JPH10195673A - 耐黒変性および耐白錆性に優れ且つスパングルの美麗なクロメート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

耐黒変性および耐白錆性に優れ且つスパングルの美麗なクロメート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

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JPH10195673A
JPH10195673A JP35795596A JP35795596A JPH10195673A JP H10195673 A JPH10195673 A JP H10195673A JP 35795596 A JP35795596 A JP 35795596A JP 35795596 A JP35795596 A JP 35795596A JP H10195673 A JPH10195673 A JP H10195673A
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steel sheet
chromium
ions
ion
lead
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Tatsuya Miyoshi
達也 三好
Takahiro Kubota
隆広 窪田
Masaru Sagiyama
勝 鷺山
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Ni等のフラッシュ処理を施すことなく、ス
パングルが美麗で且つ耐黒変性、耐白錆性に優れたクロ
メート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板を製造する 【解決手段】 PbとAlをそれぞれ適量含有する溶融
亜鉛めっき浴において特定のめっき浴温および侵入板温
でめっきされたスパングルが美麗な鉛含有溶融亜鉛めっ
き鋼板に、3価Crイオン/6価Crイオンのモル比が
1/9〜1/1、全Crイオンに対する硝酸イオンのモル比
が0.1〜1.6に調整されたクロメート処理液を塗布し、水
洗することなく所定板温で乾燥し、付着量が5〜50mg
/m2のクロメート皮膜を形成させるもので、めっき表
面に濃化した鉛が硝酸イオンを含有するクロメート処理
液により除去されるため、優れた耐白錆性と耐黒変性が
得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、耐黒変性および耐
白錆性に優れ且つスパングルの美麗なクロメート処理鉛
含有溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼板の亜鉛めっきによる犠牲防食は最も
効果的で且つ経済的であるため、現在ではわが国の年間
粗鋼生産量(約1億トン)の約10%に当たる1000
万トンが亜鉛系めっき鋼板として生産され、建材、自動
車、家電等の広い分野で使用されている。亜鉛による犠
牲防食機構は、亜鉛と鉄という2つの金属が接触した状
況下で電池が形成され、より卑な金属である亜鉛が陽極
となり、鉄を陰極化して鉄単独の場合の局部電池形成に
よる陽極溶解を抑止し、鉄の腐食を防止するものであ
る。このような防錆作用は鉄と接触している亜鉛が消失
した時点で終わるため、その作用効果を長期間持続させ
るためには亜鉛層の腐食を抑制することが必要であり、
その対策としてめっき後にクロメート処理を施すことが
広く行われている。
【0003】ところが、亜鉛めっき鋼板をクロメート処
理すると耐食性(耐白錆性)は顕著に改善されるもの
の、逆に保管中や輸送中に鋼板の外観性を大きく損なう
黒変現象が発生するという問題がある。この黒変現象
は、めっき後にスキンパスを行った溶融亜鉛めっき鋼
板、鉛を含有するめっき浴で製造された溶融亜鉛めっき
鋼板並びに数%のアルミニウムを含有する溶融亜鉛−ア
ルミニウムめっき鋼板において特に発生し易いことが知
られている。
【0004】この黒変現象は、めっき表面のスパングル
中のある特定の結晶方位のところが特に灰黒色になる特
徴があり、このため黒変の発生を抑えるにはスパングル
を周知の方法でミニマイズド化することもある程度有効
である。また、黒変の発生するスパングル内には鉛の粒
子が存在し、これが活性点となって黒変現象を助長する
ため、めっき浴の組成を極低鉛化(Pb:0.01重量
