JPH10316767A - セルロースとアクリル系重合体とのブレンド成形体及びその製造方法 - Google Patents

セルロースとアクリル系重合体とのブレンド成形体及びその製造方法

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JPH10316767A
JPH10316767A JP12546997A JP12546997A JPH10316767A JP H10316767 A JPH10316767 A JP H10316767A JP 12546997 A JP12546997 A JP 12546997A JP 12546997 A JP12546997 A JP 12546997A JP H10316767 A JPH10316767 A JP H10316767A
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cellulose
acrylic polymer
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aqueous solution
blend
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JP12546997A
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Yoshihiko Shimatani
芳彦 嶌谷
Makiko Hattori
真貴子 服部
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性が改良された、かつアクリル繊維に
類似した柔らかさとぬめり感を有するセルロース素材お
よびその製造方法の提供。 【解決手段】 60〜97重量%のセルロースと40〜
3重量%のアクリル系重合体とからなり、かつアクリル
系重合体が平均粒子径10〜40nmでセルロースのマ
トリクス相に相分散し、しかも表面から100nm以下
の厚さにアクリル系重合体密度が高い層が形成されてな
るセルロースとアクリル系重合体とのブレンド成形体お
よびその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セルロースとアク
リル系重合体とのブレンド成形体及びその製造方法に関
する。更に詳しくは、繊維、膜、フィルム状物に利用可
能なセルロースとアクリル系重合体とを混合してなる成
形体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】セルロースは、木材や綿などのように本
来の姿で使用される外に、加工されて紙、繊維および誘
導体等の用途を中心に広範囲に多量に使用されている。
セルロース素材の特徴は、生分解性があり、再利用可能
であること(リサイクル性)、積層や複合させることに
より多様な形状に賦形できるため構造材等に使用できる
ことにある。
【0003】一方、セルロースは、難溶性で、かつ熱可
塑性に乏しいため原料段階で他の合成高分子との混合
(ポリマーブレンド)が難しく、また成形方法も限定さ
れるという課題がある。従って、セルロースと他の合成
高分子とを混合し新しい機能を付与した高分子素材を作
ることは、需要はあるが極めて難しい。これに対し、溶
媒に対する溶解性が向上したセルロース誘導体と合成高
分子とのブレンド物は数多くある。例えば、特開平2−
99609号公報では、酢酸セルロースを10〜50重
量%含むアクリル系繊維を、また、特開平3−2348
08号公報では、酢酸セルロースを30〜5重量%含む
アクリル系繊維の製造法について記述されている。
【0004】また、一方、セルロースそのものを溶解す
る溶媒の代表例としては、銅アンモニア水溶液(シュバ
イツァー試薬)、カドキセン、濃厚酸水溶液等がある
が、これらの溶媒は実用的には他の合成高分子を溶解さ
せない。また、1970年代以降を中心に、数多くの有
機溶媒からなるセルロース溶媒系が発見、考案された。
これらの有機溶媒系セルロース溶媒群の中には、特定の
合成高分子を単独で溶解させうるものも数多くあるが、
