【発明の詳細な説明】
赤血球形成を増強するためのSTAT 5 SH2領域特異性化合物の使用
発明の背景
多くのポリペプチド成長因子およびホルモンがシグナル変換経路を通してその
細胞効果を媒介する。細胞内エフェクターに対するこれらのリガンドに関する細
胞表面レセプターからのシグナルの変換は、しばしば、調節タンパク質チロシン
キナーゼ(PTK)およびホスファターゼによる特定のタンパク質基質のリン酸
化または脱リン酸化を含む。チロシンリン酸化は主要な、あるいは唯一の多細胞
生物におけるシグナル変換の指標である。レセプター結合および細胞内PTKは
、免疫系細胞における細胞増殖、細胞分化およびシグナル発生プロセスを調節す
る。
異常なタンパク質チロシンキナーゼ活性は、多くの病状、例えば糖尿病、アテ
ローム性動脈硬化症、乾癬、敗血症性ショック、骨損失、貧血、多くの癌および
他の増殖性疾患に関与するかまたは関与する疑いがある。したがって、チロシン
キナーゼおよびこれらが包含されるシグナル変換経路は、薬物設計の潜在的な目
的である。総論については、Levitzkiら、Science 267,1782-1788(1995)を参
照。
シグナル変換経路を含むタンパク質の多くは、低レベルで存在し、相反する活
性を有することが多い。これらのシグナル発生分子の性質により、細胞下位置お
よびエフェクターの近位によってならびに活性化と抑制のバランスをとることに
より一経路における小さな変化がスイッチング効果を起こすことができることに
よって細胞が転換を制御できるようになる。
タンパク質間相互作用によるシグナル発生分子の近位による変換複合体の形成
は、特異的結合領域配列モチーフにより媒介される。Src相同性2(SH2)領
域は、非−レセプターPTKおよびキナーゼ攻撃エフェクター分子などの種々の
シグナル発生分子および腫瘍タンパク質においてみられる約100アミノ酸の保
存非触媒配列であり、重要な役割を果たす。SH2領域は、自己リン酸化PTK
レセプターまたは細胞内チロシンキナーゼにおいてみられる短ホスホチロシン含
有ペプチド配列に対して高度に特異的である。
別の触媒的または他の機能的領域を有するが、さらに保存されたSH2領域、
約100個のアミノ酸の保存配列も共有する約60のタンパク質が同定された。
体内においてどの生理学的応答がこれらのSH2領域のそれぞれにより制御され
ているかはっきりとは解っていない。さらに、SH2領域−リガンド/化合物相
互作用は、リガンド/化合物の構造における小さな修正によりリガンド/化合物
が種々のSH2領域と結合する選択性が著しく変更されるように高度に特異性で
ある。
Stat(シグナル変換および転写の活性化)タンパク質は、シグナルをサイト
カインレセプターから核に伝達し、特異的標的遺伝子の転写を活性化するSH2
含有細胞内タンパク質である[Darnell J.ら,Science 264,1415-1421(1994)]。
これらのタンパク質は、そのSH2領域によりレセプター上のリン酸化部位に補
充され、それ自身チロシン残基上でレセプター関連ヤヌス(JAK)チロシンキ
ナーゼによりリン酸化される。Statチロシン残基のリン酸化により、レセプタ
ーと置き変わった、Statホスホチロシンモチーフ形成ダイマーと結合するStat
SH2領域についての追加的結合リガンドが提供される。ダイマーStatは、核
に移動する(ここで、これらはDNAおよび他の補助タンパク質と結合し、標的
遺伝子の転写を活性化する)。各StatまたはStatヘテロダイマーは、種々のサ
イトカインレセプターからのシグナルを変換する。例えば、Stat 6は、インタ
ーロイキン4シグナル発生を媒介し、一方、Stat 5は、エリスロポイエチン(
EPO)レセプターからのシグナルを変換する[Hou J.ら,Science 265,1701-
1706(1994);Penta K.ら,J.Biol .Chem. 270,31282-31287(1995)]。
サイトカイン活性の調節不全を含む症状において、Statタンパク質を活性化
または抑制する化合物は、治療薬として有用である。例えば、Stat 5の活性化
は、EPOの効果を模倣し、赤血球形成を増強する。反対に、Stat 6の抑制は
、IL−4またはIL−13に媒介されるIgEレセプターの上方調節をブロッ
クし[Izuhara K.,J .Biol.Chem. 271,619-22(1996)]、アレルギー反応の治
療において有用である。Statタンパク質のSH2領域は、これらの機能を活性
化または抑制する手段を提供する。活性化は、適切なSH2領域についての二分
染色体−対称性リガンドによるダイマー形成を誘発することにより達成でき、一
方、モノマーリガンドは、Stat機能を抑制する。このようなリガンドの発見に
より、特定のStatタンパク質のSH2領域を攻撃して所望のホモまたはヘテロ
ダイマー形成を誘発または抑制する必要がある。
SH2領域の非選択性拮抗作用の結果はかなり重大であり得る。例えば、Sta
t 5 SH2領域およびStat 6 SH2領域は、構造的に類似し、領域間に高度
の保存性を有する。Stat 5 SH2領域の活性化(本明細書において議論する
)は、赤血球産生を増加させるとされる。一方、Stat 6 SH2領域の活性化
は、アレルギー反応を治療するとされ、したがって、Stat 6交差反応性を有す
るStat 5の活性化因子は、アレルギー反応を増悪させ、一方、Stat 5と交差
反応するStat 6抑制物質は、赤血球産生を抑制する。
さらにまた、全ての60個の公知SH2領域に対する結合研究における潜在的
なStat 5 SH2領域活性化因子を調べることは実行不可能である。現在のと
ころ、Stat 5 SH2領域と選択的に相互作用する化合物は知られていない。
Stat 5 SH2領域を活性化することにより赤血球形成の増強を可能にする
が、非選択的SH2領域相互作用においてみられる副作用の発生を避ける方法お
よび化合物を提供することが望ましい。
本明細書において開示するように、意外にもStat 5 SH2領域の選択的活
性化因子は、src SH2領域、Stat 6 SH2領域、lck SH2領域、Stat
5 SH2領域、fyn SH2領域、SHPTP2 SH2領域、p85領域、Grb
2 SH2領域およびhcp SH2領域からなるSH2領域の小群に対する結合検
定により同定できることが見いだされた。
以下に記載する情報から、意外にも、化合物がヒトStat 6 SH2領域と結
合する結合親和力より50倍以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域に
ついて特異的であり、(b)かかるStat 5 SH2領域と結合する結合親和力
より50倍以上低い結合親和力でヒトhcp SH2領域、ヒトGrb2 SH2領域
、
ヒトp85 SH2領域およびヒトSHPTP2 SH2領域と結合し、(c)か
かるStat 5 SH2領域と結合する結合親和力より50倍以上低い結合親和力
でヒトsrc SH2領域、ヒトlck SH2領域およびヒトfyn SH2領域と結合す
る化合物が赤血球形成の増強に有効であることが見いだされた。
発明の概要
本発明は、患者における赤血球形成の増強方法であって、患者に治療上有効量
の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より50倍以上高い
結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合し、(b)かかるStat 5 SH2
領域と結合する結合親和力より50倍以上低い結合親和力でヒトhcp SH2領域
、ヒトGrb2 SH2領域、ヒトSH−PTP2 SH2領域およびヒトp85 S
H2領域と結合し、(c)かかるStat 5 SH2領域と結合する結合親和力よ
り50倍以上低い結合親和力でヒトsrc SH2領域、ヒトlck SH2領域および
ヒトfyn SH2領域と結合する化合物を投与することを特徴とする治療方法を提
供するものである。
本発明は、患者における貧血の治療方法であって、患者に治療上有効量の、(
a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より50倍以上高い結合親
和力でヒトStat 5 SH2領域と結合し、(b)かかるStat 5 SH2領域と
結合する結合親和力より50倍以上低い結合親和力でヒトhcp SH2領域、ヒト
Grb2 SH2領域、ヒトSH−PTP2 SH2領域およびヒトp85 SH2領
域と結合し、(c)かかるStat 5 SH2領域と結合する結合親和力より50
倍以上低い結合親和力でヒトsrc SH2領域、ヒトlck SH2領域およびヒトfy
n SH2領域と結合する化合物を投与することを特徴とする治療方法を提供する
ものである。
本発明は、患者における造血の増強方法であって、患者に治療上有効量の、(
a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より50倍以上高い結合親
和力でヒトStat 5 SH2領域と結合し、(b)かかるStat 5 SH2領域と
結合する結合親和力より50倍以上低い結合親和力でヒトhcp SH2領域、ヒト
Grb2 SH2領域、ヒトSH−PTP2 SH2領域およびヒトp85 SH2
領域と結合し、(c)かかるStat 5 SH2領域と結合する結合親和力より5
0倍以上低い結合親和力でヒトsrc SH2領域、ヒトlck SH2領域およびヒト
fyn SH2領域と結合する化合物を投与することを特徴とする治療方法を提供す
るものである。
発明の詳細な記載
本明細書において用いる場合、「赤血球形成の増強」なる用語は、赤血球の生
産を増加させることを意味する。
本明細書において用いる場合、「治療する」なる用語およびその派生語は、予
防的または治療的療法を意味する。
本明細書において用いる場合、「化合物」なる用語は、非ペプチド化合物を意
味する。
本明細書において用いる場合、Stat 5 SH2領域と結合する化合物を記載
する場合、Stat 5 SH2領域活性化を意味する。
本明細書において用いる場合、Stat 5意外のSH2領域と結合する化合物を
記載する場合、拮抗作用を意味する。
本明細書において用いる場合、特記しない限り、「Stat 5 SH2領域活性
化因子」なる用語およびその派生語は、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合
する結合親和力より50倍以上高い、好ましくは100倍以上高い結合親和力で
ヒトStat 5 SH2領域と結合し、(b)かかるStat 5 SH2領域と結合す
る結合親和力より50倍以上低い、好ましくは100倍以上低い結合親和力でヒ
トhcp SH2領域、ヒトGrb2 SH2領域、ヒトSH−PTP2 SH2領域お
よびヒトp85 SH2領域と結合し、(c)かかるStat 5 SH2領域と結合
する結合親和力より50倍以上低い、好ましくは100倍以上低い結合親和力で
ヒトsrc SH2領域、ヒトlck SH2領域およびヒトfyn SH2領域と結合する
二歯のSH2リガンドを意味する。
本明細書において用いる場合、「二歯のSH2リガンド」なる用語は、同一分
子中に2つの結合領域を有する化合物を意味する。
本発明は、患者における赤血球形成の増強方法であって、患者に治療上有効量
の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より50倍以上高い
結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合し、(b)かかるStat 5 SH2
領域と結合する結合親和力より50倍低い結合親和力でヒトhcp SH2領域、ヒ
トGrb2 SH2領域、ヒトSH−PTP2 SH2領域およびヒトp85 SH2
領域と結合し、(c)かかるStat 5 SH2領域と結合する結合親和力より5
0倍以上低い結合親和力でヒトsrc SH2領域、ヒトlck SH2領域およびヒト
fyn SH2領域と結合する化合物を投与することを特徴とする赤血球形成の増強
方法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における赤血球形成の増強方法であって、患者
に治療上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より
50倍以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合する化合物を投与
することを特徴とする赤血球形成の増強方法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における赤血球形成の増強方法であって、患者
に治療上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より
100倍以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合し、(b)かか
るStat 5 SH2領域と結合する結合親和力より100倍以上低い結合親和力
でヒトhcp SH2領域、ヒトGrb2 SH2領域、ヒトSH−PTP2 SH2領
域およびヒトp85 SH2領域と結合し、(c)かかるStat 5 SH2領域と
結合する結合親和力より100倍以上低い結合親和力でヒトsrc SH2領域、ヒ
トlck SH2領域およびヒトfyn SH2領域と結合する化合物を投与することを
特徴とする赤血球形成の増強方法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における赤血球形成の増強方法であって、患者
に治療上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より
100倍以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合する化合物を投
与することを特徴とする赤血球形成の増強方法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における貧血の治療方法であって、患者に治療
上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より50倍
以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合し、(b)かかるStat
5 SH2領域と結合する結合親和力より50倍低い結合親和力でヒトhcp SH
2領域、ヒトGrb2 SH2領域、ヒトSH−PTP2 SH2領域およびヒトp
85 SH2領域と結合し、(c)かかるStat 5 SH2領域と結合する結合親
和力より50倍以上低い結合親和力でヒトsrc SH2領域、ヒトlck SH2領域
およびヒトfyn SH2領域と結合する化合物を投与することを特徴とする治療方
法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における貧血の治療方法であって、患者に治療
上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より50倍
以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合する化合物を投与するこ
とを特徴とする治療方法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における貧血の治療方法であって、患者に治療
上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より100
倍以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合し、(b)かかるStat
5 SH2領域と結合する結合親和力より100倍以上低い結合親和力でヒトhc
p SH2領域、ヒトGrb2 SH2領域、ヒトSH−PTP2 SH2領域および
ヒトp85 SH2領域と結合し、(c)かかるStat 5 SH2領域と結合する
結合親和力より100倍以上低い結合親和力でヒトsrc SH2領域、ヒトlck S
H2領域およびヒトfyn SH2領域と結合する化合物を投与することを特徴とす
る治療方法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における貧血の治療方法であって、患者に治療
上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より100
倍以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合する化合物を投与する
ことを特徴とする治療方法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における造血の増強方法であって、患者に治療
上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より50倍
以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合し、(b)かかるStat
5 SH2領域と結合する結合親和力より50倍低い結合親和力でヒトhcp SH
2領域、ヒトGrb2 SH2領域、ヒトSH−PTP2 SH2領域およびヒト
p85 SH2領域と結合し、(c)かかるStat 5 SH2領域と結合する結合
親和力より50倍以上低い結合親和力でヒトsrc SH2領域、ヒトlck SH2領
域およびヒトfyn SH2領域と結合する化合物を投与することを特徴とする造血
の増強方法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における造血の増強方法であって、患者に治療
上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より50倍
以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合する化合物を投与するこ
とを特徴とする造血の増強方法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における造血の増強方法であって、患者に治療
上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より100
倍以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合し、(b)かかるStat
5 SH2領域と結合する結合親和力より100倍以上低い結合親和力でヒトhc
p SH2領域、ヒトGrb2 SH2領域、ヒトSH−PTP2 SH2領域および
ヒトp85 SH2領域と結合し、(c)かかるStat 5 SH2領域と結合する
結合親和力より100倍以上低い結合親和力でヒトsrc SH2領域、ヒトlck S
H2領域およびヒトfyn SH2領域と結合する化合物を投与することを特徴とす
る造血の増強方法を提供する。
本発明の好ましい態様は、患者における造血の増強方法であって、患者に治療
上有効量の、(a)ヒトStat 6 SH2領域と結合する結合親和力より100
倍以上高い結合親和力でヒトStat 5 SH2領域と結合する化合物を投与する
ことを特徴とする造血の増強方法を提供する。
異なるヒトSH2領域での化合物の結合活性は、以下の実施例11においてさ
らに詳細に記載するようにイー・コリ(E. coli)またはバキュロウイルスのい
ずれかにおいて融合タンパク質として発現されるSH2領域を用いてin vitroで
測定される。
添付の表1および2に示したデータは、前記化合物の種々のSH2領域と相互
に作用する能力を示す。実施例11に記載した検定からStat 5 SH2領域に
対して選択性があるとして示される化合物を、当該技術分野においてはin vivo
での赤血球形成の増強における効力と相関すると認識されている公知検定で試験
する。好ましい検定は、以下のものを包含する:
1)Hayakawa Tら,Biologicals 20,(1992)253、および
2)Hayakawa Tら,Biologicals 20,(1992)243。
これらの検定における活性は、当該技術分野においては、in vivoでの赤血球
形成の増強における効力と相関すると認識されている。これらの検定における活
性はまた、当該技術分野において、in vivoでの貧血の治療における効力と相関
すると認識されている。これらの検定における活性はまた、当該技術分野におい
て、in vivoでの造血の増強における効力と相関すると認識されている。
したがって、本発明は、赤血球形成の増強方法であって、本明細書において定
義するようなStat 5 SH2領域活性化因子を、赤血球形成を増強させるのに
有効な量で投与することを特徴とする赤血球形成の増強方法を提供する。該薬物
は、増強した赤血球形成を必要とする患者に、静脈内、筋肉内、経口、皮下、皮
内、および非経口を含む(これに限定されない)いずれかの慣用的な投与経路に
より投与される。赤血球形成を増強させるのに有効な量は、患者の体重1kgあた
り約0.001mgないし約10.0mgである。選択された用量は、患者の体重1kg
あたり約0.001mgないし約10.0mgから選択される有効な非毒性量である。
選択された用量を毎日約1ないし6回投与する。
本発明において記載する赤血球形成の増強方法はまた、本発明において定義す
るようなStat 5 SH2領域活性化因子および医薬上許容される担体を含有し
てなる医薬組成物を用いて行う。組成物は、Stat 5 SH2領域活性化因子0.