%以下)することにより黒変が発生しにくくなることも
知られている。しかし、溶融亜鉛めっき鋼板に関しては
スパングルを好むユーザーも多く、めっき浴中への鉛添
加は避けられない。
【0005】また、日本鉄鋼協会発行の「鉄と鋼,Vo
l.77(1991)」の第939頁〜第946頁の記
載によれば、スパングルの形態はシダ状I型、シダ状I
I型、鏡面状型、霜降り状型、片シダ状型、羽毛状型、
三角形状型の7種類に分類され、このうち特に霜降り状
型のスパングルにPb、Alが濃化し易いとされてい
る。一般にスパングルを好むユーザーは、特に霜降り状
型の多いものを美麗な外観として好む傾向があり、上記
のように霜降り型はスパングル中にPb、Alを濃化し
ているため、特に黒変が発生し易いという問題があっ
た。
【0006】クロメート処理後の黒変を防止する方法と
して、特開昭59−177381号公報にはNiイオン
またはCoイオン含有水溶液によるフラッシュ処理(化
学的に極微量の金属を析出させる処理)が提案されてお
り、最近ではこのフラッシュ処理がクロメート処理後の
黒変対策として有望視されている。この特開昭59−1
77381号公報に開示された方法は、亜鉛または亜鉛
合金めっき鋼板のクロメート処理に先立ち、pHが1〜
4または11〜13.5で、且つNiイオン、Coイオ
ンの1種または2種を含む水溶液で鋼板の表面をフラッ
シュ処理し、この処理によって前記金属イオンを金属ま
たは酸化物の形で鋼板表面に析出させた後、水洗し、し
かる後クロメート皮膜を形成させるものである。
【0007】このようなNiやCoによるフラッシュ処
理がクロメート処理後の亜鉛系めっき鋼板の黒変を防止
する機構については未だ定説はないが、金属表面技術協
会の第60回学術講演大会要旨集の第150頁〜第15
1頁の記載によれば、フラッシュされた金属は亜鉛結晶
の粒界に多く析出しており、その後に行なわれる塗布型
クロメート処理によって付着したクロム化合物も同様に
粒界に分布していることから、フラッシュされた金属と
クロム化合物との間に何らかのインタラクション(相互
作用)があり、フラッシュ金属にクロム化合物が吸着固
定化されるものと推察される。
【0008】亜鉛系めっき鋼板の黒変現象は、白錆と同
じく(ZnCO3)x・[Zn(OH)2]yで表される塩
基性炭酸亜鉛が400〜700nmの可視光波長領域の
粒径であるため、光が散乱と吸収を起こしやすく黒く見
えるものと考えられる。黒変は酸素不足の状況下での腐
食生成物であり、特に粒界からの腐食進行に伴って形成
されると考えられ、そのためフラッシュ金属によって粒
界に濃化したクロム化合物が粒界からの腐食を抑止し、
黒錆発生の防止に寄与しているものと考えられる。この
ようにクロメート処理に先立ってNi、Co等をフラッ
シュ処理することは、亜鉛系めっき鋼板の黒変に対して
有力な対策となり得る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようなフラッシュ処理をクロメート処理に先立って実施
した場合、黒変の発生は抑制されるが白錆はむしろ発生
し易くなるという問題があることが明らかとなった。こ
れは、フラッシュ処理によってめっき表面に析出したN
iやCoが亜鉛との間で局部電池を形成するためである
と考えられる。したがって本発明の目的は、Ni、Co
等のフラッシュ処理を施すことなく、耐黒変性および耐
白錆性に優れたクロメート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼
板を製造することができ、特にユーザーに好まれる霜降
り状型スパングルの多い場合でも黒変が生じにくいクロ
メート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供
することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、スパング
ルの美麗なクロメート処理鉛含有溶融亜鉛系めっき鋼板
の耐黒変性および耐白錆性を改善することができる方法
について種々の実験と検討を行った結果、特定の溶融亜
鉛めっき浴温度および侵入板温で製造した鉛含有溶融亜
鉛めっき鋼板に対して、硝酸イオンを含有した特定組成
のクロメート処理液によるクロメート処理を施すことに
より、スパングルが美麗で且つ優れた耐黒変性および耐
白錆性を有するクロメート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼
