JPH10306828A - 電食防止転がり軸受 - Google Patents

電食防止転がり軸受

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JPH10306828A
JPH10306828A JP7820797A JP7820797A JPH10306828A JP H10306828 A JPH10306828 A JP H10306828A JP 7820797 A JP7820797 A JP 7820797A JP 7820797 A JP7820797 A JP 7820797A JP H10306828 A JPH10306828 A JP H10306828A
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JP
Japan
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resin
rolling bearing
filler
insulating coat
creep resistance
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Pending
Application number
JP7820797A
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English (en)
Inventor
Shunichi Yabe
俊一 矢部
Toshimi Takagi
敏己 高城
Fumio Ueki
史雄 植木
Takahiko Uchiyama
貴彦 内山
Shigeaki Abe
重昭 阿部
Takanori Yamada
孝則 山田
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NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】絶縁被膜の材料を選定することにより、優れた
電食防止効果を発揮するとともに長時間の高温運転に耐
えうる放熱性を備え、且つ耐クリープ性及び成形性にも
優れた絶縁被膜を有する電食防止転がり軸受を提供す
る。 【構成】電食防止転がり軸受1Aの外輪11,内輪12
の少なくとも一方に形成する絶縁被膜2を、比抵抗が1
×1013Ω・cm以上で、かつ熱伝導率が0.5w/m
・k以上の合成樹脂組成物により形成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄道車両用電動機等に
使用される電食防止転がり軸受に係り、特に、車両の高
速化による軸受の発熱量の増大で軸受の放熱性能の更な
る向上が望まれているところに有効な電食防止転がり軸
受に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、鉄道車両用電動機等に使用される
電食防止転がり軸受においては、ハウジングや軸からの
洩れ電流が軸受の転動体と軌道輪との間に流れて電食が
生じる現象を防止するために、外輪や内輪が嵌合するハ
ウジングや軸の少なくとも一つの面に電気絶縁性の被膜
(絶縁被膜)を設けて、外部からの電流を遮断すること
が行われている。
【0003】従来の電食防止転がり軸受の絶縁被膜とし
て、例えば特開平3−277818号公報に、ガラス繊
維を含有したポリフェニレンサルファイド樹脂(以下P
PS樹脂という)により形成したものが開示されてい
る。
【0004】また、特開平5−240255号公報に
は、上記絶縁被膜をガラス繊維と炭酸カルシウムのよう
な非繊維質の絶縁性無機充填材とを含有したPPS樹脂
により形成したものが開示されている。
【0005】前者は、PPS樹脂をガラス繊維で強化す
ることにより、耐クリープ強度に優れた絶縁被膜を形成
して安定した電食防止性能を得ようとしたものである。
後者は、ガラス繊維のみでなく非繊維質の無機充填材を
も併用してPPS樹脂を強化することにより、射出成形
性を低下させずに耐クリープ強度をあげて安定した電食