セルロースとそれらの合成高分子が高濃度で共存した状
態で実用的な溶解能力を持つものは殆どない。例えば、
ジメチルアセトアミド(DMAc)/塩化リチウム系溶
媒は、セルロース、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポ
リマー等をそれぞれ溶解できる。しかし、セルロースの
完全溶解には溶媒置換等のセルロースの活性化処理等が
必要で、実用的なホポリマー濃度の溶液を得るには長時
間を要する。例えば、アクリル系ポリマーに限定する
と、Polymer,28,P.1385−1390
(1987)には、全体のポリマー濃度が約1.5重量
%以下であればアクリル系ポリマーと任意の割合で混合
できることが示されているが、溶解させ得るポリマー濃
度が低くかつセルロースの溶解に1週間以上を要するた
め工業的な実用性は殆どない。また、特開昭56−53
145号公報には、ジメチルスルフォキシド(DMS
O)/パラフォルムアミド(PF)系セルロース溶媒に
よるアクリル系共重合体との混合物の記載があるが、こ
の場合セルロース濃度が半分以上を占める領域では満足
な混合物が得られていない。更にこの溶媒系は、セルロ
ースを誘導体化させて溶解していると推定され、その為
PFの回収が困難であるという問題点を含む。
【0005】ところで、セルロースと合成高分子を混合
することにより改良が期待される性能としては、繊維の
場合、湿潤特性(ぬれたり、洗濯するとシワになる、寸
法変化が起こる等)、染色性(濃色染色ができない、染
色堅牢度が悪い)、耐摩耗性(フィブリル化し易い)等
がある。特に、ポリマーブレンド法を用いると、上記の
特性の向上と共にシャリ感や吸水・吸湿性を持つセルロ
ース素材にブレンドされた合成高分子の特性と風合いも
付与できる長所がある。
【0006】しかし、上述したような溶解性等の困難さ
のために、ポリマーブレンド法によるセルロース素材の
改良に成功した例は殆どない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、セル
ロースの耐摩耗性が改良され、かつアクリル系重合体の
持つ柔らかい風合いを有する、繊維状またはフィルム状
のセルロースとアクリル系重合とが混合された成形体を
提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、セルロー
ス成形体の改質を目的としてポリマーブレンド法に着目
し、種々のセルロースポリマーブレンド系を検討し、本
発明に到達した。すなわち、本発明は、60〜97重量
%のセルロースと40〜3重量%のアクリル系重合体と
からなり、かつ平均粒子径10〜40nmのアクリル系
重合体粒子がセルロースのマトリクス相に分散し、しか
も表面から100nm以下の外層部に高密度で偏在して
いるセルロースとアクリル系重合体とのブレンド成形
体、である。
【0009】また、本発明は、セルロースとアクリル系
重合体とを49〜63重量%のチオシアン酸カルシウム
水溶液または50〜65重量%のチオシアン酸ナトリウ
ム水溶液に溶解してなるブレンド溶液であり、かつその
溶液中のセルロースとアクリル系重合体との重量混合比
率が60〜97:40〜3である溶液を成型用ノズルか
ら吐出させ、一旦エアーギャップ部を通過させ、次いで
40℃以下の温度のアルコールまたはケトンまたは70
重量%以上のアルコール水溶液または70重量%以上の
ケトン水溶液中に導くことにより、ゲル化および凝固さ
せることを特徴とするセルロースとアクリル系重合体と
のブレンド成形体の製造方法、である。
【0010】まず、本発明のセルロースとアクリル系重
合体とのブレンド成形体(以下、単にブレンド成形体)
について説明する。本発明に使用するセルロースは、効
果的にゲル化させるため、重合度は300以上であるこ
とが好ましい。重合度が300以上であれば、特に限定
されないが、木材セルロースの場合には溶解グレード
(Dissolving Plup)のもの、コットン
セルロースの場合には重合度を1500以下に調整した
ものが好適である。
【0011】本発明に使用するアクリル系重合体は、ア
クリロニトリルを主成分とした重合体であり、特にアク
