JPH10307411A - 電子写真感光体およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 長波長光に対し良好な感度を有し、繰り返し
使用によっても帯電電位の変動が少なく、かつ残留電位
の上昇の少ない耐久性に極めて優れた電子写真感光体を
提供する。また、顔料の凝集による画像欠陥の発生のな
い電子写真感光体を得ることができる電子写真感光体の
製造方法を提供する。 【解決手段】 導電性支持体上にフタロシアニン顔料を
含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送
層とを積層してなる電子写真感光体において、電荷発生
層がポリエーテル変成ジメチルポリシロキサン化合物の
少なくとも一種を含有している。フタロシアニン顔料、
バインダ樹脂、ポリエーテル変成ジメチルポリシロキサ
ン化合物およびエステル系溶剤よりなる分散液を塗布し
乾燥させることにより電荷発生層を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真プロセス
を用いた複写機、プリンターなどに利用される電子写真
感光体に関し、特に電荷発生物質としてフタロシアニン
顔料を含有し、繰り返し使用による画像劣化の少ない耐
久性に優れた電子写真感光体に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、セレン、セレン−テルル合金、砒
素セレン等の無機光導電性材料から構成された電子写真
感光体が多くの複写機で用いられてきた。しかしなが
ら、これらの無機光導電性化合物は、毒性等環境面での
問題があり、またアモルファス状態で用いられるため、
例えば、熱、汚れ等により結晶化して特性が劣化しやす
いなど、取り扱いが厄介であり、また数十μｍの膜厚に
真空蒸着する必要があるためコストが高くなるなどの欠
点がある。これに対し、有機光導電性材料を用いた電子
写真感光体は、安価、毒性が低い、大量生産に適してい
るなどの利点を有することから、積極的に開発が進み、
実用に供されるようになってきた。実用化された電子写
真感光体のほとんどは、導電性基体上に電荷発生機能を
有する電荷発生層と、電荷輸送機能を有する電荷輸送層
とを積層した機能分離型の電子写真感光体であり、これ
により感度及び感光体寿命が改善され、低コストで、安
全性や多様性など有機光導電性材料の長所を生かした電
子写真感光体の設計が活発に行われるようになった。こ
の種の電子写真感光体は、一般的には、顔料、染料など
の電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物
質を含有する電荷輸送層を導電性支持体上に積層した構
成を有しており、電荷発生物質、電荷輸送物質の各々の
材料の選択範囲が広く、任意の特性を有する電子写真感
光体を比較的容易に作成し得ると言う利点を有してい
る。

【０００３】一方、近年複写業界等においては、高画質
が要求され、また編集機能及び複合処理機能を有する複
写機等が要請されるようになっており、これに伴って、
レーザープリンター、レーザーファクシミリ、デジタル
複写機等に見られるデジタル方式の記録装置が広く普及
しつつある。デジタル方式の記録装置における光源とし
ては、小型、安価、簡便さなどの点から、多くは半導体
レーザーが用いられているが、現在用いられている半導
体の発振波長は７５０ｎｍ以上の近赤外域に限定されて
いる。従って、これらの装置に用いられる電子写真感光
体としては、少なくとも７５０〜８５０ｎｍの波長領域
に光感度を有することが要求される。この要求を満たす
有機光導電性材料としては、フタロシアニン顔料、アゾ
顔料、シアニン顔料、アズレン顔料またはスクアリウム
顔料などが知られているが、特にフタロシアニン顔料は
比較的長波長領域まで分光吸収を持つと共に光感度を有
し、また中心金属や結晶形の種類によって様々なバリエ
ーションが得られることから、半導体レーザー用の電子
写真感光体として盛んに研究が行われている。