板を工業的に安定して製造できることを見い出した。本
発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特
徴とする構成は以下の通りである。
【0011】[1] Pb:0.05〜0.3重量%、A
l:0.1〜0.3重量%を含有する溶融亜鉛めっき浴
において、めっき浴温度440〜500℃、侵入板温4
40〜520℃の条件でめっきして得られた鉛含有溶融
亜鉛めっき鋼板に、6価クロムイオンと3価クロムイオ
ンと硝酸イオンとを含有し、3価クロムイオン/6価ク
ロムイオンのモル比が1/9〜1/1、全クロムイオン
に対する硝酸イオンのモル比が0.1〜1.6に調整さ
れたクロメート処理液を塗布し、水洗することなく40
〜250℃の板温で乾燥し、金属クロム換算で付着量が
5〜50mg/m2のクロメート皮膜を形成させること
を特徴とする耐黒変性および耐白錆性に優れ且つスパン
グルの美麗なクロメート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板
の製造方法。
【0012】[2] 上記[1]の製造方法において、クロメ
ート処理液がコバルト、ニッケル、ストロンチウム、バ
リウムの各金属イオンの中から選ばれる1種または2種
以上を含有し、全クロムイオンに対する前記金属イオン
の合計のモル比が0.04〜0.2であることを特徴と
する耐黒変性および耐白錆性に優れ且つスパングルの美
麗な鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 [3] 上記[1]の製造方法において、クロメート処理液が
コバルトイオンを含有し、全クロムイオンに対するコバ
ルトイオンのモル比が0.04〜0.2であることを特
徴とする耐黒変性および耐白錆性に優れ且つスパングル
の美麗な鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、Pb:0.05〜0.
3重量%、Al:0.1〜0.3重量%を含有する溶融
亜鉛めっき浴において、特定のめっき浴温度と侵入板温
でめっきされた鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板をクロメート
処理する方法である。このような鉛含有溶融亜鉛めっき
鋼板において、めっき皮膜中の鉛は美麗なスパングル模
様を得るために必要な成分であるが、スパングルの形状
はめっき条件によって異なり、またこの鉛はめっき表
面、特に霜降り状型スパングル表面に濃化しており、こ
のように濃化した鉛が存在するとめっき皮膜が電気化学
的に不均一となり、黒変現象がより一層促進される。
【0014】このような問題に対し、本発明では硝酸を
含有するクロメート処理液に鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板
を接触させるとめっき表面に濃化していた鉛が除去さ
れ、黒変現象を効果的に抑制できることを見い出した。
勿論、このようなクロメート処理によってもめっき表面
の鉛が全て除去される訳ではなく、めっき表面に鉛は残
存するが、上記クロメート処理による黒変抑制効果は顕
著であり、しかもこのクロメート処理によるクロメート
皮膜の形成によって、めっき表面に残存する活性な鉛の
表面が多量のクロムで覆われる結果、耐食性も向上する
ことが判明した。めっき表面に濃化した鉛の除去効果
は、硝酸イオンを含有するクロメート処理液を使用した
場合に特に顕著であり、クロメート処理液に他の無機
酸、例えばリン酸、硫酸、フッ酸等を含有させても、十
分な除去効果は得られない。また、従来知られているク
ロム酸やその一部を還元したクロム酸溶液でも鉛の除去
効果はほとんどない。
【0015】また、上記の硝酸を含有したクロメート処
理液によるクロメート処理に関しては、6価クロムイオ
ンと3価クロムイオンと硝酸イオンを含有し、硝酸イオ
ンを全クロムイオンとのモル比で0.1〜1.6に調製
したクロメート処理液でクロメート処理することによ
り、極くわずかなエッチング量で鉛を効果的に除去でき
ること、またこのようなクロメート処理液は長期間使用
しても亜鉛などの夾雑イオンの混入によるスラッジ発生
がなく、クロメート処理液の組成を安定して維持できる
ことが判った。
【0016】以下、本発明の詳細と限定理由について説
明する。本発明においてクロメート処理を行う鉛含有溶
融亜鉛めっき鋼板は、鋼板をPb:0.05〜0.3重
量%、Al:0.1〜0.3重量%を含有する溶融亜鉛
