JPH10272343A - ポリフェニレンスルホン系多孔質膜およびその製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンスルホン系多孔質膜およびその製造方法

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JPH10272343A
JPH10272343A JP771798A JP771798A JPH10272343A JP H10272343 A JPH10272343 A JP H10272343A JP 771798 A JP771798 A JP 771798A JP 771798 A JP771798 A JP 771798A JP H10272343 A JPH10272343 A JP H10272343A
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JP
Japan
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porous membrane
polyphenylene
sulfone
based porous
membrane
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JP771798A
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Inventor
Masaru Noyori
賢 野寄
Yoshinari Fujii
能成 藤井
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐溶剤・耐薬品・耐熱性などの諸特性に優れ
た多孔質膜および該多孔質膜を安定して製造できる方法
を提供する。 【解決手段】 動的粘弾性を25℃から350℃まで測
定した時の(粘弾性−温度分散曲線から得られた)tan
δのピーク温度が、270℃以上、330℃以下の範囲
にあるポリフェニレンスルホン系多孔質膜、およびポリ
フェニレンスルフィドスルホン系多孔質膜を少なくとも
二回繰り返し酸化処理することを特徴とする上記のポリ
フェニレンスルホン系多孔質膜の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱・耐溶剤性に優れ
た多孔質膜およびその製造方法に関する。さらに詳しく
は、精密濾過膜や限外濾過膜あるいは限外濾過膜と同等
の孔径レベルの複合膜支持膜として有用なポリフェニレ
ンスルホン系多孔質膜に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、多孔質膜は食品工業、医療分野、
電子工業分野など数々の分野で有用成分の濃縮あるい
は、分離・回収、または造水など幅広い応用が検討さ
れ、実用化されている。この様な応用分野においては、
熱水洗浄や蒸気滅菌に耐える耐熱性、薬液洗浄・殺菌お
よび酸性または塩基性の使用条件、あるいは有機溶媒・
薬品に耐える耐薬品性および耐汚染性等の特性が要求さ
れている。しかし、この様な要求特性を満足する多孔質
膜はいまだ開発されておらず、耐久性の優れた多孔質膜
の開発は急務となっている。
【0003】従来の多孔質膜としては、例えば酢酸セル
ロース、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデ
ン、ポリスルホン、ポリイミドなどが挙げられる。しか
し、これらの膜は加工性、耐熱性、耐薬品性、耐ファウ
リング性などの特性をすべて満足するものではない。耐
熱性、耐薬品性、耐溶剤性において非常に優れた膜とし
て、ポリフェニレンスルフィド(PPS)膜が提案され
ており(特開昭58−67733号公報、特開昭60−
202659号公報)、中空糸膜の製造方法も検討され
