JPH07108841A - 車両用左右輪間トルク移動制御装置 - Google Patents

車両用左右輪間トルク移動制御装置

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JPH07108841A
JPH07108841A JP25734393A JP25734393A JPH07108841A JP H07108841 A JPH07108841 A JP H07108841A JP 25734393 A JP25734393 A JP 25734393A JP 25734393 A JP25734393 A JP 25734393A JP H07108841 A JPH07108841 A JP H07108841A
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wheel
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、車両の左右輪の差動を制限しなが
ら左右輪間のトルク移動を積極的に制御する車両用左右
輪間トルク移動制御装置に関し、インパルス操舵時に車
両に適切なヨーモーメントが生じるようなトルク移動制
御を実現できるようにすることを目的とする。 【構成】 左右輪間でトルクの授受を行なうトルク移動
機構と、該トルク移動機構を制御する制御手段42とを
そなえ、該トルク移動機構が、左右の回転軸の一方の側
の回転速度を一定の変速比で変速して出力する変速機構
と、他方の側と該変速機構側との間に介装されて、左右
輪回転軸間でトルクの伝達を行ないうる伝達容量可変制
御式トルク伝達機構とから構成され、該制御手段42
が、操舵角速度が正の場合には旋回促進方向のヨーモー
メントが該操舵角速度の大きさに応じて増大し、操舵角
速度が負の場合には旋回抑制方向のヨーモーメントが該
操舵角速度の大きさに応じて増大するように、該操舵角
速度に比例するようにして該トルク移動量を設定する操
舵角速度比例制御部82をそなえるように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両の左右輪の差動を
制限することで左右輪間のトルク移動を制御する、車両
用左右輪間トルク移動制御装置に関し、特に、非旋回時
にも左右輪間で差動を生じさせる機構をそなえて左右輪
間のトルク移動を非旋回時にも行なえる、車両用左右輪
間トルク移動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の駆動輪における左右輪間には、
旋回時等に生じる差動を許容するための差動機構が設け
られているが、この差動機構では、左右輪のうちの一方
の車輪が例えば砂にはまるなどして空転状態になると、
この一方の車輪のみが回転して他方の車輪はほとんど回
転しなくなって、路面に駆動トルクを伝達できない状態
が生じることがある。
【0003】そこで、このような場合に、その差動を制
限できる差動制限機構(LSD=リミテットスリップデ
フ)が開発されている。このような左右輪の差動制限機
構には、左右輪の回転速度差に比例するタイプのもの
や、入力トルクに比例するタイプのものがある。左右輪
回転速度差比例タイプには、液体の粘性を利用したVC
(ビスカスカップリング)式LSDなどのものがあり、
車両の走行安定性を向上しうる利点がある。一方、入力
トルク比例タイプのものには、一般的なLOM(ロック
オートマチック)式LSDなどのフリクションタイプの
ものや、ウォームギヤの摩擦抵抗を利用したTORSE
N(トルーセン)式LSDなどのメカニカルタイプのも
のがあり、車両の旋回性能を向上しうる利点がある。
【0004】しかしながら、上述のような各差動制限機
構では、その差動制御特性が物性などによって定まって
おり、必ずしも常に適切に差動制御を行なえるように差
動制御特性を調整できるようにはなっていない。そこ
で、例えば特開平4−232127号公報等に開示され
ているような車両用差動制限制御装置が提案された。
【0005】この車両用差動制限制御装置は、車両の左
右輪間に設けられた差動制限機構と、これを制御する制
御手段とをそなえており、制御手段では、旋回中に車両
の左右輪の実際の回転速度差を検出し、この一方、旋回
中に生じる左右輪の理想とする回転速度差を設定して、
車両の左右輪の実回転速度差と理想回転速度差との差に
応じて、実回転速度差を理想回転速度差に近づけるよう
に差動制限機構を制御するようになっている。このよう
な車両用差動制限制御装置によれば、差動制限時に、よ
り高速で回転している車輪側からより低速で回転してい
る車輪側へとトルク移動が行なわれて、左右輪の駆動ト
ルクが不均衡になることから車両に生じるヨーモーメン
トにより、車両の走行安定性を向上させることができ
る。
【0006】しかしながら、上述の車両用差動制限制御
装置では、制御のベースとなる差動制限機構は、例えば
車両が旋回したり、左右輪の路面スリップ率が異なった
りして、左右輪に差動が生じるようにならなければ、差
動制限によるトルク移動を実現できない。つまり、通常
の高μ路を直進している時には、左右輪が、ほぼ等速で
回転するので、差動制限によるトルク移動を実現できな
い。
【0007】四輪駆動式自動車(以下、四輪駆動車とい
う)の開発が盛んに行なわれており、前後輪間のトルク
配分(駆動力配分)を積極的に調整できるようにした、
フルタイム四輪駆動方式の自動車の開発も種々行なわれ
ている。一方、自動車において、左右輪に伝達されるト
ルク配分機構を広義にとらえると従来のノーマルディフ
ァレンシャル装置や電子制御式を含むLSD(リミテッ
ドスリップデフ)が考えられるが、これらはトルク配分
を積極的に調整するものでなく、左右輪のトルクを自由
自在に配分できるものではない。
【0008】そこで、左右輪が等速回転していてもトル
ク移動を行なえるようにして、非旋回時などにも、左右
輪の駆動トルクの配分を調整できるようにした車両用左
右駆動力調整装置が、特開平5−131855号公報に
開示されている。この車両用左右駆動力調整装置では、
後輪の左右輪間に設ける場合の実施例が種々説明されて
おり、各実施例は、さらに、四輪駆動車や後輪駆動車に
おける後輪のような左右の駆動輪間に適用したものと、
前輪駆動車における後輪のような左右の被駆動輪間に適
用したものとに分類できる。
【0009】何れの場合も、左右輪間で自由にトルク移
動を行なうようにしたもので、左右輪間に、伝達トルク
容量を可変制御できるカップリングを設けて、このカッ
プリングを制御することで、トルク移動を行なったり停
止させたり、また、トルク移動を行なう際にトルク移動
の容量を調整するように構成されている。特に、カップ
リングにおける左輪側部材及び右輪側部材の一方を他方
よりも高速又は低速で回転させるような変速機構を設け
て、車両の非旋回時など、左右輪が等速回転していて
も、カップリングにおける左輪側部材と右輪側部材との
間に回転速度差を生じさせて、トルクの移動制御を行な
えるようにしたところに特徴がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述の特開
平5−131855号公報に開示されたような車両用左
右駆動力調整装置では、左右輪間でトルク移動を行なう
ことにより、左右輪で発揮される各駆動トルクの大きさ
を不均衡にし、これにより、車両にヨーモーメントを発
生させて車両の挙動を制御することができる。したがっ
て、左右輪間でのトルク移動をどのような観点から制御
するかは重要な課題である。
【0011】もちろん、このように左右輪間でのトルク
移動制御に関しては、前述の特開平4−232127号
公報等にも開示されているが、これらはその制御対象
が、左右輪が等速回転していてもトルクの移動制御を行
なえる装置ではないので、直接適用することはできな
い。特に、例えば何らかのものが路上へ急飛び出しした
際にこれを回避する場秋や、レーンチェンジ等には、ハ
ンドルを一瞬だけ素早く操作することがあるが、このよ
うな所謂インパルス操舵時〔図13(A)参照〕には、
ハンドル切り増し時には旋回を促進させて、ハンドル切
り戻し時には旋回を抑制させるようなヨーモーメントを
トルクの移動制御によって行ないたい。
【0012】本発明は、上述の課題に鑑み創案されたも
ので、左右輪が等速回転していてもトルクの移動制御を
行なえる機構をそなえたトルク移動機構において、イン
パルス操舵時に車両に適切なヨーモーメントが生じるよ
うなトルク移動制御を実現できるようにした、車両用左
右輪間トルク移動制御装置を提供することを目的とす
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1記載
の本発明の車両用左右輪間トルク移動制御装置は、車両
における左輪回転軸と右輪回転軸との間でトルクの授受
を行なうトルク移動機構と、該左輪回転軸と該右輪回転
軸とが所望のトルク配分状態になるようにトルク移動量
を設定しこのトルク移動量に基づいて該トルク移動機構
の状態を制御する制御手段とをそなえ、該トルク移動機
構が、該左輪回転軸側と該右輪回転軸側との間に回転速
度差を与えるために、該左輪回転軸及び該右輪回転軸の
うちの一方の回転軸側の部材の回転速度を一定の変速比
で変速して出力する変速機構と、該左輪回転軸及び該右
輪回転軸のうちの他方の回転軸側の部材と該変速機構の
出力部側の部材との間に介装されて、係合時に該左輪回
転軸及び該右輪回転軸の間でトルクの伝達を行ないうる
伝達容量可変制御式トルク伝達機構とから構成され、該
制御手段が、操舵角速度が正の場合には旋回促進方向の
ヨーモーメントが該操舵角速度の大きさに応じて増大
し、操舵角速度が負の場合には旋回抑制方向のヨーモー
メントが該操舵角速度の大きさに応じて増大するよう
に、該操舵角速度に比例するようにして該トルク移動量
を設定する操舵角速度比例制御部をそなえていることを
特徴としている。
【0014】また、請求項2記載の本発明の車両用左右
輪間トルク移動制御装置は、請求項1記載の構成におい
て、該左輪回転軸と該右輪回転軸とが、入力部に入力さ
れた駆動力を差動機構を介して配分される駆動軸であっ
て、該トルク移動機構が、該左輪回転軸と該右輪回転軸
との間、又は、該左輪回転軸又は該右輪回転軸と該入力
部との間に介装されていることを特徴としている。
【0015】また、請求項3記載の本発明の車両用左右
輪間トルク移動制御装置は、請求項1又は2記載の構成
において、該操舵角速度比例制御部に、該トルク移動量
が、車速の中高速域で最大となり、高速域では0とな
り、定速域では小さくなるように、上記の設定したトル
ク移動量に対して、車速に対応した補正を施す補正部が
設けられていることを特徴としている。
【0016】
【作用】上述の請求項1記載の本発明の車両用左右輪間
トルク移動制御装置では、制御手段が、車両における左
輪回転軸と右輪回転軸との間のトルク移動量を設定しこ
の設定したトルク移動量に基づいてトルク移動機構の状
態を制御する。トルク移動機構は、この制御を通じて、
該左輪回転軸と該右輪回転軸との間で設定されたトルク
の授受を行なう。
【0017】このとき、トルク移動機構では、変速機構
が、該左輪回転軸及び該右輪回転軸のうちの一方の回転
軸側の部材の回転速度を一定の変速比で変速して出力し
て、該左輪回転軸側と該右輪回転軸側との回転速度差を
与え、伝達容量可変制御式トルク伝達機構が、係合時に
所要の伝達容量で該左輪回転軸及び該右輪回転軸の間で
トルクの伝達を行なう。
【0018】また、該制御手段におけるトルク移動量の
設定は、操舵角速度比例制御部で行なわれ、操舵角速度
が正の場合には旋回促進方向のヨーモーメントが該操舵
角速度の大きさに応じて増大し、操舵角速度が負の場合
には旋回抑制方向のヨーモーメントが該操舵角速度の大
きさに応じて増大するように、該操舵角速度に比例する
ようにして該トルク移動量が設定される。
【0019】また、上述の請求項2記載の本発明の車両
用左右輪間トルク移動制御装置では、入力部に入力され
た駆動力が差動機構を介して駆動軸としての該左輪回転
軸と該右輪回転軸とに配分され、これらの駆動軸から左
右の駆動輪に伝達される。この時、該トルク移動機構
が、該左輪回転軸と該右輪回転軸との間で直接、又は、
該左輪回転軸又は該右輪回転軸と該入力部との間を通じ
て、所要の伝達容量で該左輪回転軸及び該右輪回転軸の
間でトルクの伝達を行なう。
【0020】また、上述の請求項3記載の本発明の車両
用左右輪間トルク移動制御装置では、該操舵角速度比例
制御部に設けられた補正部が、該トルク移動量が、車速
の中高速域で最大となり、高速域では0となり、定速域
では小さくなるように、上記の設定したトルク移動量に
対して、車速に対応した補正を施す。
【0021】
【実施例】以下、図面により、本発明の一実施例として
の車両用左右輪間トルク移動制御装置について説明する
と、図1はその制御系の全体構成を示す機能ブロック
図、図2〜4はそれぞれその制御系の各部分を詳細に示
す機能ブロック図、図5は本装置をそなえた車両の駆動
トルク伝達系の全体構成図、図6はそのトルク移動機構
を示す模式的な構成図、図7は本トルク移動制御装置の
原理を従来のトルク配分制御装置と比較して説明する
図、図8は本トルク移動制御装置の利点を従来のトルク
配分制御装置と比較して示す図、図9は本トルク移動制
御装置の油圧系を示す構成図、図10,11は本トルク
移動制御装置の制御目的を説明する図、図12は本トル
ク移動制御装置にそなえるフィルタのゲイン特性につい
て示す図、図13はその操舵角速度比例制御の制御目的
を示す図、図14は横加速度に対応した操舵特性を示す
図、図15はそのタックイン対応制御の制御量について
示す図、図16はそのタックイン対応制御において路面
状態を考慮した場合の目標とする操舵特性を示す図、図
17はそのタックイン対応制御の路面状態を考慮した場
合の制御量について示す図、図18,19は機構状態判
定部における判定原理及び基準回転速度差追従制御にお
ける制御量の設定原理を説明するための速度線図、図2
0〜28はその左右輪の回転速度差に関する制御区分を
説明する図、図29〜38はその制御内容を示すフロー
チャート、図39はその操舵角速度比例制御による車体
姿勢を示す図、図40,41はその操舵角速度比例制御
による車体姿勢に対比すべく4輪操舵制御による車体姿
勢を示す図、図42はその制御効果を説明する図、図4
3は制動・駆動力のスリップ比による変化をタイヤのス
リップ角に応じて示す図、図44は横力のスリップ比に
よる変化をタイヤのスリップ角に応じて示す図、図45
は横力の駆動・制動力による変化をタイヤのスリップ角
に応じて示す図、図46はそのタックイン対応制御によ
る効果を示す図、図47は本装置を適用できる他の車両
用駆動トルク伝達系の全体構成図、図48はそのトルク
移動機構を示す模式的な構成図、図49はそのトルク移
動機構の軸配置構成を示す模式的な配置図、図50は本
装置を適用できるさらに他の車両用駆動トルク伝達系の
全体構成図、図51はそのトルク移動機構を示す模式的
な構成図である。 ・駆動系の全体構成の説明 まず、図5を参照してこの車両用左右輪間トルク移動制
御装置(以下、トルク移動制御装置と略す)をそなえる
車両の駆動系の全体構成を説明する。
【0022】図5において、符号2はエンジンであり、
このエンジン2の出力はトランスミッション4及び中間
ギア6を介して遊星歯車式の差動歯車機構(=センタデ
ィファレンシャル、以下、センタデフという)8に伝達
されるようになっている。このセンタデフ8の出力は、
一方において前輪用の差動歯車機構(=フロントディフ
ァレンシャル、以下、フロントデフという)10を介し
て車軸12L,12Rから左右の前輪14,16に伝達
され、他方においてベベルギヤ機構18,プロペラシャ
フト20及びベベルギヤ機構22,後輪用の差動歯車装
置(=リヤディファレンシャル、以下、リヤデフとい
う)24を介して車軸26L,26Rから左右の後輪2
8,30に伝達されるようになっている。本トルク移動
制御装置のトルク移動機構50はこのリヤデフ24の部
分に設けられている。
【0023】センタデフ8は、従来周知のものと同様
に、サンギア8Aと、このサンギア8Aの外方に配置さ
れたプラネタリギア8Bと、このプラネタリギア8Bの
外方に配置されたリングギア8Cとをそなえている。自
動変速機6からの出力は、プラネタリギア8Bを支持す
るキャリア8Dに入力され、プラネタリギア8Bからサ
ンギア8Aとリングギア8Cとに配分され出力されるよ
うになっている。ここでは、サンギア8Aが前輪用出力
軸32を介してフロントデフ14に接続され、リングギ
ア8Cが後輪用出力軸34及びベベルギヤ機構18を介
してプロペラシャフト20に接続されている。
【0024】また、センタデフ8には、その前輪側出力
部と後輪側出力部との差動を拘束(又は制限)すること
により前輪と後輪とのエンジンの出力トルクの配分を変
更しうる差動制限手段〔即ち、リミテッドスリップデフ
(LSD)〕として油圧多板クラッチ36が付設されて
いる。この油圧多板クラッチ36は、サンギヤ8Aに結
合された前輪用出力軸32とリングギア8Cに接続され
た後輪用出力軸34との間に介装されており、自身の油
圧室36A内の制御油圧や差動状態に応じた摩擦力によ
り、前輪側と後輪側との差動を拘束するようになってい
る。
【0025】したがって、センタデフ8は、油圧多板ク
ラッチ36を完全フリーの状態からロックさせた状態ま
で適宜制御することにより、前輪側及び後輪側へ伝達さ
れるトルクの配分状態を、例えば前輪:後輪が約30:
70程度から50:50の間で制御することができる。
完全フリー状態での前輪:後輪の配分割合は、例えば遊
星歯車の前輪側及び後輪側の入力歯車の歯数比等の設定
によりその基準的な配分割合調整でき、ここでは、油圧
多板クラッチ36の油圧室内の圧力がゼロで完全フリー
の状態のときには前輪:後輪の基準配分割合が、約3
0:70になるように設定されている。
【0026】また、油圧室内の圧力が設定圧とされて油
圧多板クラッチ36がロック状態にあって、差動が実質
的にゼロとなると、前輪と後輪とのトルク配分は、前輪
系と後輪系との負荷バランス等によって変化するので、
走行状態にも依存するが、例えば50:50となって直
結状態となる。センタデフ8の差動を制限する油圧多板
クラッチ36の油圧調整は、油圧ユニット38により行
なわれるようになっている。すなわち、油圧ユニット3
8では内蔵された油圧ポンプを通じてリザーバタンク4
