JPH10228023A - 液晶表示素子およびその製造方法 - Google Patents

液晶表示素子およびその製造方法

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JPH10228023A
JPH10228023A JP9030963A JP3096397A JPH10228023A JP H10228023 A JPH10228023 A JP H10228023A JP 9030963 A JP9030963 A JP 9030963A JP 3096397 A JP3096397 A JP 3096397A JP H10228023 A JPH10228023 A JP H10228023A
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JP9030963A
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Masami Kido
政美 城戸
Mitsuhiro Shigeta
光浩 繁田
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Sharp Corp
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UK Government
Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い基板強度を有する素子構造を実現し、配
向むらやスイッチング不良のない高品位な表示が可能な
液晶表示素子を提供する。 【解決手段】 基板21・22の間に液晶12を挟持し
た液晶表示素子において、基板21側の配向制御層4上
に形状記憶特性を有する有機材料を用いて壁状または柱
状のスペーサ6を形成した後に、配向制御層4にラビン
グ処理を施し、さらにその後に、上記有機材料のガラス
転移点近傍もしくはそれ以上の温度での加熱処理を行
う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フラットパネルデ
ィスプレイ等に用いられる液晶表示素子に関し、特に、
基板間隔を均一に保持するスペーサを備えた液晶表示素
子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、表示装置の一種として、少なくと
も電極を有する一対の基板間に液晶を介在させた液晶表
示素子を用い、上記の電極に選択的に電圧を印加して液
晶を光学応答させることにより表示を行う液晶表示装置
が知られている。この液晶表示装置は薄型に形成するこ
とができるので、フラットパネルディスプレイとして実
用化が進んでいる。
【0003】従来の液晶表示素子では、一般的に、上記
一対の基板の間に、ガラスファイバー、ガラスビーズ、
または樹脂ビーズなどをスペーサとして散布することに
よって、液晶を保持するための空隙が形成される。しか
し、このような従来のスペーサでは、基板間隔を厳密に
規定したり、外圧が加わった場合でも基板間隔を保持し
たりすることは困難であった。
【0004】しかしながら、基板間隔を高精度に制御す
ること、および外圧が加わった場合でも基板間隔を均一
に保持することは、近年の液晶表示素子に求められてい
る大画面化を達成するために必要な要素である。特に、
従来のネマティック液晶よりも卓越した特性を持つこと
が期待される反面、衝撃や圧力に弱いという欠点を持つ
強誘電性液晶を用いた液晶表示素子においては、実用化
のための必須の要素とされている。
【0005】そこで、スペーサビーズと同時に接着剤粒
子を散布する方法(例えば、特開昭62−174726
号公報参照)も開発されているが、実用的な接着強度を
得るためにはかなりの散布密度を必要とし、さらには画
素上に散布されるスペーサのために表示品位の低下を引
き起こすことが問題となっている。そこで、樹脂性のス
ペーサ材を、フォトリソグラフィーなどの手法により、
任意の形状に形成するという方法が見い出された(例え