防止性能と共に良好な成形性を得ようとしたものであ
る。
【0006】因みに、電食防止転がり軸受における絶縁
被膜に高い耐クリープ強度が要求されるのは、当該絶縁
被膜が回転軸とハウジングの間に締め代をもって組み込
まれる軸受内外輪の少なくとも一方に形成されるので、
耐クリープ強度が低いと時間経過に伴い絶縁被膜の肉厚
減少を生じてしまい、軸受の締め代を一定に保てなくな
くなるためである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近時、
鉄道車両の高速化の要求がますます高まり、それに伴っ
て軸回転時の軸受の発熱量が増大する傾向が顕著になっ
ている。しかるに、上記従来の電食防止転がり軸受にあ
っては、絶縁被膜に用いた材料はいずれも熱伝導率が小
さく断熱作用が大きい。例えば合成樹脂(以下、単に樹
脂ともいう)の熱伝導率は約0.2 〜0.4 W/m・K程度
であり、添加したガラス繊維も1〜6W/m・K程度に
過ぎない。そのため、この絶縁被膜を軸受被覆材として
使用した場合は軸受の回転により発生する熱が逃げにく
くて軸受の温度が上昇する。その為軸受の放熱性能の更
なる向上が望まれているという問題点がある。
【0008】そこで本発明は、このような従来の問題点
に着目してなされたものであり、絶縁被膜を比抵抗及び
熱伝導率が所定レベル以上の合成樹脂組成物からなるも
のとすることにより、電気絶縁性,耐クリープ性のみな
らず放熱性にも優れた電食防止転がり軸受を提供するこ
とを目的とする。
【0009】より詳しくは、20emu/g以上の飽和
磁化を有する充填材を樹脂に添加することにより、当該
充填材の粒子自体の磁気吸引力によってそれらの粒子同
士が樹脂中でつながり、それにより絶縁被膜の熱伝導率
を向上させて、鉄道車両用電動機の軸受などに使用した
場合も高速回転時の軸受発熱をハウジング,シャフト等
を介して系外に速やかに放出できる放熱性の更なる向上
が出来、高速回転に適応可能な電食防止転がり軸受を提
供することを目的としている。
【0010】また、本発明は、ガラス繊維などの強化充
填材に加えて、絶縁被膜の熱伝導性の向上を果たす熱伝
導向上充填材を更に含有させた樹脂を軸受用被覆材とし
て用いることにより、樹脂自体の熱伝導性を向上させ
て、鉄道車両用電動機の軸受などに使用した場合も高速
回転時の軸受発熱をハウジング,シャフト等を介して系
外に速やかに放出できる放熱性の更なる向上が出来、高
速回転に適応可能な電食防止転がり軸受を提供すること
を目的としている。
【0011】また、本発明の他の目的は、上記放熱性に
優れるとともに、電気絶縁性に優れハウジング,シャフ
トからの漏洩電流による転動体と外内輪軌道との放電,
通電による電食を効果的に防止でき、且つ耐クリープ性
にも優れハウジングや軸との間の嵌合力や嵌合すきまが
長時間の運転で変化して共回りを生じることを防止で
き、更には成形性にも優れた電食防止転がり軸受を提供
することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1に係る発明は、外内輪の少なくとも一方
に絶縁被膜を有する電食防止転がり軸受において、前記
絶縁被膜は比抵抗が1×1013Ω・cm以上で、かつ熱
伝導率が0.5w/m・k以上の合成樹脂組成物からな
ることを特徴とするものである。
【0013】ここで、前記絶縁被膜は、マトリックス樹
脂の強化に貢献する熱伝導率が10w/m・k未満で且
つ比抵抗が1×103 Ω・cm以上の繊維材〔A〕と、
飽和磁化が20emu/g以上で且つ比抵抗が1×10
3 Ω・cm以上の磁性充填材〔B〕とを含み、両者の合
計〔A+B〕が30〜75重量%であるものとすること
ができる。
【0014】また、磁性充填材〔B〕の含有量は20〜
65重量%とすることができる。また、磁性充填材
〔B〕はフェライトとすることができる。また、磁性充
填材〔B〕はその少なくとも一部を熱伝導向上充填材で
置き換えることができる。
【0015】前記熱伝導向上充填材は、熱伝導率が10
w/m・k以上で且つ比抵抗が1×103 Ω・cm以上
の非磁性高熱伝導性充填材〔C〕とすることができる。