リル繊維の製造用重合体が分子量、組成及び汎用性の点
から好ましく用いることができる。本発明では耐摩耗性
の評価は、繊維状に成形した本発明のブレンド成形体の
試料と同じ製法で作った同重量のセルロース単独の繊維
試料とを、別々に、希硫酸水溶液中で加水分解した後水
を分散媒体にしてミキサーで撹拌した後の試料の破壊状
態を相対比較することにより行った。アクリル系重合体
の含有量の異なる試料間の比較も上述の方法で相対比較
した。
【0012】また、風合いの評価は、繊維状に成形した
本発明のブレンド成形体を用いて、アクリル系重合体繊
維に特有でセルロース繊維にはないぬめり感を主判定項
目として手触りによる官能評価により行った。本発明で
は、アクリル系重合体の含有量は3〜40重量%(以
下、単に%と略記する)であることが必要である。3%
未満の場合、アクリル系重合体の風合いの付与と耐摩耗
性の改良の効果に乏しい。また、40%を越えると、後
に具体例により詳述するが、成形体が脆く強靱性に乏し
くなり実用的ではない。本発明では、後述する本発明の
溶媒を用いると、セルロースとアクリル系重合体とをセ
ルロースとアクリル系重合体との重量混合比率が20〜
99:80〜1の範囲で任意に溶解させ得るが、アクリ
ル系重合体の含有量が増えるとセルロースのゲル化能が
弱くなり、セルロースのマトリクスを効果的に形成せず
に、セルロースの凝固が進み、凝固体は脆い物しか得ら
れない。そのため実用的な強靱性を成形体に持たせるた
めにはアクリル系重合体の含有量には上限がある。
【0013】本発明のブレンド成形体は、セルロース分
子鎖の網目状マトリクス(海)相にアクリル系重合体の
一部が平均粒子径が10〜40nmの微細なアクリル系
重合体粒子の島相として分散している成形体である。ア
クリル系重合体の粒子径は概ね5〜15nmの標準偏差
を持つ。本発明者らは、このような構造がセルロース成
形体固有の力学物性を損なわずに耐摩耗性を向上させる
効果があることを見出した。単独では衝撃や摩耗により
フィブリル化しやすかったセルロース成形体は、セルロ
ースに比べて柔らかく可塑性の高いアクリル系重合体粒
子が微分散しているために、割断や切り欠き(クラッ
ク)を起こしにくくなり耐摩耗性が向上する効果が発現
するものと推定される。
【0014】上記に加えて、本発明のブレンド成形体
は、10〜40nmのアクリル系重合体の粒子が表面か
ら厚さ100nm以下の外層部に内層部よりもより高密
度で偏在する構造体である。本発明のブレンド成形体
は、構造体として巨視的にはアクリル系重合体の微粒子
が均一に分散しているものであるが、外層部は内層部に
比較してアクリル系重合体の密度が高く、高密度で偏在
する。透過型電子顕微鏡の検鏡では、100nm以内に
アクリル系重合体粒子が外層部(表層)から内層部に向
かって積層した構造が観察される。
【0015】本発明ら等は、上述した表層にアクリル系
重合体密度の高い2層構造を採らせることにより、アク
リル系重合体の含有量が必要最低限で耐摩耗性を向上さ
せ、加えて効率的にアクリル系重合体の風合いが付与さ
れたブレンド成形体が得られる技術を考案することがで
きた。また、本発明のブレンド成形体は、X線(CuK
α線)構造的には、回折角(2θ)が12.0、19.
8、22.1度付近にセルロースの結晶回折ピークが、
16.8度にアクリル系重合体の結晶回折ピークが観察
される。また、電子顕微鏡による観察では、粒子状に観
察されるアクリル系重合体相が全体に占める割合(面積
比)はブレンドした比率よりも一般に小さい。
【0016】従って、本発明のブレンド成形体は、セル
ロースとアクリル系重合体が相溶した相と、セルロース
相とアクリル系重合体相が各々独立に結晶相を形成した
構造からなると推定される。本発明のブレンド成形体
は、アクリル系重合体の混合比が高いとアクリル繊維の
染色に使用されるカチオン染料で濃色染色が可能であ
る。
【0017】なお、耐摩耗性の向上効果のみを目的とし
た場合には、アクリル系重合体の含有量は3〜10%程
度あれば十分である。さらにより積極的にアクリル系重
合体の風合いを付与したい場合には、40%を上限に適
宜アクリル系重合体の含有量を増加させることが好まし
