JPH10280012A - 塗料顔料用金属粉末およびその製造方法 - Google Patents

塗料顔料用金属粉末およびその製造方法

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JPH10280012A JP8830497A JP8830497A JPH10280012A JP H10280012 A JPH10280012 A JP H10280012A JP 8830497 A JP8830497 A JP 8830497A JP 8830497 A JP8830497 A JP 8830497A JP H10280012 A JPH10280012 A JP H10280012A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塗料の顔料として使用すると、その塗膜に従
来品に比べて格段に優れた防食性を付与できる塗料顔料
用金属粉末およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 Mg:0.2〜10wt%を含み、Al:
1.0wt%以下を含むか含まず、残部がZnおよび不可
避的不純物からなる成分組成の金属粉末であって、この
粉末の金属組織がZnと、Zn−Mg合金中に、Znと
Mgの固溶金属を有することを特徴とする溶射用あるい
は塗料顔料用金属粉末。上記成分組成の溶融金属の液滴
の凝固までの冷却速度を15℃/sec以上とすることを特
徴とする溶射用あるいは塗料顔料用金属粉末の製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗料の顔料として
使用すると、その塗膜に優れた防食性を付与できる塗料
顔料用金属粉末およびその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、高耐蝕性塗料の顔料としては、主
にZn粉が使用されている。この製造は単に純金属から
のZn粉の製造なので、厳しい酸度濃度管理や冷却速度
コントロールをして、その組織の内容についてコントロ
ールするようなことはなかった。
【0003】産業機械、車両、建築物、化学工業施設、
電力施設、橋梁、ウォーターフロントの構造物等に用い
られている鉄鋼材料の防食対策については、亜鉛粉末を
顔料として、有機材・無機材をビヒクルとした構成のジ
ンクリッチペイントが主流である。ジンクリッチペイン
トは、主に重防食塗装の下塗りとして用いられ、主に、
10μm以下の粒度を持つ亜鉛粉末が使われている。手
軽に取り扱え、防食効果も程々に期待できるため、よく
使われる塗料である。
【0004】ただ、亜鉛粉末とビヒクルの関係で塗装ヒ
ビ割れ、または塗装後のダレ発生のため、厚膜塗装に制
限があり、厚みMax250μmとなっている。このた
めに、亜鉛含有量に制限があり、長時間防食性となると
使用環境によっては亜鉛の防食による消失速度が大き
く、鋼材に対する保護作用が長続きしない場合があり、
より高性能防食材料の開発の期待がある。
【0005】この時に、Zn−Mg合金粉末が従来の材
料(Zn粉末)に比べて優れているという例が示され
た。例えば、特開昭59−52645号公報、特開昭5
9−167249号公報では、亜鉛粉末とZn−Mg合
金粉末を含むジンクリッチペイントが、また特開昭59
−198142号公報では亜鉛粉末とZn−Mg合金粉
末とMn粉末を含むジンクリッチペイントが示された。
更に、特開平1−311178号公報では塗料における
Zn−(5〜15%)Mg合金粉末の高寿命防食性能が
示され、また特開平2−73932号公報では金属組織
がZnとMgZn2 より構成されるZn−Mg合金粉末
の高寿命防食性能が示された。
【0006】一方、直近の特開平8−60324号公報
では、Zn−Mg−Al溶融めっき層ではあるが、その
めっき層の金属組織がZnとMg2 Zn11よりなるもの
が、ZnとMgZn2 よりなるもよりも耐蝕性にすぐれ
ることが示されている。また、上記金属組織は溶融めっ
き層が凝固するまでの冷却速度で制御でき、その速度を
10℃/sec以下にすることでMg2 Zn11が得られ、ま
た10℃/sec超とするとMgZn2 が得られることが示
される。
【0007】上記Zn−(5〜15%)Mg合金粉末や
金属組織がZnとMgZn2 より構成されるZn−Mg
合金粉末は、Zn粉末に比べて防食性は向上する。しか
しながら、これらの合金粉末は防食性が十分といえず、
またZn−Mg合金の金属組織におけるZn−Mg化合
物として、特開平2−73932号公報にはMgZn2
の方がMg2 Zn11よりも防食効能が良いとあり、また
逆に特開平8−60324号公報にはMg2 Zn11の方
がMgZn2 よりも防食効能が良いとあり、Zn−Mg