ている(特開昭59−59917号公報、特開昭60−
44404号公報、特開昭60−248202号公
報)。しかし、本質的に加工性に問題があり、膜の孔径
を制御することが困難である。延伸法による場合には精
密濾過膜レベルの微多孔膜となり、特殊な溶媒に過酷な
条件下で溶解して、溶液法で製膜しても、限外濾過膜と
して高い透過性を発現する膜構造を実現し難いと考えら
れる。勿論支持膜用多孔性膜としても孔形状および内外
表面構造に問題があり、実用に供し難いということがで
きる。PPS多孔質体を酸化処理して、スルフィド結合
をスルホン結合に変換することにより、さらに耐熱性、
耐薬品性を向上させる方法が提案されている(特開昭6
3−225636号公報)が、PPS多孔質体そのもの
は前述の種々の方法で加工した後スルフィド結合を選択
的に酸化する方法に関するもので、分画性能および透過
性の制御において問題を残している。この他、ポリエー
テルエーテルケトンなどの耐熱・耐薬品性のエンジニア
リングプラスチックから限外濾過膜を製膜する検討も研
究されているが、実用レベルの膜は開発されていない。
【0004】公知のポリマの中でポリフェニレンスルフ
ィドスルホン(PPSS)は、耐熱、耐薬品性、耐有機
溶剤性が極めて優れており、多孔性中空糸膜の製糸方法
が提案されている(特開昭59−59917号公報、特
開昭60−44404号公報、特開昭60−24820
2号公報、特開平5−49884号公報)。しかし、P
PSS中空糸膜においても耐溶剤性、耐熱性は十分とは
いえない。このため、耐溶剤性、耐熱性を向上する目的
でPPSS中空糸膜を酸化してポリフェニレンスルホン
(PPSO)とした分離膜が提案されている(国際公開
番号JP89/00996号、特開平7−39735号
公報)。これは、防爆対策を必要とする過酢酸等の過酸
化物を使用しないでPPSSの酸化を行なうというもの
であるが、PPSO多孔質膜の耐熱性、耐溶剤性、耐オ
ゾン性、耐酸・耐アルカリ性などの諸特性は、酸化の度
合い(PPSSのスルフィド結合がスルホンに変換した
割合)によって著しく異なり、単に酸化剤で酸化するだ
けではすべての特性を満足できないという欠点を有して
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】即ち、本発明が解決し
ようとしている課題は、加工性は勿論のこと、耐熱性、
耐溶剤性、耐オゾン性、耐酸・耐アルカリ性などの諸特
性に優れた多孔質膜を提供することであり、該多孔質膜
を安定して製造できる方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のポリフェニレン
スルホン系多孔質膜は、上記目的を達成するために、基
本的に下記の構成を有する。即ち、「動的粘弾性を25
℃から350℃まで測定した時の粘弾性−温度分散曲線
から得られたtanδのピーク温度が、270℃以上、3
30℃以下の範囲にあることを特徴とするポリフェニレ
ンスルホン系多孔質膜。」また、本発明のポリフェニレ
ンスルホン系多孔質膜の製造方法は、下記のいずれかの
構成を有する。即ち、「ポリフェニレンスルフィドスル
ホン系多孔質膜を少なくとも二回酸化処理することを特
徴とするポリフェニレンスルホン系多孔質膜の製造方
法。」または、「ポリフェニレンスルフィドスルホン系
多孔質膜を酸化処理するに際して、酸化処理中に多孔質
膜表面に付着した気泡を除去することを特徴とするポリ
フェニレンスルホン系多孔質膜の製造方法。」である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。
【0008】本発明でいうtanδは、公知の方法により
測定できる。具体的には動的粘弾性測定装置を用いて一
定周波数(例えば10ヘルツ)で温度を変えて高分子の
動的粘弾性を測定すると、粘弾性−温度分散曲線が得ら
れ高分子の緩和現象が見られる。このtanδのピーク温
