進力の伝達、即ち、動力伝達(ト
ルク移動)を行なうようになっている。
【0037】変速機構70は、リヤデフ24の入力部分
即ちデフケース58の回転速度を増速して左右輪の一方
側(ここでは、右輪側)に出力する増速機構70Aと、
減速して一方側(右輪側)に出力する減速機構70Bと
を一体にそなえているので、増減速機構とも称する。ま
た、伝達容量可変制御式トルク伝達機構90は、制御油
圧に応じて伝達容量を調整できる湿式油圧多板クラッチ
機構(以下、クラッチとも称する)が用いられており、
変速機構70の減速機構70Bの出力側と右輪側との間
に設けられて左輪側へトルク伝達をするクラッチ(左ク
ラッチ)90Lと、変速機構70の増速機構70Aの出
力側と右輪側との間に設けられて右輪側へトルク伝達を
するクラッチ(右クラッチ)90Rとが一体に形成され
ている。このような伝達容量可変制御式トルク伝達機構
90を、一体式カップリング又は単にカップリングとも
称する。
【0038】増減速機構70を説明すると、この増減速
機構70は、デフケース58と一体回転するように結合
された中空の中間軸72と、右クラッチ90Rに接続さ
れた中空の中間軸74と、左クラッチ90Lに接続され
た中空の中間軸76との間に介装されている。なお、こ
れらの中間軸72,74,76はいずれも中空軸であ
り、中間軸72,74は、右輪側回転軸68の外周に相
対回転できるように装備され、中間軸76は、中間軸7
4のさらに外周にこれも相対回転できるように装備され
ている。
【0039】これらの中間軸72,74,76には、そ
れぞれギヤ78A,80A,82Aが設けられて、ま
た、これらの中間軸72,74,76の外周にはカウン
タシャフト84が配設され、このカウンタシャフト84
には3連ギヤ86がそなえられている。3連ギヤ86
は、ギヤ78B,80B,82Bから構成され、ギヤ7
8Bは中間軸72のギヤ78Aに、ギヤ80Bは中間軸
74のギヤ80Aに、ギヤ82Bは中間軸76のギヤ8
2Aに、それぞれ噛合している。
【0040】増減速機構70は、このようなギヤ78
A,80A,82Aを有する中間軸72,74,76
と、カウンタシャフト84と、ギヤ78B,80B,8
2Bを有する3連ギヤ86とから構成されている。な
お、カウンタシャフト84は、中間軸72,74,76
の外周にドライブピニオン54と位相をずらして複数
(ここでは3つ)そなえられている。これにより、リン
グギヤをそなえないが、ギヤ78A,80A,82Aを
サンギヤとしてギヤ78B,80B,82Bをプラネタ
リピニオンとする、3連式の遊星歯車機構と同様の配列
に構成されている。
【0041】なお、各カウンタシャフト84は、デフキ
ャリア51に設けられた壁部51Aに固定されている。
したがって、ギヤ78B,80B,82Bはカウンタシ
ャフト84を軸心として自転のみ行なう。これにより、
中間軸72,74,76のラジアル方向への支持は、ギ
ヤ78A,80A,82Aとギヤ78B,80B,82
Bとの噛合を通じて、上述のように壁部51Aに固定さ
れた複数のカウンタシャフト84によっても行なわれて
いる。
【0042】そして、これらのギヤ78A,80A,8
2Aの歯数をそれぞれZ1 ,Z2 ,Z3 とすると、Z2
<Z1 <Z3 の関係に設定されている。また、ギヤ78
B,80B,82Bの歯数をそれぞれZ4 ,Z5 ,Z6
とすると、Z6 <Z4 <Z5の関係に設定されている。
【0043】これにより、変速機構(増減速機構)70
では、ギヤ78A,ギヤ78B,ギヤ80A,ギヤ80
Bの組み合わせで、リヤデフ24に入力された回転を増
速して右輪側へ出力する増速機構70Aが構成され、ギ
ヤ78A,ギヤ78B,ギヤ82A,ギヤ82Bの組み
合わせで、リヤデフ24に入力された回転を減速して右
輪側へ出力する減速機構70Bが構成される。
【0044】ところで、これらの増減速機構70の出力
を入力される伝達容量可変制御式トルク伝達機構90、
即ち、左クラッチ90L及び右クラッチ90Rは、図2
に示すように、デフキャリア51内の増減速機構70よ
りも右輪側の空間部に設置されている。これらの油圧多
板クラッチ90L,90Rは、右輪側回転軸68と一体
回転するようにクラッチケース92に結合されたクラッ
チ板90AL,90ARと、中間軸74及び76と一体
回転するように結合されたクラッチ板90BR,90B
Lと、各クラッチ90L,90Rにそれぞれ油圧(クラ
ッチ圧)を加える図示しない2つのピストンとをそなえ
ており、コントローラ42の電子制御によって2つの油
圧ピストンの駆動油圧が油圧ユニット38を通じて調整
されて、クラッチ90L,90Rの係合状態が調整され
るようになっている。
【0045】左クラッチ90Lは、右輪側回転軸68と
一体回転する右輪側クラッチ板90ALと、中間軸76
と一体回転するように結合された減速機構70Bの出力
側のクラッチ板90BLとから構成される。クラッチ板
90BLは、中間軸76とともに減速機構70Bで減速
されたギヤ82Aと一体回転するので、右輪に対する左
輪の速度比が大きくならないかぎり、クラッチ板90B
Lは、右輪側回転軸68と一体回転する右輪側クラッチ
板90ALよりも低速回転する。
【0046】したがって、クラッチ90Lを係合させれ
ば、右旋回時であって右輪が左輪よりも低速回転してい
ても、右輪側クラッチ板90AL側からクラッチ板90
BLへと、即ち、右輪側からリヤデフの入力側へとトル
クが伝達されることになり、エンジンからのトルクの右
輪側への配分量を減少させて、左輪側への配分量を増加
させることができる。
【0047】また、右クラッチ90Rは、右輪側回転軸
68と一体回転する右輪側クラッチ板90ARと、中間
軸74と一体回転するように結合された増速機構70A
の出力側のクラッチ板90BRとから構成される。クラ
ッチ板90BRは、中間軸74とともに増速機構70A
で増速されたギヤ80Aと一体回転するので、左輪に対
する右輪の速度比が大きくならないかぎり、クラッチ板
90BRは、右輪側回転軸68と一体回転する右輪側ク
ラッチ板90ARよりも高速回転する。
【0048】したがって、クラッチ90Rを係合させれ
ば、左旋回時であって左輪が右輪よりも低速回転してい
ても、クラッチ板90BR側から右輪側クラッチ板90
AR側へと、即ち、リヤデフの入力部側から右輪側へと
トルクが伝達されることになり、エンジンからのトルク
の右輪側への配分量を増加させて、左輪側への配分量を
減少させることができる。
【0049】そこで、油圧ユニット38におけるクラッ
チ90L,90Rへの油圧調整部も、左右の後輪へトル
ク配分が所望の状態になるように、ECU42を通じて
制御される。この場合、ECU42では、エンジン情
報,車輪速情報,ハンドル角情報(操舵角情報),車体
の横加速度や前後加速度に関する情報等に基づいて油圧
ユニット38の所要部を制御する。
【0050】例えば、入力軸52からの駆動トルクを左
輪回転軸66により多く配分したい場合には、その配分
したい程度(配分比)に応じて左クラッチ90Lを適当
な制御圧力で係合させればよく、入力軸52からの駆動
トルクを右輪回転軸68により多く配分したい場合に
は、その配分したい程度(配分比)に応じて右クラッチ
90Rを適当な制御圧力で係合させればよい。
【0051】また、左右の両クラッチ90L,90Rが
同時に完全係合することのないように設定されており、
左右のクラッチ90L,90Rのうち一方が完全係合し
たら他方は係合しないようになっている。つまり、クラ
ッチ90L,90Rの作動モードは、左クラッチ90L
のみが係合するモードと、右クラッチ90Rのみが係合
するモードと、何れも係合しない中立モードとがある。
【0052】このように、トルク移動機構50では、ト
ルクを移動させることで左右トルクの配分を調整できる
ので、単に片輪を制動することで左右トルクの配分を調
整する場合に比べてトルクロスが極めて少なく、トルク
の配分調整もより広範囲で行なえ、例えば車両にヨーモ
ーメントを生じさせることも違和感なく行なえるという
特徴がある。
【0053】1.2.3本装置にかかる油圧ユニットの
構成 ここで、油圧ユニット38の構成を図3を参照して説明
する。この油圧ユニット38は、図3に示すように、作
動油を蓄圧する蓄圧部101と、蓄圧部101に蓄圧さ
れた作動油を適宜圧力調整してクラッチ90L,90R
の油室(図示省略)に供給する制御圧出力部102とか
らなる。
【0054】蓄圧部101は、アキュムレータ103
と、アキュムレータ103内の作動油を所定圧に加圧す
るモータポンプ104と、モータポンプ104で加圧さ
れた差動油圧を監視する圧力スイッチ105とをそなえ
ている。また、制御圧出力部102は、モータポンプ1
04を通じて圧力調整されたアキュムレータ103内の
作動油を、圧力調整する電磁比例圧力制御弁(比例弁と
略す)106と、この比例弁106で調圧された作動油
を左右いずれのクラッチ90L,90Rの油室(図示省
略)に供給するかを切り換える電磁方向制御弁(方向切
換弁)107とをそなえている。
【0055】このような油圧ユニット38は、ECU4
2により作動を制御されるが、ECU42には、車輪速
センサ(車輪速検出手段)48A,ハンドル角センサ
(即ち、ハンドルの切れ角を検出するハンドル切れ角検
出手段)48B,前後加速度センサ(前後Gセンサ)4
8C,横加速度センサ(横Gセンサ)48D,スロット
ルポジションセンサ(TPS)48E及び圧力スイッチ
105等のセンサ類が接続されている。
【0056】そして、ECU42では、これらのセンサ
類からの情報に基づいて、車両の走行状態、即ち、車速
や操舵状態や車体の運動状態等に応じて、油圧ユニット
38のモータポンプ104や比例弁106や方向切換弁
107の制御を行なうようになっている。この比例弁1
06や方向切換弁107の制御を通じた差動制限制御、
即ち、トルク移動制御の詳細については後述する。
【0057】なお、図3中、符号108はバッテリ、1
09はモータリレーであり、モータポンプ104の制御
は、このモータリレー109を通じたバッテリ108か
らの電力の供給制御により行なわれ、蓄圧部101によ
る蓄圧管理は、圧力スイッチ105の検出情報に基づい
てモータリレー109を通じてモータポンプ104の作
動を制御しながら行なうようになっている。また、符号
110は、油圧ユニット38による差動制限制御、即
ち、トルク移動制御を行なっているか否かを表示するイ
ンジケータランプである。
【0058】また、油圧ユニット38を通じた差動制限
制御は、エンジン出力制御と連係させる必要があるの
で、ここでは、ECU42からは、油圧ユニット38へ
制御指令を出力するとともに、エンジン出力制御を制御
する図示しないエンジン用ECUへも出力低減情報が送
られるようになっている。なお、ECU42は、図示し
ないが後述する制御に必要なCPU,ROM,RAM,
インタフェイス等をそなえている。
【0059】1.3本装置の制御概要 ここで、図4の本装置の制御にかかる機能構成を示す制
御ブロック図を参照して、本装置の制御概要について説
明する。図4に示すように、本制御による処理は、セン
サ入力を受けるセンサ入力処理と、これらのセンサ入力
値に基づいて各種の値の演算を行なう演算処理と、演算
処理結果に基づいて車両の運動制御の各制御量を算出す
る制御量算出処理と、算出された各制御量に基づいて各
アクチュエータを駆動する駆動処理とに分けることがで
きる。
【0060】このうち、センサ入力処理では、4輪の車
輪速センサ48A,ハンドル角センサ48B,前後加速
度センサ(前後Gセンサ)48C,横加速度センサ(横
Gセンサ)48D,スロットルポジションセンサ(TP
S)48E等からのセンサ入力を受ける。演算処理で
は、後輪の左右輪の速度差について、その実測値とその
理論値とが算出される。実測値(実回転数差)は4輪の
車輪速センサ48Aからの車輪速値に基づいて、また、
理論値(目標値,理論回転数差)はハンドル角センサ4
8Bからの操舵角と、4輪の車輪速センサ48Aからの
車輪速値から得られる車体速度(車速)とに基づいて、
それぞれ算出される。また、前後Gセンサ48C,横G
センサ48Dからの検出値に基づいて、計算前後G(g
b),計算横G(gy)が計算される。また、演算処理
では、さらに、ドリフト判定及び路面μ推定が行なわれ
る。
【0061】制御量算出処理では、このような各演算結
果に基づいて車両の運動制御の各制御量を算定するが、
本制御では、通常旋回時の制御に関する目標回転数差追
従制御(目標ΔN追従制御)の制御量(目標ΔN追従制
御量)と、加速旋回時に関する加速旋回制御の制御量
(加速旋回制御量)と、車両のタックイン時に関するタ
ックイン対応制御の制御量(タックイン対応制御量)
と、操舵過渡時に関する操舵過渡応答制御の制御量(操
舵過渡応答制御量)とがそれぞれ設けられ、これらの各
制御量を加算してこの加算制御量(出力制御量)を出力
するようになっている。
【0062】なお、制御量算出処理を行なう機能を制御
量算出手段と呼び、この機能(制御量算出手段)の中で
も、目標ΔN追従制御に関する制御量を設定する機能、
又は、この設定機能及びこの設定により得られた制御量
に基づき制御信号を出力する機能をΔN追従制御手段又
は目標回転数差追従制御手段、加速旋回制御の制御量を
設定する機能、又は、この設定機能及びこの設定により
得られた制御量に基づき制御信号を出力する機能を加速
旋回制御手段、タックイン対応制御の制御量を設定する
機能、又は、この設定機能及びこの設定により得られた
制御量に基づき制御信号を出力する機能をタックイン対
応制御手段、操舵過渡時に関する操舵過渡応答制御の制
御量(過渡的制御量)を設定する機能、又は、この設定
機能及びこの設定により得られた制御量に基づき制御信
号を出力する機能を操舵過渡応答制御手段とそれぞれい
う。特に、目標回転数差追従制御手段,加速旋回制御手
段,タックイン対応制御手段などの車両挙動に対応した
制御量(車両挙動対応制御量)を算出する手段を車両挙
動対応制御量算出手段、ハンドル操作やスロットル操作
などの運転操作状態に基づく制御量(過渡的制御量)を
算出する手段を過渡的制御量手段ともいう。
【0063】また、目標ΔN追従制御に関しては、車両
の旋回状態に対応したヨー角又は左右車輪回転数差の目
標値を算出又は記憶する機能(目標値算出手段)を有
し、さらに、定常旋回時における目標値に応じた制御量
を算出する機能(定常旋回制御手段)を有している。ま
た、駆動処理では、トルク移動量を調整するために比例
弁106に指令信号を出力する比例弁出力と、トルク移
動方向を設定するために方向弁(方向切換弁)107に
指令信号を出力する方向弁出力と、インジケータランプ
110に表示指令信号を出力するインジケータ表示出力
とを行なうようになっている。
【0064】2.本装置の制御内容 ここで、上述のようなトルク制御の内容を、入力演算処
理、ドリフト判定ロジック、車両運動制御ロジック、路
