JPH10263823A - チタンクラッド鋼板の溶接方法及び防食構造体 - Google Patents

チタンクラッド鋼板の溶接方法及び防食構造体

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JPH10263823A
JPH10263823A JP10006140A JP614098A JPH10263823A JP H10263823 A JPH10263823 A JP H10263823A JP 10006140 A JP10006140 A JP 10006140A JP 614098 A JP614098 A JP 614098A JP H10263823 A JPH10263823 A JP H10263823A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 疲労強度を高めたチタンクラッド鋼板の溶接
方法及び防食構造体を提供する。 【解決手段】 表面にチタン層を有するチタンクラッド
鋼板同士を突合せ溶接する方法において、突合せ部分の
チタン層を欠落させたチタンクラッド鋼板同士を突き合
わせ、突合せ部の端部にろう材を肉盛りしてろう材層を
形成し、少なくともチタンクラッド鋼のチタン層を欠落
させたことによって露出した炭素鋼表面及びチタン層端
面の端部をろう材層で覆い、かつチタンクラッド鋼表面
におけるろう材層とチタン層との継ぎ目ではろう材層と
チタン層とを同じ高さに形成し、次いで突き合わせたチ
タンクラッド鋼板のチタン層間をチタン板によって架橋
した後、チタン板とチタンクラッド鋼板表面のチタン層
とを溶接することを特徴とするチタンクラッド鋼板の溶
接方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶・海洋構造物
・浮体構造物・橋梁などの産業分野において、従来より
も高い疲労強度が要求される防食構造体およびその溶接
方法を対象としたものである。
【0002】
【従来の技術】海浜・海洋地域で使用される鋼構造物に
は、その長期耐用の必要性から防食部材が使用され、特
に長期耐久性を要求される部材にはチタンクラッド鋼板
が適用される。チタンクラッド鋼板は構造体基材の一部
と溶接、あるいは構造体基材の機能を併せ持つチタンク
ラッド鋼板の場合には構造基材として使用されるため、
チタンクラッド鋼板同士の溶接、およびその溶接部の端
部の施工が重要である。チタンクラッド鋼板は炭素鋼と
チタンという材質の違いから、炭素鋼板同士およびチタ
ン層同士を共通に溶接することが出来ないため、接合部
の構造は複雑なものとなる。特に接合部端部は耐食性確
保の観点から、チタンクラッド鋼板の炭素鋼板を露出さ
せず被覆されている必要がある。また海洋波浪などの外
荷重を長期に受けるため、耐食性のみならず耐疲労破壊
特性、すなわち疲労強度も十分に確保されなければなら
ず、これらの両立が重要となることから、種々の方法が
検討された。
【0003】これらのうち、チタンクラッド鋼板を用い
た耐食性の高い構造物として特開平7−11661号公
報、および特開平7−34480号公報、チタンクラッ
ド鋼板同士の溶接部の端部溶接方法として特開平5−1
85237号公報、特公平8−302号公報、特開平7
−34480号公報などがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来技術のうち、チタ
ンクラッド鋼板を用いた耐食性の高い構造物である特開
平7−11661号公報および特開平7−34480号
公報では、最も重要となるチタンクラッド溶接端部は、
同様のチタンクラッドをスライスしたものを塞ぎ材とし
て、これを端部に当てて周囲を溶接する方法を採用して
おり、塞ぎ板の内面は図7(a)に示すように未溶着部
12になっている。従って、特に図7(a)に矢印で示
す方向の応力が作用する場合には、未溶着部12は切り
