JPH10239256A - 鋼板の焼鈍方法および焼鈍中の鋼板の回復・再結晶の進行度のオンライン測定方法 - Google Patents

鋼板の焼鈍方法および焼鈍中の鋼板の回復・再結晶の進行度のオンライン測定方法

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JPH10239256A
JPH10239256A JP9045334A JP4533497A JPH10239256A JP H10239256 A JPH10239256 A JP H10239256A JP 9045334 A JP9045334 A JP 9045334A JP 4533497 A JP4533497 A JP 4533497A JP H10239256 A JPH10239256 A JP H10239256A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼鈍工程において、オンラインで鋼板の回復
・再結晶の進行度を迅速に測定し、フィードバック制御
などを行い、目標とする機械的特性を得る、最適焼鈍条
件下での焼鈍を可能とする鋼板の焼鈍方法および焼鈍中
の鋼板の回復・再結晶の進行度の測定方法の提供。 【解決手段】 鋼板の連続焼鈍工程において、加熱帯以
降の少なくとも1ヵ所で、鋼板板面に対して、特性X線
または白色X線を照射し、鋼板のα相からの特定の
(h,k,l)格子面の回折X線を検出・計数し、得ら
れた回折X線強度のピークの尖り度を予め作成した検量
線と比較して回復・再結晶の進行度に換算し、その結果
に基づき鋼板の回復・再結晶の進行度を制御する鋼板の
焼鈍方法、および、鋼板の回復・再結晶の進行度の測定
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の目的は、一般の冷延
鋼板、極薄物の缶用鋼板または連続溶融亜鉛めっき鋼板
の製造の焼鈍工程において、より高精度の材質の保証並
びに材質の制御を可能とし、さらには、省エネルギー性
に優れ、安定した操業を可能とする鋼板の焼鈍方法およ
び焼鈍中の鋼板の回復・再結晶の進行度の測定方法の提
供を目的とする。
【0002】
【従来の技術】一般の冷延鋼板、極薄物の缶用鋼板ある
いはこれらと同様に焼鈍工程を含む連続溶融亜鉛めっき
鋼板の製造において、焼鈍工程は、これらの製品の機械
的性質を支配する重要な工程であり、近年、焼鈍工程は
温間圧延材に対しても適用されている。
【0003】これらの鋼板の通常の製造工程は下記の通
りである。すなわち溶鋼を連続鋳造法で 200〜300mm 程
度の厚みのスラブとし、得られたスラブを熱間圧延し、
1〜3mmの熱延鋼板とした後、酸洗、冷間圧延が行われ
る。この状態で、鋼板の厚みはほぼ製品の厚みに近いも
のとなるが、このままでは鋼板は加工硬化状態のまま
で、強度が過度に高く、延性にも乏しいため、成形性
(加工性)を改善するため下記の焼鈍が施される。
【0004】焼鈍は、コイルを2〜3段積載し、ボック
ス状の炉体をかぶせて加熱する箱焼鈍法と、コイルを連
続的に巻き戻しながら高温の炉内を連続的に通板する連
続焼鈍法に大別できるが、その品質特性・生産性などか
ら連続焼鈍法が主流となりつつある。連続焼鈍工程で
は、鋼板は、通常 600〜800 ℃の高温条件下、短時間加
熱されていわゆる再結晶組織が形成される。
【0005】また特殊な用途向けの鋼板の場合は、金属
組織を回復組織あるいは部分再結晶組織とすることで適
正な強度と延性を確保する。一方、連続焼鈍工程におけ
る材質制御を行うための測定手段としては放射温度計に
よる測温が主流となっている(第88回,第89回西山記念
講座『ストリップの連続焼鈍技術の進歩』P163 「連続
焼鈍における計測技術」)。
【0006】放射温度計は応答性が早く、焼鈍環境を撹
乱することなく測定できるという優れた特性を有してい
るが下記(1) 、(2) のような問題点がある。 (1) 鋼板の放射率が変動するため温度誤差を生じる。焼
鈍は通常3〜5%程度の水素を含む窒素雰囲気中で行わ
れ、鋼板の表面は安定していると言われている。
【0007】しかし、炉のシールの悪化などが生じると
炉内雰囲気ガス中に水分が混入し、雰囲気ガスの露点が
上昇し、鋼板表面に酸化膜を形成する。この酸化膜の厚
さの変化は、鋼板表面の熱放射率の変化をもたらし、放
射温度計の測定誤差につながる。種々の調査を行った結
果、炉内雰囲気ガスの露点の変動はかなり大きく、特に
設備の休工後の再稼働時の焼鈍炉内雰囲気ガスの露点は
一時的にせよ+20℃を超えることもある。通常時の良好
な操業条件では、雰囲気ガスの露点は−40℃以下である
ので、露点の変動による鋼板表面の酸化膜の膜厚の変動
は大きく、さらに、これらの厳密な管理は困難であるた
め、上記した放射温度計の測定誤差が避けられない。
【0008】(2) 温度測定結果は直接的には材質の変化
と対応しない。本発明における焼鈍条件の制御は、あく
までも鋼板の回復・再結晶現象の制御が目的であり、温
度制御はあくまでも間接的なパラメータの制御にすぎな
い。すなわち、温度制御の場合は、焼鈍する鋼板の再結
晶終了温度を予め実験により求めておき、それ以上の温
度で焼鈍することで再結晶を完了させる。
【0009】一方、鋼板の再結晶温度に対しては影響を
及ぼす因子が多く、鋼組成、熱延条件、冷延条件、焼鈍
時の加熱条件などがその主なものである。従来の低炭素
アルミキルド鋼においては、再結晶挙動は鋼板の温度と
の対応が良好であり、大きな問題を生ずることはなかっ
た。しかし、昨今、鋼板の薄肉化が顕著に進行し、詳細
な機構は不明であるが従来の操業データ(主として温度