い。アクリル系重合体の含有量が約10%以上では、官
能評価に携わったほぼ全員(5人)がぬめり感を感じる
程度であった。
【0018】次に、本発明のブレンド成形体の製造方法
を説明する。本発明では、セルロースとアクリル系重合
体とを混合して溶解する溶媒として49〜63重量%の
チオシアン酸カルシウム水溶液または50〜65重量%
のチオシアン酸ナトリウム水溶液を用いる。49重量%
未満のチオシアン酸カルシウム水溶液および50重量%
未満のチオシアン酸ナトリウム水溶液ではセルロースの
溶解能力がほとんど無く、一方、63重量%を超えるチ
オシアン酸カルシウム水溶液および65重量%を超える
チオシアン酸ナトリウム水溶液ではセルロースの溶解力
はあるが溶媒自身の粘度が高くなりすぎて溶解速度が小
さい。
【0019】当該濃度範囲であれば当該溶媒はセルロー
スとアクリル系重合体とをセルロースとアクリル系重合
体との重量混合比率が20〜99:80〜1の範囲で任
意に溶解できる。ただし、チオシアン酸ナトリウム水溶
液は天然セルロースを溶解できないので、この溶媒を用
いるときは、セルロースは水和セルロースの結晶構造を
持つものでなければならない。
【0020】セルロースとアクリル系重合体とを溶解し
た溶液(ドープ)を得る方法は、セルロースとアクリル
系重合体とを別々に当該チオシアン酸塩水溶液に溶解し
た溶液を所定の比率で混合しアクリル系重合体の含有量
を調整するか、もしくはセルロースを溶解した溶液に1
00℃以上でアクリル系重合体粉体を徐々に撹拌投入す
る方法が好ましい。
【0021】何故ならば、チオシアン酸塩水溶液は両高
分子を溶解可能な温度が異なる。また、セルロースとア
クリル系重合体の粉体を直接混合して溶解するとアクリ
ル系重合体が先に溶解するため、溶液の粘度が上昇して
セルロースの結晶内部に溶媒が進入しにくくなり溶け残
りを生じやすく、かつブレンドドープの調製に時間を要
するからである。同溶媒がセルロースを溶解する好適な
温度は100〜135℃であり、アクリル系重合体を溶
解可能な温度は室温でも差し支えないが好ましくは60
℃程度に加温する事が好ましい。従って、本発明のブレ
ンドドープは100〜135℃に保温して吐出すること
が好ましい。
【0022】次いで、本発明ではブレンドドープは、エ
アーギャップ部を通過させた後、温度が40℃以下のア
ルコールもしくはケトンもしくは70重量%以上のアル
コールもしくは70重量%以上のケトン水溶液中にに吐
出してゲル化及び凝固させる必要がある。セルロースと
濃厚チオシアン酸塩水溶液から得られるドープは、溶解
温度以下、好ましくは40℃以下に冷却するとゲル化す
る。
【0023】本発明のセルロースとアクリル系重合体と
のブレンドドープからセルロースの力学物性を損なわな
いような本発明のブレンド成形体を得るためには、同ド
ープを40℃以下に冷却した時コンニャク状のゲルが実
用的な速さで得られるかどうかを目安にすることができ
る。ゲル化能が大きいと強靱な本発明のブレンド成形体
が得られやすい。
【0024】本発明のブレンドドープは、40℃以下に
冷却したた場合、急速にゲル化するのでエアギャップ部
により、吐出部と凝固・ゲル化部を分離する必要があ
る。また、40℃を超える温度のアルコールやケトンお
よびその水溶液から構成された凝固浴に導かれた場合、
ゲル化能が小さく、セルロースのマトリクスを効果的に
形成できなくなり、弱い成形体しか得られない。
【0025】また、本発明では、ブレンドドープは、ア
ルコールまたはケトンおよびそれらの70重量%以上の
水溶液からなる凝固浴に導かれ、ゲル化と凝固を起こさ
せることが要がある。本発明の凝固浴中ではセルロース
はゲル化し、アクリル系重合体は凝固する。70重量%
未満の水溶液では強靱なセルロースのゲルの網目ができ
なくなり、セルロース成形体自体が脆いので本発明では
用いられない。アルコールやケトンとしては、水と混和
するものの方がドープやゲルから溶媒を抽出する力が強
くなるため好ましい。アルコールとしては、メタノー
ル、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