ば、特開平1−257824号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、液晶表
示素子において、樹脂性のスペーサ材を配向制御層の上
に形成する際に、以下のような問題が生じる。すなわ
ち、スペーサ材を配向制御層の上に塗布する際の溶剤
や、スペーサ材としての樹脂そのもの、あるいはフォト
リソグラフィー時の現像剤などが配向制御層を汚染する
ことによって、配向制御層に施されたラビング処理の効
果が薄れ、液晶に対する配向規制力が低下することであ
る。
【0007】これを防ぐためには、スペーサを形成した
後にラビング処理を施せばよいが、この場合、スペーサ
自身にもラビング処理が施され、スペーサの表面に高分
子鎖の一軸配向が生じる。この結果、液晶が本来不要な
配向をすることにより、スペーサ近傍の液晶において配
向異常やスイッチング不良が発生するという別の問題を
招来する。
【0008】本発明はこれらの問題に鑑みなされたもの
で、高い基板強度を有する素子構造を実現し、配向むら
やスイッチング不良のない高品位な表示が可能な液晶表
示素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明の液晶表示素子は、それぞれが少なくとも
電極を有する一対の基板間に液晶を介在させた液晶表示
素子において、配向制御層と、形状記憶特性を持つ有機
材料からなり、上記配向制御層上に壁状または柱状に形
成されたスペーサとを備えたことを特徴とする。
【0010】上記の構成によれば、スペーサの形成後に
ラビング処理を施したとしても、その後に加熱処理を行
えば、スペーサ近傍における液晶の配向異常の原因とな
る、スペーサに対するラビングの効果を消失させ、液晶
の配向性を向上させることができる。これにより、液晶
の配向むらやスイッチング不良を防止して、高品位な表
示を実現し得る液晶表示素子を提供することができる。
【0011】また、スペーサが壁状または柱状に形成さ
れているので、例えばガラスビーズ等の球状スペーサが
散布された構成と比較して、耐圧力性が向上される。こ
れにより、大型パネルの作製が可能となるという利点も
ある。
【0012】ここで、上記の形状記憶特性について以下
に詳しく説明する。多くの高分子材料においては、各々
の材料に特有のガラス転移点(Tg)と呼ばれる温度域
が存在することが知られている。
【0013】例えば、ある高分子材料からなる物体に対
し、ガラス転移点以上の温度において外力を加えると、
高分子鎖が外力の方向に配向し、結果として物体の形状
が変化する。この状態において、ガラス転移点以下の温
度に冷却すると、高分子鎖が配向した状態で固定され、
形状が記憶されたこととなる。さらにその後、ガラス転
移点以上の温度に加熱された際には、高分子鎖の配向が
崩れ、元の形状に復帰することとなる。
【0014】このような一連の配向/非配向状態を繰り
返すことのできる特性を、形状記憶特性と呼ぶ。もちろ
ん、このような形状記憶特性を持つ有機材料の多くは、
ガラス転移点以下の温度域において、外力により強制的
に変形させられた場合にも、ガラス転移点以上の温度に
再加熱されれば、高分子鎖の配向が崩れ、元の形状に復
帰する。
【0015】ただし、実用的には、この復元能は必ずし
も完全である必要はなく、スペーサ近傍において配向異
常やスイッチング不良などの不都合が見られなくなる程
度のものであれば良いことは言うまでもない。つまり、
ガラス転移点よりも若干低い温度でも、加熱処理に要す
る時間は長くなるものの、スペーサにおいてラビング処
理の効果を消失させる程度の復元能を得ることはでき
る。
【0016】本発明の液晶表示素子において、配向制御
層に対するラビング処理が上記スペーサの形成後に行わ
れると共に、上記ラビング処理よりも後に、上記有機材
料のガラス転移点近傍もしくはそれ以上の温度での加熱
処理がなされていることが好ましい。
【0017】上記の構成によれば、配向制御層に対する
ラビング処理がスペーサの形成後に行われることによ
り、スペーサの形成時に一般的に用いられる溶媒等によ
