JPH10272523A - 異形防振ブッシュの絞り装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 絞りによる不規則な変形のない異形防振ブッ
シュを得る。 【解決手段】 加締台２０の内筒嵌合部２２に加硫成形
済みの防振ブッシュ１０の内筒金具１１を外嵌装着し、
ダイス３０を中心方向に集めて防振ブッシュに合わせ
る。ダイスにダイスホルダ４０を外嵌し、ダイスホルダ
をダイスに押し付け、外筒金具１２の絞り加工を行う。
ダイスの弧状ダイス片３２ａ，３２ｂにより、軸直角方
向断面が長円形状の外筒金具の半円弧状壁部１２ｂを変
形させることなく絞ることができる。さらに、ダイスの
平行ダイス片３１ａ，３１ｂは、一体となって外筒金具
の平行壁部１２ａに当接してこれを押圧することができ
るので、剛性の低い平行壁部を不規則に変形させること
なく絞ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の技術分野】本発明は、異形防振ブッシュの絞り
装置に関する。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、
筒状の防振ブッシュとしては、一般に内筒金具及び外筒
金具がともに円筒形のものが用いられている。このよう
な防振ブッシュは、ゴム弾性体の加硫成形後に、ゴム弾
性体による引っ張り応力が生じ、そのために耐久性が低
下するので、このような引っ張り応力を除去するため
に、予め外筒金具に絞り加工を施している。ところで、
異形の防振ブッシュに対する絞り加工の要求もあるが、
異形の防振ブッシュの場合、上記外筒金具の絞り加工を
均一に行うことが困難であり、そのため安定した性能の
異形の防振ブッシュを得ることができなかった。

【０００３】例えば、異形の防振ブッシュ１０として、
図１に示すように、軸直角断面が略長方形の四角筒形状
の内筒金具１１と、内筒金具の周囲に略一定の隙間を設
けて軸直角断面が長円形状の外筒金具１２と、内筒金具
１１と外筒金具１２間の隙間にゴム弾性体１３が一体的
に加硫接着されたものが考えられる。この防振ブッシュ
１０の絞り加工を行う絞り装置としては、図４及び図５
に示すものが考えられる。絞り装置は、平板状の加締台
１と、加締台１の中央に立設した内筒嵌合部２と、内筒
嵌合部２に取り付けられた防振ブッシュ１０を囲むダイ
ス３が用いられる。ダイス３は、対向する半円弧形部分
が複数に分割された弧状ダイス片４ａ，４ｂになってお
り、対向する平行部分が複数に分割された平行ダイス片
５ａ，５ｂになっている。ダイス３に、ダイスホルダ６
を外嵌して押し込むことにより外筒金具１２の絞り加工
が行われる。しかし、この絞り加工によれば、防振ブッ
シュは、図６に示すように、剛性の弱い外筒金具１２の
平行部分１２ｘが内側に不規則な変形を生じ、これを有
効に防止できないために、安定した性能の異形の防振ブ
ッシュ１０を得ることができなかった。

