JP2004351945A - 差動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両の前後輪57,59,23,25間のタイヤ−路面間のスリップ率を制御可能なトルク伝達カップリング1と、差動回転の回転速度差を検出する車輪速センサ61,63,65,67、コントロ−ラ69と、回転速度差からスリップ率を演算するコントロ−ラ69と、コントロ−ラ69は、演算する前輪57,59の実スリップ率と予め設定した目標スリップ率との偏差に応じてトルク伝達カップリング1の差動制限トルクを操作量として調整する。すなわち、コントローラ69は、目標スリップ率と実スリップ率との比例と積分値とに応じた差動制限トルクを付加して調整を行うことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の前後輪間又は左右輪間の差動回転を制御する差動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の差動制御装置として、例えば図9に示すようなものがある。この図9は、従来の差動制御装置の制御ブロック図を示し、四輪駆動車のリヤデファレンシャルの差動制限用の多板クラッチを締結調整し、タイトコーナーブレーキング現象を回避しながら、路面への駆動力伝達を効率よく行わせようとするものである。
【0003】
図9のように、車速検出手段101,103によって右輪回転数A、左輪回転数Bを検出し、演算処理部105によって実回転速度差|A−B|を算出し、車速判別信号出力部107へ入力する。車速判別信号出力部107では、車速による場合分けを行い、低速時はクラッチトルク設定部109で演算が行われ、高速時はクラッチトルク設定部111で演算が行われる。クラッチトルク設定部109,111は、何れにおいてもリヤデファレンシャルの目標差動速度に対する実差動速度との差の比例値に応じて差動制限トルクを設定する構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−278492号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の構成では以下の問題が発生した。
【0006】
第1に、クラッチトルク設定部109,111が設定する差動制限トルクの特性変化(変化要因例として、温度、差動回転速度等がある。)に対して制御側が容易に補正できない。
【0007】
第2に、クラッチトルク設定部109,111が参照する差動回転速度に対して必要な差動制限トルクが車両の走行条件(例として、タイヤ−路面間の摩擦係数、登坂勾配等がある。)毎に一様に定まらない。
【0008】
従って、上記二つの要因により、実際の差動回転速度が目標値を上回り、タイヤ−路面間の粘着力確保に限界が発生する。又、実際の差動回転速度が目標値を下回って、不要な差動制限トルクを付加することになり、燃費を低下させ、発熱などによる悪影響が生じ、操縦安定性も悪化する恐れがある。
【0009】
本発明は、特性変化等があっても、タイヤ−路面間のスリップ率又はタイヤ間の回転速度差の制御をより的確に行うことのできる差動制御装置の提供を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、車両の前後輪間又は左右輪間に配置され少なくとも一方間の差動制限トルクを調整可能な差動制限機構と、前記車両の前後輪間又は左右輪間の少なくとも一方間の差動回転の回転速度差を検出する回転速度差検出手段と、前記回転速度差から車輪と路面との間の前記スリップ率を演算するスリップ率演算手段と、前記スリップ率演算手段が演算する実スリップ率と予め設定した目標スリップ率との偏差に応じて前記差動制限機構に付与される差動制限トルクを操作量として調節して偏差を減少させる制御手段とを備えことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、車両の前後輪間又は左右輪間に配置され少なくとも一方間の差動制限トルクを調整可能な差動制限機構と、前記車両の前後輪間又は左右輪間の少なくとも一方間の差動回転の回転速度差を検出する回転速度差検出手段と、前記回転速度差検出手段が検出する実回転速度差と予め設定した目標回転速度差との偏差に応じて前記差動制限機構に付与される差動制限トルクを操作量として調節して偏差を減少させる制御手段とを備えことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の差動制御装置であって、前記制御手段は、前記目標スリップ率と実スリップ率との差又は目標回転速度差と実回転速度差との差の比例と積分値とに応じた差動制限トルクを付加して前記調整を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1又は2記載の差動制御装置であって、前記調整手段は、前記目標スリップ率と実スリップ率との差又は目標回転速度差と実回転速度差との差の比例と積分値と微分値とに応じた差動制限トルクを付加して前記調整を行うことを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