合金の金属組織と防食性との関係が必ずしも明確になっ
ていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者等は、
Zn−(0.2〜10%)Mg−(1.0%以下)Al
合金粉末、Zn−(0.2〜10%)Mg合金粉末の金
属組織とその防食性について、種々検討を重ねた結果、
次の新知見を得た。 (1)粉末の金属組織がZnとZn−Mg共晶または化
合物組織の合金とから成るものよりも、ZnとZn−M
g合金中に、ZnとMgの固溶金属を有するものの方が
格段に防食性に優れる。 (2)ZnとMgの固溶金属の量が多い程、防食性能が
向上する。 (3)ZnとMgの固溶金属は、溶融金属の液滴の凝固
までの冷却速度を15℃/sec以上とすると得られる。
【0009】本発明は、上記の新知見に基づきなされた
もので、塗料の顔料として使用すると、その塗膜に従来
品に比べて格段に優れた防食性を付与できる塗料顔料用
金属粉末およびその製造方法を提供することを目的とす
るものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、 (1)Mg:0.2〜10wt%を含み、Al:1.0wt
%以下を含むか含まず、残部がZnおよび不可避的不純
物からなる成分組成の金属粉末であって、この粉末の金
属組織がZnと、Zn−Mg合金中に、ZnとMgの固
溶金属を有することを特徴とする塗料顔料用金属粉末。 (2)前記(1)に記載の成分組成の溶融金属から金属
粉末を製造するに際して、溶融金属液滴の凝固までの冷
却速度を15℃/sec以上とすることを特徴とする塗料顔
料用金属粉末の製造方法。
【0011】にある。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。まず、前記の本発明者等による新知見について述
べる。図1は、Mg:5wt%を含み、残部がZnおよび
不可避的不純物からなる成分組成の粒度20μm以下で
平均粒度15μmの金属粉末の金属組織のZnとMgの
固溶金属の量の防錆塗料の防錆性能に及ぼす影響を示し
たものである。
【0013】この時の防錆塗料は顔料70wt%、ビヒク
ル30wt%で顔料として上記金属粉末を、ビヒクルとし
てアルキルシリケートを用いた。この塗料を用いて、幅
50mm、長さ95mm、厚み2mmの表面ショットブラスト
仕上した材質がSS41の鋼板に45μの塗膜を形成し
たサンプルを作成した。そして、サンプル表面をクロス
カットして、JIS2371に基づくSST(塩水噴霧
試験)で赤錆発生までの時間で防錆性能を評価した。
【0014】この図からZnとMgの固溶金属を有する
ものがZnとMgの固溶金属のないものよりも防錆性に
優れること、ZnとMgの固溶金属の量が多い程、防食
性能が向上することが明らかである。
【0015】表1は、Mg:5wt%を含み、残部がZn
および不可避的不純物からなる成分組成の粒度20μm
以下で平均粒度15μmの金属粉末を製造する際に、溶
融金属液滴の凝固までの冷却速度を、液滴の冷却雰囲気
温度を調整して、5、10、15、60℃/secに制御
し、各冷却速度と金属粉末の金属組織の関係の調査結果
を示したものである。なお、表1におけるZn、Zn−
Mg共晶または化合物組織を有する合金は、X線回析の
計算機による定量値を示し、固溶金属は上記のZn−M
g合金量よりMg量を算定し全体Mgより引いた計算値
を示す。
【0016】
【表1】
【0017】表1から溶融金属から金属粉末を製造する
際に、溶融金属液滴の凝固までの冷却速度を15℃/sec
以上とすることで、金属粉末の金属組織がZnと、Zn
−Mg合金中に、ZnとMgの固溶金属を有するように
なることが明らかである。
【0018】なお、平衡状態図からは、Mgが0.1%
以下でしかも、緩冷却でなければ固溶金属ができない
が、上記のように急速冷却(15℃/sec以上)にすると
平衡状態図ではあり得ないMgZn2 、ZnとMgとの
固溶金属ができる理由は、明確ではないが、急速冷却で
は溶融状態での一部成分のランダム性がそのまま凝固し
て、できえない組織をもたらしたものと考えられる。
【0019】次に本発明品の製造方法について述べる。
製造法は大きく分けて、揮発凝固法と噴霧法がある。図
2は、噴霧方式の金属粉末製造装置の一例を示したもの
である。製造装置は、所定の成分組成の溶融金属を得る
ための金属溶解炉、例えば誘導加熱式金属溶解炉1と、
この溶解炉1の下部に設けたアトマイズタワー2と、こ
のアトマイズタワー2の下部に設けたバケット3と、上
記溶解炉1の炉底に設けられアトマイズタワー内の上部
に下端が開孔するノズル4と、ストッパー5を介してノ
ズル下端開孔から流出する溶融金属をアトマイズ(溶融
金属液滴化)するアトマイズガスノズル6とからなり、