【０００４】これまでに知られているフタロシアニン顔
料としては、ε型銅フタロシアニン顔料、Ｘ型無金属フ
タロシアニン顔料、τ型無金属フタロシアニン顔料、バ
ナジルフタロシアニン顔料、チタニルオキシフタロシア
ニン顔料等が挙げられるが、いずれも感度、帯電能、繰
り返し耐久性の点でなお充分ではなく、よりいっそうの
改良が望まれていた。これに対し、近年、高感度化に対
しては、例えば特開昭５９−４９５４４号公報（ＵＳＰ
４、４４４、８６１）、特開昭５９−１６６９５９号公
報、特開昭６１−２３９２４８号公報（ＵＳＰ４、７２
８、５９２）、特開昭６２−６７０９４号公報（ＵＳＰ
４、６６４、９９７）、特開昭６２−２７５２７２号公
報、特開昭６３−３６６号公報、特開昭６３−１１６１
５８号公報、特開昭６３−１９８０６７号公報、特開昭
６４−１７０６６号公報、特開平２−２８２６５号公
報、特開平３−３５０６４号公報、特開平３−２００７
９０号公報等に電荷発生物質として高感度オキシチタニ
ルフタロシアニン顔料が提案されている。しかしなが
ら、電子写真感光体においては、特定の電荷発生物質を
含有する電荷発生層に対してすべての電荷輸送層が良好
な特性を示すとは限らず、電荷の注入などの面から、特
定の電荷発生物質に対し良好な特性を示す特定の電荷輸
送物質の組み合わせ、または特定の酸化防止剤等の添加
剤の組み合わせが存在し、不適当な組み合わせの場合は
感度の低下、残留電位の上昇、帯電電位の低下といった
多くの問題が生じてしまう。上記のオキシチタニルフタ
ロシアニン顔料に対しては、特開平１−８２０４３号公
報、特開平２−１３６８６２号公報、特開平２−１８９
５５５号公報などに特定の電荷輸送物質との組み合わせ
が開示されているが、感度、残留電位、繰り返し使用時
における帯電電位の安定性などで未だ充分満足できる電
子写真感光体は得られていない。

【０００５】また、実際に電子写真感光体として使用す
る際には、多くの要求性能を満足することが必要であ
り、初期特性において所定の感度、電気物性、光学特性
を備えているだけでなく、これらの特性が繰り返し使用
により大きく変化しないことが要求される。これらに関
係する要因としては、電荷発生層中の電荷発生物質の存
在状態を挙げることができる。電荷発生層は、一般には
電荷発生物質としての顔料が樹脂中に分散された状態と
なっているため、この顔料の分散度合いが電子写真プロ
セスで形成される画像に大きく影響を与え、例えば電荷
発生層中において電荷発生物質としての顔料が凝集して
いると、特に電子写真感光体の繰り返し使用時において
画像に粒状のカブリ等の画像欠陥が発生しやすく、今ま
でのところ、これらの多くの要求性能をすべて満足させ
る電子写真感光体が得られておらず、更なる改良が望ま
れている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の課題は
このような問題点を解決し、長波長光に対し良好な感度
を有し、特に半導体レーザー光を光源として用いた複写
機、プリンター等の複写または記録装置に最適な電子写
真感光体を提供することにある。また、本発明の課題
は、繰り返し使用によっても帯電電位の変動が少なく、
かつ残留電位の上昇の少ない耐久性に極めて優れた電子
写真感光体を提供することにある。また、本発明の課題
は、電荷発生層中に電荷発生物質である顔料が均一に分
散され、顔料の凝集による画像欠陥の発生のない電子写
真感光体を得ることができる電子写真感光体の製造方法
を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は、導
電性支持体上にフタロシアニン顔料を含有する電荷発生
層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層してな
る電子写真感光体において、電荷発生層がポリエーテル
変成ジメチルポリシロキサン化合物の少なくとも一種を
含有していることを特徴とする電子写真感光体によって
達成される。本発明によれば、長波長光に対し良好な感
度を有し、繰り返し使用によっても帯電電位の変動が少
なく、かつ残留電位の上昇の少ない耐久性に極めて優れ
た電子写真感光体を得ることができる。

【０００８】また、本発明の上記課題は、導電性支持体
上にフタロシアニン顔料を含有する電荷発生層と電荷輸
送物質を含有する電荷輸送層とを積層してなる電子写真
感光体の製造方法において、フタロシアニン顔料、バイ
ンダ樹脂、ポリエーテル変成ジメチルポリシロキサン化
合物およびエステル系溶剤よりなる分散液を導電性支持
体上に塗布し乾燥させることにより電荷発生層を形成す
ることを特徴とする電子写真感光体の製造方法によって
達成される。本発明の製造方法によれば、電荷発生層中
に電荷発生物質である顔料が均一に分散され、顔料の凝
集による画像欠陥が発生することのない電子写真感光体
を得ることができる。

【０００９】電荷発生層に用いるポリエーテル変成ジメ
チルポリシロキサン化合物としては、下記一般式（３）
で表される化合物が挙げられる。

【００１０】

【化３】 （式中、Ｒは水素原子またはメチル基を表し、ｍ、ｎは
１〜２０の整数を表す。）

【００１１】これらのポリエーテル変成ジメチルシロキ
サン化合物は、市販品として、例えば、ビツクケミー社
製の商品名ＢＹＫ３００、ＢＹＫ３０２、ＢＹＫ３０
７、ＢＹＫ３３１、ＢＹＫ３３３、ＢＹＫ３３５、ＢＹ
Ｋ３４１、ＢＹＫ−３４４やこれに準ずる構造を持つも
のとして入手することができる。