請求項1の発明では、差動制限機構により車両の前後輪間又は左右輪間の少なくとも一方間のタイヤ−路面間の前記スリップ率を制御することができる。このとき、回転速度差検出手段により検出される回転速度差からスリップ率演算手段がスリップ率を演算し、制御手段により前記スリップ率演算手段が演算する実スリップ率と予め設定した目標スリップ率との偏差に応じて前記差動制限機構の差動制限トルクを操作量として調整して偏差を減少させることができる。
【0015】
従って、実スリップ率を適正にすることができ、必要なタイヤ−路面間の粘着力確保が可能となる。
【0016】
請求項2の発明では、差動制限機構により車両の前後輪間又は左右輪間の少なくとも一方間の回転速度差を制御することができる。このとき、前記前後輪間の一方又は左右輪間の一方の前記回転速度差検出手段が検出する実回転速度差と予め設定した目標回転速度差との偏差に応じて前記差動調整機構の差動制限トルクを操作量として調整して偏差を減少させることができる。
【0017】
従って、実回転速度差を適正にすることができ、必要なタイヤ−路面間の粘着力確保が可能となる。
【0018】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明の効果に加え、前記制御手段は、目標スリップ率と実スリップ率との差又は目標回転速度差と実回転速度差との差の比例と積分値とに応じた差動制限トルクを付加して前記調整を行うことができる。すなわち、積分値制御の追加によって、必要な差動制限トルクに対して比例制御の目標と実スリップ率又は実回転速度差との間に発生した偏差を経時的に減少させることが可能となり、タイヤ−路面間の必要な粘着力を経時的に確保することができる。
【0019】
請求項4の発明では、請求項1又は2の発明の効果に加え、前記調整手段は、前記目標スリップ率と実スリップ率との差又は目標回転速度差と実回転速度差との差の比例と積分値と微分値とに応じた差動制限トルクを付加調整して偏差を減少させることができる。従って、逐一変化するスリップ率の偏差の変化に対して、微分値制御の設定の効果により、目標値へ収束するまでの応答性が向上する。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態を適用した四輪駆動車のスケルトン平面図である。図1の四輪駆動車は、横置きフロントエンジン、フロントドライブベース(FFベース)であり、前輪が主駆動輪、後輪が副駆動輪となっている。
【0021】
図1のように、車両の前後輪間又は左右輪間の少なくとも一方間の差動回転を制御可能な差動制限機構、本実施形態では前後輪間のタイヤ−路面間のスリップ率を制御可能な差動制限機構としてトルク伝達カップリング1がリヤデファレンシャル3とリヤプロペラシャフト5との間に設けられている。
【0022】
前記トルク伝達カップリング1には、前記リヤプロペラシャフト5が等速ジョイント7を介して結合されている。トルク伝達カップリング1の出力側には、回転軸部材としてのドライブピニオンシャフト9が接続されている。ドライブピニオンシャフト9は、動力伝達ギヤとしてのドライブピニオンギヤ11を備えている。ドライブピニオンシャフト9は、固定側支持体であるデフキャリア13にベアリング15を介して回転自在に支持されている。
【0023】
前記リヤデファレンシャル3は、前記デフキャリア13に回転自在に支持されている。リヤデファレンシャル3のリングギヤ17は、前記ドライブピニオンギヤ11に噛み合っている。リヤデファレンシャル3は、左右のアクスルシャフト19,21を介して、左右の後輪23,25に連動連結されている。
【0024】
前記リヤプロペラシャフト5は、同じくプロペラシャフトを構成するフロントプロペラシャフト27側に連結されている。フロントプロペラシャフト27は、トランスファ29の伝動軸31に連動連結されている。伝動軸31は、トランスファ29内において、傘歯車33,35、伝動軸37、平歯車39,41を介してフロントデファレンシャル43のデフケース45側に連動構成されている。
【0025】
前記フロントデファレンシャル43のリングギヤ47には、エンジン49の出力がトランスミッション51を介して入力されるようになっている。前記フロントデファレンシャル43は、左右のアクスルシャフト53,55を介して、左右の前輪57,59に連動連結されている。
