JPH1045904A - ポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法 - Google Patents

ポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法

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JPH1045904A
JPH1045904A JP20152596A JP20152596A JPH1045904A JP H1045904 A JPH1045904 A JP H1045904A JP 20152596 A JP20152596 A JP 20152596A JP 20152596 A JP20152596 A JP 20152596A JP H1045904 A JPH1045904 A JP H1045904A
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清史 藤澤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】C−C結合構造が生成せず、かつオルト位の分
岐も少ないという構造の制御された、融点を示す、ポリ
−1,4−フェニレンエーテルを製造する方法を提供す
る。 【解決手段】下記一般式(I)で表される遷移金属錯体
触媒を用いて、下記一般式(II)で表される原料を酸化
剤存在下で重合するポリ−1,4−フェニレンエーテル
の製造方法。 (式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表
す。R1 は配位原子として窒素原子、リン原子、酸素原
子または硫黄原子を有する二官能性の有機基であり、全
てのR2 は同一でも異なっていてもよい。Xはカウンタ
ーアニオンであり、nはXの個数であって、Mの価数に
より決定される。) (式中、mは数平均ユニット数を表し、1<mであ
る。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリ−1,4−フェ
ニレンエーテルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】2,6−ジメチルフェノールの遷移金属
錯体触媒を用いた酸化重合(例として、特公昭63−6
091号公報、特開昭59−131627号公報等、多
数を挙げることができる。)によって得られるポリ−
(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)(以下、PP
Eと略すことがある。)は有用な樹脂であることが知ら
れている。しかし、PPEは、芳香環に置換されたメチ
ル基が酸化劣化を受けやすいため、PPE単独で溶融成
形することが難しいという欠点があり、一般にはポリス
チレンとのポリマーアロイとして汎用エンプラに位置づ
けられている。
【0003】一方、ポリ−1,4−フェニレンエーテル
(以下、PAOと略すことがある。)は、Europ.Polym.
J.,4,275 (1968).に記載されているように融点が298
℃(ガラス転移温度は83℃)であり、一般にスーパー
エンプラと呼ばれるポリフェニレンサルファイドの融点
(285℃)を凌ぎ、ポリエーテルエーテルケトンの融
点(334℃)に次ぐ高い融点を有しており、超高耐熱
性の樹脂としてその有用性は極めて大である。
【0004】PAOの製造方法としては、Europ.Polym.
J.,4,275 (1968).にp−ブロモフェノールのナトリウム
塩を銅触媒存在下で重合することが記載されているが、
反応温度が200℃と高温が必要であり、また反応量と
当量の塩が生成するという問題があった。特開昭59−
56426号公報には、フェノールの電解酸化重合によ
りPAOを製造する方法が記載されているが、単位時間
あたりのポリマー生産量が電極表面積に支配されるた
め、大量生産が困難であった。 また、特公昭44−2
8918号公報には、4−フェノキシフェノールを光増
感剤存在下、特定波長の光を照射する方法が提案されて
いるが、重合の進行とともにフェノールが副生するこ
と、及び光照射による方法のため大量生産が困難である
等が問題であった。さらに、特公昭44−28917号
公報には、4−フェノキシフェノールをフェノールが蒸
留される温度に加熱する方法も提案されているが、高温
が必要であり、フェノールが副生するという問題点があ
った。
【0005】これらの問題点を解決する方法として、反
応温度が比較的低く、脱離する副生成物質が水である等
の理由から、遷移金属錯体触媒による酸化重合法は優れ
た方法である。フェノールの遷移金属錯体触媒による酸
化重合方法の例として、特公昭36−18692号公
報、工業化学雑誌,72 巻,10 号,106 (1969) 、特公昭4
8−17395号公報等が挙げられるが、これらの方法
ではオルト位分岐またはC−C結合構造が生じるという
問題があった。
【0006】ここでオルト位分岐とは、フェノール重合
体中のベンゼン環が1,2,4−三置換ベンゼン構造を
とることを指し、本来望まれる1,4−二置換ベンゼン
構造の連鎖を乱す構造である。またC−C結合構造と
は、フェノールの重合が、酸素原子とベンゼン環との反
応で起こらずに、ベンゼン環同士の反応で起こり、結果
的にビフェニル構造が生じることを指す。オルト位分岐
やC−C結合構造が多くなると融点が低くなり、ついに
はPAOは融点を示さない非晶性樹脂となって、高融点
による超高耐熱性樹脂としての有用性を失う。
【0007】特公昭36−18692号公報および工業
化学雑誌,72 巻,10 号,106 (1969).では、3級アミンと
第一銅塩の触媒による酸化重合において、フェノールの
オルト位での反応を妨害するために嵩高い置換基を有す
る3級アミン(2,6−ジメチルピリジン等が示されて
いる。)を用いることが提案されている。しかし、この
方法で得られた重合体でも、C−C結合構造を含む上