05mg〜500mgを含有し、選択された投与様式に適したいずれかの形態に構成
される。経口投与に適した組成物としては、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤お
よび散剤などの固体形態、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液剤
などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、無菌溶液剤、
乳剤、および懸濁液剤が挙げられる。
さらに、本発明は、貧血の治療方法であって、本明細書において定義するよう
なStat 5 SH2領域活性化因子を、貧血に対して有効な量で投与することを
特徴とする治療方法を提供する。該薬物は、貧血の治療を必要とする患者に、静
脈内、筋肉内、経口、皮下、皮内、および非経口を含む(これに限定されない)
いずれかの慣用的な投与経路により投与される。貧血を治療するのに有効な量は
、患者の体重1kgあたり約0.001mgないし約10.0mgである。選択された用
量は、患者の体重1kgあたり約0.001mgないし約10.0mgから選択される有
効な非毒性量である。選択された用量を毎日約1ないし6回投与する。
本発明において記載する貧血の治療方法はまた、本発明において定義するよう
なStat 5 SH2領域活性化因子および医薬上許容される担体を含有してなる
医薬組成物を用いて行う。組成物は、Stat 5 SH2領域活性化因子0.05mg
〜500mgを含有し、選択された投与様式に適したいずれかの形態に構成される
。経口投与に適した組成物としては、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤および散
剤などの固体形態、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液剤などの
液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、無菌溶液剤、乳剤、
および懸濁液剤が挙げられる。
さらに、本発明は、造血の増強方法であって、本明細書において定義するよう
なStat 5 SH2領域活性化因子を、造血を増強させるのに有効な量で投与す
ることを特徴とする造血の増強方法を提供する。該薬物は、増強した造血を必要
とする患者に、静脈内、筋肉内、経口、皮下、皮内、および非経口を含む(これ
に限定されない)いずれかの慣用的な投与経路により投与される。造血を増強さ
せるのに有効な量は、患者の体重1kgあたり約0.001mgないし約10.0mgで
ある。選択された用量は、患者の体重1kgあたり約0.001mgないし約10.0
mgから選択される有効な非毒性量である。選択された用量を毎日約1ないし6回
投与する。
本発明において記載する造血の増強方法はまた、本発明において定義するよう
なStat 5 SH2領域活性化因子および医薬上許容される担体を含有してなる
医薬組成物を用いて行う。組成物は、Stat 5 SH2領域活性化因子0.05mg
〜500mgを含有し、選択された投与様式に適したいずれかの形態に構成される
。経口投与に適した組成物としては、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤および散
剤
などの固体形態、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液剤などの液
体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、無菌溶液剤、乳剤、お
よび懸濁液剤が挙げられる。
別法として、薬物は、無菌水、生理食塩水、または他の適当な無菌注射用媒体
を用いて投与時に溶解または懸濁される無菌固体組成物として調製される。担体
としては、必要な不活性結合剤、懸濁化剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、甘味料、保存
剤、染料およびコーティングが挙げられる。
投与される最適用量は、当業者により容易に決定され、用いる特定のStat 5
SH2領域活性化因子、調製物の強度、投与様式、およびこれらの疾患の進行
によって変わる。患者の年齢、体重、食事、および投与時を含む、治療される特
定の患者に依存するその他の要因の結果、用量を調節する必要が生じる。
本発明はまた、貧血の治療薬の製造におけるStat 5 SH2領域活性化因子
の使用を提供するものである。
本発明はまた、造血の増強薬の製造におけるStat 5 SH2領域活性化因子
の使用を提供するものである。
本発明はまた、赤血球形成の増強薬の製造におけるStat SH2領域活性化因
子の使用を提供するものである。
本発明はまた、Stat SH2領域活性化因子を含有してなる貧血治療用医薬組
成物を提供するものである。
本発明はまた、Stat SH2領域活性化因子を含有してなる造血増強用医薬組
成物を提供するものである。
本発明はまた、Stat SH2領域活性化因子を含有してなる赤血球形成増強用
医薬組成物を提供するものである。
本発明の方法を本発明に従って用いた場合に許容できない毒性は考えられない
。
さらに努力することなく、当業者は、前記載事項を用いて、本発明を最大限に
活用できると考えられる。したがって、以下の実施例は、単に例示的であって、
如何なる場合も本発明の範囲を制限するものではないと考えられる。
実験の詳細
本発明において用いる場合、特記しない限り、記号°は℃を意味する。
L−3,5−ジブロモチロシンは、例えば、「甲状腺ホルモンおよび類似体I.
合成、物理的性質および理論的計算値」(E.C.Jorgensen,Hormonal Proteins
and Peptides,第VI巻,1978,Academic Press,N.Y.)およびその引用文献に
記載されているような当該技術分野で知られている方法により調製できる。
L−3,5−ジブロモ−N−トリフルオロアセチル−チロシンメチルエステル
(実施例2(e)および実施例2B(b)における使用について)は、以下の手
順に従って調製できる。
L−3,5−ジブロモチロシン(500g)をメタノール(5リットル)に懸濁
させ、該撹拌懸濁液に乾燥塩化水素を5時間通した。該反応混合物を蒸発乾固さ
せ、残留物を水(4リットル)中に懸濁させ、40%水酸化ナトリウムでpHを
6に調節した。沈殿物を回収し、水で洗浄して、L−3,5−ジブロモチロシン
メチルエステルを得た(467g、90%)、融点201°−203°。該エス
テル(768g)をクロロホルム(2.7リットル)および酢酸エチル(2.7リ
ットル)に懸濁させ、次いで、温度を35°以下に保ちつつ無水トリフルオロ酢
酸(565g)を0.5時間かけて添加した。該混合物を一夜静置し、次いで、水
(2リットル)を添加し、重炭酸ナトリウム飽和溶液の添加によりpHを7に調
節した。有機層を取り出し、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸
発させた。該残留物を水性メタノールから再結晶して、L−3,5−ジブロモ−
N−トリフルオロアセチル−チロシンメチルエステルを得た(786g、81%)
、融点136°−7°。
下記実施例6で用いるスキーム1
4−トランス−アミノメチル−シクロヘキシル−カルボン酸1のアミノ基をB
oc基(Boc無水物、NaOH、H2O、ジオキサン)などの標準的保護基で保護
して2を形成し、次いで、DCCなどのカップリング試薬を用いてカイザーオキ
シム樹脂[Kaizer,E.T.らJ Am Chem Soc 1985,107,7087-7092]とカップリ
ングして3を形成する。次いで、該アミンを標準的条件下(25%TFA、塩化
メチレン)で脱保護して4を形成し、次いで、標準的条件下(HBTU、DMF
中NMM、またはDMFまたはNMP中DCCもしくはDICなど)アシル化し
て5を形成する。次いで、該化合物を種々のアミンで樹脂から開裂させて望まし
い最終生成物6を形成する。
化合物1ないし10を以下の実施例1ないし10に従って調製する。
実施例1
7−[D,L−α−アミノ−α−(4−カルボキシフェニル)アセトアミド]−3 −[2−(5−メチル−1,3,4−チアジアゾリル)チオメチル]△3−セフェム− 4−カルボン酸(化合物1)の調製
a)4−ヒドロキシメチルベンズアルデヒド
窒素下、氷浴中で1,4−ベンゼンジカルボキシアルデヒド(50.0g、0.3
73モル)の乾燥テトラヒドロフラン(200mL)中溶液にテトラヒドロフラ
ン500mL中水素化トリ(tert−ブトキシ)アルミニウムリチウム(104.0g
、0.410モル)を滴下した。氷浴中で1.5時間撹拌後、該反応混合物を氷冷
2N塩酸2L中に注いだ。該水溶液をエーテル800mLずつで4回抽出した。
合したエーテル層を重炭酸ナトリウム溶液、食塩水で洗浄し、乾燥させた。溶媒
を蒸発させて粗製物質46gを得、これをクロマトグラフィー(アルミナ、エー
テル溶離)に付すことより精製して、結晶性物質として標記化合物を得た(17
.6g、35%):融点44.5−46℃。
b)5−(4−ヒドロキシメチルフェニル)ヒダントイン
50℃に加熱した60%水性エタノール110mL中の4−ヒドロキシメチル
ベンズアルデヒド(10.0g、73.5ミリモル)および炭酸アンモニウム(1
7.1g、150ミリモル)の撹拌混合物に水10mL中のシアン化ナトリウム(
4.0g、81ミリモル)を添加した。該混合物を撹拌し、50−60℃で3時間
加熱し、次いで、85℃で1時間加熱した。氷浴中で冷却した後、濃塩酸の添加
により該溶液のpHを6に調節した。一夜冷却して、沈殿した固体を濾過し、水
で洗浄し、乾燥させて、標記化合物を得た(11.0g、72%):融点189−
196℃。
c)4−ヒドロキシメチルフェニルグリシン
実施例1(b)の化合物(10.9g、53ミリモル)および水酸化バリウム・
八水和物(25.5g、81ミリモル)の水125mL中混合物を還流下で18時
間撹拌した。反応混合物を冷却し、濃硫酸でpH1に酸性化した;硫酸バリウム
を濾過し、濾液のpHを炭酸鉛で6にした。硫酸鉛の濾過後、濾液を硫化水素で
飽和させ、硫化鉛を濾過した。減圧下でエタノールと共沸させることにより、該
水溶液を100mLに濃縮し、冷却後、標記化合物を得た(5.2g、54%):融
点230−231℃。
d)N−tert−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシメチルフェニルグリシン
4−ヒドロキシメチルフェニルグリシン(8.0g、44ミリモル)およびトリ
エチルアミン(8.8g、87ミリモル)の水160mL中溶液に、テトラヒドロ
フラン120mL中tert-ブトキシカルボニルアジド(6.95g、49ミリモル)
を添加した。室温で一夜撹拌した後、該反応混合物をエーテル200mLずつで
2回洗浄した。水性相をエーテルで覆い、氷浴中、3N塩酸でpH3−3.5に酸
性化した。該酸性溶液をエーテルで抽出し、合した有機抽出物を食塩水で洗浄し
、乾燥させ、蒸発させた。得られた油状物をクロロホルム−ヘキサンと一緒に摩
砕し、固体を濾過して、標記化合物を得た(7.7g、63%):融点139−1
41.5℃。
)N−tert−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシメチルフェニルグリシンメ
チルエステル
実施例1(e)の化合物(5.6g、20ミリモル)の溶液にメタノール(10
mL)中の硫酸ジメチル(3.1g、24ミリモル)およびジイソプロピルアミン
(5.2g、40ミリモル)を添加した。該混合物を20分間還流し、次いで、2
N塩酸水溶液で処理した。該水溶液を酢酸エチルで3回抽出し、合した有機抽出
物を5%重炭酸ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄した。溶媒を蒸発させて、
油状物として標記化合物を得た(3.2g、55%)。
f)N−tert−ブトキシカルボニル−4−カルボキシフェニルフェニルグリシ
ンメチルエステル
実施例1(e)の化合物(0.62g、2.1ミリモル)のアセトン50ml中溶
液を過剰のジョーンズ試薬(8Nクロム酸)で25℃で処理した。該反応混合物
を室温で2時間撹拌した。緑色固体を濾過し、イソプロピルアルコールにより過
