JPH1030165A - アルミニウム押出し用ダイス及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム押出し用ダイス及びその製造方法

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JPH1030165A
JPH1030165A JP20777496A JP20777496A JPH1030165A JP H1030165 A JPH1030165 A JP H1030165A JP 20777496 A JP20777496 A JP 20777496A JP 20777496 A JP20777496 A JP 20777496A JP H1030165 A JPH1030165 A JP H1030165A
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重男 大平
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面硬さ,耐摩耗性に優れた窒化層をもつア
ルミニウム押出し用ダイスを得る。 【解決手段】 熱間工具鋼を焼入れ・焼戻し処理した
後、熱間工具鋼の表面に生成した酸化物層を機械的処理
及び/又は化学的処理で除去し、[N]源を有する窒化
用ガス雰囲気中で480〜550℃に5〜10時間保持
する窒化処理を施す際、窒化処理後の熱間工具鋼表面に
おけるFe34 /Fe3 NのX線強度比が5%以下と
なるように、化学的処理又は窒化処理中の雰囲気の酸素
濃度を20〜100ppmに調整する。 【効果】 鉄酸化物が抑制された窒化層が形成されるた
め、消失・剥離等が押さえられ、ダイス寿命が長くな
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面性状に優れたアル
ミ押出し形材を押出し成形するためのアルミニウム押出
し用ダイス及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】壁材等の建築用部材やトラック用アオリ
等では、光輝性が要求される装飾部品を押出しによって
成形加工する方法が採用されるようになってきた。この
種の押出し加工に使用されるダイスは、熱間工具鋼に塩
浴窒化等の窒化処理を施すことにより作製されている。
窒化処理により硬質化されたベアリング面等のダイス表
面は、得られる押出し形材の表面性状に大きな影響を及
ぼすものであるが、押出し中のアルミニウム合金が接触
し、アルミニウム合金のメタルフローによって摩耗し易
い箇所である。そのため、ダイス表面を押出し開始時と
同じ状態に如何に保っておくかが、押し出し形材の品質
を安定化させる上で重要になる。たとえば、押出しの継
続に伴ってベアリング面が摩耗し、表面硬質層が部分的
に脱落し、表面層の組成や硬度が不均一になる。不均一
な表面層は、押出し形材に寸法変動をもたらす要因とな
ると共に、形材の表面性状に悪影響を与える。その結
果、表面品質を低下させるストリーク等の欠陥が押し出
し形材の表面に現れ易くなる。そこで、実際の操業で
は、ある一定量を押し出した後でベアリング面を研磨し
て形状修正し、再窒化処理を施し、次の押出しに繰返し
使用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】押出し用ダイスは、繰
返されるダイス表面の形状修正によって痩せ細り、最終
的には廃棄処分される。しかし、ダイスは高価なもので
あるから、廃棄されるまでに再窒化によって繰返し使用
できる回数が多いほど、生産コストの低減につながる。
また、ダイスベアリング面の摩耗が少ないほど、ダイス
寿命が長くなり、生産効率が向上すると共に形材の品質
も安定化する。特に優れた表面性状が要求される建築用
壁材,トラック用アオリ等の製品に対しては、ダイスベ
アリング面の制御が重要であり、製品の品質管理のため
に常に一定のベアリング形状を維持することが必要とな
る。ところが、現状の塩浴窒化やガス窒化で処理したダ
イスは、窒化層の表面に鉄窒化物の外に鉄酸化物が形成
される。鉄酸化物は、押出し中にベアリング面から剥離
・脱落し、耐摩耗性を劣化させる。その結果、鉄窒化物
の摩耗も促進されることになり、ストリーク等の表面欠
陥が発生し易くなる。本発明は、このような問題を解消
すべく案出されたものであり、窒化処理条件を制御する
ことにより、鉄酸化物の生成を抑え、耐摩耗性に優れた
窒化層を熱間工具鋼の表面に形成し、表面品質が良好な
押出し形材を製造するのに適した長寿命の押出し用ダイ