データ)に基づく焼鈍材の材質の安定した制御が困難と
なってきた。
【0010】また、成分的にもCが100ppm以下の、いわ
ゆる極低炭素鋼が多量に使用されるようになり、特に優
れた深絞り性が要求される用途にはNb,Ti,Bなどの炭
窒化物形成元素を添加したIF鋼も多く生産されるよう
になった。これらの新鋼種は従来鋼に比して、より複雑
な回復・再結晶挙動を示すため、従来の放射温度計によ
る炉温の制御だけでは焼鈍後の材質を十分な精度で制御
することが困難であることが明らかとなった。
【0011】一方、焼鈍工程で使用するエネルギーコス
トを低減するためには、より低温かつ高速の焼鈍条件が
有利であり、これをつきつめると再結晶終了温度直上で
の極めて高精度の焼鈍が必要となる。しかし、焼鈍温度
を低く設定しすぎると、いわゆる生焼け状態(部分再結
晶状態)となり、鋼板のプレス成形時に鋼板の破断を生
じるなどの問題点があった。
【0012】また、軟質で加工性に優れる極低炭素鋼と
しては、いわゆる回復焼鈍状態・部分再結晶状態の製品
も挙げられる(特願平6−180100号)が、該鋼板を焼鈍
する場合、単なる温度制御では十分でなく、回復・再結
晶の進行度により材質が大きく変動し、実際の製品化の
障害となっていた。焼鈍条件の制御方法としては、焼鈍
後の鋼板の硬度をオンラインで測定し、フィードバック
して焼鈍条件を最適化する方法も考えられるが、迅速性
に問題があることに加え、ラインの停止あるいはライン
速度の低減が必要となることなどの問題があり、焼鈍条
件の制御方法として十分とはいえなかった。
【0013】一方、鋼板の材質を、オンラインで非接触
で測定する方法としては、X線を用いた方法があり、集
合組織を測定する方法として、特開昭55−158544号公
報、特開昭56−1341号公報、特開昭56−8533号公報、特
開昭50−62805 号公報が挙げられる。しかし、これらの
方法は、回折X線強度比に基づく集合組織の測定であ
り、缶用鋼板などにおいて最も重要視される硬度特性に
対応する焼鈍中の回復・再結晶の進行度を検知する方法
については開示されていなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、焼鈍工程中
の鋼板の材質の測定、制御に関する前記した問題点を解
決し、オンラインで鋼板の回復・再結晶の進行度を迅速
に測定し、フィードバックあるいはフィードフォワード
制御を行い、目標とする機械的特性を得る、最適焼鈍条
件下での焼鈍を可能とする鋼板の焼鈍方法および焼鈍中
の鋼板の回復・再結晶の進行度の測定方法の提供を目的
とする。
【0015】また同時に、従来安定製造が困難であった
回復焼鈍状態、部分再結晶状態の鋼板の製造を可能とす
る鋼板の焼鈍方法および焼鈍中の鋼板の回復・再結晶の
進行度の測定方法の提供を目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、鋼板の連
続焼鈍工程において、加熱帯以降の少なくとも1ヵ所
で、鋼板の回復・再結晶の進行度をオンラインで測定し
つつ、その結果に基づき鋼板の回復・再結晶の進行度を
制御することを特徴とする鋼板の焼鈍方法である。
【0017】第2の発明は、鋼板の連続焼鈍工程におい
て、加熱帯以降の少なくとも1ヵ所で、鋼板板面に対
し、平行ビーム状あるいは集中ビーム状の特性X線を、
X線源の一定角度範囲の回転走査の下に照射し、前記鋼
板のα相からの特定の(h,k,l)格子面の回折X線
を検出・計数し、得られた回折X線強度のピークの尖り
度を予め作成した検量線と比較して回復・再結晶の進行
度に換算し、その結果に基づき鋼板の回復・再結晶の進
行度を制御することを特徴とする鋼板の焼鈍方法であ
る。
【0018】第3の発明は、鋼板の連続焼鈍工程におい
て、加熱帯以降の少なくとも1ヵ所で、鋼板板面に対
し、白色X線を一定の入射角で照射し、前記鋼板のα相
からの特定の(h,k,l)格子面の回折X線をエネル
ギー分散分析により検出・計数し、得られた回折X線強
度のピークの尖り度を予め作成した検量線と比較して回
復・再結晶の進行度に換算し、その結果に基づき鋼板の
回復・再結晶の進行度を制御することを特徴とする鋼板
の焼鈍方法である。
【0019】前記第1の発明または第2の発明または第
3の発明においては、前記回復・再結晶の進行度のオン
ライン測定を加熱帯の出側以降で行い、その結果に基づ
き焼鈍炉をフィードバック制御することが好ましい。ま
た、前記第1の発明〜第3の発明は、前記鋼板のC量
が、0.020wt %以下である鋼板の焼鈍方法として、より
好ましく適用される。
【0020】前記第1の発明〜第3の発明においては、
回復・再結晶の進行度の測定結果に基づき、焼鈍炉の通
板速度および/または炉温を制御し鋼板の回復・再結晶
の進行度を制御することが望ましい。第4の発明は、鋼
板の連続焼鈍工程において、加熱帯以降の少なくとも1
ヵ所で、鋼板の回復・再結晶の進行度をオンラインで測
定しつつ、その結果に基づき焼鈍炉に付設した放射温度
計の較正を行うことを特徴とする焼鈍炉放射温度計の較
正方法である。
【0021】第5の発明は、鋼板の連続焼鈍工程におい
て、加熱帯以降の少なくとも1ヵ所で、X線回折により
鋼板の回復・再結晶の進行度を測定することを特徴とす
る焼鈍中の鋼板の回復・再結晶の進行度のオンライン測
定方法である。第6の発明は、鋼板の連続焼鈍工程にお
いて、加熱帯以降の少なくとも1ヵ所で、鋼板板面に対
し、平行ビーム状あるいは集中ビーム状の特性X線を、
X線源の一定角度範囲の回転走査の下に照射し、前記鋼
板のα相からの特定の(h,k,l)格子面の回折X線
を検出・計数し、得られた回折X線強度のピークの尖り
