JPH1046493A - オフセット印刷用塗被紙 - Google Patents

オフセット印刷用塗被紙

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JPH1046493A
JPH1046493A JP20003096A JP20003096A JPH1046493A JP H1046493 A JPH1046493 A JP H1046493A JP 20003096 A JP20003096 A JP 20003096A JP 20003096 A JP20003096 A JP 20003096A JP H1046493 A JPH1046493 A JP H1046493A
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修 北尾
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 寸法安定性と耐ブリスター性に優れるオフセ
ット印刷用塗被紙の提供。 【解決手段】 ギャップフォーマー抄紙機を用いて抄紙
した原紙に顔料と接着剤を主成分とする塗被層を設けて
なるオフセット印刷用塗被紙であって、原紙を構成する
少なくとも一種のパルプが、蒸解薬液の分割添加と、蒸
解釜内での並流蒸解と向流蒸解からなる修正アルカリ蒸
解法により木材チップを蒸解して得られる未晒パルプを
酸素脱リグニン処理し、次いで濾紙分解活性を有せず、
キシラン分解活性を有する酵素で処理した後、更に多段
漂白された漂白パルプである。原紙を構成する前記漂白
パルプが全パルプの絶乾重量当り60〜100重量%含
有される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オフセット印刷用
塗被紙に関する。更に詳しく述べれば、本発明は寸法安
定性が高く、耐ブリスター性に優れたオフセット印刷用
塗被紙に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、出版、広告、宣伝等の媒体として
の印刷物の重要性が再認識され、印刷物のビジュアル化
やカラー化といった高級化が進んでいる。それに伴っ
て、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を紙の上に塗被
し製造される印刷用塗被紙に対する需要が増加してお
り、とりわけ多色印刷に最も多く用いられるオフセット
印刷用塗被紙の需要増加が著しい。
【0003】オフセット印刷は、普通の印刷が版面から
直接紙面に印刷されるのに対し、版面からインキ画像を
一度ゴム・ブランケット面に転写し、それから紙面に印
刷され乾燥されるものである。このオフセット印刷用の
用紙には、表裏差が少ない、良好な地合、表面強度が強
い、伸縮が少ない等といった品質が要求される。このよ
うな状況に対応するためには、印刷用塗被紙の高速操業
性と高品質化を実現化することが求められるが、オフセ
ット印刷用塗被紙の製造においてはこれら二つの要求を
両立することは困難であるとされてきた。
【0004】近年、抄紙速度の高速化に伴って、抄紙機
の主流は長網抄紙機からツインワイヤー式抄紙機へ変遷
しつつある。特にギャップを有するツインワイヤー式抄
紙機(以下ギャップフォーマーと称す)では、原料を2
枚のワイヤーで挟んで走行しながらその間に両面からほ
ぼ均等に脱水するため、高速抄紙が可能であり、地合の
良好な紙が製造できるため新聞用紙、ティシュ等の坪量
の低い薄物用紙のための高速抄紙機として多く用いられ
ている。
【0005】しかしこのギャップフォーマーで製造され
た紙は、紙の両面からの脱水により紙の表裏差が小さく
なるという利点があるものの、紙の表層部分に微細繊維
が局在化し、紙の中層部の微細繊維量が減少するため、
紙の層間強度が著しく小さくなるという欠点を有してい
る。従って、ギャップフォーマーで製造された原紙が用
いられたオフセット印刷用塗被紙においては、層間強度
が小さいので、塗被紙にオフセット印刷し、加熱乾燥す
る際に、塗被紙が含有している水分が蒸発し、それによ
って紙層間で剥離が生じ、塗被層が膨れた状態、即ち
「ブリスター」が発生し、そのため印刷面が荒れ、印刷
物の価値を著しく低下させるという品質上の重大な問題
がある。
【0006】一般に、オフセット印刷用塗被紙の耐ブリ
スター性を改善するには、用いる原紙の層間強度を高く
する必要があり、抄紙工程において、カチオン化澱粉、
ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増
強剤を添加する方法が用いられる。しかしながら、紙力
増強剤を紙料中へ添加した場合は、抄紙機上での濾水性
が悪くなるため、この方法を用いることは高速抄紙機に
は不利となる。そのため、紙力増強剤は紙料への内部添
加方式からサイズプレス装置を用いて紙の表面から内部
に浸透させるという外部添加方式へと変化して来てい
る。
【0007】しかしながら、ギャップフォーマーの場
合、前記したように、原紙表面に微細繊維が局在化する
ため、紙力増強剤を外添しても、原紙内部まで紙力増強
剤が浸透せず、この方法は有力な改善策にはなり得なか
った。更に、これらの紙力増強剤を増添して効果を上げ