って、配向制御層に施されたラビング処理の効果が薄れ
ることがなく、従来の有機系スペーサ作成時の問題とな
っていた配向規制力の低下が防止される。
【0018】さらに、スペーサに対するラビング処理に
より液晶に配向むらが生じても、ガラス転移点近傍もし
くはそれ以上の温度での加熱処理により、その配向むら
を消失することが可能であるので、スペーサに対するラ
ビング処理に起因する配向異常やスイッチング不良など
の不都合が生じない。
【0019】この結果、耐圧力性に優れ、むらのない高
品位な表示を実現し得る液晶表示素子を提供することが
できる。
【0020】本発明の液晶表示素子において、上記スペ
ーサを形成する有機材料としては、ポリウレタンを好適
に用いることができる。
【0021】本発明の液晶表示素子において、上記液晶
が強誘電性液晶であることが好ましい。強誘電性液晶
は、双安定性を持ち、トランジスタ等のアクティブ素子
を用いない単純マトリクス構成にて、ネマティック液晶
等よりも高速な駆動が可能であるという利点がある。し
かしながら、強誘電性液晶はネマティック液晶に比較し
て衝撃や圧力等の外力に弱く、また、基板間隔を厳密に
規定しなければならないという欠点がある。
【0022】これに対して本発明の液晶表示素子は、高
い耐圧力性を備えると共に、基板間隔を高精度に規定す
ることができるので、このような強誘電性液晶の欠点を
補償して、ネマティック液晶よりも卓越した特性を持つ
強誘電性液晶を用いた液晶表示素子の実用化を図れる。
【0023】上記の課題を解決するために、本発明の液
晶表示素子の製造方法は、それぞれが電極を有する一対
の基板間に液晶を介在させた液晶表示素子の製造方法に
おいて、上記基板に配向制御層を被膜状に形成し、形状
記憶特性をもつ有機材料を含む壁状または柱状のスペー
サを上記配向制御層上に形成し、上記スペーサを形成し
た後に、上記配向制御層にラビング処理を施し、上記ラ
ビング処理よりも後に、上記有機材料のガラス転移点近
傍もしくはそれ以上の温度での加熱処理を行うことを特
徴としている。
【0024】上記の製造方法によれば、配向制御層上に
壁状または柱状のスペーサを形成することにより、例え
ばガラスビーズ等のスペーサを散布する従来の方法と比
較して、基板間隔を高い精度で規定できると共に、耐圧
力性を向上させることができる。
【0025】また、上記の製造方法では、スペーサを形
成した後に配向制御層にラビング処理を施すことによ
り、スペーサの形成工程で用いられる溶媒等によって配
向制御層に施されたラビング処理の効果が薄れるという
問題がない。これにより、配向制御力を低下させること
なくスペーサを形成することが可能となる。
【0026】さらに、上記壁状または柱状のスペーサが
形状記憶特性を持つ有機材料を用いて形成されると共
に、ラビング処理よりも後に上記有機材料のガラス転移
点近傍もしくはそれ以上の温度での加熱処理が施される
ので、スペーサに対するラビングの効果を消失されるこ
とができる。これにより、最終的な製造物である液晶表
示素子において、従来の問題となっていたスペーサに対
するラビング処理に起因する液晶の配向むらやスイッチ
ング不良が生じない。
【0027】以上の結果、耐圧力性が高く、且つ配向む
らやスイッチング不良のない高品位な表示を実現し得る
液晶表示素子を提供することが可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕本発明の実施の一形態について図1お
よび図2に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0029】まず、本実施形態に係る液晶表示素子の概
略構成について、図1を参照しながら説明する。
【0030】本実施形態の液晶表示素子は、一対のガラ
ス基板1・10を備えている。ガラス基板1の表面に
は、透明且つ導電性を持つ金属からなるストライプ状の
電極2・2…が設けられている。そして、ガラス基板1
および電極2・2…を覆うように、絶縁層3および配向
制御層4が順次積層されている。