上記溶融金属液滴がアトマイズタワー内空間を自然落下
する過程で凝固し、凝固金属粉体がバケット内に貯留さ
れるように構成されている。
【0020】ZnとMgあるいは、ZnとMgとAlあ
るいは、Zn−Mg合金あるいはZn−Mg合金とAl
の金属溶解方法については特に制限ないが、酸化防止の
ために例えば、Arガスで溶解炉内の雰囲気中の酸素濃
度を5ppm 以下にするのが望ましい。
【0021】溶解金属の成分組成(金属粉体の成分組
成)については、Mg:0.2〜10wt%を含み、A
l:1.0wt%以下を含むか含まず、残部がZnおよび
不可避的不純物からなるものでなければならない。この
理由は次の通りである。
【0022】Alを添加する目的は、上記噴霧法の生産
性を向上させるためZn−Mg溶融金属の粘性をより低
くして粉末製造用ノズルを通り安くするためである。従
って、粉末の要求粒径によっては、Alを投入しなくて
も生産性を低下させない場合がある。例えば、溶射材料
では平均粒度125μmで、ペイント顔料の平均粒度1
0μm以下である。粒径の大きい溶射材料では、Alは
入れなくても生産性は損なわれない。また、高効率を狙
わなければ顔料粉末の粒径の小さいものでもAlをいれ
なくても良い。Al量を1wt%以下としたのは、これ以
上入れても上記効果が上がらないためである。実質的に
はAl:0.1〜0.3wt%で十分である。一方、揮発
凝固法では上記工程がないため、Alの量は0wt%でよ
い。
【0023】Mgを10wt%以下としたのは、Mg価格
が高いためと防食効果との経済的バランスによるもので
ある。Mgを0.2wt%以上としたのは、防食性能の向
上が期待できないからである。
【0024】アトマイズ方法については特に制限ない
が、酸化防止のためにアトマイズガスとしてN2 ガスを
用い、アトマイズタワー2内の雰囲気中の酸素濃度を5
ppm 以下にするのが望ましく、溶融金属がノズル6を通
過してアトマイズガスにより液滴となり、これが冷却さ
れ凝固して金属粉末となるまでの冷却速度は15℃/sec
以上にしなければならない。
【0025】このために本発明の製造装置例では、アト
マイズタワー外周全体に冷却用の配管7を巻き付け、配
管内の水温と流量を操作することで、アトマイズタワー
2内の雰囲気温度を制御し、金属液滴の凝固までの冷却
速度を制御できるようにしている。
【0026】図2において、8はアトマイズタワー2と
バケット3との接続管部から雰囲気ガスを吸引するブロ
ワーであり、その配管途中にはサイクロン9、バグ式集
塵機10が配置され、微細粉がサイクロン9で捕捉さ
れ、下方のサブバケット11に貯留され、不必要な微粉
は集塵機10で回収される。なお、バケット3とサイク
ロン9の外周全体に冷却用の配管12,13を巻き付
け、金属粉末の保有熱で金属粉末が凝集するのを防止す
るため、バケット3に貯留されるかあるいはサブバケッ
ト11に貯留される前の金属粉末を冷却するようにして
いる。
【0027】
【実施例】図2に示す電磁誘導加熱式溶解炉に、成分Z
n:98.8wt%、Mg:1wt%、Al:0.2wt%の
材料を入れ、600℃まで加熱した。この際、炉内をA
rパージし、炉内酸素濃度を5ppm とした。このときの
Ar使用量は原料1Kg当り1Nm3 /Kgであった。
【0028】そして、上記溶融金属をN2 で封入された
アトマイズタワー内でアトマイズした。この時のアトマ
イズタワー内の圧力は1.5Kg/m2 、酸素濃度は5ppm
であった。また、アトマイズタワー外部冷却用水の使用
料を原料1Kg当り1Nm3 /Kgとして、アトマイズタワー
内の雰囲気温度を20℃にし、溶融金属液滴の凝固まで
の冷却速度を15℃/secにした。
【0029】出来上がった金属粉末は、(生産性10Kg
/min(溶融金属より金属粉末30℃までの生産))、粒
度20μm以下で平均粒径は15μであった。このよう
にして得た金属粉末の組織の分析を行った。その結果を
表2に示す。
【0030】また、上記金属粉末の酸化物を測定した。
その結果、この金属粉末で最も嫌われる酸化物は、ヨウ
素メタノールのICP法での定量分析でMgの酸化物は
0.0006%以下で、Znの酸化物は0.0037%
以下と優れたものであった。
【0031】次に、溶解材料のみを、Zn:99.3wt
%、Mg:0.5wt%、Al:0.2wt%のもの、Z
n:94.8wt%、Mg:5.0wt%、Al:0.2wt
%のもの、Zn:89.8wt%、Mg:10.0wt%、
Al:0.2wt%のものに変更して、上記と同一の条件
で金属粉末を製造した。これらの金属粉末の組織分析を
行い、その結果を表2に併記した。
【0032】比較のため、Zn:94.8wt%、Mg:
5.0wt%、Al:0.2wt%のものと、Zn:89.
