【発明の詳細な説明】
ポリグリコール仕上げ方法
発明の背景
本発明は、ポリグリコール仕上げ方法の分野に関する。より詳細には、本発明
は、固体もしくは液体廃棄物の量が少ないポリグリコール仕上げ方法に関する。
ポリグリコールを製造し、仕上げる方法は多く知られている。通常、ポリグリ
コール製造方法には触媒が用いられ、その触媒は通常塩基性触媒、例えばKOH
もしくは他のアルカリ金属水酸化物である。最終用途にポリグリコールを用いる
前にこの触媒を除去すること又は酸で中和することが望ましい。それは、ポリグ
リコール中の塩基性は最終用途の組成物の反応もしくは反応性に悪影響を与える
からである。それは、中和されていない触媒は、例えばポリウレタン形成反応の
ような所望の反応を過触媒するため、ポリグリコールをポリウレタン関連製品の
製造に用いる場合に顕著である。中和のために弱酸もしくは希酸を用いることが
でき、得られる塩はある場合にはポリグリコール中に残留する。しかし、この塩
は、ポリグリコールをある種の反応、例えばポリウレタン形成反応に用いた場合
に触媒として作用し、望ましくないもしくは許容されない程度まで反応速度を高
める。
ポリグリコール中に塩が残留することの望ましくない作用を抑制するため、種
々の除去手段が開発されてきた。例えば、結晶化と濾過を組合せた方法はこの塩
を除去する。塩を除去する他の公知の手段は、抽出、洗浄、例えばイオン交換媒
体を含む吸着剤を用いる吸着を含む。
しかしながら、これらの従来の除去手段はいずれも顕著な欠点を有している。
その欠点の1つは、中和後に1以上の分離除去工程を必要とし、多くの場合、時
間、装置の費用、溶剤の費用等が含まれる。従って、除去しなければならない廃
棄物を減少させ、処理工程を少なくするポリグリコールの仕上げ方法が望まれて
いる。
発明の概要
本発明は、塩基性触媒を用いて製造された粗ポリグリコールを仕上げる方法の
改良方法であって、ポリグリコールを酸と接触させる工程を少なくとも含み、酸
として次亜リン酸を用い、そして得られる固体を濾過することを含む。
好ましい態様の説明
一態様において、本発明はポリグリコールを製造し、仕上げる方法の改良であ
る。本発明において、ポリグリコール(時にはポリオール、ポリエーテルポリオ
ール、又は単にポリエーテルとも呼ばれる)は、広範の従来から公知のヒドロキ
シ官能基を有するポリエーテルを含む。これは、例えば少なくとも1個のヒドロ
キシル基を有するポリアルキレンポリエーテル、好ましくはポリアルキレンポリ
エーテルポリグリコールを含む。このポリエーテルは、触媒の存在下で製造され
た及び/又は水によって開始された、オキシランもしくはテトラメチレンオキシ
ドのような他の酸素含有複素環式化合物と2〜8個のヒドロキシル基又は他の活
性水素サイトを有する多価アルコールとの重合生成物を含む。好ましくは、この
ポリエーテルはプロピレンオキシドより形成されたオキシプロピレンユニットを
少なくとも一部含む。当業者には周知のように、プロピレンオキシドは単独重合
されてもよく、又は1種以上の他のオキシランもしく
は他の酸素含有複素環式化合物と共重合してもよい。この酸素含有複素環式化合
物は好ましくはアルキレンオキシドである。
この酸素含有複素環式化合物(以後アルキレンオキシドで例示するが、これに
限定されるものではない)は、好適には混合物中で又は順に反応される。1種以
上のアルキレンオキシドを用いた場合、得られるポリエーテルはランダム、ブロ
ック、又はランダム−ブロックのモノマー分布を含む。アルキレンオキシドの混
合物はランダムに分布したアルキレンオキシドユニットを形成することが多い。
異なるアルキレンオキシドの逐次添加はポリエーテル鎖中にアルキレンオキシド
のブロックを形成することが多い。
ポリエーテルの製造に適したオキシランの例は、エチレンオキシド、プロピレ
ンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、グリシジルエーテル、例え
ばt−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等を含む。他の
好適なオキシランは、1,2-ブチレンオキシド、1,2-ヘキシレンオキシド、1,2-デ
センオキシド、2-メトキシプロピレンオキシド、メトキシエチレンオキシド、2,
3-ブチレンオキシド、2,3-ヘキシレンオキシド、3,4-デセンオキシド、1,1,1-ト
リフルオロメチル-2,3- エポキシオクタン等を含む。このポリエーテルはアルキ
レンオキシドと共重合されたテトラヒドロフラン、エピハロヒドリン、例えばエ
ピクロロヒドリン、エピヨードヒドリン、エピブロモヒドリン、3,3-ジクロロプ
ロピレンオキシド、3-クロロ-1,2- エポキシプロパン、3-クロロ-1,2- エポキシ
ブタン、3,4-ジクロロ-1,2- エポキシブタン、3,3,3-トリクロロプロピレンオキ
シド等、アリールアルキレンオキシド、例えばスチレンオキシド等のような出発
材料からも製造される。好ましくは、このポリエーテルは、エチレンオキシド、
プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドのような2〜6個の炭素原子を有す
るアルキレン
オキシドより製造される。