【0026】
前記左右の前後輪57,59,23,25には、車輪速センサ61,63,65,67が設けられている。車輪速センサ61,63,65,67が検出する前後輪57,59,23,25の車輪速は、制御手段としてのコントローラ69に入力される。コントローラ69は、前記前後輪57,59,23,25の車輪速の検出値から前後輪57,59,23,25間の差動回転の速度差を演算する。従って、本実施形態において、車輪速センサ61,63,65,67及びコントローラ69は、前後輪57,59,23,25間の差動回転の速度差を検出する回転速度差検出手段を構成している。なお、前述した車輪速センサ61,63,65,67は、各車輪57,59,23,25の回転軸側に設けた検出歯車と固定側に設けた磁気抵抗素子とにより時間当たりのパルス変化を検出するセンサであり、これにより車輪の速度を検出可能なセンサ構成である。
【0027】
前記コントローラ69は、スリップ率演算手段として、前記差動回転の回転速度差を基に前後輪又は左右輪間の少なくとも一方間、本実施形態では前輪57,59と後輪23,25との間のタイヤ−路面間のスリップ率を演算する。
【0028】
前記コントローラ69は、制御手段として、前記差動回転の速度差に応じて前記トルク伝達カップリング1の実伝達トルクが目標伝達トルクとなるように制御すると共に、前記前後輪間の一方又は左右輪間の一方の実スリップ率が目標スリップ率となるように補正して前記制御を行う。
【0029】
本実施形態では、主駆動輪である前輪57,59の前記演算した実スリップ率と予め設定した目標スリップ率との偏差に応じてトルク伝達カップリング1の差動制限トルクを操作量として調整し、連続して前記偏差を減少させ、或いは零にする。本実施形態では、前記目標スリップ率と実スリップ率との差の比例と積分値とに応じた差動制限トルクを付加して前記コントローラ69による調整を連続して行う。
【0030】
そして、エンジン49の出力トルクは、トランスミッション51からフロントデファレンシャル43のリングギヤ47に伝達され、フロントデファレンシャル43から左右のアクスルシャフト53,55を介して左右の前輪57,59に伝達される。
【0031】
また、フロントデファレンシャル43のデフケース45から、トランスファ29の平歯車41,39、伝動軸37、傘歯車35,33、伝動軸31を介して、フロントプロペラシャフト27へトルク伝達が行われる。
【0032】
前記フロントプロペラシャフト27からは、リヤプロペラシャフト5へトルク伝達が行われ、リヤプロペラシャフト5から等速ジョイント7を介してトルク伝達カップリング1にトルク伝達が行われる。
【0033】
前記トルク伝達カップリング1が、コントローラ69の制御によりトルク伝達可能状態となっていれば、ドライブピニオンシャフト9からドライブピニオンギヤ11を介して、リヤデファレンシャル3のリングギヤ17にトルク伝達が行われ、リヤデファレンシャル3から左右のアクスルシャフト19,21を介して左右の後輪23,25にトルク伝達が行われる。
【0034】
従って、トルク伝達カップリング1によってトルク伝達が行われる場合には、左右の前輪57,59、左右の後輪23,25によって四輪駆動状態で走行することができる。
【0035】
前記トルク伝達カップリング1がトルク遮断状態となっているときには、左右の後輪23,25へのトルク伝達は行われず、左右の前輪57,59へのトルク伝達によって二輪駆動状態での走行を行うことができる。
【0036】
なお、前記トルク伝達カップリング1は、リヤデファレンシャル3と、リヤプロペラシャフト5との間に配置するものに限らず、例えば図1において一点鎖線で追記したように、リヤプロペラシャフト5とフロントプロペラシャフト27との間のプロペラシャフト上のトルク伝達カップリング1A、トランスファ29とプロペラシャフトを構成するフロントプロペラシャフト27との間のトルク伝達カップリング1B、フロントデファレンシャル43と左右前輪57,59との間に設けるトルク伝達カップリング1C,1D、リヤデファレンシャル3と左右後輪23,25との間に設けるトルク伝達カップリング1E,1F、としてそれぞれ設けることもできる。
【0037】
なお、本実施形態においては、図1の実線図示で示すリヤデファレンシャル3とリヤプロペラシャフト5との間に設ける実線図示のトルク伝達カップリング1を例に説明するため、それぞれ一点鎖線図示のトルク伝達カップリング1A,1B,1C,1D1E,1Fは存在しないものとして説明を行う。
【0038】
図2は、前記トルク伝達カップリング1の詳細を示す断面図である。図2のように、前記トルク伝達カップリング1は、クラッチハウジング71とシャフト73とを備えている。
【0039】
