JPH10231244A - 親水性包接複合体及びその製造方法 - Google Patents

親水性包接複合体及びその製造方法

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JPH10231244A
JPH10231244A JP9034834A JP3483497A JPH10231244A JP H10231244 A JPH10231244 A JP H10231244A JP 9034834 A JP9034834 A JP 9034834A JP 3483497 A JP3483497 A JP 3483497A JP H10231244 A JPH10231244 A JP H10231244A
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JP
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cyclodextrin
inclusion complex
ascorbic acid
solution
higher fatty
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JP9034834A
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Ikuo Yashiki
幾雄 屋敷
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NEWTEC KK
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】高度に改善された経時的安定性及び熱安定性を
有し、各種の食品類に広く且つ実質的な制約なしに適用
できる脂溶性のL−アスコルビン酸高級脂肪酸エステル
類の親水性複合体を提供する。 【解決手段】シクロデキストリンを溶解した水及び/又
は親水性有機溶剤の溶液に、その溶液中に溶解するシク
ロデキストリンの0.1〜30重量%の脂溶性L−アスコ
ルビン酸の高級脂肪酸エステルを加え、50〜100℃
の範囲内の温度条件下に、かき混ぜてL−アスコルビン
酸高級脂肪酸エステル類の親水性包接複合体を製造す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脂溶性L−アスコ
ルビン酸脂肪酸エステルの親水性化された包接複合体に
関し、特に、脂溶性L−アスコルビン酸脂肪酸エステル
をシクロデキストリンに包接させた親水性包接複合体及
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】L−アスコルビン酸は、別名ビタミンC
として知られた栄養素であるが、独特の酸味を有する弱
酸性の水溶性化合物で、その強い還元力を利用して無毒
性の酸化防止剤として多くの食品類に添加使用されてい
る。しかし、このL−アスコルビン酸(VC)は、空気
中の酸素によって分解され易いので経時安定性が悪く、
特に、熱によって容易に分解し、また、油脂類に対する
溶解性が乏しいため、適用しようとする食品素材との組
合せや加熱調理方法が大きく制限される。他方、脂
(油)溶性還元剤として、VCの高級脂肪酸エステル類
が知られているが、これらは水に対する親和性が弱く、
脂溶性の天然界面活性剤であるレシチンやシュガ−エス
テル等の食品用乳化剤で油中に分散させて脂溶性物質に
添加、利用されている。
【0003】VCの高級脂肪酸エステル類は、VCに比
べて改善された経時安定性を有するが、例えば、VCの
パルミチン酸エステルは、水には実質的に不溶で、エタ
ノ−ルに対して12.5%、エチルエ−テルに0.7%、クロ
ロホルムには0.03%程度が溶解するにすぎず、植物油に
は、0.01〜0.02%しか溶解しない。従って、これらのV
Cの高級脂肪酸エステル類は、前記したように、レシチ
ンやシュガ−エステル等の乳化剤等で油中に分散させ、
食品用酸化防止剤として油脂や多くの脂溶性食品類に添