剰のCrO3を分解した。濾液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、活性炭で処理
した。固体を濾過し、濾液を蒸発乾固させて、白色固体として標記化合物0.3
8gを得た(融点126−128℃)。
g)N,N'−ビス(1−メチルエチル)カルバミミジン酸1,1-ジメチルエチル
Santiniらの手順[J.Org.Chem.1994,59,2261]に従って、CuCl(0.0
1当量)の存在下、室温で1日間、純粋なN,N'−ジイソプロピルカルボジイミ
ド(1.0当量)と2−メチル−2−プロパノール(1.15当量)とを反応させ
ることによって標記化合物を調製した。
乾燥ジクロロメタン中の実施例1のチアジアゾリル)チオメチル]△3−セフェム
−4−カルボン酸tert-ブチル(368mg、1ミリモル)およびDCC(212m
g、1ミリモル)を室温で3時間撹拌した。ジシクロヘキシル尿素を濾過し、濾
液を蒸発乾固させた。残留物を酢酸エチルに溶解させ、該酢酸エチル溶液を5%
重炭酸ナトリウム水溶液、2.5%硫酸、5%重炭酸ナトリウム水溶液、食塩水
で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させて、粗製生成物0
.6gを得た。シリカゲルクロマトグラフィー(30:70酢酸エチル/ベンゼン
で溶離)に付すことにより精製して標記化合物を得た(430mg、61%):融
点110−112℃。
l)7−[D,L−α−アミノ−α−(4−カルボキシフェニル)アセトアミド]
−3−[2−(5−メチル−1,3,4−チアジアゾリル)チオメチル]△3−セフェ
ム−4−カルボン酸
実施例1(k)の化合物(400mg、0.57ミリモル)の溶液をトリフルオ
ロ酢酸7.2mLおよびチオフェノール0.8mL中で撹拌した。該反応混合物を0
℃で30分間、次いで、室温で1時間撹拌した。溶媒を40℃の水浴中で蒸発さ
せて除去し、残留物をジエチルエーテルと一緒に3回摩砕した;固体生成物を少
量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルの添加により生成物を沈殿させて
標記化合物を得た(300mg):融点170−175℃。
実施例2
L−3,5−ジブロモ−3'−(6−オキソ−3(1H)−ピリダジニルメチル)− チロニン(化合物2)の調製
(a)o−メトキシフェニルアセトニトリル(23.64g)および3,6−ジ
クロロピリダジン(23.93g)を乾燥ジメチルホルムアミド(50ml)に溶解
させ、該撹拌溶液に水素化ナトリウム(50%油中分散液16.23g)を数回に
わけてゆっくりと2時間かけて添加した。該混合物を過剰の砕氷上に注ぎ、ジク
ロロメタンで抽出した。有機層を除去し、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで
乾燥させ、木炭処理し、蒸発乾固させた。残留物をジクロロメタン/石油スピリ
ットから結晶化して、1−(6−クロロ−3−ピリダジニル)−1−(2−メトキ
シフェニル)−アセトニトリルを得た(35.5g、85%);融点91°−92
°。
(b)このニトリル(33.5g)を濃塩酸(200ml)、酢酸(100ml)お
よび水(100ml)に溶解させ、該溶液を撹拌しつつ還流させた。6時間後、溶
媒を蒸発させ、残留物を酢酸エチル/石油スピリットから再結晶して、2−(6
−オキソ−3(1H)−ピリダジニルメチル)アニソールを得た(21.4g、77
%);融点142°−3°。
(c)このピリダジノン(15.7g)をオキシ塩化リン(22ml)中に溶解さ
せ、該溶液を撹拌しつつ55°(油浴)で1時間加熱した。冷却した混合物を砕
氷上にゆっくり注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を分離し、重炭酸ナト
リウム飽和溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留
物をより小さなバッチ(ピリダジノン2.16gから調製)と合し、沸騰石油スピ
リット(60−80°)で数回抽出した。合した抽出物を木炭処理し、蒸発させ
て、2−(6−クロロ−3−ピリダジニルメチル)アニソールを得た(16.95g
、87%);融点63°。
(d)−15°でトリストリフルオロ酢酸ヨウ素(無水酢酸およびトリフルオ
ロ酢酸中、ヨウ素(2.54g)の発煙硝酸(5ml)での処理により調製)の無水
トリフルオロ酢酸(25ml)中撹拌懸濁液に、温度を−15°以下に保ちつつ、
トリフルオロ酢酸(20ml)および無水トリフルオロ酢酸(25ml)中の前記ク
ロロピリダジン(9.39g)を添加した。混合物を室温で一夜撹拌し、濃縮し、
次いで、酢酸ナトリウム(25g)および過塩素酸ナトリウム(15g)の水(2
00ml)中溶液を添加した。該混合物をクロロホルムで抽出し、有機溶液を無水
硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで、50mlに濃縮し、撹拌エーテル(250
ml)中に注いだ。沈殿物を回収し、乾燥させて、粗製4,4'−ジメトキシ−3,
3'−ビス−(6−クロロ−3−ピリダジニル−メチル)−ジフェニルヨードニウ
ムパークロレート(14g)を得た。1H NMRδ(DMSO−d6)3.80(3
H,s,−OCH 3)、4.20(2H,s,−CH 2Ar)、7.50(1H,m,Ar−5H
)、7.65(2H,m,PyH)および8.00(2H,m,Ar−2,6H)。
(e)前記ヨードニウム塩(12.45g)、L−3,5−ジブロモ−N−トリ
フルオロアセチルチロシンメチルエステル(8.98g)、トリエチルアミン(4
.05g)および青銅(1.0g)をジクロロメタン(50ml)中で18時間撹拌し
た。該混合物を濾過し、酢酸水溶液、2N水酸化ナトリウム、次いで、水で洗浄
し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物をより小さなバッチ
(ヨードニウム塩0.72gから調製)と合し、シリカゲル(400g)上カラム
クロマトグラフィーに付すことにより精製した。酢酸エチル/石油スピリット(
60°−80°)[1:3]で溶離して、黄褐色泡状物としてL−3,5−ジブ
ロモ−3'−(6−クロロ−3−ピリダジニルメチル)−O−メチル−N−トリフ
ルオロアセチル−1−チロニンメチルエステル(4.0g)を得た。1H NMRδ
(CDCl3)3.06(2H,m,ArCH 2CH)、3.84および3.93(6H,2
s,−OCH 3)、4.19(2H,s,ArCH 2Py)、4.75(1H,m,ArCH 2CH
)、6.62(3H,m,ArH)、7.17(2H,m,PyH)および7.23(2H,s
,ArH)。
(f)前記ジブロモ化合物(3.27g)を酢酸ナトリウム(0.79g)を含有
する酢酸(20ml)に溶解させた。該溶液を1.25時間還流させ、充分な水(
約2ml)を添加して、沈殿した塩化ナトリウムを溶解させ、該溶液を蒸発乾固さ
せた。残留物を水および酢酸エチルに分配させ、有機層を除去し、飽和重炭酸ナ
トリウムで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。残留物
を酢酸エチル/石油スピリット(60°−80°)から結晶化して、L−3,5
−ジブロモ−O−メチル−3'−(6−オキソ−3(1H)−ピリダジニルメチル)
−N−トリフルオロアセチルチロニンメチルエステル(2.52g、79%)を得
た;融点176°−8°。
(g)このピリダジノン(2.45g)を乾燥ジクロロメタン(40ml)に溶解
させ、0°で撹拌しつつ冷却した。ジクロロメタン(3ml)中の三臭化ホウ素(
6.46g)を添加した。赤褐色沈殿物が形成された。該混合物を室温で1.5時
間撹拌し、次いで、砕氷を添加した。該混合物を濾過し、沈殿物を回収し、2N
水酸化ナトリウム(30ml)に溶解させた。該溶液を蒸気浴上で15分間加熱し
、次いで、酢酸を添加してpH5にし、該混合物を冷却した。得られた沈殿物を
回収し、洗浄し、乾燥させて、L−3,5−ジブロモ−3'−(6−オキソ−3(1
H)−ピリダジニルメチル)−チロニンを得た(1.74g、88%);融点278
°−9°(分解)。
別法として、反応段階(e)について(d)で調製した過塩素酸塩を用いる代
わりに、以下のようにして調製されるヨードニウムトリフルオロ酢酸塩を用いる
ことができる:
ヨウ素(159g)を無水トリフルオロ酢酸(1リットル)に懸濁させ、窒素
雰囲気下で撹拌しつつ、かつ、温度を36°〜40°に保ちつつ、1.5時間か
けて発煙硝酸(350ml)を添加した。次いで、無水トリフルオロ酢酸(300
ml)を添加し、全ての酸化窒素が除去されるまで該混合物を窒素気流下で40°
に維持し、次いで、一夜室温で静置した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、残留
溶媒を無水トリフルオロ酢酸(2×300ml)との共沸により除去した。次いで
、薄黄色の残留固体を無水トリフルオロ酢酸(1.2リットル)に撹拌しつつ懸
濁させ、−20°に冷却した。次いで、温度を−10°〜−20°に保ちつつ、
2−(6−クロロ−3−ピリダジニルメチル)アニソール(600g)のトリフル
オロ酢酸(1.2リットル)中溶液を滴下した。該混合物を−10°で1時間、
次いで、室温で一夜撹拌し、次いで、溶媒を減圧下で除去し、残留物を硫酸ナト
リウム(3.5kg)の水(20リットル)中溶液に撹拌しつつ注いだ。この混合
物のpHを、稀水酸化ナトリウム水溶液を用いて約pH2に調節し、次いで、ジク
ロロメタン(2×3リットル、1×2リットル)で抽出し、有機抽出物を合し、
乾燥させ(MgSO4)、濾過し、体積を2リットルに減じ、次いで、激しく撹拌
したジエチルエーテル(12リットル)に添加した。濃灰色の沈殿固体を濾去し
、エーテルで洗浄し、40°の真空オーブン中で6時間乾燥させて、4,4'−ジ
メトキシ−3,3'−ビス−(6−クロロ−3−ピリダジニルメチル)ジフェニルヨ
ードニウムトリフルオロアセテートを得た(8.14g、90%);融点145°
−147°。
前記の2(e)、(f)および(g)に記載したと類似の手順を用いたこの塩
のさらなる反応により、所望のL−3,5−ジブロモ−3'−(6−オキソ−3(1
H)−ピリダジニルメチル)チロニンを得る。
実施例2A
L−3,5−ジブロモ−3'−(6−オキソ−3(1H)−ピリダジニルメチル)− チロニン(化合物2)の調製
(a)2−(6−クロロ−3−ピリダジニルメチル)アニソール(実施例2(c
)に記載したように調製)(2.35g)を乾燥ジクロロメタン(20ml)に溶解
させ、撹拌しつつ−50°に冷却した。次いで、三臭化ホウ素(3ml)を滴下し
、該溶液を室温に加温した。0.5時間後、オレンジ色の反応混合物を氷/水(
200ml)中に注ぎ、アセトンを添加して沈殿固体を溶解させた。該混合物をジ
クロロメタンで抽出し、有機抽出物を分離し、水で洗浄し、乾燥させ、蒸発させ
た。残留物を酢酸エチルおよび石油スピリットから再結晶して、2−(6−クロ
ロ−3−ピリダジニルメチル)−フェノールを得た(1.75g、80%);融点
132°−132.5°。元素分析:測定値:C,59.61;H,4.13;N,1
2.47;Cl,16.09;C11H9ClN2Oの理論値:C,59.87;H,4.1
1;N,12.70;Cl,16.07%。
(b)このフェノール(2.4g)および尿素(14g)の75%硫酸水溶液(
100ml)中撹拌溶液に、t−ブタノール(17ml)をゆっくり添加した。該混
合物をよく撹拌し、t−ブタノールを、4時間後(18ml)、24時間後(5ml
)および28時間後(20ml)にさらに添加した。120時間後、該混合物を水
中に注ぎ、有機相を分離して捨て、水性相をエーテルで完全に抽出した。合した
エーテル抽出物を飽和食塩水で洗浄し、乾燥させ、蒸発させた。残留物をエーテ
ルおよび石油スピリットから再結晶して、2,4−ジ−t−ブチル-6−(6−ク
ロロ−3−ピリダジニルメチル)フェノールを得た(3.43g、94%);融点
143.0°−143.5°。元素分析:測定値:C,68.32;H,7.51;N
,8.36;Cl,10.89;C19H25ClN2Oの理論値:C,68.56;H,7.