ようとした場合には、操業性が悪化するばかりか、乾燥
工程における熱反応により、原紙を黄変させるという問
題もある。又、紙力増強剤の使用は、紙の寸法安定性の
改善も可能であるという別の効果もあるが、前記の理由
により多用はできない。
【0008】近年、酵素をリグノセルロース材料を加工
して得られる繊維に作用させて、繊維を改質する技術が
多数提案されてきている。例えば、特公平2−2075
6号公報、特開平1−92490号公報、特公平3−4
672号公報、特開平6−166978号公報、特開平
6−316899号公報、特開平7−279078号公
報、特開平7−331588号公報等に開示されている
ように、パルプ繊維の叩解性の改善、パルプ繊維の改質
等を目的として、リファイナー等による叩解の前のパル
プ繊維にセルラーゼを添加する方法、特開平2−668
1号公報、特開平2−229291号公報、特開平3−
124891号公報等に開示されているように、抄紙機
のワイヤー上での濾水性を改善するため、叩解して抄紙
薬品を添加した後の紙料にセルラーゼ、ヘミセルラーゼ
等の酵素を添加する方法がある。
【0009】又、特開平2−264087号公報、特開
平2−293486号公報、特開平6−101185号
公報、特開平6−207390号公報等に開示されてい
るように、漂白前にパルプ繊維をセルラーゼ、ヘミセル
ラーゼ等の酵素で処理することにより、漂白性を改善す
る方法も知られている。一方、特開平8−49187号
公報には、漂白後のパルプ繊維を濾紙分解活性を有する
酵素で処理することにより、オフセット印刷用塗工紙の
耐ブリスター性と耐折れ割れ性が改善されることが開示
されている。しかしながら、漂白後のパルプ繊維に対し
て濾紙分解活性を有する酵素で処理するため、パルプ繊
維が損傷を受けパルプ強度を損ない、又叩解後の微細繊
維の発生が多く、ギャップフォーマー用のパルプとして
は満足できるレベルにない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、ギャッ
プフォーマーを用いて抄紙した原紙から構成される、寸
法安定性と耐ブリスター性に優れたオフセット印刷用塗
被紙について種々検討を重ねた結果、ギャップフォーマ
ーで塗被用原紙を抄紙する際に、使用するパルプとして
特定の方法で改質したパルプを使用すると、即ち木材チ
ップを修正アルカリ蒸解法により蒸解し、酸素脱リグニ
ン処理を施し、こうして得られたパルプに、多段漂白に
先立ち、濾紙分解活性が無くキシラン分解活性を有する
酵素を含水状態で作用させ、次いで多段漂白処理して得
られる漂白パルプを使用すると、塗被組成物を塗被した
後の塗被紙の寸法安定性に優れ、その塗被紙にオフセッ
ト印刷した時の寸法安定性と耐ブリスター性に優れた塗
被紙となることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の目的は、ギャップフォーマーで抄紙される原紙
に顔料と接着剤を主成分とする塗被組成物を塗被して構
成され、寸法安定性と耐ブリスター性に優れるオフセッ
ト印刷用塗被紙を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の第一は、ギャッ
プフォーマー抄紙機を用いて抄紙した原紙に顔料と接着
剤を主成分とする塗被層を設けてなるオフセット印刷用
塗被紙において、原紙を構成する少なくとも一種のパル
プが、蒸解薬液の分割添加と、蒸解釜内での並流蒸解と
向流蒸解からなる修正アルカリ蒸解法により木材チップ
を蒸解して得られる未晒パルプを酸素脱リグニン処理
し、次いで濾紙分解活性を有せず、キシラン分解活性を
有する酵素で処理した後、更に多段漂白された漂白パル
プであることを特徴とするオフセット印刷用塗被紙であ
る。本発明の第二は、原紙を構成する前記漂白パルプが
全パルプの絶乾重量当り60〜100重量%含有される
ことを特徴とする本発明第一に記載のオフセット印刷用
塗被紙である。
【0012】本発明で原紙に使用されるパルプは、ギャ
ップフォーマーでの抄紙性を生かすため、伸縮率が小さ
く、叩解した後における微細繊維の発生量が抑えられ、
かつ単繊維強度の大きいことが必須である。このような
原料パルプを得る方法について研究した結果、このよう
な所望の特性を有する原料パルプは、蒸解薬液の分割添
加と、蒸解釜内での並流蒸解と向流蒸解からなる修正ア
ルカリ蒸解法で得た未晒パルプを酸素脱リグニンした後
に、濾紙分解活性が無くキシラン分解活性を有する酵素
により処理し、更にその後、通常の多段漂白シーケンス
からなる漂白工程を適用することにより得られることが
判明した。
【0013】パルプの原料としては、広葉樹木材及び針
葉樹木材からのパルプが挙げられるが、非晶性の多糖類
であるヘミセルロースとして広葉樹木材からのパルプは
グルクロノキシランを主成分として含み、針葉樹木材か
らのパルプはガラクトグルコマンナンとグルクロノキシ
ランを含むが、広葉樹木材パルプの繊維長は針葉樹木材
パルプに比較し短く、紙にした場合地合に優れ、キシラ
ン分解活性を有する酵素で処理した時にパルプ繊維に顕
著な改質が可能で、その程度を容易にコントロールでき
るので本発明のためには広葉樹木材が好ましく使用され
る。
【0014】本発明の目的を達成するために好適なパル