また、非磁性高熱伝導性充填材〔C〕は無機化合物の粉
体,繊維及びウィスカーのいずれかから選定したものと
することができる。
【0016】一般に、樹脂や、ガラス繊維のような繊維
材は熱伝導率が小さいため、この両者のみを混合した樹
脂組成物から形成される絶縁被膜の熱伝導率も小さい。
また、ガラス繊維のような繊維材はそれ自体に磁性を持
っていないため、繊維同士が樹脂中で磁気的に吸引しあ
ってつながることはしない。したがってガラス繊維を互
いに接触させて熱伝導率を上げようとすると、かなり多
量に樹脂中に混入しなければならず、それによって成形
性やウエルド強度等の機械的強度が著しく低下し、軸受
に使用するのに必要とされる以上の性能を有する絶縁被
膜を形成できなくなる。
【0017】そこで本発明にあっては、磁性粒子(飽和
磁化20emu/g以上、且つ比抵抗1×103 Ω・c
m以上)からなる絶縁性の充填材を別途に樹脂に添加す
る。添加した磁性充填材の磁性粒子同士が樹脂中で互い
に吸引し合って接触し易く、それによって絶縁被膜の熱
伝導率を上げて放熱特性を向上させる。かくして耐クリ
ープ強度と共に耐熱性,絶縁性,放熱性にも優れた絶縁
被膜が得られる。
【0018】また、本発明にあっては、上記の強化繊維
材〔A〕と磁性充填材〔B〕の少なくとも一部を、熱伝
導率が10w/m・k以上で且つ比抵抗が1×103 Ω
・cm以上の非磁性高熱伝導性充填材〔C〕で置き換え
てもよい。この非磁性高熱伝導性充填材〔C〕は熱伝導
向上充填材として添加するもので、繊維状あるいはウィ
スカー状であればガラス繊維などの強化材と同じように
使用でき、樹脂自体の強度を低下させることなく熱伝導
性を向上できてより一層効果的である。
【0019】以下、更に本発明を詳細に説明する。本発
明の絶縁被膜の形成に使用する樹脂材料としては、PP
S樹脂や芳香族ナイロン(芳香族ポリアミド樹脂)や脂
肪族ポリアミド樹脂の4.6ナイロンなどを好適に用い
ることができる。PPS樹脂は吸水性が低く、また成形
性が良好であることから、低吸水性で寸法安定性に優れ
た絶縁被膜を射出成形により低コストで形成することが
できる。また、芳香族ナイロンは高融点,高強度を有
し、軸受の高速回転時には絶縁被膜温度が120℃にも
達する高温で絶縁性能を維持できて好ましい。一方、
4.6ナイロン等の脂肪族ポリアミド樹脂も良好な電気
絶縁性を有し、絶縁被膜に適する。
【0020】但し、上記樹脂は単味で電食防止転がり軸
受用の絶縁被膜に要求される複数の機能を同時に満たす
ことはできず、次に述べる添加材料と併用する。その樹
脂材料の強化に用いる本発明の繊維材〔A〕は、主とし
てマトリックス樹脂の耐クリープ性を向上させ尚且つ絶
縁被膜の電気絶縁性を維持するために用いられるもので
あり、電気絶縁性については高い方がよいが比抵抗値で
1×10 3 Ω・cm以上好ましくは1×104 Ω・cm
以上が良い。熱伝導性についても高い程好ましい。具体
的な好適例としては、グラスファイバ(GF)繊維ある
いは6チタン酸カリウムや8チタン酸カリウムなどのチ
タン酸カリウムウィスカー,ホウ酸アルミニウムウィス
カー,炭酸カルシウムウィスカー(アルゴナイト),塩
基性硫酸マグネシウムウィスカー等が有効であるが、そ
の他アラミド繊維などを用いることもできる。表1にこ
れらの比抵抗値を示す。
【0021】
【表1】
【0022】これらの主として耐クリープ性向上のため
の繊維材〔A〕の添加量は、混合物全体の10〜55重
量%であり、好ましくは20〜40重量%である。55
重量%を越えると成形性が悪くなり、10重量%未満で
は耐クリープ性が悪くなる。
【0023】本発明の磁性充填材〔B〕は、絶縁被膜の
電気絶縁性の維持と伝熱性の向上とを同時に満たすため
に用いられ、その熱伝導率は高い程好ましいが、少なく
ともガラス繊維と同程度の5〜10W/m・Kであれば
良い。一方、電気絶縁性についても高い方がよいが、比
抵抗値で1×103 Ω・cm以上、より好ましくは1×
104 Ω・cm以上であれば使用上問題はない。さら
に、飽和磁化については、20emu/g以上、より好
ましくは50emu/g以上が磁気吸引力が大きくなる