【００１２】ポリエーテル変成ジメチルシロキサン化合
物の電荷発生層における含有量としては、電荷発生物質
に対して０．０１重量％〜１０重量％が好ましく、特に
０．０５重量％〜５重量％が好ましい。０．０１重量％
よりも少ないと残留電位の低減、繰り返し特性の向上に
対する効果が十分でなく、また１０重量％を越えると、
帯電電位の安定性が悪く、残留電位が上昇し、また感度
が低下するようになる。

【００１３】また、本発明の電子写真感光体における電
荷発生層に用いるフタロシアニン顔料としては、オキシ
チタニルフタロシアニン顔料または無金属フタロシアニ
ン顔料が特に好ましい。オキシチタニルフタロシアニン
顔料または無金属フタロシアニン顔料を用いることによ
り、長波長光に対し更に良好な感度を有する電子写真感
光体を得ることができる。

【００１４】オキシチタニルフタロシアニン顔料の合成
例については、特開昭６２−２７５２７２号公報、特開
昭６４−１７０６６号公報、特開平２−２８２６５号公
報、特開平３−３５０６４号公報、特開平３−２００７
９０号公報、特開平３−２６９０６４号公報等に記載さ
れており、多くの結晶形が存在するが、いずれの結晶形
のものでも用いることができる。

【００１５】電荷発生層は、フタロシアニン顔料とポリ
エーテル変成ジメチルポリシロキサン化合物から形成さ
れいても、あるいはフタロシアニン顔料とポリエーテル
変成ジメチルポリシロキサン化合物がバインダ樹脂中に
分散されて形成されていてもよい。フタロシアニン顔料
としては２μｍ以下、好ましくは１μｍ以下の平均粒径
を有する粉粒体であることが好ましい。粒径があまりに
大きいと電荷発生層中での分散が不均一となる共に、粒
子が電荷発生層表面に一部突出して表面の平滑性が悪く
なり、場合によって粒子の突出部分で放電が生じる現象
が発生するようになる。また、フタロシアニン顔料の粒
径があまりに小さいと却って凝集しやすく、電荷発生層
の抵抗が上昇し、また結晶欠陥が増えて感度及び繰返し
特性が低下するようになり、あるいは微細化する上で限
界があることから、平均粒径の下限としては０．０１μ
ｍ程度が好ましい。

【００１６】また、本発明の電子写真感光体における電
荷輸送層に用いる電荷輸送物質としては、正孔輸送物質
または電子輸送物質のいずれでもよく、電荷輸送層中に
正孔輸送物質を含有する負帯電型の電子写真感光体また
は電荷輸送層中に電子輸送物質を含有する正帯電型の電
子写真感光体のいずれにおいても、電荷発生層中にフタ
ロシアニン顔料およびポリエーテル変成ジメチルシロキ
サン化合物の少なくとも一種を含有させることにより、
長波長光に対し良好な感度を有し、繰り返し使用によっ
ても帯電電位の変動が少なく、かつ残留電位の上昇の少
ない耐久性に極めて優れた電子写真感光体を得ることが
できる。

【００１７】正孔輸送物質としては、従来公知の正孔輸
送物質が使用でき、例えば、分子中にトリフェニルアミ
ン部位を有する化合物、カルバゾール部位を有する化合
物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、オ
キサゾール化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合
物、ポリシラン化合物、ポリビニルカルバゾール、ピレ
ン−ホルマリン縮合物などのドナー性化合物が挙げられ
る。なかでも、下記一般式（１）で表されるスチルベン
化合物が特に好ましい。

【００１８】

【化４】 （式中、ｒ₁、ｒ₂は置換または無置換のアルキル基、置
換または無置換のアリール基を表し、ｒ₃、ｒ₄は水素原
子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換
のアリ−ル基または複素環基を表す。また、ｒ₁及びｒ₂
で環を形成していても良い。Ａｒは置換または無置換の
アリ−ル基または複素環基を表す。）

【００１９】一般式（１）で表されるスチルベン化合物
の具体例を表１に示すが、これらに限定されるものでは
ない。

【００２０】

【表１−１】

【００２１】

【表１−２】

【００２２】

【表１−３】

【００２３】上記スチルベン化合物を含有する電荷輸送
層は、電荷発生層にオキシチタニルフタロシアニン顔料
を用いた場合に特に良好な感度を示し、繰り返し使用に
よっても帯電電位の変動が少なく、かつ残留電位の上昇
の少ない耐久性に極めて優れた特性を示すが、これはイ
オン化ポテンシャルのマッチングが適切であること、ス
チルベン化合物とオキシチタニルフタロシアニン顔料と
の界面での接触状態が良好であることなどによるものと
考えられる。

