JPH1043864A - ガスシールドアーク溶接用ノズル装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】開先が狭い場合でもその底部の奥深い位置まで
ノズルを挿入することができ、それによりアークの安定
性の向上、溶け込み性の向上、ビード外観の向上、スパ
ッタ発生の低減、ガスシールド効果の向上によるブロー
ホール発生防止等が有効的に図れ、さらに作業性向上等
も図れるガスシールドアーク溶接用ノズル装置を提供す
る。 【解決手段】シールドガスおよび溶接ワイヤ送給用ホー
ス２の先端に、円筒状のシールドガス噴射用ノズル１１
を連結し、このノズルの中心位置に配置した溶接ワイヤ
９を当該ノズルの先端から外方に突出させてなるガスシ
ールドアーク溶接用ノズル装置１において、ノズルの先
端側の断面積を基端側の断面積よりも小さく設定した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明が属する技術分野】本発明はガスシールドアーク
溶接の技術に係るものであり、特に被溶接物の開先の奥
深い位置まで挿入できるガスシールドアーク溶接用ノズ
ル装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ガスシールドアーク溶接は、溶接ワイヤ
の周囲に炭酸ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを噴出
してガスシールドを行うことにより、溶接部の酸化防止
を図って欠陥のない溶接を行う技術であり、角継手溶接
や突合せ溶接をはじめ、各種の継手溶接に広く適用さ
れ、かつ自動溶接、半自動溶接、手動溶接等の各種溶接
方法の施工に利用されている。

【０００３】このガスシールドアーク溶接で使用される
ノズル装置は、一般にシールドガスおよび溶接ワイヤ送
給用ホースの先端に、円筒状のシールドガス噴射用ノズ
ルを連結し、このノズルの中心位置に配置した溶接ワイ
ヤを当該ノズルの先端から外方に突出させる構成とされ
ている。

【０００４】そして従来では、このガスシールドアーク
溶接用ノズル装置のノズルが直径略１８mm程度の定径円
筒状とされており、例えば鉄骨柱の構成材とされる板厚
８５mm等の厚肉板材の溶接の場合には、Ｖ形に形成され
た開先の底部約１／３程度の部分の肉盛り溶接用として
適用されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上述した従
来のノズル装置では、ノズル全体が直径１８mm程度の定
径円筒状をなしていることから、開先の角度が比較的小
さい場合にはノズルが底部まで挿入できずに途中で開先
面に接触した状態となる場合がある。

【０００６】この場合には溶接ワイヤをノズル先端から
大きく突出せざるを得ないことになり、種々の問題が生
じる。例えば、アークの安定性が悪い、溶け込み不足が
生じる（ワイヤ突出長さが長いと溶接電流が低下するた
め）、ビードの外観が悪い、スパッタ発生が増加する、
ガスシールド効果が悪く、ブローホールの欠陥が生じる
ことがある、等である。

【０００７】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
もので、その目的とするところは、開先が狭い場合でも
その底部の奥深い位置までノズルを挿入することがで
き、それによりアークの安定性の向上、溶け込み性の向
上、ビード外観の向上、スパッタ発生の低減、ガスシー
ルド効果の向上によるブローホール発生防止等が有効的
に図れ、さらに作業性向上等も図れるガスシールドアー
ク溶接用ノズル装置を提供することにある。

【０００８】また、本発明の他の目的は、ノズル部の向
きを支持部あるいは把手部に対して自由に調整すること
ができ、それにより自動、半自動、手動等の溶接時にお
ける方向や姿勢を任意に選ぶことができるガスシールド
アーク溶接用ノズル装置を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めに、請求項１の発明は、シールドガスおよび溶接ワイ
ヤ送給用ホースの先端に、円筒状のシールドガス噴射用
ノズルを連結し、このノズルの中心位置に配置した溶接
ワイヤを当該ノズルの先端から外方に突出させてなるガ
スシールドアーク溶接用ノズル装置において、前記ノズ
ルの先端側の断面積を基端側の断面積よりも小さく設定
したことを特徴とする。

【００１０】請求項２の発明は、シールドガスおよび溶
接ワイヤ送給用ホースの先端に、円筒状のシールドガス
噴射用ノズルを連結し、このノズルの中心位置に配置し
た溶接ワイヤを当該ノズルの先端から外方に突出させて
なるガスシールドアーク溶接用ノズル装置において、前
記ノズルの先端側を一定長さに亘って偏平な形状とした
ことを特徴とする。

【００１１】請求項３の発明は、請求項２記載のガスシ
ールドアーク溶接用ノズル装置において、シールドガス
および溶接ワイヤ送給用ホースの先端に対し、ノズルを
その軸心回りで回動位置調整可能または着脱可能とした
ことを特徴とする。