加使用されているが、かかる分散剤を含有するVCの高
級脂肪酸エステル還元剤類は、例えば、天ぷら油に分散
させるとき 160〜200 ℃程度の調理温度で容易に褐色に
変色し、同時にVCの高級脂肪酸エステルも分解してV
C成分の残存量が大幅に低下する。従って一度使用した
油は酸化防止性が著しく低下し、そのような油が滲み込
んだ菓子類に対する酸化防止機能も殆ど期待できない。
【0004】本発明者らは、水溶性の遊離VCに比べて
化学的にも熱的にも安定なVCの高級脂肪酸エステル類
に親水性を与え、しかも熱安定性及び経時安定性を一層
向上させるべく、特に、その物理化学的性質を変性して
一層利用性を高める方法について多くの試作実験を重ね
た結果、VCの高級脂肪酸エステル類をシクロデキスト
リンに包接させたものが実用的に極めて有用であり、安
定性の優れた食品用還元剤として望ましいことを知っ
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題
は、親水性を有する脂溶性のL−アスコルビン酸高級脂
肪酸エステル類を提供することにある。また、本発明の
他の課題は、高度に改善された経時的安定性及び熱安定
性を有し、各種の食品類に広く且つ実質的な制約なしに
適用できるVCの高級脂肪酸エステル類の包接複合体を
提供することにある。更に、本発明の他の課題は、その
包接複合体を工業的に有利に且つ効率的に製造する方法
を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、特
に、前記特許請求の範囲の請求項1及び6に記載の要件
から成る包接複合体及びその好適な製造方法を要旨とす
るものである。
【0007】本発明は、脂溶性のVC高級脂肪酸エステ
ル(VCFE)をシクロデキストリン(CD)に包接さ
せることにより化学的に安定な親水性包接複合体を提供
し得るという技術的発見に基づいている。油溶性のVC
FEがCDの分子内に包接された本願発明に係る包接複
合体は、物理化学的にはCDの水親和性を有し、化学的
にはアスコルビン酸の還元性を保有して、その還元力が
効果的に作用するアダクツ(adduct)のような分
子複合体と考えられる。この包接複合体は、その製造方
法に関連して、CD分子内にVCFE及び水その他の溶
剤等を包み込んだものと推定される安定な水分散性エマ
ルジョンとして得られるが、その包接複合体分子の大き
さやその親水性能によっては、分散液ではなく水溶液と
して提供される。
【0008】
【発明の実施の態様】本発明に係る包接複合体は、脂溶
性のVCFEをCDに包接させた複合化合物類であっ
て、VCのもつ特異な酸味が消えた無味無臭の化学物質
であり、通常、乾燥粉末製剤として、各種用途に適用さ
れるが、この包接複合体は、水溶液ないし安定な水分散
液を形成するから、これまで適用が困難であった各種の
水性飲料に自由に加えることができる。更に、他の化学
的成分に対しても安定で、粉末として油脂含有食品,色
素含有食品その他の食品素材や化粧品類あるいは医薬品
類等に好適に添加使用することができるので、実用的に
も工業的にも高い利用性を有する極めて望ましい物質で
ある。実用上有用な包接複合体は、VCFEが包接複合
体中に 0.1〜30重量%程度含有されるものである。
【0009】また、本発明に係る包接複合体は、CDを
水及び/又は親水性有機溶剤に溶解させ、これにVCF
Eを加えて、その系を適当な温度に加温し、その温度に
保持して安定な分散液ないし溶液が得られるまで強力に
かき混ぜることにより、効率よくつくられる。包接化に
際して、CDを溶解させる溶剤は、水が好ましいが、低
級アルコ−ルのような水混和性有機溶剤又はそれら有機
溶剤含有水を使用することができる。そのCD溶液は、
通常、60〜75重量%の比較的高い濃度の溶液に調製され
る。このCD溶液濃度が低いと、包接複合体の形成に長
時間を要し、濃すぎると粘度が高くなるので包接化に不
都合である。好ましい濃度は、65〜73重量%、更に好ま
しくは、68〜73重量%である。
【0010】CDに包接させようとするVCFEは、通