【００２４】また、電子輸送物質としては、従来公知の
電子輸送物質が使用でき、例えば、トリニトロフルオレ
ノンまたはフルオレニリデンメタン誘導体などのフルオ
レン系化合物、ジフェノキノンまたはアントラキノン誘
導体などのキノン系化合物などが挙げられる。なかで
も、下記構造式（２）で示される（２，３−ジフェニル
−１−インデニリデン）マロノニトリルが、電荷の移動
能が高いこと、界面の接触状態が良好であることなどの
点で特に好ましい。

【００２５】

【化５】

【００２６】本発明の電子写真感光体は、例えば次のよ
うにして容易に製造することができる。すなわち、本発
明の電子写真感光体は、フタロシアニン顔料とポリエー
テル変成ジメチルシロキサン化合物とを必要に応じてバ
インダ樹脂と共に溶媒に分散させた電荷発生層形成用塗
布液を導電性支持体上に塗布し乾燥させて電荷発生層を
形成し、ついで電荷輸送物質を必要に応じてバインダ樹
脂と共に適当な溶媒に溶解もしくは分散せしめた電荷輸
送層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布し乾燥させて電
荷輸送層を形成することにより容易に製造することがで
きる。

【００２７】電荷発生層を形成するには、フタロシアニ
ン顔料をボールミル、振動ミル、ホモミキサー、超音波
等によって溶媒中で微細粒子とし、ポリエーテル変成ジ
メチルシロキサン化合物を添加して、必要に応じてバイ
ンダ樹脂を加え、混合分散して得られる電荷発生層形成
用塗布液を導電性支持体上に塗布し乾燥させればよい。
電荷発生層形成用塗布液を調製する際に、ポリエーテル
変成ジメチルシロキサン化合物を添加する時期として
は、フタロシアニン顔料を分散させる工程、またはフタ
ロシアニン顔料を分散させる工程を行った後のどちらで
もよいが、フタロシアニン顔料を分散させる工程を行っ
た後が特に好ましい。

【００２８】このようにして電荷発生層形成用塗布液を
調製することにより、フタロシアニン顔料が分散液中に
よく分散され、しかも塗工性が大きく改善され、この電
荷発生層形成用塗布液を用いることにより、フタロシア
ニン顔料が均一に分散された電荷発生層を形成すること
ができ、画像欠陥が発生することのない電子写真感光体
を得ることができる。

【００２９】電荷発生層にバインダ樹脂を用いる場合に
は、フタロシアニン顔料のバインダ樹脂に対する割合と
しては、バインダ樹脂１００重量部に対し２０〜５００
重量部が好ましい。以上のようにして形成される電荷発
生層の膜厚は、０．０５〜１０μｍが好ましく、特に
０．１〜１μｍが好ましい。上記の電荷発生層中には、
分散安定性、あるいは特性改善の目的で公知の他の電荷
発生物質、界面活性剤等の分散安定剤、または酸化防止
剤などを添加することができる。

【００３０】また、電荷輸送層を形成するには、電荷輸
送物質を適当な溶媒に、必要に応じてバインダ樹脂と共
に溶解もしくは分散せしめて電荷輸送層形成用塗布液を
調製し、それを電荷発生層上に塗布し乾燥させればよ
い。電荷輸送層における電荷輸送物質とバインダ樹脂と
の割合としては、電荷輸送物質１００重量部に対してバ
インダ樹脂が０〜４００重量部、特に５０〜２００重量
部が望ましい。また、電荷輸送層の膜厚としては、５〜
５０μｍが好ましく、特に１０〜３０μｍが好ましい。

【００３１】電荷発生層形成用塗布液や電荷輸送層形成
用塗布液を調製する際に使用する溶媒としては、例え
ば、Ｎ，Ｎ−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレ
ン、モノクロルベンゼン、１，２−ジクロルエタン、
１，１，１−トリクロルエタン、ジクロルメタン、１，
１，２−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テト
ラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチ
ルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸プロピ
ル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル等を挙げることができ
る。

【００３２】なかでも、電荷発生層形成用塗布液を調整
する際に使用する溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロ
ピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル等のエステル系溶媒を
好適に使用することができる。エステル系溶媒を用いる
ことにより、フタロシアニン顔料が分散液中によく分散
され、しかも塗工性が大きく改善され、この電荷発生層
形成用塗布液を用いることにより、フタロシアニン顔料
が均一に分散された電荷発生層を形成することができ、
画像欠陥が発生することのない電子写真感光体を得るこ
とができる。