スを得ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の製造方法は、そ
の目的を達成するため、熱間工具鋼を焼入れ・焼戻し処
理した後、熱間工具鋼の表面に生成した酸化物層を機械
的処理及び/又は化学的処理で除去し、[N]源を有す
る窒化用ガス雰囲気中で480〜550℃に5〜10時
間保持する窒化処理を施する際、窒化処理後の熱間工具
鋼表面におけるFe34 /Fe3 NのX線強度比が5
%以下となるように、化学的処理又は窒化処理中の雰囲
気の酸素濃度を20〜100ppmに制御することを特
徴とする。焼入れ・焼戻しで生成した酸化物層は、ヤス
リ等を使用した機械研磨,反応性ガス中でのクリーニン
グ等によって熱間工具鋼の表面から除去される。反応性
ガスを使用したクリーニングでは、たとえば焼入れ・焼
戻しされた熱間工具鋼をフッ化ビニリデン樹脂等の
[F]源を含む物質と共に300〜500℃に15〜6
0分保持する。また、塩化ビニリデン樹脂等の[Cl]
源を含む物質も使用可能である。反応性ガス中でのクリ
ーニングに際しては、雰囲気中の酸素量を20〜100
ppmに調整することが重要である。酸素量が100p
pmを超える雰囲気では、F又はClによる酸化物のク
リーニング作用が低下する。逆に、酸素量が20ppm
に満たない雰囲気では、鋼材表面に対するF又はClの
クリーニング作用が強すぎ、滑らかな表面状態が維持で
きなくなる。
【0005】[N]源を有する窒化用ガス雰囲気として
は、アンモニアガス単独又はアンモニアガスと窒素ガス
との混合ガスが使用される。窒化処理時に生じる表面の
固溶カーボン量の低下分を補償して基材のC含有量を確
保するためには、[N]源を有する窒化用ガス雰囲気に
炭酸ガスを5体積%以下の割合で添加することが好まし
い。しかし、添加された炭酸ガスは、酸素源となって窒
化層を酸化させることにも作用するため、固溶カーボン
量を補償する限りにおいて可能な限り低い値に炭酸ガス
添加量を定めることが望ましい。窒化処理時に窒化層の
酸化を抑制する上で、窒化用雰囲気ガスの酸素量を20
〜100ppmに調整することが重要である。酸素量が
100ppmを超える雰囲気では、酸化物の形成によっ
て窒化物の結晶成長が妨げられる。逆に20ppmに満
たない酸素量では、鉄窒化物の結晶配向が促進され、鉄
窒化物がランダムに成長し難くなる。本発明に従ったア
ルミニウム押出し用ダイスは、焼入れ・焼戻し処理で生
成した酸化物を除去した後の熱間工具鋼表面に窒化層が
形成されており、窒化処理後の表面層がFe34 /F
3 NのX線強度比5%以下に規制されている。また、
このとき窒化処理で熱間工具鋼の表面に形成されたFe
3 Nは、特定方位に配向することなく結晶方位がランダ
ムになっている。
【0006】
【実施の形態】
基材の選択及び硬度調質 本発明に従った押出し用ダイスは、ダイス基材としてS
KD61,SKD62等の熱間工具鋼を使用し、焼入れ
・焼戻しにより所定の硬度に調質している。基材の硬度
は、HRC45〜53の範囲に調質することが好ましい。
硬度がHRC53を超えると、鋼材の靭性が劣化し、割れ
易くなる。逆にHRC45に満たない硬度では軟らかす
ぎ、押出し時の圧力でダイスが変形し易くなる。 酸化物の除去 焼入れ・焼戻し後の熱間工具鋼には、その表面に鉄酸化
物が生成している。この酸化物は、Fe34 ,Fe2
3 等であるが、後工程として行われる化学的処理や窒
化処理時に雰囲気中の酸素濃度に影響され、増量する。
また、アルミニウムの押出しに際して窒化処理されたダ
イスを500℃程度まで予熱する工程で、表面にある酸
化物が更に増加する方向にある。
【0007】鉄酸化物は、基材に対する密着力が弱く、
しかも鉄窒化物Fe3 Nに比較して摩耗し易い。そのた
め、アルミニウムの押出し中に剥離又は摩耗し、アルミ
ニウム押出し形材の表面に欠陥を発生させる原因とな
る。このような欠陥を抑制する上では、鉄酸化物をコン
トロールすることが重要となる。本発明者等は、この関
連でダイス表面のFe34 /Fe3 NのX線強度比を
押出し直前で20%以下に規制することが有効であるこ
とを見い出し、整理番号P−010705(平成8年6
月26日出願)として出願した。Fe34 /Fe3
のX線強度比を20%以下にするためには、ダイス製造
工程において最初から酸化物を制御する必要がある。本
発明等は更に研究を進め、窒化処理後のダイス表面にお
けるFe34 /Fe3 NのX線強度比を5%以下にす
ることにより、鉄酸化物に起因する欠陥が抑制されるこ