【０００４】本件発明者は、上記のような異形の防振ブ
ッシュ１０について、剛性の弱い部分に不規則な変形を
生じない絞り加工法を見いだし、安定した性能の異形防
振ブッシュの製造を可能にした。すなわち、本発明は、
上記した問題を解決しようとするもので、絞りによる不
規則な変形を生じない異形防振ブッシュの絞り装置を提
供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記目的
を達成するために、上記請求項１に係る発明の構成上の
特徴は、対向する一対の長壁部と対向する一対の短壁部
を持つ軸直角断面が略長方形の内筒金具と、内筒金具の
外周に同心的に配置され、長壁部と平行に延びる相対向
する一対の平行壁部と一対の平行壁部の両端を各々接続
する突出した半円弧状壁部とを持つ軸直角断面が長円形
状の外筒金具と、内外筒金具間に一体に加硫接着配置さ
れたゴム弾性体とを備えた異形防振ブッシュの外筒金具
を外側から絞る絞り装置であって、異形防振ブッシュの
内筒金具を嵌挿可能になした内筒嵌合部を立設した加締
台と；中央に異形防振ブッシュの外筒金具を絞れるよう
に外筒金具の外周に対応した長円形状の貫通孔を有し、
外形が長円形状の貫通孔と中心を同一にする長円形状の
外周が凸テーパ外周面を持つ内筒嵌合部の外周を囲む環
状体であって、複数個のダイス片に分割され、大きい側
の端面を加締台に載置したダイスと；ダイスの凸テーパ
外周面を取り囲み、凸テーパ外周面と摺接する凹テーパ
内周面を持つ摺接孔を有し、内筒嵌合部と同軸的に加締
台と相対的に離間及び押圧可能に設けられたダイスホル
ダと；ダイスの分割された各ダイス片と加締台の少なく
ともいずれか一方と摺動可能であると共に、両者を摺動
可能に結合した楔と；を備え、ダイスが、内筒嵌合部に
嵌挿配置された異形防振ブッシュの外筒金具の一対の平
行壁部の外周面とそれぞれ対応する内側面を持つ一対の
平行ダイス片と、一対の半円弧状壁部のそれぞれ外周面
に対応する内側面を形成する部分分割された複数の弧状
ダイス片とで構成されていることにある。

【０００６】上記のように請求項１に係る発明を構成し
たことにより、異形防振ブッシュの内筒金具が、加締台
に立設された内筒嵌合部に挿嵌され、外筒金具の外周に
ダイスがその貫通孔を合わせて配置される。ダイスの凸
テーパ外周面にダイスホルダの凹内周面を合わせて押圧
することにより、ダイスが締め付けられる。ダイスは、
楔に沿って摺動し、加締台上を移動して外筒部材を外側
から締め付ける。ここで、ダイスの複数に分割された弧
状ダイス片の内側面によって、外筒金具の一対の半円弧
状壁を変形させることなく絞ることができる。さらに、
外筒金具の一対の平行壁部についても、ダイスの一対の
平行ダイス片の内側面が一体となって外筒金具の平行壁
部の全体に当接してこれを押すことができるので、剛性
の低い外筒金具の平行壁部を不規則に変形させることな
く絞ることができる。

【０００７】その結果、請求項１の発明によれば、外筒
金具の軸方向断面が長円形である異形の防振ブッシュ
を、外筒金具の不規則な変形をもたらすことなく絞り加
工を施すことができる。また、かかる効果を得るため
に、従来の絞り装置の機構を採用できるので、製造コス
トの上昇をもたらすこともない。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を図
面を用いて説明すると、図１は、同実施形態に係る加硫
成形された軸方向断面が長円形の異形防振ブッシュを底
面図により示したものであり、図２及び図３は、異形防
振ブッシュをセットした状態の絞り装置を一部破断平面
図及び側面断面図により概略的に示したものである。

【０００９】異形防振ブッシュ１０は、軸直角断面が略
長方形の四角筒形状の内筒金具１１と、内筒金具の周囲
に略一定の隙間を設けて軸直角断面が長円形状の外筒金
具１２とを設けており、内筒金具１１と外筒金具１２間
の隙間にはゴム弾性体１３が内外筒金具１１，１２と一
体的に加硫接着されている。内筒金具１１は、対向する
一対の長壁部１１ａと、対向する一対の短壁部１１ｂと
を設けている。外筒金具１２は、内筒金具１１の一対の
長壁部１１ａ側の両端近傍位置間に対応した平行壁部１
２ａと、平行壁部１２ａの両端間にて外側に軸直角断面
が略円弧形に突出した半円弧状壁部１２ｂを設けてい
る。外筒金具１２は、一端側に外側に広げられた鍔部１
２ｃが形成されていて、他端側の近傍部分が、他端に向
けて軸方向に傾斜して縮小された傾斜部１２ｄになって
いる。傾斜部１２ｄは、図３に示すように、平行壁部１
２ａが半円弧状壁部１２ｂに比べて小さくされている。