度を予め作成した検量線と比較して鋼板の回復・再結晶
の進行度に換算することを特徴とする焼鈍中の鋼板の回
復・再結晶の進行度のオンライン測定方法である。
【0022】第7の発明は、鋼板の連続焼鈍工程におい
て、加熱帯以降の少なくとも1ヵ所で、鋼板板面に対
し、白色X線を一定の入射角で照射し、前記鋼板のα相
からの特定の(h,k,l)格子面の回折X線をエネル
ギー分散分析により検出・計数し、得られた回折X線強
度のピークの尖り度を予め作成した検量線と比較して鋼
板の回復・再結晶の進行度に換算することを特徴とする
焼鈍中の鋼板の回復・再結晶の進行度のオンライン測定
方法である。
【0023】なお、前記した第2の発明、第3の発明、
第6の発明、第7の発明における検量線としては、鋼
板の硬度および回折X線強度のピークの尖り度の両者
の相関関係から求められる回帰式を用いることが特に好
ましい。また、前記した第2の発明、第3の発明、第6
の発明、第7の発明における回折X線強度のピークの尖
り度としては、ピークの半価幅、ピークの積分幅、ピー
クの一定高さにおけるピークの幅など、ピーク面積およ
びピーク高さの両者で定まるピークの尖り度を用いるこ
とが好ましく、鋼板の回復・再結晶の進行度の正確な把
握および焼鈍条件の精度良い制御の面から、ピークの半
価幅および/または積分幅を用いることが、特に好まし
い。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳細に説明
する。本発明者らは、前記した問題点を解決するために
鋭意検討の結果、従来技術である焼鈍炉炉温の測定結果
に基づく焼鈍炉の制御に代えて、鋼板の再結晶の進行度
を、直接オンラインで測定し、その結果に基づき鋼板の
再結晶の進行度を制御する鋼板の焼鈍方法に想到した。
【0025】さらに、検出精度、再結晶の進行度との直
接的な対応の有無、測定の迅速性、再現性に加え、連続
焼鈍炉の炉内雰囲気、鋼板の通板状況、測定の安定性な
どを総合的に考慮した結果、鋼板の再結晶の進行度の測
定方法としてX線回折による方法が最も優れていると判
断された。本発明により鋼板の再結晶の進行度すなわち
冷間圧延など圧延工程で導入された加工歪の解放度を定
量化できる原理は下記の通りである。
【0026】冷間圧延など圧延により、鋼板中に転位と
よばれる格子欠陥が高密度で導入される。転位はその運
動で塑性変形を生ずるものであるが、転位の密度が高く
なると、それらの相互作用で自身の運動が困難となり、
硬度が高くなった、いわゆる加工硬化状態と呼ばれる一
種の不安定状態となる。
【0027】このような状態の鋼板に対して熱を加える
と、熱による格子振動の活発化により、転位がより容易
に運動(:上下運動と呼ばれる)できるようになり、正
負の転位が合体することで転位が消滅し、適度な強度と
優れた延性が確保される。この転位の消滅過程あるいは
歪のない新しい結晶粒が出現し成長する過程が、回復あ
るいは再結晶過程の進行と対応する。
【0028】図9に、連続焼鈍に相当する短時間焼鈍後
のNb添加極低炭素鋼板の機械的特性と焼鈍温度との関係
を示すが、極低炭素鋼にNbを添加することで、再結晶温
度が上昇していること(:従来鋼では680 ℃程度であ
る)と、機械的特性の変化をもたらす再結晶の進行度に
およぼす焼鈍温度の影響が顕著であることが分かる。こ
のような鋼板の歪の状態は、X線の回折ピークを測定・
解析することで知ることができる。
【0029】すなわち、加工硬化状態においては、鋼板
からの回折X線のピークは格子の不均一歪みに起因して
大きな広がりをもつ。しかし、回復あるいは再結晶が進
行するにつれてピークは明瞭・先鋭になり、再結晶の終
了に対応して極めて先鋭なピークを示し、その後の結晶
成長でもほとんど変化しない。
【0030】上記した現象に基づく回折X線のピークの
特性を連続焼鈍工程に適用することが本発明の根幹技術
である。以下、本発明の詳細および限定理由について説
明する。 (1) 検出位置;冷間圧延など圧延を施された鋼板の連続
焼鈍工程において、焼鈍時の加熱帯以降の少なくとも1
ヵ所において測定する。
【0031】測定は、鋼板の加熱途中の再結晶の進行中
に行ってもよいが、鋼板板温が最高温度に到達した後、
すなわち、事実上再結晶の進行が終了した時点で測定し
てフィードバック制御することが好適であり、通常の焼
鈍炉の構成では加熱帯の出側以降が該当する。データの
フィードバック制御などを行う場合は、できるだけ均熱
部の直近が望ましいが、少なくともインラインで測定す
れば、焼鈍炉出側以降で測定しても品質保証の機能を付
与することが可能である。
【0032】(2) X線回折; (2−1)特性X線を用いる場合の特性X線の照射および検
出方法;照射する特性X線としては、鉄鋼材料の調査に
通常用いられるCr−Kα線、Cu−Kα線あるいはCo−K
α線を使用することが好ましい。なお、本方法において
は、鋼板に対し、特性X線を、X線源の一定角度範囲の
回転走査の下に照射する。
【0033】すなわち、特定の(h,k,l) 格子面によって
定まる入射角を中心として、鋼板の板面法線を含む面内
で、一定角度範囲の角度操作を行う。なお、この場合の
角度範囲は、要求される測定時間などによって任意に定
めることができる。回折X線の検出は、定量的な測定が
必要であるため、X線デイフラクトメータを用いて試料
からの回折X線強度を検出し、鋼板のα相からの特定の
(h,k,l) 格子面からの回折X線強度のピークの尖り度、
好ましくは、ピークの半価幅あるいは積分幅を求める。
【0034】なお、この場合検出手段として、高性能の
イメージングプレートなどの応用もその迅速性のうえか
ら有効である。 (2−2)白色X線を用いる場合の白色X線の照射および検