度は温度を横軸に、tanδを縦軸にとってプロットして
得ることができる。tanδの値は下記式により算出され
る。
【0009】すなわち、断面積S、長さLの試料の一端
を固定し、他端に正弦波歪信号をあたえ、その時の応
力、歪を複素数と考えると複素弾性率E*は、 E*=(DF・L/DD・S)(cosδ+i・sinδ) 動的応力;DF(g)、動的歪;DD(cm)、位相差;δ
(deg) であり、動的粘弾性率E´、損失弾性率E´´は E´=E*・cosδ E´´=E*・sinδ である。
【0010】E´、E´´からtanδは下記式により算
出される。
【0011】tanδ=E´/E´´ tanδのピーク温度は、一般にはガラス転移点の高いポ
リマや分子間力の大きいもの程高温側に位置し、剛直性
や分子運動のし難さを表し、耐熱性・耐溶剤性の目安と
なる。
【0012】本発明のPPSO系多孔質膜は、空気中で
周波数を一定(10ヘルツ)にして動的粘弾性を25℃
から350℃まで測定した時のtanδのピーク温度が2
70℃以上、330℃以下のものであることが重要であ
る。tanδのピーク温度があまり低い場合や、270℃
〜330℃の範囲にあっても270℃未満に他のtanδ
のピーク温度がある場合には耐熱・耐溶剤性および耐薬
品性などが劣る。また、あまりtanδのピーク温度が高
いものは、ポリフェニレンスルフィドスルホンの酸化処
理がスルフィド基への酸化だけに止まらず副反応が進行
しているため、多孔質膜の機械的特性が劣り、細孔への
悪影響も生じることになる。tanδのピーク温度が29
0℃以上、310℃以下ものがより好ましい。なおtan
δのピーク値は、耐熱・耐溶剤性および耐薬品性などの
観点から0.1以下が好ましいがこれに限定されるもの
ではない。
【0013】本発明のポリフェニレンスルホン系多孔質
膜とは、ポリフェニレンスルホン系ポリマーからなるも
ので、化学構造としては第一に−Ar−SO2−構造単
位を必須成分とするもの、(ただし必要に応じて−Ar
−SOY−構造単位を有することができる。(ここでA
rはフェニレン基を表す。また、Y=0または1であ
る)) 第二に −(Ar−SOx−Ar−SO2)− (ここでArはフェニレン基を表す。また、x=0〜2
である)で示される構造単位からなるポリマーであるこ
とが好ましい。
【0014】該ポリフェニレンスルホン系多孔質膜は、
ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンス
ルフィドあるいはそれらの共重合体から酸化して製造す
るこことができる。多孔質膜は公知の方法で製造できる
が、例えば中空糸膜の場合、PPSO中空糸膜の前駆体
であるPPSS中空糸膜は、通常公知の方法で製糸する
ことができる。すなわちポリマを所定の溶媒に溶解した
紡糸原液を環状オリフィスの中央に中心パイプを備えた
口金を使用して、湿式法または乾湿式法で凝固浴中に導
入し、凝固・水洗・後処理工程を経て、製糸する。紡糸
原液は環状オリフィスから吐出し、中心パイプから液体
の所定量を導入する。紡糸原液で使用する溶媒にはN−
メチル−2−ピロリドン(NMP)または1、3−ジメ
チル−2−イミダゾリジノン(DMI)などがあるがこ
れに限定されるものではない。紡糸原液には、紡糸性の
改善や中空糸膜の特性の改善および中空糸膜の細孔のコ
ントロールなどのために各種の添加剤を加えても良い。
【0015】中空糸膜の外径は特に限定しないが、好ま
しくは150μmから2mmの範囲が良く、用途に応じ
て選択できる。内径は通常外径の2分の1程度である
が、膜厚が10μm以上であればその目的により適切な
値を取り得るため、これに限定されるものではない。
【0016】また、平膜の場合は例えば、PPSSポリ
マのDMI溶液を、耐熱・耐溶剤性の不織布(例えば、
ポリフェニレンスルフィド)に室温で流延しながら塗布
し、室温の蒸留水中に投入し、凝固することによって得