0からの作動油を油圧多板クラッチ36の油圧室に供給
したり、油圧室内の作動油を排除したりするようになっ
ている。
【0027】この油圧ユニット38は、電子制御ユニッ
ト(以下、ECUという)42により作動を制御される
ようになっている。ECU42には、スロットル2Aを
通じてエンジン出力を電子制御する電子制御ユニット
(以下、エンジンECUという)44と、アンチロック
ブレーキシステム(ABS)を電子制御する電子制御ユ
ニット(以下、ABSECUという)46と、ハンドル
角センサ48A及び加速度センサ48B等のセンサ類が
接続されている。ECU42では、エンジン情報やAB
S情報や車輪速情報やハンドル角(操舵角ともいう)即
ちステアリングホイールの中立位置からの回転角度の情
報や車体の横加速度や前後加速度に関する情報等を受け
て、これらの情報に基づいて、油圧ユニット38を制御
するようになっている。また、差動制限制御とエンジン
出力制御とは相互に連係させる必要があり、特に、EC
U42からエンジンECU44に出力低減情報が送られ
るようになっている。
【0028】なお、各ECU42,44,46は、図示
しないが後述する制御に必要なCPU,ROM,RA
M,インタフェイス等をそなえている。 ・トルク移動機構の構成 ところで、本トルク移動制御装置は、デフキャリア50
A内に設けられたトルク移動機構50と、その制御手段
である前述のECU42とから構成されるが、ここで、
リヤデフ24及びこのリヤデフ24と車軸26L,26
Rとの間に嵌挿されたトルク移動機構50の構成を、図
6を参照して説明する。
【0029】図6に示すように、入力軸52がプロペラ
シャフト20の後端に結合されており、入力軸52には
ドライブピニオンギヤ54が一体回転するように結合さ
れている。リヤデフ24は、ギヤハウジング58内に2
対のベベルギヤ60,60,62,64をそなえて構成
され、ギヤハウジング58にはドライブピニオンギヤ5
4と噛合するクラウンギヤ56が固定されている。これ
により、エンジンの出力は、入力軸52からドライブピ
ニオンギヤ54,クラウンキヤ56を介してリヤデフ2
4に伝えられ、さらに、このリヤデフ24のギヤ62,
64から左右の回転軸66,68へ伝達されるようにな
っている。
【0030】左右の回転軸66,68は、車軸26L,
26Rに結合されており、最終的には左右の後輪28,
30に結合している。トルク移動機構50は、リヤデフ
24のギヤハウジング58と左右の回転軸66,68と
の間に設けられ、変速機構70と伝達容量可変制御式ト
ルク伝達機構72とから構成されている。これらの変速
機構70及びトルク伝達機構72は左輪側と右輪側とに
設けられるが、この実施例では、左右の変速機構70及
びトルク伝達機構72は互いに対称に設けられている。
そこで、ここでは、右輪側のものについてのみ説明す
る。なお、伝達容量可変制御式トルク伝達機構72につ
いては、左右を特に区別する場合は、左輪側のトルク伝
達機構72は72Lと呼び、右輪側のトルク伝達機構7
2は72Rと呼ぶことがある。
【0031】また、左輪側の変速機構70を第1変速機
構とすると、左輪側のトルク伝達機構72Lが第1伝達
容量可変制御式トルク伝達機構に、右輪側の変速機構7
0が第2変速機構に、右輪側のトルク伝達機構72Rが
第2伝達容量可変制御式トルク伝達機構に相当する。ま
ず、変速機構70を説明すると、この変速機構70は、
右輪回転軸68に固着された第1のサンギヤ70Aと、
デフキャリア50Aに固定されたキャリア70Bに回転
自在に取り付けられた第1のプラネタリギヤ(プラネタ
リピニオン)70C及び第1のプラネタリギヤ70Cと
一体回転する第2のプラネタリギヤ(プラネタリピニオ
ン)70Dと、中空軸74に固着された第2のサンギヤ
70Eとから構成される。このうち、第1のサンギヤ7
0Aは第1のプラネタリギヤ70Cと噛合し、第2のサ
ンギヤ70Eは第2のプラネタリギヤ70Dと噛合して
おり、右輪回転軸68が回転すると、第1のサンギヤ7
0A,第1のプラネタリギヤ70C,第2のプラネタリ
ギヤ70D,第2のサンギヤ70Eを通じて中空軸74
が回転するようになっている。
【0032】特に、第1のサンギヤ70Aは第2のサン
ギヤ70Eよりも径が大きく、したがって歯数が多く、
第1のプラネタリギヤ70Cは第2のプラネタリギヤ7
0Dよりも径が小さく、したがって歯数が少なくなって
おり、右輪回転軸68の回転速度を増速されて中空軸7
4が回転駆動されるようになっている。つまり、この変
速機構70は増速機構としてはたらくようになってい
る。したがって、中空軸74は右輪回転軸68よりも高
速であるので、例えば直進時のように、左右輪間で差動
が小さくて、右輪回転軸68とギヤハウジング58との
間に大きな回転速度差がなければ、中空軸74はギヤハ
ウジング58よりも高速になる。
【0033】伝達容量可変制御式トルク伝達機構72は
中空軸74とリヤデフ24のギヤハウジング58との間
に設けられており、この例では伝達容量可変制御式トル
ク伝達機構72として制御油圧に応じて伝達容量を調整
できる湿式油圧多板クラッチ機構を用いている。なお、
この伝達容量可変制御式トルク伝達機構としては、伝達
トルク容量が可変制御できるトルク伝達機構であればよ
く、この例の機構のほかに、電磁式多板クラッチ機構等
の他の多板クラッチ機構や、これらの多板クラッチ機構
の他に、油圧式又は電磁式の摩擦クラッチや、油圧式又
は電磁式の制御可能なVCU(ビスカスカップリングユ
ニット)や、油圧式又は電磁式の制御可能なHCU(ハ
イドーリックカップリングユニット=差動ポンプ式油圧
カップリング)、さらには、電磁流体式あるいは電磁粉
体式クラッチ等の他のカップリングを用いることもでき
る。
【0034】このトルク伝達機構72については、以
下、湿式油圧多板クラッチ機構又はカップリングとも表
現する。この湿式油圧多板クラッチ機構72は、中空軸
74と一体回転するようにクラッチのアウタケース72
Cに支持された複数のクラッチディスク72Aと、ギヤ
ハウジング58と一体回転するようにクラッチのインナ
ケース72Dに支持された複数のクラッチディスク72
Bとが、交互に並べられて構成されている。
【0035】この湿式油圧多板クラッチ機構72も、セ
ンタデフの油圧多板クラッチ36と同様に、油圧ユニッ
ト38により図示しない油圧室内の油圧を制御されるよ
うになっており、この油圧制御を通じて、クラッチディ
スク72A,72Bの係合状態が調整され、中空軸74
とリヤデフ24のギヤハウジング58との差動制限の調
整とともにトルク移動制御が行なわれるようになってい
る。
【0036】すなわち、湿式油圧多板クラッチ機構72
が係合されると、中空軸74側のクラッチディスク72
Aはギヤハウジング58側のクラッチディスク72Bよ
りも高速ならば、高速側のクラッチディスク72Aから
低速側のクラッチディスク72Bへとトルクが移動す
る。ところで、このときのトルクの移動量は、両クラッ
チディスク72A,72B間の差動の大小と係合の強さ
による。このため、クラッチディスク72A,72B間
の差動状態を考慮しながら制御油圧を調整してクラッチ
ディスク72A,72Bの係合の強さを調整すること
で、トルクの移動量を制御できる。
【0037】そこで、油圧ユニット38における湿式油
圧多板クラッチ機構72への油圧調整部も、左右の後輪
へトルク配分が所望の状態になるように、ECU42を
通じて制御される。この場合にも、センタデフの場合と
同様に、ECU42により、エンジン情報,ABS情
報,車輪速情報,ハンドル角情報,車体の横加速度や前
後加速度に関する情報等に基づいて制御が行なわれるよ
うになっている。
【0038】このように、入力軸52からの駆動トルク
を左輪回転軸66により多く配分したい場合には、その
配分したい程度(配分比)に応じて右輪回転軸68側の
多板クラッチ機構72を適当な制御圧力で係合させれば
よい。一方、左輪回転軸66にそなえられている変速機
構70及び多板クラッチ機構72も、同様に構成されて
いるので、入力軸52からの駆動トルクを右輪回転軸6
8により多く配分したい場合には、その配分したい程度
(配分比)に応じて左輪回転軸66側の多板クラッチ機
構72を適当な制御圧力で係合させればよい。
【0039】なお、左右の多板クラッチ機構72が共に
完全係合することのないように設定されており、左右の
多板クラッチ機構72のうち一方が完全係合したら他方
の多板クラッチ機構72は滑りを生じるようになってい
る。つまり、左右の多板クラッチ機構72の作動モード
は、左輪側の多板クラッチ機構72のみが係合するモー
ドと、右輪側の多板クラッチ機構72のみが係合するモ
ードと、何れも係合しない中立モードとがある。
【0040】このように、トルク移動機構50では、ト
ルクを移動させることで左右トルクの配分を調整できる
ので、単に片輪を制動することで左右トルクの配分を調
整する場合に比べてトルクロスが極めて少なく、トルク
の配分調整もより広範囲で行なえ、例えば車両にヨーモ
ーメントを生じさせることも違和感なく行なえるという
特徴がある。例えば、図7は車両にヨーモーメントを生
じさる際の動作原理図であり、(A)が本トルク移動機
構の場合を示し、(B)が単に片輪を制動させた場合を
示す。図示するように、本トルク移動機構では、一方の
車輪の駆動力が増加するので、他方の車輪に生じる制動
力を低く抑えながらも、車両に所望のヨーモーメントを
生じさることができ、ブレーキング感が小さくドライバ
に違和感を与えにくい。これに対して、単に片輪を制動
させた場合には、片輪に大きな制動力を与えることにな
り、ブレーキング感が大きくドライバに違和感を与えや
すい。図8のグラフは、ヨーモーメントを発生させる際
に車両に発生する制動力を、本トルク移動機構の場合と
片輪制動による場合とで比較して示すもので、本トルク
移動機構では極めて制動力が小さいことがわかる。 ・油圧ユニットの構成 ここで、油圧ユニット38の構成を図9を参照して説明
する。この油圧ユニット38は、図9に示すように、オ
イルタンク101内の作動油を電動オイルポンプ102
で駆動して、一方で、電磁比例圧力制御弁(比例弁とも
略す)103で圧力調整してセンタデフの油圧多板クラ
ッチ機構36の油室(図示省略)に供給し、他方で、電
磁比例圧力制御弁(比例弁)104で圧力調整して電磁
方向制御弁(方向切換弁)105を通じて左後輪側の油
圧多板クラッチ機構72L又は右後輪側の油圧多板クラ
ッチ機構72(R)の油室(図示省略)に供給するよう
になっている。
【0041】なお、図9中、102Aはオイルポンプ駆
動用モータ、106はオイル内の不純物を除去するスト
レーナ、107は逆流防止用チェック弁、108はオイ
ルポンプ102の出力圧が過大になるのを防ぐ圧力調整
用のリリーフ弁、109はアキュムレータである。11
0A,110B,111Cは圧力スイッチであり、各部
分で作動油が適切に流れているかをチェックして故障を
検出する。111A,111Bは油圧センサであり、電
磁比例圧力制御弁103,104の出力圧を検出して、
そのフィードバック制御や故障検出に用いられる。
【0042】そして、前述のように、上記の電磁比例圧
力制御弁103,104及び電磁方向制御弁105がE
CU42で制御されるようになっているのである。 ・制御手段(ECU)の機能構成 ここで、このような左右の後輪へのトルク調整を指令す
るECU42の機能部分について説明する。
【0043】ECU42には、図1に示すように、基準
回転速度差追従制御部80と、操舵角速度比例制御部8
2と、タックイン対応制御部84との各トルク移動量設
定部と、機構状態判定部86と、総合判定部88とが設
けられている。基準回転速度差追従制御部80は、左輪
28と右輪30との基準車輪速度差を設定して、左輪2
8と右輪30との実際の車輪速度差(以下、実車輪速度
差という)が基準車輪速度差に追従するように、目標と
するトルク移動量(即ち、トルク移動の方向と大きさ)
を設定する部分であり、ここで設定するトルク移動量に
より、車両の定常旋回特性を調節することができる。
【0044】操舵角速度比例制御部82は、操舵角速度
に比例するようにトルク移動量(トルク移動の方向と大
きさ)を設定する部分であり、ここで設定したトルク移
動量により、操舵操作時のヨー応答を高めることができ
る。タックイン対応制御部84は、アクセル戻し時の車
両のタックインを予測しこれを抑制するようにトルク移
動量(トルク移動の方向と大きさ)を設定する。
【0045】機構状態判定部86は、操舵角速度比例制
御部82及びタックイン対応制御部84で設定されたト
ルク移動量が現在の機構の差動状態で実現可能であるか
否かを判定してこの判定結果に対応してトルク移動量に
関する情報を出力する。総合判定部88は、基準回転速
度差追従制御部80からの情報と、機構状態判断部86
を通じて出力される操舵角速度比例制御部82及びタッ
クイン対応制御部84からの情報とに基づいて、トルク
移動量を最終決定する。 ・基準回転速度差追従制御部の構成 基準回転速度差追従制御部80について詳述すると、こ
の基準回転速度差追従制御は、左右の車輪がハンドル角
と車速とから車両の旋回状態に最適の左右輪の基準回転
速度差を算出して、実際の左右輪の回転速度差をこの基
準回転速度差に追従するように左右輪のトルク移動量を
制御することで、所要の旋回特性(例えばニュートラル
ステア特性とか弱アンダステア特性)を得ようとするも
のである。
【0046】このため、図2に示すように、基準回転速
度差追従制御部80には、ハンドル角度情報と車速情報
とから左右輪の基準車輪速度差を算出する基準車輪速度
差算出部80Aと、左右の車輪速情報から左右輪の実車
輪速度差を算出する実車輪速度差算出部80Cと、これ
らの基準車輪速度差と実車輪速度差との情報から、実車
輪速度差を基準車輪速度差に近づけるようにトルク移動
量を決定する基準回転速度差追従トルク移動量設定部8
0Eとがそなえられている。
【0047】基準車輪速度差算出部80Aに入力される
情報のうちハンドル角度情報は、ハンドル角センサ48
Aからの検出情報をデジタルローパスフィルタ90Aで
フィルタ処理されて雑音除去された上で入力される。こ
のハンドル角度は、旋回時に左輪が右輪よりも高速にな
る場合、即ち、右操舵の場合を正としている。また、基
準車輪速度差算出部80Aに入力される車速情報は、車
速算出部48Fで算出されるが、車速算出部48Fで
は、例えば、後左輪速度センサ48D,後右輪速度セン
サ48Eからの検出情報をそれぞれデジタルローパスフ
ィルタ90B,90Cでフィルタ処理されて雑音除去さ
れた上で入力され、後左輪速度Vrlと後右輪速度Vr
rとを平均化することで、車速(車体速度)を算出する
ことができる。この車速算出は、このような手法に限定
されることはなく、他の手法で行なってもよい。
【0048】基準車輪速度差算出部80Aでは、これら
のハンドル角度情報(δ)と車速情報(Vr)とから、
次式により、基準車輪速度差ΔVhr(=dvhr)を
算出する。 ΔVhr=lt・Vr/R ただし R:旋回半径(基準旋回半径) R=(1+A・Vr2 )・lw/δ lt:車両のリヤトレッド lw:車両のホイールベース A:スタビリティファクタ ところで、実車輪速度はハンドル角や車速の変化に対し
て遅れを伴うものなので、このようにして基準車輪速度
差算出部80Aで算出された基準車輪速度差dvhrに
対して車両モデル化フィルタ80Bで車両モデル化、即
ち、遅れ系処理を施したもの(dvhf)が、基準回転
速度差追従トルク移動量設定部80Eに入力される。
【0049】一方、実車輪速度差算出部80Cでは、後
左輪速度センサ48D,後右輪速度センサ48Eからの
検出情報をそれぞれデジタルローパスフィルタ90B,
90Cでフィルタ処理されて雑音除去された上で入力さ
れ、後左輪速度Vrlから後右輪速度Vrrを減算する
ことで、実車輪速度差dvrd(=Vrl−Vrr)を
算出する。
【0050】この実車輪速度差dvrdも、デジタルロ
ーパスフィルタ80Dでフィルタ処理されて、基準車輪
速度差dvhfとして基準回転速度差追従トルク移動量
設定部80Eに入力される。なお、デジタルローパスフ
ィルタ80Dには特にカットオフ周波数の低い強力なも
のが用いられており、ここで、このローパスフィルタ8
0Dについて説明する。
【0051】一般に、車両の左右輪間に拘束力を与える
と、左右のタイヤの路面からの入力トルクの差によって
駆動系に捩じり振動が生じる。これは図10に示すよう
にモデル化して考えることができる。なお、図中、Iは
各輪の慣性モーメント、Kはバネ定数、T1 ,T2 は各
輪の軸トルクである。このような捩じり振動によって、
左右の車輪速度には180°位相の反転した振動成分が
乗ってしまう。例えば図11は実際に検出された左右輪
の回転速度差を示すもので、周波数の小さな振動曲線が
捩じり振動の影響による左右輪の振動成分を示し、緩や
かな曲線が左右輪の走行軌跡により生じる左右輪の回転
速度差の変化を示している。図示するように、左右輪の
振動成分は、左右輪の走行軌跡により生じる回転速度差
の値と同程度以上の振幅を持つ場合があり、このような
振動成分があると、制御ハンチングを招くなどして、基
準回転速度差追従制御や、後述する機構状態判別などを
適切に行ないにくい。
【0052】そこで、この対策として、カットオフ周波
数の低い強力なローパスフィルタ80Dでデータをフィ
ルタリングするようにしているのである。この場合に
は、捩じり振動の影響を低減できる一方で、左右輪の走
行軌跡が細かく不規則に変化するとこれを取り出しにく
く、準定常的な回転速度差のみを取り出すことになり、
また、どうしても制御の応答性は低下してしまうことに
なる。
【0053】そこで、カットオフ周波数を適切に設定し
たい。例えば車輪速度のサンプリング周期Tiを30m
sとすると、入力信号から元本の波形を再生できるの
は、サンプリング定理から時間波長Tが2Ti(=60
×10-3s)以上の信号である。即ち、再生可能な入力
信号周波数fは、 f=1/T=1/(60×10-3)≒16.67(H
z) となる。
【0054】また、図12は信号の振幅特性を示すもの
で、横軸はωτである(ω=2πf,τ=1/2πfc
,fc :カットオフ周波数)。図示するように、−2
0dB(=1/10)に振幅を減衰させるには、ωτ=
10とすればよい。ωτ=10より、fc =f/10≒
1.67なので、カットオフ周波数fc は、fc =1.