出方法;本方法の場合は、白色X線(連続X線)を一定
の入射角で照射し、鋼板からの回折X線を一定角度位置
に固定した半導体検出器で検出し、検出した回折X線を
エネルギー分散法に従いエネルギー分析して鋼板のα相
からの特定の(h,k,l) 格子面からの回折X線強度のピー
クの尖り度、好ましくは、ピークの半価幅あるいは積分
幅を求める。
【0035】(2−3)測定対称の格子面;本発明において
測定対称とするα相の特定の(h,k,l) 格子面としては、
(110)、(200) 、(211) 、(220) 、(222) 、・・・、(42
0) 格子面が挙げられ、測定対称としては特に制限され
ないが、回析強度の面から(200) 面を測定対称とするこ
とが好ましい。
【0036】(2−4)X線回折測定結果からの回復・再結
晶の進行度の算出方法;回折X線の定量化においては、
回折X線強度のスペクトルよりバックグラウンドを差し
引き、放物線近似、ガウシアン近似などにより回折X線
のスペクトルを近似し、ピークの尖り度、好ましくは、
ピークの半価幅あるいは積分幅を算出する。
【0037】一方、予め、各鋼種毎に回復・再結晶の進
行度とピークの尖り度、好ましくは、ピークの半価幅あ
るいは積分幅との相関関係すなわち検量線を求めてお
き、これを元に測定データから回復・再結晶の進行度を
算出する。なお、一般に焼鈍中の再結晶の進行度は、Y
S、TS、Elなどの変化から算出される再結晶率で評
価され、このような手法も適用可能であるが、本発明に
おいては、回復焼鈍状態までを対象とするため、硬度を
評価基準に用いて回復度と再結晶率を総合的に評価する
ことが特に好ましく、本発明においては、これを回復・
再結晶の進行度と記す。
【0038】すなわち、本発明における検量線として
は、鋼板の硬度および回折X線強度のピークの尖り
度、好ましくは、ピークの半価幅(または積分幅)の両
者の相関関係から求められる回帰式を用いることが特に
好ましい。ピーク形状の近似は、より詳細なモデルで近
似してもよいし、計算時間を節約するために少数の点で
の測定値から回帰することも可能である。
【0039】またイメージングプレートなどの応用によ
る画像処理技術の適用も有効である。バックグラウンド
の補正には、放射温度計による鋼板表面の温度データを
補助的に用いることが測定精度の向上に有効である。 (3) 連続焼鈍における鋼板材質の制御方法;本発明にお
いては、前記の方法による測定結果に基づき、焼鈍後の
鋼板すなわち焼鈍炉加熱帯出側の鋼板の再結晶率を制御
する。
【0040】そのためには、焼鈍炉で鋼板に投入される
熱エネルギーを制御する。その具体的手段としては、焼
鈍炉の通板速度を制御することで均熱温度と同時に均熱
時間を制御できる。また、焼鈍炉の炉温を制御すること
によっても同様の効果が達成できるが、より好ましく
は、通板速度と炉温の両者を制御する最適化制御を行う
ことにより、生産効率を低下させることなく目的を達成
することができる。
【0041】本発明は、焼鈍対象の鋼種などを限定する
ものではないが、特に下記のような鋼種に対してより有
効に機能する。 〔C:0.020wt %以下の鋼種〕これは、C量が0.020wt
%以下となると鋼板の再結晶終了温度が顕著に上昇し、
焼鈍時の再結晶の進行度の測定を伴わない従来の温度管
理のみでは、材質の変動が大きくなるため、本発明の適
用が極めて効果的である。
【0042】〔Mn:0.05wt%以上の鋼種〕Mnは焼鈍中の
鋼板の再結晶挙動に大きく影響するため、Mnが0.05wt%
以上含まれる鋼種では、鋼板表面温度の計測のみでは鋼
板の安定した材質制御は困難であり、本発明の方法が有
効となる。 〔Nb、Ti、Bを添加した鋼種〕上記成分に加え、主とし
て組織の微細化、時効性の制御、さらには集合組織制御
の目的でNb、Ti、Bの1種または2種以上を添加した鋼
板に対して本発明は特に有効となる。
【0043】この場合、本発明が特に有効となる鋼板中
の各成分の含有量は、Nb: 0.003〜0.03wt%、Ti: 0.0
03〜0.03wt%、B:0.0005〜0.0020wt%である。これ
は、Nb、TiあるいはBを添加することによって、鋼板の
再結晶温度は上昇し、必然的にこれらの元素が添加され
ない場合よりも高温の焼鈍が必要となり、十分な材質制
御が必要となるためである。
【0044】また、本発明の背景として最も重要なこと
は、これらの鋼板の再結晶温度は成分によって一義的に
決定されるものでなく、熱間圧延条件、冷間圧延条件さ
らには連続焼鈍時の加熱条件によっても、微妙に変動す
ることである。従って、従来のように単に焼鈍均熱時の
鋼板温度の制御では材質の制御が十分でないことは当然
といえる。
【0045】さらに加えて、前記したように、鋼板の表
面に形成される酸化皮膜の状態も焼鈍雰囲気などで大き
く変化し、放射温度計の測定精度が低下する。これらを
総合すると、結果として、鋼板の材質を、放射温度計で
計測した測定値(不安定な測定値)で高精度で安定して
制御することは困難である。このため、従来の焼鈍にお
いては、これらの鋼板に対しては、焼鈍条件に余裕を持
たす意味で十分に高いと考えられる高温の焼鈍を行うこ
とで対処してきたが、高温の焼鈍はエネルギーの削減の
観点から望ましくなく、本発明を実施することにより、
必要最低限の温度での焼鈍が可能となるため、大きな省
エネルギー効果が得られる。
【0046】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。なお、本実施例における回折X線強度のピーク
の半価幅は、ピークの高さの半分の位置でのピークの幅