ので好適である。20emu/g未満では磁気吸引力が
小さすぎて所期の伝熱性の向上が得られない。
【0024】このような条件を満たし得る磁性充填材
は、例えばMgFe2 4 (マグネシウムフェライ
ト),MnFe2 4 (マンガンフェライト),Fe3
4 (マグネタイト),CoFe2 4 (コバルトフェ
ライト),NiFe2 4 (ニッケルフェライト),C
uFe2 4 (銅フェライト),γ−Fe2 3 (マグ
ヘマイト)などの粉体から選定される。表2にこれらの
充填材物質の飽和磁化と比抵抗を示す。
【0025】
【表2】
【0026】磁性充填材〔B〕の添加量は、絶縁被膜混
合物全体の20〜65重量%であり、好ましくは25〜
50重量%の範囲で選定される。65重量%を越えると
耐クリープ性,成形性を満たすことが困難となり、一
方、20重量%未満では伝熱性の向上が期待できず、そ
のため本願発明の電気絶縁性,伝熱性,耐クリープ性の
3拍子そろった向上という効果が期待できなくなる。
【0027】上記繊維材〔A〕と磁性充填材〔B〕との
合計添加量〔A+B〕は、30〜75重量%が好まし
い。75重量%を越えるとマトリックス樹脂が不足して
成形時の流動性低下をまねき、その結果、形成された絶
縁被膜の表面粗さが悪くなると共にウエルド強度が低下
する。一方、30重量%未満では、繊維材〔A〕,磁性
充填材〔B〕が共に必要最低量が確保できずに伝熱性,
耐クリープ性の両立が困難になる。更に、高い伝熱性,
耐クリープ性を確保するためには、合計添加量〔A+
B〕が50〜75重量%の範囲にあると、より好適であ
る。
【0028】なお、このような繊維材〔A〕,磁性充填
材〔B〕を含有する樹脂組成物にあっては、必要に応じ
て離型剤や、強度向上を目的としてシランカップリング
剤等のカップリング剤を添加しても良い。あるいは、カ
ップリング剤などで処理した繊維材又は充填材を使用し
てもよい。
【0029】更に、本発明の非磁性高熱伝導性充填材
〔C〕は、磁性充填材[B]と同様に、絶縁被膜の伝熱
性の向上と電気絶縁性の維持とを同時に満たすために用
いられるが、その熱伝導率は、磁性充填材[B]のよう
に粒子同士が磁気吸引力によって積極的につながろうと
はしないので、粒子個々により高い熱伝導性が必要にな
る。具体的には10W/m・K以上さらに好ましくは2
0W/m・K以上が必要である。一方、電気絶縁性につ
いても高い方がよいが、比抵抗値で1×103 Ω・cm以
上、より好ましくは1×104 Ω・cm以上であれば使用
上問題ない。
【0030】このような条件を満たし得る非磁性高熱伝
導性充填材〔C〕は、例えば、SiC(炭化 ケイ
素)、AlN(窒素アルミニウム)、BeO(ベリリ
ア)、BN(窒化ホウ素)、Al2 3 (アルミナ)、
MgO(マグネシア)などの粉体、繊維またはウィスカ
ー等から選定される。表3に、これらの充填材物質の熱
伝導率と比抵抗をCu(銅)、ガラス繊維(Eガラス)
と比較して示す。
【0031】
【表3】
【0032】なお、表3に示されるもののうち、Si
C,Al2 3 は繊維及びウィスカーもあるが、それ以
外は粉体状のみである。よって、耐クリープ性が更に要
求される場合には、ガラス繊維(GF)を用いずにSi
C,Al2 3 のウィスカー又は繊維を使用すれば耐ク
リープ性が更に向上し、加えて伝熱性の向上も得られ
る。
【0033】この非磁性高熱伝導性充填材〔C〕は、少
なくとも一部を磁性充填材〔B〕の代わりに使用するこ
とができる。その場合の添加量は、両者混合(〔B+
C〕)あるいは前者単独(〔C〕)のみで、絶縁被膜混
合物全体の20〜65重量%であり、好ましくは25〜
50重量%の範囲で選定される。65重量%を越えると
成形性を満たすことが困難となり、一方、20重量%未
満では耐クリープ性,伝熱性の向上が期待できず、その
ため本願発明の電気絶縁性,伝熱性,耐クリープ性の3
拍子そろった向上という効果が期待できなくなる。な
お、コスト的には、磁性充填材〔B〕の方が非磁性高熱
伝導性充填材〔C〕に比べて安価なため、非磁性高熱伝
導性充填材〔C〕単独で用いるよりも磁性充填材〔B〕