面μ推定、アクチュエータ駆動の順に、より具体的に説
明する。 2.1入力演算処理 入力演算処理では、図6に示すように、後左車輪速度v
rl,後右車輪速度vrr,ハンドル角度θh,車体速
度vb,ハンドル角速度dθh,前左車輪速度vfl,
前右車輪速度vfrにかかる検出信号を各センサから受
けるとともに、前回の計算値(トルク移動量ta,路面
μ判定係数γ)及び圧力スイッチ,アイドルスイッチ,
横Gセンサ,TPS(スロットルポジションセンサ)等
からの検出信号を受けて、以下のような数値の演算処理
を行なう。
【0065】2.1.1後輪左右の速度差(dvrd) 後左車輪速度vrl及び後右車輪速度vrrとの差を演
算して、旋回時やトルク移動制御によって発生する後輪
左右の実速度差dvrd(=vrl−vrr)を得る。 2.1.2後輪左右の速度差のデジタルフィルタ値(d
vrf) 実速度差dvrdは、トルク移動制御の作動状態を判別
するために用いるため、実速度差dvrdをデジタルフ
ィルタでフィルタ処理して、ノイズ影響を取り除く。こ
こでは、式(2.1.2.1)のようにスムージング処理を行な
う式(2.1.2.2)に示すようにフィルタ処理を行なう。
【0066】 dvrf1=(dvrd+odvrd)/2 ・・・(2.1.2.1) dvrf =LPF〔dvrd〕 =LPF〔dvrf1,dvrf〕 ・・・(2.1.2.2) ただし、odvrd:一回前のdvrdを保持した値 dvrfl: スムージングした値 2.1.3後輪の平均速度(vr) 後左車輪速度vrlと後右車輪速度vrrとを平均化す
ることで、後輪の平均速度vr〔=(vrl+vrr)
/2〕を得て、トルク移動制御の作動状態を判別するた
めに用いる。
【0067】2.1.4推定車体速(vb),旋回半径
(RR) 本装置は、車体速を演算により推定する機能(車体速演
算装置又は車体速検出手段)をそなえており、この車体
速演算装置(車体速検出手段)では、推定車体速vb
を、基本的には、左右前輪及び左右後輪の4輪のうちの
3番目に速い車輪速v3に基づいて算出する。これは、
本自動車は4輪駆動車のため各車輪とも駆動輪となり、
このような駆動輪は、駆動力を路面に伝達する際に路面
との間で滑りを生じるので、駆動輪に基づいて車体速を
求めると例え僅かであっても実際の車体速よりも速い値
となる。そこで、4つの駆動輪のうちで最も遅い車輪速
が実際の車体速に最も対応する。しかし、車輪速の検出
値がノイズ等により適正な値とならない場合も考えられ
るので、検出値の信頼性を考慮して、4つの駆動輪のう
ちで2番目に遅い車輪速(即ち、3番目に速い車輪速)
v3を採用して、推定車体速vbを求めている。
【0068】ところで、直進時には、車輪速と車体速と
が一定の比率で対応するので、例えば車輪の回転速度に
車輪外周長を乗算して得られる車体速(単純算出車体
速)vbdを車体速vbとできる。したがって、第3車
輪速(即ち、3番目に速い車輪速)v3から推定車体速
vbを算出する機能を、ここでは、直進車体速推定手段
という。
【0069】しかし、旋回時には、旋回内輪と旋回外輪
とで車輪速が変化し、このような内輪と外輪との車輪速
変化は旋回半径や車速によっても異なるものになる。こ
のため、旋回時には、旋回半径等に応じた補正が必要に
なる。すなわち、旋回時には、3番目に速い車輪速は後
輪の内輪となり、この内輪側が単純算出車体速vbdと
なるものと考えられるので、車体中心の車体速vbは、
幾何学的関係から求められる。
【0070】そこで、上記の直進車体速推定手段で推定
(算出)されたと車体速(単純算出車体速)としての第
3車輪速vbd(=v3)と、ハンドル角センサ(ハン
ドル切れ角検出手段)48Bで検出された、ハンドル角
(ハンドル切れ角)θhと車両の車体固有の定数、即
ち、車両のホイールベース,トレッド幅,スタビリティ
ファクタ,ハンドルギヤ比等とから、車両の旋回時にお
ける車幅方向中心の車体速を算出し推定する。なお、こ
の旋回時における車幅方向中心の車体速を算出する機能
を、旋回車体速算出手段という。
【0071】つまり、内輪側の旋回半径RRiは内輪側
の車体速vbdに基づいて、次式(2.1.3.1)により算出
できる。
【0072】 RRi=(1+A*vbd2 )*Lw/δ =(1+A*vbd2 )*Lw*GR/θh ・・・(2.1.3.1) ただし、δ:実舵角(=θh/GR) 〔但し、θh:ハンドル角(ハンドル切れ角)〕 A:スタビリティファクタ Lw:ホイールベース Lt:トレッド幅 GR:ハンドルギヤ比 また、車体速vbdと車体速vbとの比は、内輪側の旋
回半径RRiと車体中心の旋回半径RRとの比に等し
く、旋回半径RRは旋回半径RRiを用いて次式(2.1.
4.1)のように示すことができるので、車体速vbは、車
両の右旋回時,直進時,左旋回時に分けて、次式(2.1.
4.2)〜(2.1.4.4)のように、車体速vbdとハンドル角
θhとから求めることができる。
【0073】 RR=RRi+Lt/2 ・・・(2.1.4.1) 右旋回時 vb=(RRi+Lt/2)/RRi*vbd ・・・(2.1.4.2) 直進時 vb=vbd ・・・(2.1.4.3) 左旋回時 vb=(RRi−Lt/2)/RRi*vbd ・・・(2.1.4.4) なお、車体中心の旋回半径RRはこのような車体速vb
に基づき次式(2.1.4.5)のように示すことができる。
【0074】 RR=(1+A*vb2 )*Lw/δ =(1+A*vb2 )*Lw*GR/θh ・・・(2.1.4.5) さらに、第3車輪速v3(=vbd)にかかる車輪が大
きくスリップした場合には、第3車輪速v3は実際の車
体速から大きく外れることになる。このような場合は、
この第3車輪速v3にかかる車輪の車輪加速度が、車両
の実際の前後加速度(前後G)との間に大きな差異が生
じてくるので、この車輪加速度の実加速度との比較によ
り、車輪が大きくスリップし、第3車輪速v3(=vb
d)を車体速と採用できないことを判定することができ
る。
【0075】そこで、本車体速演算装置では、車体に設
けられた前後加速度センサ48Cによる前後Gと、第3
車輪速の車輪の車輪加速度d(v3)/dtとによっ
て、車輪が大きくスリップしているか否かを判定して、
こうしたスリップの判定時には、前後加速度センサ48
Cによる前後Gを用いて車体速を推定して、これを車輪
速に基づいた車体速に代えて、この前後Gに基づく車体
速を採用するようにしている。
【0076】タイヤにスリップが発生すると車輪速v3
が急増し、第3車輪速の車輪の車輪加速度d(v3)/
dtと前後加速度センサ48Cによる前後Gとの差が所
定量以上に大きくなるとタイヤがスリップしている非線
形域と考えられる。このときには、前後G推定車体速度
vbsを算出して、車輪速v3に基づいた推定車体速
(車輪速対応車体速)vbd(=v3)に代えてこの前
後G推定車体速度vbsを採用する。
【0077】この車体速度は、後にも説明する(項目、
2.2.2参照)が、次式のように算出される。 vbs==gxSL・t+vbSL 但し、vbSL:タイヤのスリップ発生時における車体速
vbSL gxSL:タイヤのスリップ発生時に検出された前後G また、このスリップ発生の直後には、車輪速v3の増加
により、この車輪速v3と前後G推定車体速度vbsと
の差、即ち、後述するタイヤの縦滑り係数dvvbsが
増大するが、スリップが収束していくと車輪速v3が減
少して前後G推定車体速度vbsに接近してくるので、
タイヤの縦滑り係数dvvbsが減少する。
【0078】したがって、タイヤの縦滑り係数dvvb
sに基づいて、タイヤのスリップ状態、即ち、タイヤが
スリップしていない線形域か、或いは、タイヤがスリッ
プしている非線形域かを推定することができる。ここで
は、縦滑り係数dvvbsが一定以下に収束したら、タ
イヤがスリップしていない線形域に戻ったので、前後G
推定車体速度vbsの採用から、車輪速v3に基づいた
推定車体速(車輪速対応車体速)vbd(=v3)に復
帰させるようにしている。
【0079】2.1.5前後加速度(gx) まず、次式(2.1.5.1)のようにして、所定の周期で算出
される単純算出車体速vbdの変化から算出し、こうし
て求められた前後加速度gxdは変動が激しいため、ロ
ーパスフィルタで処理して〔(2.1.5.2)参照〕、前後加
速度gxを得る。
【0080】 gxd=vbd−ovbd ・・・(2.1.5.1) ただし、ovbd:1周期又は所定周期前の単純算出車
体速vbd gx=LPF〔gxd〕 ・・・(2.1.5.2) 2.1.6基準横加速度(gy) 基準横加速度(gy)は、旋回時の車両に働く遠心力と
考えると、半径RRiと推定車体速vbとから算出で
き、半径RRiは上述のようにハンドル角θhから求め
られるので、基準横加速度(gy)は、次式(2.1.6.1)
のようにして、ハンドル角θh,推定車体速vbから計
算で求める。この基準横加速度(gy)を計算横Gとも
いう。
【0081】 gy=vb2 /RR =vb2 *θh/〔(1+A*vb2 )*Lw*GR〕・・(2.1.6.1) 2.1.7後輪基準回転速度差(dvhf) 後輪基準回転速度差dvhfは、旋回時に旋回半径RR
に応じて、図7に示すような関係から幾何学的に算出で
きる後輪の回転速度差であり、式(2.1.4.5)の関係を利
用して、まず、次式(2.1.7.1)のような推定車体速度v
b,ハンドル角度θhの関数により回転速度差dvhr
を求める。前述した後左車輪速度vrl,後右車輪速度
vrrはローパスフィルタ処理が施されており、これら
と位相を合わせるために、回転速度差dvhrをローパ
スフィルタで処理して〔(2.1.7.2)参照〕、後輪基準回
転速度差dvrfを得る。なお、このような後輪基準回
転速度差dvrfを算出する機能を、目標値算出手段と
いう。
【0082】 dvhr=Lt*vb/RR =Lt*vb*θh/〔(1+A*vb2 )*Lw*GR〕 ・・・(2.1.7.1) dvhf=LPF〔dvhr〕 ・・・(2.1.7.2) 2.1.8前輪基準回転速度差(dvhff ) 前輪基準回転速度差dvrff は、旋回時に旋回半径R
R,舵角δに応じて、図7に示すような関係から幾何学
的に算出できる前輪の回転速度差であり、式(2.1.4.5)
の関係を利用して、まず、次式(2.1.8.1)のように、推
定車体速度vb,ハンドル角度θhの関数から、回転速
度差dvhを求めて、これを、ローパスフィルタで処理
して〔(2.1.8.2)参照〕、前輪基準回転速度差dvrf
fを得る。
【0083】 dvrf=Lt*vb*cos(θh/GR)/RR =Lt*vb*cos(θh/GR)*〔θh/〔(1+A*vb2 )*Lw*GR〕 ・・・(2.1.8.1) dvrff=LPF〔dvrf〕 ・・・(2.1.8.2) 2.1.9前輪左右の速度差(dvfd) 前左車輪速度vfl及び前右車輪速度vfrとの差を演
算して、旋回時等に発生する後輪左右の実速度差dvf
d(=vfl−vfr)を得る。
【0084】2.1.10トルク移動量(taf:一時
遅れ値) トルク移動は、その指令値が出力されてから実際の車両
挙動として現れるまでに時間遅れが生じることから、ト
ルク移動の指令値taにローパスフィルタをかけて位相
を合わせ〔(2.1.10.1)参照〕、トルク移動量tafを得
る。 taf=LPF〔ta〕 ・・・(2.1.10.1) 2.2ドリフト判定ロジック 本制御では、車両がドリフトしようとしているか否かを
判定して、この判定結果を左右輪のトルク移動制御を通
じた車両の運動制御に用いる。このため、本制御では、
図8に示すような各処理によってドリフト判定を行なっ
ている。なお、車両がドリフト状態であるか非ドリフト
状態であるかの判定を行なう機能については、ドリフト
判定手段(旋回状態判定手段)という。
【0085】つまり、本制御では、タイヤが横滑りや縦
滑りを生じた場合にドリフトが発生すると判定する。タ
イヤの横滑りは、計算横Gと実横Gとの関係が非線形に
なった場合に判定でき、タイヤの縦滑りは、推定車体速
度vbと後述する前後G推定車体速度vbsとの関係が
非線形になった場合に判定できる。通常は、車両のドリ
フト時には、横滑りや縦滑りを伴うので、本制御では両
者を考慮する。
【0086】そこで、本制御では、図8に示すように、
タイヤの横滑り状態に応じた係数(タイヤの横滑り係
数)dgy及びタイヤの縦滑り状態に応じた係数(タイ
ヤの縦滑り係数)dvvbsに基づいて、車輪の滑り度
合としてのドリフト判定係数srpを設定(算出)しこ
れを出力するとともに、さらに、このドリフト判定係数
srpに基づいてドリフト補正係数srp1〜srp5
を設定する。なお、このような車輪の滑り度合としての
ドリフト判定係数srpを設定する機能を、滑り度合検
出手段という。また、このようなドリフト判定係数sr
pをトルク移動制御に反映させる制御については、滑り
対応制御ともいう。
【0087】2.2.1タイヤの横滑り係数(dgy) 本制御では、前述のように、ハンドル角θhと推定車体
速vbとから計算横G、即ち、基準横加速度gyを計算
するが、この一方で、横Gセンサにより、実際の横加速
度(実横G)rgyを検出する。車両が横滑りすること
なく走行している場合には、計算横Gと実横Gとの関係
が線形になる。そこで、ドリフト判定を行なうために、
計算横Gと実横Gとを比較する。
【0088】しかし、計算横G(gy)は、ハンドル角
θh等の入力情報から横Gを算出しており、ハンドルに
応じて車両に横Gが生じるまでには、位相遅れが生じる
ので、本制御では、計算横Gをローパスフィルタでフィ
ルタ処理して、位相合わせを行なう〔(2.2.1.1)参
照〕。 gyf=LPF〔gy〕 ・・・(2.2.1.1) また、タイヤの影響やギヤ比等の違いにより、線形領域
でも計算横G(gy)と実横G(rgy)との間に、誤
差が生じるので、次式(2.2.1.2)のように係数kにより
実横G(rgy)を補正して係数合わせを行なう。
【0089】 rgyh=k*rgy ・・・(2.2.1.2) これにより、位相を合わせた計算横G(gyf)と係数
を合わせた実横G(rgyh)とを比較することができ
るが、ここでは、次式(2.2.1.3)で算出される計算横G
(gyf)と実横G(rgyh)とを無次元化した値
(タイヤの横滑り係数)dgyに基づいて、計算横Gと
実横Gとの間に生じる非線形、即ち、タイヤの横方向に
生じる非線形を判定する。
【0090】図9は実横G(rgy)と計算横Gとの対
応例を示す図であり、タイヤの横滑り等がなければ、直
線Aのように、実横G(rgy)と計算横Gとが線形の
関係になるが、実際には、タイヤのグリップ限界を過ぎ
ると横滑り等を生じて、実横Gは計算横Gのようには増
加しない。高μ路では曲線Bのように横Gの高い領域ま
で線形が保たれるが、低μ路では曲線Cのように横Gの
低い領域で線形を保てなくなってしまう。
【0091】タイヤの横滑り係数dgyは、次式(2.2.