とを見い出した。Fe34 としてX線回折角35.5
度付近のピーク値を測定し、Fe3 NとしてX線回折角
43.5度付近のピーク値を測定し、両ピーク値を比較
してFe34 /Fe3 NのX線強度比を求める。な
お、基材表面に生じる鉄酸化物はFe23 も含んでい
るが、Fe23 のピーク値はFe34 と重なること
から、Fe34 に注目してピーク値を計測することに
より鉄酸化物を定量できる。Fe34 /Fe3 NのX
線強度比を5%以下にするためには、焼入れ・焼戻し等
の熱処理で熱間工具鋼の表面に生じた表面酸化物を先ず
機械的に除去する。たとえば、金属ヤスリ,紙ヤスリ等
で熱間工具鋼表面を研磨することにより、表面酸化物を
除去する。なお、焼入れ・焼戻し時に表面酸化物の生成
がコントロールされ、除去が必要なほどの酸化物が生成
していない場合には、この工程を省略できる。
【0008】化学的処理による酸化物の除去 紙ヤスリ等で表面酸化物を除去したダイス又は表面酸化
物の少ないダイスは、窒化処理に先立って更に酸化物を
化学的にクリーニング除去する。化学的なクリーニング
方法としては、[F]源又は[Cl]源を含む物質と共
にダイスを300〜500℃に15〜60分間保持す
る。300〜500℃に加熱することにより、[F]源
又は[Cl]源が分解し、活性化したF又はClが発生
する。活性状態のF又はClは、ダイス表面の酸化物と
反応し、酸化物がダイス表面から除去される。加熱温度
が300℃に満たないと後続工程における窒化処理温度
との差が大きすぎ、500℃を超えるとF又はClによ
るクリーニング効果が劣る。また、15分に満たない保
持時間ではクリーニングが不十分であり、保持時間が6
0分を超えても長時間保持に見合ったほどクリーニング
効果が向上しない。
【0009】[F]源としては、ガス状,固体状等が使
用される。ガス状[F]源には、F2 ,ClF3 ,NF
3 ,CF4 ,SF6 ,C26 等がある。固体状[F]
源には、フッ素を含有するPTFE,PCTFE,PV
DF,PVF等の樹脂がある。たとえば、樹脂シートで
ダイスを包み、或いはダイスの近くにペレットをおいた
状態で加熱することにより、活性化したFを発生させる
ことができる。[Cl]源としては、ガス状,固体状等
が使用される。ガス状[Cl]源には、HCl,ClF
3 等がある。固体状[Cl]源には、塩素を含有する塩
化ビニル,塩化ビニリデン等の樹脂がある。この場合に
も、樹脂シートでダイスを包み、或いはダイスの近くに
ペレットをおいた状態で加熱することにより、活性化し
たClを発生させることができる。クリーニング時の雰
囲気としては、酸素濃度を20〜100ppmに調整す
ることが重要である。雰囲気中に100ppmを超える
多量の酸素が含まれると、ダイス表面の酸化物がFやC
lで分解されず、ダイス表面がクリーニングされなくな
る。酸素濃度100ppm以下の雰囲気では、ダイス表
面のクリーニングがスムーズに行われる。酸素量が20
ppm以下の雰囲気では、F又はClが鋼表面と過度に
反応し、表面の均一性が損なわれる。また、雰囲気中に
含まれる水蒸気も、酸素ポテンシャルを上げてFやCl
を消費することになるので、少ないほど好ましい。
【0010】窒化処理 表面から酸化物を除去したダイスに、[N]源を含む窒
化用ガス雰囲気中で480〜550℃×5〜10時間の
窒化処理を施す。処理温度が480℃に達しないと反応
が遅く、550℃を超えると基材の鋼が軟化し易い。ま
た、加熱時間が5時間未満では十分な窒化層が得られ
ず、10時間を超えても加熱時間を長くしたことに見合
う効果が得られない。[N]源としては、アンモニア単
体又はアンモニアと窒素との混合ガスが使用される。ま
た、炭酸ガスを添加するとき、温度の上昇に伴う鋼材表
面の固溶炭素の減量が補償される。しかし、過剰の炭酸
ガスを添加すると雰囲気の酸素ポテンシャルが上り、白
層が酸化される虞れがあるため、炭酸ガス量としては5
%以下に抑制することが必要である。この窒化処理によ
り、ベアリング面を始めとするダイスの表面に厚み10
0〜150μmの窒素拡散層を介して厚み4〜8μmの
白層が形成される。白層は、厚みが4μmに満たないと
耐摩耗性が十分でなく、8μmを超えると処理時間が長
くなり経済的でない。白層は、鉄の窒化物Fex N(x
=2〜3)からなり、十分な硬さ及び耐摩耗性をダイス
に付与する。このとき、雰囲気中の酸素濃度を20〜1
00ppmに調整する必要がある。酸素濃度が100p
pmを超えると鉄酸化物の生成量が多くなり、Fe3
4 /Fe3 NのX線強度比が5%を超えることがある。