に、オルト位分岐の抑制も十分ではなく、融点が観測さ
れない非晶性樹脂であるなど、PAOと呼べるものでは
なかった。
【0008】一方、Tetrahedron,23,2253 (1967). に4
−フェノキシフェノールを第一銅塩とN,N,N’,
N’−テトラエチルエチレンジアミン触媒により酸化重
合する例が示されているが、この方法で得られる重合体
も、オルト位分岐が多く、融点は観測されなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上述べたように、現
状の遷移金属錯体触媒を用いる酸化重合法ではオルト位
分岐やC−C結合構造が多く生成し、有用なポリマーは
得られていない。そこで現状の課題としては、融点を示
すことのできるPAOを製造することにある。即ち本発
明の目的は、C−C結合構造が生成せず、かつオルト位
の分岐も少ないという構造の制御された、融点を示す、
ポリ−1,4−フェニレンエーテルを製造する方法を提
供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】このような状況下にあっ
て、本研究者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行っ
た結果、特定の遷移金属錯体触媒の存在下に特定の原料
を用いる酸化重合法を見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0011】即ち本発明は、下記一般式(I)で表され
る遷移金属錯体触媒を用いて、下記一般式(II)で表さ
れる原料を酸化剤存在下で重合することを特徴とするポ
リ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法に係るもの
である。 (式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表
す。R1 は配位原子として窒素原子、リン原子、酸素原
子または硫黄原子を有する二官能性の有機基であり、全
てのR2 は同一でも異なっていてもよい。Xはカウンタ
ーアニオンであり、nはXの個数であって、Mの価数に
より決定される。) (式中、mは数平均ユニット数を表し、1<mであ
る。)
【0012】
【発明の実施の形態】次に本発明を詳細に説明する。 (1)遷移金属錯体触媒 本発明で使用する遷移金属錯体触媒は、下記一般式
(I)で表される遷移金属錯体である。 (式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表
す。R1 は配位原子として窒素原子、リン原子、酸素原
子または硫黄原子を有する二官能性有機基であり、全て
のR1 は同一でも異なっていてもよい。Xはカウンター
アニオンであり、nはXの個数であって、Mの価数によ
り決定される。)
【0013】本発明において配位子とは、化学大辞典
(第1版、東京化学同人、1989年)に記載の通り、
ある原子に配位結合で結合している分子またはイオンを
指す。結合に直接かかわっている原子を配位原子とい
う。三座配位子は配位原子数が3個の配位子である。か
かる遷移金属錯体が有する多座の配位子により、C−C
結合構造が無く、オルト位分岐の少ないポリマーを得る
のに適した、遷移金属原子まわりの環境が得られる。
【0014】上記一般式(I)においてMは、元素の周
期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)の
第4〜11族の遷移金属原子を含む残基であり、遷移金
属原子、または =O のごとき基の結合した遷移金属
原子等である。Mは好ましくは遷移金属原子である。該
遷移金属原子として好ましくは、第一遷移元素系列の遷
移金属原子であり、さらに好ましくはバナジウム、マン
ガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅である。特に好まし
くは銅原子である。該遷移金属原子の価数は、自然界に
通常存するものを適宜選択して使用することができ、例
えば銅の場合は1価または2価の銅を用いることができ
る。
【0015】上記一般式(I)のR1 は、配位原子とし
て窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子を有する
二官能性の有機基であり、すべてのR1 は同一でも異な
っていてもよい。かかる二官能性の有機基としては、窒
素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子を含有する基
で置換された二官能性の置換炭化水素基や、二官能性の
炭化水素基の一つの炭素原子を窒素原子、リン原子、酸
素原子又は硫黄原子で置換した基を例示することができ
る。窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子を含有
する基の例を挙げると、例えばアミノ基、イミノ基、ジ
アゾ基、ホスフィノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、
カルボニル基を含む基、メルカプト基、チオアルコキシ
基、チオカルボニル基を含む基や、ピリジン環、フラン
環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、
チアゾール環等の複素環骨格を有する基などである。
【0016】上記一般式(I)のR1 として好ましく
は、窒素原子、酸素原子を配位原子とする二官能性の有
機基であり、さらに好ましくは、窒素原子を配位原子と
する有機基である。
【0017】上記一般式(I)のXはカウンターアニオ
ンであり、nはXの個数であって、Mの価数により決定
される。かかるカウンターアニオンとしては特に限定は
ないが、通常ブレンステッド酸の共役塩基が使用され、
具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化
物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、
炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボーレー
トイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタン
スルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオ
ン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフル
オロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオ
ン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオ
ン、エトキサイドイオン等が挙げられる。
【0018】本発明の遷移金属錯体触媒として、さらに
好ましくは下記一般式(III)で表される遷移金属錯体が
挙げられる。 (式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表
す。R2 は炭化水素基または置換炭化水素基を表し、す
べてのR2 は同一でも異なっていてもよい。R3は二官
能性の炭化水素基または置換炭化水素基を表し、すべて
のR3 は同一でも異なっていてもよい。Xはカウンター
アニオンであり、nはXの個数であって、MとXの価数
により適宜決定される。)
【0019】上記一般式(III)におけるM、X、nは、
上記一般式(I)におけるM、X、nと同様である。
【0020】上記一般式(III)のR2 における炭化水素
基としては炭素原子数1〜20のアルキル基、アラルキ
ル基及びアリール基が好ましく、具体的にはメチル基、
エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−
ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル
基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル
基、オクチル基、デシル基、ベンジル基、2ーフェニル
エチル基、1ーフェニルエチル基、フェニル基、4ーt
ーブチルフェニル基、3,5ージメチルフェニル基、
3,5ージーtーブチルフェニル基、1ーナフチル基、
2ーナフチル基等が挙げられる。
【0021】上記一般式(III)のR2 における置換炭化
水素基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、二置換アミノ
基等で置換された炭化水素基であり、具体例としては、
トリフルオロメチル基、2−t−ブチルオキシエチル
基、3−ジフェニルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0022】上記一般式(III)のR2 としては、炭化水
素基が好ましく、炭素原子数1〜20のアルキル基及び
アラルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜20のア
ルキル基がさらに好ましい。
【0023】上記一般式(III)のR3 における二官能性
の炭化水素基としては、炭素原子数1〜20のアルキレ
ン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基が好まし
く、具体例としては、メチレン基、1,2−エチレン
基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、
2,4−ブチレン基、2,4−ジメチル−2,4−ブチ
レン基、1,2−ジフェニル−1,2−エチレン、1,
2−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン
基、1,2−フェニレン基、4,5−ジメチル−1,2
−フェニレン基、2,3−ナフチレン基等を挙げること
ができる。
【0024】上記一般式(III)のR3 における二官能性
の置換炭化水素基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、二
置換アミノ基等で置換された二官能性の置換炭化水素基
であり、具体例としては、1,1,2,2−テトラフル
オロ−1,2−エチレン基、4,5−ジメトキシ−1,
2−フェニレン基、4−ジメチルアミノ−1,2−フェ
ニレン基等を挙げることができる。
【0025】上記一般式(III)のR3 としては、二官能
性の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1〜20のアル
キレン基及びシクロアルキレン基がより好ましく、炭素
原子数1〜20のアルキレン基がさらに好ましい。
【0026】本発明の遷移金属錯体において、上記以外
の構造は、触媒能を失活させないならば特に限定される
ものではない。また本発明の遷移金属錯体触媒には、錯
体の原料、合成過程および/または酸化カップリング反
応過程で、溶媒などが配位していても良い。
【0027】本発明の遷移金属錯体は、例えば三座配位
子化合物と遷移金属化合物とを適当な溶媒中で混合する
方法等により合成することができる。該遷移金属化合物
としては、遷移金属のブレンステッド酸塩等が適宜用い
られる。三座配位子化合物としては、市販品を適宜用い
ることができるが、J. Chem. Soc. Dalton Trans., 83
(1993). や J. Am. Chem. Soc., 8865, 117(1995).等を
参考に合成することも可能である。該遷移金属錯体は、
あらかじめ合成された錯体を用いることができるが、反
応系中で錯体を形成させてもよい。
【0028】本発明においては、該触媒を単独でまたは
混合して使用することができる。本発明においては、該
触媒は任意の量で用いることができるが、一般的にはフ
ェノール性出発原料に対する遷移金属化合物の量として
0.01〜50モル%が好ましく、0.02〜10モル