プを得るための修正アルカリ蒸解法は、次のような方法
で行われる。図1は、修正アルカリ蒸解法のために好適
に用いられる2ベッセル型連続蒸解釜における蒸解フロ
ーを示す模式図の1例である。図において、連続蒸解釜
(例えば、カミヤ式連続ダイジェスター)2の前に浸透
ベッセル1が設置されており、かつ連続蒸解釜2の内部
が頂部から底部にかけて上部蒸解トリムゾーンA、上部
蒸解ゾーンB、下部蒸解ゾーンC及び必要に応じてハイ
ヒート洗浄ゾーンDが設けられ、上部蒸解トリムゾーン
A及び上部蒸解ゾーンBにおいては木材チップの並流蒸
解が、下部蒸解ゾーンCでは向流蒸解が行われ、ハイヒ
ート洗浄ゾーンDでは蒸解済みの木材チップの向流洗浄
が行われる。前記2ベッセル型連続蒸解釜を用いる蒸解
法では、蒸解系に導入されるアルカリ蒸解液の50〜9
0%が浸透ベッセルに、5〜45%が上部蒸解トリムゾ
ーンAに、5〜45%が下部蒸解ゾーンCにそれぞれ分
割して供給される。
【0015】即ち、木材チップは蒸解液と一緒に浸透ベ
ッセル1の頂部から浸透ベッセル1内に導入され、その
底部から排出される間に蒸解液のチップ内部への浸透が
十分に行われ、更に浸透ベッセル1の底部において蒸解
液の一部が新たに添加され、連続蒸解釜2の頂部へと木
材チップと一緒に送られる。木材チップは、連続蒸解釜
2を下降する間に前記した如く、上部蒸解トリムゾーン
A及び上部蒸解ゾーンBにおいて木材チップと一緒に下
降する蒸解液により蒸解が行われ(並流蒸解)、木材中
のリグニンのかなりの部分が液中に溶出され、更に引き
続いて下部蒸解ゾーンCにおいて新たに蒸解液が添加さ
れ、上昇する液と向流的に接触して蒸解され(向流蒸
解)、残りのリグニンが所望の程度、液中に溶出させら
れて脱リグニンが生じ、木材チップから除去される。こ
のようにリグニンの除去が終了したチップは、最終的に
連続蒸解釜2の底部から導入された上昇する洗浄液と向
流的に接触し、ハイヒート洗浄された後、連続蒸解釜の
系外へ取り出され、必要に応じ、加圧型拡散洗浄機(プ
レッシャー・ディフュージョン・ウォッシャー)(図示
されず)に導入され、1段或いは2段で加圧下に洗浄さ
れ、ブロータンクに排出されて圧力が解放される。前記
したような加圧型拡散洗浄機が用いられるか、或いは更
にドラムウォッシャータイプの洗浄機が追加して用いら
れるかは、任意に選択して用いられる事項である。
【0016】修正アルカリ蒸解のためのアルカリ性蒸解
液としては、苛性ソーダ(ソーダ蒸解)、苛性ソーダと
硫化ソーダ(クラフト蒸解)、多硫化ソーダ(ポリサル
ファイド蒸解)等が挙げられるが、クラフト又はポリサ
ルファイド蒸解液が好適に用いられる。蒸解液の硫化度
は5〜75%、好ましくは5〜50%であり、有効アル
カリ添加率は、絶乾木材重量当り5〜30重量%、好ま
しくは10〜25重量%の範囲である。蒸解に際して、
使用する蒸解液に蒸解助剤として、公知の環状ケト化合
物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノ
ン、アントロン、フェナントロキノン及び前記キノン系
化合物のアルキル、アミノ等の核置換体、或いは前記キ
ノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのよ
うなヒドロキノン系化合物、更にはディールスアルダー
法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる
安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセ
ン化合物等から選ばれた1種或いは2種以上が添加され
てもよく、その添加率は木材チップの絶乾重量当り0.
001〜1.0重量%である。
【0017】修正アルカリ蒸解法で得られた未晒パルプ
は、洗浄、粗選及び精選工程を経て、酸素脱リグニン工
程において更に脱リグニンされるが、酸素脱リグニン工
程は公知の中濃度法、とりわけ高せん断混合機と加圧型
反応塔が洗浄機を介さずに直列に複数段、好ましくは二
段配置された脱リグニン装置で行われる中濃度多段酸素
脱リグニン法が好適である。酸素脱リグニン工程では、
酸素ガスは深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Sw
ing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Ads
orption)からの酸素等のように工業規模での利用が可能
ならば製造方法には特に限定されない。前記の酸素ガス
の単独使用の他に、酸素ガスと酸素系過酸化物の併用も
可能である。又、酸素脱リグニン工程でのパルプの重合
度の低下を防止する目的で硫酸マグネシウムや炭酸マグ
ネシウムを併用することもできる。
【0018】本発明の酸素脱リグニン工程で使用される
アルカリとしては苛性ソーダ或いは酸化されたクラフト
白液が用いられ、酸素ガスとアルカリは、第1段目の高
せん断混合機の前或いは該混合機で所定量の全量を一度
に添加しても良いし、直列に配置された複数の高せん断
混合機の前或いは該混合機にそれぞれ分割して添加して
も良い。酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ重量当り0.