のみ或いは両者混合〔B+C〕で使用する方が有利であ
る。
【0034】上記繊維材〔A〕と磁性充填材〔B〕と非
磁性高熱伝導性充填材〔C〕との合計添加量〔A+B+
C〕は30〜75重量%が好ましい。75重量%を越え
るとマトリックス樹脂が不足して成形時の流動性低下を
まねき、その結果、形成された絶縁被膜の表面粗さが悪
くなると共にウエルド強度が低下する。一方、30重量
%未満では、繊維材〔A〕,磁性充填材〔B〕,非磁性
高熱伝導性充填材〔C〕の各必要最低量が確保できない
ために、伝熱性,耐クリープ性の両立が困難になる。更
に、高い伝熱性,耐クリープ性を確保するためには、合
計添加量〔A+B+C〕が50〜75重量%の範囲にあ
るとより好適である。
【0035】上記三者の合計添加量〔A+B+C〕の内
訳は、次のような電食防止転がり軸受の絶縁被膜として
必要な物性が得られるように、それぞれ決められる。 熱伝導率 :0.5w/m・k以上 比抵抗 :1×1013Ω・cm以上 ウエルド強度 :70MPa以上 アイゾット衝撃強度:2kJ /m2 以上、より好ましく
は落下時の強度向上のため5kJ /m2 以上とする。こ
れにより電食防止転がり軸受自体の取扱いがより容易に
なる。すなわち、ウエルド強度70MPa以上、アイゾ
ット衝撃強度2kJ /m2 以上であれば軸受をハウジン
グに挿入する際の絶縁被膜の損傷を防止できる。
【0036】耐クリープ性 :−2.5%以下(但
し、120 ℃,面圧2.9kg/mm2,100hr での寸法変化率)
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明す
る。
【0037】図1は、本発明の電食防止転がり軸受の実
施例の断面図である。この転がり軸受1Aの外輪11の
外面は絶縁被膜2で被覆されている。この例では、内輪
12は被覆なしとした。13はころである。絶縁被膜2
は、その材料として表4の各実施例および比較例に示す
樹脂組成物を用い、外輪11の外周及び左右両端面にそ
れぞれ溝11a,11bを形成し、所定厚さの絶縁被膜
2を射出成形により外輪11の外周(ハウジングが嵌合
される面)から両端面に連続して付着させることで製作
した。すなわち、先ず、予め各材料組成を、ブレンダや
ヘンシェルミキサ等により混合して二軸押出機等の押出
機に供給し、押出機から材料ペレットを得た。次に、外
輪11の外側に、絶縁被膜2の厚さ(ここでは約1.0
mm)に対応させて形成した金型を設置し、外輪11と
金型との間の空間に前記ペレットを溶融した材料を射出
して所定の時間冷却することにより、外輪11の外面に
絶縁被膜2を成形したものである。
【0038】表4に、絶縁被膜2の実施例1−1〜実施
例15−2及び比較例1の成分組成を示す。
【0039】
【表4】
【0040】また、表4に示す樹脂,繊維材〔A〕,磁
性充填材〔B〕,非磁性高熱伝導性充填材〔C〕の具体
的な商品名(登録商標にはR を付す),メーカを下記に
記す。
【0041】樹脂: PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂);呉羽化学
工業(株)「フォートロンKPS」。 芳香族PA(芳香族ポリアミド樹脂);三井石油化学
「アーレンR 」。 強化繊維材〔A〕: ガラス繊維;日東紡績(株)「CS3J−273」(シ
ランカップリング剤処理ガラスチョップドストラン
ド)。 6チタン酸カリウムウィスカー;大塚化学(株)「ティ
スモ−D」。 ホウ酸アルミニウムウィスカー;四国化成工業(株)
「アルボレックスYS3」(シランカップリング剤処理
済)。 炭酸カルシウムウィスカー;丸尾カルシウム(株)「ウ
ィスカルA」。 磁性充填材〔B〕: MnFe24 ;(株)高純度化学研究所。 CoFe24 ;(株)高純度化学研究所。 NiFe24 ;(株)高純度化学研究所。 非磁性高熱伝導性充填材〔C〕: SiCウィスカー;出光マテリアル(株),Mグレー
ド。 AlN ;出光マテリアル(株),AGSD−
100。 BN(h−BN);出光マテリアル(株),Fグレー
ド。 Al23 ;日本アエロジル(株),Aluminium O