欠きとなって容易に疲労亀裂を発生し、大幅な疲労強度
の低下を招く。また、塞ぎ板は相対的に微小なものにな
るため、溶接の際の操作性に劣るのみならず、周囲を溶
接すると極めて大きな残留応力が発生し、疲労亀裂の発
生をさらに容易にする。
【0005】次に、特開平5−185237号公報およ
び特公平8−302号公報では、端部に切り込みにより
設けた間隙部にチタンクラッド鋼板をスペーサー材とし
て挿入して、チタンと炭素鋼の溶接部をAg−Cu系の
溶接材料を用いてTIG溶接もしくはプラズマ溶接する
方法を提案している。しかし、このように端部に切り込
みを設けてスペーサー材を挿入すると、スペーサー材は
表面のみ溶接されるため、図7(b)に示すようにスペ
ーサー側面および底面に未溶着部12′を残留させるこ
とになる。残留した未溶着部12′は切り欠きとして疲
労亀裂の発生を容易にし、特に図7(b)に示す方向の
応力が作用する場合に、大幅な疲労強度の低下を招く。
【0006】本発明の主たる目的は、特別な処理を必要
とすることなく、疲労強度を高めたチタンクラッド鋼板
による防食構造体およびその溶接方法を得ようとするも
のである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決してチタ
ンクラッド鋼板による防食構造体の疲労強度を向上させ
るために、本発明は、チタンクラッド鋼板の接合端部を
肉盛りろう材により密閉することにより未溶着部の残留
を無くして疲労強度を高めるという全く新しい思想によ
るものである。
【0008】すなわち、本発明の要旨とするところは、
次の通りである。 (1) 表面にチタン層を有するチタンクラッド鋼板同
士を突合せ溶接する方法において、突合せ部分のチタン
層を欠落させたチタンクラッド鋼板同士を突き合わせ、
突合せ部の端部にろう材を肉盛りしてろう材層を形成
し、少なくともチタンクラッド鋼のチタン層を欠落させ
たことによって露出した炭素鋼表面及びチタン層端面の
端部をろう材層で覆い、かつ該ろう材層表面をチタンク
ラッド鋼表面と同じ高さに形成し、次いで突き合わせた
チタンクラッド鋼板のチタン層間をチタン板によって架
橋した後、チタン板とチタンクラッド鋼板表面のチタン
層とを溶接することを特徴とするチタンクラッド鋼板の
溶接方法。
【0009】(2) 表面にチタン層を有するチタンク
ラッド鋼板同士を突合せ溶接する方法において、突合せ
部分のチタン層を欠落させたチタンクラッド鋼板同士を
突き合わせ、突合せ部の端部にスペーサーを配置すると
共にろう材を肉盛りしてろう材層を形成して、少なくと
もチタンクラッド鋼のチタン層を欠落させたことによっ
て露出した炭素鋼表面及びチタン層端面の端部をろう材
層で覆い、かつ該ろう材層表面をチタンクラッド鋼表面
と同じ高さに形成し、次いで突き合わせたチタンクラッ
ド鋼板のチタン層間をチタン板によって架橋した後、チ
タン板とチタンクラッド鋼板表面のチタン層とを溶接す
ることを特徴とするチタンクラッド鋼板の溶接方法。
【0010】(3) 突合せ部において露出している炭
素鋼同士を溶接することを特徴とする前記(1)又は
(2)記載のチタンクラッド鋼板の溶接方法。
【0011】(4) ろう材にAg−Cu系ろう材を用
いることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1
項に記載のチタンクラッド鋼板の溶接方法。
【0012】(5) 突き合わせたチタンクラッド鋼板
同士を架橋するチタン板のコーナーに半径5mm以上15
mm以下の丸みをつけたことを特徴とする前記(1)〜
(4)のいずれかに記載のチタンクラッド鋼板の溶接方
法。
【0013】(6) 構造体基材表面にチタンクラッド
鋼板からなる部材を複数配置した防食構造体であって、
少なくともチタンクラッド鋼板からなる部材同士の溶接
の一部が前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法に