を示し、積分幅は、ピークと同一面積で、かつ、ピーク
強度(ピーク高さ)と同一高さの長方形の底辺長さを示
す。
【0047】(実施例1)冷延鋼板の連続焼鈍ラインに
おける焼鈍炉加熱帯出側、急冷設備の直前で、フェライ
ト相に残留している歪み量を、後記のX線回折方法でオ
ンラインで測定した。以下、1.測定対称とした冷延鋼
板の製造条件および焼鈍条件、2.X線回折方法および
3.X線回折による歪み量のオンラインでの測定結果に
ついて順次述べる。
【0048】(1.測定対称とした冷延鋼板の製造条件
および焼鈍条件:)測定対象とした冷延鋼板の製造条件
および焼鈍条件は、下記の通りである。 (1) 鋼組成:0.0016%C−0.15%Mn−0.01%Si−0.01%
P− 0.008%S− 0.045%Al−0.0015%N− 0.017%Nb
〔単位はwt%を示す。〕 (2) 熱延条件:スラブ加熱温度;1180℃、仕上げ圧延温
度; 910℃、巻取り温度 ; 750℃、仕上げ板厚
; 1.8mm (3) 酸洗・冷延条件:酸洗実施後、冷間圧延 0.25mm仕
上げ(冷間圧下率86%) (4) 焼鈍条件: 鋼板の通板速度; 400〜1000mpm 焼鈍雰囲気 ;3〜5vol %−水素(残部:実質的に
窒素) 雰囲気ガス露点;−30℃ (2.X線回折方法:)特性X線としてCo−Kα線を使
用し、フェライト相の(200 )面の面反射をデイフラク
トメータにて検出した。
【0049】回折X線の解析においては、回折X線強度
のスペクトルに対してバックグラウンド補正、LP(Lo
rents Polarization)因子補正、吸収補正などの補正を
行い、ピーク形状を放物線で近似し、Kα2/Kα1の
ピーク分離をおこない半価幅を算出した。図1に、本発
明に係わる連続焼鈍炉加熱帯出側に付設したX線回折装
置の構成図を、図2に、ラインに取付けて使用した測定
ヘッド部の分光室の構成図を、図3に、X線源および検
出器の動きを説明する模式図を示す。
【0050】また、図1〜図3において、1は分光室、
1aはX線管、1b、1cはスリット、1dは検出器、1eはベリ
リウム製の窓、1fはKβ線をカットするフィルタ、2は
測定ヘッド部、3はX線発生装置、4は検出器制御部、
5は測定ヘッド部2の駆動制御部、6は電子計算機、7
は焼鈍ラインの制御装置、8は鋼板、9は炉内ロール、
10はX線管1aおよび検出器1dの回転方向、fは鋼板の通
板方向、tは鋼板板厚を示す。
【0051】なお、窓に用いる材料としては、X線の吸
収の少ないベリリウムが最も望ましいが、他の材料での
代替も可能である。なお、図1に示す検出器制御部4に
は計数回路が内蔵され、回折X線強度のピークの半価幅
および積分幅が算出される構成となっている。図1に示
されるように、角度走査の間に鋼板は一定距離移動する
ためその間の平均値を測定することになるが、製品の品
質管理の上では短い走査時間とすることにより、実質的
に問題なく測定可能である。
【0052】測定する鋼板と測定ヘッド部の幾何学的位
置関係は重要であり、これが変動することは測定精度の
低下につながる。しかし、連続焼鈍炉の炉内ロール9で
支持されている部分の鋼板を測定対象とすることにより
安定した測定が可能となる。図1、図2および図3にお
いて、X線発生装置3から管電流、管電圧を測定ヘッド
部2の分光室1に収納されているX線管1aに供給する。
【0053】分光室1は、X線管1aのほかにスリット1
b、1cおよび検出器1dを収納し、検出器1dは、X線源で
あるX線管1aの鋼板板面法線を含む面内の回転走査時に
X線管1aと対称の位置となるように回転する構造となっ
ている。さらに、X線通路は、該通路でのX線の減衰を
最小限に抑制するために、真空雰囲気に保持されてい
る。
【0054】測定ヘッド部2は、分光室1の他に真空ポ
ンプ、耐熱性向上のための水冷管などが付設され、水素
ガスを含む焼鈍雰囲気に対して内爆式防爆構造であり、
さらには前記したX線管1a、スリット1b,1c 、検出器1d
などを周囲のほこりなどから保護する構造となってお
り、振動などに対する対策も考慮されている。Co−Kα
特性X線の照射に際しては、鋼板8の板面法線を含む面
内に比較的広い照射線幅で、X線管1aの一定角度範囲の
回転走査の下に、鋼板8に対し特性X線を照射し、該鋼
板8からの回折X線を入射X線束幅よりも狭い開口幅で
検出することにより、測定中に試料位置変動が生じても
回折X線強度は何等の変動を受けることなく高精度の測
定が可能である。
【0055】また積算・演算処理に要する時間は数秒以
下であり、鋼板通板速度が1000m/分の高速ラインにお
いても鋼板通板方向fにおいて、少なくとも20m毎に1
点ずつの測定値を得ることができる。さらに、図1に示
す駆動制御部5による制御により、測定系を鋼板8の板
幅方向に往復運動させることにより、板幅方向の再結晶
の進行度を測定することも可能である。
【0056】以上のようにして得られた回折X線強度の
ピークの半価幅または積分幅を、電子計算機6におい
て、予め作成した検量線と照合し、鋼板の回復・再結晶
の進行度に関するデータを得ることができる。得られた
各測定値は焼鈍ラインの制御装置7にフィードバックさ
れ、焼鈍炉の通板速度、炉温の制御により、所望する材
質(:例えば硬度)レベルの鋼板が精度よく製造され
る。
【0057】(3.X線回折による歪み量のオンライン
での測定結果:)図4および図5に、種々の焼鈍温度条
件で製造した極低炭素鋼板のフェライト相の(200 )面
の回折X線強度のピークの半価幅または積分幅と焼鈍温
度との関係を示す。なお、図4、図5において、鋼板A
は0.0015C-0.50Mn-0.0150Nb 鋼で、鋼板Bは0.0020C-0.