本発明において、ポリエーテルは、上記の方法により製造される場合、少なく
とも10パーセント、より好ましくは少なくとも50パーセント、最も好ましくは少
なくとも80パーセントの、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブ
チレンオキシド又はこれらの混合物からなる群より選ばれるアルキレンオキシド
より製造される。最も好ましくは、プロピレンオキシドが選択される。プロピレ
ンオキシドのホモポリマー、又はプロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブチ
レンオキシドもしくはこれらの混合物とのコポリマーが本発明において好ましい
。
ポリアルキレンポリエーテルの形成の開始に適したアルコールの例は、グリセ
リン、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコー
ル、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコ
ール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプランジオール
、1,1,1-トリメチロールプロパン、1,1,1-トリメチロールエタン、ヘキサン-1,2
,6- トリオール、α−メチルグルコシド、ペンタエリトリトール及びソルビトー
ル、並びにペントール及びヘキソールを含む。グルコース、スクロース、フルク
トース、マルトース等のような糖、及びフェノールから得られた化合物、例えば
(4,4'-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン、ビスフェノール、アルキルフェノー
ル、例えばドデシルフェノール、オクチルフェノール、デシルフェノール及びこ
れらの混合物等も、本発明において有効なポリエーテルポリオールの形成に適し
ている。モノアルコール、好ましくは1〜18個の炭素原子を有するモノアルコ
ール(メタノール、エタノール、プロピルアルコールの異性体、ブチルアルコー
ルの異性体)、及びそのエーテルもヒドロキシ官能基を有するポリエーテルの形
成に適してい
る。
ポリエーテルを形成するためのオキシランとの反応に適したアミンは、所望に
よりアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシ基等のような置換基を有する脂
肪族並びに芳香族モノ及びポリアミンを含む。芳香族アミンの例は、アニリン、
o-クロロアニリン、p-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、メチレン
ジアニリン、アニリンとホルムアルデヒドの縮合生成物、2,4-ジアミノトルエン
、エチレンジアミン、トルエンジアミン等を含む。脂肪族アミンの例は、メチル
アミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノール
アミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、
1,2-プロピレンジアミン、1,4-ブチレンジアミン、これらの混合物等を含む。ア
ミンをベースとするポリグリコールは、例えば米国特許第 4,358,547号に詳細に
開示されている。
ポリエーテルは好ましくは、分子あたり平均1〜8個、好ましくは2〜4個の
ヒドロキシル基を有している。このポリエーテルは、88〜50,000、好ましくは1,
000 〜7,500 の分子量を有する、比較的高分子量のものである。このポリエーテ
ルは好ましくは、例えば当該分野において公知の、プロピレンオキシドをキャッ
プするために用いられるエチレンオキシドでキャップされていてもよい。
本発明において用いられるポリエーテルは、当業者に公知の方法によって製造
され、例えば、Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.7,p.257-262,Int
erscience Publishers(1951)、M.J.Schick、nonionic Surfactants,Marcel D
ekker,New York(1967)、英国特許第898,306 号、並びに米国特許第 1,922,45
9号、2,871,219 号、2,891,073 号、及び 3,058,921号に記載されている。ヒド
ロキシ官能基を有するポリエーテルの製造において1種以上の触媒が
有利に用いられる。この触媒は、アルカリもしくはアルカリ土類金属又はその水
酸化物及びアルコキシド、ルイス酸、プロトン酸、配位化合物等を含む。そのよ
うな触媒は好ましくは、IA族もしくはIIA 族金属イオンを含む。当業者は、アル
キレンオキシドを重合するためのアルキレンオキシド、開始剤、触媒及び助剤の
好適な量、並びに好適な条件を容易に決定できる。アルキレンオキシドの重合に
関しての詳細は、例えばNewton,”Propylene Oxide and Higher 1,2-Epoxide P
olymer",Encyclopedia of Chemical Technology,3版,Vol.10,R.KirK and D.