よって行われていることを特徴とする防食構造体。
【0014】(7) 複数のチタンクラッド鋼板部材か
らなる防食構造体であって、少なくともチタンクラッド
鋼板部材同士の溶接の一部が前記(1)〜(5)のいず
れかに記載の方法によって行われていることを特徴とす
る防食構造体。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の溶接方法は、例えば図3に示すように、角柱状
に組み立てた橋脚などの海洋構造体について、周囲にチ
タンクラッド鋼板を連設して耐食化を図った構造体にお
けるチタンクラッド鋼板1同士の接合部の端部13に適
用するものである。
【0016】本発明の溶接方法に先立ち、チタンクラッ
ド鋼板1同士を溶接する側面は、図1(a)に示すよう
に、炭素鋼板3同士を突き合わせた状態とする。すなわ
ち、本発明では突合せ部分のチタン層2を欠落させたチ
タンクラッド鋼板同士を突き合わせることとしている
が、これは同図に示すように、突合せ部から所定の幅に
わたってチタン層を欠落させたチタンクラッド鋼板同士
を突き合わせることをいう。図1(a)には、チタン層
を欠落させたことによって露出した炭素鋼表面の端部を
2aとして示す。また、同図には同じくチタン層を欠落
させたことによって露出したチタン層端面の端部を2b
として示す。
【0017】後に実施するろう材肉盛りの作業性および
品質確保のためには、突合せ部に開先5をとることが望
ましい。開先形状は、片面からのろう付けが可能なV
型、U型、レ型もしくはI型が望ましいが、両面からの
溶接が可能な場合には特に開先形状を限定しなくてもよ
い。
【0018】次に本発明の溶接方法を述べる。この状態
において、本発明では図1(b)に示すように突合せ部
の端部にろう材を肉盛りしてろう材層7を形成する。こ
こで、ろう材層7の一部にはスペーサーを含んだものと
してもよい。その際に、ろう材層が、少なくとも露出し
た炭素鋼表面の端部2a及び露出したチタン層端面の端
部2bを覆うようにする。また、ろう材層7とチタン層
2との継ぎ目ではろう材層とチタン層とが同じ高さにな
るようにする。なお、図1にはチタン層の高さよりも高
く肉盛りした後に機械研削を行う場合を示しているが、
このような場合には機械研削を行った後にろう材層とチ
タン層とを同じ高さにすればよい。
【0019】なお、ここで端部とは、チタンクラッド鋼
板の突き合わせ線方向の端部であって、チタンクラッド
鋼板の端からろう材層の幅程度の範囲をいうものとす
る。ろう材層の幅は、後に架橋するチタン板と重ねてす
み肉溶接が可能な程度に広いことが望ましく、10mm程
度とする。ただしチタン板8のコーナーの半径を大きく
する場合には、10mmに半径を加えた幅とするのが望ま
しい。
【0020】肉盛りままでも本発明の目的である高い疲
労強度は得られるが、さらに高い疲労強度を得るために
は、チタン層の高さよりも高くろう材層を肉盛りした後
に機械研削を行うとよい。このように機械研削によって
ろう材層の表面を平坦にしてチタンクラッド鋼板のチタ
ン層2の高さ未満になる部分が無いようにするために
は、ろう材層表面の凹凸を考えると、肉盛りした際のろ
う材層の最大高さはチタン層2より1mm以上は必要であ
る。しかし、あまり高く肉盛りすることはコスト高とな
るため、3mmを上限の目安とする。
【0021】肉盛りするろう材の種類は、作業性および
品質の観点からAg−Cu系のろう材が望ましいが、純
Ag、Co系、V系のろう材でも同様の性能が得られ
る。さらに、Ag−Cu系では、Ni,Sn,Li,B
等を添加したものでもよい。ろう材を用いるのはチタン
が活性金属であり、チタンと炭素鋼とを直接溶接すると
極めて脆弱な金属化合物を生成するためである。
【0022】機械研削を行う場合には、図1(c)に示
すように、肉盛りしたろう材をチタンクラッド鋼板のチ