めっき浴において、めっき浴温度440〜500℃、侵
入板温440〜520℃の条件でめっきして得られたも
のであり、先に述べたようにこのような鉛含有溶融亜鉛
めっき鋼板は特に黒変の問題を生じ易い。めっき浴中の
鉛含有量が0.05重量%未満ではめっき鋼板の美麗な
レギュラースパングルが十分に得られず、一方、0.3
重量%を超えるとその効果が飽和して経済性を損なうば
かりでなく、めっき粒界腐食を起こし易くなる。
【0017】また、めっき浴中のアルミニウム含有量が
0.1重量%未満では十分なめっき密着性が得られず、
一方、0.3重量%を超えるとクロメート処理後に高温
多湿環境に曝されると黒変し易くなるため好ましくな
い。さらに、溶融亜鉛めっき浴の浴温が440℃未満で
は美麗なレギュラースパングルが得られず、一方、浴温
が500℃を超えると鉄と亜鉛の合金化が進行するため
好ましくない。また、めっき浴中への鋼板の侵入板温が
440℃未満では美麗なレギュラースパングルが得られ
ず、一方、侵入板温が520℃を超えると美麗なレギュ
ラースパングルが得られないだけでなく、めっき密着性
が低下するため好ましくない。また、より好しい溶融亜
鉛めっき条件は、めっき浴温度450〜480℃、侵入
板温450〜490℃であり、このような条件でめっき
することにより極めて美麗なスパングルが得られる。
【0018】本発明法では、6価クロムイオンと3価ク
ロムイオンと硝酸イオンとを含有し、3価クロムイオン
/6価クロムイオンのモル比および全クロムイオンに対
する硝酸イオンのモル比が所定の範囲に調製されたクロ
メート処理液を上記鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板に塗布
し、クロメート皮膜を形成する。前記クロメート処理液
に含まれる3価クロムイオンと6価クロムイオンは、3
価クロムイオン/6価クロムイオンのモル比で1/9〜
1/1、好ましくは1/4〜2/3とする。3価クロム
イオン/6価クロムイオンのモル比が1/9未満では腐
食環境下におけるクロムの溶出が過多となるため長期に
わたる耐食性の維持ができず、またクロム溶出による環
境汚染を招くため好ましくない。一方、3価クロムイオ
ン/6価クロムイオンのモル比が1/1を超えると、6
価クロムイオンによる耐食性の改善効果が十分に得られ
ない。
【0019】クロメート皮膜による白錆発生の防止機構
は、一般的に6価クロムイオンによる亜鉛の腐食を抑制
するインヒビター効果であると理解されており、さらに
クロメート皮膜から溶出する6価クロムイオンが皮膜の
損傷部分を補修する自己補修作用も耐白錆性向上に寄与
しているものと考えられている。しかし、6価クロムイ
オンだけで得られるクロメート皮膜は、水分の介在によ
り6価クロムイオンが過剰に溶出して白錆発生の原因と
なるため、6価クロムイオンの過剰溶出を防止する目的
で3価クロムイオンを配合することが広く行われてい
る。本発明においても同様の目的で、クロメート処理液
中に上記のモル比で3価クロムイオンと6価クロムイオ
ンを含有させる。
【0020】一般に、3価クロムイオンと6価クロムイ
オンのみからなる水溶液では、3価クロムイオンが沈降
しないでイオンとして水溶液中に存在するためには、3
価クロムイオン/6価クロムイオンのモル比を2/3以
下にする必要がある。一方、美麗なスパングル模様を有
する鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板では外観色調が重要視さ
れるケースが多く、このような場合には、クロム付着量
が多いと黄色みが出て外観色調が損われるため、耐食性
をある程度犠牲にしてでもクロム付着量を抑制せざるを
得なくなる。このような問題に対しては、本発明が用い
るクロメート処理液はクロム酸以外の酸成分として硝酸
が添加されているため、表面色調に悪影響を与える6価
クロムイオンの割合を低減させ、3価クロムイオン/6
価クロムイオンのモル比を2/3以上に高める(但し、
上述した上限のモル比1/1を限度として)ことがで
き、これによりクロム付着量を低減させることなく所望
の着色防止効果を得ることができる。
【0021】クロムイオンをクロメート処理液に供給す
るためには、無水クロム酸水溶液を公知の還元剤で部分
還元したものを用いることができ、また3価クロムイオ
ンの供給には硝酸クロムを用いることもできる。クロメ
ート処理液に含まれる硝酸イオンは、硝酸イオン/全ク
ロムイオンのモル比で0.1〜1.6、好ましくは0.