【００３３】また、電荷発生層または電荷輸送層に用い
られるバインダ樹脂としては、例えば、ポリエチレン、
ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリス
チレン樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂、メタクリ
ル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹
脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル
樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリア
ミド樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂等の付加重合型
樹脂、重付加型樹脂、重縮合型樹脂、ならびにこれらの
樹脂の繰り返し単位のうち２つ以上を含む共重合体樹
脂、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン
−アクリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マ
レイン酸共重合体樹脂などの絶縁性樹脂のほか、ポリ−
Ｎ−ビニルカルバゾ−ル等の高分子有機半導体が挙げら
れる。

【００３４】溶媒としてエステル系溶媒を使用して電荷
発生層形成用塗布液を調整する場合には、バインダ樹脂
としてポリビニルブチラールを用いることが特に好まし
く、それにより、フタロシアニン顔料が分散液中によく
分散され、しかも塗工性が大きく改善され、この電荷発
生層形成用塗布液を用いることにより、フタロシアニン
顔料が均一に分散された電荷発生層を形成することがで
き、画像欠陥が発生することのない電子写真感光体を得
ることができる。

【００３５】本発明の電子写真感光体においては、導電
性支持体と電荷発生層との間にバリア機能と接着機能を
有する下引き層を設けてもよく、また電荷輸送層上に保
護層を設けてもよい。本発明の電子写真感光体における
導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケル、銅、
チタン、金などの金属板、金属ドラムまたは金属箔、ア
ルミニウム、ニツケル、銅、チタン、酸化スズ、酸化イ
ンジウムなどを蒸着したプラスチックフィルム或いは導
電性物質を塗布した紙やプラスチックなどのフィルム又
はドラムを使用することができる。

【００３６】また、下引き層の材料としては、ポリアミ
ド樹脂、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、カ
ルボキシメチルセルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共
重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重
合体、カゼイン、Ｎ−アルコキシメチルナイロン等の樹
脂をそのまま用いてもよく、またそれらの樹脂に酸化ス
ズ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素または
酸化インジウムなどを分散させたものを用いてもよい。
さらに酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタンまたは
酸化ケイ素などの蒸着膜でもよい。下引き層の膜厚とし
ては０．１〜５μｍの範囲が適当である。また、保護層
の材料としては、従来公知の材料を用いることができ
る。

【００３７】

【実施例】以下に本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれにより限定されるものではない。まず、実施
例に用いるオキシチタニルフタロシアニン顔料を下記合
成例１および合成例２により合成した。

【００３８】合成例１ フタロジニトリル５２．５ｇ（０．４１ｍｏｌ）と１−
クロロナフタレン３００ｍｌを攪拌混合し、これに窒素
気流下で四塩化チタン１９．０ｇ（０．１ｍｏｌ）を滴
下した。滴下終了後、徐々に２００℃まで昇温し、反応
温度を１９０〜２１０℃の間に保ちながら５時間攪拌し
反応させた。反応終了後、放冷し１３０℃になったとこ
ろで熱時ろ過し、ついで１−クロロナフタレンで粉体が
青色になるまで洗浄し、更に８０℃の熱水で数回洗浄し
た後、乾燥し４２．２ｇ（収率７３．３％）の粗オキシ
チタニルフタロシアニン顔料を得た。得られた粗オキシ
チタニルフタロシアニン顔料４ｇを５℃で、９８％硫酸
８０ｇ中に少しずつ溶解し、その混合物を約１時間、５
℃以下の温度を保ちながら攪拌した。続いて、その硫酸
溶液を高速攪拌している８００ｍｌの氷水中に、ゆっく
り注ぎ、析出した結晶をろ過した。結晶を酸が残留しな
くなるまで蒸留水で洗浄し、アセトンで精製した後、乾
燥して３．６ｇの無定型オキシチタニルフタロシアニン
顔料を得た。

【００３９】合成例２ 合成例１と同様の方法で得られた粗オキシチタニルフタ
ロシアニン顔料６ｇを５℃で、９８％硫酸１２０ｇ中に
少しずつ溶解し、その混合物を約１時間、５℃以下の温
度でを保ちながら攪拌した。続いてその硫酸溶液を高速
攪拌している１２００ｍｌの氷水中に、ゆっくり注ぎ、
析出した結晶をろ過した。結晶を酸が残留しなくなるま
で蒸留水で洗浄し、オキシチタニルフタロシアニン顔料
のウェツトケーキを得た。このウェットケーキに１，２
−ジクロロエタン１００ｍｌを加え、室温下２時間攪拌
した後、メタノール３００ｍｌをさらに加えて攪拌し
て、それをろ過した。これをメタノールで洗浄し、乾燥
して結晶オキシチタニルフタロシアニン顔料４．９ｇを
得た。