ケトンとしてはアセトン、メチルエチルケトンが好まし
い。水を主成分とする凝固剤からは、脆いブレンド成形
体しか得られない。
【0026】凝固浴を出た本発明のブレンド成形体、例
えば繊維は、水洗等の洗浄処理を施して、乾燥して巻き
取られる。本発明のブレンド成形体が、セルロース素材
の強靱性を損なわずに作用効果を発現するのは、アルコ
ールやケトン溶媒中でセルロース分子鎖がアクリル系重
合体分子鎖を抱き込んだ緻密な網目状ネットワークの強
靱なゲルとなり、次いで/あるいは同時進行的にそのネ
ットワークの微細な網目にアクリル系重合体分子鎖が侵
入した状態で構造形成されるためと推定される。一方、
ブレンドドープと凝固剤との接触界面では、内部よりも
瞬時に凝固させられるためアクリル系重合体が混合比に
応じた連続相を形成できるため、表面層はアクリル系重
合体密度に富む構造ができると推定される。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明を実施例を用いて具体的に
詳述する。なお、評価方法は以下の通りに実施した。 (1)溶解状態:ドープを10ccのすり栓付き試験管
に入れ、これを110℃の恒温槽に浸け、30分後の相
状態を目視にて観察し、次の3段階に評価した。 ○;透明均一な状態 △;均一だが、曇りのある状態 ×;溶け残りや、濃度斑があり、不均一な状態 (2)ゲル化:上記ドープを試験管ごと20℃の水中に
投入して、経過を観察し、次の3段階に評価した。 ○;1分経過後ガラス棒で押さえた際コンニャク状の弾
性を示し、ガラス棒を取り除いた際ガラス棒にドープは
付着せず、元の形状に復元する状態 △;1分経過後はゲル化していないが、10分経過後に
はガラス棒で押さえた際コンニャク状の弾性を示し、ガ
ラス棒を取り除いた際ガラス棒にドープは付着せず、元
の形状に復元する状態で、ゲル化遅く、ゲル化の程度が
弱い ×;10分経過後でもガラス棒にドープが付着する状態
で、ゲル化しない。
【0028】(3)配向性:湿潤凝固フィルムを偏光顕
微鏡に載物して、クロスニコル下で観察し、次の3段階
に評価した。 ○;配向性有り…視野全体に明瞭に明視野が観察される △;僅かに配向…ぼんやりと明視野が観察される ×;配向無し…全体が暗視野に観察される (4)透明性:乾燥フィルムを18フォントの◎記号を
書いた紙の上に置き、判読できるか否かで以下の3段階
に評価した。 ○;ほぼ透明…記号が判別可能 △;僅かに白濁…記号の影は見えるが判別困難 ×;白濁…記号が全く見えない (5)強靱性 乾燥フィルムを手で引っぱった感触で以下の3段階に評
価した。 ○;強靱…抵抗感があり、適度に伸びた後破断する △;脆くはない…抵抗感はないが僅かに伸びた後破断す
る ×;脆い…抵抗感が無く、ぼそっと破断したり、バリバ
リとした感触がある。
【0029】(6)強伸度:JIS−L−1013に準
じて測定した値を採用した。 (7)風合い:繊維試料1gを15cmの束にし、5人
の被験者に手触りにより、市販のベンベルグ75デニー
ル45フィラメント{旭化成工業(株)製、キュプラ長
繊維の商標}と比較し、ぬめり感の有無を判定項目とし
て官能評価を実施した。ぬめり感を感じた人数で評価し
た。
【0030】(8)耐摩耗性:繊維状試料0.1gを約
5mmに細断後、1%硫酸水溶液100ml中で、70
℃、30分間加水分解し、水洗し脱水した。脱水後の試
料を100mlの水に分散し、家庭用ホームミキサーで
20分間撹拌した。撹拌後の試料の破壊状態を光学顕微
鏡で観察し下記の4段階に評価した。比較試料として、
本発明のブレンド成形体と同じ方法で作ったセルロース
単独成形体、および前記した市販のベンベルグを用い
た。 ◎;ほとんどフィブリル化しない ○;小さなひげが少し発生 △;小さなひげが沢山発生 ×;割断し元の繊維径を保たない (9)スキン層(アクリル系重合体密度の高い表面相)
の厚さとアクリル系重合体粒子径:繊維試料から厚さ約
100nmの横断面の超薄切片を切り出し、拡大倍率5
万倍で検鏡し写真撮影し、その写真から黒い粒子状のア
クリル系重合体相の直径とアクリル系重合体密度の高い
表面層の厚さを測定した。
【0031】
【実施例1】下記のようにセルロースとPANの好まし