また、酸素濃度が20ppm未満になるとFe3 Nの結
晶が方向性を帯び、耐摩耗性の改善に有効なランダム方
位に生成しなくなる。更に、20ppm未満の酸素量
は、CO2 等によりCを表面に固溶させる力を弱めるこ
とにも作用する。
【0011】Fe34 /Fe3 NのX線強度比 ダイス表面に形成される鉄酸化物には、Fe34 及び
Fe23 が共存している。しかし、X線回折ではFe
23 のピーク値がFe34 に重なっていることか
ら、回折角35.5度付近にあるFe34 のピーク値
によって窒化層の酸素濃度を把握できる。鉄の窒化物
は、Fe3 Nがあり、43.5度付近のX線回折ピーク
値で把握できる。Fe34 /Fe3 NのX線強度比5
%以下の条件は、本発明者等による多数の実験結果から
定められたものであり、ダイス表面に形成されている窒
化層の酸化・消失を防止する上で有効な指標である。F
34 /Fe3 NのX線強度比5%を境として窒化層
の酸化傾向が別れ、5%以上では押出し直前の予熱工程
で酸化物が成長し易くなり、Fe34 /Fe3 NのX
線強度比が20%を超えるようになる。この点、押出し
直前の予熱工程で酸化物の増加を抑え、健全な窒化層を
維持するためには、窒化処理後におけるFe34 /F
3 NのX線強度比を5%以下にすることが重要なファ
クターとなる。
【0012】窒化処理時の反応における鉄酸化物と鉄窒
化物の生成自由エネルギーを比較すると、鉄酸化物の生
成自由エネルギーの方が鉄窒化物の生成自由エネルギー
より小さい。換言すると、雰囲気中に酸素が存在する
と、酸化物が先に形成され易い。この点でも、雰囲気中
の酸素量をコントロールすることが必要である。また、
本発明者等による調査・研究の結果として、Fe3 Nの
(100)面は、酸化物の量に依存していることが判明
した。なお、窒化物ピークが酸化物ピークから離れてお
り、区別し易いため、(100)面の極点図で酸化物に
よる影響を把握できる。後述する実施例でも説明してい
るように、酸化物の量が増加すると窒化物の結晶方位が
揃ってくる。このことは、逆に窒化物の結晶方位から酸
化物の量が把握できることを意味する。すなわち、Fe
3 Nの結晶方位が配向することなく、ランダムであると
き、酸化物の量が少なく、健全な窒化層が形成されてい
ることが判る。Fe3 N結晶のランダム化には、酸化物
の生成を抑制しながら窒化層を生成させるため、窒化処
理に先立って機械的手段,化学的手段又は両者の併用に
よりダイス表面から不動態酸化皮膜を除去し、且つ酸素
量がコントロールされた雰囲気中で窒化処理することが
重要である。以上に掲げた条件は、押出し工程に繰返し
使用するための再窒化処理するときにも採用される。ダ
イスが押出し加工に使用された後、白層、すなわちFe
の窒化物層が摩耗によって消滅するが、同じ条件下で再
窒化処理することにより、健全な窒化層をもつ押出し用
ダイスとして再使用される。
【0013】
【実施例】
実施例1:熱間工具鋼SKD61製のアルミ押出し用ダ
イスを焼入れ・焼戻して、硬さをHRC52に調質した
後、ベアリング面を紙ヤスリで磨いて酸化物を除去し
た。その後、ダイスをフッ化ビニリデン樹脂シートで包
み、加熱炉に装入し350℃×30分加熱保持した。加
熱保持によりフッ化ビニリデン樹脂が分解し、反応性の
高い分解ガスでダイス表面をクリーニングし、表面から
不動態皮膜等の酸化物を除去した。このとき、雰囲気の
酸素量は約50ppmであった。次いで、体積率でNH
3 :N2 :CO2 =1:3:0.2の混合ガスを加熱炉
に導入し、520℃×7時間の窒化処理を施した。窒化
処理時、雰囲気の酸素量は約80ppmであった。ダイ
ス表面に形成された窒化層をX線回折したところ、図1
(a)に示す分析結果が得られた。図1(a)から明ら
かなように窒化処理されたダイスでは、Fe34 がほ
とんど検出されず、Fe3 Nが主体の窒化層が形成され
ていることが判る。この場合、Fe34 /Fe3 Nの
X線強度比は3%であった。また、反射法で測定したF
3 N(100)の極点図を示す図2(a)にみられる
ように、窒化層を形成する結晶粒の面方位分布は、ほと
んど配向がなくランダムになっていた。
【0014】比較のため、シアン酸系の塩浴を使用した
従来法の塩浴窒化で形成された窒化層のX線回折結果を
図1(b)に示す。塩浴窒化したダイスでは、Fe3
及びFe34 が最表面に同定される。この場合、Fe
34 /Fe3 NのX線強度比は7%であった。これ
は、塩浴窒化処理時に窒化層の表面が酸化され、生成し
た酸化層がX線回折ピークとして表れたものと推察され