4〜1.2とする。硝酸イオン/全クロムイオンのモル
比が0.1未満では黒変抑制効果が不十分であり、一
方、硝酸イオン/全クロムイオンのモル比が1.6を超
えるとクロメート液のエッチング力が高くなり過ぎ、Z
n、Al等の夾雑イオン混入によるスラッジ発生の原因
となり、安定的に高い耐食性を維持できなくなるため好
ましくない。クロメート液中の硝酸イオンは、硝酸、硝
酸クロム、硝酸コバルト、硝酸亜鉛等により供給するこ
とができる。
【0022】さらに、クロメート処理液にはコバルト、
ニッケル、ストロンチウム、バリウムの各金属イオンの
中から選ばれる1種または2種以上を、全クロムイオン
に対するモル比で0.04〜0.2の範囲で含有させる
ことができる。これらの金属イオンはクロム酸イオンと
の間で難溶性の化合物を生成し、この化合物によってク
ロメート皮膜のバリヤー性が高まることにより耐食性が
向上するものと考えられる。金属イオンの添加量が全ク
ロムイオンに対するモル比で0.04未満では耐食性向
上効果が乏しく、一方、0.2を超えるとクロメート処
理液が沈殿を生じやすくなり、液安定性が低下するため
好ましくない。なお、クロメート処理液には、エッチン
グ作用によってめっき成分から不可避的に混入してくる
Zn、Al、Pb等の金属イオンが含まれる場合がある
が、これら金属イオンの混入は本発明の効果に影響を与
えない。
【0023】また、上記の金属イオンのうち、コバルト
イオンを添加した場合に最も顕著な耐白錆性向上効果が
得られる。本発明者らによる実験の結果、コバルトイオ
ンを含有するクロメート処理液によって得られるクロメ
ート皮膜は、コバルトイオンを含有しない処理液で得ら
れたクロメート皮膜と比較して、皮膜中の6価クロム含
有量はほぼ同等であるが、クロメート皮膜の最表層にお
ける6価クロム含有量が多いことが判明した。このため
コバルトイオンを含有するクロメート皮膜は、コバルト
イオンを含有しないクロメート皮膜と較べて6価クロム
イオンによる自己補修性が高く、耐白錆性が顕著に改善
されるものと考えられる。したがって、クロメート処理
液中に添加する金属イオンとしてはコバルトイオンが最
も好ましい。クロメート処理液中の金属イオンは、塩基
性炭酸塩や炭酸塩、硝酸塩等により供給することができ
る。なお、クロメート処理液には必要に応じてシリカゲ
ルやヒュームドリシリカ等のコロイダルシリカ、水系樹
脂等を添加することができる。
【0024】上記クロメート処理液をめっき鋼板の表面
に塗布した後、水洗することなく40〜250℃の最高
到達板温の範囲で乾燥させる。板温が40℃未満では水
分が残留するため溶解しやすいクロメート皮膜となり、
一方、250℃超では耐食性に有効な6価クロムイオン
が3価クロムイオンに還元されるとともに、高分子化し
ていたクロメート皮膜が低分子化し、これらが耐食性低
下の原因となるため好ましくない。このようにして塗
布、乾燥したクロメート皮膜のクロム付着量は金属クロ
ム換算で5〜50mg/m2、好ましくは10〜30m
g/m2とする。クロメート皮膜の付着量が金属クロム
換算で5mg/m2未満では耐食性が不十分であり、一
方、50mg/m2を超えると着色が著しくなり、鉛含
有溶融亜鉛めっき鋼板の美麗な外観を損なうため好まし
くない。クロメート処理液の塗布法は任意であり、例え
ば、スプレーまたは浸漬後にロール絞りや気体絞りを行
う方法、ロールコート法等の公知の塗布方法を適用する
ことができる。
【0025】
【実施例】下記(A)〜(D)に示す鉛含有溶融亜鉛めっき
鋼板を水道水によりスプレー水洗(スプレー時間:10
秒)し、送風乾燥させた後、表1および表2に示す組成
のクロメート処理液をロールコート法で塗布し(クロム
付着量はウェット塗布量により調整)、炉温300℃、
炉内風速2m/secの熱風乾燥炉内で最高到達板温4
0〜230℃の範囲で乾燥させ、クロメート処理鉛含有
溶融亜鉛めっき鋼板の供試材を製造した。
【0026】得られた供試材について、めっき外観、皮
膜外観、耐黒変性および耐食性(耐白錆性)の評価を行
った。これらの評価は、本発明例の全部と比較例の一部
については、クロメート処理を開始して間もない段階で
製造された供試材と、クロメート処理がある程度進行し
(処理液1Lに対して供試材を20m2連続処理した
後)、Znが溶解した状態となった処理液でクロメート
処理を行った供試材の両方について行った。その結果を