67(Hz)とすればよい。
【0055】基準回転速度差追従トルク移動量設定部8
0Eでは、基準車輪速度差dvhfと実車輪速度差dv
rdとの差の絶対値ddvr〔=abs(dvrf−d
vhf)〕を算出して、この値ddvrに対して、図2
中のブロック80E内に示すようなマップからトルク移
動量に対応する制御量(トルク制御ゲイン)tbを決定
する。このマップに示すように、値ddvrが基準値d
1 よりも小さい場合には、制御量tbは0となり、値d
dvrがこの基準値d1 を越えると値ddvrの増加に
応じて制御量tbが増加するようになっている。
【0056】また、基準回転速度差追従トルク移動量設
定部80Eでは、基準車輪速度差dvhfと実車輪速度
差dvrdとに基づいてトルク移動方向を求め、さら
に、トルク移動方向等に基づいて、左右のうち係合すべ
きクラッチの選択(以下、係合クラッチ方向という)d
irbの設定を行なう。トルク移動方向については、一
般に、dvrf−dvhfの符号が正であれば左回転が
相対的に大き過ぎるので右方向(R)とし、dvhr−
dvrdの符号が負であれば右回転が相対的に大き過ぎ
るので左方向(L)とする。
【0057】このようなトルク移動方向を実現するに
は、一般には、右方向へのトルク移動は左輪側の油圧多
板クラッチ機構72を係合させればよく、左方向へのト
ルク移動は右輪側の油圧多板クラッチ機構72を係合さ
せればよいが、基準車輪速度差dvhfと実車輪速度差
dvrdとの各値の大きさに応じて、必ずしもこの通り
に制御するとは限らない。そこで、この制御クラッチ方
向dirbの設定には、多数の場合分けを行なうように
しておりこの制御クラッチ方向dirbの設定に関して
は、機構状態判定部86の説明の後の方が判りやすいの
で、後述する。 ・操舵角速度比例制御部の構成 操舵角速度比例制御部82について詳述すると、ここで
行なう操舵角速度比例制御は、急なハンドル操作をした
際のハンドル応答性(即ち、危険回避性能)を向上させ
ようとするものである。例えば、図13(A)に示すよ
うに、ハンドルを一瞬だけ素早く切る操作(インパルス
操舵)を行なった場合、これに応じて、図13(B)に
示すように、ハンドルの切り増し中には旋回促進方向の
ヨーモーメントを発生させ、ハンドルの戻し中には旋回
抑制方向のヨーモーメントを発生させたい。
【0058】勿論、前述の基準回転速度差追従制御で
も、理論上はヨー応答性の向上が可能であるが、この基
準回転速度差追従制御では、カットオフ周波数の低い強
力なローパスフィルタ80Dでデータをフィルタリング
して制御の応答性が低くなっているので、ヨー応答性の
向上は期待できない。そこで、この操舵角速度比例制御
を設けて、対応しているのである。
【0059】この操舵角速度比例制御の意味を考える
と、速い操舵に対して基準回転速度差(ここではDVと
する)は殆ど遅れることなく追従するが、実回転速度差
(ここではdvとする)は車両の遅れ系のために、殆ど
追従しない。したがって、基準回転速度差DVと実回転
速度差dvとの偏差をeとすると、 e=DV−dv となり、この時間変化率は、 de/dt=d(DV−dv)/dt =d・(DV)/dt−d・(dv)/dt ≒d・(DV)/dt〔∵d・(dv)/dt≒0〕 となり、基準回転速度差DVの変化率に等しくなる。
【0060】すなわち、この操舵角速度比例制御は、基
準回転速度差追従制御における微分項(D項)に相当す
るということができる。そこで、この制御では、ハンド
ル操作に対応して所定のヨーモーメントを得られるよう
に、操舵角速度に比例するようにトルク移動量を設定し
ている。例えばハンドルを右に切り増す場合を正とし
て、その切り増す大きさ(即ち、操舵速度)に比例させ
て旋回外輪(例えは右に操舵速度があれば左輪)にトル
クを移動する。また、この制御ゲイン(制御量)は、例
えば車速が80km/hの時に2Hz相当のインパルス
操舵で最大横加速度が0.4G程度となるようにハンド
ルを切った時の最大角速度(例えば400deg/s)
で最大制御量となるように設定する。
【0061】また、このような急ハンドルに対してハン
ドル応答を高めるのは、一般に低速域では必要なく、ま
た、高速域では本来ハンドル応答性が高くこれ以上にハ
ンドル応答性を高めることは却って逆効果がある。そこ
で、この操舵角速度比例制御では、車速状態に応じて、
トルク移動量を補正するようにしている。このために、
図3に示すように、操舵角速度比例制御部82では、ハ
ンドル角速度(操舵角速度)情報から左右輪間のトルク
移動量tc−を設定する操舵角速度対応トルク移動量設
定部82Aと、車速に応じた補正係数kcを設定する補
正係数設定部82Bと、操舵角速度対応トルク移動量設
定部82Aで設定されたトルク移動量tc−に補正係数
kcを積算して車速対応補正する補正部82Cとをそな
えている。なお、このトルク移動量tc−には、左右い
ずれの側へトルク移動を行なうかという方向性も含まれ
る。
【0062】トルク移動量設定部82Aでは、ハンドル
角速度演算部48Cからのハンドル角情報をデジタルロ
ーパスフィルタ90Aでフィルタ処理されて雑音除去さ
れた上で情報(dδ)として入力される。なお、ハンド
ル角速度演算部48Cでは、ハンドル角センサ演からの
検出情報を時間微分することで、ハンドル角速度を算出
する。
【0063】トルク移動量設定部82Aでは、このよう
に入力されるハンドル角速度dδに対して、図3中のブ
ロック82A内に示すようなマップを用いて操舵角速度
比例トルク移動量tc−を決定するが、ハンドル角速度
dδの大きさが、適当に小さな基準値dδ0 よりも大き
くなって、ハンドル角速度が有意なものとなったら、ト
ルク移動量tc−を与え、操舵角速度比例制御を行な
う。このマップでは、横軸がハンドル角速度dδであっ
て、このハンドル角速度dδについては右向きを正方向
としており、縦軸がトルク移動量tc−であって、この
トルク移動量tc−については左方向を正方向としてい
る。
【0064】図示するように、ハンドル角速度dδが右
向きならば、ハンドル角速度dδの増加に応じて左輪側
へのトルク移動量tc−を増大させて、ハンドル角速度
dδが左向きならば、ハンドル角速度dδの増加に応じ
て右輪側へのトルク移動量tc−を増大させる。ただ
し、ハンドル角速度dδが十分に大きい領域ではトルク
移動量tc−は一定に制限される。
【0065】補正係数設定部82Bでは、車速算出部4
8Fからの車速情報(Vr)に対して図3のブロック8
2B内に示すようなマップを用いて補正係数kcを設定
する。図示するように、車速Vrの増加に伴って補正係
数kcも増加して、中高速域で最大となって、さらに、
車速Vrが大きくなった高速域では、車速Vrの増加に
対して補正係数kcを減少させて、最終的には0にし
て、高速域ではトルク移動制御量tcが0になるように
設定されている。つまり、この補正係数kcは、インパ
ルス操舵に対するトルク移動制御が必要であって、且
つ、その制御が車両の走行安定性を損なうことのないよ
うな車速域で十分な制御を行なえるようにし、逆に、ト
ルク移動制御の必要が低かったり、その制御が車両の走
行安定性を損なうおそれがある場合には、制御を抑制又
は停止するようにするためのものである。一般に、低速
域では、操舵に対して車両の挙動が十分に応答するの
で、トルク移動制御の必要が低く、また、比較的高い高
速域(高高速域)では、トルク移動制御が車両の走行安
定性を損なうおそれがある。これに対して、中速域から
比較的低い高速域(低高速域)及び中高速域にかけての
速度域では、インパルス操舵に対するトルク移動制御が
必要であって、この制御が車両の走行安定性を損なうお
それもない。そこで、トルク移動制御量tcが、中高速
域で最大となり、低速域では小さく、高速域では0にな
るように、補正係数kcを設定している。なお、図3の
ブロック82B内のマップでは、中高速域のある速度で
補正係数kcが最大になっているが、中高速域のある幅
を持った速度域で、補正係数kcを最大にして、この速
度域よりも低速になったら次第に減少させるようにして
もよく(当該マップ中の特性線kc1参照)、極低車速
域で補正係数kcが0になるようにしてもよい(当該マ
ップ中の特性線kc2参照)。
【0066】補正部82Cでは、このように補正係数設
定部82Bで設定された補正係数kcをトルク移動量t
c−に積算し、操舵角速度比例トルク移動量tcを得る
ようになっている。 ・タックイン対応制御部の構成 タックイン対応制御部84について詳述すると、ここで
行なうタックイン対応制御は、車両のタックイン現象を
抑制するための制御である。前述の基準回転速度差追従
制御で、例えば常に弱アンダステア特性が得られるよう
に設定しておけば理論上はタックイン現象を抑制するこ
とができるが、この基準回転速度差追従制御では、カッ
トオフ周波数の低い強力なローパスフィルタ80Dでデ
ータをフィルタリングして制御の応答性が低くなってい
るので、現象の速いタックインの抑制までは対応できな
い。そこで、これを補うために、タックインの生じる可
能性が大きくなったかを判断して、タックイン現象の生
じる前にフィードフォワード的に、トルク移動制御を行
なって、車両のステア特性を一時的に変更しタックイン
現象を抑制しようとしているのである。特に、ここで
は、スロットル開度が閉領域(ほぼ全閉状態の領域)で
且つスロットル開速度が負に大きい場合に、この大きさ
が大きいほどタックイン現象が生じる可能性が大きいも
のと判断し、この時には、車両の基準横加速度(理論上
の横加速度)が大きいほど、タックイン量が大きいもの
と判断するようにしている。
【0067】この基準横加速度に対応して制御を行なう
原理を、ステアリング特性を示すグラフを用いて説明す
る。図14は、通常走行路(即ち、高μ路=路面摩擦係
数μの高い路面)において、定常旋回を行なった場合
の、操舵角比(θ/θ0 )の横加速度に対する変化を示
すグラフである。なお、操舵角比は、横加速度影響のな
い理論上の定常旋回時の舵角θ0 に対する、横加速度影
響のある実際の定常旋回時の舵角θの比である。
【0068】図14に示すように、一般には、「制御な
し」と付す曲線L14aのように、操舵角比の値θ/θ
0 は横加速度の小さな領域では横加速度の増加にしたが
って、スタビリティファクタ一定の直線L14b上を推
移するが、横加速度が0.4G程度まで増加すると、横
加速度の増加に伴って操舵角比の値θ/θ0 は急増す
る。「スタビリティファクタ一定」の直線L14bのよ
うな特性であればステア特性を弱アンダに維持できてド
ライバの操舵フィーリングに好ましいが、曲線L14a
のように操舵角比の値θ/θ0 が急増するのは好ましく
ない。
【0069】一方、「最大制御量作動時」と付す曲線L
14cは、本装置の左右トルク移動制御を最大限行なっ
た場合の操舵角比特性を示し、トルク移動制御の分だけ
実際に操作する操舵角θは小さくて済み、図示するよう
な特性になる。勿論、トルク移動制御を加減すること
で、曲線L14aとL14cとの間の適当な操舵角比に
調整できる。
【0070】そこで、操舵角比の値θ/θ0 が急増する
領域で、トルク移動制御を加えながら、例えば図中に
「制御目標」と付す曲線L14dのような操舵角比特性
に調整することもでき、これにより、ドライバの操舵フ
ィーリングに好ましい特性、即ち、スタビリティファク
タ一定の特性に近づくようになる。このようなトルク移
動制御を行なうには、例えば、図15に示すような特性
で、横加速度に対応して制御量を設定すればよい。
【0071】ところで、低μ路においては、図16に示
す破線の曲線のように、高μ路の場合(実線の曲線参
照)に比べ横加速度の低いレベルから操舵角比の値θ/
θ0 が急増する。そこで、例えば、図17に示すよう
に、低μ路用の制御量(破線参照)と、高μ路用の制御
量(実線参照)とを用意して、これを、使い分けるよう
にすることも考えられる。この場合には、車両に路面μ
を推定する装置を設けて、この情報に基づいて制御する
ことが考えられる。
【0072】なお、本実施例では、この路面μについて
は特に考慮することなく、一般路(高μ路)を前提に制
御を設定することにする。このため、図3に示すよう
に、タックイン対応制御部84には、ハンドル角度情報
と車速情報とから車両の基準横加速度を算出する基準横
加速度算出部84Aと、基準横加速度に対応する左右輪
間のトルク移動量td−を設定するタックイン対応トル
ク移動量設定部84Bと、アクセル開度に応じてトルク
移動量td−を補正するアクセル開度対応補正部84D
とがそなえられている。なお、このトルク移動量td−
には、左右いずれの側へトルク移動を行なうかという方
向性も含まれる。
【0073】基準横加速度算出部84Aでは、ハンドル
角度情報と車速情報とから次式によって車両の基準横加
速度GY を算出する。 GY =Vr2 /R R:旋回半径(基準旋回半径) R=(1+A・Vr2 )・lw/δ lt:車両のリヤトレッド lw:車両のホイールベース A:スタビリティファクタ タックイン対応トルク移動量設定部84Bでは、基準横
加速度GY に対して、例えば図3のトルク移動量設定部
84Bのブロック内に示すようなマップを用いて、タッ
クイン対応トルク移動量td−を設定するが、基準横加
速度GY の大きさが基準値GY0よりも大きくなったら、
トルク移動量td−を与える。このマップでは、横軸が
基準横加速度GY であって、この基準横加速度GY につ
いては右向きを正方向としており、縦軸がトルク移動量
td−であって、このトルク移動量td−については左
方向を正方向としている。
【0074】図示するように、基準横加速度GY が右向
きならば、これは右旋回時に相当し、このときには基準
横加速度GY の増加に応じて右輪側へのトルク移動量の
要求が大きくなり、右輪側へのトルク移動量td−を増
大させて、基準横加速度GYが左向きならば、これは左
旋回時に相当し、このときには基準横加速度GY の増加
に応じて左輪側へのトルク移動量td−を増大させる。
ただし、基準横加速度GY が十分に大きい領域ではトル
ク移動量td−は一定に制限される。
【0075】アクセル開度対応補正部84Dは、図3に
示すように、アクセル開度センサ48Gからの検出情報
を入力されるが、この検出情報は、デジタルローパスフ
ィルタ90Eを介して雑音除去されてアクセル開度情報
(aps)とされた上で、さらに、ピークホールド部8
4Cでピークホールドしたものを、入力される。このピ
ークホールド部84Cでは、アクセル開度対応補正部8
4Dで用いるアクセル開度apfをアクセル開度aps
から設定するが、apf≦apsならば、即ち、検出さ
れたアクセル開度apsが前回アクセル開度対応補正部
84Dで用いたアクセル開度apf以上ならば、新たな
アクセル開度apfをこのアクセル開度apsに設定す
る。一方、apf>apsならば、検出されたアクセル
開度apsが前回アクセル開度対応補正部84Dで用い
たアクセル開度apfよりも小さければ、新たなアクセ
ル開度apfを前回のものから例えば最小制御単位(1
bit)だけ減少させたものとする。
【0076】アクセル開度対応補正部84Dでは、この
ようにして得られたアクセル開度apfに対して、図3
中の補正部84Dのブロックに示すように、アクセル開
度apfの大きさが基準値apf0 よりも大きくなった
ら、補正係数kd−を与え、特にアクセル開度apfの
増加に応じて補正係数kd−を増加させる。ただし、ア
クセル開度apfが十分に大きい領域では補正係数kd
−は一定に制限される。
【0077】このように、アクセル開度対応補正部84
Dで設定された補正係数kd−は、サンプルホールダ8
4Gに入力されて、ここで、タックイン対応制御開始・
終了条件判定部84Fによる判定に応じて、タックイン
対応制御用の補正係数kdが設定される。つまり、タッ
クイン対応制御開始・終了条件判定部84Fでは、デジ
タルローパスフィルタ90Eを介して送られたアクセル
開度センサ48Gからのアクセル開度apsの情報と、
アクセル開速度演算部84Eにおいてこのアクセル開度
apsを時間微分して得られるアクセル開速度daps
と、前回の制御周期の補正係数kd及びトルク移動量t
dに基づいて、タックイン対応制御を行なう条件(セッ
ト条件)又はタックイン対応制御を行なわない条件(ク
リヤ条件)が成立するかが判断される。
【0078】セット条件は、アクセル開度apsが所定
値(例えば75bit)よりも小さく、且つ、アクセル
開速度dapsが所定値(例えば−5bit)よりも小
さく、且つ、前回の制御周期の補正係数kdが0であっ
たことである。この時には、アクセル開度対応補正部8
4Dで設定された補正係数kd−を補正係数kdとする
ので、補正係数kd−が0でないかぎり、タックイン対
応制御を行なう。このセット後には、クリヤ条件が成立
しなければ、補正係数kd−をそのまま補正係数kdと
し続ける。
【0079】クリヤ条件は、アクセル開度apsが所定
値(例えば96bit)よりも大きいか、又は、アクセ
ル開速度dapsが所定値(例えば2bit)よりも大
きいか、又は、前回の制御周期のトルク移動量tdが0
であったことである。この時には、補正係数kdを0と
する。補正係数kdが0ならば次の補正部84Hの処理
によりトルク移動量tdが0になるので、タックイン対
応制御は実質的に行なわれなくなる。このクリヤ後に
は、セット条件が成立しなければ、正式な補正係数kd
を0とし続ける。
【0080】このようにして設定された補正係数kd
を、補正部84Hで、タックイン対応トルク移動量設定
部84Bで設定されたトルク移動量td−に積算するこ
とで、タックイン対応トルク移動量tdを得るようにな
っている。こうして設定された操舵角速度比例トルク移
動量tc及びタックイン対応トルク移動量tdは、機構
状態判定部86に送られるが、機構状態判定部86は、
操舵角速度比例トルク移動量tc及びタックイン対応ト
ルク移動量tdを加算する加算部86Aと、加算された
値ta−の絶対値をとってこれを所要の最大値(例え
ば、256bit)に制限しさらにトルク移動量を制御
量taに変換する操舵角速度及びタックイン対応制御量
設定部86Bと、加算部86Aで加算された値ta−に
基づいてトルク移動方向を判定するトルク移動方向判定
部86Cと、判定されたトルク移動方向が現在の機構の
差動状態で実現可能であるか否か及び使用する制御クラ
ッチは何れがよいかを判定してこの判定結果に対応し
て、制御クラッチ方向diraの設定を行なう機構状態
判定及び制御クラッチ方向設定部(以下、単に制御クラ
ッチ方向設定部という)86Dとをそなえている。
【0081】トルク移動方向判定部86Cでは、加算値
ta−の符号に基づいてトルク移動方向dirを設定す
る。即ち、taが正(ta>0)ならば、トルク移動方
向dirは左(L)に、taが0(ta=0)ならば、
トルク移動は行なわず従ってトルク移動方向dirは中