xide C。 Al23 繊維 ;ニチアス(株) ,ルヒ゛ールR ハ゛ルク
ファイハ゛ー T/5470-RS。 MgO ;協和化学工業(株) ,パイロキス
マ5301K。 それらの絶縁被膜に関して以下の特性評価を実施した。
【0042】熱伝導率と比抵抗の測定:表4の実施例
1−1〜15−2および比較例1に示す樹脂組成物につ
いて、レーザフラッシュ法で20℃における熱伝導率
(W/m・K)及び比抵抗(Ω・cm)の測定を行っ
た。その結果を表5に示す。
【0043】
【表5】
【0044】実施例1−1〜15−2は熱伝導率が比較
例1に比べて大きく、いずれも0.5w/m・k以上
と、通常のプラスチック材料(0.2 〜0.4 w/m ・k )よ
りも良好な伝熱性を示している。特に、ガラス繊維を用
いずにSiCウィスカー又はAl2 3 繊維を使用した
実施例11−1〜12−2において、顕著な熱伝導率が
得られている。
【0045】また、各実施例1−1〜15−2の比抵抗
は比較例1よりも小さくなっているが、いずれも1×1
13Ω・cm以上を有しており、十分な電気絶縁性を備
えていることがわかる。
【0046】ウエルド強度,アイゾット衝撃強度の測
定:表4の実施例1−1〜15−2および比較例1の組
成を有する樹脂組成物について所定の試験片を成形し、
23℃でウエルド強度及びアイゾット衝撃強度の測定を
行った。すなわちウエルド強度は、金型キャビティの両
端から絶縁被膜樹脂組成物を注入させてその樹脂組成物
の会合部(ウエルド部)を中央に持つJIS1号試験片
(t=3mm)を成形し、これを用いて引張り速度5m
m/minで測定した。また、アイゾット衝撃強度は、
ノッチ付試験片で測定した。
【0047】それらの測定結果を表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】なお、実施例1−1〜10−2では、マト
リックス樹脂の充填材として強化性の高いガラス繊維を
用い、実施例13−1〜実施例15−2では同じく強化
繊維材〔A〕に属するウィスカー類を用いているので、
ウエルド強度は差異が少なく、いずれも70MPa以上
であった。これに対して、実施例11−1,11─2は
強化繊維材〔A〕ではなく非磁性高熱伝導性充填材
〔C〕であるSiCウィスカーを、また実施例12−
1,12−2ではアルミナ繊維を用いているが、やはり
70MPa以上のウエルド強度が得られている。
【0050】また、アイゾット衝撃強度は、ガラス繊維
〔A〕を減らして粉体系の充填材〔B〕,〔C〕を添加
することによって比較例1(ガラス繊維40重量%)よ
り少し低めになっているが、いずれも2.0KJ/m2
を越えており、使用上問題ないことがわかった。
【0051】耐クリープ性の把握:実施例1−1〜1
5−2及び比較例1の組成を有する樹脂組成物について
円柱状の試験片を成形し、図2に示す試験装置を用いて
圧縮クリープ試験を行った。
【0052】測定は、当該試験片を試験装置ごと、12
0℃に設定された恒温槽にいれて100時間放置(面圧
2.9kg/mm2 )し、その後取り出して1時間室温
に保持した後に当該試験片TPの高さ変化率を測定し
た。測定結果を表7に示す。
【0053】
【表7】
【0054】各実施例とも、比較例1よりも高さ変化率
は小さく、耐クリープ性は良好である。特に、磁性充填
材〔B〕をガラス繊維と併用した実施例1−1〜4−
2、非磁性高熱伝導性充填材〔C〕のうちのアルミナ繊
維をガラス繊維と併用した実施例10−1,10−2及
びガラス繊維を使わずにSiCウィスカーやアルミナ繊
維を単独で充填した実施例11−1〜12−2は、高さ
変化率が小さくて顕著な耐クリープ性を示している。
【0055】軸受での温度測定:この試験は、表4の
実施例1−1〜15−2および比較例1に示す樹脂組成
物からなる絶縁被膜2を前記のようにして製作した図1
に示す電食防止転がり軸受1A(内径70mm,外径1
50mm,幅35mm)を被試験体として行った。すな
わち、当該電食防止転がり軸受1Aをハウジングに圧入
し、軸受内に所定量(軸受空間の約25%)のグリース
を封入して所定のならし運転を行った後、室温で700