【0031】配向制御層4上には、形状記憶特性を有す
る有機材料からなるスペーサ6が設けられている。上記
のスペーサ6は、電極2の長手方向に沿って均一な幅と
高さを有する壁状に形成されている。ただし、このスペ
ーサ6は、必ずしも連続した壁状に形成する必要はな
く、電極2の長手方向に沿って断続的に並ぶ複数の柱状
に形成しても良い。
【0032】以降、ガラス基板1、電極2・2…、絶縁
層3、配向制御層4、およびスペーサ6からなる構成
を、基板21と称する。
【0033】一方、ガラス基板10の表面には、上記電
極2・2…、絶縁層3、および配向制御層4と同様に、
電極9・9…、絶縁層8、および配向制御層7が設けら
れている。以降、ガラス基板10、電極9・9…、絶縁
層8、および配向制御層7からなる構成を、基板22と
称する。
【0034】これらの基板21・22は、配向制御層4
・7を内側にして、且つ、電極2と電極9とが互いに直
交するように配置され、スペーサ6によって均一な間隔
が保たれた状態で貼り合わされている。基板21・22
の間隙の周縁部には封止剤(図示せず)が形成され、こ
れによって液晶12が基板21・22の間隙に封止され
ている。
【0035】次に、図2(a)ないし(d)を参照しな
がら、本実施形態の液晶表示素子の製造工程の一例につ
いて具体的に説明する。なお、以下に示す各部材の材料
名や各工程における膜厚や反応温度等の製造条件はあく
までも一つの例であり、本発明をこれに限定するもので
はない。
【0036】まず、ガラス基板1の上に、スパッタ法を
用いて、インジウム錫酸化物(以下、ITOと略称す
る)を0.1μm膜厚で成膜した後、これをストライプ
状にパターニングすることにより、電極2・2…を形成
する。
【0037】次に、ガラス基板1および電極2を被膜状
に覆うように絶縁層3を形成し、さらにこの絶縁層3を
覆うように配向制御層4を形成すると、図2(a)に示
すようになる。ここでは、絶縁層3は、日産化学工業株
式会社製の絶縁膜材料(商品名NHC−A−2014)
を材料として用い、その膜厚は0.1μmとする。配向
制御層4は、チッソ株式会社製の配向膜材料(商品名P
SI−A−X007)を用い、その膜厚は70nmとす
る。
【0038】続いて、このように、表面に電極2、絶縁
層3、および配向制御層4を順次形成したガラス基板1
に、水溶性樹脂溶液(東京応化工業株式会社製、商品名
TPF)を1.8μmの膜厚で塗布し、180℃で10
分間の加熱を行うことにより、水溶性樹脂膜5を形成す
る。
【0039】次に、フォトレジスト(東京応化工業株式
会社製、商品名TSMR−8800)を、1.0μm程
度の膜厚になるように、上記水溶性樹脂膜5の表面に塗
布する。そして、90℃で30分間のプリベイクを行
う。さらに、フォトマスクを用いた紫外線露光の後、ア
ルカリ性の現像液(東京応化工業株式会社製、商品名N
MD−W)にて現像を行うと、露光部のフォトレジスト
とその下の水溶性樹脂膜5の一部とが同時に剥離する。
【0040】続いて、純水による5分前後のリンスを行
うと、残りの水溶性樹脂膜5が剥離されて、図2(b)
に示すように、スペーサ6を形成するための溝20が水
溶性樹脂膜5に作成される。さらに、乾燥後に、基板全
体への紫外線露光とアセトンによる洗浄とを行うことに
より、残ったフォトレジストを剥離する。
【0041】次に、1.4μm径の粒状シリカをあらか
じめ混入した形状記憶ポリウレタンの溶液を、水溶性樹
脂膜5上に塗布して乾燥させる。上記粒状シリカとして
は、宇部日東化成株式会社製の商品名ハイプレシカ、上
記形状記憶ポリウレタンとしては、三菱重工株式会社製
の商品名MS5500を用いることができる。
【0042】なお、上記の粒状シリカは、スペーサ6に
所定の強度を持たせることを目的として用いられてい
る。粒状シリカ無しの場合には、後述する基板の貼り合
わせ工程における加熱および加圧によってスペーサがつ
ぶれてしまい、所定の基板間隔を実現することが困難に
なるおそれがある。従って、あらかじめ適当な直径を持
つ粒状シリカを形状記憶ポリウレタンに混合しておくこ
とが好ましい。