【００１２】請求項４の発明は、請求項３記載のガスシ
ールドアーク溶接用ノズル装置において、シールドガス
および溶接ワイヤ送給用ホースの先端に、ノズルの基端
部を嵌合するノズル連結用の円筒状のホルダを設けると
ともに、このホルダの外周側に回転自在な締め付けナッ
トを配置し、かつ前記ノズルの基端部側の外周面に前記
締め付けナットと螺合するねじ部を形成したことを特徴
とする。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係るガスシールド
アーク溶接用ノズル装置の一実施形態について図面を参
照して説明する。なお、本実施形態は半自動溶接に適用
したものである。

【００１４】図１は本実施形態によるガスシールドアー
ク溶接用ノズル装置の全体構成を示す斜視図であり、図
２は要部の断面図であり、図３はノズル端面形状を示す
側面図である。

【００１５】図１および図２に示すように、本実施形態
のノズル装置１は、シールドガスおよび溶接ワイヤ送給
用ホース２の先端に、支持部（把手部）３および先端チ
ューブ４を介して取付けられている。先端チューブ４に
は、連結筒５および雄ねじ部６を介してガス吹出しチュ
ーブ７および溶接ワイヤ支持筒８が連結されており、ガ
ス吹出しチューブ７にはガス噴出孔７ａが穿設され、溶
接ワイヤ支持筒８からは溶接ワイヤ９が所定長さ突出し
ている。

【００１６】ノズル装置１は、連結筒５の先端の雄ねじ
部６に螺合されてガス吹出しチューブ７を覆う円筒状の
ホルダ１０と、このホルダ１０の先端に連結されて溶接
ワイヤ支持筒８および溶接ワイヤ９を覆うシールドガス
噴射用ノズル１１とを有する構成となっており、これら
のホルダ１０とノズル１１とが締め付けナット１２によ
って連結されている。このようにして、ノズル１１の中
心位置に溶接ワイヤ９が配置されて、ノズル２の先端か
ら外方に突出する構成となっている。

【００１７】詳述すると、ホルダ１０は、一端側がホー
ス２側に連結固定されるホース連結部１０ａとされ、他
端側がノズル１１の基端部内に嵌入されるノズル連結部
１０ｂとされている。このノズル連結部１０ｂの外周面
側に、先端開口部から一定距離離間した配置でリング状
のノズルストッパ１３が嵌合固定されている。

【００１８】締め付けナット１２は、ノズルストッパ１
３よりも大径な筒状部１２ａと、この筒状部１２ａの一
端側に一体に連設されたフランジ部１２ｂとからなるも
のであり、筒状部１２ａの内周面側に雌ねじ１４が形成
されるとともに、フランジ部１２ｂの中央にはホルダ１
０の胴部外径よりも大径な円形孔１５が開けられてい
る。そして、この締め付けナット１２が、ホルダ１０の
基端側から胴部外周側に被嵌されて回転自在な状態で保
持されるとともに、この締め付けナット１２の筒状部１
２ａがノズルストッパ１３の外周側から突出した状態と
なっている。

【００１９】ノズル１１は、円筒状の基端部１１ａと、
この基端部１１ａに一体に連設された偏平な筒形状、例
えば断面長円形または楕円形状の先端部１１ｂとから構
成されている。すなわち、偏平な先端部１１ｂの短径側
の外周側厚さ寸法ａは、基端部の外径ｂに比較して約半
分程度に小さく設定されている。例えばｂが１８mmの場
合、ａが１０mm程度とされている。このノズル１１の基
端側部１１ａの内周側に凹状の段部１６が形成され、こ
の段部がホルダ１０の先端部１０ｂに回転自在に被嵌さ
れている。またノズル１１の基端側部１１ａの外周側に
雄ねじ１７が形成され、この雄ねじ１７に締め付けナッ
ト１２の雌ねじ１４が螺合し、これらの締め付けにより
ノズル１１がホルダ１０に固定されている。

【００２０】次に図４および図５を使用して作用を説明
する。図４は溶接状態を例示した作用説明図であり、図
５は溶接部を詳細に示す拡大図である。

【００２１】本実施形態のノズル装置１を使用して溶接
を行う場合には、図４に示すように、被溶接材１８のＶ
形の開先１９に、ノズル１１の先端部の偏平形状が開先
１９と平行となるように挿入し、このノズル１１から突
出した溶接ワイヤ９によってアーク溶接を行うととも
に、ノズル１１から噴出するシールドガスによってアー
クのシールドを行うものである。

【００２２】この場合において、本実施形態のノズル装
置によると、図５に示すように、ノズル１１の先端部１
１ｂが偏平筒状に構成されて幅狭とされているため、開
先が狭い角度θで開口するものであっても、その開先１
９の底部の深い位置まで挿入することができ、溶接ワイ
ヤ９の突出長さＬを余計に大きくする必要なく溶接する
することができる。したがって、ワイヤ９の突出長さが
短いため溶接電流が十分に得られて溶接電流の低下がな
く、アークの安定性がよくなるとともに、溶け込みが良
好に行われ、良好な外観のビードが得られる。しかも、
スパッタ発生が抑制でき、ガスシールド効果が良好にな
り、ブローホールの欠陥等の発生も防止することができ
る。さらに、ノズル１１の先端部１１ｂが偏平形状であ
るために、溶接カ所が観察し易く、溶接操作が確実に行
える利点もある。