5〜3重量%、アルカリ添加率は0.5〜4重量%、反
応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分、
パルプ濃度は8〜18重量%であり、この他の条件は公
知のものが適用できる。
【0019】酸素脱リグニン処理を施されたパルプは、
圧力が解放される前に或いは解放後に洗浄工程を経た
後、パルプが次の多段漂白工程へ送られる間に濾紙分解
活性を有せずキシラン分解活性を有する酵素で処理され
る。好ましくは、酸素脱リグニン後のパルプの洗浄機に
おいて洗浄水がパルプに供給され、更に必要に応じてプ
レスのような脱液装置で脱水され、パルプ温度が調整さ
れたパルプに以下に述べるような手法により前記酵素が
添加される。本発明に使用される酵素は、濾紙分解活性
が無く、キシラン分解活性を有する酵素である。濾紙分
解活性を有する酵素でパルプを処理した場合には、パル
プ中の結晶性セルロースが分解され、パルプ繊維の損傷
が生じ、パルプの単繊維強度が低下し、原紙の寸法安定
性が悪化するのみならず、強度も低下するため適さな
い。濾紙分解活性が無く、キシラン分解活性を有する酵
素でパルプを処理した場合には、パルプの主要骨格であ
るセルロースは全く作用を受けず、パルプ繊維の表面或
いはパルプ繊維中に局在するキシランだけが選択的に分
解され、その結果、パルプ繊維は骨格を維持したまま多
孔性となり、叩解後の微細繊維の発生が抑えられ、原紙
の寸法安定性を維持したままで紙力増強剤の浸透性が改
善されて層間強度が向上し、又透気性も向上するので耐
ブリスター性が改善されるものと考えられる。
【0020】前記キシラン分解活性を有する酵素は、こ
れを生産する微生物、菌体、バクテリア等を培養するこ
とによって採取される。更に、これらの変異株、或いは
酵素の生産を増大させるために遺伝子工学によって製造
された菌株、即ち組替え体菌株から採取してもよい。
又、前記酵素は培養液中に生産されたままのものでも良
く、その濃縮混合物、或いはその乾燥調製物のいずれか
ら製造された物であっても良い。前記酵素は、キシラン
分解活性として、0.1〜10U/絶乾パルプg、好ま
しくは0.5〜5U/絶乾パルプgの範囲でパルプに対
し添加される。ここに、1Uとは、酵素をキシランに作
用させた場合に、1分間に1μモルのキシロースを生成
する酵素量のことをいう。酵素の添加量がキシラン分解
活性として0.1U/絶乾パルプg未満では、パルプか
らのキシランの溶出が不十分なため効果が不十分であ
り、10U/絶乾パルプgを超えた場合には、酵素処理
工程でのパルプの歩留りが低下し、コスト高となるため
経済的ではない。
【0021】酵素処理は、パルプ濃度が1〜20重量
%、好ましくは2〜15重量%の範囲で行われる。パル
プ濃度が1重量%未満では、処理に大容量の設備を要す
るので適さない。パルプ濃度が20重量%を超えると、
パルプと酵素を均一に混合し難くなるので酵素処理の効
果が十分得られない。酵素と含水状態のパルプとの均一
な混合は、低濃度ミキサー、中濃度ミキサー、スタティ
ックミキサー、高濃度ミキサー等の中から処理時のパル
プ濃度に応じて適宜選択され行われる。パルプを酵素で
処理する時の温度は30〜80℃、好ましくは40〜6
0℃の範囲である。温度が30℃未満では、酵素のキシ
ラン分解活性が低下し処理効果が不十分となる上、その
ような低い温度を得ることは、酸素脱リグニン後の高い
温度のパルプを冷却しなければならず、しかもその後の
多段漂白の最初の漂白段の温度を考えるとエネルギーを
無駄にすることになり実用的に得策ではない。一方、温
度が80℃を超えて高くなると、酵素自体が変性し、不
活性になるので適さない。処理時のパルプ液或いはパル
プに含まれる溶液のpHは3〜10、好ましくは5〜9
の範囲である。pHの調整が必要な場合は、任意の酸性
溶液又はアルカリ性溶液を添加して調整することができ
る。前記のpH調整用に用いられる溶液は、多段漂白工
程で発生する活性塩素を含まない排水を利用できること
はいうまでもない。処理時間は10分間以上、好ましく
は30〜180分間であるが、時間については特に限定
されない。
【0022】前記酵素処理は、前記したように、酸素脱
リグニン工程に次いで洗浄した後に行われる。しかしな
がら、この酵素処理は、次いで行われる多段漂白の途中
で或いは多段漂白の最終段で、本発明の目的を損なわな
い範囲で複数回繰り返し行ってもよい。本発明で用いら
れる多段漂白工程は、塩素(C)、苛性ソーダ(E)、
次亜塩素酸塩化合物(H)、二酸化塩素(D)、酸素
(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、有機過酸化
物等の漂白薬品を用いる公知の漂白シーケンス、例えば
C/D−Eo―H―D、D−Eop―D、D―E―D等
が適宜組み合わせて使用されるが、本発明の効果は多段
漂白工程における漂白薬品の組み合わせには特に影響を
受けないので、特に限定するものではない。以上のよう
にして漂白される漂白パルプのハンター白色度の水準は
82〜87%の範囲にあり、この水準はパルプの使用目
的に応じて適宜選択して決められる。
【0023】本発明の目的を達成するためには、以上に
記載したような処理を施されたパルプが塗被用原紙を構
成する全パルプの少なくとも60重量%を占める必要が
ある。60重量%未満の場合には、パルプ繊維としての
改質効果の発現が不十分となり、十分な効果が得られな
い。原紙を構成する他のパルプとしては、本発明に記載
の処理を施されていない晒クラフトパルプ、機械パル
プ、脱墨パルプ等が挙げられ、本発明の効果を損なわな
い範囲で適宜組み合わせて使用される。本発明の塗被用
原紙を抄紙するためには、修正アルカリ蒸解され、酸素
脱リグニンに次いで酵素処理され、多段漂白されたパル
プは、単独で或いは他のパルプと混合されてシングルデ
ィスクレフィナー、ダブルディスクレフィナー、ビータ
ー等の叩解機により叩解されるが、叩解の度合いは、カ
ナダ標準濾水度で示される値で550〜300mlの範
囲が好ましい。又、必要に応じて、タルク、カオリン、
重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の填料の他
に、一般に使用される各種のアニオン性、ノニオン性、
カチオン性或いは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、
紙力増強剤、内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤、更に、
染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコント
ロール剤、スライムコントロール剤等を必要に応じ添加
し、紙料を調成することができる。この紙料を用い、ギ