【0043】次に、純水による洗浄を行うことによって
水溶性樹脂膜5を剥離すれば、図2(c)に示すよう
に、上記粒状シリカ入りの形状記憶ポリウレタンからな
り、ほぼ1.8μmの高さを持つスペーサ6が形成され
る。
【0044】なお、スペーサ6の形状は、水溶性樹脂膜
5のパターニング形状に応じて任意に形成することが可
能である。前述したように、スペーサ6は、壁状または
柱状に形成することが好ましいが、所望の基板強度(耐
圧力性)が得られるように、配向制御層4上の任意の箇
所に、任意の形状で形成すればよい。
【0045】続いて、酸素プラズマ処理を行うことによ
って配向制御層4の表面の汚染部分を除去した後、配向
制御層4に対してラビングによる一軸配向処理を行っ
た。
【0046】なお、上述と同様に、ガラス基板10表面
に、ITOからなる電極9・9…、絶縁層8、および配
向制御層7を順次形成し、配向制御層7にラビング処理
を施すことにより、基板21の対向基板としての基板2
2が作製される。
【0047】次に、基板21・22のそれぞれに形成さ
れた電極2・9が互いに直交し、且つ、配向制御層4・
7にそれぞれ施されたラビング処理の方向が平行になる
ようにして、熱硬化性ボンド(ロディック社製、商品名
DSA−7111)を基板21・22の周縁部に塗布
し、1kg/cm2 で圧着しながら150℃で30分間
の加熱処理を行う。これにより、基板21・22が貼り
合わされ、ほぼ1.5μmの基板間隔(セルギャップ)
を持った素子構造が作製される。
【0048】なお、スペーサ6の材料であるポリウレタ
ン(商品名MS5500)のガラス転移点は55℃付近
であるので、上記の加熱処理は、ボンドを硬化させるだ
けでなく、スペーサ6に対するラビング処理の効果(ス
ペーサ6の表面に高分子鎖の一軸配向が生じること)を
消失させる。さらに、このポリウレタンは熱可塑性を持
つので、加熱しながら基板21・22を圧着する処理を
行うことによって、基板21・22を互いに強力に接着
させる効果もある。
【0049】次に、基板21・22間の空隙に液晶12
を充填し、その周囲を封止剤(図示せず)で封止するこ
とで、液晶表示素子が完成する。封止剤としては、コニ
シ社製の2液混合型ボンドを使用することができる。
【0050】なお、ここでは、液晶12として、強誘電
性液晶材料(メルク社製、商品名SCE8)を用いる。
本実施形態の素子構造では、スペーサ6が壁状あるいは
柱状に形成されているので、基板21・22の間隔を精
度良く規定できると共に、球状のスペーサを散布した構
成に比較して、基板強度が向上されている。
【0051】強誘電性液晶は、双安定性を持ち、トラン
ジスタ等のアクティブ素子を用いない単純マトリクス構
成にて、ネマティック液晶等よりも高速な駆動が可能で
あるという利点がある反面、ネマティック液晶等に比較
すると、衝撃や圧力によって配向状態が一旦乱されると
元の状態に戻り難く、配向むらやスイッチング不良を生
じ易いという欠点を有する。
【0052】しかし、本実施形態の液晶表示素子によれ
ば、充分な基板強度が実現されているので、素子構造が
上記の強誘電性液晶の欠点を補償し、実用に耐え得る強
誘電性液晶表示素子を提供できるという効果を奏する。
【0053】なお、この液晶表示素子では、スペーサ6
の周辺部での液晶の配向性の悪化は見られなかった。ま
た、10kg/cm2 の圧力試験においても、液晶の配
向乱れやスペーサ6のはがれは見られず、実用に充分耐
え得る強度を備えていることが分かった。
【0054】以上のように、本実施の形態に係る液晶表
示素子は、配向制御層4の上にスペーサ6を形成した後
にラビング処理が施されている。このため、配向制御層
に対してラビング処理を行った後に上記配向制御層上に
スペーサを形成する場合と比較して、配向制御層に施さ
れたラビング処理の効果が、スペーサの形成工程で用い
られる溶剤等によって薄れてしまうという不都合が生じ
ない。
【0055】さらに、本実施の形態では、スペーサ6に
対するラビング処理により液晶に配向むらが生じること
があっても、その後のガラス転移点近傍もしくはそれ以