【００２３】また、本実施形態において、ノズル１１の
先端部１１ｂの偏平面の向きは、そのノズル１１を軸心
回りで回転させることで調整することができる。すなわ
ち、ノズル１１の基端部１１ａのホルダ１０に対する嵌
合時に回転角度を任意に設定し、その状態で締め付けナ
ット１２を締め付ければ、所望の方向にノズル１１の偏
平面を向けることができる。このことは、把手部３を、
図４に示すように開先１９と直交する方向に配置して、
いわば横向きに進めて溶接を行う選択と、図示しない
が、開先１９と平行な方向に把手部３を配していわば縦
向きに進めて溶接を行う選択等とが任意に行えるもので
ある。これにより、操作者の好みあるいは必要に応じ
て、ノズル１１の向きを設定して、最良の方法による溶
接作業が行えるという利点を得られるものである。

【００２４】なお、以上の実施形態では、ノズル１１と
ホルダ１０とを分離して構成したが、本発明のノズル装
置はこれに限らず、図示しないがノズルとホルダとを一
体に構成してもよい。その場合には向き調整がホースに
対する捩り動作によって行う必要があるが、この場合に
おいても本発明の本旨であるノズルを開先の深い位置ま
で挿入する趣旨は全うできるものである。

【００２５】また、前記実施形態では、ノズル１１の先
端部１１ｂを偏平に構成したが、本発明ではこれに限ら
ず、断面が真円の状態で先端部１１ｂの径を基端部１１
ａに比して縮小させた形状とすることも可能である。こ
のような構成でも前記実施形態と略同様の作用効果が奏
されるものである。

【００２６】

【発明の効果】以上で詳述したように、本発明に係るガ
スシールドアーク溶接用ノズル装置によれば、開先が狭
い場合でも、その底部の奥深い位置までノズルを挿入す
ることができ、それによりアークの安定性向上、溶け込
み性の向上、ビードの外観向上、スパッタ発生の低減、
ガスシールド効果の向上によるブローホールの欠陥発生
の防止等が有効的に図れ、さらに作業性向上等も図れ
る。

【００２７】また、ノズル部の向きを支持部あるいは把
手部に対して自由に調整することができ、それにより自
動、半自動、手動等の溶接時における方向や姿勢を任意
に選ぶことができるという優れた効果が奏される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のノズル装置の一実施形態を示す全体斜
視図。

【図２】同実施形態の要部を示す断面図。

【図３】同実施形態のノズル先端形状を示す側面図。

【図４】同実施形態の使用状態を示す説明図。

【図５】同実施形態の溶接状態を詳細に示す拡大説明
図。

【符号の説明】

１ ノズル装置 ２ ホース ３ 支持部（把手部） ４ 先端チューブ ５ 連結筒 ６ 雄ねじ部 ７ ガス吹出しチューブ ８ 溶接ワイヤ支持筒 ９ 溶接ワイヤ １０ ホルダ １１ ノズル １２ 締め付けナット １３ ノズルストッパ １４ 雌ねじ １５ 円形孔 １６ 段部 １７ 雄ねじ １８ 被溶接材 １９ 開先

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シールドガスおよび溶接ワイヤ送給用ホ
   ースの先端に、円筒状のシールドガス噴射用ノズルを連
   結し、このノズルの中心位置に配置した溶接ワイヤを当
   該ノズルの先端から外方に突出させてなるガスシールド
   アーク溶接用ノズル装置において、前記ノズルの先端側
   の断面積を基端側の断面積よりも小さく設定したことを
   特徴とするガスシールドアーク溶接用ノズル装置。
2. 【請求項２】 シールドガスおよび溶接ワイヤ送給用ホ
   ースの先端に、円筒状のシールドガス噴射用ノズルを連
   結し、このノズルの中心位置に配置した溶接ワイヤを当
   該ノズルの先端から外方に突出させてなるガスシールド
   アーク溶接用ノズル装置において、前記ノズルの先端側
   を一定長さに亘って偏平な形状としたことを特徴とする
   ガスシールドアーク溶接用ノズル装置。
3. 【請求項３】 請求項２記載のガスシールドアーク溶接
   用ノズル装置において、シールドガスおよび溶接ワイヤ
   送給用ホースの先端に対し、ノズルをその軸心回りで回
   動位置調整可能または着脱可能としたことを特徴とする
   ガスシールドアーク溶接用ノズル装置。
4. 【請求項４】 請求項３記載のガスシールドアーク溶接
   用ノズル装置において、シールドガスおよび溶接ワイヤ
   送給用ホースの先端に、ノズルの基端部を嵌合するノズ
   ル連結用の円筒状のホルダを設けるとともに、このホル
   ダの外周側に回転自在な締め付けナットを配置し、かつ
   前記ノズルの基端部側の外周面に前記締め付けナットと
   螺合するねじ部を形成したことを特徴とするガスシール
   ドアーク溶接用ノズル装置。