られる。
【0017】本発明者等は、tanδのピーク温度が本発
明の要件を満たすPPSOを得るための酸化条件につい
て鋭意検討した結果極めて簡便かつ安定的に製造する条
件を見出だした。すなわち、ポリフェニレンスルフィド
スルホン系多孔質膜を少なくとも二回酸化処理するか、
またはポリフェニレンスルフィドスルホン系多孔質膜を
酸化処理するに際して、酸化処理中に多孔質膜表面に付
着した気泡を除去することにより、好適にtanδのピー
ク温度が本発明の要件を満たすPPSOが得られる。酸
化処理に用いる酸化剤としては特に限定されるものでは
ないが、例えば過酸化物が挙げられる。過酸化物として
は、過酢酸等を用いることもできるが、より爆発の危険
性の少ない安全な過酸化物、例えば過硫酸塩などによっ
ても耐熱・耐溶剤性および耐薬品性に優れたPPSO多
孔質膜を製造し得る。
【0018】本発明において好適に用いられる酸化処理
剤としては、過硫酸アルカリ金属塩、亜硫酸アルカリ金
属塩および硫酸アルカリ金属塩である。また、該過硫酸
アルカリ金属塩、亜硫酸アルカリ金属塩および硫酸アル
カリ金属塩のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリ
ウム、カリウムまたはこれらが適宜組み合わされたもの
等が挙げられ、例えばカリウムの場合について以下に詳
述する。
【0019】過硫酸カリウムはペルオクソ基(SO5
で現される化学構造を持ち、一般に強い酸化力を有す
る。具体的には過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウ
ム、硫酸カリウムを2:1:1(モル比)の混合物とす
ることにより安定性が向上することが知られており特に
好ましい。しかし、この比率から50%以内のずれなら
ば、やはり安定であるが、25%以内のずれであること
が好ましく、10%以内がさらに好ましい。
【0020】過硫酸水素カリウムの溶液はその溶解性か
ら水溶液であることが好ましいが、水−有機溶媒中サス
ペンジョンの状態でも十分な酸化力を持っているので水
溶液に限定されるものではない。しかし、PPSS多孔
質膜を酸化処理する場合、ポリマを膨潤させた方が反応
性の高くなるため、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリ
ウム、硫酸カリウムの混合物にカルボン酸あるいは有機
溶媒を混合した方が好ましい。カルボン酸は例えば氷酢
酸等が挙げられる。また有機溶媒は例えばエタノール等
が挙げられる。過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウ
ム、硫酸カリウムの混合物とカルボン酸との重量比を
1:1〜6:1にするのが好ましく、より好ましくは
2:1〜4:1である。有機溶媒の場合の比率も同様で
ある。
【0021】過硫酸水素カリウム:硫酸水素カリウム:
硫酸カリウム=2:1:1(モル比)の混合物は、水/
氷酢酸、水/エタノール/酢酸系においてポリマを効率
良く酸化する。
【0022】酸化剤溶液の濃度は、過硫酸水素カリウ
ム:硫酸水素カリウム:硫酸カリウム=2:1:1(モ
ル比)の混合物水溶液に氷酢酸を加えて10〜30重量
%水溶液の範囲で行う。反応の効率の面からは15〜2
5重量%が特に好ましい。
【0023】ここで過硫酸水素カリウムと硫酸水素カリ
ウムと硫酸カリウムの混合物と氷酢酸の重量比は0.5
〜7の範囲で任意に選択できるが、上述したように重量
比が2〜4の範囲が好ましい。
【0024】酸化温度は浸漬法の場合、分子運動を考慮
すると50〜90℃が好ましく、酸化剤溶液の安定性を
考えると50〜80℃が特に好ましい。塗布法において
は最高170℃までの加熱が好ましく用いられる。
【0025】酸化処理時間は、1時間から10時間の範
囲で行う。特に2時間以上が好ましい。