57;N,8.41;Cl,10.65%。
(c)アルゴン下、室温で、このフェノール(1.95g)、L−3,5−ジブ
ロモ−N−トリフルオロアセチルチロシンメチルエステル(3.24g)のジエチ
ルエーテル(100ml)中溶液を撹拌し、活性二酸化マンガン(3×5g)で処
理した。4時間後、該混合物を濾過し、四塩化チタン(5ml)を添加した。2分
後、黒ずんだ溶液を水で処理し、酢酸エチルでよく抽出した。有機抽出物を合し
、
飽和食塩水で洗浄し、乾燥させ、蒸発させた。残留物を、溶離液として石油スピ
リットおよびエーテルを用いてシリカゲル上クロマトグラフィーに付して、L−
3,5−ジブロモ−5'−t−ブチル−3'−(6−クロロ−3−ピリダジニルメチ
ル)−N−トリフルオロアセチルチロニンメチルエステルを得た(2.31g、5
5%);融点84°−86°。
(d)このジブロモチロニン(2.76g)および無水酢酸ナトリウム(0.7
8g)の酢酸(25ml)中溶液を還流させながら10時間加熱し、次いで、冷却
し、氷水中に注いだ。沈殿固体を濾過し、酢酸エチルに溶解させ、乾燥させ、蒸
発させて、L−3,5−ジブロモ−5'−t−ブチル−3'−(6−オキソ−3(1
H)−ピリダジニルメチル)−N−トリフルオロアセチルチロニンメチルエステル
を得た(2.4g、55%);融点112−115°。
(e)このピリダジノン(0.200g)およびHBr(1ml)の氷酢酸(20m
l)中溶液を還流させながら3日間加熱した。次いで、該溶液を冷却し、水で希
釈し、2N水酸化ナトリウム水溶液で塩基性化し、酢酸の添加によりpH6にし
た。沈殿固体を濾過し、洗浄し、乾燥させて、すでに単離されたもの(実施例2
(g))と分光学的に同一の、L−3,5−ジブロモ−3'−(6−オキソ−3(1
H)−ピリダジニルメチル)チロニンを得た(0.100g、65%);融点245
°−247°(分解)。
実施例2B
L−3,5−ジブロモ−3'−(6−オキソ−3(1H−ピリダジニルメチル)− チロニン(化合物2)の調製
(a)−10°に冷却した、トリストリフルオロ酢酸ヨウ素(無水酢酸および
トリフルオロ酢酸中、ヨウ素(10.0g)の発煙硝酸(20.95ml)での処理
により調製)の無水酢酸(50ml)中溶液に、2−メトキシベンジルシアニド(
30.0g)のトリフルオロ酢酸(60ml)および無水酢酸(30ml)中溶液を滴
下した。添加中、混合物の温度を0°以下に維持し、次いで、室温で一夜静置し
た。該混合物を、水(600ml)中で酢酸ナトリウム(100g)および過塩素
酸ナトリウム(13.0g)をよく撹拌し氷冷した溶液に注いだ。沈殿した固体
を濾過し、水およびジエチルエーテルで洗浄して、微細な淡黄褐色固体の3,3'
−ジシアノメチル−4,4'−ジメトキシ−ジフェニルヨードニウムパークロレー
トを得た(23.6g、57%);融点183°−4°(メタノール/ジエチルエ
ーテルから)。
(b)このヨードニウム塩(22.6g)、L−3,5−ジブロモ−N−トリフ
ルオロアセチル−チロシンメチルエステル、トリエチルアミン(6.1g)のジク
ロロメタン(300ml)中溶液を青銅(1g)で処理し、該混合物を室温で20
時間撹拌した。該混合物を濾過し、濾液を2N塩酸水溶液(2×200ml)、水
(2×200ml)、および2N水酸化ナトリウム水溶液(3×200ml)で洗浄
し、次いで、有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。油
状残留物をジクロロメタン(30ml)に溶解させ、石油スピリット中に注いだ。
固体が沈殿し、これを濾過し、ジクロロメタン/石油スピリットから再結晶して
、無色結晶性固体としてL−3,5−ジブロモ−3'−シアノメチル−O−メチル
−N−トリフルオロアセチルチロニンメチルエステル(融点148°−149°
)を得た。母液をシリカゲル上クロマトグラフィーに付して、さらにこの化合物
を得た(合計=8.05g、31%)。
(c)このジブロモチロニン(120mg)および3,6−ジクロロピリダジン
(31mg)の乾燥ジメチルホルムアミド(2ml)中溶液に、水素化ナトリウム(
50%油中懸濁液30mg)を添加し、反応混合物を室温で50分間静置した。次
いで、これを氷で処理し、水性混合物をジクロロメタンで抽出し、有機溶液を飽
和食塩水で洗浄し、乾燥させ、蒸発させた。該残留物を分取用シリカゲルクロマ
トグラフィープレート上でクロマトグラフィーに付し、これから3,5−ジブロ
モ−3'−(1−(6−クロロ−3−ピリダジニル)−1−シアノメチル)−O−メ
チル−N−トリフルオロアセチルチロニンメチルエステル(5mg)を単離した。1
H NMRδ(CDCl3)3.12(1H,m)、3.27(1H,m)、3.79(3H
,s)、3.86(3H,s)、4.86(1H,m)、5.80(1H,s)、6.72(1H
,dd)、6.83(1H,d)、7.04(1H,d)、7.15(1H,ブロードm)、7
.37(2H,s)、7.50(2H,dd)。
この中間体を標準法により処理して、標記化合物を得る。
実施例3
8,8−エチレンジオキシ−2,3,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4−メチル −1H−ベンゾ[b]チエノ[2,3−b]ピラゾロ[3,4−d]ピリジン−3−オン (化合物3)の調製
a)2−シアノ−2−(4,4−エチレンジオキシシクロヘキシリデン)酢酸エ
チル
室温で、1,4−シクロヘキサンジオンモノエチレンケタール(25g、0.1
60モル)およびシアノ酢酸エチル(18g、0.160モル)のトルエン(40
0mL)中混合物にジエチルアミン(25g、0.337モル)を滴下した。該反
応混合物を還流させながら一夜加熱した(ディーン・スターク装置を使用)。該
混合物を冷却し、酢酸エチルおよび重炭酸ナトリウム飽和水溶液に分配させた(
3回)。有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮し、エタノ
ールから再結晶して、白色固体として標記化合物を得た(15.8g、45%):
融点80−81℃;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.28(q,J=7
.2Hz,2H)、4.00(s,4H)、3.18(t,J=6.5Hz,2H)、2.85(
t,J=6.5Hz,2H)、1.89(t,J=6.5Hz,2H)、1.82(t,J=6.
5Hz,2H)、1.35(t,J=7.1Hz,3H)。
b)2−アミノ−6,6−エチレンジオキシ−4,5,6,7−テトラヒドロベン
ゾ[b]チオフェン−3−カルボン酸エチル
0℃での実施例3(a)の化合物(10g、45.6ミリモル)、硫黄(1.6g
、50.2ミリモル)のエタノール(164mL)中懸濁液にジエチルアミン(3
.6g、50.2ミリモル)のエタノール(26mL)中溶液を滴下した。得られた
溶液を0℃で1時間、次いで、室温で3.5時間撹拌した。反応混合物を酢酸エ
チルで急冷し、塩化アンモニウム飽和水溶液で分配させた。水性相を酢酸エチル
で抽出し、有機抽出物を食塩水で洗浄した。合した有機抽出物を硫酸ナトリウム
で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮し、クロマトグラフィーに付して(シリカゲ
ル、5〜10%CH2Cl2:EtOAcの勾配液)、油状物として標記化合物を得
た(11.3g、87%)。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.25(q,
J=7.1Hz,2H)、4.02(s,4H)、2.92(t,J=6.5Hz,2H)、2.
74(s,2H)、1.90(t,J=6.6Hz,2H)、1.33(t,J=7.1Hz,3
H)。
c)7,7−エチレンジオキシ−4−ヒドロキシ−2−メチル−5,6,7,8−
テトラヒドロベンゾ[b]チエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボン酸エチル
室温での実施例3(b)の化合物(11.2g、39.5ミリモル)のトルエン
(307mL)中溶液に3−エトキシクロトン酸エチル(12.4g、78.6ミリ
モル)および樟脳スルホン酸(0.78g、3.4ミリモル)を添加した。該反応
混合物を、ディーン・スタークトラップを用いて還流させながら3.5時間加熱
した。次いで、該混合物を冷却し、これに新たに調製した1Mナトリウムエトキ
シド(49mL)の溶液を滴下した。添加完了後、反応混合物を還流させながら
3時間加熱した。該混合物を冷却し、沈殿物を濾過した。該塩をメタノール(6
0mL)に溶解させ、これに水(500mL)および酢酸(2mL)を添加して、
黄色固体として標記化合物を得た(10.4g、76%):融点94−95℃。1
H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.48(q,J=7.1Hz,2H)、4.0
6(s,4H)、3.26(t,J=6.5Hz,2H)、3.02(s,2H)、2.81(s
,3H)、2.02(t,J=6.5Hz,2H)、1.47(t,J=7.1Hz,3H);M
S(ESI)m/z 350[M+H]+;元素分析:C17H19NO5Sについての
理論値;C,58.44;H,5.48;N,4.01;測定値:C,58.34;H,
5.46;N,3.86。
d)7,7−エチレンジオキシ−4−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−
2−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[b]チエノ[2,3−b]ピリジン
−3−カルボン酸エチル
実施例3(c)の化合物(5.0g、14.3ミリモル)のピリジン(50mL)
中溶液に、無水トリフルオロメタンスルホン酸(4.0g、14.2ミリモル)を
滴下した。該反応混合物を0℃で4時間、完了するまで撹拌した。該反応混合物
を硫酸銅水溶液(3回)、次いで、水(2回)、および食塩水(2回)で洗浄し
た。有機層を蒸発させ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。フ
ラッシュクロマトグラフィーに付すことによって(シリカゲル、1:1ヘキサン
:酢酸エチル)精製して、淡黄色固体として標記化合物を得た(3.7g、54%
);融点133−134℃。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.43(
q,J=7.2Hz,2H)、4.06(s,4H)、3.16(t,J=6.5Hz,2H)、
3.10(s,2H)、2.77(s,3H)、2.03(t,J=6.8Hz,2H)、1.4
1(t,J=7.1Hz,3H);MS(ESI)m/z 482[M+H]+;元素分析
:C18H18F3NO7S2についての理論値;C,44.90;H,3.77;N,2.
91;測定値:C,45.03;H,3.62;N,2.89。
e)8,8−エチレンジオキシ−2,3,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4−メ
チル−1H−ベンゾ[b]チエノ[2,3−b]ピラゾロ[3,4−d]ピリジン−3−
オン
室温での実施例3(d)の化合物(2.4g、5.0ミリモル)のメタノール(
40mL)中溶液にヒドラジン・一水和物(4.1g、82.3ミリモル)を添加し
た。該反応混合物を還流させながら3時間加熱した。該混合物を冷却し、次いで
、pH7水性緩衝液および酢酸エチルに分配させた。有機層を無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮し、メタノール/酢酸エチルから再結晶して、
淡黄色固体として標記化合物を得た(0.99g、60%)。1H NMR(400
MHz、d4−MeOH)δ4.05(s,4H)、3.15(t,J=6.5Hz,2H)、
3.04(s,2H)、2.82(s,3H)、2.06(t,J=6.5Hz,2H);MS(
ESI)m/z 318[M+H]+;元素分析:C15H15N3O3S.0.25H2Oに
ついての理論値;C,55.97;H,4.85;N,13.05;測定値:C,55.