立(N)に、taが負(ta<0)ならば、トルク移動
方向dirは右(R)に、それぞれ設定する。
【0082】制御クラッチ方向設定部86Dでは、車速
算出部48Fからの車速Vrの情報と、実車輪速度差算
出部80Cからの実車輪速度差dvrfの情報と、トル
ク移動方向判定部86Cを通じて得られるトルク移動方
向情報dirとから、まず、トルク移動方向が現在実現
可能であるかを判定するとともに、制御クラッチ方向d
iraの設定を行なう。 ・制御クラッチ方向diraの設定 ここでは、トルク移動方向が現在実現可能であるかの判
定を、回転速度比Smという比の値を利用して行なって
いる。この回転速度比Smは、増速機構の出力側(つま
り、中空軸74側)の回転速度の変化量(ここでは、増
速量)ΔNを入力側(つまり、ギヤハウジング58側)
の回転速度Niで割って得られる無次元値(Sm=ΔN
/Ni)である。
【0083】この回転速度比Smについて、図18,1
9を参照して説明する。図18,19において、Vrl
は左後輪の車輪速度、Vrrは右後輪の車輪速度、Vr
は車体速度であり、Valは左後輪側の変速機構70の
出力側(左後輪側の中空軸74が相当する)の回転速
度、Varは右後輪側の変速機構70の出力側(右後輪
側の中空軸74が相当する)の回転速度である。なお、
車体速度Vrは、入力側であるリヤデフ24のギヤハウ
ジング58の回転速度Niに相当する。
【0084】また、図18は車両が直進している際の各
速度を示しており、このときには、左右後輪の車輪速度
Vrl,Vrrは互いに等しくなり、これらの平均値で
ある車体速度Vrはこれらの車輪速度Vrl,Vrrと
等しくなる。なお、この場合、回転速度比Smは、変速
機構70による増速分ΔN〔=(Val−Vrl)又は
(Var−Vrr)〕を車体速度Vrで割った値〔=
(Val−Vrl)/Vr又は(Var−Vrr)/V
r〕となる。
【0085】そして、各変速機構70の出力側の回転速
度Val,Varは、いずれも入力部の回転速度(即ち
車体速度)Vrよりも高くなって、左輪側の油圧多板ク
ラッチ機構72を係合させることで、左輪側から右輪側
へとトルク移動が実現し、右輪側の油圧多板クラッチ機
構72を係合させることで、右輪側から左輪側へとトル
ク移動が実現する。
【0086】ところで、左右いずれかの油圧多板クラッ
チ機構72を直結させると、変速機構70の変速比に応
じて、左右輪が一定の速度比で回転するようになる。例
えば、図19は左輪側の油圧多板クラッチ機構72を直
結させた場合を示す速度線図である。左輪側の油圧多板
クラッチ機構72を係合させると、左右輪の回転速度の
割合はこの状態に近づくようになり、最終的には、油圧
多板クラッチ機構72が直結状態になって左右輪の回転
速度の割合はこの状態になる。
【0087】一方、車両が左旋回している場合には、左
右の車輪速度Vrl,Vrr間には差動(dvrd)が
生じるので、左輪側の油圧多板クラッチ機構72を係合
させないのに、左右輪の速度比が図19に示すような状
態になることがある。このような状態では、左輪側の油
圧多板クラッチ機構72を係合させても、右輪側へのト
ルク移動は行なえない。もちろん、この時には、右輪側
の油圧多板クラッチ機構72を係合させることで、左輪
側へのトルク移動は行なえる。
【0088】そして、車両の左旋回半径が更に小さくな
って、左右の車輪速度Vrl,Vrr間の実回転速度差
の大きさ|dvrd|が拡大すると、今度は、左輪側の
油圧多板クラッチ機構72を係合させることで、実回転
速度差の大きさ|dvrd|が図19の状態に縮小する
までは、右輪側から左輪側へトルク移動が行なわれる。
【0089】このように、左右いずれかの油圧多板クラ
ッチ機構72を直結させた時の回転速度比Smは、変速
機構70による増速分ΔN(=Val−Vrl)を車体
速度Vrで割った値〔=(Val−Vrl)/Vr〕と
なるが、左右輪の実回転速度差(dvrf=Vrl−V
rr)は、ΔNの2倍(=2ΔN)に相当し、回転速度
比Smで表すとdvrf=2・Sm・Vrとなる。
【0090】なお、回転速度比Smは、変速機構70の
変速比を1:aとするとSm=(a−1)/aと表せ、
この変速比aは変速機構70の歯数比により決定する定
数なので、図19に示す回転速度比Smは予め求めるこ
とが出来る定数である。そして、この境界状態(|dv
rf|=2・Sm・Vr、従って、dvrf=±2・S
m・Vr)よりも左右輪の実回転速度差の大きさ|dv
rf|が小さければ、即ち|dvrf|<2・Sm・V
rならば、左輪側の油圧多板クラッチ機構72を係合さ
せることで、左輪側から右輪側へのトルク移動が実現
し、右輪側の油圧多板クラッチ機構72を係合させるこ
とで、右輪側から左輪側へのトルク移動が実現する。境
界状態|dvrf|=2・Sm・Vrは、dvrf=±
2・Sm・Vrとなるので、ここでは、2・Sm・Vr
を第1境界回転速度差、−2・Sm・Vrを第2境界回
転速度差とする。
【0091】これに対して、この境界状態(dvrf=
2・Sm・Vr)以上に左右輪の実回転速度差の大きさ
|dvrf|が大きくなると、即ちdvrf≦−2・S
m・Vr又は2・Sm・Vr≦dvrfならば、一方向
へのトルク移動しか実現しなくなる。つまり、dvrf
≦−2・Sm・Vrなら、右輪側から左輪側へのトルク
移動は実現するが、左輪側の油圧多板クラッチ機構72
を係合させても、左輪側から右輪側へのトルク移動は実
現しなくなる。また、2・Sm・Vr≦dvrfなら、
左輪側から右輪側へのトルク移動は実現するが、右輪側
の油圧多板クラッチ機構72を係合させても、右輪側か
ら左輪側へのトルク移動は実現しなくなる。
【0092】ところで、この境界状態(dvrf=2・
Sm・Vr,dvrf=−2・Sm・Vr)は、図20
に示すように、右輪回転速度Vrrを横軸(x軸)とし
左輪回転速度Vrlを縦軸(y軸)とした座標上で考え
ることもできる。図20中において、左クラッチ非差動
と付す直線が、図19に示す状態、つまり、dvrf=
−2・Sm・Vrの状態を示し、右クラッチ非差動と付
す直線が、dvrf=2・Sm・Vrの状態を示す。
【0093】また、図20に示すように、左右輪の回転
速度Vrr,Vrlが等しい状態は、傾き1の直線L1
で表せ、また、車速VrはVr=(Vrr+Vrl)/
2であるから、車速が一定(Vr=C)の場合の回転速
度Vrr,Vrlの関係は、Vrl=−Vrr+2Cと
なり、直線L1と直交する直線L2で表せる。なお、図
20中、iはx軸の正方向(即ち、右輪回転速度Vrr
の方向)を示す単位ベクトルであり、jはy軸の正方向
(即ち、左輪回転速度Vrrの方向)を示す単位ベクト
ルである。
【0094】ここで、図20に示すxy座標系を45°
だけ左回転させると、図21に示すようなXY座標系に
なる。なお、図21中、i,jは図20中に示した単位
ベクトルであり、uはX軸の正方向を示す単位ベクトル
であり、vはY軸の正方向を示す単位ベクトルである。
このようなXY座標系のベクトルu,vは次式のように
xy座標系のベクトルi,jで表せる。
【0095】u=cos(π/4)i−sin(π/4)j v=sin(π/4)i+cos(π/4)j よって、このXY座標系の横軸(X軸)は(−1/√
2)(Vrl−Vrr)=(−1/√2)dvrfとな
り、回転速度差dvrfに相当し、縦軸(Y軸)は(1
/√2)(Vrl+Vrr)=(1/√2)Vrとな
り、車速Vrに相当する。
【0096】左クラッチ非差動の直線及び右クラッチ非
差動の直線も、図示するように45°左回転し、車速が
一定(Vr=C)の直線も、図21中に符号L2で示す
ようになる。この図21中で、前述の境界条件dvrf
=2・Sm・Vrは右クラッチ非差動の直線に相当し、
境界条件dvrf=−2・Sm・Vrは左クラッチ非差
動の直線に相当する。
【0097】このような点から、実回転速度差dvrf
の大きさを境界値(境界回転速度差)±2・Sm・Vr
に対比させながら、トルク移動が実現するか否かを以下
のような5つの場合に分類することができる。 (1)−2・Sm・Vr<dvrf<2・Sm・Vrの
場合(第1状態) 左右へのトルク移動が何れも可能であり、左輪側の油圧
多板クラッチ機構72を係合させれば、左輪側から右輪
側へのトルク移動が実現し、右輪側の油圧多板クラッチ
機構72を係合させれば、右輪側から左輪側へのトルク
移動が実現する。 (2)dvrf<−2・Sm・Vrの場合(第2状態) 左輪へのトルク移動は可能であるが、右輪へのトルク移
動は不可能である。特に、左輪側の油圧多板クラッチ機
構72を係合させても、右輪側の油圧多板クラッチ機構
72を係合させても、右輪側から左輪側へのトルク移動
が実現する。 (3)2・Sm・Vr<dvrfの場合(第3状態) 上述の場合とは逆に、右輪へのトルク移動は可能である
が、左輪へのトルク移動は不可能である。また、左輪側
の油圧多板クラッチ機構72を係合させても、右輪側の
油圧多板クラッチ機構72を係合させても、左輪側から
右輪側へのトルク移動が実現する。 (4)dvrf=−2・Sm・Vrの場合(第4状態) 左輪へのトルク移動は可能であるが、右輪へのトルク移
動は不可能である。つまり、左輪側の油圧多板クラッチ
機構72ではクラッチディスク間の差動がなく、トルク
移動を実現できない。一方、右輪側の油圧多板クラッチ
機構72を係合させると、右輪側から左輪側へのトルク
移動を行なうことができる。 (5)dvrf=2・Sm・Vrの場合(第5状態) 右輪へのトルク移動は可能であるが、左輪へのトルク移
動は不可能である。つまり、右輪側の油圧多板クラッチ
機構72ではクラッチディスク間の差動がなく、トルク
移動を実現できない。一方、左輪側の油圧多板クラッチ
機構72を係合させると、左輪側から右輪側へのトルク
移動を行なうことができる。
【0098】トルク移動を行なえるか否かの判断条件
は、上述のように、5つの場合に分けられるが、なお、
上記の分類(1)〜(5)は、一定車速(V=C)のと
きの実回転速度差dvrfの値が図21中の直線L2上
のどの位置にあるかによりグラフ上から判別することも
できる。なお、図21中には、直線L2上に分類番号に
対応した数字が付されている。
【0099】ところで、(4),(5)の場合のよう
に、実回転速度差dvrfが−2・Sm・Vr又は2・
Sm・Vrと一致するのは瞬間的なものであって、実回
転速度差dvrfが−2・Sm・Vr又は2・Sm・V
rの付近で増減すると、制御にハンチングが生じて好ま
しくない。これに対処するには、境界値−2・Sm・V
r又は2・Sm・Vrの付近に不感帯を設ければよい。
例えば、不感帯を境界値の上下にそれぞれ幅dbだけも
うければ、境界値−2・Sm・Vrを境界領域(−2・
Sm・Vr−db)〜(−2・Sm・Vr+db)に変
え、境界値2・Sm・Vrを境界領域(2・Sm・Vr
−db)〜(2・Sm・Vr+db)に変えればよい。
なお、境界領域(−2・Sm・Vr−db)〜(−2・
Sm・Vr+db)が第2境界回転速度差領域に、境界
値2・Sm・Vrを境界領域(2・Sm・Vr−db)
〜(2・Sm・Vr+db)が第2境界回転速度差領域
に相当する。
【0100】この場合には、上記の(1)〜(5)の各
場合を、それぞれ、以下の(1′)〜(5′)のよう
に、置き換えることになる。 (1′)db−2・Sm・Vr<dvrf<2・Sm・
Vr−dbの場合(第1状態) (2′)dvrf<−2・Sm・Vr−dbの場合(第
2状態) (3′)2・Sm・Vr+db<dvrfの場合(第3
状態) (4′)2・Sm・Vr−db<dvrf<2・Sm・
Vr+dbの場合(第4状態) (5′)−2・Sm・Vr−db<dvrf<−2・S
m・Vr+dbの場合(第5状態) また、この分類をグラフに示すと、図22のようにな
り、分類(4′),(5′)は斜線で示す領域になる。
【0101】このように、制御クラッチ方向設定部86
Dでは、検出された車速Vrと実車輪速度差dvrfと
から現在の走行状態が、上記の(1′)〜(5′)のい
ずれの場合に相当するかを判断し、トルク移動方向情報
を受けて、各場合において、トルク移動方向が現在実現
可能であるか否かを判定するのである。制御クラッチ方
向設定部86Dでは、トルク移動が可能な場合には、ト
ルク移動方向判定部86Cで設定されたトルク移動方向
dir(L,R,Nのいずれか)に基づいて、制御クラ
ッチ方向diraを(L),(R),(N)のいずれか
に設定する。また、トルク移動が不可能な場合には、制
御クラッチ方向diraとして何れの油圧多板クラッチ
機構72も係合制御を行なわないように、クラッチ解除
信号Zを設定する。
【0102】トルク移動が可能な場合の設定は、左右へ
のトルク移動が共に可能である場合〔即ち、(1)又は
(1′)〕及びトルク移動が一方のみ可能である境界状
態の場合〔即ち、(4)又は(4′),(5)又は
(5′)〕は、制御クラッチ方向diraを次のように
設定する。つまり、トルク移動方向判定部86Cで設定
されたトルク移動方向dirが左(L)であれば、本実
施例の機構の特性から、右輪側の油圧多板クラッチ機構
72を係合させる。したがって、制御クラッチ方向di
raとしては右輪側の油圧多板クラッチ機構72を係合
させる信号(R)を設定する。トルク移動方向判定部8
6Cで設定されたトルク移動方向dirが右(R)であ
れば、左輪側の油圧多板クラッチ機構72を係合させる
ように、制御クラッチ方向diraとしては左輪側の油
圧多板クラッチ機構72を係合させる信号(L)を設定
する。
【0103】また、トルク移動方向判定部86Cで設定
されたトルク移動方向dirが中立(N)であれば、何
れの油圧多板クラッチ機構72も係合させないように、
中立信号(N)を設定する。ところが、上記の(2)又
は(2′)、及び、(3)又は(3′)の場合には、左
右いずれの油圧多板クラッチ機構72を係合させても、
同一方向へのトルク移動が実現するので、左右のうちい
ずれか一方の油圧多板クラッチ機構72を選択する必要
がある。ここでは、トルク伝達ロスが少ない方の油圧多
板クラッチ機構72を選択するようにしている(この作
動モードを特殊作動モードという。)。
【0104】つまり、(2)又は(2′)の場合には、
右輪側の油圧多板クラッチ機構72のクラッチディスク
間の差動は極めて大きく、これに対して、左輪側の油圧
多板クラッチ機構72のクラッチディスク間の差動は小
さい。一般に、クラッチディスク間の差動が小さい方
が、トルク伝達ロスが少ないので、この点を考慮して、
この場合には、左輪側へトルク移動を行なうために、ク
ラッチディスク間の差動の大きい右輪側の油圧多板クラ
ッチ機構72は係合させずに、左輪側の油圧多板クラッ
チ機構72を係合させるようにする。したがって、制御
クラッチ方向diraとしては左側の油圧多板クラッチ
機構72を係合させる信号(L)を設定する。
【0105】また、(3)又は(3′)の場合には、ト
ルク伝達ロスが少なくなるように、右輪側へトルク移動
を行なうために、クラッチディスク間の差動の大きい左
輪側の油圧多板クラッチ機構72は係合させずに、クラ
ッチディスク間の差動の小さい右輪側の油圧多板クラッ
チ機構72を係合させるようにする。したがって、制御
クラッチ方向diraとしては左側の油圧多板クラッチ
機構72を係合させる信号(L)を設定する。
【0106】制御クラッチ方向設定部86Dで、このよ
うに設定された制御クラッチ方向diraの情報は総合
判定部88に出力されるようになっている。 ・制御クラッチ方向dirbの設定 ここで、前述の制御クラッチ方向dirbの設定につい
て、説明する。ところで、前述のように、制御クラッチ
方向dirbの基になるトルク移動方向については、一
般に、dvrf−dvhfの符号が正であれば右方向
(R)とし、dvhr−dvrdの符号が負であれば左
方向(L)とするので、この制御クラッチ方向dirb
は、このように左右輪の実回転速度差dvrdと基準車
輪速度差dvhfとの関係に基づくことになる。また、
この制御クラッチ方向dirbを設定するにあたって
も、左右いずれのクラッチを係合しても同一方向へトル
ク移動が行なわれる場合には、制御クラッチ方向dir
aの設定で考慮したように、トルク伝達ロスが少ない方
の油圧多板クラッチ機構72を選択することにしてい
る。このため、目標とする基準車輪速度差dvhfが、
前述の境界値2・Sm・Vr,−2・Sm・Vrに対し
てどのような関係にあるかによって、制御クラッチ方向
dirbは変わってくる。
【0107】そこで、この制御クラッチ方向dirbの
設定は、基準車輪速度差dvhfの大きさに応じて、次
の3つの場合に大分類している。 (A) 2・Sm・Vr<dvhf (B) −2・Sm・Vr≦dvhf≦2・Sm・Vr (C) dvhf<−2・Sm・Vr なお、上述の判別基準値2・Sm・Vr,−2・Sm・
Vrのうち、値Vrは車速であり既に説明したように車
速算出部48Fで算出されるものであるが、値Smは、
既に説明した回転速度比である。また、(A)の状態は
例えば図23に示すにように図示でき、(B)の状態は
例えば図24に示すにように図示でき、(C) の状態は
例えば図25に示すにように図示できる。
【0108】そして、上述の各場合毎に、さらに以下の
ように、小分類して制御クラッチ方向dirbを設定し
ている。 (A) 2・Sm・Vr<dvhfの条件下では (A1)dvhf<dvrfの場合〔図23の区間
(1)参照〕 左右いずれのクラッチを係合させても右輪側へトルクが
移動して、左右輪の実回転速度差dvrdが基準車輪速
度差dvhfに近づくが、右輪側の油圧多板クラッチ機
構72の方が差動量が少なくトルク伝達ロスが少ないの
で、これを選択するように、制御クラッチ方向dirb
を右(R)とする。 (A2)2・Sm・Vr≦dvrf≦dvhfの場合
〔図23の区間(2)参照〕 左右いずれのクラッチを係合させても右輪側へトルクが
移動して、左右輪の実回転速度差dvrdを基準車輪速
度差dvhfに近づけられない。そこで、左右いずれの
クラッチも係合させないように、制御クラッチ方向di
rbを中立(N)とする。 (A3)−2・Sm・Vr<dvrf<2・Sm・Vr
の場合〔図23の区間(3)参照〕 左輪側のクラッチを係合させると右輪側へトルクが移動
して、右輪側のクラッチを係合させると左輪側へトルク
が移動する。左右輪の実回転速度差dvrdを基準車輪
速度差dvhfに近づけるには、右輪側のクラッチを係
合させて左輪側へトルクを移動させ、左輪側の回転速度
を右輪側に対して高めればよい。そこで、制御クラッチ
方向dirbを右(R)とする。 (A4)dvrf<−2・Sm・Vrの場合〔図23の
区間(4)参照〕 左右いずれのクラッチを係合させても左輪側へトルクが
移動して、左右輪の実回転速度差dvrdが基準車輪速
度差dvhfに近づくが、左輪側の油圧多板クラッチ機
構72の方が差動量が少なくトルク伝達ロスが少ないの