1.3)のように定義する。 dgy=|(gyf−rgyh)/rgyh| ・・・(2.2.1.3) ただし、このようなタイヤの横滑り係数dgyの計算に
は、次式(2.2.1.4)のような計算開始条件、及び、次式
(2.2.1.5)のようなクリヤ条件が設けられている。これ
は、実横G(rgyh)の大きさや、計算横Gと実横G
との差(gyf−rgyh)の大きさが、一定以上大き
くならないと車両にドリフトが生じるおそれがないの
で、このような場合には、横滑り係数dgyの計算を行
なわないようにして、計算頻度を低減しているのであ
る。
【0092】|rgyh|<a〔m/s2 〕and |gy
f−rgyh|<b〔m/s2 〕 ただし、a,bは定数 のとき、 dgy=0 ・・・・・・・・・・・・(2.2.1.4) 一般に、実横Gと計算横Gとの線形領域を過ぎると、実
横Gは計算横Gのようには増加しないので、上式(2.2.
1.3)は、次のように変形できる。
【0093】 gyf=(1+dgy)rgyh ・・・(2.2.1.3.a) 線形領域を脱した際には、dgyは0から次第に増加し
ていき、上式(2.2.1.3.a)の関係は、例えば図9中の直
線Dのように示すことができる。そこで、理論上は、横
滑り係数dgyが0以外になったら線形がくずれたとも
判定できるが、実際には、実横Gや計算横Gについて位
相合わせや係数合わせを行なっても、常に完全にマッチ
ングさせることは困難なので、実際に線形領域にあって
も、横滑り係数dgyが生じる(0以外になる)ことが
多い。このため、本制御では、図10に示すように、横
滑り係数dgyが第1所定値(dgy1)以下ならば線
形領域、横滑り係数dgyが第2所定値(dgy2)以
上ならば完全非線形領域として、横滑り係数dgyが第
1所定値と第2所定値との間にあると、第2所定値に近
づくにしたがって、非線形度合が高まっているものとす
る。
【0094】2.2.2タイヤの縦滑り係数(dvvb
s) 本制御では、前述のように、4輪のうちの3番目に速い
車輪速v3に基づいて推定車体速vbを算出するが、タ
イヤが大きくスリップしたらこのような車輪速v3に基
づく車体速vbは実車速よりも大きいものになってしま
う。そこで、タイヤのスリップ発生を推定したら、車輪
速ではなくこの時の車速と前後Gとに基づいて、前後G
推定車体速度vbsを算出する。
【0095】この前後G推定車体速度vbsは、前後G
センサで検出した車体の前後Gに基づいてタイヤのスリ
ップ発生時における車体速vbSLと前後G(gx)SL
検出値とから次式(2.2.2.1)により算出する。なお、t
はスリップ発生後の経過時間であり、車輪速(例えば、
3番目に速い車輪速v3)が急増した場合にスリップが
発生したと推定することができる。
【0096】 vbs==gxSL・t+vbSL ・・・(2.2.2.1) タイヤの縦滑り係数dvvbsは、上述のように算出さ
れる前後G推定車体速度vbsと、これと同時に検出さ
れる3番目に速い車輪速v3とに基づいて次式(2.2.2.
2)により算出するが、この算出値dvvbsdに関する
ノイズ影響等を考慮して、これを更にローパスフィルタ
でフィルタリングして〔(2.2.2.3)参照〕、タイヤの縦
滑り係数dvvbsを求める。
【0097】 dvvbsd=v3−vbs ・・・(2.2.2.2) dvvbs=LPF〔dvvbsd〕 ・・・(2.2.2.3) 前後G推定車体速度vbsについては、例えば実際の車
体速度VRがほぼ一定で走行中に極低μ路に進入してタ
イヤにスリップが発生しその後このスリップが収束して
いく場合には、タイヤにスリップが発生すると車輪速v
3が急増して、前後G推定車体速度vbsが算出される
ようになる。
【0098】このスリップ発生の直後には、車輪速v3
が増加するため、この車輪速v3と前後G推定車体速度
vbsとの差、即ち、タイヤの縦滑り係数dvvbsが
増大する。そして、スリップが収束していくと車輪速v
3が減少して前後G推定車体速度vbsに接近してくる
ので、タイヤの縦滑り係数dvvbsが減少する。した
がって、タイヤの縦滑り係数dvvbsに基づいて、タ
イヤのスリップ状態、即ち、タイヤがスリップしていな
い線形域か、或いは、タイヤがスリップしている非線形
域かを推定することができる。
【0099】そこで、理論上は、縦滑り係数dvvbs
が0以外になったら非線形になったとも判定できるが、
実際には、スリップ発生の推定や前後G推定車体速度v
bsの推定にも誤差が生じるので、本制御では、図11
に示すように、縦滑り係数dvvbsが第1所定値(d
vvbs1)以下ならば線形領域、縦滑り係数dvvb
sが第2所定値(dvvbs2)以上ならば完全非線形
領域として、縦滑り係数dvvbsが第1所定値と第2
所定値との間にあると、第2所定値に近づくにしたがっ
て、非線形度合が高まっているものとする。
【0100】2.2.3ドリフト判定係数(srp) 本装置では、上述のような横滑り係数dgyと縦滑り係
数dvvbsとを共に考慮してドリフト判定を行なう。
そこで、次式(2.2.3.1)により、横滑り係数dgyと縦
滑り係数dvvbsとを合成した値(これを、ドリフト
判定係数という)srp(=srpd2 )を算出して、
ドリフト判定に用いる。
【0101】 srp=(a・dgy)2 +(b・dvvbs)2 ・・・(2.2.3.1) ただし、a,bは円にするための係数調整 このドリフト判定係数srpは、図12に示すようなド
リフト判定円(摩擦円)によって評価することができ
る。図12は、横滑り係数dgyを係数調整した値(a
・dgy),縦滑り係数dvvbsを係数調整した値
(b・dvvbs)をそれぞれ横軸,縦軸として直行座
標を示し、ドリフト判定係数srpは、この座標におけ
る原点からの距離の二乗に相当する。
【0102】ドリフト判定円は、このような座標の原点
を中心とした円であって、第1の半径r1 ,第2の半径
2 (r1 <r2 )の各円からなる。そして、半径r1
の円内を線形領域(タイヤがスリップしていない領
域)、半径r1 の円外を非線形領域(タイヤがスリップ
している)、そして、非線形領域のうちの半径r2 の円
外をドリフト領域と設定している。
【0103】つまり、ドリフト判定係数srpの平方根
(srp1/2 )が半径r1 内(即ち、srp1/2 ≦r
1 )であれば線形領域、srp1/2 が半径r1 よりも大
(即ち、srp1/2 >r1 )であれば非線形領域、さら
に、srp1/2 が半径r2 よりも大(即ち、srp1/2
>r2 )であればドリフト領域にあるとしている。な
お、非線形領域のうち、r1 <srp1/2 ≦r2 の領域
は、完全なドリフトではないが、ドリフト判定係数sr
pに相応した度合のドリフト傾向にあるものとする。
【0104】例えば図13は、ドリフト判定係数srp
に対するドリフト判定の対応を示すもので、srpが半
径r1 2以下(即ち、srp≦r1 2)であれば線形領域、
srpが半径r2 2よりも大(即ち、srp>r2 2)であ
ればドリフト領域、srpがr1 2<srp≦r2 2の領域
は、完全なドリフトではないが、ドリフト判定係数sr
pに相応したドリフト度合であるとしている。
【0105】(ドリフト対応制御開始条件)ドリフト判
定係数srpが所定値以上で、且つ、カウンタステアが
切られてこのカウンタステアのハンドル角速度が所定速
度以上に速ければ、ドリフト走行と判定する(ドリフト
判定手段又は旋回状態判定手段)。なお、カウンタステ
アが切られたと判定するのは操舵角が中立位置を越えた
場合、即ち、計算横Gの方向と実横Gの方向とが逆の場
合とする。即ち、次の3つの式の条件がいずれも同時に
成立した場合に、ドリフト走行と判定してドリフト対応
制御(滑り対応制御)を開始する。なお、このようなド
リフト対応制御(滑り対応制御)の開始を判定する機能
を開始判定手段という。 ・ドリフト判定係数srpが所定値以上であること srp>srp0 ・・・(2.2.6.1) ・計算横G(gy)の方向と実横G(rgyh)の方向
とが逆であること gy・rgyh<0 ・・・(2.2.6.2) ・ハンドル角速度Δθhが所定速度Δθ1 以上であるこ
と Δθh≧Δθ1 (deg/s) ・・・(2.2.6.3) また、上記3つの式の条件が同時に成立しない場合であ
っても、ドリフト判定係数srpが所定値以上のときに
ドリフト走行と判定してもよい。なお、ハンドル角速度
Δθh,Δθ1 はそれぞれdθh,dθ1 とも表記す
る。
【0106】(ドリフト対応制御終了条件)操舵角が再
び中立位置に戻ったときに、即ち、計算横Gの方向と実
横Gの方向とが等しくなったとき、ドリフト走行終了と
判定して、ドリフト対応制御を中止する。なお、このよ
うなドリフト対応制御(滑り対応制御)の終了を判定す
る機能を終了判定手段という。 ・計算横G(gy)の方向と実横G(rgyh)の方向
とが同方向であること gy・rgyh>0 ・・・(2.2.6.4) また、上述の条件式によりドリフト走行でない判定され
ると、ドリフト判定係数srpは零に設定される(sr
p=0)。
【0107】2.2.6旋回横G(ドリフト対応,gg
y) ところで、本制御では、旋回時に車両に加わる横加速度
(旋回横G)に基づいたトルク移動制御があり、例えば
タックイン対応制御や加速旋回制御がこれに相当する。
この旋回横Gは前述の計算横Gや実横Gが対応するが、
タイヤが路面をしっかりとグリップして走行している時
(グリップ走行時)には計算横Gと実横Gとの差がない
ので、計算横Gも実横Gとともに車両の挙動に対応する
ものになり、旋回横Gとして実横Gよりも処理速度の速
い計算横Gを用いることができる。しかし、ドリフト走
行時には計算横Gと実横Gとの間に大きな差が生じるの
で、計算横Gは用いることができず、この場合には、旋
回横Gとして車両の挙動に対応した実横Gを用いる必要
がある。
【0108】そこで、本装置では、通常は計算横Gを使
用して、この計算横Gでは実情に対応できない場合に実
横Gを用いるようにしている。このため、ドリフト対応
制御開始条件でドリフト走行と判定されると、旋回横G
として計算横Gの採用から実横Gの採用へと切り替わ
り、ドリフト対応制御終了条件でドリフト走行終了と判
定されると、実横Gの採用から計算横Gの採用へと復帰
するように設定されている。
【0109】なお、横Gの選択は、横G選択係数dor
iにより表し、計算横G選択時にはdori=0とし、
実横G選択時にはdori=dori1(定数)とす
る。ドリフト対応の旋回横G:ggyは、横G選択係数
doriにより、次式のように示すことができる。 ggy=〔dori・rgyh+(dori1−dor
i)・gy〕/dori1 ただし、gy:計算横G,rgyh:実横G さらに、このようなドリフト対応にかかる旋回横Gの選
択例を図18を参照して説明する。図18中、実線は計
算横G(gy)を、破線は実横G(rgyh)を示し、
図示するように、車両の旋回時には車両に横Gが発生
し、グリップ走行時には計算横Gと実横Gとの差がない
が、ドリフト状態になると実横Gは大きな変化がないの
に計算横Gは急変する。このように計算横Gが急変する
のは、ドリフト状態になるとドライバがハンドル操作を
加えるためであり、ハンドル操作が加えられると、式
(2.1.6.1)のようにハンドル角θhに基づいて算出され
る計算横Gが大きく変化するのである。特に、ドリフト
時に、カウンタステアが切られると計算横Gは、実横G
と逆方向へ変化する。この計算横Gが実横Gと逆方向へ
変化して、計算横Gが実横Gと同方向になるまでの間だ
け、即ち、図18中に「ドリフト制御中」と示す期間だ
け、計算横Gに代えて実横G入力を採用する。
【0110】2.3車両運動制御ロジック 前述のように、本動力伝達制御装置では、制御モードと
して、目標回転数差追従制御(目標ΔN追従制御)と、
加速旋回制御と、タックイン対応制御と、操舵過渡応答
制御とが設けられているが、ここで、これらの各制御に
ついて詳細に説明する。
【0111】2.3.1目標ΔN追従制御 目標ΔN追従制御は、ヨーレートフィードバック制御と
しての作用(ヨーレートFBC作用)とLSDとしての
作用(LSD作用)との両方を狙った制御であり、式
(2.1.7.2)により前述のようにして得られる後輪基準回
転速度差(理論値,dvhf)と後輪の左右輪の速度差
(実速度差,dvrd)との差をなくすように制御を行
なう。このため、図14,図15の破線のブロックB3
1内に示すようにして、μに対応した複数の制御量(高
μ路用制御量tbh,低μ路用制御量tbl)が設定さ
れる。
【0112】これらの制御量は、例えば特開平7−10
8840号公報に開示されている方法により求められる
が、高μ路用の制御量と低μ路用の制御量とは左右輪の
回転速度差に対するゲイン特性が異なって設定される。
また、ドリフト判定係数srpなどによりドリフト走行
が判定されると、理論値dvhfが零となるようにドリ
フト判定係数srp1により調整し、左右輪の回転速度
差をなくすように制御を行なう。
【0113】また、高μ路用制御量及び低μ路用制御量
をドリフト判定係数srp2,srp3によりゲイン調
整を行ないドリフト走行に適した制御量を算出する。
【0114】2.3.2加速旋回制御 加速旋回制御は、前述のように急旋回時のアンダステア
傾向の増加を抑制する制御であり、この制御が必要とな
るのは、車両のスタビリティが非線形となる場合であ
る。つまり、図19に示すように、球心加速度(即ち、
旋回Gに相当する)と操舵比との関係が線形領域を外れ
た場合(破線部参照)には、車両の旋回半径が拡大して
しまう。これは、急旋回時には車両の操舵特性がアンダ
ステア側に強まるためである。
【0115】前述したように、急旋回時には、目標ΔN
追従制御において、旋回外輪側へトルクを移動させて旋
回方向のモーメントを発生させて前輪のコーナリングフ
ォースを増大させているが、目標ΔN追従制御はフィー
ドバック制御のため若干の反応遅れが生じる。そこで、
このような急旋回時には、旋回外輪側へトルクを移動さ
せる加速旋回制御を行なって、旋回方向へ向けてヨーモ
ーメントを発生又は増加させ、前後加速度の大きい領域
での前輪のコーナリングフォースを増大させてアンダス
テア化を抑制するようにしているのである。
【0116】(1)加速旋回制御量(teh,tel) 本制御では、図14,図15のブロックB32内に示す
ように、旋回横G(ggy)が所定値以上のとき、加速
旋回時制御の基本制御量tehd,teldを設定す
る。また、この制御量はタックイン対応制御中でないこ
とを条件に出力される。なお、基本制御量tehd,t
eldは、図16,図17に示すようなマップにより旋
回横G(ggy)が所定値以上のときに急旋回と判定し
て旋回横G(ggy)に基づいて設定されるので、操舵