85;H,4.75;N,13.30。
実施例4
4−[4−(4−メチルベンゾイル)ベンゾイル]フェニルアセトアルデヒド(化 合物4)の調製
a)4−(4−メチルベンゾイル)安息香酸メチル
アルゴン雰囲気下、0℃で、メチルテレフタロイルクロリド(6.2g、31ミ
リモル)のトルエン250mL中溶液を塩化アルミニウム(8.0g、60ミリモ
ル)で処理した。該撹拌混合物を35℃に0.5時間加温し、次いで、氷100g
にゆっくり添加し、次いで、酢酸エチル50mL、濃HCl 50mLおよび水50m
Lを添加した。相を分離し、水性部分を酢酸エチル100mLで2回抽出した。
合した有機部分を水(2×75mL)および食塩水(1×75mL)で洗浄し、硫
酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して白色固体を得た。酢酸エチルおよ
びヘキサンから再結晶して、白色針状結晶として標記化合物6.0gを得た(79
%):融点117−118℃;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ8.15
(d,J=8.35Hz,2H)、7.83(d,J=8.30Hz,2H)、7.73(d,J
=8.18Hz,2H)、7.31(d,J=8.04Hz,2H)、3.98(s,3H)、
2.46(s,3H);MS(ESI)m/z 255(M+H)+。
b)4−(4−メチルベンゾイル)安息香酸
65℃での4−(4−メチルベンゾイル)安息香酸メチル(5.00g、20.0
ミリモル)の2:1THF:水150mL中撹拌溶液を水酸化リチウム・一水和
物(2.0g、48ミリモル)で処理した。0.5時間後、該白濁反応混合物を室
温に冷却し、酢酸エチル(300mL)および10%HCl(水溶液)で処理した
。有機相を分離し、水(2×50mL)および食塩水(1×50mL)で洗浄し、
硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して白色泡状物を得た。1H NMR
(400MHz、CDCl3)δ8.22(d,J=8.34Hz,2H)、7.81(d,
J=8.31Hz,2H)、7.73(d,J=8.15Hz,2H)、7.31(d,J=8
.00Hz,2H)、2.46(s,3H)。
c)4−[4−(4−メチルベンゾイル)ベンゾイル]アニソール
実施例4(b)の化合物のトルエン250mL中溶液を塩化オキサリル(21.
8g、0.17モル)で処理した。得られた混合物を2時間加熱還流させ、次いで
、濃縮し、0.5mmHgおよび25℃で一夜静置した。次いで、この固体をアニソ
ール100mLに溶解させ、0℃で塩化アルミニウム(11.2g、84ミリモル
)で処理した。該混合物を70℃に1時間加熱し、次いで、氷100gにゆっく
り添加し、次いで、酢酸エチル150mL、濃HCl 50mL、および水50mL
を添加した。相を分離し、水性部分を酢酸エチル100mLで抽出した。合した
有機抽出物を水(2×75mL)および食塩水(1×75mL)で洗浄し、硫酸マ
グネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、白色固体を得た。酢酸エチルおよび
ヘキサンから再結晶して、標記化合物4.6g(70%)を得た。融点167−1
69℃;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.8−7.9(m,6H)、7.
77(d,J=8.06Hz,2H)、7.32(d,J=8.01Hz,2H)、7.0(d,
J=8.74Hz,2H)、3.92(s,3H)、2.47(s,3H);MS(ESI)
m/z 331(M+H)+。
d)4−[4−(4−メチルベンゾイル)ベンゾイル]フェノール
実施例4(c)の化合物(700mg、2.12ミリモル)のジクロロメタン2
0mL中溶液を塩化アルミニウム(1.0g、7.5ミリモル)およびジクロロメタ
ン中1.0M三塩化ホウ素溶液7.0mLで処理し、1時間加熱還流させた。該混
合物をジクロロメタン100mLで希釈し、10%HCl(水溶液)(1×25m
L)、水(1×25mL)および食塩水(1×25mL)で洗浄した。有機相を硫
酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、黒ずんだ残留物を得、これをフ
ラッシュクロマトグラフィーに付して(シリカゲル、1:1酢酸エチル:ヘキサ
ンで溶離)、標記化合物550mg(82%)を得た。1H NMR(400MHz、
CDCl3)δ7.8−7.9(m,6H)、7.77(d,J=8.05Hz,2H)、7.
32(d,J=8.01Hz,2H)、6.93(d,J=8.6Hz,2H)、2.47(s,
3H)。
e)トリフルオロメチルスルホン酸4−[4−(4−メチルベンゾイル)ベンゾ
イル]フェニル
0℃で、実施例4(d)の化合物(320mg、1.0ミリモル)のTHF(2
0mL)中溶液を水素化ナトリウム(40mg、1.67ミリモル)およびN−フェ
ニルトリフルォロメタンスルホンイミド(500mg、1.40ミリモル)で処理
した。該反応混合物を室温に加温し、次いで、室温で18時間撹拌した。次いで
、該反応物を酢酸エチルおよび食塩水に分配させた;層が分離され、有機抽出物
を硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィーに付
すことにより(シリカゲル、80:20ヘキサン:酢酸エチル)精製して標記化
合物を得た(300mg、66%)。融点180−181℃;1H NMR(400
MHz、CDCl3)δ7.96(d,J=8.6Hz,2H)、7.89(s,4H)、7.
76(d,J=8.1Hz,2H)、7.45(d,J=8.6Hz,2H)、7.33(d,J
=8.1Hz,2H)、2.47(s,3H)。
f)4−[4−(4−メチルベンゾイル)ベンゾイル]フェニルアセトアルデヒド
実施例4(e)の化合物(445mg、1.0ミリモル)のDMF(10mL)中
溶液にアリルトリブチルスズ(0.35mL、1.12ミリモル)、ビス(トリフ
ェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(55mg、0.077ミリモル)およ
び塩化リチウム(125mg、2.95ミリモル)を添加した。該反応混合物を9
0℃に1時間加熱し、室温に冷却した後、酢酸エチルおよび食塩水に分配させた
。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮して、所望の生成物3−[4−[4
−(4−メチルベンゾイル)ベンゾイル]フェニル]−1−プロパンおよびスズ含有
副生成物からなる残留物を得た。この物質をフラッシュクロマトグラフィーに付
し(シリカゲル、95:5ヘキサン:酢酸エチルで溶離)、これにより、全てで
はないがほとんどのスズ不純物を除去した。第二のクロマトグラフィーに付すこ
とにより(ヘキサン中5%〜10%酢酸エチルの勾配液)、純粋なオレフィン1
00mg(30%)を得、次いで、これを−78℃でジクロロメタン/メタノール
(3:1、16mL)に溶解させた。この溶液に5分間オゾンを吹き込んだ。ジ
メチルスルフィド5滴で該反応を停止させ、−78℃で30分間、撹拌し続けた
。溶媒を蒸発させ、得られた物質をフラッシュクロマトグラフィーに付すことに
より(シリカゲル、85:15〜75:25ヘキサン:酢酸エチルの勾配液で溶
離)精製して、標記化合物を得た(40mg、40%)。融点188−190℃;1
H NMR(400MHz、CDCl3)δ9.83(s,1H)、7.88(s,4H)
、7.86(d,J=8.1Hz,2H)、4.03(s,4H)、3.73(s,3H)、3.
76(d,J=6.0Hz,2H)、3.00(s,2H)、2.80(s,3H)、2.03(
d,J=6.0Hz,2H);MS(ESI)m/z 343(M+H)+。
実施例5
1,4−ジメチル−8,8−エチレンジオキシ−2,3,7,8,9,10−ヘキサ ヒドロ−1H−ベンゾ[b]チエノ[2,3−b]ピラゾロ[3,4−d]ピリジン−3 −オン(化合物5)の調製
1,4−ジメチル−8,8−エチレンジオキシ−2,3,7,8,9,10−ヘキサ
ヒドロ−1H−ベンゾ[b]チエノ[2,3−b]ピラゾロ[3,4−d]ピリジン−3
−オン
室温での実施例3(d)の化合物(0.4g、0.83ミリモル)のメタノール
(6.7mL)中溶液をメチルヒドラジン(0.16g、3.45ミリモル)で処理
し、混合物を還流させながら2時間加熱した。該混合物を冷却し、2,4−ジメ
チルレジオ異性体150mgを含有する沈殿物を濾過した。濾液を蒸発させ、フラ
ッシュクロマトグラフィーに付すことにより(シリカゲル、80:20:5酢酸
エチル:メタノール:酢酸で溶離)精製して、黄色固体として標記化合物を得た
(22mg)。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.03(s,4H)、3.7
3(s,3H)、3.76(t,J=6.0Hz,2H)、3.00(s,2H)、2.80(s
,3H)、2.03(t,J=6.0Hz,2H);MS(ESI)m/z 332(M+H)+
。
実施例6
4−カルボキシ−ベンゾフェノン−4−カルボキシアミド−トランス−4−メ チル−シクロヘキシル-N−ヘキシルカルボキサミド(化合物6)の調製
a)N−t−ブチルオキシカルボニル−トランス−4−アミノメチルシクロヘ
キシルカルボン酸
0℃で、水酸化ナトリウム水溶液(1N、100ml、100ミリモル)を4−
トランス−アミノメチル−シクロヘキシル−カルボン酸(9.0g、60ミリモル
)のジオキサン(100ml)、水(100ml)中溶液に添加した。Boc無水物(
15.9g、66ミリモル)を添加し、該反応物を室温に加温し、一夜撹拌した。
該溶液を50mlに濃縮し、EtOAc(100ml)で希釈し、KHSO4水溶液(
1N)でpH2に酸性化した。有機層を水(100ml)で2回抽出し、有機物を
真空下で濃縮した。固体をEtOAc/ヘキサンから再結晶して、白色固体9.2g
+3.4g(第二収量)を得た(収率80%)。MS(ES)m/z 242[M+H
]+。
b)N−t−ブチルオキシカルボニル−トランス−4−アミノメチルシクロヘ
キシル(カイザーオキシム樹脂)カルボキシレート
カイザーオキシム樹脂(20g、0.7ミリモル/g装填、アドバンスト・ケム
・テク(Advanced Chem Tech))をN−t−ブチルオキシカルボニル−トラ
ンス−4−アミノメチルシクロヘキシルカルボン酸(5.0g、20ミリモル)お
よびDCC(4.4g、20ミリモル)の塩化メチレン(200ml)中溶液に添加
し、室温で一夜穏やかに混合した。固体を濾過し、回収し、次いで、塩化メチレ
ン(5×100ml)で洗浄した。次いで、該樹脂を塩化メチレン(200ml)に
再懸濁させ、N−t−ブチルオキシカルボニル−トランス−4−アミノメチルシ
ク
ロヘキシルカルボン酸(5.0g、20ミリモル)およびDCC(4.4g、20ミ
リモル)を添加し、該反応物を一夜室温で穏やかに混合した。固体を濾過し、回
収し、次いで、塩化メチレン(5×100ml)で洗浄し、次いで、真空下で一夜
乾燥させた。IR(KBr、cm-1)=1820、1771、1520。
c)トランス−4−アミノメチルシクロヘキシル(カイザーオキシム樹脂)カル
ボキシレート
N−t−ブチルオキシカルボニル−トランス−4−アミノメチルシクロヘキシ
ル(カイザーオキシム樹脂)カルボキシレート(20g)を塩化メチレン(100m
l)に懸濁させ、TFA(25ml)を添加した。該反応物を0.5時間穏やかに混
合し、次いで、固体を濾過し、回収し、次いで、塩化メチレン(5×100ml)
で洗浄し、真空下で一夜乾燥した。IR(KBr、cm-1)=3150、1770
、1526。
d)4−カルボキシ−ベンゾフェノン−4−カルボキシアミド−トランス−4
−メチル−シクロヘキシル−(カイザーオキシム樹脂)カルボキシレート
トランス−4−アミノメチルシクロヘキシル(カイザーオキシム樹脂)カルボキ
シレート(200mg)をDMF(3.0ml)およびN−メチルモルホリン(0.2
ml)に懸濁させ、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸(190mg、0.7ミリ
モル)およびHBTU(265mg、0.7ミリモル)を添加し、該反応物を3時
間穏やかに混合した。固体を濾過し、回収し、DMF(3×20ml)、次いで、
水(3×20ml)で洗浄し、次いで、DMF(3.0ml)およびN−メチルモル
ホリン(0.1ml)に再懸濁させ、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸(0.3
5ミリモル)およびHBTU(0.35ミリモル)を添加し、該反応物を穏やか
に3時間混合した。固体を濾過し、回収し、DMF(3×20ml)、次いで、水
(3×20ml)、次いで、塩化メチレン(5×20ml)で洗浄し、次いで、真空
乾燥させた。
e)4−カルボキシ−ベンゾフェノン−4−カルボキシアミド−トランス−4
−メチル−シクロヘキシル−N−ヘキシルカルボキシアミド
4−カルボキシ−ベンゾフェノン−4−カルボキシアミド−トランス−4−メ
チル−シクロヘキシル−(カイザーオキシム樹脂)カルボキシレート(200mg)
を塩化メチレン(3.0ml)に懸濁させ、ヘキシルアミン(0.3ミリモル)を添
加した。該反応物を3時間穏やかに混合し、次いで、濾過し、濾液を真空濃縮し
て、標記化合物を得た:MS(ES)m/e 493[M+H]+。
実施例7
4−ニトロ−ベンズアミド−トランス−4−メチル−シクロヘキシル−N−ヘ キシルカルボキシアミド(化合物7)の調製
4−ニトロ−ベンズアミド−トランス−4−メチル−シクロヘキシル−N−ヘ
キシルカルボキシアミド
4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸の代わりに4−ニトロ安息香酸を用いる
以外は実施例6(a)−(e)の手順に従って、標記化合物を調製した:MS(
ES)m/e 390[M+H]+。
実施例8
4−アセトアミド−ベンズアミド−トランス−4−メチル−シクロヘキシル− N−1−(アミノ−R−2−(メトキシメチル)−ピロリジン)カルボキシアミド( 化合物8)の調製
4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸の代わりに4−アセトアミド安息香酸を
用い、ヘキシルアミンの代わりにR−1−アミノ−2−(メトキシメチル)−ピロ
リジン(RAMP)を用いる以外は実施例6(a)−(e)の手順に従って、標
記化合物を調製した:MS(ES)m/e 331[M+H]+。
実施例9
4−ホルミル−E−シンナミド−トランス−4−メチル−シクロヘキシル−N −(プロピル)カルボキシアミド(化合物9)の調製
4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸の代わりに4−ホルミルシンナミン酸を
用い、ヘキシルアミンの代わりにプロピルアミンを用いる以外は実施例6(a)
−(e)の手順に従って、標記化合物を調製した:MS(ES)m/e 357[
M+H]+。
実施例10
2,3,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4−メチル−1H−ベンゾ[b]チエノ[ 2,3−b]ピラゾロ[3,4−d]ピリジン−3−オン(化合物10)の調製
a)4−ヒドロキシ−2−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[b]チ
エノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボン酸エチル
2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン−3−カルボ
ン酸エチル(8.9g、39ミリモル)および3−エトキシクロトン酸エチル(1
2.4g、78ミリモル)のトルエン(300mL)中溶液を樟脳スルホン酸(0.