上の温度での加熱処理により、その配向むらを消失する
ことが可能である。これにより、スペーサに対するラビ
ング処理に起因する配向異常やスイッチング不良などの
不都合が生じることがない。また、樹脂からなる壁状ま
たは柱状のスペーサ6は、通常用いられているガラスフ
ァイバー、ガラスビーズ、あるいは樹脂ビーズなどをス
ペーサとして散布したものに比べ、基板を強力に接着
し、かつ基板間隔を均一に保持することができるという
利点もある。この結果、高い耐圧力性を備え、高品位な
表示が可能な液晶表示素子が実現されるという効果を奏
する。
【0056】〔実施の形態2〕本発明の実施の他の形態
について説明すれば、下記のとおりである。なお、前記
した実施の形態1と同様の構成については同一の符号を
付記し、その説明を省略する。
【0057】前記した実施の形態1では、基板21・2
2を接着するための接着剤として、熱硬化性ボンド(ロ
ディック社製、商品名DSA−7111)を用いたが、
本実施の形態では、これの代わりに2液混合型ボンド
(コニシ社製)を用い、基板21・22の接着を室温下
で行う。なお、接着の際には、2kg/cm2 で基板2
1・22を圧着する。
【0058】さらに、貼り合わせた基板21・22の間
隙に液晶12を注入して封止した後に、基板21・22
を1kg/cm2 で圧着させながら、120℃で2時間
保持する処理を行った。これ以外は、すべて実施の形態
1と同様である。
【0059】すなわち、本実施の形態の液晶表示素子
は、スペーサ6を形成するポリウレタンに対し、そのガ
ラス転移点近傍もしくはそれ以上の温度での加熱処理
を、液晶12の注入後に行うことにおいて、実施の形態
1と異なっている。
【0060】なお、上述の加熱処理を行う前の本実施の
形態の液晶表示素子に駆動電圧を印加したところ、液晶
12におけるスペーサ6に電界応答しない部分、すなわ
ちスイッチング不良があることが判明した。このスイッ
チング不良の原因は、有機材料からなるスペーサ6にラ
ビング処理が行われたことによると考えられる。
【0061】一方、上述のように、1kg/cm2 の圧
力下で120℃で2時間保持する加熱処理を行った後
に、駆動電圧を再度印加したところ、加熱処理前にスイ
ッチング不良を示していた箇所が正常なスイッチング動
作を示した。
【0062】以上の結果により、例えば形状記憶特性を
持つポリウレタン等の有機材料からなるスペーサ6に対
する加熱処理は、液晶12の注入後に行っても良く、実
施の形態1と同様の効果を得ることができることが分か
る。
【0063】なお、上記の加熱処理を、上記ポリウレタ
ンのガラス転移点(55℃)近傍の50℃や60℃とい
った温度で行ったところ、加熱処理に要する時間は長く
なるものの、同様にスペーサ6に対するラビング処理の
効果を消失できることが確認された。
【0064】〔比較例1〕ここで、前記した実施の形態
1・2との比較のために、形状記憶特性を持たない有機
材料を用いて形成されたスペーサを備えた構成の一例の
説明およびその評価を行う。
【0065】実施の形態1で説明したガラス基板1、電
極2、絶縁層3、および配向制御層4と同じ材料を用
い、同じ方法で、ガラス基板の表面に、電極、絶縁膜、
および配向制御層を順次形成し、この配向制御層にラビ
ング処理を施した。これに、形状記憶特性を持たない有
機材料、例えば宇部興産株式会社製の感光製樹脂(商品
名リソコートPI−400)を、1.5μmの膜厚で塗
布し、乾燥させた。
【0066】次に、この感光性樹脂に対してマスクを用
いた露光、現像、および焼成を行うことにより、スペー
サ6と同様に、配向制御層上に電極の長手方向に沿って
壁状のスペーサを形成した。
【0067】上述のように壁状のスペーサを形成した基
板に、実施の形態1と同様に形成した対向基板を貼り合
わせ、その間隙に実施の形態1と同様の液晶を注入する
ことにより、液晶表示素子を作製した。
【0068】この液晶表示素子においては、一様な液晶
配向が得られず、配向制御層の配向規制力が低下してい
ることが分かった。この原因は、ラビング処理の後にス