前記クラッチハウジング71及びシャフト73間に、メインクラッチ75、パイロットクラッチ77、カム機構79、押圧プレート81、アーマチュア83が配置されている。
【0040】
前記クラッチハウジング71の外部側には、電磁石85が配置されている。電磁石85は、ベアリング87を介して、前記クラッチハウジング71側に相対回転自在に支持されている。電磁石85は、車体の固定側である、例えばデフキャリア13側に回転不能に係合している。電磁石123は、前記コントローラ69側に対してハーネスを介し電気的に接続され、コントローラ69により通電制御される。
【0041】
図3は、前記コントローラ69による制御ブロック図を示している。図3において、ΔNtは前輪57,59、後輪23,25間の差動回転の速度差の目標値であり、λtは、主駆動輪である前輪57,59の目標スリップ率である。ΔNa,λaは、制御結果の出力値であり、それぞれ実回転速度差、実スリップ率を示している。
【0042】
従って、目標回転速度差ΔNt、目標スリップ率λtに対し、回転速度差検出手段が検出する差動回転の速度差すなわち実回転速度差ΔNa又は実回転速度差ΔNaを基にスリップ率演算手段により演算された実スリップ率λaに応じて、コントローラ69の制御部89が演算し、トルク伝達カップリング1に出力する。
【0043】
前記トルク伝達カップリング1は、前記出力値によって締結制御され、実回転速度差ΔNa、実スリップ率λaが、目標回転速度差ΔNt、目標スリップ率λtとなるように制御されることになる。
【0044】
前記制御部89の演算は、次式のように行われる。
【0045】
Tt1=α1(λa−λt)+α2∫(λa−λt)dt (1)
ここに、Tt1:目標カップリングトルク(伝達トルク)、α1,α2:比例定数、λa:実スリップ率である。
【0046】
前輪57,59の実スリップ率λaは、前記車輪速センサ61,63で検出された前輪57,59の車輪速VFrと、車輪速センサ65,67で検出された後輪23,25の車輪速VRrとから、
λa={(VFr−VRr)/VFr}×100(%)
として演算される。
【0047】
また、前記実回転速度差ΔNaは、
ΔNa=VFr−VRr
として算出される。
【0048】
そして、本実施形態においては、上記(1)式のように、前後輪57,59,23,25の差動回転から演算した比例制御トルク値α1(λa−λt)に積分制御トルク値α2∫(λa−λt)dtを加算して前記コントローラ69による制御を行っている。このような積分値を加算して制御するのは、次のような理由による。
【0049】
図4は、前記比例制御トルク値のみによるトルク伝達カップリング1の伝達トルクの制御を示すグラフである。図4のように、比例値のみの制御であるから、トルク伝達カップリング1の必要な伝達トルクTtを得るために、目標回転速度差ΔNtと実回転速度差ΔN1(=ΔNa)の差に応じて制御をすると、トルク伝達カップリング1の必要な伝達トルクTtが得られたとき、すなわち動作点A1では実回転速度差ΔN1、実スリップ率λ1となる。
【0050】
この時、トルク伝達カップリング1の差動制限トルク特性が変化せず、自動車の走行状件に変化がないとすれば、必要とする目標の伝達トルクTtを設定した実回転速度差ΔN1、実スリップ率λ1で得ることができ、必要なタイヤ−路面間の粘着力確保が可能であると仮定する。
【0051】
上記仮定の下で、同様の制御を行っていても、トルク伝達カップリング1の差動制限トルク特性がトルク減少側へ変化した場合、制御特性が変化し、例えば線分93で制御されることになり、動作点がA1からA2へずれ、その時の実回転速度差及び実スリップ率がΔN2,λ2となる。
【0052】
尚、トルク伝達カップリング1そのものの特性変化の他に、走行状況、車両状況、走行環境等の変化によっても、必要とする目標の伝達トルクTtを得るときの動作点(実回転速度差,実スリップ率)は変化することになる。例えば、自動車の登坂走行で前輪57,59側の路面垂直抗力が減少したり、氷雪路、悪路などで前輪57,59での路面摩擦係数が小さくなったり、さらには前輪57,59と後輪23,25とのタイヤ径差などがあったりしても、前記変化を招くことになる。
【0053】
図5は、タイヤ、路面間の摩擦係数μと、前輪のスリップ率λとの関係を示すグラフである。図5において、点Pは、タイヤ、路面間の摩擦係数μが極大になる点を示す。このスリップ率βを上回ると、路面に対しタイヤが滑っている状況であり、下回っているときは滑っていない状況である。
【0054】
そして、前記のような特性変化の影響として動作点が図5のβを上回り、A2へ収束する場合がある。このときのタイヤは路面に対して滑っている状況であり、必要なタイヤ−路面間の粘着力確保が不可能になる。
【0055】