%がより好ましい。
【0029】(2)フェノール性出発原料 本発明においては、フェノール性出発原料として、下記
一般式(II)で表される原料を用いる。 (式中、mは数平均ユニット数を表し、1<mであ
る。)
【0030】数平均ユニット数m=1の場合、つまりフ
ェノールのみから重合する場合には、たとえ特公昭36
−18692号公報および工業化学雑誌,72 巻,10 号,1
06 (1969) で提案されているようなフェノールのオルト
位での反応を妨害する触媒を用いても、得られる重合体
はC−C結合構造を含み、オルト位の分岐が多く、融点
が観測されないものとなり、有用なポリ−1,4−フェ
ニレンエーテルを製造することが不可能となる。
【0031】数平均ユニット数mが1より大きい場合の
具体例を挙げると、4−フェノキシフェノール、4−
(4−フェノキシフェノキシ)フェノール、4−{4−
(4−フェノキシフェノキシ)フェノキシ}フェノール
等の1,4−フェニレンエーテル構造ユニットを2以上
の整数個もつフェノール性化合物、及びこれらの化合物
とフェノールから選ばれる少なくとも2種以上の混合物
である。4−フェノキシフェノールは市販のものを入手
することができ、他の化合物は公知の方法により得るこ
とができる。例えばTetrahedron, 23, 2253 (1967). に
記載の方法を例示することができる。
【0032】数平均ユニット数mは、1.01≦m≦6
であることが好ましく、1.05≦m≦2であることが
より好ましい。フェノール性出発原料として、4−フェ
ノキシフェノールを用いることがさらに好ましい。
【0033】(3)酸化重合 本発明において、酸化剤は任意のものが使用されるが、
好ましくは酸素またはパーオキサイドが使用できる。酸
素は不活性ガスとの混合物であってもよく、空気でもよ
い。またパーオキサイドの例としては、過酸化水素、t
−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパー
オキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミル
パーオキサイド、過酢酸、過安息香酸等を示すことがで
きる。酸化剤としてさらに好ましくは酸素である。
【0034】本発明において、酸化剤の使用量に特に限
定はなく、酸素を用いる場合は、フェノール性出発原料
に対して通常、当量以上大過剰に使用する。パーオキサ
イドを用いる場合は、フェノール性出発原料に対して通
常、当量以上3当量以下を使用するが、当量以上2当量
以下を使用するのが好ましい。
【0035】本発明の反応は、反応溶媒の不在下でも実
施することは可能であるが、一般には溶媒を用いること
が望ましい。溶媒はフェノール性出発原料に対し不活性
でかつ反応温度において液体であれば、特に限定される
ものではない。好ましい溶媒の例を示すならば、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタ
ン、シクロヘキサン等の鎖状及び環状の脂肪族炭化水
素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタ
ン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニ
トリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、n−
プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等の
アルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチ
レングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,
N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の
アミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化
合物類;水等が挙げられる。これらは単独あるいは混合
物として使用される。
【0036】該溶媒を用いる場合は、フェノール性出発
原料の濃度が好ましくは0.5〜50重量%、より好ま
しくは1〜30重量%になるような割合で使用される。
【0037】該遷移金属錯体が、カウンターイオンとし
て、フェノールよりも強い酸の共役塩基を有する場合に
は、該遷移金属錯体触媒を不活性化しない塩基を、カウ
ンターイオンと当量以上、重合時に共存させることが好
ましい。かかる塩基の例としては、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、酸化カルシウム、ナトリウムメトキサ
イド、ナトリウムエトキサイド等のアルカリ金属または
アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、アルコキサイド
類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブ
チルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のア
ミン類;ピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ジメ
チルピリジン、2,6−ジフェニルピリジン等のピリジ
ン類が挙げられる。通常よく使用されるのはアミン類、
ピリジン類である。
【0038】本発明を実施する反応温度は、反応媒体が
液状を保つ範囲であれば特に制限はない。溶媒を用いな
い場合はフェノール性出発原料の融点以上の温度が必要
である。好ましい温度範囲は0℃〜180℃であり、よ
り好ましくは0℃〜150℃である。
【0039】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を
限定されるものではない。
【0040】フェノール性出発原料の転化率(Conv.