78g、3.4モル)で処理し、該反応混合物を、ディーン・スタークトラップを
用いて還流させながら3時間加熱した。次いで、次いで、該反応混合物を室温に
冷却し、次いで、新たに調製したナトリウムエトキシド(48mL、48ミリモ
ル)の1M溶液で処理した。添加完了後、該反応混合物を還流させながら3時間
加熱した。該混合物を冷却し、濃縮し、残留物を酢酸エチルに溶解させた。酢酸
(2mL)を添加し、溶媒を蒸発させ、得られた固体をメタノールと一緒に摩砕
して、オフホワイト色固体として標記化合物を得た(8.4g、74%):融点1
40℃;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.48(q,J=7.2Hz,2
H)、3.04(br s,2H)、2.81(s,3H)、2.80(br s,2H)、1.
87(br s,4H)、1.47(t,J=7.2Hz,3H);元素分析:C15H17N
O3Sについての理論値:C,61.83;H,5.88;N,4.81;測定値:C,
61.69;H,5.81;N,4.73
b)4−クロロ−2−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[b]チエノ[
2,3−b]ピリジン−2−カルボン酸エチル
実施例10(a)の化合物(8.0g、27.4ミリモル)のオキシ塩化リン(
100mL)中溶液を3.5時間還流した。オキシ塩化リンを真空下で除去し、残
留油状物を酢酸エチルに溶解させ、5%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、無水
硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させて、結晶性固体として標記化合
物を得た(8.5g、95%):融点65−66℃;1H NMR(400MHz、
CDCl3)δ4.47(q,J=7.1Hz,2H)、3.10(br s,2H)、2.8
5(br s,2H)、2.60(s,3H)、1.89(br s,4H)、1.43(t,J
=7.1Hz,3H);元素分析:C15H16ClNO2S.0.125H2Oについての
理論値;C,57.73;H,5.25;N,4.49;測定値:C,57.69;H,
5.08;N,4.30。
c)2,3,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4−メチル−1H−ベンゾ[b]チ
エノ[2,3−b]ピラゾロ[3,4−d]ピリジン−3−オン
実施例10(b)の化合物(2.0g、6.4ミリモル)のメタノール(50mL
)中溶液をヒドラジン・一水和物(10mL)で処理し、得られた混合物を還流
させながら16時間加熱した。該反応物を稀塩酸水溶液上に注ぎ、黄色固体とし
て標記化合物を沈殿させた(1.8g)。1H NMR(400MHz、d4−MeO
H)δ3.01(br s,2H)、3.00(s,2H)、2.92(br s,2H)、2
.0
0(br s,4H);元素分析C13H13N3OS.HCl.0.25H2Oについての理
論値;C,52.00;H,4.87;N,13.99;測定値:C,51.92;H,
5.01;N,13.70。
実施例11−ヒトSH2領域での化合物の活性の測定法
異なるヒトSH2領域での化合物の活性は、イー・コリまたはバキュロウイル
スのいずれかにおいて融合タンパク質として発現されたSH2領域を用いてin v
itroで測定される。本発明において用いるSH2領域は、Stat 6 SH2領域
、src SH2領域、Grb2 SH2領域、lck SH2領域、Stat 5 SH2領域
、fyn SH2領域、SH−PTP2 SH2領域、p85 SH2領域およびhcp
SH2領域のヒト形態であった。
src SH2領域、Stat 6 SH2領域、lck SH2領域、Stat 5 SH2領
域およびhcp SH2領域を含有する融合タンパク質は、一般配列:DET1−D
ET2−スペーサー−ek-SH2(ここで、DET1、DET2、スペーサー、e
kおよびSH2は、以下に記載する通りである)として発現された。DET1(
「規定エピトープ標識1」)(配列番号1)は、ヒト免疫不全ウイルス1型(H
IV−1)エンベロープタンパク質gp120(またはgp160)においてみられ
る11アミノ酸配列である。HIV−1 gp120(またはgp160)の種々の
エピトープに対するモノクローナル抗体は、当該技術分野で知られており、例え
ば、US特許5,166,050を参照。好ましい一例は、モノクローナル抗体178.1[
例えば、Thiriartら,J .Immunol.,143: 1832-1836(1989)を参照]であって
、これは、BH10株からの酵母発現HIV−1 gp160分子でのマウスの免
疫化により調製した[Ratnerら,Nature,313: 277-284(1985)]。この標識を発
現の検出のため(ウェスタンブロットによる)、タンパク質の精製のため(アフ
ィニティークロマトグラフィーによる)、および融合タンパク質を178.1抗
体を用いて捕捉または固定化する配置分析のために用いた。DET2は、ニッケ
ル含有樹脂と結合し、精製目的に用いたヘキサヒスチジン配列標識(配列番号2
)である。構築物の所定の位置にBamHI制限部位を設計するために、スペーサ
ー(配列番号3)を用いた。−ek−なる用語は、SH2領域から標識を所望に
より除去し、したがって外来アミノ酸を含まないSH2領域を生じるエンテロキ
ナーゼプロテアーゼについての認識配列(配列番号4)を意味する。外来アミノ
酸を含まないSH2領域は、結晶学的研究のためには標識タンパク質よりも好ま
しい。SH2は、種々のタンパク質のSH2領域を意味する。
各DET1−DET2−スペーサー−ek−SH2をコードするDNA配列を、
所定の制限部位(BamHIおよびXbaI)がスペーサー−ek−SH2領域と並び
、これにより種々のスペーサー−ek−SH2構築物がDET1−DET2−スペ
ーサー−ek−SH2標識タンパク質を生成するために以下の手順2、3、5また
は6において記載したベクターのいずれか1つに容易に置換できるようになるよ
うに設計した。各DET1−DET2−スペーサー−ek−SH2構築物をコード
するDNA配列もまた、全標識SH2領域がNdeI−XbaIフラグメントとして
、イー・コリまたはバキュロウイルス転写および翻訳調節配列の適度に離れた下
流およびXbaIと適合するクローニング部位の下流にNdeI部位を含有するいず
れかの発現ベクター中に移動できるように設計した。いずれの適当なベクターで
も同じような結果が得られるが(例えば、pET−11a;ノバゲン・インコーポ
レイテッド(Novagen,Inc.))、本実験において用いたベクターは、イー・
コリ発現ベクターpEA1KnRBS3である。このベクターは、「ファージラム
ダ調節配列を有するベクターを用いた発現」(Shatzman,A,Gross,M,およびR
osenberg,M,1990,Current Protocols in Molecular Biology(F.A.Ausubel
ら編),第16.3.1-16.3.11頁,Greene Publishing and Wiley-Interscience,N.
Y.)[以下、F.A.Ausubelらと記す]に開示されている一連のベクターの誘導
体である。特定のベクターpEA1KnRBS3は、Bergsmaら,1991,J.Biol.
Chem.266: 23204-23214 に開示されている。
以下に、ニワトリsrc SH2領域、ヒトsrc SH2領域、ヒトStat 6 SH
2領域、ヒトlck SH2領域、ヒトStat 5 SH2領域およびヒトhcp SH2
領域の発現を説明する。まず、ニワトリsrc SH2領域をDET1−DET2−
スペーサー-SH2として発現した。次いで、ニワトリsrcのかわりに他のものを
このベクター中に挿入して、以下の手順1ないし6に記載したようにDET1−
DET2−スペーサー−ek−スペーサー−SH2の形態でタンパク質を発現した
。
手順1:標識DET1およびDET2を含むニワトリsrc SH2領域(DET
1−DET2−スペーサー−SH2)のクローニングおよび発現
以下のプライマーを用いて、当業者に周知の方法により、ニワトリsrc遺伝子
を含むcDNAクローン(p5H;Levyら,1986,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8 3
: 4228)から標識したタンパク質DET1−DET2−スペーサー−SH2を
コードするDNA配列をPCR増幅した:
下線部は、NdeI認識部位(5')およびBamHI認識部位(3')である。
下線部は、XbaI認識部位である。
PCR産物をNdeIおよびXbaIで消化し、次いで、消化したフラグメントを
アガロースゲル上で単離した。該フラグメントを、6.5kbpフラグメントとして
アガロースゲル精製しておいたNdeI−XbaI消化pEA1KnRBS3ベクター
(Bergsmaら、前掲)中にライゲートした。ライゲーション反応を用いて、イー
・コリMM294cI+(F.A.Ausubelら、前掲)を形質転換した。正しいフラ
グメントの挿入を含むプラスミドを同定し、DNA配列化により確認した。得ら
れたプラスミドは、ファージラムダPLプロモーターおよび調節系の制御下でD
ET1−DET2−スペーサー−SH2をコードする。プラスミドDNAをMM
294cI+から精製し、これを用いて、イー・コリAR120株を形質転換した
。この宿主株において、ファージプロモーターの発現は、前掲のF.A.Ausubel
らに開示されているようにナリジクス酸の増殖培地への添加により誘発できる。
こ
のプラスミドを含有するAR120のナリジクス酸誘発、次いで、クーマシー・
ブルーで染色したSDS−ポリアクリルアミドゲル上での細胞タンパク質の分析
(F.A.Ausubelら、前掲)により、150,000の見掛けの分子量のタンパク
質バンドが出現した;このバンドは、未誘発細胞またはPCR増幅フラグメント
が欠失したpEA1KnRBS3を含有する誘発細胞においてはみられなかった。
ウェスタンブロッティングで誘発タンパク質バンドが抗−DET1モノクローナ
ル抗体178.1と反応することを確認した。
手順2:標識およびエンテロキナーゼタンパク質分解開裂部位を含むヒトsrc
SH2領域(DET1−DET2−スペーサー−ek−src SH2)のクローニン
グ、発現および精製
以下のプライマーを用いて、タンパク質ek−src SH2をコードするDNA配
列を、ヒトsrc遺伝子を含むcDNAクローン[Takeya,T.および Hanafusa,H.