い混合比を決定した。セルロースとしてコージンパルプ
{グレードNA、(株)興人製}シートを約5×5mm
2に裁断して精錬した試料を用いた。アクリル系重合体
としてアクリロニトリルとメタクリル酸メチルとメタリ
ルスルフォン酸ソーダをそれぞれ91.5:8.0:
0.5の重量比で混合し、レドックス触媒を用いた水懸
濁重合法(重合温度55℃)により得られた粘度平均分
子量14.7万のポリマー(以下、このアクリル系重合
体を単にPANと略記する)を用いた。
【0032】コージンパルプ10gを55%のチオシア
ン酸カルシウム水溶液190gと混合し、110℃で3
時間撹拌溶解してセルロース濃度5%のセルロースドー
プを調製した。同時に、PAN24gを55%のチオシ
アン酸カルシウム水溶液176gと混合し、50℃で3
時間撹拌溶解してPAN濃度12%のPANドープを調
製した。
【0033】次いで、セルロースドープとPANドープ
を所定の比率で混合し、110℃で30分間撹拌して均
一に溶解し、混合比の異なる計14個のセルロース/P
ANブレンドドープを調製し、これらを10ccの試験
管に入れ、溶解状態及びゲル化の速さを観察した。表1
に観察結果を示す。セルロースとPANの混合比が1
0:90、5:95、1:99、0.5:99.5のド
ープは溶液が少し白濁したり、均一溶解させにくいこと
が判明した。また、混合比が20:80、10:90、
5:95、1:99、0.5:99.5のドープは急冷
しても弱いゲルになるか、ゲル化しないことが解った。
【0034】
【実施例2】実施例1で作った14個のブレンドドープ
を110℃に保温したガラス板上に厚さがほぼ1mmの
フィルム状に流延し、直ちにそれぞれ水、エタノール、
アセトンからなる凝固浴(20℃)に20分間浸漬し、
計42個の混合比と凝固剤の異なる凝固フィルムを作っ
た。凝固フィルムは、湿潤状態のまま、及び50℃で乾
燥して観察または測定試料とした。湿潤凝固フィルム
は、偏光顕微鏡に載物しクロスニコル下で明視野像が観
察されるか否かにより配向性を評価した。その結果を表
2に示す。また、乾燥凝固フィルムは強靱性、透明性等
の実験観察を行った。その結果を表3に示す。
【0035】PANの混合比が40%を越える湿潤凝固
フィルムは、いずれの凝固剤を用いても全く配向してい
なかった。また、PANの混合比が40%以下の配向し
ている湿潤凝固フィルムであっても、その配向度合い
は、凝固剤が水<エタノール<アセトンの順に大きかっ
た。更に、乾燥凝固フィルムは、PANの混合比が60
%以上の試料では、凝固剤に因らず総じて脆かった。ま
た、水を凝固剤とした乾燥凝固フィルムは全て混合比で
脆かった。
【0036】実施例2の観察結果により、セルロースと
PANの混合比は、概ねPANの含有量が40%以下で
あると配向しやすいドープが得られること、アルコー
ル、ケトン溶媒が水よりも強靱な成形体が得られること
が判明した。
【0037】
【実施例3〜6、比較例1、2、3】前記のコージンパ
ルプと55%のチオシアン酸カルシウム水溶液から、セ
ルロース濃度が7%のセルロースドープを作った。これ
をA液とする。また別に、PANと55%チオシアン酸
カルシウム水溶液から、PAN濃度が13.75%のP
ANドープを作った。これをB液とする。A液とB液を
110℃で所定の割合で混合し、混合後遠心分離機で遠
心脱泡し、セルロースとPANの混合比がそれぞれ10
0:0、99:1、97:3、90:10、80:2
0、60:40の6個の紡糸用ドープを調製した。
【0038】これらのドープを、孔径0.08mmφで
孔数15個のノズルから吐出させ、10mmのエアーギ
ャップ部を通過させ、その後3℃のエタノール凝固浴に
導き、次いで水洗し、乾燥して巻き取った。PANの混
合比が0%、1%の繊維試料を比較例1及び比較例2、
PANの混合比が3%、10%、20%、40%の繊維
試料をそれぞれ実施例3、4、5、6とする。
【0039】表4に、実施例3〜6と比較例1、2、及
び比較例3として前記のベンベルグの引張物性、風合い
評価結果、耐摩耗性評価結果及び電子顕微鏡によるPA
Nの平均粒子径と表面層の厚さの測定結果を示す。
【0040】
