JPH1018904A - スリーブレス鋳造シリンダブロックおよびその製造方法 - Google Patents

スリーブレス鋳造シリンダブロックおよびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋳巣が存在するシリンダ内面に良好な高速メ
ッキ層を形成することによって燃焼生成物、潤滑油、燃
料によるシリンダ内面の腐食を防止する。 【解決手段】 シリンダブロック１のシリンダ内面８に
メッキを施したスリーブレス鋳造シリンダブロックにお
いて、存在する鋳巣が設定許容値の範囲以内にあるシリ
ンダ内面８に、高速メッキ層９を施した。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、スリーブレス鋳造
シリンダブロックおよびその製造方法に関する。より詳
しくは、スリーブを入れずにシリンダブロックのシリン
ダ内面にメッキを施したスリーブレス鋳造シリンダブロ
ックおよびその製造方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】車両用のエンジンでは、その重量の軽減
を図るためにシリンダヘッドやシリンダブロックに軽量
のアルミ合金が使用されているが、そのようなアルミ合
金製の鋳造シリンダブロックは、ピストンの摺動に対す
るシリンダ内面の耐摩耗性が低いため、一般的には、鋳
鉄製のスリーブ（ライナー）を嵌め込んでピストンとの
摺動面の耐摩耗性を強化している。
【０００３】しかしながら、多気筒エンジンをコンパク
トなものとしたい場合などにおいては、シリンダ内にス
リーブを入れるというようなことをせず、アルミ合金の
シリンダ内面に直接クロムメッキやニッケルメッキを施
し耐摩耗性を強化したスリーブレス鋳造シリンダブロッ
クが使われている。ところで、スリーブレス鋳造シリン
ダブロックのシリンダ内面には、鋳造時に生じた鋳巣が
存在する。鋳巣があるシリンダ内面のメッキ方法として
は、シリンダ内面をメッキ液に長時間浸漬する浸析メッ
キ法と、シリンダ内にメッキ液を高速に流し込んで電気
メッキを行う高速メッキ法がある。
【０００４】前者の浸析メッキ法は、長時間浸漬するた
め、鋳巣の大きさ等に関わらず図３に示すように鋳巣ｃ
の奥まで侵入し、鋳巣ｃを覆う良好なメッキ層ｄが形成
される（図３は、例えば鋳巣径が０．２ｍｍφの場合で
ある）。しかし、浸析メッキ法は長時間浸漬すること
で、メッキに多くの時間がかかりコスト高になる。そこ
で、後者の高速メッキ法が多用される。高速メッキは、
鋳巣ｃの径が小さい場合（例えば鋳巣径が０．１ｍｍφ
の場合）は、図４（ｂ）のようにメッキ層ｄが鋳巣ｃの
内部まである程度侵入し比較的良好なメッキ層ｄが得ら
れる。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】しかし、鋳巣ｃの径が
大きい場合（例えば鋳巣径が０．２ｍｍφの場合）は、
図４（ａ）のようにメッキ層ｄが鋳巣ｃの内部まで侵入
することができず、メッキ不良が生じメッキが施されな
い鋳巣ｃの露出面（アルミ素地）が燃焼生成物，潤滑
油，燃料により変質され腐食が生ずる。そのために、耐
久性に欠ける難点がある。
【０００６】本発明は、上記従来技術の欠点に鑑みなさ
れたものであって、鋳巣が存在するシリンダ内面に良好
な高速メッキ層を形成することによって燃焼生成物、潤
滑油、燃料によるシリンダ内面の腐食が防止できるスリ
ーブレス鋳造シリンダブロックおよびその製造方法の提
供を目的とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明は、シリンダブロックのシリンダ内面にメッ