ャップフォーマーにて原紙を抄造するが、その抄造条件
は特に限定されるものではない。
【0024】こうして得られた原紙に、各種サイズプレ
ス装置或いはロールコーターで澱粉等の天然接着剤やP
VA等の合成接着剤を用いてサイズプレス処理を行うこ
とは勿論可能であるが、本発明者等の研究によるとフィ
ルムメタリングタイプのサイズプレス装置を用いて糊の
固形分濃度が10重量%以下でサイズプレス処理を行っ
た場合、より一層効果的であった。又、このようにして
製造された原紙の上に塗被組成物を塗被する場合は、ロ
ールコーター、ブレードコーター等で予備的に塗被を行
っておくことも勿論可能である。本発明で使用される塗
被組成物は、主成分の一つである顔料として、例えばク
レー、カオリン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウ
ム、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホ
ワイト、硫酸カルシウム、タルク、プラスチックピグメ
ント等の顔料から、一種以上を任意に選択し配合するこ
とができる。又、接着剤として、例えばスチレンーブタ
ジエン共重合体、メチルメタアクリレートーブタジエン
共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリ
ル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体
又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレ
ンー酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテック
ス、或いはこれらの各種重合体ラテックス、カルボキシ
ル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解
性或いはアルカリ非溶解性の重合体ラテックスを用いる
ことができる。
【0025】又、前記合成接着剤と併用する水溶性接着
剤としては、例えばカチオン化澱粉、酸化澱粉、酵素変
性澱粉、熱化学変性澱粉、エーテル化澱粉、エステル化
澱粉、冷水可溶澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセル
ロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース
類、ポリビニルアルコール、オレフィンー無水マレイン
酸樹脂等の水溶性合成接着剤等を挙げることができ、こ
れらの中から任意に選択し使用できる。これらの顔料と
接着剤の他に、分散剤、耐水化剤、流動性変性化剤、着
色剤、蛍光増白剤等の各種添加剤を必要に応じて添加す
ることもできる。このようにして調製された塗被組成物
は、一般の塗被紙の製造に用いられる塗被装置、例えば
ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコー
ター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテ
ンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコータ
ー、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター
等の塗被装置を設けたオンマシン或いはオフマシンコー
ターによって、原紙上に片面或いは両面に、又一層或い
は多層に乾燥重量で10〜45g/m2の範囲塗被され
た後乾燥される。その際の塗被組成物の固形分濃度は、
40〜75重量%の範囲であるが、操業性を考慮すると
45〜70重量%の範囲が好ましい。
【0026】更に、塗被紙は、オフセット印刷用塗被紙
として、カレンダーによって仕上げられるが、カレンダ
ー仕上げには、グロス或いはマットカレンダーとして、
例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフト
コンパクトカレンダー等の金属ロール又はドラムと弾性
ロールよりなる各種カレンダーが、オンマシン又はオフ
マシンで任意に選択し使用できる。このようにして製造
された塗被紙は、原紙に用いられたパルプ繊維中のヘミ
セルロース含有量が小さく、単繊維強度が高く、多孔性
のパルプ繊維を60重量%以上含有するパルプから構成
されており、従って叩解によって微細繊維の発生が少な
い上、抄紙後の原紙の層間強度と透気性に優れており、
オフセット印刷用塗被紙とした場合、水分伸縮率が小さ
く、従って寸法安定性が高く、耐ブリスター性に優れた
ものとなる。
【0027】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はこれらにより限定されるものでは
ない。以下の実施例及び比較例中の%は、特に断らない
限り重量%を示す。
【0028】実施例1 (パルプの製造)国内産広葉樹チップ70%、ユーカリ
材20%及びオーク材10%からなる混合広葉樹チップ
を原料として、表1に示される条件にて、クラフト蒸解
液を使用して、カミヤ式2ベッセル型連続蒸解釜で修正
クラフト蒸解を行い、釜内ハイヒート洗浄に続いて加圧
拡散洗浄を2段で行い、ブローし、ノッター、精選工程
を通過させてカッパー価18.1、パルプ粘度42.5
cpsの未晒パルプを製造した。蒸解液の硫化度は28
%であり、蒸解助剤として1,4−ジヒドロ−9,10
−ジオキシアントラセンのジナトリウム塩を使用した。
【0029】
【表1】
【0030】続いて、中濃度ミキサー(カミヤ社製MC
ミキサー)と、ディストリビューターとディスチャージ
ャーを有しない塔状酸素脱リグニン装置の組み合わせ単
位を直列に二段結合して設け、その間に洗浄と圧力の解
放を行うことなく、次の条件で酸素脱リグニンを行い、
カッパー価9.6、パルプ粘度24.6cpsの酸素脱
リグニンパルプを得た。 酸素添加率:絶乾パルプ重量当り2.0%(1段目MC
ミキサーへ1.2%、2段目MCミキサーへ0.8
%)、アルカリ添加率:絶乾パルプ重量当り0.8%
(1段目MCミキサーの前に全量添加)、パルプ濃度:
10%、処理温度:1段目、2段目とも100℃、処理
時間:30分(1段と2段15分づつ) 酸素脱リグニン処理後のパルプを拡散式洗浄機(ディフ
ュージョン・ウオッシャー)1段とドラムウォッシャー
1段で洗浄し、洗浄後のパルプ濃度を10%に調整した
後、希硫酸を加えてパルプに含まれる液のpHを8.0
に調整し、次いで濾紙分解活性を有せずキシラン分解活
性を有する酵素(商品名:パルプザイムHC、ノボノル
ディスク社製)を2U/絶乾パルプg添加した後、60
℃で90分間処理した。更にこの酵素処理後のパルプを
C/D−Eo−H−Dの漂白シーケンスで表2に示した
条件で多段漂白を行い、洗浄し、ハンター白色度85.