ここで、後輪23,25に滑りが発生しないと仮定すると、駆動力の伝達量を最大限とするためには図5においてスリップ率λをβより小さく、λt<βに設定し、動作点をB側とする必要がある。
【0056】
そこで、図6に示すような補正を行う。図6は、本発明の一実施形態に係る制御特性を示し、伝達トルクTと回転速度差ΔN及びスリップ率λとの関係を示すグラフである。図4の符号に合わせて動作点A2を示すと、線分93が比例トルク、線分93上側の斜線部が積分トルクを示している。比例トルクは前記(1)式の比例値により、積分トルクは同積分値により演算され出力されるものである。
【0057】
図6のように、積分トルクが小さい間は、動作点である実スリップ率λaはλ2に近い側にあるが、時間が経つにつれて積分トルクが増加し、動作点がB側へ移動する。この動作点Bは、図5のようにピーク点Pよりもスリップ率λが小さい側に位置している。このときのスリップ率λtを目標スリップ率として積分トルクを加算する。
【0058】
図7は、本発明の一実施形態に係るフローチャートである。前記コントローラ69の制御によって、図7のフローチャートが実行されると、ステップS1において定数α1,α2、又は目標スリップ率λt、目標回転速度差ΔNtの設定が行われる。
【0059】
ステップS2では、「前後車輪速度VFr、VRrの読み込み」の処理が実行される。このステップS2では、前記車輪速センサ61,63,65,67からコントローラ69へ入力されている検出値の読み込みが行われる。
【0060】
ステップS3では、「実スリップ率λaの演算」の処理が実行される。実スリップ率λaは、前記のように前後車輪速度VFr、VRrから算出される。
【0061】
ステップS4では、「目標カップリングトルクTt演算」の処理が実行される。この処理では、前記(1)式のように目標カップリングトルクTtが演算され、比例値に積分値を加算した目標カップリングトルクTtが算出される。
【0062】
ステップS5では、「電磁石の通電制御」の処理が実行される。この処理では、ステップS4において演算された目標カップリングトルクTtとなるように図3のフィードバック制御が行われ、電磁石85の通電制御が行われる。
【0063】
ステップS6では、「ΔNa=ΔNt、又はλa=λt?」の処理が実行される。ここでは、フィードバック制御の結果、実回転速度差ΔNaが目標回転速度差ΔNt、又は実スリップ率λaが目標スリップ率λtに達したか否かの判断が実行されることになる。実回転速度差ΔNa、実スリップ率λaが目標値に達していなければ、ステップS2へ戻り、前記ステップS2,S3,S4,S5が繰り返し実行される。
【0064】
ステップS6において、実回転速度差ΔNa、実スリップ率λaが目標回転速度差ΔNt、目標スリップ率λtに達していれば制御が終了することになる。
【0065】
すなわち本実施形態では、トルク伝達カップリング1の特性変化等があっても、時間経過によりトルク伝達カップリング1の動作点を図6のBとすることができる。この動作点Bでの回転速度差ΔN、スリップ率λは、目標回転速度差ΔNt、目標スリップ率λtであり、必要なタイヤ−路面間の粘着力確保が可能になる。
【0066】
前記積分トルクの加算値は、正負共に取得可能であり、ワインドアップを防止するため、トルク伝達カップリング1の飽和特性すなわち締結力が最小又は最大になったことに応じて停止させるようにする。
【0067】
尚、上記実施形態では、目標カップリングトルクTtを(1)式で演算するようにしたが、例えば目標スリップ率に対する実スリップ率との差の比例と積分値と微分値とに応じて差動制限トルクを付加しトルク伝達カップリング1を調整することも可能である。
【0068】
すなわち、
Tt2=α1(λa−λt)+α2∫(λa−λt)dt+α3d(λa−λt)/dt (2)
ここで、α3は定数であり、(2)式の第3項が微分値を表している。
【0069】
従って、逐一変化する車両の走行状況や走行環境の変化に対して、微分値により迅速に対応し、路面への駆動力伝達を的確に行わせることができる。
【0070】
また、前記コントローラ69は、前記スリップ率制御の他に前記検出する実回転速度差と予め設定した目標回転速度差との偏差に応じて前記トルク伝達カップリング1の差動制限トルクを操作量として調整し、偏差を減少させる又は零にするように差動回転速度制御の構成にすることもできる。この場合、上記(1)式、(2)式は次のようになる。
【0071】
制御フローチャートは、図7のステップS3を「実回転速度差ΔNaの演算」に代えてステップS1からステップS6が実行されることになる。
【0072】
上記実施形態では、前後輪間において、主駆動輪となる前輪のスリップ率を制御したが、主駆動輪が後輪の場合は後輪のスリップ率を制御する構成となる。
【0073】