常、アルコ−ルなどの有機溶剤に溶解して上記CD溶液
に加えられるが、粉末のまゝ添加することもできる。包
接化においては、CDが、VCFEの全量を包接させる
のに充分な量,割合で存在すればよく、VCFEを包接
するのに必要なCDの量は、VCFEの種類によって多
少異なるが、通常、約40〜99重量倍程度である。C
DとVCFEを含んだ水媒体系は、50〜100 ℃の範囲内
の温度に加温保持され、この系が安定な分散液を形成す
るまで撹拌を続けることにより、例えば、ホモミキサ−
を2000〜10000rpm程度の高速で回転させて激しく掻き混
ぜることにより、VCFE−CD包接複合体を容易に製
造することができる。
【0011】包接される油溶性のVCFEは、一般に、
100 ℃以上の融点を有するが、水媒体中においては、融
点より遥かに低い温度で融解する。その理由は明確では
ないが、水媒体中での包接化反応では、通常、そのよう
なVCFEの融解状態が得られる適切な加熱温度で好都
合に行われる。例えば、VCパルミチン酸モノエステル
の水媒体中での融解温度は、65〜85℃程度であるから、
反応系の温度は、その融解温度範囲内に設定され、他の
VC高級脂肪酸エステルの場合にも、対応するそれぞれ
の融解温度に応じて選択される。
【0012】本発明のVCFEの包接複合体の製造に用
いられるCDは、例えば、重合度6のα−CD,重合度
7のβ−CD,重合度8のγ−CD,グルコシルCD
(G1-α−CD,G1-β−CD,G1-γ−CD),マル
トシルCD(G2-α−,G2-β−CD,G2-γ−C
D),ヒドロキシプロピルCD(Hp-α−CD,Hp-β
−CD,Hp-γ−CD),メチル化CD及びジメチル化
CD等が挙げられる。これらのCDは、単独種で用いる
ことができるが、好ましくは、複数種が組合せて使用さ
れる。一般的には、水溶性の高いCDを選択することが
望ましく、グルコシルα−,β−,γ−CDの混合物,
マルトシルα−,β−,γ−CDの混合物が有利に使用
される。上記CDの中で最も好ましいものは、G2-β−
CDである。
【0013】通常、組合せて使用されるCD類の好まし
い組合せは、マルトシルCDが、例えば、G2-α−CD
6〜65重量%,G2-β−CD30〜93重量%及びG2-γ−
CD1〜5重量%の範囲割合の組成物である。各マルト
シル成分の組合せ及びそれらの割合は、VCFEの種類
によって多少異なる。例えば、VCのパルミチン酸エス
テルでは、G2-α−CD対G2-β−CDが、13〜48:50
〜85の重量割合の混合物、又は更にこれに少量のG2
−CDを加えた組成物がよく、また、VCのステアリン
酸エステルでは、例えば、G2-α−CDとG2-β−CD
が、30〜60:40〜70の重量範囲割合のものが好適であ
る。
【0014】また、本発明の包接複合体の製造に用いら
れるVCFEは、そのエステル形成用成分としての高級
脂肪酸成分が、炭素原子数10以上の非水溶性脂肪酸類
であって、具体的には、例えば、ラウリン酸,ミリスチ
ン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,アラキドン酸,ベ
ヘニン酸,セロチン酸,オレイン酸及びリノ−ル酸等が
包含される。それら高級脂肪酸類がVCにエステル結合
するVCFEには、これらの高級脂肪酸のモノエステ
ル,ジエステル及びトリエステルが包含され、それらの
ジ−エステル又はトリ−エステルは、混合エステルであ
ってもよいが、工業的には、単一脂肪酸のエステルが有
利に提供される。これらエステル類の中で実用的に好ま
しいものは、VCのパルミチン酸モノ又はジエステル及
びステアリン酸モノ又はジエステルである。
【0015】このような包接複合体は、上記製造方法か
ら理解されるように、CDとVCFEのそれぞれの種類
やそれらの相対的使用量により、均一且つ安定なエマル
ジョンとして、あるいは包接複合体溶液として得られ
る。包接複合体の製造において有機溶剤を利用する場合
には、その溶剤の大気汚染に基づく環境の安全性が考慮