,1983 Cell 32: 881-890 に開示されていると同一のc-src SH2 DNA配列
]からPCR増幅した:
下線部分は、BamHI認識部位である。
下線部分は、XbaI認識部位である。
PCR産物をBamHIおよびXbaIで消化し、次いで、消化したフラグメント
をアガロースゲル上で単離した。該フラグメントを、前記手順1に記載した標識
ニワトリsrc遺伝子DET1−DET2−スペーサー−SH2を含むBamHI−
XbaI消化発現ベクター中にライゲートした。このベクターにおいて、BamHI
部位は、DET2およびSH2についてのコード化領域間に位置し、XbaI部位
は、SH2コード化領域の3'末端の後に位置する。ライゲーション反応を用い
て、イー・コリMM294cI+を形質転換した。構築物DET1−DET2−ス
ペーサー−ek−src SH2をDNA配列決定により確認し(配列番号5)、前記
手順1に記載したようにしてイー・コリAR120株において誘発した。クーマ
シー・ブルーで染色した、ウェスタンブロット陽性の、見掛けの分子量が16,
000の誘発されたタンパク質を、ナリジクス酸誘発の後に観察した。
リゾチームの存在下での音波処理により、中性pHで細胞を溶解させた。遠心
分離後、可溶性抽出物をNi++NTAカラム上でクロマトグラフィーに付した。
該カラムを平衡緩衝液(0.5M NaClを含有するトリス緩衝液pH8)および
15mMイミダゾールを含む同じ緩衝液で洗浄した後、平衡緩衝液中25mMイミ
ダゾールでタンパク質を高度に精製された形態で溶離した。このようにして精製
したSH2領域は、高親和力で、特定の飽和しうる方法で、以下の「結合アッセ
イ」において適当なpYペプチドと結合することが見いだされ、標識は、機能を
妨害しないことが判明した。ヒトsrc SH2領域を選択的に抑制する化合物の特
異性を測定するために、発現された融合タンパク質DET1−DET2−スペー
サー−ek−src SH2を以下の「結合アッセイ」において用いた。
手順3:標識およびエンテロキナーゼタンパク質分解開裂部位を含むヒトlck
SH2領域(DET1−DET2−スペーサー−ek−lck SH2)のクローニン
グおよび発現
以下のプライマーを用いて、タンパク質ek−lck SH2をコードするDNA配
列をヒトlck遺伝子を含むcDNAクローン(遺伝子銀行受入れ番号M36881
)からPCR増幅した:
下線部分は、BamHI認識部位である。
下線部分は、XbaI認識部位である。
PCR産物をBamHIおよびXbaIで消化し、次いで、消化したフラグメント
をアガロースゲル上で単離した。該フラグメントを、前記手順1に記載した標識
ニワトリsrc遺伝子DET1−DET2−スペーサー−SH2を含むBamHI−
XbaI消化発現ベクター中にライゲートした。このベクターにおいて、BamHI
部位は、DET2およびSH2についてのコード化領域間に位置し、XbaI部位
は、SH2コード化領域の3'末端の後に位置する。ライゲーション反応を用い
て、イー・コリMM294cI+を形質転換した。DET1−DET2−スペーサ
ー−ek−lck SH2を含有する構造をDNA配列決定により確認し(配列番号6)
、前記手順1に記載したようにしてイー・コリAR120株において誘発した。
クーマシー・ブルーで染色した、ウェスタンブロット陽性の、見掛けの分子量が
17,000の誘発されたタンパク質を、ナリジクス酸誘発の後に観察した。
リゾチームの存在下での音波処理により、中性pHで細胞を溶解させた。遠心
分離後、可溶性抽出物をNi++NTAカラム上でクロマトグラフィーに付した。
該カラムを平衡緩衝液(0.5M NaClを含有するトリス緩衝液pH8)および
15mMイミダゾールを含む同じ緩衝液で洗浄し、平衡緩衝液中25mMイミダゾ
ールでタンパク質を高度に精製された形態で溶離した。このようにして精製した
SH2領域は、高親和力で、特定の飽和しうる方法で、以下の「結合アッセイ」
において適当なpYペプチドと結合することが見いだされ、標識は、機能を妨害
しないことが判明した。ヒトlck SH2領域を選択的に抑制する化合物の特異性
を測定するために、この発現された融合タンパク質、DET1−DET2−スペ
ーサー−ek−lck SH2を以下の「結合アッセイ」において用いた。
手順4:標識およびエンテロキナーゼタンパク分解開裂部位を含むヒトhcp S
H2領域(DET1−DET2−スペーサー−ek−hcp SH2)のクローニング
および発現
ヒト胎児肝臓RNAからタンパク質ek−hcp SH2をコードするDNA配列[
Shen,S-H.Nature(1991)352: 736-739に開示されたものと同一のhcp SH2
DNA配列]を逆転写酵素−PCR増幅した。RNA単離は、トリーリージェ
ント(Tri−Reagent)(モレキュラ・リサーチ・センター・インコーポレイテ
ッド(Molevular Research Center Inc.))およびリバース・トランスクリ
プターゼ・システム(ギブコ−ビーアールエル(GIBCO−BRL))を製造
業者の指示に従って用いた。PCRを以下のプライマーを用いて行った:
下線部分は、BglII認識部位である。
下線部分は、XbaI認識部位である。
PCR産物をBglIIおよびXbaIで消化し、次いで、消化したフラグメントを
アガロースゲル上で単離した。該フラグメントを、前記手順2に記載した標識ヒ
トsrc遺伝子DET1−DET2−スペーサー−ek−scr SH2を含むBamHI
−XbaI消化発現ベクター中にライゲートした。このベクターにおいて、BamH
I部位は、DET2およびekについてのコード化領域間に位置し、XbaI部位は
、SH2コード化領域の3'末端の後に位置する。このように、ek−hcp SH2
配列は、前記ベクターにおいてek−src SH2配列と置き変わっていた。ライゲ
ーション反応を用いて、イー・コリMM294cI+を形質転換した。DET1−
DET2−スペーサー−ek−hcp SH2を含有する構造をDNA配列決定により
確認し(配列番号7)、これを用いて、イー・コリGI698(カリフォルニア
州サンディエゴのインビトロゲン・コーポレーション(Invitrogen Corporatio
n))を形質転換した。ファージラムダプロモータの誘発を、製造業者の指示通り
に、培地にトリプトファンを10mg/mlまで添加することにより誘発した。クー
マシー・ブルーで染色した、ウェスタンブロット陽性の、見掛けの分子量が15
,000の誘発されたタンパク質を、30℃で増殖する細胞のトリプトファン誘
発の後に観察した。
リゾチームの存在下での音波処理により、中性pHで細胞を溶解させた。遠心
分離後、可溶性抽出物をトリス緩衝液pH8中8M尿素で可溶化し、Ni++NTA
カラム上に結合させた。該樹脂を平衡緩衝液(0.5M NaCl、8M尿素および
5mM BMEを含有するトリス緩衝液pH8)および15mMイミダゾールを含む
同じ緩衝液で洗浄した。タンパク質は、5mM BMEの存在下で尿素の除去中に
カラム上に再生され、精製された再生タンパク質をトリス緩衝液pH8中の30
0mMイミダゾールで溶離した。このようにして精製したSH2領域は、高親和
力で、特定の飽和しうる方法で、以下の「結合アッセイ」において適当なpYペ
プチドと結合することが見いだされ、標識は、機能を妨害しないことが判明し、
タンパク質は、うまく再生された。ヒトhcp SH2領域を選択的に抑制する化合
物の特異性を測定するために、この発現された融合タンパク質、DET1−DE
T2−スペーサー−ek−hcp SH2を以下の「結合アッセイ」において用いた。
手順5:標識およびエンテロキナーゼタンパク分解開裂部位を含むヒトStat
6 SH2領域(DET1−DET2−スペーサー−ek−Stat 6 SH2)のク
ローニング、発現および精製
以下のプライマーを用いて、タンパク質ek-Stat 6−SH2をコードするD
NA配列をヒトStat 6遺伝子を含むcDNA[Science 265,(1994)1701に記
載されているものと同一のStat 5 SH2 DNA配列]からPCR増幅した:
下線部分は、BamHI認識部位である。
下線部分は、XbaI認識部位である。
PCR産物をBamHIおよびXbaIで消化し、次いで、消化したフラグメント
をアガロースゲル上で単離した。該フラグメントを、前記手順2に記載した標識
したヒトsrc遺伝子DET1−DET2−スペーサー−ek−src SH2を含む発
現ベクターのBamHI−XbaI消化由来のベクターフラグメントとライゲートし
た。このベクターにおいて、BamHI部位は、DET2およびSH2についての
コード化領域間に位置し、XbaI部位はSH2コード化領域の3'末端の後に位
置する。ライゲーション反応を用いて、イー・コリMM294cI+を形質転換し
た。構築物DET1−DET2−スペーサー−ek−Stat 6 SH2をDNA配
列決定により確認し(配列番号29)、イー・コリGI698(カリフォルニア
州サンディエゴのインビトロゲン・コーポレイション)において誘発した。ファ
ージラムダプロモーターの誘発は、手順4に記載しているように、製造業者の指
示通りに、培地に10mg/mlになるようにトリプトファンを添加することにより
誘発した。クーマシー・ブルーで染色した、ウェスタンブロット陽性の、見掛け
の分子量が15,000の誘発されたタンパク質を、27℃で増殖する細胞のト
リプトファン誘発の後に観察した。
リゾチームの存在下での音波処理により、中性pHで細胞を溶解させた。遠心
分離後、可溶性抽出物をNi++NTAカラム上でクロマトグラフィーに付した。
該樹脂を平衡緩衝液(0.5M NaClを含有するトリス緩衝液pH8)および1
5mMイミダゾールを含む同じ緩衝液で洗浄した後、タンパク質を平衡緩衝液中
の25mMイミダゾールで高度に精製された形態で溶離した。ヒトStat 6 SH
2領域を選択的に抑制する化合物の特異性を測定するために、以下の「結合アッ
セイ」において、この発現された融合タンパク質DET1−DET2−スペーサ
ー−ek−Stat 6 SH2を用いた。
手順6:標識およびエンテロキナーゼタンパク分解開裂部位を含むヒトStat
5 SH2領域(DET1−DET2−スペーサー−ek−Stat 5 SH2)のク
ローニング、発現および精製
Rosenら,Bio.Techniques 9,(1990)298-300に記載されている公知の手順に
従って、タンパク質ek-Stat 5 −SH2をコードするDNA配列[Hou,Jら,
Immunity 2,(1995)321-329 に記載されているものと同一のStat 5 SH2
DNA配列](配列番号30)を合成した。得られた遺伝子のコード化鎖のDN
A配列は以下の通りである:
BamHIおよびXbaIの認識部位を前記配列において下線で示した。
ek-Stat 5 −SH2遺伝子配列をBamHIおよびXbaIで消化し、次いで、
消化したフラグメントをアガロースゲル上で単離した。該フラグメントを、前記
手順2に記載した標識ヒトsrc遺伝子DETI−DET2−スペーサー−ek−src
SH2を含む発現ベクターのBamHI−XbaI消化により得られたベクターフ
ラグメントとライゲートした。このベクターにおいて、BamHI部位は、DET
2およびSH2についてのコード化領域間に位置し、XbaI部位は、SH2コー
ド化領域の3'末端の後に位置する。ライゲーション反応を用いて、イー・コリ
MM294cI+を形質転換した。構築物DETI−DET2−スペーサー−ek−
Stat 5 SH2をDNA配列決定により確認し(配列番号32)、イー・コリ
GI698(カリフォルニア州サンディエゴのインビトロゲン・コーポレーショ
ン)において誘発させた。ファージラムダプロモータの誘発を、手順4に記載し
ているように、製造業者の指示通りに、培地にトリプトファンを10mg/mlまで
添加することにより誘発した。クーマシー・ブルーで染色した、ウェスタンブロ
ット陽性の、見掛けの分子量が15,000の誘発されたタンパク質を、27℃
で増殖する細胞のトリプトファン誘発の後に観察した。
リゾチームの存在下での音波処理により、中性pHで細胞を溶解させた。遠心分
離後、可溶性抽出物をNi++NTAカラム上でクロマトグラフィーに付した。
カラムを平衡緩衝液(0.5M NaClを含有するトリス緩衝液pH8)および1
5mMイミダゾールを含む同じ緩衝液で洗浄した後、タンパク質を平衡緩衝液中
の25mMイミダゾールで高度に精製された形態で溶離した。ヒトStat 5 SH
2領域を選択的に抑制する化合物の特異性を測定するために、以下の「結合アッ
セイ」において、この発現された融合タンパク質、DET1−DET2−スペー
サー−ek−Stat 5 SH2を用いた。
構造GST−X−SH2を有する融合タンパク質をファルマシア(Pharmacia
)(ニュージャージー)より入手可能なGST遺伝子融合キットにおいて記載さ
れているようにして調製する。GSTは、fyn、Grb2およびSH−PTP2に
関する標識配列グルタチオンs−トランスフェラーゼエピトープ(配列番号8)
であり、p85についての標識配列グルタチオンs−トランスフェラーゼエピト
ープ(配列番号9)である。SH2は、「分子生物学における現行プロトコル」
(FM Ausubelら編,John Wiley and Sons,Inc.発行,(1995),第16.7.1頁)に従
って、グルタチオンセファロース4B(ファルマシア)を用いて発現させ精製し
たfyn、Grb2、p85およびSH−PTP2のSH2領域を意味する。Xは、フ
レーム内および補体クローニングにおいてSH2構築物を維持するのに用いられ
る、好ましくは6ないし21塩基対の、適当なリンカーである。このように、X
の配列は重要ではない。当業者は、容易に適当なリンカーを構築できる。各GS
T−X−SH2融合タンパク質をコードするDNA配列を、所定の制限部位(B
amHIおよびEcoRI)がSH2領域に並ぶように設計した。本実験において用
いたベクターは、fyn、Grb2およびSH−PTP2についてはイー・コリ発現
ベクターpGEX−2T(ファルマシア)、p85についてはpGEX−3X(フ
ァルマシア)であった。これらのベクターのそれぞれから、さらに以下に記載す
るC末端アミノ酸を有するSH2構築物が得られる。
ヒトfynのSH2領域をコードする配列(アミノ酸143−252)[Yamamot
o,T.ら,Proc .Natl.Acad.Sci.USA 83,5459-5463(1986)]を発現ベクターp
GEX−2TのBamHIおよびEcoRIサイト中にクローン化した。当業者に周
知のPCR技術により、追加のC末端アミノ酸ロイシン−トレオニン−アスパ
ラギン−セリン−セリンを含むSH2領域(配列番号10)をクローン化して、
発現された融合タンパク質GST−X−fynを得た。次いで、化合物のヒトfyn
SH2領域を選択的に抑制する特異性を測定するために、以下に記載する「結合
アッセイ」において、この発現された融合タンパク質を用いた。
ヒトp85 SH2領域:ヒトp85のSH2領域をコードする配列(アミノ酸
321−440)[Skolnik,E.ら,Cell 65,83-90(1991)]を発現ベクターpG
EX−3XのBamHIおよびEcoRIサイト中にクローン化した。当業者に周知
のPCR技術により、追加のC末端アミノ酸アスパラギン−セリン−セリンを含
むSH2領域(配列番号11)をクローン化して、発現された融合タンパク質G
ST−X−p85を得た。ヒトp85 SH2領域を選択的に抑制する化合物の特
異性を測定するために、以下に記載する「結合アッセイ」において、この発現さ
れた融合タンパク質を用いた。
ヒトSH−PTP2 SH2領域:ヒトSH−PTP2のSH2領域をコード
する配列(アミノ酸1−106)[Bastien,L.ら,Biochem .Biophys.Res.C ommun.