【００４０】以上のようにして得られたオキシチタニル
フタロシアニン顔料についてＸ線回折スペクトルを以下
に示す条件で測定した。 Ｘ線管球 Ｃｕ 電圧 ４０ｋＶ 電流 ２０ｍＡ 走査速度 １ｄｅｇ／分 走査範囲 ３〜４０ｄｅｇ 時定数 ２秒 合成例１で得られた無定型オキシチタニルフタロシアニ
ン顔料のＸ線回折スペクトル図を図１に示す。図１のＸ
線回折図で示すように強い回折ピークはない。また、合
成例２で得られた結晶オキシチタニルフタロシアニン顔
料のＸ線回折スペクトル図を図２に示す。図２のＸ線回
折図で示すように、ブラッグ角２θ９．５ｄｅｇ、及び
２７．２ｄｅｇに主要なピークを有することが判る。

【００４１】実施例１ アルコール可溶性ポリアミド（ＣＭ−８０００、東レ社
製）３部をメタノール／ｎ−ブタノール＝８／２（ｖｏ
ｌ比）の混合溶媒１００部に加熱溶解し、下引き層用塗
布液を調製し、これを７５μｍのアルミ蒸着ＰＥＴフィ
ルム上に塗布し、１００℃で１０分間乾燥させて膜厚
１．０μｍの下引き層を形成した。次に、合成例２で得
られた結晶オキシチタニルフタロシアニン顔料２部、ポ
リビニルブチラール樹脂（ＢＭ−Ｓ、積水化学工業社
製）２部を酢酸ｎ−ブチル４６部に添加し、直径１ｍｍ
のガラスビーズを用いたサンドミルにて１２時間分散を
行った。分散終了後、ポリエーテル変成ジメチルポリシ
ロキサン化合物（ＢＹＫ−３０７、ビックケミー社製）
０．０２部、酢酸ｎ−ブチル１１０部を加えて希釈し電
荷発生層用塗布液を調製し、これを上記下引き層上に塗
布し、８０℃で５分間乾燥させて膜厚０．２μｍの電荷
発生層を形成した。

【００４２】ついで、下記構造式（Ｄ−１）の正孔輸送
物質８部、ポリカーボネート樹脂（ユーピロンＺ２０
０、三菱ガス化学社製）１０部、シリコーンオイル（Ｋ
Ｆ５０、信越化学社製）０．００２部をテトラヒドロフ
ラン１００部に溶解し、電荷輸送層用塗布液を調製し、
これを上記電荷発生層上に塗布し、１１０℃で２０分間
乾燥させて膜厚が２０μｍの電荷輸送層を形成し電子写
真感光体を作製した。

【００４３】

【化６】

【００４４】実施例２ 実施例１におけるポリエーテル変成ジメチルポリシロキ
サン化合物０．０２部に代えてポリエーテル変成ジメチ
ルポリシロキサン化合物（ＢＹＫ−３３１、ビックケミ
ー社製）０．０４部を用いた以外は、実施例１と同様に
して電子写真感光体を作製した。

【００４５】比較例１ 実施例１においてポリエーテル変成ジメチルポリシロキ
サン化合物（ＢＹＫ−３０７、ビックケミー社製）を添
加しないこと以外は、実施例１と同様にして電子写真感
光体を作製した。

【００４６】実施例３ 実施例１における正孔輸送物質に代えて下記構造式（Ｄ
−２）の正孔輸送物質を用いた以外は、実施例１と同様
にして電子写真感光体を作製した。

【００４７】

【化７】

【００４８】比較例２ 実施例３においてポリエーテル変成ジメチルポリシロキ
サン化合物（ＢＹＫ−３０７、ビックケミー社製）を添
加しないこと以外は、実施例３と同様にして電子写真感
光体を作製した。

【００４９】実施例４ 実施例１における結晶オキシチタニルフタロシアニン顔
料に代えて合成例１で得られた無定型オキシチタニルフ
タロシアニン顔料を用いた以外は、実施例１と同様にし
て電子写真感光体を作製した。

【００５０】比較例３ 実施例４においてポリエーテル変成ジメチルポリシロキ
サン化合物（ＢＹＫ−３０７、ビックケミー社製）を添
加しないこと以外は、実施例４と同様にして電子写真感
光体を作製した。

【００５１】実施例５ アルコール可溶性ポリアミド（ＣＭ−８０００、東レ社
製）３部をメタノール／ｎ−ブタノール＝８／２（ｖｏ
ｌ比）の混合溶媒１００部に加熱溶解し、下引き層用塗
布液を調製し、これを７５μｍのアルミ蒸着ＰＥＴフィ
ルム上に塗布し、１００℃で１０分間乾燥させて膜厚
１．０μｍの下引き層を形成した。次に、Ｘ型無金属フ
タロシアニン顔料（Ｆａｓｔｏｇｅｎ Ｂｌｕｅ８１２
０８Ｂ、大日本インキ化学工業社製）２部を酢酸ｎ−ブ
チル２３部に添加し、直径１ｍｍのガラスビーズを用い
たサンドミルにて６時間分散を行った。分散終了後、ポ
リエーテル変成ジメチルポリシロキサン化合物（ＢＹＫ
−３３１、ビックケミー社製）０．０２部、酢酸ｎ−ブ
チル５５部を加えて希釈し電荷発生層用塗布液を調製
し、これを上記下引き層上に塗布し、８０℃で５分間乾
燥させて膜厚０．２μｍの電荷発生層を形成した。