で、これを選択するように、制御クラッチ方向dirb
を左(L)とする。 (B) −2・Sm・Vr≦dvhf≦2・Sm・Vr
の条件下では (B1)2・Sm・Vr<dvrfの場合〔図24の区
間(1)参照〕 左右いずれのクラッチを係合させても右輪側へトルクが
移動して、左右輪の実回転速度差dvrdが基準車輪速
度差dvhfに近づくが、右輪側の油圧多板クラッチ機
構72の方が差動量が少なくトルク伝達ロスが少ないの
で、これを選択するように、制御クラッチ方向dirb
を右(R)とする。 (B2)dvhf<dvrf≦2・Sm・Vrの場合
〔図24の区間(2)参照〕 左輪側のクラッチを係合させると右輪側へトルクが移動
して、右輪側のクラッチを係合させると左輪側へトルク
が移動する。左右輪の実回転速度差dvrdを基準車輪
速度差dvhfに近づけるには、左輪側のクラッチを係
合させて右輪側へトルクを移動させ、右輪側の回転速度
を左輪側に対して高めればよい。そこで、制御クラッチ
方向dirbを左(L)とする。 (B3)dvrf=dvhfの場合〔図24の区間
(3)参照〕 この場合には制御が不要なので、左右いずれのクラッチ
も係合させないように、制御クラッチ方向dirbを中
立(N)とする。 (B4)−2・Sm・Vr≦dvrf<dvhfの場合
〔図24の区間(4)参照〕 左輪側のクラッチを係合させると右輪側へトルクが移動
して、右輪側のクラッチを係合させると左輪側へトルク
が移動する。左右輪の実回転速度差dvrdを基準車輪
速度差dvhfに近づけるには、左輪側のクラッチを係
合させて右輪側へトルクを移動させ、右輪側の回転速度
を左輪側に対して高めればよい。そこで、制御クラッチ
方向dirbを右(R)とする。 (B5)dvrf<−2・Sm・Vrの場合〔図24の
区間(5)参照〕 左右いずれのクラッチを係合させても左輪側へトルクが
移動して、左右輪の実回転速度差dvrdが基準車輪速
度差dvhfに近づくが、左輪側の油圧多板クラッチ機
構72の方が差動量が少なくトルク伝達ロスが少ないの
で、これを選択するように、制御クラッチ方向dirb
を左(L)とする。 (C) dvhf<−2・Sm・Vrの条件下では (C1)2・Sm・Vr<dvrfの場合〔図25の区
間(1)参照〕 左右いずれのクラッチを係合させても右輪側へトルクが
移動して、左右輪の実回転速度差dvrdが基準車輪速
度差dvhfに近づくが、右輪側の油圧多板クラッチ機
構72の方が差動量が少なくトルク伝達ロスが少ないの
で、これを選択するように、制御クラッチ方向dirb
を右(R)とする。 (C2)−2・Sm・Vr<dvrf≦2・Sm・Vr
の場合〔図25の区間(2)参照〕 左輪側のクラッチを係合させると右輪側へトルクが移動
して、右輪側のクラッチを係合させると左輪側へトルク
が移動する。左右輪の実回転速度差dvrdを基準車輪
速度差dvhfに近づけるには、左輪側のクラッチを係
合させて右輪側へトルクを移動させ、右輪側の回転速度
を左輪側に対して高めればよい。そこで、制御クラッチ
方向dirbを左(L)とする。 (C3)dvhf≦dvrf≦−2・Sm・Vrの場合
〔図25の区間(3)参照〕 左右いずれのクラッチを係合させても左輪側へトルクが
移動して、左右輪の実回転速度差dvrdを基準車輪速
度差dvhfに近づけられない。そこで、左右いずれの
クラッチも係合させないように、制御クラッチ方向di
rbを中立(N)とする。 (C4)dvrf<dvhfの場合〔図25の区間
(4)参照〕 左右いずれのクラッチを係合させても左輪側へトルクが
移動して、左右輪の実回転速度差dvrdが基準車輪速
度差dvhfに近づくが、左輪側の油圧多板クラッチ機
構72の方が差動量が少なくトルク伝達ロスが少ないの
で、これを選択するように、制御クラッチ方向dirb
を左(L)とする。
【0109】なお、この制御クラッチ方向dirbの設
定でも、制御にハンチングが生じないように、境界値d
vhf,−2・Sm・Vr,2・Sm・Vrの付近に不
感帯を設ける必要がある。このような不感帯は、例えば
図26〜28に斜線で示すように設ければよい。つま
り、(A)の条件下では図26に示すように、境界値d
vhfの上側(+側)と、境界値2・Sm・Vrの下側
(−側)と、境界値−2・Sm・Vrの下側(−側)と
にそれぞれ幅dbだけ不感帯を設けて、上述の(A)に
おける(A1)〜(A4)の区分をそれぞれ以下の(A
1′)〜(A4′)のように変更すればよい。 (A1′)dvhf+db<dvrf〔図26の区間
(1)参照〕 (A2′)2・Sm・Vr−db≦dvrf≦dvhf
+db〔図26の区間(2)参照〕 (A3′)−2・Sm・Vr−db<dvrf<2・S
m・Vr−db〔図26の区間(3)参照〕 (A4′)dvrf<−2・Sm・Vr−db〔図26
の区間(4)参照〕 また、(B)の条件下では図27に示すように、境界値
2・Sm・Vrの上側(+側)と、境界値dvhfの上
側及び下側(+側及び−側)と、境界値−2・Sm・V
rの下側(−側)とにそれぞれ幅dbだけ不感帯を設け
て、上述の(B)における(B1)〜(B5)の区分を
それぞれ以下の(B1′)〜(B5′)のように変更す
ればよい。 (B1′)2・Sm・Vr+db<dvrfの場合〔図
27の区間(1)参照〕 (B2′)dvhf+db<dvrf≦2・Sm・Vr
+dbの場合〔図27の区間(2)参照〕 (B3′)dvhf−db≦dvrf≦dvhf+db
の場合〔図27の区間(3)参照〕 (B4′)−2・Sm・Vr−db≦dvrf<dvh
f−dbの場合〔図27の区間(4)参照〕 (B5′)dvrf<−2・Sm・Vr−dbの場合
〔図27の区間(5)参照〕 そして、(C)の条件下では図28に示すように、境界
値2・Sm・Vrの上側(+側)と、境界値−2・Sm
・Vrの上側(+側)と、境界値dvhfの下側(−
側)とにそれぞれ幅dbだけ不感帯を設けて、上述の
(C)における(C1)〜(C4)の区分をそれぞれ以
下の(C1′)〜(C4′)のように変更すればよい。 (C1′)2・Sm・Vr+db<dvrfの場合〔図
28の区間(1)参照〕 (C2′)−2・Sm・Vr+db<dvrf≦2・S
m・Vr+dbの場合〔図28の区間(2)参照〕 (C3′)dvhf−db≦dvrf≦−2・Sm・V
r+dbの場合〔図28の区間(3)参照〕 (C4′)dvrf<dvhf−dbの場合〔図28の
区間(4)参照〕 ・総合判定 総合判定部88は、図4に示すように、基準回転速度差
追従制御部80の基準回転速度差追従トルク移動量設定
部80Eから送られた制御量tb及び制御クラッチ方向
dirbの情報と、リミッタ86B,制御クラッチ方向
設定部86Dを通じて機構状態判定部86から送られる
制御量ta及び制御クラッチ方向dira及びクラッチ
切換信号cdcの情報に基づいて、最終的な制御量tf
及び制御クラッチ方向dirfを決定し出力するように
なっている。
【0110】この総合判定部88では、2つの制御クラ
ッチ方向dira,dirbが同一方向の場合(即ち、
dira=dirb)には、当然、制御クラッチ方向d
irfはこの制御クラッチ方向dira,dirbに
〔つまり、dirf=dira〕は設定し、制御量tf
は2つの制御量ta,tbのうちの大きい方に〔つま
り、tf=max(ta,tb)〕に設定する。
【0111】また、2つの制御クラッチ方向dira,
dirbが逆方向の場合(即ち、dira≠dirb)
には、制御クラッチ方向dirfは2つの制御量ta,
tbを比較して大きい方に相当する制御クラッチ方向と
する。つまり、ta>tbならば、制御クラッチ方向d
irfはdiraとし、ta<tbならば、制御クラッ
チ方向dirfはdirbとし、ta=tbならば、制
御クラッチ方向dirfはN(移動を行なわない)とす
る。また、制御量tfは2つの制御量ta,tbの差、
即ち、tf=abs(ta−tb)に設定する。
【0112】このように設定された制御量tfは制御量
変換部90Aに出力され、この制御量変換部90Aで、
例えば比例弁特性マップを用いて制御量tfに見合った
電流値Iに変換されて、信号処理部(ディザ処理部)9
0Bに送られ、ディザ処理部90Bで、電流値Iに所要
の信号処理を施されて、電磁比例圧力制御弁(比例弁)
104に出力されるようになっている。
【0113】一方、制御クラッチ方向dirfは出力信
号処理部90Cに送られ、この出力信号処理部90C
で、所要の信号処理が施されて、電磁方向制御弁(方向
切換弁)105に出力されるようになっている。 ・動作(フローチャートの説明) この車両用左右輪間トルク移動制御装置は、上述のよう
に構成されているので、以下のようにして、左右輪間の
トルク移動制御が行なわれる。
【0114】ここでは、まず、図29のメインルーチン
フローチャートを参照しながら、制御の全体の流れの一
例を説明し、メインルーチン内の各ステップの詳細は、
図30〜38の各サブルーチンフローチャートを参照し
ながら順に後述する。この制御は、イグニッションスイ
ッチがオンに入れられることでスタートして、図29に
示すように、まず、各制御要素を初期設定する(ステッ
プA1)。この時には、タイマが起動しタイマカウント
が開始される。
【0115】次に、イグニッションスイッチのオン・オ
フを判定するが(ステップA2)、制御開始時には、イ
グニッションスイッチはオンなので、ステップA3に進
んで、入力信号処理を行ない、さらに、ステップA4
で、左右トルク移動制御、即ち、左右トルク移動制御量
の設定を行ない、ステップA5で、設定された制御量に
基づいて制御信号を出力し、この状態をモニター表示す
る(ステップA6)。
【0116】ついで、ステップA7で、設定された制御
周期が経過したかが判断されて、制御周期が経過するま
で待って、タイマカウントを0にクリヤして、再び、ス
テップA2に戻る。このようにして、イグニッションス
イッチがオフに切り換えられない限り、このステップA
2〜A6の動作が、設定された制御周期毎に行なわれ
る。
【0117】上述の初期設定ステップでは、図30に示
すように、制御にかかる各変数を初期化し(ステップB
1)、入出力インタフェース(I/O)を初期化し(ス
テップB2)、タイマを初期化し(ステップB3)、入
出力インタフェース(I/O)の変換をスタートする
(ステップB4)。また、上述の入力信号処理ステップ
では、図31に示すように、まず、各センサ類におい
て、スイッチ情報を入力し(ステップC1)、次にアナ
ログセンサ信号をディジタルへ変換して入力する(ステ
ップC2)。さらに、ディジタル信号として、車速算出
部48F,基準車輪速度差算出部80A,実車輪速度差
算出部80C,基準横加速度算出部84A,ピークホー
ルド部84C,アクセル開速度演算部84E等を入力す
る(ステップC3)。
【0118】そして、左右の車輪速度の情報Vl,Vr
を受けて、車速算出部48F及び実車輪速度差算出部8
0Cで、車輪速度Vl,Vrに関する計算を行なう(ス
テップC4)。つまり、車速算出部48Fで車輪速度V
l,Vrから車体速度Vr〔=(1/2)(Vl+V
r)〕を算出し、実車輪速度差算出部80Cで、車輪速
度Vl,Vrから実車輪速度差dvrd(=Vl−V
r)を算出する。
【0119】さらに、実車輪速度差dvrdに関して
は、フィルタ80Dでフィルタ処理され、信号dvrf
として出力される(ステップC5)。また、基準車輪速
度差算出部80A及び基準横加速度算出部84Aで、車
速Vrとハンドル角δとから、基準回転半径R(=sn
kir)が演算される(ステップC6)。基準車輪速度
差算出部80Aで、この基準回転半径Rと車速Vrとか
ら、基準車輪速度差dvhrを算出し(ステップC
7)、この基準車輪速度差dvhrはフィルタ80Bで
車両遅れモデルに合うように処理を施され、信号dvh
fとして出力される(ステップC8)。基準横加速度算
出部84Aでは、基準回転半径Rと車速Vrとから、基
準横加速度GY を演算する(ステップC9)。
【0120】さらに、ピークホールド部84Cで、アク
セル開度apsをピークホールド処理して、アクセル開
度apfを求める(ステップC10)。つまり、今回検
出されたアクセル開度apsが前回アクセル開度対応補
正部84Dで用いたアクセル開度apf以上ならば、新
たなアクセル開度apfをこのアクセル開度apsに設
定し、一方、今回検出されたアクセル開度apsが前回
アクセル開度対応補正部84Dで用いたアクセル開度a
pfよりも小さければ、新たなアクセル開度apfを前
回のものから例えば最小制御単位(1bit)だけ減少
させたものとする。
【0121】そして、アクセル開速度演算部84Eにお
いて、アクセル開度apsを時間微分してアクセル開速
度dapsを算出する(ステップC11)。この入力信
号処理ステップに続く、左右トルク移動制御ステップで
は、図32に示すように、まず、基準回転速度差追従制
御部80の基準回転速度差追従トルク移動量設定部80
Eで、基準回転速度差に追従する制御量(=トルク移動
量または制御ゲイン)tbを求める(ステップD1)。
【0122】さらに、操舵角速度比例制御部82の補正
係数設定部82Bで車速に応じて操舵角速度比例制御の
ための補正係数kcを設定し(ステップD2)、操舵角
速度対応トルク移動量設定部82Aで、左右輪間のトル
ク移動量(又はトルク制御ゲイン)tc−を設定する
(ステップD3)。そして、タックイン対応制御部84
のタックイン対応トルク移動量設定部84Bで、基準横
加速度GY に基づいてタックイン対応のトルク移動量
(横加速度ゲイン)td−を設定し(ステップD4)、
アクセル開度対応補正部84Dで、タックイン対応制御
用の、アクセル開度apfに応じた補正係数kd−を求
める(ステップD5)。さらに、タックイン対応制御開
始・終了条件判定部84Fで、タックイン対応制御を開
始すべきか終了すべきかが判断されて、タックイン対応
制御を開始すべき場合には、この時にアクセル開度対応
補正部84Dで求められた補正係数kd−を正式な補正
係数kdとする(ステップD6)。このタックイン対応
制御開始・終了条件を判定するステップの詳細は後述す
る。
【0123】この後、ステップD7に進み、トルク移動
量tc,tdからトルク移動量taを算出する。つま
り、補正部82Cで、操舵角速度対応トルク移動量設定
部82Aで設定されたトルク移動量tc−に補正係数k
cを積算して車速対応補正し、トルク移動量tcを得
て、補正部84Hで、タックイン対応トルク移動量設定
部84Bで設定されたトルク移動量td−に補正係数k
dを積算することで、タックイン対応トルク移動量td
を得る。さらに、加算部86Aこれらのトルク移動量t
c,tdを加算することで、トルク移動量taを求め
る。
【0124】ついで、トルク移動方向判定部86Cで、
トルク移動量taからその制御方向dirを設定し(ス
テップD8)、制御クラッチ方向設定部86Dで、判定
されたトルク移動方向が現在の機構の差動状態で実現可
能であるか否かを判定してこの判定結果に対応してトル
ク移動量に関する情報diraを出力する(ステップD
9)。この機構状態を判定するステップの詳細は後述す
る。
【0125】さらに、左右の制御方向dirbを求める
(ステップD10)。この制御方向dirbを求めるス
テップの詳細は後述する。そして、総合判定部88で
は、基準回転速度差追従制御部80の基準回転速度差追
従トルク移動量設定部80Eから送られるトルク移動量
tb及びトルク移動方向dirbの情報と、リミッタ8
6B,制御クラッチ方向設定部86Dを通じて機構状態
判定部86から送られるトルク移動量ta及びトルク移
動方向dira及びクラッチ切換信号cdcの情報に基
づいて、最終的なトルク移動量tf及びトルク移動方向
dirfを決定し出力する(ステップD11)。この総
合判定のステップの詳細は後述する。
【0126】制御信号出力ステップでは、図33に示す
ように、制御量変換部90Aで、入力されたトルク移動
量tfがこれに見合った油圧を得られる電流値Iに変換
され、信号処理部90Bから比例弁104に出力される
(ステップE1)。また、出力信号処理部90Cで、制
御方向情報dircに所要の信号処理が施され、方向切
換弁105に出力される。さらに、これらの制御量等に
基づいて電動オイルポンプ102が制御される。
【0127】終了処理ステップでは、図34に示すよう
に、入出力インタフェース(I/O)の変換を終了して
(ステップF1)、タイマをリセットし(ステップF
2)、入出力インタフェース(I/O)をリセットし
(ステップF3)、制御にかかる各変数をリセットする
(ステップF4)。つぎに、図32のタックイン対応制
御の開始・終了条件を判断するステップ(ステップD
6)について、図35を参照して説明する。
【0128】図35に示すように、まず、ステップH1
で、アクセル開度が小であること、アクセル開速度
が負に大であること、タックイン対応制御が行なわれ
ていないこと、の3つの条件が全て満たされているか否
かが判断される。これらの〜の3つの条件が全て満
たされていれば、タックイン対応制御を開始する(ステ
ップH2)。
【0129】また、これらの3つの条件が1つでも満た
されていなければ、ステップH3に進んで、アクセル
開度が大であること、アクセル開速度が正であるこ
と、タックイン対応制御の制御トルクが0であること
こと、の3つの条件のうち少なくとも何れか1つが満た
されているか否かが判断される。これらの〜の3つ
の条件がいずれも満たされていなければ、タックイン対
応制御を続行し(ステップH4)、これらの〜の3
つの条件の少なくとも1つが満たされていれば、タック
イン対応制御を解除する(ステップH5)。
【0130】つぎに、図32の機構状態を判定するステ
ップ(ステップD9)について、図36を参照して説明
する。図36に示すように、まず、ステップJ1で、境
界値2・Sm・Vrを値SmVr2に設定する。次に、
ステップJ2で、実車輪速度差dvrfが、−SmVr
2よりも大きくSmVr2よりも小さい範囲に入ってい
るかが判断される。
【0131】dvrfが−SmVr2よりも大きくSm
Vr2よりも小さければ、前述の(1)の条件に相当す
る。この場合には、左右へのトルク移動が何れも可能で
あり、左輪側の油圧多板クラッチ機構72を係合させれ
ば、左輪側から右輪側へのトルク移動が実現し、右輪側
の油圧多板クラッチ機構72を係合させれば、右輪側か
ら左輪側へのトルク移動が実現する。
【0132】そこで、ステップJ7に進み、トルク移動
方向dirが右輪増大,左輪増大,その他(中立)の何
れであるが判断され、右輪増大ならば制御クラッチ方向
diraを左(L)とし(ステップJ8)、左輪増大な
らば制御クラッチ方向diraを右(R)とし(ステッ
プJ9)、その他ならば制御クラッチ方向diraを中
立(N)とする(ステップJ10)。
【0133】ステップJ2で、dvrfが−SmVr2