20Mn-0.012Nb鋼で、また焼鈍温度は熱電対にて測定した
鋼板温度である。
【0058】図4、図5に示すように、連続的に通板さ
れる鋼板を焼鈍炉の加熱帯出側でオンラインでX線回折
して得られた回折X線強度のピークの半価幅、積分幅
は、焼鈍温度によって変化し、本発明の方法により、鋼
板に残留する歪み量がオンラインで測定可能であること
が分かった。 (実施例2)実施例1の冷延鋼板の連続焼鈍ラインにお
いて、焼鈍炉の炉内の鋼板表面温度測定用の放射温度計
を回折X線強度のピークの半価幅または積分幅で較正し
た。
【0059】鋼組成、冷延鋼板の製造条件は、下記に示
す焼鈍条件以外は実施例1と同様である。本実施例は、
焼鈍炉の休工後の再稼働時で焼鈍炉の雰囲気ガスの露点
が±0℃の条件下で行った結果である。 焼鈍条件: 鋼板の通板速度;700 mpm 焼鈍雰囲気 ;3〜5vol %−水素(残部:実質的に
窒素) 較正方法としては、実施例1の鋼板Aと同一の鋼種を通
板時に、実施例1と同様に回折X線強度のピークの半価
幅または積分幅を求め、予め実施例1で求めた図4、図
5に示す鋼板Aの回折X線強度のピークの半価幅または
積分幅と焼鈍温度との関係から焼鈍温度を求めた。
【0060】その結果、回折X線強度のピークの半価幅
または積分幅から求めた焼鈍温度は、いずれも745 ℃で
あった。一方この時の放射温度計による鋼板板面の測定
温度は755 ℃であり、両者の相異は、雰囲気ガスの露点
上昇により鋼板表面に形成された酸化スケールにより生
じたものと考えられ、放射温度計を、回折X線強度のピ
ークの半価幅または積分幅から求めた焼鈍温度に適合す
るように較正し、焼鈍温度を制御した。
【0061】得られた鋼板の硬度(HR30T) は、放射温度
計較正前の755 ℃を正しいとして予測される50に対し
て、52であり、実施例1において焼鈍温度745 ℃で得ら
れた鋼板の硬度とほぼ等しくなり、本発明の較正方法が
有効であることが分かった。 (実施例3)実施例1と同じ冷延鋼板の連続焼鈍ライン
における焼鈍炉加熱帯出側でスキンパス前の位置に、実
施例1で述べた本発明に係わるX線回折装置を設置し
て、実施例1と同様にX線回折のデータを採取し、得ら
れた結果に基づき焼鈍条件の制御を行った。
【0062】なお、測定対象とした冷延鋼板の製造条件
および焼鈍条件は下記の通りである。 (1) 鋼組成:0.0020C-0.15Mn-0.01Si-0.04Al-0.007Nb
〔単位はwt%を示す。〕 (2) 熱延条件:スラブ加熱温度;1250℃、仕上げ圧延温
度; 900℃ 巻取り温度 ; 680℃、仕上げ板厚 ; 1.8mm (3) 酸洗・冷延条件:酸洗実施後、冷間圧延0.216mm 仕
上げ(冷間圧下率88%) (4) 焼鈍条件: 鋼板の通板速度; 800mpm 焼鈍雰囲気 ;5〜7vol %−水素(残部:実質的に
窒素) 雰囲気ガス露点;−20 ℃ 図6に、得られたX線回折によるスペクトルのフェライ
ト相の(200) 面の回折X線強度のピークの半価幅と鋼板
の硬度(HR30T) との関係を示す。
【0063】図6で得られた結果に基づき、本焼鈍ライ
ンにおいてオンラインでフェライト相の(200) 面の回折
X線強度のピークの半価幅を測定し、半価幅が0.19±0.