ペーサを形成したことにより、感光性樹脂の塗布や現像
処理時に配向制御層が汚染され、ラビング処理の効果
(配向規制力)が低減したためと考えられる。
【0069】〔比較例2〕さらに、実施の形態1・2と
の比較のために、形状記憶特性を持たない有機材料を用
いてスペーサを形成した構成の他の例の説明およびその
評価を行う。
【0070】実施の形態1で説明したガラス基板1、電
極2、絶縁層3、および配向制御層4と同じ材料を用
い、同じ方法で、ガラス基板の表面に、電極、絶縁膜、
および配向制御層を順次形成し、この配向制御層にラビ
ング処理を行わずに、宇部興産株式会社製の感光製樹脂
(商品名リソコートPI−400)を、1.5μmの膜
厚で塗布し、乾燥させた。
【0071】次に、感光性樹脂に対してマスクを用いた
露光、現像、および焼成を行うことにより、スペーサ6
と同形状のスペーサを配向制御層上に形成した。続い
て、このスペーサが形成された配向制御層に対してラビ
ング処理を行った。
【0072】上述のように壁状のスペーサを形成した基
板に、実施の形態1と同様に形成した対向基板を貼り合
わせ、その間隙に実施の形態1と同様の液晶を注入する
ことにより、液晶表示素子を作製した。
【0073】この液晶表示素子においては、スペーサ周
辺部の液晶に電界応答しない部分、すなわちスイッチン
グ不良箇所が見られた。なお、この液晶表示素子に対
し、実施の形態2と同様の加熱処理を行ってみたが、ス
イッチング不良は解消されなかった。このスイッチング
不良の原因は、スペーサに対するラビングの効果、すな
わち、スペーサ表面に高分子鎖の一軸配向が生じること
によりその近傍の液晶が本来不要な配向をすること、に
よると考えられる。
【0074】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の液晶表示
素子は、配向制御層と、形状記憶特性を持つ有機材料か
らなり、上記配向制御層上に壁状または柱状に形成され
たスペーサとを備えた構成である。
【0075】これにより、通常用いられているガラスフ
ァイバー、ガラスビーズ、あるいは樹脂ビーズなどをス
ペーサとして散布した液晶表示素子に比べ、基板を強力
に接着し、かつ基板間隔を均一に保持できるので、例え
ば強誘電性液晶を用いた液晶表示素子のように基板間隔
を高精度に規定する必要がある液晶表示素子の実用化が
図れるという効果を奏する。さらには、スペーサに対す
るラビング処理により液晶に配向むらが生じても、その
後の加熱処理によりその配向むらを消失することができ
るので、液晶の配向むらやスイッチング不良の無い高品
位な表示を実現し得る液晶表示素子を提供できるという
効果を奏する。
【0076】請求項2記載の液晶表示素子は、配向制御
層に対するラビング処理が上記スペーサの形成後に行わ
れると共に、上記ラビング処理よりも後に、上記有機材
料のガラス転移点近傍もしくはそれ以上の温度での加熱
処理がなされた構成である。
【0077】これにより、スペーサに対するラビング処
理により液晶に配向むらが生じても、その後の加熱処理
によりその配向むらを消失することができるので、基板
間隔を高精度に規定することが可能となると共に、スペ
ーサに対するラビング処理に起因する配向むらやスイッ
チング不良といった不都合が無く、高品位な表示を実現
し得る液晶表示素子を提供できるという効果を奏する。
【0078】請求項3記載の液晶表示素子は、有機材料
がポリウレタンを含む構成である。
【0079】請求項4記載の液晶表示素子は、液晶が強
誘電性液晶である。
【0080】これにより、請求項1記載の構成による効
果に加えて、ネマティック液晶に比較して衝撃や圧力等
の外力に弱いという強誘電性液晶の欠点を補償すること
により、ネマティック液晶よりも卓越した特性を持つ強
誘電性液晶を用いた表示素子の実用化を図れるという効
果を奏する。
【0081】請求項5記載の液晶表示素子の製造方法
は、基板に配向制御層を被膜状に形成し、形状記憶特性
をもつ有機材料を含む壁状または柱状のスペーサを上記
配向制御層上に形成し、上記スペーサを形成した後に、