よりも大きくSmVr2よりも小さい範囲にないと判断
すると、ステップJ3に進み、dvrfが−SmVr2
よりも小さいか否かが判断される。ここで、dvrfが
−SmVr2よりも小さければ、前述の(2)の条件に
相当する。この場合には、左輪へのトルク移動は可能で
あるが、右輪へのトルク移動は不可能である。特に、左
輪側の油圧多板クラッチ機構72を係合させても、右輪
側の油圧多板クラッチ機構72を係合させても、右輪側
から左輪側へのトルク移動が実現するが、左輪側の油圧
多板クラッチ機構72を係合させた方がトルクロスが少
ない。
【0134】そこで、ステップJ11へ進んで、トルク
移動方向dirが右輪増大,左輪増大,その他(中立)
の何れであるが判断され、右輪増大ならば実現不可能な
ので制御クラッチ方向diraを不可(Z)とし(ステ
ップJ12)、左輪増大ならばトルクロスが少ないよう
に制御クラッチ方向diraを左(L)とし(ステップ
J13)、その他ならば制御クラッチ方向diraを中
立(N)とする(ステップJ14)。
【0135】ステップJ3で、dvrfが−SmVr2
よりも小さくないと判断されると、ステップJ4に進
み、dvrfがSmVr2よりも大きいか否かが判断さ
れる。ここで、dvrfがSmVr2よりも大きけれ
ば、前述の(3)の条件に相当する。この場合には、上
述の場合とは逆に、右輪へのトルク移動は可能である
が、左輪へのトルク移動は不可能である。また、左輪側
の油圧多板クラッチ機構72を係合させても、右輪側の
油圧多板クラッチ機構72を係合させても、左輪側から
右輪側へのトルク移動が実現するが、右輪側の油圧多板
クラッチ機構72を係合させた方がトルクロスが少な
い。
【0136】そこで、ステップJ15へ進んで、トルク
移動方向dirが右輪増大,左輪増大,その他(中立)
の何れであるが判断され、右輪増大ならば実現不可能な
ので制御クラッチ方向diraを不可(Z)とし(ステ
ップJ16)、左輪増大ならばトルクロスが少ないよう
に制御クラッチ方向diraを左(L)とし(ステップ
J17)、その他ならば制御クラッチ方向diraを中
立(N)とする(ステップJ18)。
【0137】さらに、ステップJ4で、dvrfがSm
Vr2よりも大きくないと判断されると、ステップJ5
に進み、dvrfが−SmVr2と等しいか否かが判断
される。ここで、dvrfが−SmVr2が等しけれ
ば、前述の(4)の条件に相当する。この場合には、左
輪へのトルク移動は可能であるが、右輪へのトルク移動
は不可能である。つまり、左輪側の油圧多板クラッチ機
構72ではクラッチディスク間の差動がなく、トルク移
動を実現できない。一方、右輪側の油圧多板クラッチ機
構72を係合させると、右輪側から左輪側へのトルク移
動を行なうことができる。
【0138】そこで、ステップJ19へ進んで、トルク
移動方向dirが右輪増大,左輪増大,その他(中立)
の何れであるが判断され、右輪増大ならば実現不可能な
ので制御クラッチ方向diraを不可(Z)とし(ステ
ップJ20)、左輪増大ならば制御クラッチ方向dir
aを右(R)とし(ステップJ21)、その他ならば制
御クラッチ方向diraを中立(N)とする(ステップ
J18)。
【0139】さらに、ステップJ5で、dvrfが−S
mVr2と等しくないと判断されると、ステップJ6に
進み、dvrfがSmVr2と等しいか否かが判断され
る。ここで、dvrfがSmVr2が等しければ、前述
の(5)の条件に相当する。この場合には、右輪へのト
ルク移動は可能であるが、左輪へのトルク移動は不可能
である。つまり、右輪側の油圧多板クラッチ機構72で
はクラッチディスク間の差動がなく、トルク移動を実現
できない。一方、左輪側の油圧多板クラッチ機構72を
係合させると、左輪側から右輪側へのトルク移動を行な
うことができる。
【0140】そこで、ステップJ23へ進んで、トルク
移動方向dirが右輪増大,左輪増大,その他(中立)
の何れであるが判断され、右輪増大ならば制御クラッチ
方向diraを左(L)とし(ステップJ24)、左輪
増大ならば実現不可能なので制御クラッチ方向dira
を不可(Z)とし(ステップJ25)、その他ならば制
御クラッチ方向diraを中立(N)とする(ステップ
J26)。
【0141】ここで、図32の基準回転速度差追従制御
での左右の制御方向dirbを選択するステップ(ステ
ップD10)について、図37を参照して説明する。図
37に示すように、まず、基準車輪速度差dvhfが境
界値SmVr2(=境界値2・Sm・Vr;図36ステ
ップJ1参照)よりも大きいか否かが判断される(ステ
ップK1)。基準車輪速度差dvhfが境界値SmVr
2よりも大きいとこれは前述の条件(A)に相当する。
【0142】このときには、ステップK2へ進んで、実
車輪速度差dvrfがこの基準車輪速度差dvhfより
も大きいか否かが判断される。ここで、実車輪速度差d
vrfがこの基準車輪速度差dvhfよりも大きけれ
ば、ステップK6へ進む。この場合は、前述の条件(A
1)に相当し、左右いずれのクラッチを係合させても、
実車輪速度差dvrfが基準車輪速度差dvhfに近づ
くが、右輪側の油圧多板クラッチ機構72の方が差動量
が少なくトルク伝達ロスが少ないので、これを選択する
ように、制御クラッチ方向dirbを右(R)とする。
【0143】ステップK2で、実車輪速度差dvrfが
この基準車輪速度差dvhfよりも大きくないと判断さ
れれば、ステップK3へ進んで、実車輪速度差dvrf
が境界値SmVr2以上であるか否かが判断される。こ
こで、実車輪速度差dvrfが境界値SmVr2以上で
あれば、ステップK7へ進む。この場合は、前述の条件
(A2)に相当し、左右いずれのクラッチを係合させて
も実車輪速度差dvrfを基準車輪速度差dvhfに近
づけられない。そこで、左右いずれのクラッチも係合さ
せないように、制御クラッチ方向dirbを中立(N)
とする。
【0144】ステップK3で、実車輪速度差dvrfが
境界値SmVr2以上でないと判断されれば、ステップ
K4へ進んで、実車輪速度差dvrfが境界値−SmV
r2以上であるか否かが判断される。ここで、実車輪速
度差dvrfが境界値−SmVr2以上であれば、ステ
ップK8へ進む。この場合は、前述の条件(A3)に相
当し、左輪側のクラッチを係合させると右輪側へトルク
が移動して、右輪側のクラッチを係合させると左輪側へ
トルクが移動するが、実車輪速度差dvrfを基準車輪
速度差dvhfに近づけるには、左輪側へトルクを移動
させればよい。そこで、制御クラッチ方向dirbを右
(R)とする。
【0145】ステップK4で、実車輪速度差dvrfが
境界値−SmVr2以上でないと判断されれば、ステッ
プK5へ進む。この場合は、前述の条件(A4)に相当
し、左右いずれのクラッチを係合させても、実回転速度
差dvrdが基準車輪速度差dvhfに近づくが、左輪
側の油圧多板クラッチ機構72の方が差動量が少なくト
ルク伝達ロスが少ないので、これを選択するように、制
御クラッチ方向dirbを左(L)とする。
【0146】一方、ステップK1で、基準車輪速度差d
vhfが境界値SmVr2よりも大きくないと判断され
ると、ステップK9へ進んで、基準車輪速度差dvhf
が境界値−SmVr2以上であるか否かが判断される。
基準車輪速度差dvhfが境界値SmVr2以上である
とこれは前述の条件(B)に相当する。
【0147】このときには、ステップK10へ進んで、
実車輪速度差dvrfが境界値SmVr2よりも大きい
か否かが判断される。ここで、実車輪速度差dvrfが
境界値SmVr2よりも大きければ、ステップK15へ
進む。この場合は、前述の条件(B1)に相当し、左右
いずれのクラッチを係合させても右輪側へトルクが移動
して、実車輪速度差dvrfが基準車輪速度差dvhf
に近づくが、右輪側の油圧多板クラッチ機構72の方が
差動量が少なくトルク伝達ロスが少ないので、これを選
択するように、制御クラッチ方向dirbを右(R)と
する。
【0148】ステップK10で、実車輪速度差dvrf
が境界値SmVr2よりも大きくないと判断されると、
ステップK11へ進んで、実車輪速度差dvrfが基準
車輪速度差dvhfよりも大きいか否かが判断される。
ここで、実車輪速度差dvrfが基準車輪速度差dvh
fよりも大きければ、ステップK16へ進む。この場合
は、前述の条件(B2)に相当し、左輪側のクラッチを
係合させると右輪側へトルクが移動して、右輪側のクラ
ッチを係合させると左輪側へトルクが移動する。実車輪
速度差dvrfを基準車輪速度差dvhfに近づけるに
は、左輪側へトルクを移動させればよい。そこで、制御
クラッチ方向dirbを左(L)とする。
【0149】ステップK11で、実車輪速度差dvrf
が基準車輪速度差dvhfよりも大きくないと判断され
ると、ステップK12へ進んで、実車輪速度差dvrf
が基準車輪速度差dvhfと等しいか否かが判断され
る。ここで、実車輪速度差dvrfが基準車輪速度差d
vhfと等しければ、ステップK17へ進む。この場合
は、前述の条件(B3)に相当し、制御が不要なので、
左右いずれのクラッチも係合させないように、制御クラ
ッチ方向dirbを中立(N)とする。
【0150】ステップK12で、実車輪速度差dvrf
が基準車輪速度差dvhfと等しくないと判断される
と、ステップK13へ進んで、実車輪速度差dvrfが
境界値−SmVr2以上であるか否かが判断される。
ここで、実車輪速度差dv
rfが境界値−SmVr2以上であれば、ステップK1
8へ進む。この場合は、前述の条件(B4)に相当し、
左輪側のクラッチを係合させると右輪側へトルクが移動
して、右輪側のクラッチを係合させると左輪側へトルク
が移動する。実車輪速度差dvrfを基準車輪速度差d
vhfに近づけるには、右輪側へトルクを移動させれば
よい。そこで、制御クラッチ方向dirbを右(R)と
する。
【0151】ステップK13で、実車輪速度差dvrf
が境界値−SmVr2以上でないと判断されると、ステ
ップK14へ進む。この場合は、前述の条件(B5)に
相当し、左右いずれのクラッチを係合させても左輪側へ
トルクが移動して、左右輪の実回転速度差dvrfが基
準車輪速度差dvhfに近づくが、左輪側の油圧多板ク
ラッチ機構72の方が差動量が少なくトルク伝達ロスが
少ないので、制御クラッチ方向dirbを左(L)とす
る。
【0152】一方、ステップK9で、基準車輪速度差d
vhfが境界値−SmVr2以上でないと判断されると
これは前述の条件(C)に相当する。このときには、ス
テップK19へ進んで、実車輪速度差dvrfが境界値
SmVr2よりも大きいか否かが判断される。ここで、
実車輪速度差dvrfが境界値SmVr2よりも大きけ
れば、ステップK23へ進む。この場合は、前述の条件
(C1)に相当し、左右いずれのクラッチを係合させて
も右輪側へトルクが移動して、実車輪速度差dvrfが
基準車輪速度差dvhfに近づくが、右輪側の油圧多板
クラッチ機構72の方が差動量が少なくトルク伝達ロス
が少ないので、これを選択するように、制御クラッチ方
向dirbを右(R)とする。
【0153】ステップK19で、実車輪速度差dvrf
が境界値SmVr2よりも大きくないと判断されると、
ステップK20へ進んで、実車輪速度差dvrfが境界
値−SmVr2よりも大きいか否かが判断される。ここ
で、実車輪速度差dvrfが境界値−SmVr2よりも
大きければ、ステップK24へ進む。この場合は、前述
の条件(C2)に相当し、左輪側のクラッチを係合させ
ると右輪側へトルクが移動して、右輪側のクラッチを係
合させると左輪側へトルクが移動する。実車輪速度差d
vrfを基準車輪速度差dvhfに近づけるには、左輪
側へトルクを移動させればよい。そこで、制御クラッチ
方向dirbを左(L)とする。
【0154】ステップK20で、実車輪速度差dvrf
が境界値−SmVr2よりも大きくないと判断される
と、ステップK21へ進んで、実車輪速度差dvrfが
基準車輪速度差dvhf以上であるか否かが判断され
る。ここで、実車輪速度差dvrfが基準車輪速度差d
vhf以上であれば、ステップK25へ進む。この場合
は、前述の条件(C3)に相当し、左右いずれのクラッ
チを係合させても左輪側へトルクが移動して、実車輪速
度差dvrfを基準車輪速度差dvhfに近づけられな
い。そこで、左右いずれのクラッチも係合させないよう
に、制御クラッチ方向dirbを中立(N)とする。
【0155】ステップK21で、実車輪速度差dvrf
が基準車輪速度差dvhf以上でないと判断されると、
ステップK22へ進む。この場合は、前述の条件(C
4)に相当し、左右いずれのクラッチを係合させても左
輪側へトルクが移動して、実車輪速度差dvrfが基準
車輪速度差dvhfに近づくが、左輪側の油圧多板クラ
ッチ機構72の方が差動量が少なくトルク伝達ロスが少
ないので、これを選択するように、制御クラッチ方向d
irbを左(L)とする。
【0156】つぎに、図32の総合判定のステップ(ス
テップD11)について、図38を参照して説明する。
図38に示すように、まず、ステップL1で、制御クラ
ッチ方向diraがZであるか否かが判断される。制御
クラッチ方向diraがZであれば、ステップL7に進
んで、制御量tbが制御量taよりも大きいか否かが判
断され、制御量tbが制御量taよりも大きければ、ス
テップL12に進んで、最終的な制御量tfとしてtb
−ta(>0)を設定し、最終的な制御クラッチ方向d
irfをdirbに設定する。制御量tbが制御量ta
よりも大きくなければ、ステップL8に進んで、最終的
な制御量tfとして0を設定し、最終的な制御クラッチ
方向dirfをNに設定すして、いずれのクラッチ72
の係合も行なわない。
【0157】制御クラッチ方向diraがZでなけれ
ば、ステップL2に進んで、制御クラッチ方向dira
と制御クラッチ方向dirbとが等しいかが判断され
る。diraとdirbとが等しければ、ステップL9
に進んで、最終的な制御量tfとしてtb,taのうち
の大きい方を設定し、最終的な制御クラッチ方向dir
fはdira(=dirb)に設定する。
【0158】ステップL2で、制御クラッチ方向dir
aと制御クラッチ方向dirbとが等しくないと判断さ
れると、ステップL3に進んで、最終的な制御量tfと
してtaとtbとの差(=|ta−tb|)を設定す
る。さらに、ステップL4に進んで、taとtbとの大
小関係がta>tbか否か判断する。ta>tbなら
ば、ステップL10へ進んで、最終的な制御クラッチ方
向dirfは制御量の大きい方であるdiraに設定す
る。
【0159】ステップL4で、ta>tbでないと判断
されたら、ステップL5に進んで、さらに、taとtb
との大小関係がta<tbか否かを判断する。ta<t
bならば、ステップL11へ進んで、最終的な制御クラ
ッチ方向dirfは制御量の大きい方であるdirbに
設定する。ta<tbでないならta=tbであり、ス
テップL6へ進んで、最終的な制御クラッチ方向dir
fは中立値Nに設定する。 ・実施例のまとめ このようにして、本車両用左右輪間トルク移動制御装置
では、基準回転速度差追従制御部80と、操舵角速度比
例制御部82と、タックイン対応制御部84との3つの
制御部からのトルク移動要求に対して、これらをバラン
ス良く複合させたり又は選択したりして、総合的なトル
ク移動制御を実現でき、トルク移動制御を通じて種々の
車両性能を同時に向上させることができる。
【0160】また、機構状態判定部86の判定により、
不要なトルク移動制御を防止して制御安定性や制御効率
を向上できる。基準回転速度差追従制御部80で設定さ
れるトルク移動量により、車両の定常旋回特性を向上さ
せることができるが、特に、基準回転速度差追従制御部
80では、基準回転速度差と、第1境界回転速度差と、
第2境界回転速度差と、左右輪の実回転速度差との各大
小関係に基づいて、トルク移動量を設定して、2つの伝
達容量可変制御式トルク伝達機構の作動モードを選択す
るので、基準回転速度差に追従したトルク移動制御を、
適切に実現することができ、車両の定常旋回特性、即
ち、ステア特性を好みの状態に設定できる。
【0161】また、機構状態判定部86が、実回転速度
差と、第1境界回転速度差と、第2境界回転速度差と、
の各大小関係に基づいて、該トルク移動量設定部で設定
されトルク移動量が実現可能であるかを判定するので、
トルク移動制御を容易でしかも適切に行なうことがで
き、トルク移動の制御能力が向上し、車両の走行安定性
を確保しながら滑らかなトルク移動制御が可能になる。
【0162】また、操舵角速度比例制御部82により、
一般的には車両の慣性力の影響で鈍くなりがちな、所謂
インパルス操舵時の車両の挙動応答が、極めて速やなも
のになって、車両の走行時の緊急回避能力が向上する。
この緊急回避能力は、車両に加わる横加速度が大きくな
るような旋回時にタイヤのコーナリング力に余裕がなく
なった場合にも本装置ではヨーモーメントを容易に生じ
させることができ、極めて効果的である。
【0163】タックイン対応制御部84により、人為的
に操作されるハンドル角と車体速度とを加味してタック
インの判定が行なわれるので、この判定が適正なものと
なって、タックイン抑制制御の制御タイミングや制御量
を適正に設定でき、必要なときだけ、タックイン抑制を
行なえる。また、本装置では、クラッチを拘束し過ぎる
ことも回避される。これにより、スムースな旋回性能が
確保して、スムースな旋回性能を確保し且つトルクロス
の増大を抑制しながら、適切なタックイン抑制制御によ
る車両の走行安定性の向上を実現できるようになる。
【0164】なお、図46は、アクセル開度を図中
(C)で示すように変化させながら、加減速しながら定
常円旋回を行なう際に要したハンドル角の変化を示すも
ので、本装置のトルク移動制御を行なった場合〔図中
(A)参照〕、トルク移動制御を行なわない場合〔図中
(B)参照〕に比べ、ハンドル角の操作が僅かであるこ
とがわかり、タックインやドリフトアウトが生じにくい
ことが判る。
【0165】なお、本装置では、左右輪間のトルク移動
を制御することで、車両のヨーモーメントを制御して、
旋回特性の制御や、インパルス操舵応答の制御や、タッ
クイン抑制などの、操舵特性の制御を行なっているが、
操舵特性の制御は、一般には、4輪操舵装置により行な
われている。そこで、本装置による操舵特性の制御を4
輪操舵装置によるものと、対比させてその特性を考察す
る。
【0166】図39〜41は横力の発生と車体姿勢を示
すもので、図39は本装置に関し、図40は4輪操舵装
置の一瞬逆相操舵に関し、図41は4輪操舵装置の同相
操舵に関している。図中、aは車両重心から前輪車軸迄
の距離、bは車両重心から後輪車軸迄の距離、trは車
両のトレッド、βgは重心スリップ角、βfは前輪スリ
ップ角、βrは後輪スリップ角、Ffは前輪横力、Fr
は後輪横力、Tはトルク移動量を示す。