【００１０】絞り装置は、図２、図３に示すように、平
板状の加締台２０を設けている。加締台２０の平面部２
１の中央には、中心軸Ｌを中心として、内筒金具１１が
挿着される略直方体の内筒嵌合部２２が一体で立設され
ている。内筒嵌合部２２を囲む平面部２１の複数箇所に
は、図２に示すように、後述するダイス３０が係合する
６本のガイド用の楔２３ａ〜２３ｆが形成されている。
楔２３ａ，２３ｂは、加締台２０の長辺側の中間位置
で、中心軸Ｌ方向に延び、楔２３ｃ〜２３ｆは、加締台
２０の四隅から中心軸Ｌ方向に略４５゜の角度で延設さ
れている。楔２３ａ〜２３ｆの長さは、ダイス３０の移
動距離により規定されている。

【００１１】ダイス３０は、図２、図３に示すように、
軸直角断面が長円形の筒形状であり、中央軸心位置に長
円形状の貫通孔３０ａを有している。貫通孔３０ａの内
周面は、軸方向に平行であり、凸テーパ外周面３０ｂが
軸方向に対してわずかに傾斜した傾斜面になっている。
凸テーパ外周面３０ｂの傾斜は、加締台２０に立設させ
た状態で加締台２０から離れる方向にかけて幅が狭くな
っている。ダイス３０は、外筒金具１２の平行壁部１２
ａに対向する平行部分が一対の平行ダイス片３１ａ，３
１ｂになっており、外筒金具１２の半円弧状壁部１２ｂ
に対向する円弧形部分が各２個に分割された弧状ダイス
片３２ａ，３２ｂになっている。平行ダイス片３１ａ，
３１ｂ及び弧状ダイス片３２ａ，３２ｂは、加締台２０
との接触部分に、上記楔２３ａ〜２３ｆに係合する係合
溝（図示しない）を設けており、楔２３ａ〜２３ｆに沿
って移動可能なようになっている。ダイス３０には、同
軸位置に配置されたダイスホルダ４０が、その凸テーパ
外周面３０ｂに外嵌される。

【００１２】ダイスホルダ４０は、筒状体であり凹テー
パ内周面４０ａが、ダイス３０の傾斜した凸テーパ外周
面３０ｂに密接するように傾斜形状に形成された摺接孔
４１を設けている。そして、摺接孔４１の挿入側の開口
面積は、図３に示すように、異形防振ブッシュ１０が装
着されかつ締め付け直前状態でのダイス３０の軸方向略
中間位置の断面と同等になっている。

【００１３】つぎに、上記実施形態の動作について説明
する。まず、加締台２０の内筒嵌合部２２に加硫成形済
みの防振ブッシュ１０の内筒金具１１を外嵌装着し、ダ
イス３０を楔２３ａ〜２３ｆに係合させて中心軸Ｌ方向
に集めて防振ブッシュ１０に合わせる。この状態で、ダ
イス３０にダイスホルダ４０の摺接孔４１を嵌挿して、
凹テーパ内周面４０ａを凸テーパ外周面３０ｂに密着さ
せ、ダイスホルダ４０に取り付けたプレス装置（図示し
ない）によりダイスホルダ４０をダイス３０に押し付
け、外筒金具１２の絞り加工を行う。ただし、プレス装
置はダイス側に取り付けることもできる。

【００１４】これにより、ダイス３０の平行ダイス片３
１ａ，３１ｂと弧状ダイス片３２ａ，３２ｂが楔２３ａ
〜２３ｆに沿って位置ずれすることなく中心軸Ｌ方向に
適正に移動する。そして、弧状ダイス片３２ａ，３２ｂ
により、軸直角方向断面が長円形状の外筒金具１２の半
円弧状壁部１２ｂを変形させることなく絞ることができ
る。さらに、ダイス３０の平行ダイス片３１ａ，３１ｂ
は、一体となって外筒金具１２の平行壁部１２ａに当接
してこれを押圧することができるので、剛性の低い平行
壁部１２ａを不規則に変形させることなく絞ることがで
きる。そのため、不規則な変形のない軸直角断面が長円
形状である異形の防振ブッシュ１０を得ることができ
る。また、かかる効果を得るために、従来の絞り装置を
わずかに変更するのみで足り、製造コストの上昇をもた
らすこともない。