応答性が良くなる。なお、図16は高μ路用マップ(即
ち、高路面摩擦抵抗用マップ)、図17は低μ路用マッ
プ(即ち、低路面摩擦抵抗用マップ)であり、これらの
マップにそれぞれ基づいて旋回横G(ggy)に対応す
る基本制御量(制御量)、即ち、高μ路用基本制御量
(高路面摩擦抵抗対応制御量)tehd,低μ路用基本
制御量(低路面摩擦抵抗対応制御量)teldを設定す
る。
【0117】図16,図17に示すように、横G(gg
y)の小さい領域においては同様な旋回横G(ggy)
に対して低路面摩擦抵抗用マップの方が高路面摩擦抵抗
用マップよりも大きい制御量を、横G(ggy)の大き
い領域においては同様な旋回横G(ggy)に対して高
路面摩擦抵抗用マップの方が低路面摩擦抵抗用マップよ
りも大きい制御量を与える。また、図16,図17に示
すように、各マップには、旋回横G(ggy)の小さい
領域で制御量を0とする不感帯領域が設けられ、制御の
安定化が図られている。なお、図16中の鎖線は低路面
摩擦抵抗用マップ(図17参照)の特性を示し、図17
中の鎖線は高路面摩擦抵抗用マップ(図16参照)の特
性を示す。
【0118】なお、本実施形態においては、旋回横G
(ggy)が所定値以上のときに急旋回と判定している
が、旋回横G(ggy)が微小でも検出されると旋回外
輪の回転推進力を増大せしめるように制御量を算出して
もよい。そして、ドリフト走行と判定されると旋回横G
として実横Gを採用して制御量を算出する。
【0119】また、ドリフト走行と判定されると加速旋
回制御量teh,telをドリフト補正係数srp5に
よりゲイン調整してドリフト走行に適した制御量を算出
する。例えばドリフト走行時には、加速旋回制御量te
h,telを零に設定するように構成してもよい。
【0120】2.3.3タックイン対応制御 前述のように、減速旋回時には加速旋回とは逆に前輪の
コーナリングフォースの増大に伴って車両の操舵特性が
オーバステア傾向に強まり、車両がタックインを生じや
すくなる。前述したように、減速旋回時には、目標ΔN
追従制御において、旋回内輪側へトルク移動させて旋回
抑制方向のヨーモーメントを発生させて、これにより、
オーバステア化を抑制しているが、目標ΔN追従制御
は、フィードバック制御のため、若干の反応遅れが生じ
る。
【0121】そこで、減速旋回時には、旋回内輪側へト
ルクを移動させることで、旋回抑制方向へのヨーモーメ
ントを発生又は増加させるタックイン対応制御を行な
い、前輪のコーナリングフォースを減少させてオーバス
テア化を抑制する。これにより、車両の旋回挙動を制御
して、車両のタックインやタックインによるスピン等を
回避する。
【0122】これらの制御量については、例えば特開平
7−108840号公報に開示されている方法により、
高μ路用の制御量tdhと低μ路用の制御量tdlとが
求められる。また、加速旋回制御と同様に、ドリフト走
行と判定されると旋回横Gとして実横Gを採用して制御
量を算出する。
【0123】また、ドリフト走行と判定されるとタック
イン対応制御量tdh,tdlをドリフト補正係数sr
p5によりゲイン調整してドリフト走行に適した制御量
を算出する。例えばドリフト走行時には、タックイン対
応制御量tdh,tdlを零に設定するように構成して
もよい。また、タックイン対応制御において、加速旋回
制御と同様に、旋回横G(ggy)の小さな領域におい
ては、低路面摩擦抵抗用マップ(低μ路用マップ)の方
が高路面摩擦抵抗用マップ(高μ路用マップ)よりも大
きい制御量を与えるようにしてもよい。あるいは、旋回
横G(ggy)の小さな領域に不感帯を設け、高路面摩
擦抵抗用マップ(高μ路用マップ)の方が低路面摩擦抵
抗用マップ(低μ路用マップ)よりも大きい制御量を与
えるようにしてもよい。
【0124】2.3.4操舵過渡応答制御 操舵過渡応答制御は、操舵過渡時に行なう制御であり、
図14,図15のブロックB33内に示すように操舵角
の変化、即ち、操舵角速度に比例するように制御を行な
う。つまり、ECU42内には、操舵過渡応答制御量
(過渡的制御量)を設定する機能、即ち、手段操舵過渡
応答制御量設定手段(過渡的制御量算出手段)を有して
おり、操舵過渡応答制御量(操舵角速度比例制御量)t
cを設定しうるようになっている。このため、まず、操
舵角速度dθhに応じた基本制御量tchd,tcld
を設定し、これに、車速に応じた補正、ハンドルの切り
込みや切り戻しに応じた補正、及びドリフト補正係数4
(srp4)によりドリフト補正を施し、こうして得ら
れた制御量tch,tclにより制御を行なう。
【0125】これらの制御量については、例えば特開平
7−108840号公報に開示されている方法により、
高μ路用の制御量tchと低μ路用の制御量tclとが
求められる。また、ドリフト走行と判定されるとタック
イン対応制御量tch,tclをドリフト補正係数sr
p4によりゲイン調整してドリフト走行に適した制御量
を算出する。例えばドリフト走行時には、タックイン対
応制御量tch,tclを零に設定するように構成して
もよい。
【0126】2.4路面μ推定(本車両用路面摩擦係数
推定装置の説明) トルク移動制御において、走行する道路が滑りやすいか
否か、即ち、路面摩擦抵抗の状態によっても、制御効果
が異なってくるので、本装置(車両用左右輪間動力伝達
制御装置)には、車両用路面摩擦係数推定装置がそなえ
られ、この車両用路面摩擦係数推定装置で、路面摩擦抵
抗をあらわす路面摩擦係数(以下路面μともいう)μを
推定するように構成されている。
【0127】本車両用路面摩擦係数推定装置では、路面
μの推定を、定常旋回時のμ推定,発進時のμ推
定,非線形時のμ推定の3段階について行なう。つま
り、これらの定常旋回時,発進時,非線形時の各
段階は、旋回横Gと車速とに関して図20に示すような
領域に存在する。なお、の発進時のμ推定は、路面μ
に関する初期値を設定するものである。また、の非線
形時とは、車両がハンドル操舵に対して非線形となる場
合である。ここでは、これらの各場合において、路面μ
判定係数(路面摩擦係数、即ち、路面μの度合を表す係
数)γを求め、この路面μ判定係数γ値より各制御量の
出力ゲイン値(出力値)を決定する。なお、本車両用路
面摩擦係数推定装置については、路面μ推定装置,路面
μ判定装置、又は、路面摩擦係数検出手段,路面μ検出
手段ともいう。
【0128】2.4.1定常旋回時の路面μ推定 車両運動制御におけるトルク移動量は、路面μ(路面摩
擦係数)の高低によってその最適値が異なる。そこで、
本車両用路面摩擦係数推定装置では、定常走行時(特
に、定常旋回時)において、路面の凹凸による車輪速の
振動成分に応じたパラメータ(路面の凹凸状態を示すパ
ラメータ)、即ち、車輪速度差β〔ただし、ここでは、
後述するように車輪速度差βの振動成分βppを用い
る〕と、路面の滑り易さに応じたパラメータ(路面の滑
り易さを示すパラメータ)、即ち、車輪(タイヤ)のグ
リップ領域での駆動力に対するスリップ率の増加の割合
である路面μ判定値α〔ただし、ここでは、後述するよ
うに路面μ判定値αの平均値αhを用いる〕とから、フ
ァジィ推論により路面状況を推測し、その頻度をカウン
タ(学習機能)により求め路面μを決定するようにして
いる。
【0129】そこで、本車両用路面摩擦係数推定装置
は、図27に示すように、機能構成されている。図27
において、201は後輪の平均速度vr,前輪の平均速
度vfから前後輪の平均速度差β2〔=(vr−vf)
/K,K:定数〕を求める演算部である。202は前後
輪の車輪速度差βを求める車輪速度差演算部であり、こ
の演算部202で、後輪左右の速度差dvrd,前輪左
右の速度差dvfdから算出された駆動力差の回転数差
ddv(=dvrd−dvfd)から車輪速度差β(d
dv/K,K:定数)を算出する。
【0130】204は路面μ判定値αを求める路面μ判
定値演算部であり、この演算部204では、トルク移動
量tafによる速度差ddvfを推定車体速vbで割る
ことで求めるが、トルク移動量tafは前述のように位
相を合わせを行なったトルク移動量の一時遅れ値として
求められ、速度差ddvfは、旋回補正回転数差演算部
206において、基準回転数差演算部205で後輪基準
回転速度差dvhfと前輪基準回転速度差dvhffと
から算出された基準回転数差ddvh(=dvhf−d
vhff)と、演算部203で算出された駆動力差の回
転数差ddvとの差ddvfd(=ddv−ddvh)
をローパスフィルタで処理して求める。
【0131】また、207は路面μ判定部であり、後述
する路面μ判定判定条件が成立するか否かを判定する
が、この路面μ判定部207では、各種の車両状態検出
手段で検出された車両の走行状態、即ち、トルク移動量
taf,路面μ判定値α,ブレーキスイッチ情報bks
w,ハンドル角速度dθh,ドリフト判定係数srp,
基準横加速度gy等の情報に基づいて判定を行なう。こ
の路面μ判定判定条件には、車両が定常走行(ここで
は、定常旋回走行)であるかの条件も含まれる。
【0132】211はスリップ差率βの最大振幅βpp
を算出する演算部(凹凸状態パラメータ演算部)であ
り、一定時間(サンプリング時間)におけるスリップ差
率βの最大振幅βppを算出するが、この演算を所定周
期毎に行なうことで、この所定周期で最大振幅βppを
更新する。212は路面μ判定値αの平均値αhを算出
する演算部(滑り易さパラメータ演算部)であり、一定
時間(サンプリング時間)における路面μ判定値αの平
均値αhを算出するが、この演算も所定周期毎に行なう
ことで、この所定周期で平均値αhを更新する。
【0133】このような凹凸状態パラメータ演算部21
1,滑り易さパラメータ演算部212は車両の定常時
(ここでは、定常旋回時)のパラメータを算出するの
で、これらを定常パラメータ算出手段と称する。また、
凹凸状態パラメータ演算部211は、路面μ判定部で路
面μ判定判定条件が成立すると判定されたら車輪速度差
演算部202で算出されたスリップ差率βを用いるが、
路面μ判定判定条件が成立しないと判定されると演算部
201で算出された前後輪の平均速度差β2を用いて最
大振幅βppを算出する。
【0134】また、滑り易さパラメータ演算部212
は、路面μ判定部で路面μ判定判定条件が成立すると判
定された場合のみ、路面μ判定値演算部204からの路
面μ判定値αを取り込んで平均値αhを算出する。な
お、路面μ判定値演算部204からの路面μ判定値α
は、リミッタ208で所定αmax 以下に値を制限された
上で、演算部212に入力されるようになっており、過
大な路面μ判定値(信号エラー等も含む)を取り込まな
いことで平均値αhの算出精度を確保している。
【0135】また、220は路面指標算出手段であり、
この路面指標算出手段220では、上記の両パラメー
タ、即ち、スリップ差率βの最大振幅βpp,路面μ判
定値αの平均値αhの値から路面状態を一元的に表す他
のパラメータ、即ち、高μ路度合(高μ路),中μ路度
合(中μ路),低μ路度合(低μ路)の各状態に対応し
た指標(ここでは、ファジィ推論を用いるので、この指
標を適合度という)を算出する。
【0136】230は路面摩擦係数算出手段であり、こ
の路面摩擦係数算出手段230では、路面指標算出手段
220により算出された指標(適合度)を継続して累積
的に求めてこれを累積評価する、いわゆる学習機能によ
り路面摩擦係数を示す値(路面μ判定係数)γ1を算出
する。なお、このような車両の定常走行時に推定する路
面μ判定係数γ1を第1のパラメータといい、この第1
のパラメータとしての路面μ判定係数γ1を算出する機
能、即ち、定常パラメータ算出手段210(211,2
12),路面指標算出手段220,路面摩擦係数算出手
段230等から構成される機能部分を、定常パラメータ
算出手段240という。
【0137】そして、図35に示すように、この定常パ
ラメータ算出手段240で算出された第1のパラメータ
としての路面μ判定係数γ1と、後述する特定パラメー
タ算出手段(車両の定常走行以外の特定走行中における
走行状態からパラメータ算出する手段)250で算出さ
れた第2のパラメータとしての路面μ判定係数γ2と
を、路面摩擦係数算出手段260で総合(選出)して路
面摩擦係数を示す値(路面μ判定係数)γを算出する。
【0138】つまり、定常走行時には定常パラメータ算
出手段240で算出された路面μ判定係数γ1を路面μ
判定係数γとして選出し、特定運転時には特定パラメー
タ算出手段250で算出された路面μ判定係数γ2を路
面μ判定係数γとして選出するのである。なお、図35
に示すブロックB81は、特定パラメータ算出手段25
0としての機能と路面摩擦係数算出手段260としての
機能の一部を併せ持ち、路面摩擦係数算出手段260
は、このブロックB81の機能の一部と選出器264と
から構成される。
【0139】以下、本車両用路面摩擦係数推定装置にお
いて、上述の各構成要素で行なわれる処理をそれぞれ説
明する。 (1)車輪速度差(路面凹凸度係数)β 駆動輪が路面に駆動力を伝達する際に、駆動輪は路面凹
凸によって車輪速が振動する。この車輪速の振動成分
は、左右輪の回転速度差によりとらえることができるの
で、本装置では、路面凹凸に応じた路面μの値を、左右
輪の回転速度差に基づいて推定する。
【0140】そして、ここでは、車輪速度差βを次式に
より求める。 β=ddv/K=(dvrd−dvfd)/K ・・・・・・(2.4.1.1) ただし、dvrd:後輪の左右輪回転速度差 dvfd:前輪の左右輪回転速度差 ここで、後輪の左右輪回転速度差dvrdから前輪の左
右輪回転速度差dvfdを減算することで得られる回転
速度差ddvを用いるのは、左右輪の回転速度差は車両
の荷重移動の影響を受けるので、この荷重移動の影響を
取り除くようにするためのものである。また、定数K
は、LSB合わせのためのものである。
【0141】(2)路面μ判定値α ところで、旋回時の左右輪のトルク移動による回転速度
差は、実回転数差(即ち、ddv)から基準回転数差
(即ち、理論上の回転速度差)を減算することで求める
ことができる。基準回転数差ddvhは、実回転数差と
同様に、次式(2.4.1.2) のように、後輪の基準回転速度
差dvhfから前輪の基準回転速度差dvhffを減算
することで得られる。
【0142】 ddvh=dvhf−dvhff ・・・・・・(2.4.1.2) そして、旋回時の回転速度差(この値は、荷重移動等に
対する補正が施されているので、旋回補正回転数差とい
う)ddvfは、次式(2.4.1.3) のように、実回転数差
ddvから基準回転数差ddvhを減算して得られる回
転数差ddvfdをさらにローパスフィルタで処理して
位相合わせを行なうことで得るようにしている〔(2.4.