る。また、図2(b)のFe3 N(100)極点図をみ
ても、Fe3 Nが試料面内に含まれており、[110]
に近い軸が揃った優先配向した傾向が示されている。形
成された窒化層の硬度分布を測定したところ、本発明に
従って形成された窒化層は、図3にみられるように従来
法による窒化層と比較して表面硬度が高くなっていた。
高い表面硬度は、本発明に従って形成された窒化層に鉄
酸化物が少なく、硬度の高い鉄窒化物を主体として窒化
層が形成されていることに起因する。一般に、表面硬度
が高いと耐摩耗性が向上するといわれており、この硬度
測定結果からも本発明による窒化層が耐摩耗性に優れて
いることが示されている。
【0015】実施例2:本発明に従って作製されたダイ
ス及び従来の塩浴窒化で作製されたスパンドレルダイス
を使用し、アルミニウム合金6063のビレットから建
築向け壁材を押し出した。なお、押出しに先立って、そ
れぞれのダイスを酸素濃度50〜60ppmの窒素雰囲
気中で450℃に5時間加熱保持した。また、予熱され
た押出し直前のダイス表面におけるFe34 /Fe3
NをX線強度比を別の実験から推定したところ、本発明
に従った窒化処理が施されたダイスでは20%以下、従
来の塩浴窒化されたダイスでは30%であった。押出さ
れた形材の表面粗さを測定し、押し出したビレットの本
数に応じた表面粗さの推移を調査した。図4の調査結果
にみられるように、塩浴窒化処理した従来のダイスで
は、押し出したビレットの本数が増えるに従って形材の
表面粗さが大きくなった。他方、本発明に従って窒化処
理したダイスでは、形材の表面粗さが大きくなる割合が
抑制されており、表面性状が安定化した形材が得られて
いることが判る。また、押出し後にダイスのベアリング
面を観察したところ、クワレ,カジリ等の損傷がほとん
ど検出されなかった。
【0016】実施例3:実施例2と同様に窒化処理した
2種類のダイスに、酸素濃度50〜60ppmの窒素雰
囲気中で450℃に5時間加熱保持する予熱処理を施し
た後、形材をビレットから押し出した。得られた形材を
アルマイト処理及び封孔処理した後、色調,光沢等の特
性を調査した。図5の調査結果にみられるように、従来
のダイスを使用して得られた押出し形材では、ビレット
2〜3本目の押し初めで光沢が低く、L値が高く白みが
かった色調を呈していた。他方、本発明に従って窒化処
理したダイスを使用して得られた押出し形材では、押し
始めが極端に白くなる傾向がみられなかった。
【0017】実施例4:実施例2と同様に窒化処理した
2種類のダイスに、酸素濃度50〜60ppmの窒素雰
囲気中で450℃に5時間加熱保持する予熱処理を施し
た後、トラック用アオリを押し出した。同じ本数のビレ
ットを押し出した後、各ダイスについてベアリング面の
摩耗状況を目視観察すると共に、押し出された形材の表
面を目視観察した。その結果、本発明に従って窒化処理
されたダイスで押し出した場合、従来法に比較してクワ
レの発生が少なく、形材の表面光沢も高くなっていた。
更に、それぞれの窒化処理を施した後、摩耗が発生する
までの押出しビレット本数を比較した結果、従来法では
ビレット57本の押出し後にクワレが発生し、押出し不
可能となった。これに対し、本発明に従って窒化処理さ
れたダイスを使用した場合には、ビレット70本の押出
し後もクワレが発生しておらず、押出し可能な状態であ
った。このことからも、本発明に従って形成された窒化
層は、酸化物が少ないことから耐摩耗性が良好であるこ
とが確認される。
【0018】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の押出し
用ダイスは、酸化物が抑制され、耐摩耗性に優れたFe
3 Nを主体とする窒化層がダイス表面に形成されてい
る。また、ダイス表面をクリーニングする際の雰囲気及
び窒化処理時の雰囲気の酸素量を20〜100ppmに
調整することによって、押出し直前のダイス表面におけ
るFe34 /Fe3 NのX線強度比が5%以下に抑制
され、Fe3 Nの結晶方位も配向することなくランダム
になっている。そのため、押出しに先立って予熱が施さ
れた状態においても、Fe34 /Fe3 NのX線強度
比が20%以下に維持される。このように調整された窒
化層は、表面硬度及び耐摩耗性に優れ、アルミニウムの
押出しの生産性良く行うことが可能となる。また、得ら
れた押出し形材も、表面性状が安定化し、高品質の製品
が製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明例(a)及び比較例(b)で形成され