196,124-133(1993)]を発現ベクターpGEX−2TのBamHIおよびE
coRIサイト中にクローン化した。当業者に周知のPCR技術により、追加のC
末端アミノ酸グルタミン−フェニルアラニン−イソロイシン−バリン−トレオニ
ン−アスパラギン酸塩を含むSH2領域(配列番号12)をクローン化して、発
現された融合タンパク質GST−X−SH−PTP2を得た。次いで、ヒトSH
−PTP2 SH2領域を選択的に抑制する化合物の特異性を測定するために、
以下に記載する「結合アッセイ」において、この発現された融合タンパク質を用
いた。
ヒトGrb2 SH2領域:ヒトGrb2のSH2領域をコードする配列(アミノ
酸58−159)[Lowenstein,E.ら,Cell 70,431-442(1992)]を発現ベク
ターpGEX−2TのBamHIおよびEcoRIサイト中にクローン化した。当業
者に周知のPCR技術により、追加のC末端アミノ酸イソロイシン−ヒスチジン
−アルギニン−アスパラギン酸塩を含むSH2領域(配列番号25)をクローン
化して、発現された融合タンパク質GST−X−Grb2を得た。6個のヌクレオ
チドリンカーを用い、その結果、GSTおよびSH2領域の間にアミノ酸グリシ
ンおよびセリンが得られた。ヒトGrb2 SH2領域を選択的に抑制する化合物
の特異性を測定するために、以下に記載する「結合アッセイ」において、この発
現された融合タンパク質を用いた。
結合アッセイ:SH2領域での化合物の能力を、かかるSH2領域がそのそれ
ぞれの特異的pYペプチドと結合するのを選択的に抑制するこのような化合物の
能力に基づいて測定した。
SH2領域およびpYペプチドについての結合アッセイを、ELISAベース
の96ウエルプレートアッセイにおいて行った。ミリポア(Milipore)96ウ
ェ
5um カタログ番号MADVN6550)にプロテイン−Gセファロース(Pro
tein−G Sepharose)(ニューシャージー州のファルマシアから入手可能、カ
タログ番号17−0618−01)2ul(50%懸濁液)および2mg/mlのMA
B178.1(gp120/SH2領域融合タンパク質src、lck、Stat 5、Stat
6およびhcpについて)2ulまたは抗−GSTポリクローナル抗血清(ニューシ
ャージー州のファルマシアから入手可能)(GST/SH2領域融合タンパク質
fyn、Grb2、p85およびSH−PTP2について)0.25ulのいずれかを添
加する。10ピコモルの対象SH2領域融合タンパク質を各ウェルに添加する。
体積をTBS−T(トリス緩衝生理食塩水+0.05%トゥイーン−20)で1
00ulにし、インキュベートし、室温で1時間振盪し、次いで、TBS−T(4
℃)で1回洗浄する。次いで、TBS−T90ulのを各ウェルに添加する。特異
的pYビオチニル化ペプチドをTBS−T中1.0uMの濃度に希釈する(これら
のペプチドは、ペンシルベニア州のベイチェム・バイオサイエンス(Bachem B
ioscience)、テキサス州のゲノシス・バイオテクロジーズ(Genosys Biotech
nologies)およびカリフォルニア州のカリフォルニア・ペプタイド・リサーチ(
California Peptide Research)から入手できる)。各ウエル当たり10ulの
アリコットを採取し、最終濃度0.1uM(各SH2領域/ペプチド対についての
およそのKd)および最終体積100ulを得る。アッセイ
プレートを、平衡結合が達成されるまでインキュベートする(振盪しながら4℃
で3時間)。アッセイプレートをウエルごとにTBS−T(4℃)で2回洗浄し
、次いで、ウエルにつきSABC(ストレプトアビジンビオチニル化ホースラデ
ィッシュペルオキシダーゼ複合体、カリフォルニア州のツィムド・コーポレイシ
ョン(Zymed Corporation)から入手可能、カタログ番号90−0043、T
BS−T 10mlにつき試薬A(ストレプトアビジン)1滴および試薬B(AH
−ビオチンコンジュゲートホースラディッシュペルオキシダーゼ)1滴を37℃
で30分間インキュベートし、次いで、4℃に冷却した)100ulを添加し、次
いで、4℃で30−60分間インキュベートする。次いで、該プレートをTBS
−T(4℃)(250ul/ウエル/洗浄)で洗浄する。ウエルにつきクエン酸緩
衝液中1mg/mlのOPD(o−フェニルジアミン、ミズーリ州セント・ルイスの
シグマ・ケミカル・コーポレイション(Sigma Chemical Corporation))1
00ulを添加する。増殖を停止させるために、ウエルにつき10%硫酸100ul
を添加する。次いで、各ウエルから150ulをアッセイプレートから取り出し、
ELISAプレートに移す。次いで、各ELISAプレートのA490を測定する
。
表Iに関する(IC50)の測定
各対照または化合物を二重試験でアッセイする。二重試験値を平均し、バック
グラウンドを差し引き、抑制のない最大値をプレートから取り出し、次いで、他
の全データを最大値のパーセント(または対照%)として表す。これらの対照デ
ータ(%)をマッキントッシュのカレイダグラフ(Kaleidagraph)(シナージ
ー・ソフトウェア(Synergy Software))でグラフ化する。これらのグラフの
曲線を以下の式:F(x)=Emax/(1+(kd/濃度)^勾配)(式中、kdは、各曲
線のIC50をあらわす)で非線形曲線に適合させる。
第II表に関する(Ki)の測定
各化合物についてのKiを以下の式(下記参照)により計算する。pYビオチニ
ル化ペプチドは、SH2領域融合タンパク質よりも非常に過剰濃度(100X)
でないので、この拡張公式は、このアッセイの条件下で用いなければならない。
IC50はカレイダグラフを用いた非線形曲線適合から外挿された値である。
Rtotおよび*Dは、アッセイに使用した試薬について既知の値である。KDは、
一般に、SH2領域融合タンパク質とpYビオチニル化ペプチドとの各組み合わ
せについて実験的に決定しなければならない。
KI=(IC50−Rtot+Rtot/2((*D/(KD+*D))+(KD/(KD+*D+Rto
t/2)))/(1+*D/KD+Rtot/KD((KD+*D/2)/(KD+*D)))
KI=競争相手のKD(uM)。
IC50=抑制物質についてのIC50(uM)(各SH2領域についての競合選択
性アッセイデータの非直線的曲線適合により得られる)。
Rtot=1アッセイ(マイクロタイタープレート)ウエル内の全SH2領域濃度
(uM)。
*D=各SH2領域についての特異的pYおよびビオチニル化ペプチドの濃度(u
M)。
KD=各SH2領域についての特異的pYおよびビオチニル化ペプチドについて
のKD値(uM)。
IC50は、応答またはシグナルが50%抑制される抑制物質の濃度である。
KDは、レセプター/リガンド相互作用におけるリガンドの解離定数であり、一
般に、飽和結合曲線上の1/2Vmaxでのリガンドの濃度に等しい。
前記結合アッセイにおいて用いるpYペプチドリガンドは、以下の通りである
:src、lck、およびfyn SH2領域について使用したアミノカプロン酸(Aca)
リンカーを含むビオチニル化pYペプチドリガンド
p85 SH2領域について使用したアミノカプロン酸(Aca)リンカーを含むビ
オチニル化pYペプチドリガンド
SH−PTP2 SH2領域について使用したアミノカプロン酸(Aca)リンカ
ーを含むビオチニル化pYペプチドリガンド
hcp SH2領域について使用したアミノカプロン酸(Aca)リンカーを含むビオ
チニル化pYペプチドリガンド
Grb2 SH2領域について使用したアミノカプロン酸(Aca)リンカーを含む
ビオチニル化pYペプチドリガンド
Stat 6について使用したアミノカプロン酸(Aca)リンカーを含むビオチニル
化pYペプチドリガンド:
Stat 5について使用したアミノカプロン酸(Aca)リンカーを含むビオチニル
化pYペプチドリガンド:
結合アッセイの結果:
表IおよびIIは、所定のSH2領域でのSH2拮抗物質の交差反応性を表す。
これらの表に示した結果から、Stat 5 SH2領域で、他のSH2領域での結
合親和力よりも50倍以上高い結合親和力を有する化合物を容易に同定できるこ
とが明らかになった。
Stat 5についての適切な選択性リガンドを同定した後、当業者によく知られ
ている方法により二官能性スペーサー1分子にリガンド2分子を結合させること
によって、ダイマー形態を調製する。該スペーサーのサイズを変え、刺激されな
い細胞抽出物を化合物と一緒にインキュベートし、Houら,Immunity 2,(1995)
,321〜329に開示されているDNAゲルシフトアッセイにおいてStat 5活性化
についてアッセイすることによって測定した場合のStat 5の活性化を最適化す
る。
二歯のリガンドとのダイマー活性化によって、他のStat SH2領域(詳細に
は、Stat 1、Stat 2、Stat 3、Stat 4およびStat 6)を活性化する方
法も本明細書において考慮される。
本発明の好ましい具体例を前記記載事項により説明したが、本発明は、本明細
書中の内容に制限されるものではなく、以下の請求の範囲内のあらゆる変更もそ
の範囲に含まれると考えられる。
【手続補正書】
【提出日】1997年12月26日
【補正内容】
h)N−tert−ブトキシカルボニル−4−(tert−ブトキシカルボニル)フェニ
ルグリシンメチルエステル
実施例1(f)の化合物(1.0g、3.2ミリモル)およびN,N'−ビス(1−
メチルエチル)カルバミミジン酸1,1−ジメチルエチル(1.3mg、6.5ミリモ
ル)の乾燥ジクロロメタン中溶液を室温で一夜撹拌した。ジイソプロピル尿素を
濾過し、過剰のN,N'−ビス(1−メチルエチル)カルバミミジン酸1,1−ジメ
チルエチルを水で分解した。層を分離し、ジクロロメタン溶液を5%重炭酸ナト
リウム水溶液および食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を
蒸発させ、残留物をジエチルエーテルで処理した。さらにジイソプロピル尿素を
濾過し、有機濾液を蒸発させて、油状物として標記化合物を得た(870mg、7
4%)。
i)N−tert−ブトキシカルボニル−4−(tert−ブトキシカルボニル)フェニ
ルグリシン
実施例1(h)の化合物(760mg、2.1ミリモル)の5%重炭酸ナトリウ
ム水溶液18mL、5%炭酸ナトリウム水溶液18mLおよびメタノール36mL
中溶液を室温で一夜5時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで洗
浄し、該水溶液を新しい酢酸エチルで覆い、3N HClでpH2に酸性化した。
層を分離し、水溶液を酢酸エチルでさらに2回抽出した。酢酸エチル溶液を無水
硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、白色固体として標記化合物を得た(6
00mg、82%):融点77−79℃。
j)7−アミノ−3−[2−(5−メチル−1,3,4−チアジアゾリル)チオメ
チル]△3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル
7−アミノセファロスポラン酸tert−ブチル(Blacklockらの手順(J.Org.C
hem.1989,54,3907)に従って、7−アミノセファロスポラン酸から、1,2−
ジメトキシエタン中のイソブチレンおよび硫酸との反応によって調製した)、重
炭酸ナトリウムおよび2−メルカプト−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール
のリン酸緩衝液(pH6.4)中溶液を60℃で6時間撹拌した。塩酸水溶液/
酢酸エチルでの抽出により反応混合物を処理して標記化合物を得た。
k)7−[D,L−α−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−α−[4−(tert−
ブトキシカルボニル)フェニル]]アセトアミド−3−[2−(5−メチル−1,3,
4−チアジアゾリル)チオメチル]△3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル
実施例1(i)のN−tert−ブトキシカルボニル−4−(tert−ブトキシカル
ボニル)フェニルグリシン(351mg、1ミリモル)、実施例1(j)の7−ア
ミノ−3−[2−(5−メチル−1,3,4−チアジアゾリル)チオメチル]△3−セ
フェム−4−カルボン酸tert−ブチル(368mg、1ミリモル)およびDCC(
212mg、1ミリモル)の乾燥ジクロロメタン中混合物を
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
A61K 31/435 A61K 31/435
// C07D 207/50 C07D 207/50
495/14 495/14 D
495/22 495/22
501/36 107 501/36 107
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AU,BB,BG
,BR,CA,CN,CZ,EE,GE,HU,IL,
IS,JP,KG,KP,KR,LK,LR,LT,L
V,MD,MG,MK,MN,MX,NO,NZ,PL
,RO,SG,SI,SK,TR,TT,UA,US,
UZ,VN