【００５２】ついで、前記構造式（Ｄ−１）の正孔輸送
物質８部、ポリカーボネート樹脂（ユーピロンＺ２０
０、三菱ガス化学社製）１０部、シリコーンオイル（Ｋ
Ｆ５０、信越化学社製）０．００２部をテトラヒドロフ
ラン１００部に溶解し、電荷輸送層用塗布液を調製し、
これを上記電荷発生層上に塗布し、１１０℃で２０分間
乾燥させて膜厚が２０μｍの電荷輸送層を形成し電子写
真感光体を作製した。

【００５３】比較例４ 実施例５においてポリエーテル変成ジメチルポリシロキ
サン化合物（ＢＹＫ−３３１、ビックケミー社製）を添
加しないこと以外は、実施例５と同様にして電子写真感
光体を作製した。

【００５４】以上のようにして得られた実施例および比
較例の電子写真感光体について、ＥＰＡ８２００（川口
電機製作所製）を用い、ダイナミックモードにて下記の
ような方法により静電特性を評価した。まず、電子写真
感光体に−６ＫＶのコロナ放電を５秒間行い負帯電さ
せ、２秒後の表面電位Ｖ₂（−Ｖ）を測定、次にバンド
パスフィルターを用いて７８０ｎｍに分光した光（５．
０μＷ／ｃｍ²）を露光して、半減露光量Ｅ_1/2（μＪ／
ｃｍ²）と露光３０秒後の表面電位Ｖｒ（−Ｖ）を測定
した。また、−６ＫＶのコロナ放電と色温度２８５６Ｋ
のタングステンランプ４５Ｌｕｘの露光を１００００回
繰り返し行い、その後同様の測定を行って疲労後の静電
特性を評価した。その結果を表２に示す。

【００５５】

【表２】

【００５６】表２から明らかなように、実施例の電子写
真感光体は比較例の電子写真感光体に比べ、長波長光に
対し良好な感度を有し、繰り返し使用によっても帯電電
位の変動が少なく、かつ残留電位の上昇の少ないもので
ある。

【００５７】実施例６ 実施例１と同様な方法により、７５μｍのアルミ蒸着Ｐ
ＥＴフィルム上に下引き層および電荷発生層を形成し
た。次に、下記構造式（Ａ−１）の電子輸送物質８部、
ポリカーボネート樹脂（ユーピロンＺ２００、三菱ガス
化学社製）１０部、シリコーンオイル（ＫＦ５０、信越
化学社製）０．０２部をテトラヒドロフラン１００部に
溶解して電荷輸送層用塗布液を調製し、これを上記電荷
発生層上に塗布し、１１０℃で１０分間乾燥させて膜厚
が２０μｍの電荷輸送層を形成し電子写真感光体を作製
した。

【００５８】

【化８】

【００５９】実施例７ 実施例６におけるポリエーテル変成ジメチルポリシロキ
サン化合物０．０２部に代えてポリエーテル変成ジメチ
ルポリシロキサン化合物（ＢＹＫ−３３１、ビックケミ
ー社製）０．０４部を用いた以外は、実施例６と同様に
して電子写真感光体を作製した。

【００６０】比較例５ 実施例６においてポリエーテル変成ジメチルポリシロキ
サン化合物（ＢＹＫ−３０７、ビックケミー社製）を添
加しないこと以外は、実施例６と同様にして電子写真感
光体を作製した。

【００６１】実施例８ 実施例５と同様な方法により、７５μｍのアルミ蒸着Ｐ
ＥＴフィルム上に下引き層および電荷発生層を形成し
た。次に、前記構造式（Ａ−１）の電子輸送物質８部、
ポリカーボネート樹脂（ユーピロンＺ２００、三菱ガス
化学社製）１０部、シリコーンオイル（ＫＦ５０、信越
化学社製）０．０２部をテトラヒドロフラン１００部に
溶解して電荷輸送層用塗布液を調製し、これを上記電荷
発生層上に塗布し、１１０℃で１０分間乾燥させて膜厚
が２０μｍの電荷輸送層を形成し電子写真感光体を作製
した。