F.0thmer,John Wiley & Sons,New York(1982)p.633、D.J.Sparrow and D.Th
orpe,”Polyols for Polyurethane Production",Telechelic Polymers: Synth
esis and Application,E.J.Goethals,CRC Press,Inc.,Boca Raton,Florida
(1989),p.181、J.Furukawa and T.Saegusa,Polymerization of Aldehydes and
Oxides,Interscience,New York(1963).p.125-208、G.Odian,Principles of
Polymerization,John Wiley & Sons,New YorK(2 版、1970)p.512-521 、J.
McGrath編,Ring-Opening Polymerization,Kinetics Mechanisms,and Synthes
is,American Chemical Society,Washington D.C.(1985)p.9-21,137-147 a
nd 204-217、並びに米国特許第 2,716,137号、3,317,508 号、3,359,217 号、3,
730,922 号、4,118,426 号、4,228,310 号、4,239,907 号、4,282,387 号、4,32
6,047 号、4,446,313 号、4,453,022号、4,483,941 号、及び4,540,828 号を含
む。
ポリグリコール製造用の好ましい触媒は、塩基性触媒であり、より好ましくは
アルカリ金属、すなわちリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセ
シウムの水酸化物及びアルコキシドである。水酸化カリウムが好ましい。触媒と
してアルコキシドを用いる場合、アルコキシ基は有利には1〜36個の炭素原子を
含む。そのよ
うなアルコキシドの例は、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレング
リコール、プロポキシル化プロピレン又はエチレングリコール等のアニオンを有
するアルコキシドである。
本発明の実施態様は、ポリグリコールの製造用の触媒としてKOHを用い、こ
のKOHの一部は粗ポリグリコールに残留している方法を含む。本発明において
、「粗ポリグリコール」とは、製造工程の間、目的とする分子量が達成されるが
、残留触媒の除去によって仕上げられていないポリグリコールを意味する。
本発明の実施態様の実施において、好ましくは粗ヒドロキシ官能基を有するポ
リエーテルは過剰の触媒を除去するために事前に処理される。仕上げられていな
いポリエーテルに残留している触媒の濃度は高く、すなわち500ppm以上であり、
そのような濃度はヒドロキシ官能基を有するポリエーテルの製造におけるアルコ
キシル化の所望の速度を与えるに必要であるため、過剰の塩基性触媒の除去が望
ましい。そのような高レベルの触媒を中和することは費用がかかり又は技術的な
問題を起こす。従って、本発明の方法によってポリエーテルを仕上げる前に触媒
の当初の量のほとんどを除去するため中和以外の手段を用いることが好ましい。
通常、そのような手段は、当業者に周知のような遠心、水洗浄、抽出、イオン交
換樹脂の使用等を含む。好ましい実施態様において、過剰の触媒は次亜リン酸に
より処理される前に100ppm以下、より好ましくは50ppm 以下、最も好ましくは25
ppm 以下のレベルまで除去される。
本発明は、ポリグリコールがオキシエチレン構造を含む方法において行うこと
ができる。しかしながら、ポリグリコール内のオキシエチレン構造は、脱水前及
び後のポリグリコール内に封入される水の量に影響を及ぼす。本発明に用いるこ
とのできるポリグリコールは、オキシエチレン基を40重量パーセント未満、好ま
しくは30重量
パーセント未満、より好ましくは25重量パーセント未満有するものである。脱水
後、好ましくはこのポリグリコールは、次亜リン酸と接触する前に0.20パーセン
ト未満、より好ましくは0.15パーセント未満、さらにより好ましくは0.10パーセ
ント未満の残留水を有している。残留水はポリグリコール内に溶解もしくは分散
される。
少なくとも2つの理由のため、本発明の方法において次亜リン酸を用いること
が有利である。驚くべきことに、次亜リン酸−アルカリ金属塩(以後、アルカリ
金属次亜リン酸塩とする)はある種のポリグリコールに不溶性である。本発明に
有効なポリグリコールは、700 〜10,000、好ましくは800 〜8,000 、さらに好ま