されねばならず、また、包接複合体を乾燥して粉末を取
得する場合には実質的に問題はないが、エマルジョンの
状態を保ったまま次の適用に供する場合、特に、食物に
使用される場合には、その有機溶剤が包接複合体中に残
存しないように充分配慮することが重要である。
【0016】このようにして得られる本発明の包接複合
体は、通常、その包接複合体に基づいてVCFEを 0.1
〜30重量%程度含有するものが実用的である。該エステ
ルの含有量が 0.1重量%未満では、包接複合体の特性、
特に、還元性が有効に利用され難いので不都合であり、
また、30重量%を超えると満足し得る包接複合体形成条
件が得られないので不適切である。包接複合体中に含有
されるVCFEの望ましい量は1〜20重量%の範囲であ
る。本発明に係る包接複合体は、水媒体では、エステル
の含有量やCDの組合せによって、透明ないし半透明の
エマルジョンを形成し、その包接複合体は、VCと同程
度の還元性、すなわち強い酸化防止能を保有すると共
に、優れたエマルジョン安定性,熱や酸アルカリに対す
る安定性及びpHに関しても高い安定性を有する極めて
望ましいものである。
【0017】水性媒体中で製造される本発明のCD包接
複合体は、通常、100〜200℃の熱風で噴霧乾燥して微細
な粉末状の酸化防止性物質として製品化される。該包接
複合体は、酸化防止剤として単独で使用することもでき
るが、他の知られた酸化防止剤と組合わせて一層高い酸
化防止性組成物を提供することができる。そのような組
合せ使用される他の酸化防止剤としては、代表的に、例
えば、ビタミンE,カテキン,ポリフェノ−ル,フラボ
ノイド,L−アスコルビン酸,コ−ジ酸,ロ−ズマリ−
や胡麻等の香辛料抽出物類が挙げられる。これらの酸化
防止剤は、本発明の包接複合体と実質的に自由な割合で
混合することができるが、脂溶性のものは、好ましく
は、界面活性剤によって親水性化処理され、あるいは化
合物によっては既に知られた親水性包接化合物化処理さ
れて組合せ使用される。
【0018】本発明の包接複合体は、前述のように、そ
の酸化防止性を利用して、極めて多くの飲食品や化粧品
あるいは医薬品類に添加することができ、例えば、緑
茶,抹茶,紅茶その他の清涼飲料やワイン,ビ−ル等の
発泡酒等;ハム,ソ−セ−ジ,ベ−コン等の畜肉加工品
類;にしん,えび,かに,たらこ,いくら等の水産加工
食品類;なすの浅漬その他の浅漬全般、たくあん,から
し菜,野沢菜,千枚漬,かぶ漬,べったら漬,古漬,わ
さび漬,らっきょう漬,あるいはきむち等の漬物類;
麺,パン等の小麦粉の発酵食品;ジャム,クリ−ム,生
クリ−ム等のフラワ−ペ−スト類;スナック菓子,油
菓,ビスケット等の焼菓子類を含む菓子一般;ガム,チ
ョコレ−ト類,ヨ−グルト,アイスクリ−ム等の乳製
品;美肌効果をもつクリ−ム,化粧水,日焼止め効果を
もつ化粧品類;その他健康食品や医薬品類に添加し、そ
れら製品類の酸化防止,退色防止あるいは褐変や黒変の
防止,発色促進,醗酵促進等に優れた効果を有する。
【0019】
【実施例】次に、具体例により、本発明を更に詳細に説
明する。なお、具体例中の%,部数は、特に記載がない
かぎり重量による。 実施例 1 水1000mlを65〜90℃に加温し、これにセルデックスB-1
00(日本食品加工社製の商品名:純度98.5%のβ−シク
ロデキストリン)200gを加えて完全に溶解した後、マグ
ネチックスタラ−でかき混ぜながら、L−アスコルビン
酸パルミチン酸エステル(VCP)80gをエタノ−ル80
mlに溶解した溶液を緩やかに添加し、一昼夜撹拌を続け
た。その液を遠心分離機にかけ、3000rpmの回転速度で1
0分間遠心分離し、分離した白色沈殿物を回収した。回
収物を凍結乾燥し粉砕して 230gの粉末を得た。得られ
た粉末を沃素滴定法で定量した結果、乾燥物は、28.0重
量%のVCPを含有する包接複合体であることが確認さ
れた。この包接複合体について酸アルカリ溶液中の安定
性試験及び還元速度試験を行った。
【0020】[酸,アルカリ溶液中の安定性試験]試験
用酸溶液として、1規定(N)の酢酸水溶液(pH 2.