クロメート処理液の組成、クロム付着量等とともに表1
および表2に示す。
【0027】[鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板] (A) Al:0.2重量%、Pb:0.1重量%を含有
する溶融亜鉛めっき浴において、めっき浴温度470
℃、侵入板温480℃の条件で作製したレギュラースパ
ングル材(めっき付着量:90g/m2) (B) Al:0.2重量%、Pb:0.1重量%を含有
する溶融亜鉛めっき浴において、めっき浴温度440
℃、侵入板温440℃の条件で作製したレギュラースパ
ングル材(めっき付着量:90g/m2) (C) Al:0.2重量%、Pb:0.1重量%を含有
する溶融亜鉛めっき浴において、めっき浴温度510
℃、侵入板温530℃の条件で作製したレギュラースパ
ングル材(めっき付着量:90g/m2) (D) Al:0.2重量%、Pb:0.1重量%を含有
する溶融亜鉛めっき浴において、めっき浴温度430
℃、侵入板温430℃の条件で作製したレギュラースパ
ングル材(めっき付着量:90g/m2
【0028】[性能評価] (1)めっき外観(スパングル外観) 目視にてスパングルの形成状況を観察して霜降り状型ス
パングルの占める面積率を測定し、下記評価基準により
めっき外観を評価した。 ◎:面積率60%以上 ○:面積率40%以上、60%未満 △:面積率20%以上、40%未満 ×:面積率20%未満 (2)皮膜外観 色差計で供試材と無処理材とのΔb(供試材のb値−無
処理材のb値)を測定し、下記評価基準で皮膜外観を評
価した。 ◎:Δbが1未満 ○:Δbが1以上、3未満 △:Δbが3以上、5未満 ×:Δbが5以上
【0029】(3)耐黒変性 各供試材から70mm×150mmの試験片を複数枚切
り出し、各試験片の供試面を対面させて1対としたもの
を5〜10対重ねてビニールコート紙にて梱包し、これ
を内側にアクリル板を貼り付けた厚さ10mmの2枚の
ステンレス板の間に挾み、その四隅をボルト締めしてト
ルクレンチで0.67kgf・cm2の荷重をかけ、5
0℃、95%の相対湿度の湿潤箱内に240時間保持し
た後、取り出し、重ね合わせ部の黒変状況を目視にして
判定した。その評価基準は下記の通りである。 ◎:黒変なし ○:極めて軽度に灰色化 △:黒変発生 ×:著しい黒変発生
【0030】(4)耐食性 各供試材から70mm×150mmの試験片を複数枚切
り出し、これらの試験片にJIS Z 2371に規定さ
れた塩水噴霧試験を実施し、96時間および120時間
後の白錆発生面積を目視で判定した。その評価基準は下
記の通りである。 ◎:白錆発生なし ○:白錆発生面積率5%未満 △:白錆発生面積率5%以上、25%未満 ×:白錆発生面積率25%以上
【0031】表1及び表2によれば、本発明法により製
造されたクロメート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板はス
パングルが美麗なめっき外観を有するとともに、皮膜外
観、耐黒変性、耐白錆性がともに優れている。また本発
明例では、亜鉛めっき鋼板に対するエッチング量を抑制
できるために優れた連続操業性が得られる利点もある。
これに対して、比較例は少なくともめっき外観、皮膜外
観、耐黒変性、耐白錆性のいずれかに劣っている。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、N
i、Co等のフラッシュ処理を施すことなく、スパング
ルが美麗でしかも皮膜外観、耐黒変性および耐白錆性の
いずれにも優れた鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板を安定して
製造することができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Pb:0.05〜0.3重量%、Al:
    0.1〜0.3重量%を含有する溶融亜鉛めっき浴にお
    いて、めっき浴温度440〜500℃、侵入板温440
    〜520℃の条件でめっきして得られた鉛含有溶融亜鉛
    めっき鋼板に、6価クロムイオンと3価クロムイオンと
    硝酸イオンとを含有し、3価クロムイオン/6価クロム
    イオンのモル比が1/9〜1/1、全クロムイオンに対
    する硝酸イオンのモル比が0.1〜1.6に調整された
    クロメート処理液を塗布し、水洗することなく40〜2