【００１５】なお、上記実施形態においては、ダイス３
０の平行ダイス片３１ａ，３１ｂ及び弧状ダイス片３２
ａ，３２ｂに、加締台２０の楔２３ａ〜２３ｆに係合す
る係合凹部を設けており、楔２３ａ〜２３ｆに沿って規
定方向に移動可能なようになっているが、これに代え、
ダイス３０の凸テーパ外周面及びダイスホルダ４０の凹
テーパ内周面に楔及び係合凹部を設け、ダイスホルダ４
０の押し付けに応じてダイス３０を規定方向に移動させ
るようにしてもよい。また、楔及び係合凹部の配置を逆
にしてもよい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係る異形防振ブッシュを
概略的に示す底面図である。

【図２】同異形防振ブッシュの絞り装置の使用状態を示
す一部破断平面図である。

【図３】同異形防振ブッシュの絞り装置の使用状態であ
る図２に示すIII−III線方向の断面図である。

【図４】比較例である異形防振ブッシュの絞り装置の使
用状態を示す平面図である。

【図５】同異形防振ブッシュの絞り装置の使用状態であ
る図４に示すV −V線方向の断面図である。

【図６】同異形防振ブッシュを概略的に示す底面図であ
る。

【符号の説明】

１０…防振ブッシュ、１１…内筒金具、１２…外筒金
具、１２ａ…平行壁部、１２ｂ…半円弧状壁部、１２ｃ
…鍔部、１２ｄ…傾斜部、１３…ゴム弾性体、２０…加
振台、２１…平面部、２２…内筒嵌合部、２３ａ〜２３
ｆ…楔、３０…ダイス、３０ａ…貫通孔、３０ｂ…凸テ
ーパ外周面、３１ａ，３１ｂ…平行ダイス片、３２ａ，
３２ｂ…弧状ダイス片、４０…ダイスホルダ、４０ａ…
凹テーパ内周面、４１…摺接孔。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 対向する一対の長壁部と対向する一対の
   短壁部を持つ軸直角断面が略長方形の内筒金具と、該内
   筒金具の外周に同心的に配置され、該長壁部と平行に延
   びる相対向する一対の平行壁部と該一対の平行壁部の両
   端を各々接続する突出した半円弧状壁部とを持つ軸直角
   断面が長円形状の外筒金具と、該内外筒金具間に一体に
   加硫接着配置されたゴム弾性体とを備えた異形防振ブッ
   シュの前記外筒金具を外側から絞る絞り装置であって、 前記異形防振ブッシュの前記内筒金具を嵌挿可能になし
   た内筒嵌合部を立設した加締台と；中央に前記異形防振
   ブッシュの前記外筒金具を絞れるように該外筒金具の外
   周に対応した長円形状の貫通孔を有し、外形が該長円形
   状の貫通孔と中心を同一にする長円形状の外周が凸テー
   パ外周面を持つ前記内筒嵌合部の外周を囲む環状体であ
   って、複数個のダイス片に分割され、大きい側の端面を
   前記加締台に載置したダイスと；前記ダイスの前記凸テ
   ーパ外周面を取り囲み、該凸テーパ外周面と摺接する凹
   テーパ内周面を持つ摺接孔を有し、前記内筒嵌合部と同
   軸的に前記加締台と相対的に離間及び押圧可能に設けら
   れたダイスホルダと；前記ダイスの分割された各ダイス
   片と前記加締台の少なくともいずれか一方と摺動可能で
   あると共に、両者を摺動可能に結合した楔と；を備え、 前記ダイスが、前記内筒嵌合部に嵌挿配置された前記異
   形防振ブッシュの外筒金具の一対の平行壁部の外周面と
   それぞれ対応する内側面を持つ一対の平行ダイス片と、
   一対の半円弧状壁部のそれぞれ外周面に対応する内側面
   を形成する部分分割された複数の弧状ダイス片とで構成
   されていることを特徴とする異形防振ブッシュの絞り装
   置。