4)10mlを密栓できるガラス容器にとり、また、アル
カリ溶液として、1Nの酢酸ナトリウム水溶液(pH1
0.9)10mlを別の同様の容器にとり、これらそれぞれ
に、包接複合体250 mgを加えて90℃の温度で保存し
た。保存開始から3時間,8時間及び15時間経過後の液
のL−アスコルビン酸の還元力を測定した。還元力の測
定は、試料液 0.5mlを三角フラスコにピペットで採取
し、メタノ−ル5ml,水2ml及び20%メタ燐酸水溶
液を0.5 ml加えて混和し、2,6-ジクロロフェノ−ルイ
ンドフェノンナトリウム塩(DCP)の0.03%水溶液で
滴定を行った。滴定は、DCPの発色が2分間消えない
時をもって終点とし、加熱保存前のDCP水溶液消費量
に対する加熱保存後のDCP消費量の百分率%を還元力
として表示した。なお比較のために、包接複合体 250m
gに代えてビタミンC50mgを加え、また、滴定用試料
液は、0.1 mlを採取して同様の測定を行った。
【0021】酸溶液及びアルカリ溶液中の安定性試験に
おいて測定したそれぞれの還元力残存率(%)の経時的
変化を下掲表1に纏めた。 (表1) 加熱時間 3時間後 8時間後 15時間後 V C (酸溶液) 93.5 86.1 75.5 V C (アルカリ溶液) 79.4 78.2 75.4 包接複合体(酸溶液) 99.0 97.1 90.8 包接複合体(アルカリ溶液) 93.8 78.3 74.6
【0022】[還元速度試験]還元速度試験用試料液と
してメタノ−ル2ml,水1ml,20%メタ燐酸水溶液
0.5ml及びDCPの0.03%水溶液2mlを混和して調
製し、これに、そのDCPを酸化し得る量の計算された
2倍量の還元性物質を加えて、DCPの色が完全に消失
する時間(秒)を測定して還元速度を調べた。測定の供
したVC,VCP及びVCP包接複合体の各試料は、そ
れぞれ次のように調製された。 VC :26.1mgを水5mlに溶解した水溶液を
0.118ml VCP :VCP 41.7mgをメタノ−ル5mlに
溶解した 0.223ml VCP包接複合体:複合体 137.7mgを水5mlに分散
した液0.50ml
【0023】上記還元速度試験の各試料の測定結果は、
下掲表2の通りであった。 (表2) DCPの色の消失時間 VC : 6.54秒 VCP : 4.44秒 VCP包接複合体: 31.75秒 VC及びVCPは、還元力が、短時間に作用する即効性
を有するのに対し、VCP包接複合体は、その還元力の
発現が極めて遅速であり、VCPが、β−CDに包接さ
れ、還元力がゆっくり働くことが理解できる。
【0024】実施例 2 セルデックス B-100(日本食品加工社製の商品名:純度
98.5%のβ−シクロデキストリン)200gを65〜90℃に加
温した水1000mlに完全に溶解させ、後に室温にて緩やか
に冷却しつつホモミキサ−で撹拌しながら、L−アスコ
ルビン酸ステアリン酸エステル(VCS)27gをエタノ
−ル25mlに溶解した溶液を滴下し、滴下終了後、7000rp
m の回転速度で20分間、強力な撹拌を行った。遠心分離
して得られた白色沈殿物を凍結乾燥後、粉砕して、214
gの包接複合体を得た。得られた粉末を沃素滴定法で定
量した結果、VCSの含有量は、10.2重量%であった。
得られた包接複合体について抗酸化試験を行った。
【0025】[抗酸化試験]薄力粉 100gに、上記実施
例2で得られたVCSを約10%含有するβ−CD包接複
合体0.2 gを添加し、水 200mlを加えてよく混合し、
これを 180℃に加熱した充分量の植物油(コ−ンサラダ
油)にて3分間油ちょうし、天ぷら衣を作製した。この
試料をシャ−レに入れて室温で保存し、保存開始から1
ヵ月,3ヵ月及び6ヵ月経過後の過酸化物価(POV)
及び酸価(AV)を測定した。また、シャ−レに入れた
天ぷら衣を60℃の恒温槽に保存し、その保存開始から10
日,20日及び30日経過時のPOV及びAVを測定し、天
ぷら衣の酸化状態から本発明の包接複合体の還元性を調
べた。測定試料は、経時的に分取した試料10〜20gをソ
ックスレ−抽出管を用いてジエチルエ−テルで抽出した
油脂1gについてPOV及びAVを測定した。
【0026】比較例1,2及び3 比較のために、実施例2のVCS10%含有β−CD包接
複合体に代えて、それぞれVCP0.02gを添加したもの