タン層2と同じ高さになるまで、グラインダー等で機械
研削して表面を滑らかな状態7′にする。これは、次に
図1(d)に示すようにチタン板8を架橋させて溶接す
る際に、チタン板8と肉盛りろう材7′の密着度を向上
させてろう付けの品質を向上させるためであり、ろう材
の加工仕上げの程度は、通常の機械加工で得られる粗さ
の条件として100−S(100μm以下の粗さ)程度
とする。
【0023】本発明の溶接方法の後は、図1(d)に示
すようにチタンクラッド鋼板1のチタン層2間をチタン
板8によって架橋した後、図1(e)に示すようにチタ
ンクラッド鋼板1のチタン層2とチタン板8との接合を
TIG溶接10で行い、さらに図1(f)に示すように
チタン板8と滑らかにしたろう材層7′との接合をろう
付け9により行って、端部の空隙部を完全に被覆するこ
とにより、防食機能を有する構造体を形成する。
【0024】上記の溶接方法で、チタンクラッド鋼板の
炭素鋼板3同士の溶接は防食機能の観点からは必ずしも
必要ない。しかし強度設計上必要とする場合には、図2
に示すようにろう付け肉盛りの前に炭素鋼板3同士の溶
接を行う。このような場合には炭素鋼板3に機械加工も
しくはガス加工などにより開先を設けるとともに、開先
部の溶接によりチタン層2が溶融しないように、溶接入
熱によっても異なるが長さ5〜10mm程度の開先部分の
チタン層を機械加工により削除して欠落部分を設ける必
要がある。
【0025】炭素鋼板3同士の溶接は被覆アーク溶接、
ガスシールドアーク溶接、サブマージアーク溶接などの
アーク溶接、またはレーザー溶接、電子ビーム溶接等に
より溶接部6を形成する。この溶接は、炭素鋼板用の溶
接材料にてアークの安定する通常の溶接条件で行う。溶
接は強度設計上の理由に応じて必要なだけ行えば良く、
端部密閉のためにはチタンクラッド鋼板が図1の施工の
ために固定されていれば良いので、例えば断続溶接を行
っても、終始端を炭素鋼板3の端部まで開先面を残すこ
となく溶接しても良い。
【0026】ここで、構造体基材表面にチタンクラッド
鋼板からなる部材を複数配置した防食構造体に本発明の
溶接方法を適用する場合には、図4に示すようにガスシ
ールドアーク溶接・被覆アーク溶接・サブマージアーク
溶接などのアーク溶接によりすみ肉溶接11を行い、チ
タンクラッド鋼板1と構造体基材4との隙間を被覆する
必要がある。このすみ肉溶接11において用いる溶接材
料は前述の炭素鋼板同士を溶接する場合と同じく炭素鋼
板用の溶接材料でよく、溶接条件はアークの安定する通
常の溶接条件でよい。
【0027】また、構造体基材を用いずチタンクラッド
鋼板の炭素鋼が構造体基材の機能を持つ場合、すなわち
チタンクラッド鋼板を組み合わせた構造の防食構造体場
合には、図2(a)のように構造上まずチタンクラッド
鋼板の炭素鋼同士が片面あるいは両面から溶接された状
態にある。このような状態でも、図1の(b)〜(d)
に示した通りに本発明の溶接方法を適用することができ
る。
【0028】さらにスペーサーを用いる場合は、図2
(c)に示すように突合せ部の端部におけるチタン層と
チタン層との間にスペーサー14を配置し、図2(d)
のようにろう材を肉盛りしてろう材層を形成して、必要
に応じて機械研削を行う。スペーサー14の材質は、ろ
う材層と接着可能なものであればよく、例えば炭素鋼、
チタン、チタンクラッド鋼板、ろう材と同等の材質のも
の等が望ましい。ろう材として広範囲に用いられるAg
−Cu系を用いれば、スペーサーの材質は上記以外にC
uおよびその合金、ステンレス鋼、Ni及びその合金、
Be、Zr、Va、W、Mo、Ta、Nb及びその合金
等でもよい。
【0029】以上のように本発明の溶接方法で製作され
た防食構造体は、チタンクラッド鋼板の溶接部の端面に
おいて、チタン層を欠落させた部分を塞ぐために図7に
示したように塞ぎ板等を用いることなく、ろう材層を用
いているため疲労破壊の起点となる未溶着部が無く優れ