): 内部標準物質としてジフェニルエーテルを含む
反応混合物15mgをサンプリングし、濃塩酸を若干量
加えて酸性とし、メタノール2gを加え、測定サンプル
とした。このサンプルを、高速液体クロマトグラフィー
(ポンプ:ウォーターズ社製600Eシステム、検出
器:ウォーターズ社製UV/VIS−486、検出波
長:278nm、カラム:YMC社製ODS−AM、展
開溶媒:メタノール/水=50:50よりスタートして
25分後に100/0となるよう変化させ、その後45
分まで保持)により分析し、ジフェニルエーテルを内部
標準物質として定量した。
【0041】重合体の赤外吸収スペクトル分析およびピ
ーク面積定量: パーキンエルマー社製1600赤外分
光光度計(KBr法)を用いて測定した。ピーク面積の
定量は解析ソフト(パーキンエルマー社製GRAMS
Analyst 1600)を用いて行った。
【0042】重合体のC−C結合構造量(C-C/C-O ):
赤外吸収スペクトルについて、C−C結合構造ピーク
面積を996〜1004cm-1の面積とし、C−O結合
構造ピーク面積を996〜1018cm-1の面積からC
−C結合構造ピーク面積を差し引いた値とした。重合体
のC−C結合量の目安として、C−C結合構造ピーク面
積/C−O結合構造ピーク面積により求めた値(C-C/C-
O )を用いた。なお、C−C結合構造ピークが観測され
ない場合は、N.D.と記した。
【0043】重合体のオルト位分岐量(o/p ): 赤外
吸収スペクトルについて、オルト位分岐ピーク面積を9
60〜986cm-1の面積とした。重合体のオルト位分
岐量の目安として、オルト位分岐ピーク面積/パラ位連
結C−O結合構造ピーク面積により求めた値(o/p )を
用いた。
【0044】重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分
子量(Mw): ゲルパーミエーションクロマトグラフィ
ー(ポンプ:ウォーターズ社製600Eシステム、検出
器:ウォーターズ社製UV/VIS−484、検出波
長:254nm、カラム:ウォーターズ社製Ultrastyra
gel Linear=2本+1000A=1本+100A=1
本、展開溶媒:クロロホルム)により分析し、標準ポリ
スチレン換算値として重量平均分子量(Mw)と数平均
分子量(Mn)を測定した。
【0045】重合体の融点: 窒素雰囲気下の熱分析
(島津社製DSC−50)で、まず10℃/minで室温か
ら300℃まで昇温し(1st scan)、次に−10℃/min
で300℃から室温まで降温し、再び10℃/minで室温
から350℃まで昇温した(2nd scan)。2nd scanにお
いて、100℃以上で10J/g以上の吸熱ピークにつ
いて、最高温のピーク温度を融点とした。
【0046】参考例1 本実施例に用いた遷移金属錯体触媒は、J. Chem. Soc.