(比較例1)、β−CD 0.2gを添加したもの(比較例
2)及び無添加のもの(比較例3)について、同様に抗
酸化試験を行って、本発明の包接複合体の効力を評価し
た。それらの測定結果を、表3〜5にまとめた。
【0027】 (表3)室温6ヵ月保存天ぷら衣の油脂のPOV 実施例2 比較例1 比較例2 比較例3 開始直後 1.3 1.0 2.8 2.5 1ヵ月後 2.2 2.4 2.6 2.8 3ヵ月後 2.0 3.6 3.1 5.7 6ヵ月後 3.4 8.2 10.2 12.3
【0028】 (表4)60℃,30日保存天ぷら衣の油脂のPOV 実施例2 比較例1 比較例2 比較例3 開始直後 1.3 1.0 3.2 2.5 10日後 4.2 6.2 15.8 14.0 20日後 12.5 17.3 20.3 29.2 30日後 20.5 68.5 63.2 89.3
【0029】 (表5)60℃,30日保存天ぷら衣の油脂のAV 実施例2 比較例1 比較例2 比較例3 開始直後 0.15 0.11 0.11 0.00 10日後 0.19 0.17 0.22 0.20 20日後 0.20 0.26 0.27 0.17 30日後 0.24 0.48 0.52 0.74
【0030】上記表3〜表5に示された室温6ヵ月保存
の天ぷら衣試料の油脂のPOV及び60℃の温度に30日間
保存したときの保存開始直後からの油脂のPOVとAV
の経時変化から、本発明の包接化合物の還元力が、長期
にわたって油脂の安定化に顕著に寄与することが理解さ
れよう。なお、室温で保存した場合の実施例2及び比較
例1〜3それぞれのAVに関しては、それら相互の間に
実質的差異は認められなかった。
【0031】実施例1で得たVCP包接複合体(VCP
28%含有) 3.5gを小麦粉10gに添加し、水20mlを加
えて10分間よく混合し、この衣材を180 ℃に加熱したコ
−ン油中に1分間入れて加熱調理した。これを取り出し
て揚げ衣のVCPを沃素滴定法により測定したところ、
その残存率は、95.3%であった。他方、上記VCP包接
複合体に換えて、これに対応する量のVCP( 0.9g)
を用いて全く同様の加熱調理を行い、揚げ衣について測
定を行った結果、VCPの残存率は、僅か26.8%であっ
た。このように本発明に係るCP包接複合体は、180 ℃
の高温でも極めて安定であることが判る。
【0032】実施例 3 G2-α−CD16g,G2-β−CD54g及びG2-γ−CD
1.5gを入れた容器に90℃の温水27.3gを加え、これを
90℃の温度に加温保持してホモジナイザ−(高速撹拌
器)を高速回転(7,000rpm/sec)させ、強力に掻き混ぜ
て、G2-CDミクスチャ−の水溶液を調製した。次に、
L−アスコルビン酸のパルミチン酸エステル(VCP)
2.1gを50gのエタノ−ルに完全に溶解させ、その溶液
30gを上記G2-CDミクスチャ−水溶液に約1時間かけ
て滴下し、実質的に透明なエマルジョンを得た。得られ
たエマルジョンは、24時間静置しても分離現象が全く認
められず、極めて安定であった。これを130 ℃の熱風で
噴霧乾燥し、平均粒径 0.1mmの微粉状のVCパルミチン
酸エステルCD包接複合体69gを得た。
【0033】実施例 4 G2-α−CD32g,G2-β−CD50g及びG2-γ−CD
2.0gを30gの水に加えて溶解させ、これを92℃の温度
に加熱保持してホモジナイザ−を7,000rpm/secの回転速
度で強力に掻き混ぜながら、VC−ステアリン酸エステ
ル2gを1時間かけて滴下した。半透明のVCステアリ
ン酸エステルCD包接複合体のエマルジョンが得られ
た。
【0034】実施例 5 75%のCDを含有する水溶液 100gに、VCのパルミチ
ン酸エステル12.9gを30gのエタノ−ルに溶解した液を
加え、ホモミキサ−により3,000rpmの回転速度で10分間
掻き混ぜてホモジナイズしたのち、これに水30gを加
え、更に、ホモミキサ−で5,000rpmの回転速度で20分間
掻き混ぜてホモジナイズされた調製液を得た。この調製
液を噴霧乾燥して粒径0.05〜0.2 mmの乾燥粉末85gを得
た。
【0035】得られた乾燥粉末を水に加えて 0.5%,1
%,2%,5%及び10%含有水媒体液をつくって、粉末
の各種濃度における水親和性を調べた。その結果、粉末