上記配向制御層にラビング処理を施し、上記ラビング処
理よりも後に、上記有機材料のガラス転移点近傍もしく
はそれ以上の温度での加熱処理を行う。
【0082】これにより、配向制御層に施されたラビン
グ処理の効果が、スペーサの形成工程で用いられる溶媒
等によって薄れるという問題がないので、配向制御力を
低下させることなくスペーサを形成することが可能とな
る。さらに、スペーサに対するラビング処理の効果が加
熱処理によって消失するので、最終的な製造物である液
晶表示素子において、従来の問題となっていた、スペー
サに対するラビング処理に起因する液晶の配向むらやス
イッチング不良が生じない。この結果、耐圧力性が高
く、且つ配向むらやスイッチング不良のない高品位な表
示を実現し得る液晶表示素子を提供できるという効果を
奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る液晶表示素子の概
略構成を示す断面図である。
【図2】同図(a)ないし(d)は、製造工程の各段階
における上記液晶表示素子の概略構成を示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1・10 ガラス基板 2・9 電極 3 絶縁層 4 配向制御層 6 スペーサ 12 液晶 21・22 基板
フロントページの続き (71)出願人 390040604 イギリス国 THE SECRETARY OF ST ATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJES TY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AN D NORTHERN IRELAND イギリス国 ハンプシャー ジーユー14 0エルエックス ファーンボロー アイヴ ェリー ロード(番地なし) ディフェン ス エヴァリュエイション アンド リサ ーチ エージェンシー (72)発明者 城戸 政美 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 繁田 光浩 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】それぞれが少なくとも電極を有する一対の
    基板間に液晶を介在させた液晶表示素子において、 配向制御層と、 形状記憶特性を持つ有機材料からなり、上記配向制御層
    上に壁状または柱状に形成されたスペーサとを備えたこ
    とを特徴とする液晶表示素子。
  2. 【請求項2】上記配向制御層に対するラビング処理が上
    記スペーサの形成後に行われると共に、上記ラビング処
    理よりも後に、上記有機材料のガラス転移点近傍もしく
    はそれ以上の温度での加熱処理がなされていることを特
    徴とする請求項1記載の液晶表示素子。
  3. 【請求項3】上記有機材料がポリウレタンを含むことを
    特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示素子。
  4. 【請求項4】上記液晶が強誘電性液晶であることを特徴
    とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液晶表示素
    子。
  5. 【請求項5】それぞれが電極を有する一対の基板間に液
    晶を介在させた液晶表示素子の製造方法において、 上記基板に配向制御層を被膜状に形成し、 形状記憶特性をもつ有機材料を含む壁状または柱状のス
    ペーサを上記配向制御層上に形成し、 上記スペーサを形成した後に、上記配向制御層にラビン
    グ処理を施し、 上記ラビング処理よりも後に、上記有機材料のガラス転
    移点近傍もしくはそれ以上の温度での加熱処理を行うこ
    とを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
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