01deg.の範囲内となるように焼鈍炉での鋼板の通板速度
を制御し、得られた鋼板の硬度を調査した。この結果、
鋼板の硬度(HR30T)は目標どおりの60±1の範囲内に制
御できた。
【0064】一方、従来法の放射温度計による制御では
このような部分再結晶状態に精度良く制御することは困
難であり、放射温度計出力で制御した場合、硬度(HR30
T)は58〜63と大きく変動した。 (実施例4)板厚:0.25〜0.35mm、板幅:780 〜1020mm
の極低炭素冷延鋼板(約50コイル分)を、完全に再結晶
させる条件、すなわち760 ℃焼鈍とした以外は実施例2
と同様の焼鈍条件で焼鈍した。
【0065】また、実施例3と同様の方法で、X線回折
によるオンライン測定に基づき焼鈍時の炉温を主に、副
次的にライン速度を制御した。上記焼鈍条件の制御を行
った結果、本発明の方法によれば、焼鈍後の状態で硬度
(HR30T)が50±1の範囲内に制御できた。一方、従来法
の放射温度計による制御では、硬度(HR30T)が目標とす
る50に対して52を超えるものが2%程度の割合で発生し
た。
【0066】これは、焼鈍ラインの操業条件が理想的な
一定の状態ではなく、板厚・板幅変動、通板速度の(人
為的な要因も含む)変動など各種の変動が、硬度のばら
つきをもたらしているためと推定される。これに対し
て、本発明の方法によれば、硬度と相関性の高い回折X
線強度のピークの半価幅あるいは積分幅を、予め作成し
た検量線に基づき制御することにより、精度良く硬度を
制御することが可能となった。
【0067】(実施例5)本実施例においては、実施例
1と同じ冷延鋼板の連続焼鈍ラインにおける焼鈍炉加熱
帯出側でスキンパス前の位置に、下記に示す本発明に係
わるX線回折装置を設置してデータを採取し、得られた
結果に基づき焼鈍条件の制御を行った。なお、測定対象
とした冷延鋼板の製造条件、焼鈍条件は実施例3と同様
である。
【0068】焼鈍条件の制御は、オンラインでX線回折
によるスペクトルのフェライト相の(200) 面の回折X線
強度のピークの積分幅と鋼板の硬度(HR30T) との関係を
予め求め、その結果に基づき、積分幅が0.20±0.02deg.
の範囲内となるように焼鈍炉の炉温を制御し、得られる
鋼板の硬度を調査した。その結果、鋼板の硬度(HR30T)
は目標通りの60±1の範囲内に制御できた。
【0069】(X線回折方法:)入射X線を平行ビーム
状の白色X線とし、鋼板の板面法線を含む面内に一定入
射角で照射し、フェライト相の(200 )面の面反射を半
導体検出器で検出した。図7に、連続焼鈍炉加熱帯出側
に付設した本発明に係わるX線回折装置の構成図を、図
8に、ラインに取り付けて使用した測定ヘッド部の分光
室の構成図を示す。
【0070】図7および図8において、21は分光室、21
a はX線管、21b 、21c はスリット、21d は半導体検出
器、21e は窓(:ベリリウム製あるいはそれに準ずるX
線吸収の小さな材料で構成された窓)、22は測定ヘッド
部、23はX線発生装置、24は多重波高分析器、25は測定
ヘッド部22の駆動制御部、26は電子計算機、27は焼鈍ラ
インの制御装置を示し、他の符号は図1〜図3と同一の
内容を示す。
【0071】図7および図8において、X線発生装置23
から管電流、管電圧を測定ヘッド部22の分光室21に収納
されているX線管21a に供給する。分光室21は、X線管
21a の他にスリット21b 、21c および半導体検出器〔Si
(Li)検出素子〕21d などを収納している。X線管21a か
ら発生する白色(連続)X線は、入射ソーラスリットで
あるスリット21b を経て平行ビーム状で鋼板8の板面法
線を含む面内に一定の入射角θで入射する。
【0072】入射したX線の内下記式(2) を満足するエ
ネルギ値を持つX線が、(h,k,l) 格子面の回折線とし
て、鋼板板面法線に対してX線管21a と対称位置に配置
された半導体検出器21d に到達する。 dhkl =hc/(2sinθ・E)………(2) 〔式(2) 中、dhkl は格子面間隔、hはプランクの定
数、cは光速、θは入射角、Eはエネルギ値を示す。〕 半導体検出器21d に到達したX線は、電気パルスに変換
され僅かに増幅された後、多重波高分析器24により、電
気パルスの波高値が選別され、これらのエネルギ分析処
理の後、これらのデータは各波高値に対するメモリ領域
に多重積算される。
【0073】これらの積算機能は通常多重波高分析器24
に内蔵させるが、波高値分析後のデータを逐次電子計算
機26のメモリに転送してもよい。電子計算機26において
は、移動平均法により波形を平滑化してバックグラウン
ドが求められ、原波形からバックグラウンドを除去して
回折線のみ求め、回折プロフィルから目的とする結晶格
子面のピークの半価幅および積分幅が求められる。
【0074】以上のようにして得られた結晶格子面のピ
ークの半価幅または積分幅を、電子計算機26において、
予め作成した検量線と照合し、鋼板の回復・再結晶の進
行度に関するデータを得ることができる。得られた各測
定値は焼鈍ラインの制御装置27にフィードバックされ、
焼鈍炉の通板速度、炉温の制御により、所望する強度
(硬度)レベルの鋼板が精度良く製造される。
【0075】
【発明の効果】本発明の効果を要約すると下記の通りと
なる。 (1) 鋼板の歪みの解放(回復・再結晶の進行)状況をオ
ンラインで測定、管理することにより、各鋼種の作り分
け、硬度など鋼板の品質管理をオンラインで容易に行う
ことができる。
【0076】(2) オンラインで得た鋼板の歪みの解放
(回復・再結晶の進行)状況に関する情報により、焼鈍
ラインの温度制御、通板速度制御など製造条件の制御が
リアルタイムで行え、この結果、製品特性のばらつきを
低減し、さらには製品の歩留を改善することができる。 (3) 目標とする回復・再結晶進行度の終了温度直上での
焼鈍が可能となり、大幅な省エネルギーが達成できる。