    50℃の板温で乾燥し、金属クロム換算で付着量が5〜
    50mg/m2のクロメート皮膜を形成させることを特
    徴とする耐黒変性および耐白錆性に優れ且つスパングル
    の美麗なクロメート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 クロメート処理液がコバルト、ニッケ
    ル、ストロンチウム、バリウムの各金属イオンの中から
    選ばれる1種または2種以上を含有し、全クロムイオン
    に対する前記金属イオンの合計のモル比が0.04〜
    0.2であることを特徴とする請求項1に記載の耐黒変
    性および耐白錆性に優れ且つスパングルの美麗なクロメ
    ート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 クロメート処理液がコバルトイオンを含
    有し、全クロムイオンに対するコバルトイオンのモル比
    が0.04〜0.2であることを特徴とする請求項1に
    記載の耐黒変性および耐白錆性に優れ且つスパングルの
    美麗なクロメート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板の製造
    方法。
JP35795596A 1996-07-02 1996-12-27 耐黒変性および耐白錆性に優れ且つスパングルの美麗なクロメート処理鉛含有溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Pending JPH10195673A (ja)

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US09/029,574 US6280535B2 (en) 1996-07-02 1997-06-30 Manufacturing process on chromate-coated lead-containing galvanized steel sheet with anti-black patina property and anti-white rust property
PCT/JP1997/002261 WO1998000579A1 (fr) 1996-07-02 1997-06-30 Procede de production de feuilles d'acier chromees et galvanisees a chaud, contenant du plomb et ayant une excellente resistance au noircissement et a la formation de rouille blanche
BR9706566A BR9706566A (pt) 1996-07-02 1997-06-30 Processo de fabricação sobre chapa de aço galvanizado contendo chumbo revestida de cromato com propriedade anti-pátina preta e propriedade anti-ferrugem branca
KR1019980701596A KR100326653B1 (ko) 1996-07-02 1997-06-30 내흑변성및내백청성이우수한크로메이트처리납함유용융아연도금강판의제조방법
TW086109464A TW393523B (en) 1996-07-02 1997-07-02 Manufacturing method of a lead-containing galvanized steel sheet treated with chromate with excellent blackening resistance and white rust resistance

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4529208B2 (ja) * 1998-12-09 2010-08-25 ユケン工業株式会社 6価クロムフリー化成処理液およびその化成処理液により形成された化成処理皮膜を備える亜鉛系めっき材の製造方法

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