濃度が5%以下の比較的低濃度では透明な溶液が形成さ
れ、優れた溶解性を有することが認められたのに対し、
10%では、僅かに混濁状の分散液であったが、極めて安
定な分散液であった。水に不溶なVCパルミテ−トが、
強い水親和性を示すことにより、上記で得られた粉末
は、VCパルミテ−トのマルトシルシクロデキストリン
包接化合物であることが確認された。また、乾燥粉末中
のビタミンCの含有量を測定したところ1.56%であっ
た。
【0036】実施例 6 75重量%のマルトシルシクロデキストリン水溶液 300g
に、VC酸パルミテ−ト7gを溶解したエタノ−ル溶液
100gを加えてホモミキサ−により強力に撹拌してホモ
ジナイズしたのち、これに水 100gを加え、再びホモミ
キサ−でミキシングして、噴霧乾燥により 220gの微粒
状粉末を得た。得られた粉末を実施例1と同様にして、
0.5 %,1%,2%,5%及び10%水媒体液をつくり、
粉末の各種濃度における水親和状態を調べた。粉末は、
すべての濃度において溶解性を示し、5%以下では透明
感を有する水溶液が形成され、10%ではやゝ不透明では
あるあが、安定な分散液が形成された。また、乾燥粉末
中のL−アスコルビン酸パルミテ−トの含有量は、2.86
%であった。
【0037】実施例 7 75重量%のマルトシルシクロデキストリン水溶液 133g
と、L−アスコルビン酸パルミテ−ト12.5gをエタノ−
ル 100gに溶解した液と混合して、ホモミキサ−により
5,000rpmの回転速度で10分間ミキシングしたのち、これ
に水30gを加えて更に、ホモミキサ−により5,000rpmの
回転速度で20分間ミキシングしてホモジナイズされた調
製液を得た。この調製液を噴霧乾燥して粒径が0.05〜0.
2 mmの乾燥粉末 105gを得た。この粉末中のL−アスコ
ルビン酸の含有量は、5.82%であった。得られた乾燥粉
末の親水性を調べたところ、5%以下の濃度のでは透明
に溶解し、10%でもL−アスコルビン酸パルミテ−トの
分離は認められず、安定な半透明の液であった。
【0038】実施例 8 α−CD65%,同β−CD30%及び同γ−CD5%
の混合物から成るシクロデキストリン16gに水36gを加
えた溶液を85℃に加温してL−アスコルビン酸パルミテ
− ト1.6gを加え、ホモミキサ−で20分間、5,000rpmの
撹拌条件で強力に掻き混ぜてホモジナイザ−を形成させ
た。このホモジナイザ−を噴霧乾燥により、L−アスコ
ルビン酸パルミテ−トの粉末状包接化合物を得た。この
粉末の1%,5%及び10%水媒体液をつくってそれぞれ
の水親和性を調べた。1%液は、ほぼ透明感を有する安
定な水液でったが、5%及び10%濃度の液は白濁してい
るが、粒子の分離は全く認められず、分散状態も良好
で、包接化合物が形成されていることが確認された。ま
た、粉末中のビタミンCの量は、8.45重量%で、理論値
の92.9%が分解することなく残存していることが判っ
た。
【0039】実施例 9 8gのβ−CDに水23gを加え、90℃に加温してβ−C
Dを溶解させ、これにL−アスコルビン酸パルミテ−ト
0.8gを加えてホモミキサ−で強力に撹拌してホモジナ
イズ後、凍結乾燥して 7.9gの粉末を得た。該粉末の1
%,5%及び10%の濃度の水媒体液を調製し、親水性を
調べたところ、全て白濁液であるが、長時間の静置にも
かかわらず、分離現象の無い安定な分散液が形成され、
包接化合物が形成されていることが確認された。また、
粉末中のビタミンCの含有量は、理論値の0.98%で、熱
による分解は実質的に認められなかった。
【0040】実施例 10 α−CD65%,同β−CD30%及び同γ−CD5%の混
合物から成るシクロデキストリン16gに水36gを加え、
80℃に加温した溶液にL−アスコルビン酸パルミテ−ト
1.6g及びビタミンE1.6gを加えて、ホモミキサ−で
前記実施例と同様に強力撹拌してホモジナイザ−を形成
させ、噴霧乾燥によりL−アスコルビン酸パルミテ−ト
とビタミンEとの脂溶性混合物の包接化合物粉末を得
た。この粉末の1%,5%及び10%水媒体液をつくっ
て、粉末の各種濃度における水親和性を調べた。いずれ
の濃度の液も白濁しているが、粒子の分離は全く認めら
れず、分散状態も良好であった。また、粒子中のビタミ
ンC及びビタミンEは、それぞれ理論値の0.89%及び0.