【0077】(4) 本発明は、高炭素鋼板、珪素鋼板、ス
テンレス鋼板など他の品種にも容易に適用できる。 (5) 本発明に係わるX線回折装置は、測定温度範囲(焼
鈍炉の雰囲気炉温)が、より高温、より低温のいずれの
場合においても、測定ヘッド部の耐熱性、気密性に若干
の考慮を払うことで容易に適用でき、測定装置として保
守が容易である利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるX線回折装置の構成図である。
【図2】本発明に係わるX線回折装置の測定ヘッド部の
分光室の構成図である。
【図3】本発明に係わるX線回折装置のX線源および検
出器の動きを示す模式図である。
【図4】極低炭素鋼板のフェライト相の(200 )面の回
折X線強度のピークの半価幅と焼鈍温度との関係を示す
グラフである。
【図5】極低炭素鋼板のフェライト相の(200 )面の回
折X線強度のピークの積分幅と焼鈍温度との関係を示す
グラフである。
【図6】フェライト相の(200) 面の回折X線強度のピー
クの半価幅と鋼板の硬度(HR30T) との関係を示すグラフ
である。
【図7】本発明に係わるX線回折装置の構成図である。
【図8】本発明に係わるX線回折装置の測定ヘッド部の
分光室の構成図である。
【図9】Nb添加極低炭素鋼板の機械的特性と焼鈍温度と
の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1、21 分光室 1a、21a X線管 1b、1c、21b 、21c スリット 1d 検出器 1e、21e 窓 1f フィルタ 2、22 測定ヘッド部 3、23 X線発生装置 4 検出器制御部 5、25 測定ヘッド部の駆動制御部 6、26 電子計算機 7、27 焼鈍ラインの制御装置 8 鋼板 9 炉内ロール 10 X線管および検出器の回転方向 21d 半導体検出器 24 多重波高分析器 f 鋼板の通板方向 t 鋼板板厚
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 荒谷 昌利 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 酒井 稔 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 久々湊 英雄 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼板の連続焼鈍工程において、加熱帯以降
    の少なくとも1ヵ所で、鋼板の回復・再結晶の進行度を
    オンラインで測定しつつ、その結果に基づき鋼板の回復
    ・再結晶の進行度を制御することを特徴とする鋼板の焼
    鈍方法。
  2. 【請求項2】 鋼板の連続焼鈍工程において、加熱帯以
    降の少なくとも1ヵ所で、鋼板板面に対し、平行ビーム
    状あるいは集中ビーム状の特性X線を、X線源の一定角
    度範囲の回転走査の下に照射し、前記鋼板のα相からの
    特定の(h,k,l)格子面の回折X線を検出・計数
    し、得られた回折X線強度のピークの尖り度を予め作成
    した検量線と比較して回復・再結晶の進行度に換算し、
    その結果に基づき鋼板の回復・再結晶の進行度を制御す
    ることを特徴とする鋼板の焼鈍方法。
  3. 【請求項3】 鋼板の連続焼鈍工程において、加熱帯以
    降の少なくとも1ヵ所で、鋼板板面に対し、白色X線を
    一定の入射角で照射し、前記鋼板のα相からの特定の
    (h,k,l)格子面の回折X線をエネルギー分散分析
    により検出・計数し、得られた回折X線強度のピークの
    尖り度を予め作成した検量線と比較して回復・再結晶の
    進行度に換算し、その結果に基づき鋼板の回復・再結晶
    の進行度を制御することを特徴とする鋼板の焼鈍方法。
  4. 【請求項4】 前記回復・再結晶の進行度のオンライン
    測定を加熱帯の出側以降で行い、その結果に基づき焼鈍
    炉をフィードバック制御することを特徴とする請求項1
    〜3いずれかに記載の鋼板の焼鈍方法。
  5. 【請求項5】 鋼板の連続焼鈍工程において、加熱帯以
    降の少なくとも1ヵ所で、鋼板の回復・再結晶の進行度
    をオンラインで測定しつつ、その結果に基づき焼鈍炉に
    付設した放射温度計の較正を行うことを特徴とする焼鈍
    炉放射温度計の較正方法。
  6. 【請求項6】 鋼板の連続焼鈍工程において、加熱帯以
    降の少なくとも1ヵ所で、X線回折により鋼板の回復・
    再結晶の進行度を測定することを特徴とする焼鈍中の鋼
    板の回復・再結晶の進行度のオンライン測定方法。
  7. 【請求項7】 鋼板の連続焼鈍工程において、加熱帯以
    降の少なくとも1ヵ所で、鋼板板面に対し、平行ビーム
    状あるいは集中ビーム状の特性X線を、X線源の一定角
    度範囲の回転走査の下に照射し、前記鋼板のα相からの
    特定の(h,k,l)格子面の回折X線を検出・計数
    し、得られた回折X線強度のピークの尖り度を予め作成
    した検量線と比較して鋼板の回復・再結晶の進行度に換
    算することを特徴とする焼鈍中の鋼板の回復・再結晶の
    進行度のオンライン測定方法。
  8. 【請求項8】 鋼板の連続焼鈍工程において、加熱帯以
    降の少なくとも1ヵ所で、鋼板板面に対し、白色X線を
    一定の入射角で照射し、前記鋼板のα相からの特定の
    (h,k,l)格子面の回折X線をエネルギー分散分析
    により検出・計数し、得られた回折X線強度のピークの
    尖り度を予め作成した検量線と比較して鋼板の回復・再
    結晶の進行度に換算することを特徴とする焼鈍中の鋼板
    の回復・再結晶の進行度のオンライン測定方法。
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