8wt%、Mg:10.0wt%、Al:0.2wt%のもの
について、アトマイズタワー内の雰囲気温度を40℃に
し、溶融金属液滴の凝固までの冷却速度を10℃/secに
して、金属粉末を製造し、これらの金属粉末の組織分析
結果を表2に併記した。
【0033】なお、表2におけるZn、Zn−Mg共晶
または化合物組織を有する合金は、X線回析の計算機に
よる定量値を示し、固溶金属は上記のZn−Mg合金量
よりMg量を算定し全体Mgより引いた計算値を示す。
【0034】次に、上記4種の本発明品と2種の比較品
と市販のZn粉末(粒度20μm以下で平均粒径は15
μ)を顔料とする防錆塗料の防錆性能を調査した。この
時の防錆塗料は顔料70wt%、ビヒクル30wt%で、ビ
ヒクルとしてアルキルシリケートを用いた。この塗料を
用いて、幅50mm、長さ95mm、厚み2mmの表面ショッ
トブラスト仕上した材質がSS41の鋼板に45μの塗
膜を形成したサンプルを作成した。そして、サンプル表
面をクロスカットして、JIS2371に基づくSST
(塩水噴霧試験)で赤錆発生までの時間で防錆性能を評
価した。その結果を表2に併記した。
【0035】
【表2】
【0036】表2に示す結果から明らかなように、従来
のZn粉末は勿論のこと、ZnとMgとの固溶金属のな
い金属粉末に比べ、本発明法で得られた本発明品のZn
とMgとの固溶金属の存在する金属粉末は、優れた防錆
特性を塗膜に付与していることが判り、また防錆性能は
ZnとMgとの固溶金属の量に比例していることも判
る。
【0037】
【発明の効果】以上に詳述したように、本発明によれ
ば、塗料の顔料として使用すると、その塗膜に従来品に
比べて格段に優れた防食性を付与できる塗料顔料用金属
粉末およびその製造方法を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属粉末のZnとMgとの固溶金属量の防錆性
能に及ぼす影響の説明図。
【図2】金属粉末製造装置例の説明図。
【符号の説明】
1 金属溶解炉 2 アトマイズタワー 3 バケット 4 ノズル 5 ストッパー 6 アトマイズガスノズル 7、12、13 冷却用配管 8 ブロワー 9 サイクロン 10 集塵機 11 サブバケット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平岡 照祥 兵庫県姫路市広畑区富士町1番地 新日本 製鐵株式会社広畑製鐵所内 (72)発明者 倉橋 隆郎 兵庫県姫路市広畑区鶴町2丁目8番地 吉 川工業株式会社広畑支店内 (72)発明者 森 政弘 兵庫県姫路市飾磨区中島字一文字3007番地 山陽特殊製鋼株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg:0.2〜10wt%を含み、Al:
    1.0wt%以下を含むか含まず、残部がZnおよび不可
    避的不純物からなる成分組成の金属粉末であって、この
    粉末の金属組織がZnと、Zn−Mg合金中に、Znと
    Mgの固溶金属を有することを特徴とする塗料顔料用金
    属粉末。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の成分組成の溶融金属か
    ら金属粉末を製造するに際して、溶融金属液滴の凝固ま
    での冷却速度を15℃/sec以上とすることを特徴とする
    塗料顔料用金属粉末の製造方法。
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