【実施例7〜10】コージンパルプと55%チオシアン
酸カルシウム溶液から、セルロース濃度が7%のセルロ
ースドープを作った。これをA液とする。また別に、P
ANと55%チオシアン酸カルシウム水溶液から、PA
N濃度が13.75%のPANドープを作った。これを
B液とする。A液とB液を110℃で所定の割合で混合
し、混合後遠心分離機で遠心脱泡し、セルロースとPA
Nの混合比がそれぞれ、97:3、90:10、80:
20、60:40の4個の紡糸用ドープを調製した。
【0041】これらのドープを、孔径0.08mmφで
孔数15個のノズルから吐出させ、10mmのエアーギ
ャップ部を通過させ、その後3℃のアセトン凝固浴に導
き、次いで水洗し、乾燥して巻き取った。PANのブレ
ンド率が3%、10%、20%、40%の繊維試料をそ
れぞれ実施例7、8、9、10とする。実施例7〜10
の引張物性、風合い評価結果、耐摩耗性評価結果及び電
子顕微鏡によるPANの平均粒子径と表面層の厚さの測
定結果を表4に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【発明の効果】本発明のセルロースとアクリル系重合体
とのブレンド成形体は、セルロース成形体の力学物性を
損なわずに優れた耐摩耗性を有すると共に、アクリル繊
維に類似した柔らかさとぬめり感を併せて具備してい
る。その為、例えば繊維では、単独で使用しても特異な
風合いを持ち、摩耗に強いセルロース系布帛を提供でき
るし、他素材と複合する事により更にセルロースの用途
拡大ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D01F 6/52 D01F 6/52

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 60〜97重量%のセルロースと40〜
    3重量%のアクリル系重合体とからなり、かつ平均粒子
    径10〜40nmのアクリル系重合体粒子がセルロース
    のマトリクス相に分散し、しかも表面から100nm以
    下の外層部に高密度で偏在しているセルロースとアクリ
    ル系重合体とのブレンド成形体。
  2. 【請求項2】 セルロースとアクリル系重合体とを49
    〜63重量%のチオシアン酸カルシウム水溶液または5
    0〜65重量%のチオシアン酸ナトリウム水溶液に溶解
    してなるブレンド溶液であり、かつその溶液中のセルロ
    ースとアクリル系重合体との重量混合比率が60〜9
    7:40〜3である溶液を成型用ノズルから吐出させ、
    一旦エアーギャップ部を通過させ、次いで40℃以下の
    温度のアルコールまたはケトンまたは70重量%以上の
    アルコール水溶液または70重量%以上のケトン水溶液
    中に導くことにより、ゲル化および凝固させることを特
    徴とするセルロースとアクリル系重合体とのブレンド成
    形体の製造方法。
  3. 【請求項3】 ブレンド溶液は、セルロースのチオシア
    ン酸カルシウムまたはナトリウム水溶液からなる溶液
    と、アクリル系重合体のチオシアン酸カルシウムまたは
    ナトリウム水溶液からなる溶液を混合して調製すること
    を特徴とする請求項2に記載のセルロースとアクリル系
    重合体とのブレンド成形体の製造方法。
  4. 【請求項4】 ブレンド溶液は、まずセルロースをチオ
    シアン酸カルシウムまたはナトリウム水溶液に溶解し、
    次いでアクリル系重合体を上記セルロースを溶解した溶
    液に溶解して調製することを特徴とする請求項2に記載
    のセルロースとアクリル系重合体とのブレンド成形体の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 アルコールはメタノール、エタノール、
    プロピルアルコールであり、ケトンはアセトン、メチル
    エチルケトンである請求項2記載のセルロースとアクリ
    ル系重合体とのブレンド成形体の製造方法。
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