Dalton Trans., 83(1993).を参照し合成した。即ち、
1,4,7−トリアザシクロノナンをトルエン中、水酸
化カリウム存在下、80〜90℃で臭化イソプロピルと
反応させ、次いで過塩素酸ナトリウムを加えて1,4,
7−トリイソプロピル−1,4,7−トリアザシクロノ
ナンの過塩素酸塩の結晶を得た。該過塩素酸塩、0.3
gをトルエン中で水酸化カリウムを用いて中和処理した
後、溶媒を真空下留去した。この中にアセトン15m
L、CuCl2 ・2H2 Oを0.15g(配位子の過塩
素酸塩に対し当量)と塩化メチレンを20mLいれて、
室温で1時間撹拌した。反応終了後、真空下溶媒を留去
し、塩化メチレン/テトラヒドロフラン混合溶媒にとか
し、ろ過脱塩した後、更に溶媒を真空下留去し、オクタ
ン/塩化メチレンから再結晶して、下記構造式の錯体
(以降、Cu(tacn)と記すことがある。)を得た。
【0047】実施例1 電磁撹拌機を備えた25ml二つ口丸底フラスコに、酸
素を充填したゴム風船を取付け、フラスコ内を酸素に置
換した。これに、Cu(tacn)0.020mmolを入れ、
4−フェノキシフェノール(4-PhOPhOH )0.4mmo
lと、塩基として2,6−ジフェニルピリジン(Ph2Py
)0.20mmolをトルエン(PhMe)0.8gに溶
解したものを加えた。内容物を攪拌しながら、フラスコ
を40℃のウォーターバスで19時間保温した。反応終
了後、濃塩酸数滴を加えて酸性にした後、メタノール2
0mlを加え、沈殿した重合体を濾取した。メタノール
10mlで3回洗浄し、100℃で5時間減圧乾燥した
後、白色の重合体を得た。この重合体の分析結果を表1
に示し、赤外吸収スペクトルを図1に示す。
【0048】比較例1〜3 フェノール性出発原料、触媒、溶媒、塩基、反応温度、
反応時間を表1に示すように変えた以外は、実施例1と
同様にして重合体を得た。表1に結果を示す。また、比
較例1の赤外吸収スペクトルを図2に示す。なお、PhOH
はフェノール、CuClは塩化第一銅、Me2Py は2,6−ジ
メチルピリジン、teedはN,N,N’,N’−テトラエ
チルエチレンジアミン、PhNO2 はニトロベンゼンを表
す。
【0049】重合体の融点について、実施例1の重合体
は171℃に融点を有していたが、比較例1〜3の重合
体は融点が観測されなかった。また、重合体の着色も、
本実施例で得られたものはほぼ白色に近いが、本比較例
で得られたものは褐色を帯びていた。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の特定のフ
ェノール性出発原料を使用し、かつ本発明の触媒を用い
た酸化重合方法によって、C−C結合構造がなく、オル
ト位の分岐も少なく、融点を有し、着色の少ないポリ−
1,4−フェニレンエーテルを高収率で、経済的に製造
でき、本発明の工業的価値はすこぶる大である。また、
本法で得られる重合体は、C−C結合構造が生成してい
ないことから、架橋構造がないと考えられ、機械特性等
の改善も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の重合体の赤外吸収スペクトル。
【図2】 比較例1の重合体の赤外吸収スペクトル。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式(I)で表される遷移金属錯体
    触媒を用いて、下記一般式(II)で表される原料を酸化
    剤存在下で重合することを特徴とするポリ−1,4−フ
    ェニレンエーテルの製造方法。 (式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表
    す。R1 は配位原子として窒素原子、リン原子、酸素原
    子または硫黄原子を有する二官能性の有機基であり、全
    てのR1 は同一でも異なっていてもよい。Xはカウンタ
    ーアニオンであり、nはXの個数であって、Mの価数に
    より決定される。) (式中、mは数平均ユニット数を表し、1<mであ
    る。)
  2. 【請求項2】配位原子が窒素原子または酸素原子である
    ことを特徴とする請求項1記載のポリ−1,4−フェニ
    レンエーテルの製造方法。
  3. 【請求項3】遷移金属錯体が、下記一般式(III)で表さ
    れることを特徴とする請求項1記載のポリ−1,4−フ
    ェニレンエーテルの製造方法。 (式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表
    す。R2 は炭化水素基または置換炭化水素基を表し、す
    べてのR2 は同一でも異なっていてもよい。R3は二官
    能性の炭化水素基または置換炭化水素基を表し、すべて
    のR3 は同一でも異なっていてもよい。Xはカウンター
    アニオンであり、nはXの個数であって、MとXの価数
    により適宜決定される。)
  4. 【請求項4】Mが、第一遷移金属系列の遷移金属原子で
    あることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の
    ポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
  5. 【請求項5】数平均ユニット数mが、1.01≦m≦6
    であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載
    のポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
  6. 【請求項6】酸化剤が、酸素又はパーオキサイドである
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ
    −1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
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