た耐疲労特性を有する。また、本発明の溶接方法は防食
構造体の一部に用いても十分効果を発揮する。
【0030】次にチタン板の形状について述べる。チタ
ン板8のコーナー部は半径5mm以上、15mm以下とし、
弧状に形成するのがよい。本発明では応力に直角方向の
未溶着部は無いが、チタン板8が架橋されたカバープレ
ートであることから、その溶接部にも応力集中が生じ
る。図5(a)に応力の流れを示すように、チタン板を
伝達する応力もあるが、端部近傍を伝達する応力は、コ
ーナーの溶接部を伝達する。このとき、コーナーの半径
が小さいとその溶接部で応力が集中し、他に大きな応力
集中部が無いことから、疲労き裂が発生しやすくなる。
【0031】従って図5(b)に示すようにコーナーに
丸みをつけることが疲労強度向上に有効であり、種々の
半径のコーナーをもつチタン板の応力集中を検討した結
果、5mm以上の半径が応力集中の低減に特に効果的であ
ることを見出した。しかし半径が15mmを超えると、図
1(b)におけるろう材7の肉盛り幅を増やさなければ
十分なシールが出来ないことから、極端なコスト高を招
く。このような理由から、チタン板コーナーの半径を5
mm以上、15mm以下とした。ただし、チタン板コーナー
の半径を5mm以下としても、未溶着部が無いことから高
い疲労強度は得られる。
【0032】
【実施例】12mm厚の構造用鋼基板に、4mm厚の炭素鋼
を母材とし1mm厚のチタンを合わせ材とした5mm厚のチ
タンクラッド鋼板、および2mm厚のチタン板を用いて、
端部の溶接を行った。炭素鋼の開先は60°のV開先と
し、ルートギャップは3mmとした。炭素鋼同士の溶接に
は1.6mm径のソリッドワイヤー(JIS Z3312
YGW11)を添加したTIG溶接を行った。溶接条
件は電流120A、電圧12V、溶接速度15cm/min
とし、2パスで溶接を行った。
【0033】次に、Ag−Cu系、純Ag、Co系およ
びV系のろう材を用いて、ろう付けにより端部の肉盛り
を行い、ろう材層を形成した。熱源には電流を極端に落
としたTIGを用いた。その条件は電流50A、速度1
5cm/minとした。
【0034】肉盛り方法は、チタンクラッド鋼板のチタ
ン層と同じ高さになるまで肉盛りした場合(表1でのろ
う付け肉盛り高さが0の場合)と、チタンクラッド鋼板
のチタン層より最大で約2mm高く肉盛りを行ったのち、
グラインダー研削によりチタン層と同じ高さになるよう
に仕上げたものの2種類を製作した。また、No.17
〜20においては、ろう材と共にスペーサーを用いてろ
う材層を形成した。
【0035】この上に厚さ2mmのチタン板を被せて、チ
タン層とTIG溶接にて接合した。2mm径のチタンを溶
加材に用い、溶接条件は電流115A、電圧11V、溶
接速度15cm/minとした。また、ろう材層とチタン板
との接合部に対しては、肉盛りろう付けと同じ方法を用
いた。チタン板はコーナーの半径を1mm以下から15mm
まで変化させて加工したものを用いた。
【0036】この端部溶接方法と同じ方法で製作した端
部をもう1箇所製作し、図6(a)〜(c)に示す形状
・寸法の疲労試験片を製作して疲労試験を行った。疲労
試験は荷重制御で荷重範囲を300kN、応力比0.1
で室温・大気中で実施した。比較のため、従来方法とし
て特開平5−185237号公報に示す方法にて図6
(d),(e)に示す形状・寸法の試験片も製作して、
同様に疲労試験を行った。
【0037】疲労試験結果を表1に示す。本発明方法に
よる継手のうち、Ag−Cu系のろう材を用い、チタン
板コーナーの半径を大きくしたもの(No.4,5)
は、従来方法(No.21〜24)による継手に比べて
10倍近い破断寿命の向上が認められる。チタン板のコ
ーナー半径を特に大きくしなくても本発明継手(No.
1〜16)は従来方法による継手の3倍以上の破断寿命
を示している。また、スペーサーを用いた継手(No.