1.4) 参照〕。
【0143】 ddvfd=ddv−ddvh ・・・・・・(2.4.1.3) ddvf=LPF〔ddvfd〕 ・・・・・・(2.4.1.4) 図28は、スリップ率差β′に対する駆動力の大きさの
変化の一例を示す図であり、ここで、スリップ率差β′
とは、回転数差ddvfを車体速度vbで除算したもの
で、次式により求められる。また、駆動力とは、車輪が
路面へ伝達する駆動力である。
【0144】 スリップ率差β′=回転数差/車体速度=ddvf/vb・・・(2.4.1.5) 図28中、曲線Hμは高μ路(摩擦係数の高い路面)の
特性を示し、曲線Lμは低μ路(摩擦係数の低い路面)
の特性を示す。図28に示すように、各路面とも、スリ
ップ率の小さな領域では、車輪(タイヤ)が路面をグリ
ップしている(グリップ領域)ので、駆動力がスリップ
率に対してほぼ線型に増加するが、スリップ率が大きく
なると、車輪(タイヤ)が路面をグリップしなくなるた
め(スリップ領域)、スリップ率が増加しても駆動力は
寧ろ低下していく特性がある。
【0145】そして、グリップ領域でのスリップ率に対
する駆動力の増加割合、即ち、特性線Hμ,Lμの傾き
αH ,αL に着目すると、高μ路(Hμ)と低μ路(L
μ)とではこのグリップ領域で傾きαH ,αL が異な
る。つまり、高μ路になるほど、この傾きαx が小さく
なるので、この傾きαx に基づいて路面μを推定するこ
とができる。このような傾きαx は、駆動力がT1から
T2へと増加した場合のスリップ率差β′の増加量と駆
動力増加量(トルク移動量)との比の値として次式のよ
うに表すことができる。なお、Tmはトルク移動量(T
m=T1−T2)とする。
【0146】 αx =β′/Tm ・・・・・・(2.4.1.6) 路面μ判定値αは、前述のグリップ領域でのスリップ率
差に対する駆動力の増加割合、即ち、傾きαx に各種の
補正を施した値に相当するが、この路面μ判定値αは、
次式のように、トルク移動量(位相を合わせを行なった
トルク移動量の一時遅れ値)tafによる速度差ddv
fを推定車体速vbで割ることで求めることができる。
【0147】 α=ddvf/taf/vb ・・・・・・(2.4.1.7) (3)路面μ判定条件 そして、上述のようにして算出された車輪速度差β,路
面μ判定値αに基づいて路面μ判定を行なうが、この路
面μ判定は、以下のような路面μ判定条件を満たしたと
きに行なう。
【0148】トルク移動量tafが所定値tax〔N
m〕以上であること〔taf≧tax(Nm)〕 これは、トルク移動量tafが所定値tax以下だと、
クラッチ部の押し付け力がばらついてトルク移動量が安
定しないため、トルク移動量が安定する領域で確実な判
定を行なおうとするものである。
【0149】路面μ判定値αが負でないこと〔α≧
0〕 これは、ハンドル操舵による切り返し時の応答遅れやタ
イヤの縦方向が非線形となるときには、路面μ判定値α
が負となるので、このような場合を除外するためであ
る。 ブレーキスイッチbkswがオフであること 制動時(即ち、ブレーキスイッチbkswがオンのと
き)には、制動力によりトルク移動量以外の速度差の影
響が現れるので、これを除外するためである。
【0150】前後G(gb)が所定の減速度g1(g
1は負の微小値)以上であること〔gb≧g1〕 これは、路面μ判定をタックイン対応制御の入らない範
囲に限定するためである。 ドリフト判定係数srpが所定値(例えばr1 2)以上
であること〔srp≧r1 2〕これは、タイヤの全方向が
グリップ領域にある場合に限定するためである。
【0151】旋回横G(gy)が所定値gy1よりも
小であること〔gy<gy1〕旋回横G(gy)が大き
くなると、即ち、旋回横G(gy)が所定値gy1以上
になると、旋回横G(gy)に対して車両のスタビリテ
ィファクタが非線形となり、線形領域を前提とした路面
μ判定の理論が成立しなくなるので、これを除外するた
めである。
【0152】(4)車輪速度差βの振動成分(βpp) 路面μ判定にあたり、上述のようにして算出された車輪
速度差βからその振動成分βppを算出して、この車輪
速度差の振動成分βppを用いる。これにより、車輪速
度差β自体を用いる場合よりも安定した判定データが得
られることになり、路面μ判定の精度を高めることがで
きる。この振動成分βppは、所定の周期T1 秒(T1
は例えば十数msec)毎に更新することとする。ここ
では、車輪速度差βをT1 秒毎にサンプリングしては、
例えば最新のN個(ここでは、N=12とする)の車輪
速度差βのサンプルを記憶して、この車輪速度差βの中
の最大値βmax 〔(2.4.1.8) 参照〕と最小値βmin
〔(2.4.1.9) 参照〕とから次式(2.4.1.10)により車輪速
度差の振動成分βppを算出する。
【0153】 βmax =max〔β(n−11),・・・β(n)〕 ・・・(2.4.1.8) βmin =min〔β(n−11),・・・β(n)〕 ・・・(2.4.1.9) ただし、β(n):現周期で得られた車輪速度差β β(n−k):現周期よりもk周期前に得られた車輪速
度差β βpp=〔βmax −βmin 〕 ・・・・・・・・・(2.4.1.10) (5)路面μ判定値αの平均値(αh) 路面μ判定値αの値は、平均値αhを算出してこの値α
hを路面μ判定に用いて、判定の信頼性を高めるように
している。ここでは、車輪速度差の振動成分βppと同
様に、所定の周期T1 秒毎にサンプリングされた最新の
N個(ここでは、N=12)の路面μ判定値αの平均値
を算出する〔(2.4.1.11)参照〕。
【0154】 αh=〔α(n−11)+α(n−10)+・・・+α(n)〕/12 ・・・・・・・・・(2.4.1.11) ただし、α(n):現周期で得られた路面μ判定値α α(n−k):現周期よりもk周期前に得られた路面μ
判定値α このようにして算出された路面μ判定値αの平均値αh
及び車輪速度差の振動成分βppに対する最終的に収束
するμ判定領域を示すと、図30のようになる。路面μ
判定平均値αh及び車輪速度差の振動成分βppがいず
れも小さい領域では高μ路、車輪速度差の振動成分βp
pの大きい領域では中μ路、車輪速度差の振動成分βp
pは小さいが路面μ判定平均値αhが大きい領域では低
μ路とそれぞれ判定され、車輪速度差の振動成分βpp
の中程度の領域では、路面μ判定平均値αhが小さけれ
ば高μ路又は中μ路、路面μ判定平均値αhが中程度な
らば高μ路又は中μ路又は低μ路、路面μ判定平均値α
hが大きければ中μ路又は低μ路、さらに、車輪速度差
の振動成分βppの小さく路面μ判定平均値αhが中程
度の領域では高μ路又は低μ路と判定される。
【0155】(6)ファジィ推論(メンバシップ関数,
hig3,mid3,low3) 路面μ判定値の平均値αh及び車輪速度差の振動成分β
ppから路面μ判定指標をつくるが、この路面μ判定指
標は、路面μ判定値αh及び車輪速度差の振動成分βp
pを入力条件としたファジィ推論にて求める。ここで
は、路面μ判定値の平均値αhに基づく各路面〔即ち、
高μ路,中μ路,低μ路〕への適合度hig1,mid
1,low1を求めるとともに、車輪速度差の振動成分
βppに基づく各路面〔即ち、高μ路,中μ路,低μ
路〕への適合度hig2,mid2,low2を求め、
最小法(minimum 法)により、各路面〔即ち、高μ路,
中μ路,低μ路〕毎に、これらの適合度のうちの小さい
方を選択して、その路面〔即ち、高μ路,中μ路,低μ
路〕に対する適合度(ファジィ数)hig3,mid
3,low3とする。
【0156】つまり、路面μ判定値の平均値αhに関し
て、図29の(A),(B),(C)に示すようなメン
バシップ関数を設定しており、図29(A)のメンバシ
ップ関数から路面μ判定値αhに対応した高μ路への適
合度hig1を求め、図29(B)のメンバシップ関数
から路面μ判定値αhに対応した中μ路への適合度mi
d1を求め、図29(C)のメンバシップ関数から路面
μ判定値αhに対応した低μ路への適合度low1をそ
れぞれ求める。
【0157】また、車輪速度差の振動成分βppに関し
て、図29の(D),(E),(F)に示すようなメン
バシップ関数を設定しており、図29(D)のメンバシ
ップ関数から車輪速度差の振動成分βppに対応した高
μ路への適合度hig2を求め、図29(E)のメンバ
シップ関数から車輪速度差の振動成分βppに対応した
中μ路への適合度mid2を求め、図29(F)のメン
バシップ関数から車輪速度差の振動成分βppに対応し
た低μ路への適合度low2をそれぞれ求める。
【0158】そして、高μ路への適合度hig1とhi
g2とを比較して、値の小さい方を高μ路適合度hig
3に選択する。また、中μ路への適合度mid1とmi
d2とを比較して、値の小さい方を中μ路適合度mid
3に選択する。さらに、低μ路への適合度low1とl
ow2とを比較して、値の小さい方を低μ路適合度lo
w3に選択する。
【0159】(7)カウンタ関数(hig,mid,l
ow) 上述のように、高μ路適合度hig3,中μ路適合度m
id3,低μ路適合度low3が求められると、これら
に基づいて各路面〔即ち、高μ路,中μ路,低μ路〕の
重み(hig,mid,low)をそれぞれ求める。こ
こでは、高μ路適合度hig3,中μ路適合度mid
3,低μ路適合度low3を継続して累積的に求めてこ
れを累積評価する、いわゆる学習機能を用いて重み(h
ig,mid,low)をそれぞれ求める。つまり、各
路面μのカウンタ値(経験値)Nh,Nm,Nl〔これ
らを総称してNiともいう。(i=h,m,l)〕を設
定し、上述のようにして得られた高μ路適合度hig
3,中μ路適合度mid3,低μ路適合度lowによっ
て、このカウンタ値(経験値)Nh,Nm,Nlをそれ
ぞれを増減させて、高μ路の重みhig,中μ路の重み
mid,低μ路の重みlowをそれぞれ求める。
【0160】つまり、高μ路適合度hig3,中μ路適
合度mid3,低μ路適合度low3に関する判定値と
して、それぞれ、h1 ,h2 ,h3 ,h4 (h1 <h2
<h 3 <h4 )、m1 ,m2 ,m3 ,m4 (m1 <m2
<m3 <m4 )、l1 ,l2,l3 ,l4 (l1 <l2
<l3 <l4 )を設定しており、各適合度hig3,m
id3,low3をこれらの判定値と比較して、図31
及び以下に示すようにカウンタ量を更新する。なお、n
nは自然数である。
【0161】高μ路 hig3>h4 のとき、 Nh=Nh+nn h3 <hig3≦h4 のとき、 Nh=Nh+1 h2 <hig3≦h3 のとき、 Nh=Nh h1 <hig3≦h2 のとき、 Nh=Nh−1 hig3≦h1 のとき、 Nh=Nh−nn ただし、カウンタ範囲は、 0≦Nh≦Nhmax 中μ路 mid3>m4 のとき、 Nm=Nm+nn m3 <mid3≦m4 のとき、 Nm=Nm+1 m2 <mid3≦m3 のとき、 Nm=Nm m1 <mid3≦m2 のとき、 Nm=Nm−1 mid3≦m1 のとき、 Nm=Nm−nn ただし、カウンタ範囲は、 0≦Nm≦Nmmax 低μ路 low3>l4 のとき、 Nl=Nl+nn l3 <low3≦l4 のとき、 Nl=Nl+1 l2 <low3≦l3 のとき、 Nl=Nl l1 <low3≦l2 のとき、 Nl=Nl−1 low3≦l1 のとき、 Nl=Nl−nn ただし、カウンタ範囲は、 0≦Nl≦Nlmax ・高μ路の重みhig,中μ路の重みmid,低μ路の
重みlowの算出 このように、各路面μに応じたカウンタ値(経験値)N
h,Nm,Nlが求められると、これらのカウンタ値N
h,Nm,Nlに応じて、各路面μの重みhig,mi
d,lowをマップにより求める。
【0162】つまり、図32の(A)に示すマップによ
り、高μ路のカウンタ値Nhから高μ路の重みhigを
求め、図32の(B)に示すマップにより、中μ路のカ
ウンタ値Nmから中μ路の重みmidを求め、図32の
(C)に示すマップにより、低μ路のカウンタ値Nlか
ら低μ路の重みlowを求める。 (8)路面μ判定係数γの演算 このように、高μ路の重みhig,中μ路の重みmi
d,低μ路の重みlowが求められたら、これらの重み
hig,mid,lowの重量平均値γを次式から求め
て、この重量平均値γを路面μ判定係数γとする。
【0163】 γ=(w1*hig+w2*mid+low)/(hig+mid+low+ α) ・・・・・・・・・(2.4.1.12) なお、上式のw1,w2は、重量平均値γの算出にかか
る重量値であり、w1は重みhigの重量値、w2は重
みmidの重量値、また、重みlowの重量値は1であ
り、重量値は、w1が最も大きく次いでw2が大きくな
っている(w1>w2>1)。また、αは調整値であ
り、例えばα=1とする。
【0164】各路面の重み、即ち、高μ路の重みhi
g,中μ路の重みmid,低μ路の重みlowがそれぞ
れhig1 ,mid1 ,low1 であった場合には、各
路面の重みに各重量値を掛けた値(面積)は、図33
(A)に示すように、それぞれ、Sh,Sm,Slとな
る。そして、γは、これらの面積値Sh,Sm,Slの
和Sh+Sm+Slを、値(hig+mid+low+
α)で割ったものなので、重量平均値(路面μ判定係
数)γは、図33(B)の横軸上の値として求められ
る。
【0165】2.4.2非線形旋回時の路面μ推定 次に、非線形旋回時の路面μ推定を説明する。非線形旋
回か否かの判定はタイヤの横滑り係数dgyに基づく
が、この非線形旋回時の路面μは、横滑り係数dgyが
非線形の大きさとなったときの実横G(rgy)の大き
さに基づいて以下のように推定する。ここでは、図34
に示すように、非線形旋回時に、強制低μ判定条件が成
立した場合には低μ路判定を行ない、強制高μ判定条件
が成立した場合には高μ路判定を行なう。
【0166】(1)強制低μ判定条件 強制低μ判定条件は、以下のような各条件がいずれも成
立することになっている。 ・横滑り係数dgyが非線形の大きさとなっていること
〔dgy>dgy1〕 ・実横G(rgy)の大きさが設定値(rgy1)未満
であること〔|rgy|<rgy1〕。 ・ハンドル角速度dθhが設定値(dθh1)未満であ
ること〔dθh<dθh1〕。 ・スリップ率差の振動成分βppが設定値(βpp1)
未満であること〔βpp<βpp1〕。 ・車体速vbが設定値(vb1)未満であること〔vb