しくは1,000〜7,000 のヒドロキシ当量を有するものを含む。このポリグリコー
ルにアルカリ金属次亜リン酸塩はとても不溶性である。
アルカリ金属次亜リン酸塩は、本発明に有効なポリグリコールから沈澱した場
合、長分枝鎖結晶の形態であり、0.001 〜0.006mm の直径を有する。そのような
長い結晶は濾過が容易である。アルカリ金属次亜リン酸塩結晶を容易に濾過でき
ること及びアルカリ金属次亜リン酸塩の溶解性のレベルがとても低いことの結果
として、本発明の仕上げ方法において最終ポリグリコール中の触媒カチオンの残
留レベルがとても低くなる。KOH 触媒により製造し、本発明の方法により仕上げ
たポリグリコールはカリウム濃度が200ppm未満、好ましくは10ppm 未満、さらに
好ましくは5ppm未満である。
本発明の実施において、次亜リン酸は、当業者に有効であることが知られてい
るいずれの方法で粗ポリグリコールに加えてもよい。次亜リン酸は油状液体、潮
解結晶又は水溶液として得られる。好ましくは、次亜リン酸は50重量パーセント
水溶液の形態で加えられ、残留塩基性触媒がすベて中和されるまで混合される。
好ましくは、粗ポリグリコールはこの工程の間90℃〜140 ℃の温度に維持される
。
本発明の方法の実施において重要な1つの因子は大きな結晶の成長を促進する
ことである。加える酸が少なすぎると、仕上げ後のポリグリコール中に残留触媒
が残り、望ましくない。加える酸が多すぎると、貯蔵の間にポリグリコールに望
ましくない副反応が起こる。ポリグリコール中の酸レベルが高すぎると、最終用
途も制限をうける。好ましくは、粗ポリグリコール中の残留塩基性触媒の量が測
定され、0.95〜1.15、より好ましくは1.00〜1.12、最も好ましくは1.05〜1.10の
塩基性触媒に対する次亜リン酸のモル比を達成するに十分な次亜リン酸がポリグ
リコールに加えられる。
本発明の方法の実施において形成されたアルカリ金属次亜リン酸塩結晶は適当
な従来の濾過装置によって容易に濾過することができる。例えば、ポリグリコー
ルは珪藻土からなる濾過層を通過し、塩の結晶が捕捉される。また、紙及び布ス
クリーンフィルターも本発明において有効である。金属スクリーンフィルターも
ポリグリコールに用いられることが知られている。これらの濾過手段のすべても
しくは一部の組合せを本発明に用いてよい。ポリグリコールに適しており、ポリ
グリコールを通過させるがアルカリ金属次亜リン酸塩結晶は捕捉するような多孔
度を有するあらゆる濾過手段を本発明の方法に用いてよい。
以下の実施例は本発明を説明するものである。この実施例は本発明の範囲を限
定するものではない。特に示さない限り、量は重量部又は重量パーセントである
。
実施例1
窒素下、KOHの存在下において分子量450 のグリセリン開始プロピレンオキ
シドポリグリコールをプロピレンオキシドと混合する
ことにより3の公称のヒドロキシル官能価を有するプロピレンオキシドポリグリ
コールを製造した。このKOHの濃度は3重量パーセントであった。この反応は
110 ℃〜120 ℃において、周囲圧力〜80psig(551KN/m2)で行った。得られた粗ポ
リグリコールはKOHを3,500ppm含み、これは水洗浄によって63ppm まで低下し
た。次いで脱水によって水分含量を1.5 パーセントまで低下させた。次に、残留
KOHに対する次亜リン酸のモル比0.97:1又は重量比2.3:1において次亜リン酸
の50重量パーセント水溶液を用いてこのポリグリコールを中和した。次いで得ら
れたポリグリコールを濾過媒体としてDietE を用いてフィルターを通して濾過し
た。DietE は260g/lの塊密度及び325Tylerのメッシュ(0.044mm)を通す10パーセ
ント残留率を有する珪藻土である。このポリグリコールの特性、及び固体廃棄物
を測定し、以下の表に示す。
比較例2
次亜リン酸で処理する代わりに粗ポリグリコールを珪酸マグネシウムの層に通
して濾過することを除き、実施例1と実質的に同様にしてポリグリコールを製造
し、仕上げた。得られた廃棄物体積を珪酸し、珪酸マグネシウムを用いて廃棄物
体積が120 パーセント増加した。ポリグリコールの特性を測定し、以下の表に示
す。
比較例3
次亜リン酸で処理する代わりに、粗ポリグリコールをオルトリン酸で処理する
ことを除き、実施例1と実質的に同様にしてポリグリコールを製造し、仕上げた
。濾過可能な塩結晶は観察されなかった。
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フロントページの続き
(72)発明者 アラウーホ,リカード
ブラジル国,エセペー,11470−グアルー
ハ,ルアローキシノール,270