17〜20)も、スペーサーを用いない継手と同等の破
断寿命を示している。
【0038】この溶接継手の結果から、本発明の防食構
造体においても、同じ強度設計条件の場合、従来方法で
製作された防食構造体よりも少なくとも3倍以上の疲労
寿命を有するとともに、疲労き裂の発生に伴う防食機能
の損失も3倍以上の期間防止することが可能である。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】本発明の溶接方法および防食構造体は、
チタンクラッド溶接端部における未溶着部を無くすこと
ができるため、チタンクラッド鋼板および構造用鋼板の
化学組成および機械的性質、および溶接条件の影響を全
く受けず、広範囲に高い疲労強度を得ることが出来る。
従って、疲労破壊が問題となる浮体構造物での使用に際
し、設計・施工面で特別な配慮を必要とせず高い疲労強
度を安定して得ることが可能であり、工業的にその効果
は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)は本発明の溶接方法を工程順に
示す説明図である。
【図2】(a)は本発明の溶接方法におけるチタンクラ
ッド鋼板の炭素鋼同士の溶接状況を、(b)は炭素鋼同
士が溶接された場合のろう付け方法を、(c)及び
(d)はスペーサーを含む場合のろう付け方法を示す説
明図である。
【図3】本発明の溶接方法の適用カ所を示す防食構造体
の例を示す斜視図である。
【図4】チタンクラッド鋼板の炭素鋼と構造体基材の溶
接状況を示す斜視図である。
【図5】(a),(b)はチタン板コーナーの応力集中
状況を示す溶接端部の平面説明図である。
【図6】実施例における疲労試験片の説明図であり、
(a)〜(c)は本発明の平面、側面、A−A断面図、
(d),(e)は従来例の平面、側面図である。
【図7】(a),(b)は従来方法の未溶着部を示す斜
視図である。
【符号の説明】
1 チタンクラッド鋼板 2 チタン層 2a,2c 露出した炭素鋼表面の端部 2b 露出したチタン層の端部 3 炭素鋼板 4 構造体基材 5 開先 6 突き合わせ溶接部 7 ろう材層 7′ 研削されたろう材層 8 チタン板 9 ろう付け肉盛り部 10 TIG溶接部 11 すみ肉溶接 12、12′ 未溶着部 13 チタンクラッド鋼板同士の溶接部の端部 14 スペーサー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B23K 35/30 310 B23K 35/30 310B E02D 31/06 E02D 31/06 B // B23K 103:14 (72)発明者 木下 和宏 東京都千代田区大手町2−6−3 新日本 製鐵株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面にチタン層を有するチタンクラッド
    鋼板同士を突合せ溶接する方法において、突合せ部分の
    チタン層を欠落させたチタンクラッド鋼板同士を突き合
    わせ、突合せ部の端部にろう材を肉盛りしてろう材層を
    形成し、少なくともチタンクラッド鋼のチタン層を欠落
    させたことによって露出した炭素鋼表面及びチタン層端
    面の端部をろう材層で覆い、かつ該ろう材層表面をチタ
    ンクラッド鋼表面と同じ高さに形成し、次いで突き合わ
    せたチタンクラッド鋼板のチタン層間をチタン板によっ
    て架橋した後、チタン板とチタンクラッド鋼板表面のチ
    タン層とを溶接することを特徴とするチタンクラッド鋼
    板の溶接方法。
  2. 【請求項2】 表面にチタン層を有するチタンクラッド
    鋼板同士を突合せ溶接する方法において、突合せ部分の
    チタン層を欠落させたチタンクラッド鋼板同士を突き合
    わせ、突合せ部の端部にスペーサーを配置すると共にろ
    う材を肉盛りしてろう材層を形成して、少なくともチタ
    ンクラッド鋼のチタン層を欠落させたことによって露出
    した炭素鋼表面及びチタン層端面の端部をろう材層で覆
    い、かつ該ろう材層をチタンクラッド鋼表面と同じ高さ
    に形成し、次いで突き合わせたチタンクラッド鋼板のチ
    タン層間をチタン板によって架橋した後、チタン板とチ
    タンクラッド鋼板表面のチタン層とを溶接することを特
    徴とするチタンクラッド鋼板の溶接方法。
  3. 【請求項3】 突合せ部において露出している炭素鋼同
    士を溶接することを特徴とする請求項1又は2記載のチ
    タンクラッド鋼板の溶接方法。
  4. 【請求項4】 ろう材にAg−Cu系ろう材を用いるこ
    とを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のチ
    タンクラッド鋼板の溶接方法。
  5. 【請求項5】 突き合わせたチタンクラッド鋼板同士を
    架橋するチタン板のコーナーに半径5mm以上15mm以下
    の丸みをつけたことを特徴とする請求項1〜4のいずれ
    か1項に記載のチタンクラッド鋼板の溶接方法。
  6. 【請求項6】 構造体基材表面にチタンクラッド鋼板か
    らなる部材を複数配置した防食構造体であって、少なく
    ともチタンクラッド鋼板からなる部材同士の溶接の一部
    が請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法によって行
    われていることを特徴とする防食構造体。
  7. 【請求項7】 複数のチタンクラッド鋼板部材からなる
    防食構造体であって、少なくともチタンクラッド鋼板部
    材同士の溶接の一部が請求項1〜5のいずれか1項に記
    載の方法によって行われていることを特徴とする防食構
    造体。
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