【0167】各場合のヨーレイト(自転)に関する運動
方程式及び旋回(公転)に関する運動方程式は、以下の
ようになる。なお、各方程式の場合分け番号〜は、
図39〜41中に示す番号〜と対応する。 (1)本装置の場合 旋回開始時 (自転) Iθ″=a・Ff+tr・T (公転) Mα=Ff 旋回中 (自転) Iθ″=a・Ff−b・Fr+tr・T (公転) Mα=Ff+Fr (2)4輪操舵装置の一瞬逆相操舵の場合(旋回開始時
のみ逆相) 旋回開始時 (自転) Iθ″=a・Ff−(−b・Fr) (公転) Mα=Ff−Fr 旋回中 (自転) Iθ″=a・Ff−b・Fr (公転) Mα=Ff+Fr (3)4輪操舵装置の同相操舵の場合 旋回開始時 (自転) Iθ″=a・Ff−b・Fr (公転) Mα=Ff+Fr 旋回中 (自転) Iθ″=a・Ff−b・Fr (公転) Mα=Ff+Fr 以上の式からわかるように、本装置の場合及び4輪一瞬
逆相操舵の場合、旋回開始時にヨーが早く発生し(
自転参照)、4輪同相操舵の場合、旋回開始時にヨー発
生の遅れが大きい(自転参照)。
【0168】また、旋回開始時についての車両への横力
は、4輪同相操舵の場合大きいが、4輪一瞬逆相操舵の
場合小さく、本装置の場合はこの中間的なものになる。
そして、旋回中には、本装置の場合はトルク移動分だけ
ヨーが発生しやすいが、4輪操舵の場合には、前輪横力
Ffを増加させたり、後輪横力Frを減少させたりしな
ければ、ヨーが発生し難くなる。一般には、旋回限界を
上げるために横力を上げようとすると、ヨーが小さくな
る。
【0169】したがって、本装置の場合は、前輪スリッ
プ角βfと後輪スリップ角βrとが、略等しくなるよう
に設定することが狙えるが、4輪操舵の場合には、βr
≫βr、つまり、重心スリップ角βgを0とすることが
狙いとなる。この重心スリップ角βgを0とすると、旋
回時の余分なヨー運動がないが、これは、例えば図40
に示すように、ドライバの目線が曲がろうと思っている
方向(車両の旋回内側)に向かず、不自然であり、人間
の感覚に合わせるには、βgを必ずしも0に制御しない
のが常である。一方、本装置の場合は、βf≒βrとす
ることで、例えば図40に示すように、ドライバの目線
が曲がろうと思っている方向(車両の旋回内側)に向き
易く、人間の感覚に合わせ易い。
【0170】また、図43は制動・駆動力のスリップ比
による変化をタイヤのスリップ角に応じて示すが、タイ
ヤのスリップ角が大きいほど駆動・制動力の限界が低く
なる。図44は横力のスリップ比による変化をタイヤの
スリップ角に応じて示すが、タイヤのスリップ角が大き
いと横力の限界が低くなる。また、図45は横力の駆動
・制動力による変化をタイヤのスリップ角に応じて示す
が、横力と駆動・制動力とがスリップ角に応じて大きく
相関することがわかる。
【0171】4輪操舵,前輪操舵に限らず一般的な操舵
は、スリップ角を与えることで横力を与えながらヨー運
動を生じさせるので、自ずと図43〜45に示すような
限界がある。これに対して、本装置は、上式からわか
るように、ヨーレイトをタイヤの横力に依存せずに独立
して制御できるので、車両の横加速度が高い領域でも、
弱アンダを維持できるなど制御限界が高く、例えば、図
42に示すように、車両の横加速度が低い領域で4輪操
舵により旋回制御効果を得て、車両の横加速度が高い領
域でトルク移動制御により旋回制御効果を得るようなこ
とも考えられる。 ・本装置を適用できる他の車両用駆動トルク伝達系構成 本車両用左右輪間トルク移動制御装置の車両用駆動トル
ク伝達系は、上述の実施例のような構成のもの(図5,
6参照)に限定されるものでなく、例えば特開平5−1
31855号公報等に記載の構成のものなど他の種々の
構成の車両用駆動トルク伝達系にも適用しうる。
【0172】例えば図47〜49に示すような車両用駆
動トルク伝達系にも適用しうる。なお、図47〜49に
おいて、図5,6と同符号は同様なものを示す。図47
に示すように、この車両用駆動トルク伝達系の全体構成
は、図5に示す実施例のものとほぼ同様に構成される
が、このトルク伝達系では、リヤデフ及びトルク移動機
構の構成が、実施例のものと異なっている。
【0173】つまり、図47,48に示すように、この
構成でも、入力軸52がプロペラシャフト20の後端に
結合されており、入力軸52にはドライブピニオンギヤ
54が一体回転するように結合されている。このドライ
ブピニオンギヤ54に噛合するクラウンギヤ128が、
リヤデフ124のデフケース130に設けられている。
【0174】一方、リヤデフ124は、遊星歯車機構1
32により構成されている。この遊星歯車機構132
は、デフケース130内に収容されたリングギヤ132
Aと、このリングギヤ132Aと噛合するアウタピニオ
ンギヤ132Bと、このアウタピニオンギヤ132Bと
噛合するインナピニオンギヤ132Cと、このインナピ
ニオンギヤ132Cの噛合するサンギヤ132Dと、ア
ウタピニオンギヤ132B及びインナピニオンギヤ13
2Cを一体に支持するキャリヤ132Eとから構成され
ており、ダブルピニオン式遊星歯車機構として構成され
ている。また、キャリヤ132Eは左輪側回転軸66と
一体回転するように結合して、サンギヤ132Dは右輪
側回転軸68と一体回転するように結合している。勿
論、左右の回転軸66,68は、車軸26L,26Rに
結合されており、最終的には左右の後輪28,30に結
合している。
【0175】これにより、入力軸52からの入力トルク
は、ドライブピニオンギヤ54,クラウンギヤ128を
介して、デフケース130に入力され、ピニオンギヤ1
32B,132Cの回転状態に応じて差動を許容されな
がら左右輪へと伝達される。例えばピニオンギヤ132
B,132Cが自転を伴わないで公転のみ行なうと、ケ
ース130側のリングギヤ132Aとキャリヤ132E
とサンギヤ132Dとが、一体的に等速回転し、左輪2
8と右輪30とが等速で回転する。一方、ピニオンギヤ
132B,132Cに自転が生じると、キャリヤ132
Eとサンギヤ132Dとの間に差動(回転速度差)が生
じて、左輪28と右輪30との間にも差動(回転速度
差)が生じる。
【0176】トルク移動機構120は、左輪側回転軸6
6側と右輪側回転軸68側との間に設けられ、変速機構
122と伝達容量可変制御式トルク伝達機構126とか
ら構成されている。この変速機構122は、キャリヤ1
32Eの回転速度を増速する増速機構122Aと減速す
る減速機構122Bとを一体にそなえているので、増減
速機構とも称することにする。また、伝達容量可変制御
式トルク伝達機構126は左輪用のもの126Lと右輪
用のもの126Rとが一体となった、一体式カップリン
グとして設けられている。なお、伝達容量可変制御式ト
ルク伝達機構を単にカップリングとも称する。
【0177】増減速機構122を説明すると、この増減
速機構122は、左輪側出力軸66とキャリヤ132E
を介して一体回転するように結合された中空の中間軸1
34と、右輪側カップリング126Rに接続された中空
の中間軸136と、左輪側カップリング126Lに接続
された中空の中間軸138との間に介装されている。な
お、これらの中間軸134,136,138はいずれも
中空軸であり、中間軸134,136は、右輪側回転軸
68の外周に相対回転できるように装備され、中間軸1
38は、中間軸136のさらに外周にこれも相対回転で
きるように装備されている。
【0178】これらの中間軸134,136,138に
は、それぞれギヤ134A,136A,138Aが設け
られている。また、これらの中間軸134,136,1
38の外周にはカウンタシャフト150が配設され、こ
のカウンタシャフト150には3連ギヤ148がそなえ
られている。3連ギヤ148は、ギヤ148A,148
B,148Cから構成され、ギヤ148Aはギヤ134
Aに、ギヤ148Bはギヤ136Aに、ギヤ148Cは
ギヤ138Aにそれぞれ噛合している。
【0179】増減速機構122は、このようなギヤ13
4A,136A,138A,148A,148B,14
8Cから構成されている。カウンタシャフト150は、
図49に示すように、中間軸134,136,138の
外周にドライブピニオン54と位相をずらして複数(こ
こでは3つ)そなえられている。これにより、リングギ
ヤをそなえないが、ギヤ134A,136A,138A
をサンギヤとしてギヤ148A,148B,148Cを
プラネタリピニオンとする、3連式の遊星歯車機構の同
様の配列になっている。なお、各カウンタシャフト15
0は、デフギャリア152に設けられた壁部152Aに
固定されている。したがって、ギヤ148A,148
B,148Cは自転のみ行なう。
【0180】これにより、中間軸134,136,13
8のラジアル方向への支持は、ギヤ134A,136
A,138Aとギヤ148A,148B,148Cとの
噛合を通じて、上述のように壁部152Aに固定された
複数のカウンタシャフト150により行なわれいてる。
そして、これらのギヤ134A,136A,138Aの
歯数をそれぞれZ1 ,Z2 ,Z3 とすると、Z2 <Z1
<Z3 の関係に設定されている。また、ギヤ148A,
148B,148Cの歯数をそれぞれZ4 ,Z5 ,Z6
とすると、Z6<Z4 <Z5 の関係に設定されている。
【0181】そして、ギヤ134A,148A,148
B,136Aの組み合わせにより増速機構122Aが構
成され、134A,148A,148C,138Aの組
み合わせにより減速機構122Bが構成さている。即
ち、増速機構122Aでは、ギヤ134A,148A,
148B,136Aの経路で、中間軸134の回転が中
間軸136に伝達されると、これらの歯数比から、中間
軸136は中間軸134よりも高速で回転する。また、
減速機構122Bでは、134A,148A,148
C,138Aの経路で、中間軸134の回転が中間軸1
38に伝達されると、これらの歯数比から、中間軸13
8は中間軸134よりも低速で回転する。
【0182】このような増減速機構122の出力は、中
間軸136及び138を介して、カップリング126
L,126R側へ入力されるようになっている。右輪側
カップリング126R及び左輪側カップリング126L
は、増減速機構122の右輪側の壁部152Aとデフキ
ャリア152の内壁との空間内に一体に設置されてい
る。
【0183】これらのカップリング126R,126L
は、右輪側回転軸68と一体回転するようにクラッチケ
ース154に結合されたクラッチ板126A,126A
と、中間軸134及び136と一体回転するように結合
されたクラッチ板126B,126Bと、各クラッチ板
126A,126Bにクラッチ圧を加える図示しない2
つのピストンとをそなえており、コントローラ42の電
子制御によって2つの油圧ピストンの駆動油圧が油圧ユ
ニット38を通じて調整されて、カップリング126
R,126Lのの係合状態、即ち、駆動力伝達状態が調
整されるようになっている。
【0184】したがって、コントローラ42の制御によ
ってカップリング126Rが係合されると、急旋回でな
い通常走行時には、高速回転する中間軸136側から右
輪側回転軸68側へと、つまり、左輪側回転軸66側か
ら右輪側回転軸68へと駆動力が移動して、左輪よりも
右輪の駆動力の方が大きくなる。逆に、コントローラ4
2の制御によってカップリング126Lが係合される
と、急旋回でない通常走行時には、高速回転する右輪側
回転軸68側から中間軸138側へと、つまり、右輪側
回転軸68側から左輪側回転軸66へと駆動力が移動し
て、右輪よりも左輪の駆動力の方が大きくなる。
【0185】なお、図49中、156はころ軸受けであ
る。また、本車両用左右輪間トルク移動制御装置は、例
えば図50,51に示すように、駆動輪ではなく従動輪
である左右輪間にも設けることができる。なお、図5
0,51において、図47〜49と同符号は同様なもの
を示す。図50に示すように、この車両は、4輪駆動車
ではなく2輪駆動車であり、エンジン2からの出力トル
クは、トランスミッション4を介して前輪14,16の
みに伝達され、後輪28,30には伝達されないように
なっている。この従動輪である左右の後輪28,30の
間に、トルク移動機構120が設けられている。特に、
このトルク移動機構120自体は、図47〜49に示す
ものとほぼ同様に構成されている。
【0186】つまり、図50,51に示すように、トル
ク移動機構120は、左輪側回転軸66側と右輪側回転
軸68側との間に設けられ、変速機構122と伝達容量
可変制御式トルク伝達機構126とから構成されてい
る。この変速機構122は、左輪側回転軸66の回転速
度を増速して右輪側回転軸68側へ出力する増速機構1
22Aと減速して右輪側回転軸68側へ出力する減速機
構122Bとを一体にそなえており、増減速機構とも称
することにする。また、伝達容量可変制御式トルク伝達
機構126は左輪用のもの126Lと右輪用のもの12
6Rとが一体となった一体式カップリングとして設けら
れている。
【0187】増減速機構122は、左輪側出力軸66
と、左輪側出力軸66と右輪側出力軸68との間に設け
られた中間軸158と、中間軸158の外周に設けられ
た中空の中間軸160との間に介装されているが、その
構成は前述の図48に示すものと同様になっている。つ
まり、左輪側出力軸66にはギヤ134Aが設けられ、
中間軸158にはギヤ136Aが設けられ、中間軸16
0にはギヤ138Aが設けられ、これらの左輪側出力軸
66,中間軸158,160の外周にはカウンタシャフ
ト150が配設され、このカウンタシャフト150には
3連ギヤ148がそなえられている。3連ギヤ148
は、ギヤ148A,148B,148Cから構成され、
ギヤ148Aはギヤ134Aに、ギヤ148Bはギヤ1
36Aに、ギヤ148Cはギヤ138Aにそれぞれ噛合
している。
【0188】増減速機構122は、このようなギヤ13
4A,136A,138A,148A,148B,14
8Cから構成されている。これらのカウンタシャフト1
50も、図49に示すように、左輪側出力軸66,中間
軸158,160中間軸134,136,138の外周
にドライブピニオン54と位相をずらして複数(ここで
は3つ)そなえられている。即ち、ギヤ134A,13
6A,138Aをサンギヤとしてギヤ148A,148
B,148Cをプラネタリピニオンとする、3連式の遊
星歯車機構に配列されている。なお、ギヤ148A,1
48B,148Cは自転のみ行なう。
【0189】そして、これらのギヤ134A,136
A,138Aの歯数Z1 ,Z2 ,Z3は、Z2 <Z1
3 の関係に設定され、ギヤ148A,148B,14
8Cの歯数Z4 ,Z5 ,Z6 は、Z6 <Z4 <Z5 の関
係に設定されている。そして、ギヤ134A,148
A,148B,136Aの組み合わせにより増速機構1
22Aが構成され、134A,148A,148C,1
38Aの組み合わせにより減速機構122Bが構成さて
いる。
【0190】即ち、増速機構122Aでは、ギヤ134
A,148A,148B,136Aの経路で、左輪側出
力軸66の回転が中間軸158に伝達されると、これら
の歯数比から、中間軸158は左輪側出力軸66よりも
高速で回転する。また、減速機構122Bでは、134
A,148A,148C,138Aの経路で、左輪側出
力軸66の回転が中間軸160に伝達されると、これら
の歯数比から、中間軸160は左輪側出力軸66よりも
低速で回転する。
【0191】このような増減速機構122の出力は、中
間軸158及び160を介して、カップリング126
L,126R側へ入力されるようになっている。これら
のカップリング126R,126Lは、右輪側回転軸6
8と一体回転するクラッチ板126A,126Aと、中
間軸158及び160と一体回転するクラッチ板126
B,126Bと、各クラッチ板126A,126Bにク
ラッチ圧を加える図示しない2つのピストンとをそなえ
ており、コントローラ42の電子制御によって2つの油
圧ピストンの駆動油圧が油圧ユニット38を通じて調整
されて、カップリング126R,126Lのの係合状
態、即ち、駆動力伝達状態が調整されるようになってい
る。
【0192】したがって、コントローラ42の制御によ
ってカップリング126Rが係合されると、急旋回でな
い通常走行時には、高速回転する中間軸158側から右
輪側回転軸68側へと、つまり、左輪側回転軸66側か
ら右輪側回転軸68へと駆動力が移動して、左輪には制
動力がはたらき右輪には駆動力がはたらく。逆に、コン
トローラ42の制御によってカップリング126Lが係
合されると、急旋回でない通常走行時には、高速回転す
る右輪側回転軸68側から中間軸160側へと、つま
り、右輪側回転軸68側から左輪側回転軸66へと駆動
力が移動して、右輪には制動力がはたらき左輪には駆動
力がはたらく。
【0193】このように、従動輪であっても、増減速機
構122によってトルク移動を行なえ、左右輪の一方で
は駆動力を発生させ、他方では制動力を発生させなが
ら、車両にヨーモーメントを発生させることができ、本
車両用左右輪間トルク移動制御装置を適用できる。
【0194】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の本
発明の車両用左右輪間トルク移動制御装置によれば、ト
ルク移動機構が、該左輪回転軸側と該右輪回転軸側との
間に回転速度差を与えるために、該左輪回転軸及び該右
輪回転軸のうちの一方の回転軸側の部材の回転速度を一
定の変速比で変速して出力する変速機構と、該左輪回転
軸及び該右輪回転軸のうちの他方の回転軸側の部材と該
変速機構の出力部側の部材との間に介装されて、係合時
に該左輪回転軸及び該右輪回転軸の間でトルクの伝達を
行ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機構とから構
成され、該制御手段が、操舵角速度が正の場合には旋回
促進方向のヨーモーメントが該操舵角速度の大きさに応
じて増大し、操舵角速度が負の場合には旋回抑制方向の
ヨーモーメントが該操舵角速度の大きさに応じて増大す
るように、該操舵角速度に比例するようにして該トルク
移動量を設定する操舵角速度比例制御部をそなえるとい
う構成により、一般的には車両の慣性力の影響で鈍くな
りがちな、所謂インパルス操舵時の車両の挙動応答が、
極めて速やなものになって、車両の走行時の緊急回避能
力が向上する。特に、車両に加わる横加速度が大きくな
るような旋回時にはタイヤのコーナリング力に余裕がな
くなり、このような緊急回避能力が低下するが、このよ
うな場合でも、本トルク移動制御では、車両にヨーモー
メントを容易に生じさせることができ、十分な緊急回避
能力を得ることが可能になる。
【0195】また、請求項2記載の本発明の車両用左右
輪間トルク移動制御装置によれば、請求項1記載の構成
において、該左輪回転軸と該右輪回転軸とが、入力部に