0rpmまで急加速を行い、約1時間保持した。この急
加速の間に、所定時間間隔で内輪12の温度Tを記録し
た。内輪の最高温度を表8に示す。
【0056】
【表8】
【0057】実施例1−1〜実施例15−2は、表8に
示すように、比較例1に比べて絶縁被膜の熱伝導率を上
げたことで、軸受の回転により発生する熱を放射する効
果が大きく、その結果として内輪温度を40℃以上も下
げることができた。特に、表5で顕著な熱伝導率を示し
たSiCウィスカー又はAl2 3 繊維を使用した実施
例11−1〜12−2における放熱効果が大きいことが
確認された。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1
に係る電食防止転がり軸受にあっては、外内輪の少なく
とも一方に有する絶縁被膜を、比抵抗が1×1013Ω・
cm以上で、かつ熱伝導率が0.5w/m・k以上の合
成樹脂組成物からなるものとしたため、電気絶縁性,耐
クリープ性のみでなく放熱性にも優れた電食防止転がり
軸受を提供できるという効果が得られる。
【0059】また、前記絶縁被膜の合成樹脂組成物とし
て、マトリックス樹脂に耐クリープ性の大きい繊維材
〔A〕と、飽和磁化及び比抵抗が一定値以上の磁性充填
材〔B〕とを両者の合計〔A+B〕30〜75重量%の
範囲で混合したものにすると、磁性充填材〔B〕の電気
絶縁性向上作用及び伝熱性向上作用により、耐クリープ
性,伝熱性,成形性及び電気絶縁性に一層優れた絶縁被
膜が得られて、例えば鉄道車両用電動機の軸受などのよ
うな高速回転で高温にさらされる使用条件下でも安定し
た性能が保証できる電食防止転がり軸受を提供できると
いう効果を奏する。
【0060】さらに、前記絶縁被膜の合成樹脂組成物の
磁性充填材〔B〕の少なくとも一部を非磁性高熱伝導性
充填材〔C〕で置換しても、上記同様の効果を奏する。
また、磁性充填材〔B〕及び非磁性高熱伝導性充填材
〔C〕の含有量を当該充填材の種類に応じて単独もしく
は合わせて20〜65重量%の範囲内で任意に調整する
と、絶縁被膜の耐クリープ性,伝熱性,成形性及び電気
絶縁性の諸特性のバランスを調整できて、軸受の使用条
件等に応じて製品に多様性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電食防止転がり軸受の実施例の断面図
である。
【図2】耐クリープ性試験装置の模式側面図である。
【符号の説明】
1A 電食防止転がり軸受 2 絶縁被膜 11 外輪 12 内輪
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内山 貴彦 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 阿部 重昭 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 山田 孝則 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外内輪の少なくとも一方に絶縁被膜を有
    する電食防止転がり軸受において、前記絶縁被膜は比抵
    抗が1×1013Ω・cm以上で、かつ熱伝導率が0.5
    w/m・k以上の合成樹脂組成物からなることを特徴と
    する電食防止転がり軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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DE102010015155A1 (de) 2010-04-16 2011-10-20 Schaeffler Technologies Gmbh & Co. Kg Elektrisch isolierender Lagerring, insbesondere für ein Wälzlager
JP2020063826A (ja) * 2018-10-19 2020-04-23 日本精工株式会社 転がり軸受

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