<1vb〕。 ・上記の各条件がいずれも成立した状態が所定の継続時
間ct1(ct1は例えば100msce)以上継続す
ること。
【0167】以上の条件(アンド条件)が成立すると、
完全な低μ路と判定して、路面μ判定係数γ,各路面μ
に応じたカウンタ値Nh,Nm,Nlをそれぞれ次のよ
うに設定する。 γ=0,且つ,Nh=0,且つ,Nm=0,且つ,Nl
=Nlmax (2)強制高μ判定条件 強制高μ判定条件は、横滑り係数dgyが非線形となっ
たときの実横G(rgy)の値のみを条件とする。つま
り、実横G(rgy)が予め設定された設定値rgy2
よりも大きいこと〔|rgy|>rgy2〕を条件とし
ている。実横G(rgy)が所定値rgy2以上になる
のは、高μ路でないとあり得ないためにこのような条件
を設定しているのである。
【0168】また、この高μ判定条件が成立したからと
いって、急激に高μ路制御に移行したのでは制御の急変
を招き好ましくないので、高μ判定条件が成立した場
合、以下のように、路面μ判定係数γ(γ2),各路面
μに応じたカウンタ値Nh,Nm,Nlをそれぞれ次の
ように設定する。なお、mmは前述のnnよりも大きい
自然数である。
【0169】γ2=γ1+10,且つ,Nh=Nh+m
m,且つ,Nm=Nm−mm,且つ,Nl=Nl−mm ただし、γ2≦γmax ,Nh≦Nhmax ,Nm≧0,N
l≧0とする。このようにして、徐々に高μ路に近づけ
るようにする。 2.4.3発進時の路面μ推定 (1)μスプリット路判定条件 ここでは、図34に示すように、発進時に左右輪の路面
摩擦係数(路面μ)の異なる場合(μスプリット路)か
否かを判別して、この判別に基づいて路面μ推定を推定
する。μスプリット路の判別は、主としてトルクの移動
方向tafと後輪の左右輪速度差dvrdとに基づい
て、以下のように行なう。ただし、右旋回及び右モーメ
ントを正とする。
【0170】条件1 taf>taf1 且つ dvrd<−vd1 又は、 taf<−taf1 且つ dvrd>vd1 (taf1は正の設定値,vd1は正の設定値) つまり、トルク移動方向tafが左向き(taf>ta
f1)で且つ左右輪速度差dvrdが負(dvrd<−
vd1)〔即ち、右輪が左輪よりも高速回転している〕
か、又は、トルク移動方向tafが右向き(taf<−
taf1)で且つ左右輪速度差dvrdが正(dvrd
>vd1)〔即ち、左輪が右輪よりも高速回転してい
る〕か、のいずれかが成立すること。このことは、換言
すると、トルク移動した先の車輪が滑っていることを示
している。
【0171】車体速vbが所定値vb2未満(vb<
vb2)の低車速であること。これは発進時の条件とな
る。 操舵角θhが所定値θh1未満(θh<θh1)の低
舵角であること。これは直進状態である条件となる。 スロットル開度tpsが所定値tps1よりも大きい
(tps>tps1)こと(即ち、発進操作が或るこ
と)。
【0172】上記の各条件がいずれも成立した状態が
所定の継続時間ct2(ct2は例えば100mse
c)以上継続すること。 以上の条件(アンド条件)が成立すると、μスプリット
路であり、完全な低μ路と判定して、係数myu,路面
μ判定係数γ(γ2),各路面μに応じたカウンタ値N
h,Nm,Nlをそれぞれ次のように設定する。
【0173】myu=1,且つ,γ2=0,且つ,Nh
=0,且つ,Nm=0,且つ,Nl=Nlmax ただし、myuは強制高μ判定条件,強制中μ判定条件
とのハンチングを防ぐための係数であり、車体速vbが
所定値vb3以下(vb≦vb3)でトルク移動量ta
fの大きさが設定値taf2以下(|taf|≦taf
2)のときには、myu=0とする。
【0174】また、μスプリット路と判定されない場合
にも、発進時には、以下のような強制低μ判定条件,強
制中μ判定条件,強制高μ判定条件を設定しており、各
条件が成立すると、それぞれ強制的に、低μ路,中μ
路,高μ路と判定する。 (2)強制低μ判定条件 ここでは、直進発進時に1輪でも滑りが生じたら、強制
的に低μ路(即ち、μスプリット路)と判定する。
【0175】したがって、強制低μ判定条件は、以下の
ようになる。 操舵角θhが所定値θh1未満(θh<θh1)の低
舵角であること(即ち、直進時であること)。 車輪速度差の振動成分βppが所定値(βpp2 )未
満であること(βpp<βpp2 )(即ち、振動成分β
ppが大きくないこと)。
【0176】スロットル開度tpsが所定値(tps
1)よりも大きい(tps>tps1)こと(即ち、発
進操作があること)。 車体速vbが所定値vb2未満(vb<vb2)の低
車速であること(即ち、発進時であること)。 1輪でも滑りが生じていること。つまり、各車輪速v
fl,vfr,vrl,vrrのいずれかが、車体速v
bよりも所定速度(v1)以上高くなっていること(v
fl>v1,又はvfr>v1,又はvrl>v1,又
はvrr>v1)。
【0177】上記の各条件がいずれも成立した状態が
所定の継続時間ct3(ct3は例えば100msc
e)以上継続すること。 以上の条件(アンド条件)が成立すると、完全な低μ路
と判定して、係数myu,路面μ判定係数γ(γ2),
各路面μに応じたカウンタ値Nh,Nm,Nlをそれぞ
れ次のように設定する。
【0178】myu=1,且つ,γ2=0,且つ,Nh
=0,且つ,Nm=0,且つ,Nl=Nlmax (3)強制中μ判定条件 発進時に車輪の振動成分が大きいときには、強制的に中
μと低μとの中間的な値をとるようにする。ただし、強
制低μ判定及び強制高μ判定がなされたときには、my
u=1からmyu=0になるまで(即ち、vb≦vb
3,且つ,|taf|≦taf2となるまで)は、この
判定を行なわない。
【0179】したがって、強制中μ判定条件は以下のよ
うになる。 車輪速度差の振動成分βppが所定値(βpp2 )よ
りも大であること(βpp>βpp2 )(即ち、振動成
分βppが大きいこと)。 スロットル開度tpsが所定値(tps1)よりも大
きい(tps>tps1)こと(即ち、発進操作がある
こと)。
【0180】車体速vbが所定値vb2未満(vb<
vb2)の低車速であること(即ち、発進時であるこ
と)。 myu=0であること。 上記の各条件がいずれも成立した状態が所定の継続時
間ct4(ct4は例えば200msce)以上継続す
ること。
【0181】以上の条件(アンド条件)が成立すると、
路面μ判定係数γ(γ2),各路面μに応じたカウンタ
値Nh,Nm,Nlをそれぞれ次のように設定する。 γ2=γ1 ,且つ,Nh=0,且つ,Nm=Nmmax ,
且つ,Nl=Nlmax だだし、γ1 はγmax の1/4程度の値とする。
【0182】(4)強制高μ判定条件 発進時にある一定の加速度以上で車輪が滑らなかったと
きには、強制的に高μ判定とする。ただし、強制低μ判
定がなされたときには、myu=1からmyu=0にな
るまで(即ち、vb≦vb3,且つ,|taf|≦ta
f2となるまで)は、この判定を行なわない。
【0183】したがって、強制高μ判定条件は以下のよ
うになる。 車輪速度差の振動成分βppが所定値(βpp2 )未
満であること(βpp>βpp2 )(即ち、振動成分β
ppが大きくないこと)。 スロットル開度tpsが所定値(tps2)よりも大
きい(tps>tps2)こと(即ち、一定以上の加速
操作があること)。
【0184】車体速vbが所定値vb2未満(vb<
vb2)の低車速であること(即ち、発進時であるこ
と)。 myu=0であること。 計算前後G(gb)が所定値gb1以上(gb≧gb
1)であること(即ち、発進時であること)。
【0185】前輪の平均速度vfが車体速vbに十分
に近いこと(|vf|<vb)且つ後輪の平均速度vr
が車体速vbに十分に近いこと(|vr|<vb)。こ
れらは、車輪が滑らないことを示す。 以上の条件(アンド条件)が成立すると、高μと判定し
て、路面μ判定係数γ,各路面μに応じたカウンタ値N
h,Nm,Nlをそれぞれ次のように設定する。
【0186】myu=1,且つ,γ2=0,且つ,Nh
max =Nhmax ,且つ,Nm=0,且つ,Nl=0 2.4.4出力値設定 (1)各制御量の出力値設定(γtb,γtc,γt
d,γte,tb,tc,td,te) 前述のように、各制御量としては、目標ΔN追従制御量
tbh,tbl,加速旋回制御量teh,tel,タッ
クイン対応制御量tdh,tdl,操舵過渡応答制御量
tch,tclと、それぞれ、高μ路用制御量(高路面
摩擦抵抗対応制御量)と低μ路用制御量(低路面摩擦抵
抗対応制御量)とが設定されるが、これらの両制御量
を、路面摩擦係数算出手段で算出された路面摩擦係数と
しての路面μ判定係数γに応じて補間的に反映させなが
ら出力制御量tadを算出するように構成されている。
【0187】つまり、図35に示すように、各制御量と
もに、これらの高μ路用のものと低μ路用のものとの間
で、路面μ判定係数γの値に応じて無段階にゲイン調整
した値を出力値(出力ゲイン)とする。
【0188】例えば、高μ路用制御量(高μ路用制御ゲ
イン)をtxh,低μ路用制御量(低μ路用制御ゲイ
ン)をtxlとすると、出力値(出力ゲイン)txは、
路面μ判定係数γから次式で算出する。なお、路面μ判
定係数γは0〜γmax の値とする。なお、ここでは、路
面μ判定係数γが0の場合を低μ路、路面μ判定係数γ
がγmax の場合を高μ路とし、低μ路と高μ路との間、
即ち、路面μ判定係数γは0〜γmax の中間の値の場合
を中μ路という。
【0189】 tx={γ・txh+(γmax −γ)・txl}/γmax ={(txh−txl)・γ+γmax ・txl}/γmax ={(txl−txh)・(γmax −γ)+γmax ・txh}/γmax ・・・・・・(2.4.1.1) また、ここでは、制御ゲイン(制御量)txを、高μ路
側にシフトするように設定したり、低μ路側にシフトす
るように設定したりして、出力値の微調整を行なってい
る。
【0190】制御ゲインtxを高μ側に設定(目標Δ
N追従制御:tb) 高μ側への出力値微調整式は、補正後の出力値をtx
a,出力値微調整係数をa(a>1)とすると、次式の
ようになる。 txa={a(txh−txl)・γ+γmax ・txl}/γmax ={a・γ・txh+(γmax −a・γ)・txl}/γmax ただし、0≦a・γ≦γmax ・・・・・・(2.4.1.2) なお、0≦a・γ≦γmax により、txaはtxhで上
限クリップされる。
【0191】このように、高μ・低μの両制御量の補間
的反映に際し、高μ路用制御量の反映度合が低μ路用制
御量よりも大きくなるように設定されているが、このよ
うな高μ側への設定は、目標ΔN追従制御の制御ゲイン
tbに関して行なう。 制御ゲインtxを高μ側と低μ側との中間に設定〔操
舵角速度比例制御(過渡応答制御):tc,タックイン
対応制御:td〕 この場合は、実質的には出力値微調整は行なわず、上式
(2.4.1.1)を用いて制御ゲインtxを算出する。このよ
うな算出は、操舵角速度比例制御(過渡応答制御)の制
御ゲイン(制御量)tc,タックイン対応制御の制御ゲ
イン(制御量)tdに関してそれぞれ行なう。
【0192】制御ゲインtxを低μ側に設定(加速旋
回制御:te)。 低μ側への出力値微調整式は、補正後の出力値をtx
b,出力値微調整係数をb(b>1)とすると、次式の
ようになる。 txb={b(txl−txh)・(γmax −γ)+γmax ・txh} /γmax =〔b・(γmax −γ)・txl +{γmax −b・(γmax −γ)}・txh〕/γmax ・・・・・・(2.4.1.3) なお、0≦b・γ≦γmax として、txbはtxlで下
限クリップされる。
【0193】このように、高μ・低μの両制御量の補間
的反映に際し、低μ路用制御量の反映度合が高μ路用制
御量よりも大きくなるように設定されているが、このよ
うな低μ側への設定は、加速旋回制御の制御ゲインte
に関して行なう。このような出力値微調整を適宜行なっ
て得られる出力値(出力ゲイン)tx,txa,txb
について、路面μに関して図示すると、図24のように
示すことができる。図24において、の一点鎖線は制
御ゲインtxを高μ側に出力値微調整した出力値txa
(即ち、目標ΔN追従制御量tb)の特性を示し、の
実線は制御ゲインtxを出力値微調整し無い場合の出力
値tx(即ち、タックイン対応制御量td,操舵過渡応
答制御量tc)の特性を示し、の破線は制御ゲインt
xを低μ側に出力値微調整した出力値txb(即ち、加
速旋回制御量te)の特性を示している。
【0194】なお、図24に示すように、路面μが低い
ほど(路面μ判定係数γが小さいほど)制御量(出力
値)txが小さくなるが、これは路面μが低いほど制御
効果が高くなるので、同様な制御効果を得るためには路
面μが低いほど制御量(出力値)txが小さくする必要
があるためである。また、目標ΔN追従制御量tbを中
μ路で高めているのは、目標ΔN追従制御は比較的路面
μが低くても車両の挙動安定性を保持しうる制御であ
り、むしろ中μ路ではこの目標ΔN追従制御を重視して
車両の挙動を積極的に安定させるようにしたいからであ
る。そして、加速旋回制御量teを中μ路で低下させて
いるのは、加速旋回制御量teは路面μが低くなると車
両の挙動安定性を確保しにくい性質があるためである。
【0195】また、図24における出力値txの特性に
おいて、例えば車両固有の定数などのパラメータによ
り、傾きを変更することも可能である。これにより、車
両に応じて制御のマッチング即ち出力値微調整を行なう
ことができ、より安定した制御を行なうことができる。
車両に応じて同じ基本ロジックを使用することができる
利点もある。
【0196】(2)ハイパス処理&最終出力値tad ここでは、応答遅れを解決するために、図35及び図3
6に示すように、目標ΔN追従制御量tb,タックイン
対応制御量td,加速旋回制御量teについて、ハイパ
ス処理を行なうようになっている。この処理は、例えば
速い操舵による高周波入力に対する制御遅れをハイパス
処理によって補正して、これらの各制御項の位相を進め
るために行なう。
【0197】つまり、アクチュエータ(回転推進力配分
調整機構)の駆動に際して、制御信号の出力に対してア
クチュエータの応答遅れが生じることは回避できない。