【0026】本発明の製造方法のうち、酸化を2回以上
繰り返し行う場合には、1回目の酸化処理を比較的マイ
ルドな条件で行い、2回目以降は1回目より酸化剤濃
度、温度を高くする方が効率的に酸化できることからよ
り好ましい。
【0027】従って、一回目の酸化剤濃度は5〜18重
量%で行い、二回目は20〜24重量%の範囲で行い、
より好ましくは一回目が10〜18重量%であり、二回
目が22〜24重量%である。あるいは一回目と二回目
の濃度差は2〜15重量%であることが好ましい。ま
た、酸化時間も1回目は2回目以降に比べて短時間で行
うことができるが、酸化剤濃度や処理温度に依存し、濃
度が濃いほど、温度が高いほど処理時間は短くすること
ができるため、これらの条件により適宜選定する。
【0028】従って、本発明によれば1回目の酸化に用
いる酸化剤溶液として一回以上使用した酸化剤溶液を再
使用できるため、酸化剤を効率良く利用できる。
【0029】酸化溶液のpHは、過硫酸水素カリウム:
硫酸水素カリウム:硫酸カリウム=2:1:1(モル
比)の混合物水溶液の場合、3.0重量%水溶液におい
てpHは2.0になるが、pH5以上になると安定性が
急激に悪くなるため酸化処理中はpHを5以下に保つこ
とが好ましい。
【0030】PPSS多孔質膜を浸漬法または含浸法で
酸化処理する場合、酸化剤溶液は、PPSS多孔質膜の
3〜300倍のの範囲で行う。酸化剤溶液が3倍以下で
は多孔質膜が完全に浸されず均一処理ができない。また
300以上では酸化剤が無駄になるばかりか、処理容器
も大きくなり処理コストのアップを招き好ましくない。
【0031】本発明では酸化処理を2回以上繰り返す方
法としては、例えば1回目の酸化処理が終わったところ
で酸化剤溶液を冷却してから多孔質膜を取り出して液切
りを行った後、新たに調整した酸化剤溶液の中に浸し
て、2回目の酸化処理を行なう方法あるいは、1回目の
酸化処理が終わった後酸化剤溶液を抜き出して、新たな
酸化剤溶液を循環して2回目の酸化を行う方法、または
1回目の酸化処理が終わったところで酸化剤溶液を冷却
してから多孔質膜を取り出し、使用した酸化剤の濃度を
測定して本発明の濃度になるように酸化剤を追加して2
回目の酸化を行う方法などがある。
【0032】tanδのピーク温度が本発明の要件を満た
すPPSO系多孔質膜を得るためのもう1つの製造方法
について、以下、説明する。即ち、酸化処理中に発生し
た気泡が多孔質膜に付着して、酸化剤の多孔質膜への接
触を妨害し著しく酸化を妨げることを鑑み、該多孔質膜
に付着した気泡を取り除いて酸化処理を行うことによ
り、tanδのピーク温度が本発明の要件を満たすPPS
O系多孔質膜が得られる。気泡を取り除く方法として
は、多孔質膜を振動する方法、酸化剤溶液を循環して、
溶液の流れにより多孔質膜に付着した気泡を除去する方
法などが挙げられる。かかる方法によれば、酸化処理回
数は1回で済むかあるいは、酸化時間を短縮することが
可能となる。
【0033】本発明の多孔質膜の形態としては、例えば
平膜、中空糸膜、円筒状膜などであるが、公知の形態で
あれば特に限定されない。
【0034】本発明の方法により得られた多孔質膜は、
従来の方法で得られるものに比べて耐熱性、耐溶剤性、
耐薬品性などに極めて優れている。このため、有機・無
機薬品のろ過、溶剤の分離・回収、フェノールの分離・
濃縮、食材の分離・濃縮、油や界面活性剤の除去、ボイ
ラー水のろ過、オゾンなど殺菌・滅菌剤を使用する上水
や下水のろ過等の広範囲の用途に適用できる。
【0035】本発明の多孔質膜は、そのままでも使用で
きるが、一般にはスパイラルエレメントあるいは中空糸
膜エレメントの形態にして使用するのが好ましい。
【0036】本発明の評価・測定方法は以下の方法によ
る。
【0037】(1)耐溶剤性の評価 水洗、風乾、50℃で10時間減圧乾燥した多孔質膜の
両端にテフロンシートの小片を接着し、これをテフロン