2%の広葉樹晒クラフトパルプを製造して高濃度貯蔵タ
ンクへ貯蔵した。
【0031】
【表2】
【0032】(塗被用原紙の製造)前記広葉樹晒クラフ
トパルプ100%からなり、濃度4%のパルプスラリー
をダブルディスクリファイナーを用いてカナダ標準濾水
度が500mlとなるように叩解した。叩解後のパルプ
スラリーに、填料としてタルクを紙灰分が9%になるよ
うに添加し、更に内添サイズ剤としてロジンサイズ剤
(商品名:サイズパインE、荒川化学工業社製)0.7
%及び硫酸アルミニウム2%を絶乾パルプ重量当り添加
し紙料を調成し、この紙料を用いてギャップフォーマー
にて速度1200m/分で抄紙し、更に2本ロールサイ
ズプレス装置で、5%濃度の酸化澱粉(商品名:エース
A、王子コーンスターチ社製)液を2g/m2塗布、乾
燥し、米坪量55g/m2のオフセット印刷塗被紙用原
紙を製造した。
【0033】(塗被液の調製)重質炭酸カルシウム(商
品名:FMTー90、ファイマテック社製)25%とカ
オリン(商品名:アマゾン88、CADAM社製)75
%からなる顔料をコーレス分散機を用いて分散し、固形
分濃度72%の顔料スラリーを得た。このスラリーにス
チレンーブタジエン共重合体ラテックス(商品名:SN
307、住友ダウ社製)を顔料重量当り固形分で10
%、酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ
社製)を固形分で4%、その他の助剤を添加分散して固
形分濃度58%の塗被液を調製した。
【0034】(塗被紙の製造)前記のオフセット印刷塗
被紙用原紙に前記の塗被液を用いて、片面18g/m 2
となるようにブレードコーターで両面塗被を行った。得
られた塗被紙を金属ロール6本とコットンロール6本か
らなるオフマシンスーパーカレンダーにニップ圧200
kg/cmで通紙し、王研式平滑度が表1100秒、裏
1120秒のオフセット印刷用塗被紙を製造した。品質
評価するため、下記の試験方法を用い、得られた酵素処
理広葉樹晒クラフトパルプの単繊維強度とαセルロース
量及びオフセット印刷用塗被紙の水分伸縮率と耐ブリス
ター性を測定した。なお、その他の試験項目も以下の通
りである。
【0035】(1)単繊維強度の測定 TAPPI標準 T231cm−85に準拠し、パルプ
繊維のゼロスパン裂断長を測定し、単繊維強度の指標と
した。 (2)αセルロース量 JIS P 8101に準拠して、パルプ中のαセルロ
ース量を測定した。 (3)水分伸縮率の測定 相対湿度65%の条件下で幅30mmの塗被紙サンプル
をつかみ、間隔100mmで固定した後、5gの荷重下
で相対湿度を65%→20%→80%→65%に変化さ
せ、これを3回繰り返し、その時の寸法変化と水分含有
量の変化を測定し、測定値から寸法変化率と水分変化率
を算出し、下記(1)式から水分伸縮率を求めた。な
お、寸法変化は差動トランス変位計(商品名:MDE−
2、新光電子社製)を用いて0.01mmの精度で、水
分変化は電子天秤を用いて0.001gの精度で測定し
た。 水分伸縮率={寸法変化率(%)}/{水分変化率(%)}・・・(1)
【0036】(4)耐ブリスター性の測定 RI印刷機(明製作所社製)でオフセット輪転印刷用イ
ンキ1mlを展開し、塗被紙サンプルの両面に印刷す
る。印刷したサンプルを加温したシリコーンオイルに漬
け、発生するブリスターの様子を目視で観察し、次の評
価基準で評価した。 評価基準 ◎・・・ブリスターの発生が殆ど見られない。 ○・・・極めて軽度のブリスターの発生が見られるが、
実用的に問題とならない。 △・・・ブリスターの発生が見られ、実用的に使用でき
ない。 ×・・・ひどいブリスターの発生が見られ、実用的に使
用できない。 (5)カッパー価の測定:JIS P 8211 (6)パルプ粘度の測定:TAPPI標準 T230o
m―89 (7)パルプのハンター白色度の測定:JIS P 8
123 (8)王研式平滑度の測定:JAPAN TAPPI
No.5
【0037】実施例2 酵素の添加率を4U/絶乾パルプgとし、50℃で30
分間処理し、更に多段漂白をD−Eop−Dのシーケン
スで表3に示される条件で行ったこと以外は、実施例1
と同様にしてオフセット印刷用塗被紙を製造した。得ら
れた広葉樹晒クラフトパルプ(ハンター白色度85.3
%)の単繊維強度とαセルロース量及びオフセット印刷
用塗被紙の水分伸縮率と耐ブリスター性を測定した。
【0038】
【表3】
【0039】実施例3 酸素脱リグニン処理後のパルプをパルプ濃度10%に調