そこで、このアクチュエータの応答遅れが制御性能を低
下させないような処理を行なう必要がある。また、制御
信号の中には、例えばハンドル角又は操舵角(操舵角速
度を含む)θhやスロットル開度tpsといった運転操
作状態に基づいて算出された制御量(過渡的制御量)、
例えば操舵過渡応答制御量(操舵角速度比例制御量)t
cや、例えば左右輪回転速度差や車両に生じる横加速度
等の車両挙動に基づいて算出された制御量(車両挙動対
応制御量)、例えば目標ΔN追従制御量tb,タックイ
ン対応制御量td,加速旋回制御量teがある。運転操
作は本来制御指令の主要素であり、運転操作に応じた制
御量には特に指令の遅れは問題にはならないが、車両の
挙動は制御指令の結果として生じるものであるため、車
両挙動に基づいて設定される制御量は、制御信号を発し
た時点で既に遅れが生じており、これが問題となる場合
がある。
【0198】例えば、車両挙動の急変時には、このよう
な制御量の出力の遅れが制御性能を大きく低下させるこ
とになる。そこで、本装置では、例えば操舵入力に対す
る各制御応答の遅れを補正するために、車両挙動に応じ
た制御量、つまり、目標ΔN追従制御量tb,タックイ
ン対応制御量td,加速旋回制御量teについて、ハイ
パス処理を行なって、制御信号の出力を速めるようにし
ているのである。なお、上述のように、操舵過渡応答制
御量(操舵角速度比例制御量)tcは、位相を進める制
御なので補正の必要はなく、ハイパス処理は行なわな
い。
【0199】また、本制御では、各制御量tb,td,
te,tcを加算することで最終出力値tadを決定す
るようにしている。即ち、ECU42は、各種のパラメ
ータに基づいて各制御量tb,te,tdやtcを個々
に演算した上で、これらを統合して出力値tadを得る
出力制御量算出手段としての機構を果たしている。そこ
で、ここでは、ハイパス処理の必要な制御量tb,t
d,teについてはこれらを予め加算した上で、この加
算値tfd(=tb+td+te)にハイパス処理を行
なうようにしている。
【0200】・ハイパス処理 ハイパス処理は、ハイパスフィルタにより各制御出力の
うちの高周波成分のみを取り出す処理であるが、ここで
は、ハイパス処理を行なう制御量tb,td,teの加
算値tfdについてハイパス処理を行ない、ハイパス処
理値tffを得る。
【0201】 tfd=tb+td+te ・・・・・・(2.4.1.4) tff=HPF〔tfd〕 ・・・・・・(2.4.1.5) このハイパス処理により、図37(A)に示すような制
御出力信号tfdから図37(B)に示すようなハイパ
ス処理信号tffが出力される。つまり、ハイパス処理
では、制御出力信号tfdの微分値のうち大きさの大き
い部分のみが信号として出力されるようになる(ハイパ
ス処理値算出手段)。
【0202】さらに、このようにハイパス処理された処
理値tffをハイパス処理の対象となった制御出力信号
tfd(=tb+td+te)に加算して〔図37
(C)参照〕、出力制御量(総合値)tfを得る(出力
制御量演算手段)。 tf=tfd+tff ・・・・・・(2.4.1.6) なお、図37に示すように、処理値tffをゲイン(ハ
イパス係数)kfにより補正して(即ち、tff*kf
として)、他の制御量とのバランスを調整してもよい。
【0203】・最終出力値(tad)出力制御量演算手
段は、次式のように、出力制御量tfにハイパス処理を
行なわない操舵過渡応答制御量(操舵角速度比例制御
量)tcとを加算することにより、最終的な出力制御量
(最終出力値)tadを算出する。 tad=tf+tc ・・・・・・(2.4.1.7) ・リミッタ 左右輪間でのトルク移動制御では、トルク移動量が大き
過ぎると却って車両の挙動安定性を低下させるおそれが
あるので、本制御では、路面の摩擦係数状態(路面μ状
態)に応じて、左右輪間でのトルク移動量の大きさを最
大値(これを、limitとする)以内に制限するよう
にしている。
【0204】この制限値即ち最大値limitは、図3
6中のブロックB83内の図に示すように、路面μ判定
係数γに対応して直線LIMの関係に設定するようにな
っている。つまり、制限値limitは、次式により算
出する。 limit=mg・γ+tal1 ・・・・・・(2.4.1.8) ただし、mgは直線LIMの傾きであり、tal1はl
imitの最小値である。図36のブロックB83内に
示すように、この最小値tal1は、低μ路の路面μ判
定係数1に対応した制限値limitであり、さらに、
tal2は中μ路の路面μ判定係数γmid に対応した制
限値limitであり、tal3は高μ路の路面μ判定
係数γmax に対応した制限値limitである。なお、
中μ路の路面μ判定係数γmid は高μ路の路面μ判定係
数γmax の1/2に設定される(γmid =γmax /
2)。
【0205】このような制限値limitにより、最終
出力値tadは、次のように制限される。なお、次式は
最終出力値tadがトルク移動方向により負になる場合
も考慮したものである。 −limit≦tad≦limit ・・・・・・(2.4.1.9)
【0206】2.5アクチュエータ駆動 駆動処理(アクチュエータ駆動処理又は比例弁・方向弁
切換制御処理)では、図21に示すように、上記の出力
値(トルク移動量)tadを受けて、この出力値tad
から出力値tadに応じた方向及び量のトルク移動を行
なうためのアクチュエータ駆動信号に変換して、トルク
移動量に応じて比例弁106に比例弁制御信号を出力
し、トルク移動方向に応じて方向弁(方向切換弁)10
7に方向弁制御信号を出力して、これらの比例弁10
6,方向弁107を駆動させる。また、同時に、インジ
ケータランプ110に表示指令信号を出力する(符号1
06,107,110は図3参照)。
【0207】また、比例弁106,方向弁107の制御
は、例えば特開平7−156681号公報に開示されて
いるような方法により行なわれる。例えば比例弁106
に関しては、最終出力値taから、トルク移動−電流マ
ップ(図22参照)及び電流補正マップ(図23参照)
を用いて、目標電流basehに変換して制御を行な
う。
【0208】2.5.3インジケータ表示制御 ここで、本実施形態の車両用動力伝達制御装置の表示装
置にかかるインジケータ表示制御について説明する。本
車両用左右輪間動力伝達制御装置には、左右輪間でトル
ク移動制御(即ち、動力伝達制御)を行なっている際の
制御状態を、ドライバが把握できるように、図25に示
すような表示部202を有する表示装置(以下、インジ
ケータという)201がそなえられている。
【0209】この例では、表示部202は、LEDで構
成された3つの点灯部202A,202B,202Cか
らなる3ドット表示として構成されている。そして、制
御状態が弱(即ち、トルク移動量が小)のときには、第
1点灯部(LED1)202Aのみが点灯し、制御状態
が中(即ち、トルク移動量が中)のときには、第1点灯
部(LED1)202Aと第2点灯部(LED2)20
2Bとが点灯し、制御状態が強(即ち、トルク移動量が
大)のときには、第1点灯部(LED1)202A〜第
3点灯部(LED3)202Cまでの全てが点灯するよ
うになっている。これにより、制御状態を、点灯したド
ット数(LED数)として把握できるようになってい
る。
【0210】もちろん、制御状態が弱では第1点灯部
(LED1)202Aのみ、制御状態が中では第2点灯
部(LED2)202Bのみ、制御状態が強では第3点
灯部(LED3)202Cのみをそれぞれ表示させるこ
とも考えられるが、状態をより素早く把握できるように
するには、制御状態の強さに応じて表示ドット数を増加
させるほうが好ましい。
【0211】なお、このような表示装置としては、液晶
表示や電灯表示等のLED以外の表示手段を用いてもよ
く、また、ドット表示ではなくグラフ表示(例えば棒グ
ラフ)や数値表示等を用いてもよい。また、左輪用及び
右輪用の表示装置をそれぞれ備えるようにしてもよい。
この場合、トルク移動状態を明確に把握できる利点があ
る。
【0212】ところで、上述の制御状態の強さとは、ど
の程度の度合でトルク移動制御(動力伝達制御)を行な
っているかといった制御度合であるが、ドライバにとっ
て運転操作に役立つのは、トルク移動制御(動力伝達制
御)がどの程度に車両の挙動に作用しているかといった
制御効果である。そこで、この制御効果を把握できるよ
うに制御状態表示を行ないたい。
【0213】一方、通常の制御度合の指標としては、最
終的な制御量である出力値tadを用いるのが適してお
り、また、容易でもある。しかしなしがら、「発明が解
決しようとする課題」の欄でも述べたように、このよう
な制御量tadは、必ずしも制御効果に対応したものと
はならない。つまり、制御量tadは、車両の走行環境
の一種である路面μ(路面摩擦係数)に応じて設定され
るが、低μ路では高μ路に比べて制御効果が高くなるの
で、前述のように路面μが低いほど制御量tadは小さ
く設定される。したがって、このように制御量tadに
比例するように制御度合を表示した場合、低μ路では、
表示される制御度合が低いのに実際に現れる制御効果は
大きいといった事態を招いてしまう。逆に言えば、高μ
路では、表示される制御度合が高いのに実際に現れる制
御効果は小さいといった事態を招いてしまう。
【0214】そこで、本表示装置では、制御量tadそ
のものに直接対応するのではなく、その路面μ(路面摩
擦係数)における最大の制御量tadmax に対する設定
制御量tadの比(=tad/tadmax )に基づいた
表示量の表示を行なうようになっている。この最大制御
量tadmax は路面μに対応し、また、本装置では、路
面μ(路面摩擦係数)を示す量として、路面μ判定係数
γを用いているので、本表示装置では、制御量tadと
路面μ判定係数γとから表示量を設定するようになって
いる。なお、このように制御量tad等から表示量を設
定する(表示量に変換する)機能を、変換手段という。
【0215】この変換手段では、図26に示すように、
制御量tadの表示量判定基準値として、路面μ判定係
数γに応じて6種類のものが与えられるようになってい
る。図26においては、横軸が路面μ判定係数γをその
最大係数値γmax で除算した値(γ/γmax )となって
おり、縦軸が制御量tadの値となっている。そして、
図中の直線t1 〜t6 が各路面μ判定係数対応値(γ/
γmax )に対する表示量判定基準値を示している。特
に、低μ路(路面μ判定係数γが0の路面)では、表示
量判定基準値はtL1〜tL6となり、高μ路(路面μ判定
係数γがγmax の路面)では、表示量判定基準値はtH1
〜tH6となっている。なお、表示量判定基準値を示す直
線t1 〜t6 は、それぞれ点tL1〜tL6と点tH1〜tH6
とを結んだ直線となっている。
【0216】これらの表示量判定基準値のうち、t
2 (tL2,tH2を含む)はLED1を点灯するための基
準値(表示値)であり、t1 (tL1,tH1を含む)はL
ED1を消灯するための基準値(消灯値)である。ま
た、t4 (tL4,tH4を含む)はLED2を点灯するた
めの基準値(表示値)であり、t3 (tL3,tH3を含
む)はLED2を消灯するための基準値(消灯値)であ
る。そして、t6 (tL6,tH6を含む)はLED3を点
灯するための基準値(表示値)であり、t5 (tL5,t
H5を含む)はLED3を消灯するための基準値(消灯
値)である。
【0217】図示するように、路面μ判定係数γが小さ
いほど小さな制御量tadでも表示量が大きくなるよう
に設定されている。これは、路面μ判定係数γが小さい
ほど制御効果が大きくなるので、同様な制御効果を得る
ためには、路面μ判定係数γが小さいほど制御量tad
を小さく(勿論、最大制御量tadmax も小さく)設定
しているので、制御効果に着目すれば、路面μ判定係数
γが小さいほど小さな制御量tadでも表示量を大きく
する必要があるからである。
【0218】したがって、各基準値は、路面μ判定係数
γが小さいほど最大制御量tadmax が小さく設定され
るが、制御量tadから表示量に変換する変換ゲインを
考えると、これとは逆に、路面μ判定係数γが小さいほ
ど大きくなるように設定されることになる。また、点灯
するための基準値(表示値)が消灯するための基準値
(消灯値)よりも大きい値に設定されているのは、表示
を安定させるための所謂ヒステリシスを設けているので
あり、これにより、制御量tadが基準値の付近で微小
に変動しても表示状態は何ら変化せず安定した表示を実
現することができる。
【0219】3.本装置の動作及び本装置による効果 3.1本装置の動作 本装置は、以上のように構成されるので、例えば図38
に示すように、制御が行なわれる。つまり、まず、各種
初期設定入力のもとに制御が開始され、まず、ステップ
S10で、図6に示すような入力演算処理を実行する
(項目2.1入力演算処理を参照)。ついで、ステップ
S20で、この入力演算処理の結果に基づいて図8に示
すようなドリフト判定ロジックを実行する(項目2.2
ドリフト判定ロジックを参照)。さらに、ステップS3
0に進み、入力演算処理,ドリフト判定の結果に基づい
て車両運動制御ロジックを実行する(項目2.3車両運
動制御ロジックを参照)。
【0220】この車両運動制御ロジックでは、目標ΔN
追従制御(項目2.3.1目標ΔN追従制御を参照),
加速旋回制御(項目2.3.2加速旋回制御を参照),
タックイン対応制御(項目2.3.3タックイン対応制
御を参照),操舵過渡応答制御(項目2.3.4操舵過
渡応答制御を参照)の各制御量tb,td,te,tc
を算出するが、これらの各制御量tb,td,te,t
cは、図14に示すような高μ路制御ロジックと、図1
5に示すような低μ路制御ロジックとにより、高μ路に
おける各制御量tbh,tdh,teh,tch及び低
μ路における各制御量tbl,tdl,tel,tcl
として算出する。
【0221】そして、ステップS40に進み、μ判定ロ
ジックを実行する(項目2.4路面μ推定を参照)。こ
のμ判定ロジックでは、路面μ判定係数γを設定して
(ステップS50)、路面μ判定を行ない(ステップS
60)、各種出力値の設定を行なう(ステップS7
0)。ついで、ステップS80に進み、図21に示すよ
うにアクチュエータ駆動ロジックを実行する(項目2.