【００６２】比較例６ 実施例８においてポリエーテル変成ジメチルポリシロキ
サン化合物（ＢＹＫ−３３１、ビックケミー社製）を添
加しないこと以外は、実施例８と同様にして電子写真感
光体を作製した。

【００６３】以上のようにして得られた実施例および比
較例の電子写真感光体について、ＥＰＡ８２００（川口
電機製作所製）を用い、ダイナミックモードにて下記の
方法により静電特性を評価した。まず、電子写真感光体
に＋５．３ＫＶのコロナ放電を５秒間行い正帯電させ、
２秒後の表面電位Ｖ₂（＋Ｖ）を測定、次にバンドパス
フィルターを用いて７８０ｎｍに分光した光（５．０μ
Ｗ／ｃｍ²）を露光して、半減露光量Ｅ_1/2（μＪ／ｃｍ
²）と露光３０秒後の表面電位Ｖｒ（＋Ｖ）を測定し
た。また、＋５．３ＫＶのコロナ放電と色温度２８５６
Ｋのタングステンランプ４５Ｌｕｘの露光を５０００回
繰り返し行い、その後同様の測定を行って疲労後の静電
特性を評価した。その結果を表３に示す。

【００６４】

【表３】

【００６５】表３から明らかなように、実施例の電子写
真感光体は比較例の電子写真感光体に比べ、長波長光に
対し良好な感度を有し、繰り返し使用によっても帯電電
位の変動が少なく、かつ残留電位の上昇の少ないもので
ある。

【００６６】

【発明の効果】本発明によれば、長波長光に対し良好な
感度を有し、繰り返し使用によっても帯電電位の変動が
少なく、かつ残留電位の上昇の少ない耐久性に極めて優
れた電子写真感光体を得ることができる。また、本発明
によれば、電荷発生層中に電荷発生物質である顔料が均
一に分散され、顔料の凝集による画像欠陥の発生するこ
とのない電子写真感光体を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】合成例１で得られた無定型オキシチタニルフタ
ロシアニン顔料のＸ線回折スペクトル図である。

【図２】合成例２で得られた結晶オキシチタニルフタロ
シアニン顔料のＸ線回折スペクトル図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 ＦＩ Ｇ０３Ｇ 5/06 ３７０ Ｇ０３Ｇ 5/06 ３７０

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 導電性支持体上にフタロシアニン顔料を
   含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送
   層とを積層してなる電子写真感光体において、電荷発生
   層がポリエーテル変成ジメチルポリシロキサン化合物の
   少なくとも一種を含有していることを特徴とする電子写
   真感光体。
2. 【請求項２】 フタロシアニン顔料がオキシチタニルフ
   タロシアニン顔料または無金属フタロシアニン顔料であ
   ることを特徴とする請求項１記載の電子写真感光体。
3. 【請求項３】 電荷輸送物質として正孔輸送物質を用い
   ることを特徴とする請求項１または２記載の負帯電型の
   電子写真感光体。
4. 【請求項４】 電荷輸送物質として下記一般式（１）で
   示されるスチルベン系化合物を用いることを特徴とする
   請求項１または２記載の電子写真感光体。 【化１】 （式中、ｒ₁、ｒ₂は置換または無置換のアルキル基、置
   換または無置換のアリール基を表し、ｒ₃、ｒ₄は水素原
   子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換
   のアリ−ル基または複素環基を表す。また、ｒ₁及びｒ₂
   で環を形成していても良い。Ａｒは置換または無置換の
   アリ−ル基または複素環基を表す。）
5. 【請求項５】 電荷輸送物質として電子輸送物質を用い
   ることを特徴とする請求項１または２記載の正帯電型の
   電子写真感光体。
6. 【請求項６】 電荷輸送物質として下記構造式（２）で
   表される（２，３−ジフェニル−１−インデニリデン）
   マロノニトリルを用いることを特徴とする請求項１、２
   または４記載の電子写真感光体。 【化２】
7. 【請求項７】 導電性支持体上にフタロシアニン顔料を
   含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送
   層とを積層してなる電子写真感光体の製造方法におい
   て、フタロシアニン顔料、バインダ樹脂、ポリエーテル
   変成ジメチルポリシロキサン化合物およびエステル系溶
   剤よりなる分散液を導電性支持体上に塗布し乾燥させる
   ことにより電荷発生層を形成することを特徴とする電子
   写真感光体の製造方法。
8. 【請求項８】 バインダ樹脂がポリビニルブチラールで
   あることを特徴とする請求項７記載の電子写真感光体の
   製造方法。
9. 【請求項９】 フタロシアニン顔料がオキシチタニルフ
   タロシアニン顔料または無金属フタロシアニン顔料であ
   ることを特徴とする請求項７または８記載の電子写真感
   光体の製造方法。