チューブに挿入して片端をテフロンシートに接着した多
孔質膜サンプルと共に接着する。チューブ内に評価用溶
剤[(エタノール、アセトン、トルエン、トリクレン、
80重量%ジメチルスルホキシド水溶液(以下、DMS
O80%という)、8重量%フェノール水溶液(以下、
フェノール8%という)]に入れて2時間後、引張り試
験機で強力・伸度を測定した。耐溶剤性は、強力比(伸
度比)[溶剤浸漬膜の強力(伸度)/未処理膜の強力
(伸度)]で表した。
【0038】(2)耐オゾン性の評価 乾燥した多孔質膜を浸漬した蒸留水10リットル中に、
1時間当り300mgのオゾンを含む空気を8リットル
/分で吹き込み70時間処理した。処理後、引張り試験
機で強力・伸度を測定した。耐オゾン性は、(1)と同
様に強力比(伸度比)で評価した。
【0039】(3)tanδの測定 水洗、風乾後、50℃で10時間減圧乾燥した多孔質膜
を動的粘弾性測定装置(広域動的粘弾性測定解析装置、
DVE-V4 FTレオスペクトラー[レオロジー株式会社製]
を用いて試料長2cmとして、自動的に静荷重を15g
与え、振幅5μm、周波数10Hz、昇温速度2℃/分
で空気中の動的粘弾性率の温度依存性(粘弾性−温度分
散曲線)を測定した。
【0040】(4)中空糸膜の水透過流束の測定 約25cmの長さのガラス管に中空糸膜を10本入れ、
両端部を接着剤でシールしてミニモジュールを作製した
後、精製水を使って限外ろ過速度を測定して求める。ろ
過水はガラス管に取付けた枝管のノズルから集め、一定
時間にろ過された水の重量を測定した。精製水は中空糸
タイプの限外瀘過膜でろ過しながら供給し、25℃で測
定した。膜透過流束は、ろ過差圧=1.0kgf/cm
2の条件で、内圧全ろ過で純水を通水し、その透過水量
を単位時間(日)、単位面積(m2)で換算して求め
た。
【0041】(5)強力・伸度の測定 引張り試験機(テンシロン;エー・アンド・ディ社製。
データ処理機能付き)を用い引張り速度50mm/分の
条件で破断時の強力および伸度を測定した。
【0042】(6)中空糸膜の寸法(内径、外径)の計
測は、日本光学製実体顕微鏡SMZ型にデジタルゲージ
D−10S型を取り付けて行った。
【0043】以下に実施例を示し、本発明を更に具体的
に説明する。
【0044】
【実施例】
実施例1 東レ株式会社製のポリフェニレンスルフィドスルホン
(PPSS、MF値18)を2000重量部、N−メチ
ル−2−ピロリドン(NMP)8000重量部を15リ
ットルの原液溶解槽に仕込み窒素置換の後、室温で15
分間攪拌した後90℃に昇温して30分間攪拌しながら
保持した。次いで、130℃に昇温し攪拌しながら2時
間保持してから、さらに180℃に昇温し5時間攪拌し
て完全に溶解し紡糸原液とした。紡糸原液を40ミクロ
ンのステンレス製フィルターで濾過しながら原液貯槽に
移液した。貯槽温度を60℃に降温して後、紡糸を行っ
た。使用した口金の寸法は、スリット外径1.4mm,
スリット内径1.1mm,注入管内径0.7mmの環状
口金で、紡糸ドラフト0.75(原液の口金吐出線速度
/引取り速度)、紡糸温度55℃、乾式長30mm、注
入液濃度60重量%のNMP水溶液、注入液温度25
℃、凝固浴は30℃の水を使用し、水洗温度30℃、熱
処理温度90℃の条件で中空糸膜を紡糸し巻き取り機で
巻き取った。中空糸膜の寸法は、外径1.17mm、内
径0.79mmであった。また、純水の膜透過流束は
1.12m3/m2/日/1気圧であった。
【0045】得られたPPSS中空糸膜の1箇所を切断
し、中空部に残留した注入液を除去した後純水で水洗し
た。水を十分に除去した後、PPSS中空糸膜2000
本(1.3m)ステンレス製の籠にセットしてステンレ
ス製の円筒状反応槽に充填した。次いで、過硫酸水素カ
リウム:硫酸水素カリウム:硫酸カリウム=2:1:1
(モル比)の混合物(アルドリッチ社製 商品名OXO
NE)240重量部、純水680重量部、氷酢酸56重