5アクチュエータ駆動を参照)。つまり、出力値(トル
ク移動量)tadを受けて、この出力値tadに応じた
トルク移動量に応じて比例弁106に比例弁制御信号を
出力し、出力値tadに応じたトルク移動方向に応じて
方向弁(方向切換弁)107に方向弁制御信号を出力
し、これらの比例弁106,方向弁107を駆動させ
る。また、同時に、インジケータランプ110に表示指
令信号を出力する。
【0222】このような処理は、判定ステップS90を
通じて、所要周期T1 毎に行なう。 3.2本装置による効果 3.2.2車両用路面摩擦係数推定装置の効果 車両用路面摩擦係数推定装置では、車輪速度差(路面凹
凸度係数)βという路面の凹凸状態を示すパラメータと
路面μ判定値αという路面の滑り易さを示すパラメータ
とに基づいて路面μ判定を行なうので、路面μ判定を的
確に行なうことができる。また、車輪速度差βを直接用
いずに車輪速度差βの振動成分βppを用いたり、路面
μ判定値αを直接用いずに路面μ判定値αの平均値αh
を用いて路面μ判定を行なうので、路面μ判定の精度,
信頼性を高めることができる。
【0223】そして、このような車輪速度差βの振動成
分βppや路面μ判定値αの平均値αhから、高μ路,
中μ路,低μ路の各状態(路面状態)に対応した指標
(適合度)を求めて、しかも、この指標(適合度)を継
続して累積的に求めて累積評価することで路面摩擦係数
(路面摩擦係数に応じた路面μ判定係数)γを算出する
ので、容易でしかも推定誤差が少なく適切な路面μ判定
係数γを得られるようになり、車両用左右輪間動力伝達
制御装置の制御性能の向上に大きく寄与する利点があ
る。
【0224】特に、本実施形態では、ファジィ推論を用
いており、高μ路,中μ路,低μ路の各状態(路面状
態)に対応した指標(適合度)を求めるメンバシップ関
数を車両の種類等に応じて設定することで、極めて的確
な路面μ判定係数γを容易に得ることができる。また、
上述のような車輪速度差βの振動成分βppや路面μ判
定値αの平均値αhに基づく路面μ判定係数γ(つま
り、γ1)の算出は、車両の定常走行時(特に、定常旋
回時)に行なっているので、信頼性のある路面μ判定係
数γを得ることができる。
【0225】さらに、このような定常走行時に得られる
路面μ判定係数γ1に対して、定常走行時以外の特定走
行時(具体的には、発進時や非線形走行時やμスプリッ
ト走行時)には定常走行時と異なる手法でそれぞれ路面
μ判定係数γ2を推定して、定常走行時に得られる路面
μ判定係数(第1のパラメータ)γ1と、特定走行時に
得られる路面μ判定係数(第2のパラメータ)γ2とを
総合(選出)して、最終的な路面μ判定係数γを得るよ
うにしているので、定常走行時以外を含むより広い走行
状態で路面摩擦係数の推定を行うことができ、車両用左
右輪間動力伝達制御装置の制御性能の向上により大きく
寄与する利点がある。
【0226】なお、路面μに応じたトルク移動制御によ
り、μスプリット状態では、低μ車輪側から高μ路車輪
側へとトルクを移動させるので、図5に示すように、高
μ路側の車輪から路面へ伝達される駆動力が増大するよ
うになり、車両の発進や加速をより速やかに、また、効
率よく行なうことができる。 3.2.3車両用路面摩擦係数(路面μ)対応制御の効
果 なお、本実施形態では、通常制御時(ドリフト制御時以
外)においては、路面摩擦係数が低いときには制御量が
小さくなるように路面摩擦係数が高いときには制御量が
大きくなるように設定されるとともに、ドリフト制御時
には、このような路面摩擦係数に応じた制御量変化が少
なくなるように制御量として中間的な値となるような補
正(ゲイン調整)を行なうことで、路面摩擦係数に応じ
た補正を抑制するようにしているが、本装置は、これに
限らず、ドリフト制御時には、この路面摩擦係数に応じ
た制御量補正を禁止して路面摩擦係数によって制御量が
変化しないようにした、中間的な制御量を与えるように
してもよい。
【0227】例えば、路面摩擦係数が高いときの基本制
御量が設定され、ドリフト制御時以外の通常制御時に
は、路面摩擦係数が低いときにはこの基本制御量を小さ
くなるような補正係数αで補正するとともに、ドリフト
制御時には、路面摩擦係数と関係ない値(補正係数β)
でこの基本制御量の補正を行ない中間的な値となるよう
にする。この場合、補正係数αは、路面摩擦係数に応じ
て1から最小値αmax (αmax <1)まで連続的に変化
し、補正係数βは、1よりも小さく最小値αmaxよりも
大きい固定値とする。
【0228】また、本装置では、高μ路用制御量(高路
面摩擦抵抗対応制御量)と低μ路用制御量(低路面摩擦
抵抗対応制御量)とを設定して、これらの制御量を、路
面摩擦係数算出手段で算出された路面摩擦係数としての
路面μ判定係数γに応じて補間的に反映させながら出力
制御量tadを算出するが、特に、目標ΔN追従制御量
tbについては、同様な差ddvrに対して高路面摩擦
抵抗用マップの方が低路面摩擦抵抗用マップよりも大き
い制御量を与え、且つ、高μ路用制御量の反映度合が路
面摩擦係数に比例して設定される反映度合よりも大きく
なるように、高μ路用制御量と低μ路用制御量とを路面
μ判定係数γに対する比例配分値よりもより高μ側へ設
定しているので、目標ΔN追従制御の制御ゲインtbが
比較的高めなものになる。
【0229】目標ΔN追従制御は、車輪速の回転速度差
を間にしながらの制御なので、路面摩擦係数が低い場合
にもその制御影響は想定領域から逸脱しにくい。そこ
で、そこで、上述のように、目標ΔN追従制御では、路
面摩擦係数に対する制御量を大きめに設定しながら、比
較的大きなトルク移動を行なうようにすることで、車両
挙動を速やかに目標のものにできるようになる利点が得
られるのである。
【0230】また、加速旋回制御量teについては、横
G(ggy)の小さい領域においては同様な旋回横G
(ggy)に対して低路面摩擦抵抗用マップの方が高路
面摩擦抵抗用マップよりも大きい制御量を与え、且つ、
低μ路用制御量の反映度合が路面摩擦係数に比例して設
定される反映度合よりも大きくなるように、高μ路用制
御量と低μ路用制御量とを路面μ判定係数γに対する比
例配分値よりもより低μ側へ設定しているので、加速旋
回制御量の制御ゲインteが比較的低めなものになる。
【0231】加速旋回制御などの横加速度をパラメータ
とするものは、特に、路面摩擦係数が低い場合には、図
9に示すように、計算横Gと実横Gとの関係が直ぐに非
線形領域にはいって制御影響が想定領域から逸脱し易
い。そこで、上述のように、加速旋回制御では、横Gの
小さい領域において低路面摩擦抵抗用マップの方が高路
面摩擦抵抗用マップよりも大きい制御量を与え、且つ、
低μ路用制御量(低路面摩擦抵抗対応制御量)の反映度
合が路面摩擦係数に比例して設定される反映度合よりも
大きくなるように設定しており、これにより、路面摩擦
係数が低い場合でも速やかに安定した制御を行なうこと
ができる。
【0232】また、路面摩擦係数が高い場合には、高μ
路用制御量(高路面摩擦抵抗対応制御量)の反映度合を
路面摩擦係数に比例して設定される反映度合よりも大き
くすることにより、横Gの小さい領域における制御を極
力減少させることができ、その分、エネルギロスを抑制
することができる。また、タックイン対応制御において
も、加速旋回制御と同様に設定することも可能であり、
この場合にも加速旋回制御の場合と同様の効果が得られ
る。
【0233】なお、このような路面摩擦係数に対する制
御量の微小調整は、目標ΔN追従制御や加速旋回制御に
限らず、路面摩擦係数の影響の出にくいものや出やすい
ものにそれぞれ適用することができる。また、制御量設
定マップには、不感帯領域が設けられているので、制御
が安定したものになる。
【0234】また、路面摩擦係数に対する制御量の微小
調整は、上述した実施形態に限定される必要はない。例
えば、左右輪間に回転速度差や横加速度などのパラメー
タに基づいて制御量を設定するための制御マップとし
て、高路面摩擦抵抗対応制御量を与える高路面摩擦抵抗
用マップと、低路面摩擦抵抗対応制御量を与える低路面
摩擦抵抗用マップとを設け、高路面摩擦抵抗対応制御量
及び低路面摩擦抵抗対応制御量を、路面摩擦係数に応じ
て補間的に反映させながら出力制御量を算出するととも
に、この両制御量の補間的な反映に際し、中路面摩擦抵
抗における高路面摩擦抵抗対応制御量及び低路面摩擦抵
抗対応制御量の反映度合を、車両固有の定数などのパラ
メータに応じて変化させるようにして調整してもよい。
この場合には、車両に応じたより適正な制御量を与える
ことができる。
【0235】なお、上記実施形態では、目標ΔN追従制
御量tbと加速旋回制御量teとを加算して加速急旋回
の旋回性能を確保するように構成したが、これについて
は、加速急旋回の開始直後は一時的に加速旋回制御量に
より制御を行ない、その後は、定常制御用の目標ΔN追
従制御量に切り換えるような制御にしてもよい。要する
に、急旋回開始直後から旋回外輪の回転力が増大される
ように制御することが重要なのである。
【0236】また、本実施形態では、4輪駆動車を対象
に説明したが、本車両用左右輪間動力伝達制御装置は、
前輪駆動車や後輪駆動車といった2輪駆動車の左右駆動
輪間や左右の従動輪間にそなえることができるほか、4
輪駆動車の前後輪間に適用することが考えられ、この場
合は、車両用動力伝達制御装置として構成される。な
お、本実施形態では、車両用路面摩擦係数推定装置にお
いてファジィ推論を用いているが、これに限定されるも
のではなく、路面の凹凸状態を示すパラメータ(βpp
が対応する)と路面の滑り易さを示すパラメータ(αh
が対応する)との値から路面状態を一元的に表す他のパ
ラメータの各状態(高μ路,中μ路,低μ路が対応す
る)に対応した指標(hig3,mid3,low3が
対応する)を算出できればよく、他の手法を用いてもよ
い。
【0237】また、本実施形態では、車両用左右輪間動
力伝達制御装置に車両用路面摩擦係数推定装置を用いて
いるが、車両用路面摩擦係数推定装置の用途はこれに限
定されないことは言うまでもない。
【0238】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の本
発明の車両用路面摩擦係数推定装置によれば、路面の凹
凸状態を示すパラメータと路面の滑り易さを示すパラメ
ータとに基づいて、定常走行時に車両の走行する路面の
摩擦係数を推定するため、路面摩擦係数の推定を精度良
く行なえ、また、算出された指標を継続して累積的に求
めて累積評価することで路面摩擦係数を算出するので、
路面摩擦係数の推定の信頼性を高めることができる。こ
れにより、例えば自動車における種々の走行制御をより
適切に行なうことができるようになる利点がある。
【0239】また、請求項2記載の本発明の車両用路面
摩擦係数推定装置によれば、定常走行時に第1のパラメ
ータを算出し、定常走行時以外の特定走行時に第2のパ
ラメータを算出して、第1のパラメータを継続して累積
的に求めて累積評価し、この累積した第1のパラメータ
と該第2のパパラメータとから路面の摩擦係数を推定す
るため、路面摩擦係数の推定を種々の走行状態で適宜に
しかも精度良く行うことができる。これにより、例えば
自動車における種々の走行制御をより一層適切に行なう
ことができるようになる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間動
力伝達制御装置をそなえた車両の駆動系の模式的な全体
構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間動
力伝達制御装置の回転推進力配分調整機構(トルク移動
機構)を示す模式的な構成図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間動
力伝達制御装置を回転推進力配分調整機構(トルク移動
機構)の油圧ユニット及び制御系の構成を示す模式図で
ある。
【図4】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間動
力伝達制御装置の制御ブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間動
力伝達制御装置の目的とする制御内容を説明する図であ
る。
【図6】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間動
力伝達制御装置の入力演算処理に関する制御ブロック図
である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間動
力伝達制御装置の入力演算処理に関して説明する図であ
る。
【図8】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間動
力伝達制御装置のドリフト判定処理に関する制御ブロッ
ク図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間動
力伝達制御装置のドリフト判定処理に関して説明する図
である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置のドリフト判定処理に関して説明する
図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置のドリフト判定処理に関して説明する
図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置のドリフト判定処理に関して説明する
図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置のドリフト判定処理に関して説明する
図である。
【図14】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の制御量算出処理(高μ路用処理)に
関する制御ブロック図である。
【図15】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の制御量算出処理(低μ路用処理)に
関する制御ブロック図である。
【図16】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の加速旋回制御にかかるマップ(高μ
路用マップ)を示す図である。
【図17】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の加速旋回制御にかかるマップ(低μ
路用マップ)を示す図である。
【図18】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置のドリフト対応制御を説明する図であ
る。
【図19】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の加速旋回制御を説明する図である。
【図20】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の路面μ判定を説明する図である。
【図21】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の駆動処理に関する制御ブロック図で
ある。
【図22】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の駆動処理に関して説明するマップを
示す図である。
【図23】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の駆動処理に関して説明するマップを
示す図である。
【図24】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の出力値微調整を説明する図である。
【図25】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の表示装置を示す模式的な図である。
【図26】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の表示制御を説明する図である。
【図27】本発明の一実施形態としての車両用路面摩擦
係数推定装置を説明する制御ブロック図である。
【図28】本発明の一実施形態としての車両用路面摩擦
係数推定装置を説明する図であり、車輪のスリップ率に
対する駆動力の大きさの変化の例を示す図である。
【図29】本発明の一実施形態としての車両用路面摩擦
係数推定装置によるファジィ推論を説明するメンバシッ
プ関数を示す図であり、(A),(B),(C)は路面
μ判定値αhに対する高μ路,中μ路,旋回時への適合
度を、(D),(E),(F)はスリップ率差の振動成
分βppに対する高μ路,中μ路,旋回時への適合度
を、それぞれ示す。
【図30】本発明の一実施形態としての車両用路面摩擦
係数推定装置による推定における面摩擦抵抗推定領域
(路面μ判定領域)を説明する図である。
【図31】本発明の一実施形態としての車両用路面摩擦
係数推定装置によるファジィ推論を説明する図である。
【図32】本発明の一実施形態としての車両用路面摩擦
係数推定装置によるファジィ推論を説明する図であり、
(A)は高μ路の重みhigに関し、(B)は中μ路の
重みmidに関し、(C)は低μ路の重みlowに関し
ている。
【図33】本発明の一実施形態としての車両用路面摩擦
係数推定装置による路面摩擦抵抗推定(路面μ判定係数
γの演算)を説明する図であり、(A),(B)はそれ
ぞれ推定の過程を説明する。
【図34】本発明の一実施形態としての車両用路面摩擦
係数推定装置による路面摩擦抵抗推定(路面μ判定)を
説明する制御ブロック図である。
【図35】本発明の一実施形態としての車両用路面摩擦
係数推定装置による路面摩擦抵抗推定(路面μ判定)に
基づいた出力値設定を説明する制御ブロック図である。
【図36】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の路面μ判定(路面摩擦係数判定)に
よる出力値に関する要部制御ブロック図である。
【図37】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置のハイパス処理を説明する図である。
【図38】本発明の一実施形態にかかる車両用左右輪間
動力伝達制御装置の動作の概要を示すフローチャートで
ある。
【符号の説明】
2 エンジン 4 トランスミッション 6 中間ギア機構 8 差動歯車機構〔センタディファレンシャル(センタ
デフ)〕 8A,8B デファレンシャルピニオン 8C,8D サイドギヤ 10 前輪用差動歯車機構〔フロントディファレンシャ
ル(フロントデフ)〕 12L,12R 車軸 14,16 前輪 18 ベベルギヤ機構 20 プロペラシャフト 22 ベベルギヤ機構 24 後輪用の差動歯車装置〔リヤディファレンシャル
(リヤデフ)〕 26L,26R 車軸 28,30 後輪 32 前輪用出力軸 34 後輪用出力軸 36 差動制限手段としてのビスカスカップリングユニ
ット(VCU) 42 制御手段(回転推進力配分制御手段)としての電
子制御ユニット(ECU,又はコントローラ) 48A 車輪速センサ 48B ハンドル角センサ(ハンドル切れ角検出手段) 48C 前後加速度センサ(前後Gセンサ) 48D 横加速度センサ(横Gセンサ) 48E スロットルポジションセンサ(TPS) 50 回転推進力配分制御機構(回転力調整手段,トル
ク移動機構) 51 デフキャリア 51A 壁部 52 入力軸 54 ドライブピニオンギヤ 56 クラウンギヤ 58 デファレンシャルケース(デフケース) 60A,60B デファレンシャルピニオン 62,64 サイドギヤ 66 左輪側回転軸 68 右輪側回転軸 70 変速機構 70A 増速機構 70B 減速機構 72,74,76 中間軸 78A,80A,82A ギヤ(サンギヤ) 78B,80B,82B ギヤ(プラネタリピニオン) 84 カウンタシャフト 86 3連ギヤ 90 伝達容量可変制御式トルク伝達機構 90L クラッチ(左クラッチ) 90R クラッチ(右クラッチ) 90AL,90AR,90BL,90BR クラッチ板 92 クラッチケース 38 油圧ユニット 101 蓄圧部 102 制御圧出力部 103 アキュムレータ 104 モータポンプ 105 圧力スイッチ 106 電磁比例圧力制御弁(比例弁) 107 電磁方向制御弁(方向切換弁) 108 バッテリ 109 モータリレー 110 インジケータランプ 111 制御中止手段 112 制御量変更手段 201,203 演算部 202 スリップ率差演算部 204 路面μ判定値演算部 205 基準回転数差演算部 206 旋回補正回転数差演算部 207 路面μ判定部 210 定常パラメータ算出手段 211 凹凸状態パラメータ演算部 212 滑り易さパラメータ演算部 220 路面指標算出手段 230 路面摩擦係数算出手段 240 定常パラメータ算出手段 250 特定パラメータ算出手段 260 路面摩擦係数算出手段 264 選出器
フロントページの続き (72)発明者 鈴木 啓之 東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 石黒 和紀 東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 真鍋 聡之 東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の走行状態を検出する車両状態検出
    手段と、 該車両状態検出手段で検出された該車両の定常走行中に
    おける走行状態から路面の凹凸状態を示すパラメータと
    滑り易さを示すパラメータとを算出する定常パラメータ
    算出手段と、 上記の両パラメータの値から路面状態を一元的に表す他
    のパラメータの各状態に対応した指標を算出する路面指
    標算出手段と、 該路面指標算出手段により算出された指標を継続して累
    積的に求めて累積評価することで路面摩擦係数を算出す
    る路面摩擦係数算出手段とを有することを特徴とする、
    車両用路面摩擦係数推定装置。
  2. 【請求項2】 車両の走行状態を検出する車両状態検出
    手段と、 該車両状態検出手段で検出された該車両の定常走行中に
    おける走行状態から路面状態を示す第1のパラメータを
    算出する定常パラメータ算出手段と、 該車両状態検出手段で検出された該車両の定常走行以外
    の特定走行中における走行状態から路面状態を示す第2
    のパラメータを算出する特定パラメータ算出手段と、 該定常パラメータ算出手段により算出された該第1のパ
    ラメータを継続して累積的に求めて累積評価するととも
    にこの累積した第1のパラメータと該第2のパラメータ
    とを総合して路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出
    手段とを有することを特徴とする、車両用路面摩擦係数
    推定装置。
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