整した後、希硫酸を加えてパルプに含まれる液のpHを
7.0に調整し、濾紙分解活性を有せずキシラン分解活
性を有する酵素(Bacillus sp.2113(FERM P-14638)株が
生産したキシラナーゼ)を2U/絶乾パルプg添加した
後、60℃で120分処理を行ったこと以外は、実施例
1と同様にしてオフセット印刷用塗被紙を製造した。得
られた広葉樹晒クラフトパルプ(ハンター白色度85.
0%)の単繊維強度とαセルロース量及びオフセット印
刷用塗被紙の水分伸縮率と耐ブリスター性を測定した。
【0040】比較例1 (パルプの製造)国内産広葉樹チップ70%、ユーカリ
材20%及びオーク材10%からなる混合広葉樹チップ
を原料として、表1に示される条件にて、クラフト蒸解
液を使用して、シングルベッセル気液相型連続蒸解釜で
通常のクラフト蒸解を行い、釜内ハイヒート洗浄に続い
て加圧拡散洗浄を2段で行い、ブローし、ノッター、精
選工程を通過させてカッパー価19.3、パルプ粘度4
0.2cpsの未晒パルプを製造した。蒸解液の硫化度
は28%であり、蒸解助剤として1,4−ジヒドロ−
9,10−ジオキシアントラセンのジナトリウム塩を使
用した。続いて、得られた未晒パルプを用いて、実施例
1と同様にして酸素脱リグニン処理を行い(カッパー価
10.5、パルプ粘度21.7cps)、次いで酵素に
よる処理を行うことなく、表2に示される条件でC/D
−Eo−H−Dの漂白シーケンスで漂白し、広葉樹晒ク
ラフトパルプ(ハンター白色度85.3%)を製造し
た。更に、このパルプを用いたこと以外は、実施例1と
同様にしてオフセット印刷用塗被紙を製造した。得られ
た晒クラフトパルプの単繊維強度とαセルロース及びオ
フセット印刷用塗被紙の水分伸縮率と耐ブリスター性を
測定した。
【0041】比較例2 比較例1で得られた未晒パルプを使用したこと以外は、
実施例1と同様にして酸素脱リグニン処理(カッパー価
10.5、パルプ粘度21.7cps)、酵素処理及び
表2に示される条件による多段漂白を行い、晒クラフト
パルプ(ハンター白色度85.1%)を製造し、更にこ
のパルプを用いてオフセット印刷用塗被紙を製造した。
得られた晒クラフトパルプの単繊維強度とαセルロース
量及びオフセット印刷用塗被紙の水分伸縮率と耐ブリス
ター性を測定した。
【0042】比較例3 実施例1において得られた酸素脱リグニン処理後のパル
プをパルプ濃度10%に調整した後、希硫酸を加えてパ
ルプに含まれる液のpHを5.0に調整し、濾紙分解活
性を有する酵素(商品名:ベセレックス、合同酒精社
製)を1FPU/絶乾パルプg添加した後、45℃で2
40分処理した。得られたパルプを用いて実施例1と同
様にして多段漂白し(ハンター白色度85.3%)、次
いでオフセット印刷用塗被紙を製造した。得られた晒ク
ラフトパルプの単繊維強度とαセルロース量及びオフセ
ット印刷用塗被紙の水分伸縮率と耐ブリスター性を測定
した。なお、濾紙分解活性の測定は次の方法によった。
【0043】(9)濾紙分解活性の測定 Biotechnol. Bioenng. Symp.6,21〜33(1976)に記載の方
法に基づいて測定した。即ち、直径が18mm、長さ1
80mmの試験管に、50ミリモルのクエン酸緩衝液
(pH4.8)を1mlと酵素液0.5mlを入れ、そ
こへコイル状にした濾紙片(Whatman No.1、1×6c
m)を入れ、50℃で60分反応させた。反応後、3、
5−ジニトロサリチル酸試薬を3ml添加し、沸騰水浴
上で5分間加熱後、冷却(水冷)した。この上澄み液の
吸光度を吸光度測定装置を用いて測定した。予め吸光量
とグルコース量の検量線を作成しておき、この検量線よ
り上澄み液中のグルコース量を求める。濾紙分解活性の
定義は、1分間に1μモルのグルコースに相当する還元
糖を生成する酵素量を1単位として表示するものであ
り、次式より酵素の濾紙分解活性を求めた。 FPU/酵素g(濾紙分解活性) =mgグルコース×(1/0.13)×(1/60)×希釈倍率・・・(1) (FPU:Filter Paper Unitsの略)
【0044】比較例4 実施例1において、酸素脱リグニン処理後に、パルプに
酵素処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に
してオフセット印刷用塗被紙を製造した。得られた晒ク
ラフトパルプ(ハンター白色度85.1%)の単繊維強
度とαセルロース量及びオフセット印刷用塗被紙の水分