量部を40℃で1時間攪拌し調整した酸化反応液を、P
PSS中空糸膜:酸化反応液=1:150で円筒状反応
槽に1分間に10リットルの反応液を循環しながら80
℃、8時間処理し一回目の反応を終了した。使用済みの
反応液を抜き出した後、同様に調整した酸化反応液で一
回目と同様にして二回目の処理を行った。こうして得ら
れたPPSO中空糸膜のtanδを測定したところ、ピー
ク温度は300℃であった。
【0046】上述した方法により、溶剤中での強力と伸
度を測定した。また、水中でオゾンに晒した後の強力と
伸度を測定した。
【0047】それぞれの結果を表1〜3に示した。
【0048】実施例2 実施例1と同じPPSS中空糸膜を、実施例1で一回目
に使用した反応液を用いて同様に酸化処理した。次い
で、実施例1と同様に調整した新しい酸化反応液で二回
目の酸化処理を行った。実施例1と同様にそれぞれの測
定を行った。結果を表1〜3に示した。
【0049】実施例3 実施例1と同じPPSS中空糸膜を、PPSS中空糸
膜:酸化反応液=1:200になるように充填し、実施
例1と同様に調整した反応液を1分間に50リットルで
円筒状反応槽に循環して中空糸膜に付着した気泡を取り
去りながら処理した以外は、実施例1と同様に酸化処理
した。酸化処理は一回で終えた。
【0050】実施例1と同様にそれぞれの測定を行っ
た。結果を表1〜3に示した。
【0051】実施例4 東レ株式会社製のポリフェニレンスルフィドスルホン
(PPSS、MF値50)を15重量部、1,3−ジメ
チル−2−イミダゾリジノン(DMI)85重量部を5
00ミリリットルのセパラブルフラスコに仕込み秤り取
り、フラスコ内部を窒素置換した後、15分間攪拌した
後90℃に昇温して30分間攪拌しながら保持した。次
いで、130℃に昇温し攪拌しながら2時間保持してか
ら、さらに180℃に昇温し5時間攪拌して完全に溶解
した。この溶液を孔径10μmのテフロン製メンブレン
フィルター(東洋濾紙製)を用いて窒素加圧下で不純物
を除去してPPSSキャスト液とした。
【0052】調整したキャスト液を厚み100μmのポ
リフェニレンスルフィド製の不織布に室温で厚み70μ
mで塗布し、室温の蒸留水中に投入し、凝固することに
よってポリフェニレンスルフィド不織布で強化されたポ
リフェニレンスルフィドスルホン多孔質膜を得た。
【0053】得られたポリフェニレンスルフィド不織布
で強化されたポリフェニレンスルフィドスルホン多孔質
膜を純水で水洗した。水を十分に除去した後、ステンレ
ス製の角型容器に過硫酸水素カリウム:硫酸水素カリウ
ム:硫酸カリウム=2:1:1(モル比)の混合物(ア
ルドリッチ社製 商品名OXONE)24重量部、純水
68重量部、氷酢酸8重量部を40℃で1時間攪拌し調
整した酸化反応液をPPSS多孔質膜:酸化反応液=
1:100になるように投入、浸漬した。容器を恒温槽
に浸漬し、80℃に昇温後8時間処理し一回目の反応を
終了した。
【0054】使用済みの反応液を抜き出した後、同様に
調整した酸化反応液で一回目と同様にして二回目の処理
を行った。こうして得られたPPSO多孔質膜をポリフ
ェニレンスルフィド製の不織布から剥がして、0.5m
m幅で25mmの長さに切り取りtanδを測定した。
【0055】また、ポリフェニレンスルフィド製の不織
布から剥がしたPPSO多孔質膜を溶剤に1ヶ月浸漬
後、0.5mm幅で55mmに切り取り実施例1と同様
にして強力と伸度を測定した。結果を表1〜3に示し
た。
【0056】比較例1 酸化処理を一回にした以外は、実施例1と同様に行っ
た。結果を表1〜3に示した。
【0057】比較例2 酸化処理を一回にした以外は、実施例4と同様に行なっ
た。結果を表1〜3に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】以上の結果、耐溶剤性は強力比0.7以