た窒化層のX線回折パターン
【図2】 本発明例(a)及び比較例(b)で形成され
た窒化層のFe3 N(100)極点図
【図3】 本発明例及び比較例で窒化処理されたダイス
表面の硬度分布
【図4】 本発明例及び比較例で窒化処理されたダイス
を使用して押出し加工したとき、得られた押出し形材の
表面粗さに及ぼすダイスの影響
【図5】 本発明例及び比較例で窒化処理されたダイス
を使用して押出し加工したとき、得られた押出し形材の
光沢及び色調に及ぼすダイスの影響

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱間工具鋼を焼入れ・焼戻し処理した
    後、熱間工具鋼の表面に生成した酸化物層を機械的処理
    及び/又は化学的処理で除去し、[N]源を有する窒化
    用ガス雰囲気中で480〜550℃に5〜10時間保持
    する窒化処理を施する際、窒化処理後の熱間工具鋼表面
    におけるFe34 /Fe3 NのX線強度比が5%以下
    となるように、化学的処理又は窒化処理中の雰囲気の酸
    素濃度を20〜100ppmに制御することを特徴とす
    るアルミニウム押出し用ダイスの製造方法。
  2. 【請求項2】 焼入れ・焼戻しされた熱間工具鋼を機械
    研磨し、熱間工具鋼の表面から酸化物層を除去する請求
    項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 焼入れ・焼戻しされた熱間工具鋼を
    [F]源を含む物質と共に300〜500℃に15〜6
    0分保持し、熱間工具鋼の表面から酸化物層を除去する
    請求項1記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 [F]源を含む物質としてフッ化ビニリ
    デン樹脂を使用する請求項3記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 焼入れ・焼戻しされた熱間工具鋼を[C
    l]源を含む物質と共に300〜500℃に15〜60
    分保持し、熱間工具鋼の表面から酸化物層を除去する請
    求項1記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 [Cl]源を含む物質として塩化ビニリ
    デン樹脂を使用する請求項5記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 [N]源を有する窒化用ガス雰囲気がア
    ンモニアガス単独又はアンモニアガスと窒素ガスとの混
    合ガスである請求項1記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 炭酸ガスを5体積%以下の割合で添加し
    た[N]源を有する窒化用ガス雰囲気を使用する請求項
    1又は7記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 焼入れ・焼戻し処理で生成した酸化物を
    除去した後の熱間工具鋼表面に窒化層が形成されてお
    り、窒化処理後の表面層がFe34 /Fe3NのX線
    強度比5%以下に規制されているアルミニウム押出し用
    ダイス。
  10. 【請求項10】 窒化処理で熱間工具鋼の表面に形成さ
    れたFe3 Nの結晶方位がランダムである請求項9記載
    のアルミニウム押出し用ダイス。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002060845A (ja) * 2000-08-09 2002-02-28 Yamanashi Prefecture ダイカスト金型の高寿命化方法
US8003720B2 (en) 2005-01-28 2011-08-23 Milliken & Company Method and compositions for reducing plate-out in the manufacture of plastic articles
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CN106244979A (zh) * 2016-08-30 2016-12-21 贵州红林机械有限公司 一种提高中碳铬锰钢氮化白层硬度的方法

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