伸縮率と耐ブリスター性を測定した。
【0045】実施例4 実施例1で製造された酵素処理した修正クラフト蒸解に
よる広葉樹晒クラフトパルプ65%と比較例1で製造さ
れた酵素処理なしの通常のクラフト蒸解による広葉樹晒
クラフトパルプ35%との混合物を配合した紙料を原紙
の製造に使用したこと以外は、実施例1と同様にしてオ
フセット印刷用塗被紙を製造した。得られたオフセット
印刷用塗被紙の水分伸縮率と耐ブリスター性を測定し
た。
【0046】比較例5 実施例1で製造された酵素処理した修正クラフト蒸解に
よる広葉樹晒クラフトパルプ45%と比較例1で製造さ
れた酵素処理なしの通常のクラフト蒸解による広葉樹晒
クラフトパルプ55%との混合物を配合した紙料を原紙
の製造に使用したこと以外は、実施例1と同様にしてオ
フセット印刷用塗被紙を製造した。得られたオフセット
印刷用塗被紙の水分伸縮率と耐ブリスター性を測定し
た。実施例及び比較例で得られた結果を表4に示した。
【0047】
【表4】
【0048】表4からわかるように、本発明のために用
いられた酵素処理された広葉樹晒パルプはαセルロース
含量が大きく、即ちヘミセルロース含量が小さいパルプ
であり、又単繊維強度が大きくなっている(実施例1〜
3)。 一方、オフセット印刷用塗被紙同士を比較して
みると、本発明の塗被紙は水分伸縮率が小さいため、寸
法安定性が高く、耐ブリスター性が顕著に改善されてい
る(実施例1〜3)。酵素処理を行わないで、単に酸素
脱リグニンと多段漂白を行った晒パルプからの塗被紙
は、原料パルプが修正クラフト蒸解法或いは通常のクラ
フト蒸解法で得られたものとも水分伸縮率が高くなり、
耐ブリスター性が著しく悪い(比較例1と4)。酵素処
理を施せば、クラフト蒸解法からのパルプを用いた塗被
紙の水分伸縮率はかなり改善されるが、耐ブリスター性
が悪く実用的でない(比較例2)。
【0049】更に、修正クラフト蒸解法からのパルプを
濾紙分解活性を有する酵素で処理しても、水分収縮率と
耐ブリスター性は改善できない(比較例3)。修正クラ
フト蒸解法で得られ、その後酸素脱リグニン処理、酵素
処理及び多段漂白処理を施された本発明のための晒クラ
フトパルプの含有量が60%より多い原紙からの塗被紙
は水分伸縮率が低く、耐ブリスター性も実用範囲内にあ
る(実施例4)が、前記のパルプ含有量が減少するにつ
れ、これらの両特性は段々と悪くなる傾向があり、前記
パルプ含有量が45%では耐ブリスター性は著しく悪く
なる(比較例5)。
【0050】
【発明の効果】本発明は、木材チップを修正アルカリ蒸
解し、得られたパルプを酸素脱リグニン処理し、次いで
キシラン分解活性を有する酵素で処理、更に多段漂白工
程を経て得られたパルプをギャップフォーマー抄紙機で
抄紙して塗被用原紙として使用することによって得られ
る塗被紙であって、寸法安定性が高く、耐ブリスター性
に優れたオフセット印刷用塗被紙を提供するという効果
を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 修正アルカリ蒸解法のために好適に用いられ
る蒸解フローを示す模式図である。
【符号の説明】
1・・・浸透ベッセル 2・・・連続蒸解釜 A・・・上部蒸解トリムゾーン B・・・上部蒸解ゾーン C・・・下部蒸解ゾーン D・・・ハイヒート洗浄ゾーン

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ギャップフォーマー抄紙機を用いて抄紙
    した原紙に顔料と接着剤を主成分とする塗被層を設けて
    なるオフセット印刷用塗被紙において、原紙を構成する
    少なくとも一種のパルプが、蒸解薬液の分割添加と、蒸
    解釜内での並流蒸解と向流蒸解からなる修正アルカリ蒸
    解法により木材チップを蒸解して得られる未晒パルプを
    酸素脱リグニン処理し、次いで濾紙分解活性を有せず、
    キシラン分解活性を有する酵素で処理した後、更に多段
    漂白された漂白パルプであることを特徴とするオフセッ
    ト印刷用塗被紙。
  2. 【請求項2】 原紙を構成する前記漂白パルプが全パル
    プの絶乾重量当り60〜100重量%含有されることを
    特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用塗被紙。
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