上、伸度比1.5前後と本発明のものが優れていた。す
なわち多孔質膜の膨潤あるいは構造変化は本発明のもの
が小さいことを意味している。また、耐オゾン性につい
ても、本発明のものは良好な強力比および伸度比を示し
極めて優れていた。
【0062】
【発明の効果】本発明のポリフェニレンスルホン多孔質
膜は、耐溶剤性・耐薬品性に極めて優れており、例えば
食品・医療・電子工業分野での濃縮や分離・回収および
造水などに幅広く利用できる。また、良品質のポリフェ
ニレンスルホン多孔質膜を安定的に効率良く製造可能で
ある。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動的粘弾性を25℃から350℃まで測
    定した時の粘弾性−温度分散曲線から得られたtanδの
    ピーク温度が、270℃以上、330℃以下の範囲にあ
    ることを特徴とするポリフェニレンスルホン系多孔質
    膜。
  2. 【請求項2】 本発明のポリフェニレンスルホン系多孔
    質膜が化学構造−Ar−SO2−の構造単位を必須とす
    るポリフェニレンスルホン系ポリマーからなるものであ
    る請求項1記載のポリフェニレンスルホン系多孔質膜。
  3. 【請求項3】発明のポリフェニレンスルホン系多孔質膜
    が 一般式 −(Ar−SOx−Ar−SO2)− (ここでArはフェニレン基を表す。また、x=0〜2
    である)で示される構造単位からなるポリフェニレンス
    ルホン系ポリマーからなるものである請求項1記載のポ
    リフェニレンスルホン系多孔質膜。
  4. 【請求項4】 ポリフェニレンスルフィドスルホン系多
    孔質膜を少なくとも二回酸化処理することを特徴とする
    ポリフェニレンスルホン系多孔質膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 ポリフェニレンスルフィドスルホン系多
    孔質膜を酸化処理するに際して、一回目の酸化剤濃度が
    二回目の酸化剤濃度より低い濃度で処理することを特徴
    とする請求項4記載のポリフェニレンスルホン系多孔質
    膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 ポリフェニレンスルフィドスルホン系多
    孔質膜を酸化処理するに際して、一回目の酸化剤濃度が
    5〜15重量%であり、二回目の酸化剤濃度が20〜2
    4重量%であることを特徴とする請求項4記載のポリフ
    ェニレンスルホン系多孔質膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 ポリフェニレンスルフィドスルホン系多
    孔質膜を酸化処理するに際して、酸化処理中に多孔質膜
    表面に付着した気泡を除去することを特徴とする請求項
    4〜6いずれかに記載のポリフェニレンスルホン系多孔
    質膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 本発明のポリフェニレンスルホン系多孔
    質膜が化学構造−Ar−SO2−の構造単位を必須とす
    るポリフェニレンスルホン系ポリマーからなるものであ
    る請求項4〜7いずれかに記載のポリフェニレンスルホ
    ン系多孔質膜の製造方法。
  9. 【請求項9】発明のポリフェニレンスルホン系多孔質膜
    が 一般式 −(Ar−SOx−Ar−SO2)− (ここでArはフェニレン基を表す。また、x=0〜2
    である)で示される構造単位からなるポリフェニレンス
    ルホン系ポリマーからなるものである請求項4〜7いず
    れかに記載のポリフェニレンスルホン系多孔質膜の製造
    方法。
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