前記回転速度差検出手段は、図1のように、伝動軸31に回転数センサ91を設け、ドライブピニオンシャフト9に回転数センサ93を設け、両回転数センサ91,93の検出値である伝動軸31及びドライブピニオンシャフト9の検出回転数をコントローラ69に入力してトルク伝達カップリング1前後の回転速度差を演算し、前後輪57,59,23,25間の回転速度差とすることもできる。
【0074】
なお、センサ91,93の構成は、前記センサ61,63,65,67の構成と同じである。
【0075】
図8は他の実施形態を適用した四輪駆動車のスケルトン平面図である。この実施形態では、左右後輪23,25の実スリップ率と予め設定した目標スリップ率との偏差に応じてリヤデファレンシャル3の差動制限機構95の差動制限トルクを操作量として調整し、前記偏差を減少させ、或いは零にする。本実施形態でも、前述した一実施形態と同様に、前記目標スリップ率と実スリップ率との差の比例と積分値とに応じた差動制限トルクを付加して前記コントローラ69Aによる調整を行うか、前記目標スリップ率と実スリップ率との差の比例と積分値と微分値とに応じた差動制限トルクを付加して前記コントローラ69Aによる調整を行うことが可能である。
【0076】
つまり、本実施形態では、左右後輪23,25間において実スリップ率又は実回転速度差を適正にすることができ、必要なタイヤ−路面間の粘着力確保が可能となる。
【0077】
なお、左右前輪57,59間においても差動制限機構を設け同様に構成することができる。
【0078】
また、差動制限機構の差動制限トルクの調整手段は、前述した電磁石85への通電制御によるクラッチ75等の締結に限られるものではなく、モータ等の回転を軸方向推力に変換して摩擦クラッチを締結させるものや、油圧などの流体圧を電磁バルブの開閉量を制御するものなど、種々の手段を採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を適用した四輪駆動車のスケルトン平面図である。
【図2】一実施形態に係り、トルク伝達カップリングの断面図である。
【図3】一実施形態に係り、制御ブロック図である。
【図4】一実施形態に係り、伝達トルクと回転速度差及びスリップ率との関係を示すグラフである。
【図5】一実施形態に係り、タイヤ、路面間の摩擦係数とスリップ率との関係を示すグラフである。
【図6】一実施形態に係り、伝達トルクと回転速度差及びスリップ率との関係を示すグラフである。
【図7】一実施形態に係るフローチャートである。
【図8】本発明の他の実施形態を適用した四輪駆動車のスケルトン平面図である。
【図9】従来例に係るブロック図である。
【符号の説明】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F トルク伝達カップリング(差動制限機構)
61,63,65,67 車輪速センサ(回転速度差検出手段)
69,69A コントローラ(制御手段、スリップ率演算手段、回転速度差検出手段)
95 差動制限機構
Claims (4)
- 車両の前後輪間又は左右輪間に配置され少なくとも一方間の差動制限トルクを調整可能な差動制限機構と、
前記車両の前後輪間又は左右輪間の少なくとも一方間の差動回転の回転速度差を検出する回転速度差検出手段と、
前記回転速度差から車輪と路面との間の前記スリップ率を演算するスリップ率演算手段と、
前記スリップ率演算手段が演算する実スリップ率と予め設定した目標スリップ率との偏差に応じて前記差動制限機構に付与される差動制限トルクを操作量として調節して偏差を減少させる制御手段とを備えことを特徴とする差動制御装置。 - 車両の前後輪間又は左右輪間に配置され少なくとも一方間の差動制限トルクを調整可能な差動制限機構と、
前記車両の前後輪間又は左右輪間の少なくとも一方間の差動回転の回転速度差を検出する回転速度差検出手段と、
前記回転速度差検出手段が検出する実回転速度差と予め設定した目標回転速度差との偏差に応じて前記差動制限機構に付与される差動制限トルクを操作量として調節して偏差を減少させる制御手段とを備えことを特徴とする差動制御装置。 - 請求項1又は2記載の差動制御装置であって、
前記制御手段は、前記目標スリップ率と実スリップ率との差又は目標回転速度差と実回転速度差との差の比例と積分値とに応じた差動制限トルクを付加して前記調整を行うことを特徴とする差動制御装置。 - 請求項1又は2記載の差動制御装置であって、
前記調整手段は、前記目標スリップ率と実スリップ率との差又は目標回転速度差と実回転速度差との差の比例と積分値と微分値とに応じた差動制限トルクを付加して前記調整を行うことを特徴とするスリップ率制御装置。
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