95%が含まれることが測定された。
【0041】実施例 11 8gのβ−CDに水23gを加え、90℃に加温してβ−C
Dを溶解させ、これにL−アスコルビン酸パルミテ−ト
0.8gとビタミンE 0.08gを加え、ホモミキサ−で5,0
00rpmの強力撹拌を行いホモジナイズしたのち、これを
凍結乾燥して8gの粉末を得た。得られた粉末の1%,
5%及び10%の濃度の水媒体液を調製し、親水性を調べ
た。各濃度の液は全て白濁液であるが、長時間の静置に
もかかわらず、両ビタミンの分離現象はなく、分散性の
良好な安定な液で、包接化合物であることが確認され
た。また、粉末中に含有されるビタミンC及びEのそれ
ぞれの量は、理論値の96%及び92%が測定された。
【0042】実施例3〜12で得られた各親水性包接複合
体は、いずれも耐高温安定性,経時的及び酸性pH領域
における還元力の改善された安定性を有することが認め
られた。
【0043】
【発明の効果】本発明の方法によって得られるL−アス
コルビン酸の高級脂肪酸エステルのシクロデキストリン
包接化合物は、L−アスコルビン酸の酸味が実質的に消
失した無味無臭の物質であって、耐熱性やpHの変動、
特に酸性側に対して顕著に改善された安定性を有し、ま
た、親水性を有するので、粉末としてのみならず安定な
水分散性ないし水溶化溶液を形成するので、水液剤とし
ても各種の飲料,食料品類や医薬類に添加使用すること
ができる。従って、還元剤として、広い分野にわたって
効果的に利用し得る酸化防止製材で、高い産業上の価値
を有する。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】L−アスコルビン酸の高級脂肪酸エステル
    をシクロデキストリンに包接させて成る親水性包接複合
    体。
  2. 【請求項2】L−アスコルビン酸の高級脂肪酸エステル
    が、L−アスコルビン酸パルミテ−ト又はL−アスコル
    ビン酸ステアレ−トである請求項1に記載の包接複合
    体。
  3. 【請求項3】L−アスコルビン酸の高級脂肪酸エステル
    が、包接複合体中に0.1〜30重量%含有される請求項
    1又は2に記載の包接複合体。
  4. 【請求項4】請求項1に記載された親水性包接複合体
    に、他の酸化防止剤を配合して成る酸化防止剤含有組成
    物。
  5. 【請求項5】シクロデキストリンが、α−シクロデキス
    トリン,β−シクロデキストリン,γ−シクロデキスト
    リン,グルコシルシクロデキストリン,マルトシルシク
    ロデキストリン,ヒドロキシプロピルシクロデキストリ
    ン,メチル化シクロデキストリン及びジメチル化シクロ
    デキストリンより成る群から選択される請求項1に記載
    の包接複合体。
  6. 【請求項6】シクロデキストリンを溶解した水及び/又
    は親水性有機溶剤の溶液に、その溶液中に溶解するシク
    ロデキストリンの0.1〜30重量%のL−アスコルビン
    酸の高級脂肪酸エステルを加え、50〜100℃の範囲
    内の温度条件下に、撹拌することを特徴とするL−アス
    コルビン酸高級脂肪酸エステルの親水性包接複合体の製
    造方法。
  7. 【請求項7】シクロデキストリンが、マルトシルα−シ
    クロデキストリンとβ−シクロデキストリン及びγ−シ
    クロデキストリンを、それぞれ6〜65重量%:30〜
    93重量%:1〜5重量%の範囲割合で含有する組成物
    である請求項6に記載の製造方法。
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