入力された駆動力を差動機構を介して配分される駆動軸
であって、該トルク移動機構が、該左輪回転軸と該右輪
回転軸との間、又は、該左輪回転軸又は該右輪回転軸と
該入力部との間に介装されるという構成により、駆動力
の配分調整を行ないながら、車両の走行時の緊急回避能
力を向上させることができる。
【0196】さらに、請求項3記載の本発明の車両用左
右輪間トルク移動制御装置によれば、該操舵角速度比例
制御部に、該トルク移動量が、車速の中高速域で最大と
なり、高速域では0となり、定速域では小さくなるよう
に、上記の設定したトルク移動量に対して、車速に対応
した補正を施す補正部が設けられることにより、低車速
域では無駄な制御が回避されてエネルギロスが抑制さ
れ、高車速域ではトルク移動制御に対するシステムの遅
れによる車両の挙動の不安定かを回避でき、また、高車
速域にいくにしたがってトルク移動制御を弱めていくこ
とで、ドライバに車両の走行限界を早めに知らせる効果
もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての車両用左右輪間トル
ク移動制御装置の制御系の全体構成を示す機能ブロック
図である。
【図2】本発明の一実施例としての車両用左右輪間トル
ク移動制御装置の制御系の基準回転速度差追従制御部を
詳細に示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施例としての車両用左右輪間トル
ク移動制御装置の制御系の操舵角速度比例制御部,タッ
クイン対応制御部及び機構状態判定部を詳細に示す機能
ブロック図である。
【図4】本発明の一実施例としての車両用左右輪間トル
ク移動制御装置の制御系の総合判定部を詳細に示す機能
ブロック図である。
【図5】本発明の一実施例としての車両用左右輪間トル
ク移動制御装置をそなえた車両の駆動トルク伝達系の全
体構成図である。
【図6】本発明の一実施例としての車両用左右輪間トル
ク移動制御装置のトルク移動機構を示す模式的な構成図
である。
【図7】本発明の一実施例としての車両用左右輪間トル
ク移動制御装置の原理を従来のトルク配分制御装置と比
較して説明する図である。
【図8】本発明の一実施例としての車両用左右輪間トル
ク移動制御装置の利点を従来のトルク配分制御装置と比
較して示す図である。
【図9】本発明の一実施例としての車両用左右輪間トル
ク移動制御装置の油圧系を示す構成図である。
【図10】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の制御目的を説明する図である。
【図11】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の制御目的を説明する図である。
【図12】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置にそなえるフィルタのゲイン特性につ
いて示す図である。
【図13】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の操舵角速度比例制御の制御目的を示
す図であり、(A)は陰パルス操舵したときのハンドル
角の時間変化を示し、(B)はこの時に対応して車両に
発生させたいヨーモーメント特性を示す。
【図14】横加速度に対応した操舵特性を示す図であっ
て、本発明の一実施例としての車両用左右輪間トルク移
動制御装置の制御において目標とする操舵特性を示す図
である。
【図15】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置のタックイン対応制御の制御量につい
て示す図である。
【図16】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置のタックイン対応制御において、路面
状態を考慮した場合の目標とする操舵特性を示す図であ
る。
【図17】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置のタックイン対応制御において、路面
状態を考慮した場合の制御量について示す図である。
【図18】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の機構状態判定部における判定原理、
及び基準回転速度差追従制御における制御量の設定原理
を説明するための速度線図である。
【図19】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の機構状態判定部における判定原理、
及び基準回転速度差追従制御における制御量の設定原理
を説明するための速度線図である。
【図20】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置において、左右輪の回転速度差に関す
る制御区分を説明する補助的な速度線図である。
【図21】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置において、左右輪の回転速度差に関す
る制御区分を説明する速度線図である。
【図22】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置において、左右輪の回転速度差に関し
て不感帯を考慮した制御区分を説明する速度線図であ
る。
【図23】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置において、基準回転速度差が正に大の
領域(領域A)の場合の左右輪の回転速度差に関する制
御区分を説明する速度線図である。
【図24】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置において、基準回転速度差が中央領域
(領域B)の場合の左右輪の回転速度差に関する制御区
分を説明する速度線図である。
【図25】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置において、基準回転速度差が負に大の
領域(領域C)の場合の左右輪の回転速度差に関する制
御区分を説明する速度線図である。
【図26】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置において、基準回転速度差が正に大の
領域(領域A)の場合の、左右輪の回転速度差に関して
不感帯を考慮した制御区分を説明する速度線図である。
【図27】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置において基準回転速度差が中央領域
(領域B)の場合の、左右輪の回転速度差に関して不感
帯を考慮した制御区分を説明する速度線図である。
【図28】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置において基準回転速度差が負に大の領
域(領域C)の場合の、左右輪の回転速度差に関して不
感帯を考慮した制御区分を説明する速度線図である。
【図29】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の制御における、全体的な流れを示す
メインルーチンフローチャートである。
【図30】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の制御における、初期設定の流れを示
すサブルーチンフローチャートである。
【図31】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の制御における、入力信号処理の流れ
を示すサブルーチンフローチャートである。
【図32】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の制御における、左右トルク移動制御
の流れを示すサブルーチンフローチャートである。
【図33】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の制御における、制御信号出力の流れ
を示すサブルーチンフローチャートである。
【図34】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の制御における、終了処理の流れを示
すサブルーチンフローチャートである。
【図35】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の左右トルク移動制御における、タッ
クイン対応制御の開始・終了条件判定の流れを示すサブ
ルーチンフローチャートである。
【図36】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の左右トルク移動制御における、機構
状態判定の流れを示すサブルーチンフローチャートであ
る。
【図37】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の左右トルク移動制御における、基準
回転速度差追従制御の左右制御方向選択の流れを示すサ
ブルーチンフローチャートである。
【図38】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の左右トルク移動制御における、総合
判定の流れを示すサブルーチンフローチャートである。
【図39】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の操舵角速度比例制御による車体姿勢
を示す図である。
【図40】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の操舵角速度比例制御による車体姿勢
に対比すべく4輪操舵制御による一瞬逆相操舵時の車体
姿勢を示す図である。
【図41】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の操舵角速度比例制御による車体姿勢
に対比すべく4輪操舵制御による同相操舵時の車体姿勢
を示す図である。
【図42】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置の制御による効果を説明する図であ
る。
【図43】制動・駆動力のスリップ比による変化をタイ
ヤのスリップ角に応じて示す図であって、本発明の一実
施例としての車両用左右輪間トルク移動制御装置の操舵
角速度比例制御の作用を説明するための図である。
【図44】横力のスリップ比による変化をタイヤのスリ
ップ角に応じて示す図であって、本発明の一実施例とし
ての車両用左右輪間トルク移動制御装置の操舵角速度比
例制御の作用を説明するための図である。
【図45】横力の駆動・制動力による変化をタイヤのス
リップ角に応じて示す図であって、本発明の一実施例と
しての車両用左右輪間トルク移動制御装置の操舵角速度
比例制御の作用を説明するための図である。
【図46】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置のタックイン対応制御による効果を示
す図である。
【図47】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置を適用できる他の車両用駆動トルク伝
達系の全体構成図である。
【図48】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置を適用できる他の車両用駆動トルク伝
達系のトルク移動機構を示す模式的な構成図である。
【図49】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置を適用できる他車両用駆動トルク伝達
系のトルク移動機構の軸配置構成を示す模式的な配置図
である。
【図50】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置を適用できるさらに他の車両用駆動ト
ルク伝達系の全体構成図である。
【図51】本発明の一実施例としての車両用左右輪間ト
ルク移動制御装置を適用できるさらに他の車両用駆動ト
ルク伝達系のトルク移動機構を示す模式的な構成図であ
る。
【符号の説明】
2 エンジン 2A スロットル 4 トランスミッション 6 中間ギア 8 差動歯車機構(=センタディファレンシャル、略し
て、センタデフ) 8A サンギア 8B プラネタリギア 8C リングギア 8D キャリア 10 前輪用差動歯車機構(=フロントディファレンシ
ャル、略して、フロントデフ) 12L,12R 車軸 14,16 前輪 18 ベベルギヤ機構 20 プロペラシャフト 22 ベベルギヤ機構 24 後輪用の差動歯車装置(=リヤディファレンシャ
ル、略して、リヤデフ) 26L,26R 車軸 28,30 後輪 32 前輪用出力軸 34 後輪用出力軸 36 差動制限手段(リミテッドスリップデフ=LS
D)としての油圧多板クラッチ 38 油圧ユニット 40 リザーバタンク 42 電子制御ユニット(ECU) 44 電子制御ユニット(エンジンECU) 46 電子制御ユニット(ABSECU) 48A ハンドル角センサ 48B 加速度センサ 48C ハンドル角速度演算部 48D 後左輪速度センサ 48E 後右輪速度センサ 48F 車速算出部 50 トルク移動機構 50A デフキャリア 52 入力軸 54 ドライブピニオンギヤ 56 クラウンギヤ 58 ギヤハウジング 60,62,64 ベベルギヤ 66,68 回転軸 70 変速機構 70A 第1のサンギヤ 70B キャリア 70C 第1のプラネタリギヤ(プラネタリピニオン) 70D 第2のプラネタリギヤ(プラネタリピニオン) 70E 第2のサンギヤ 72 伝達容量可変制御式トルク伝達機構(油圧多板ク
ラッチ機構) 72L 左後輪側の油圧多板クラッチ機構 72R 右後輪側の油圧多板クラッチ機構 72A,72B クラッチディスク 72C クラッチのアウタケース支 72D ハウジング 74 中空軸 80 基準回転速度差追従制御部(トルク移動量設定
部) 80A 基準車輪速度差算出部 80B 車両モデル化フィルタ 80C 実車輪速度差算出部 80D デジタルローパスフィルタ 80E 基準回転速度差追従トルク移動量設定部 80F,80G,80H デジタルローパスフィルタ 82 操舵角速度比例制御部(トルク移動量設定部) 82A 操舵角速度対応トルク移動量設定部 82B 補正係数設定部と 82C 補正部 82D デジタルローパスフィルタ 84 タックイン対応制御部(トルク移動量設定部) 84A 基準横加速度算出部 84B タックイン対応トルク移動量設定部 84C ピークホールド部 84D アクセル開度対応補正部 84E アクセル開速度演算部 84F タックイン対応制御開始・終了条件判定部 84G サンプルホールダ 84H 補正部 84I デジタルローパスフィルタ 86 機構状態判定部 86A 加算部 86B タックイン対応制御量設定部 86C トルク移動方向判定部 86D 機構状態判定及び制御クラッチ方向設定部(略
して、制御クラッチ方向設定部) 88 総合判定部 90A 制御量変換部 90B 信号処理部(ディザ処理部) 90C 出力信号処理部 101 オイルタンク 102 電動オイルポンプ 102A オイルポンプ駆動用モータ 103 電磁比例圧力制御弁(比例弁) 104 電磁比例圧力制御弁(比例弁) 105 電磁方向制御弁(方向切換弁) 106 ストレーナ 107 逆流防止用チェック弁 108 リリーフ弁 109 アキュムレータ 110A,110B,111C 圧力スイッチ 111A,111B 油圧センサ 120 トルク移動機構 122 変速機構 124 リヤデフ 126 伝達容量可変制御式トルク伝達機構 126R 右輪用伝達容量可変制御式トルク伝達機構
(右輪側カップリング) 126L 右輪用伝達容量可変制御式トルク伝達機構
(右輪側カップリング) 128 クラウンギヤ 130 デフケース 132 遊星歯車機構 132A リングギヤ 132B アウタピニオンギヤ 132C インナピニオンギヤ 132D サンギヤ 132E キャリヤ 134,136,138 中間軸 134A,136A,138A ギヤ 150 カウンタシャフト 148 3連ギヤ 148A,148B,148C ギヤ 150 デフギャリア 152A 壁部 154 クラッチケース 156 ころ軸受け 158,160 中間軸

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両における左輪回転軸と右輪回転軸と
    の間でトルクの授受を行なうトルク移動機構と、該左輪
    回転軸と該右輪回転軸とが所望のトルク配分状態になる
    ようにトルク移動量を設定しこのトルク移動量に基づい
    て該トルク移動機構の状態を制御する制御手段とをそな
    え、 該トルク移動機構が、 該左輪回転軸側と該右輪回転軸側との間に回転速度差を
    与えるために、該左輪回転軸及び該右輪回転軸のうちの
    一方の回転軸側の部材の回転速度を一定の変速比で変速
    して出力する変速機構と、 該左輪回転軸及び該右輪回転軸のうちの他方の回転軸側
    の部材と該変速機構の出力部側の部材との間に介装され
    て、係合時に該左輪回転軸及び該右輪回転軸の間でトル
    クの伝達を行ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機
    構とから構成され、 該制御手段が、 操舵角速度が正の場合には旋回促進方向のヨーモーメン
    トが該操舵角速度の大きさに応じて増大し、操舵角速度
    が負の場合には旋回抑制方向のヨーモーメントが該操舵
    角速度の大きさに応じて増大するように、該操舵角速度
    に比例するようにして該トルク移動量を設定する操舵角
    速度比例制御部をそなえていることを特徴とする、車両
    用左右輪間トルク移動制御装置。
  2. 【請求項2】 該左輪回転軸と該右輪回転軸とが、入力
    部に入力された駆動力を差動機構を介して配分される駆
    動軸であって、 該トルク移動機構が、該左輪回転軸と該右輪回転軸との
    間、又は、該左輪回転軸又は該右輪回転軸と該入力部と
    の間に介装されていることを特徴とする、請求項1記載
    の車両用左右輪間トルク移動制御装置。
  3. 【請求項3】 該操舵角速度比例制御部に、 該トルク移動量が、車速の中高速域で最大となり、高速
    域では0となり、定速域では小さくなるように、上記の
    設定したトルク移動量に対して、車速に対応した補正を
    施す補正部が設けられていることを特徴とする、請求項
    1又は2記載の車両用左右輪間トルク移動制御装置。
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