キを施したスリーブレス鋳造シリンダブロックにおい
て、存在する鋳巣が設定許容値の範囲以内にあるシリン
ダ内面に、高速メッキ層を施したことを特徴とするスリ
ーブレス鋳造シリンダブロックを提供する。
【０００８】また前記目的を達成するため、本発明は、
シリンダブロックのシリンダ内面にメッキを施したスリ
ーブレス鋳造シリンダブロックの製造法において、鋳造
したシリンダブロックのシリンダ内面の鋳巣を測定し、
該測定により存在する鋳巣が設定許容値の範囲以内にあ
るか否かを区別し、存在する鋳巣が設定許容値の範囲以
内にあるシリンダ内面に、高速メッキ法により高速メッ
キ層を施すことを特徴とするスリーブレス鋳造シリンダ
ブロックの製造方法を提供する。
【０００９】
【発明の実施の形態】好ましい実施の形態では、前記シ
リンダ内面を、ピストンリングが当接する領域とピスト
ンスカートが当接する領域と高速メッキを行う時にシー
ルするメッキシール領域の３つの領域に区分し、前記各
領域に存在する鋳巣がそれぞれの設定許容値の範囲以内
にあるシリンダ内面に高速メッキ層を施したことを特徴
とする。
【００１０】さらに好ましい実施の形態では、前記シリ
ンダ内面を、ピストンリングが当接する領域とピストン
スカートが当接する領域と高速メッキを行う時にシール
するメッキシール領域の３つの領域に区分し、該各領域
の鋳巣を測定し、該測定により存在する鋳巣が設定許容
値の範囲以内にあるか否かを区別し、各領域に存在する
鋳巣がそれぞれの設定許容値の範囲以内にあるシリンダ
内面に高速メッキ法により高速メッキ層を施すことを特
徴とする。
【００１１】
【実施例】図１は、本発明を適用したエンジンを示し、
図はその断面図である。シリンダブロック１は、アルミ
合金製の鋳造シリンダブロックからなる。そのシリンダ
ブロック１のシリンダ２内には、ピストン３が内設され
上下摺動する。ピストン３には、ピストンリング（上か
らトップリング、セカンドリング、オイルリング）４
ａ、４ｂ、４ｃが装着されている。
【００１２】従って、ピストン３は、装着されたピスト
ンリング４ａ、４ｂ、４ｃが前記シリンダ２のシリンダ
内面８に直接当接し上下摺動する。また、ピストン３
は、クランクピン５の偏心回転により、コンロッド６、
ピストンピン７を介して左右に揺れるため、ピストンス
カート３Ａがシリンダ２のシリンダ内面８に当接し上下
摺動する。シリンダブロック１は、上述する如く鋳造に
より製造され、シリンダ内面８には、鋳造の際に生じた
無数の鋳巣が存在している。
【００１３】本発明は、鋳造されたシリンダブロック１
のシリンダ内面８に存在する鋳巣が設定許容値の範囲以
内にある場合に、高速メッキ層９を施すことであり、従
って、シリンダ内面８に存在する鋳巣が設定許容値の範
囲以外にある場合は、高速メッキ層９は施さない。鋳巣
が大きい場合には、良好な高速メッキ層９が形成できな
いからである。
【００１４】シリンダ内面８に存在する鋳巣の設定許容
値は、メッキ液の種類，メッキ速度、メッキ液温、メッ
キ時間等の高速メッキのメッキ条件によって異なるが、
例えば次のようにする。シリンダ内面８を、図２に示す
ように３つの領域、即ちピストンリングが当接する（例
えば、トップデッキから深さ１０１．０ｍｍまでの）領
域Ａと、ピストンスカート３Ａが当接する（深さ１０
１．０ｍｍから深さ１３２．０ｍｍまでの）領域Ｂと、
高速メッキを行う時にシールする（深さ１３２．０ｍｍ
から下端までの）メッキシール領域Ｃに区分する。
【００１５】ピストンリングが当接する領域Ａに存在す
る鋳巣の設定許容値は、例えば鋳巣をその最大大きさを
０．５ｍｍφ×深さ０．５ｍｍ以内とし、鋳巣間の最小
距離を６．０ｍｍ，鋳巣を同一円周上で４個以内とす
る。このピストンリングが当接する領域Ａ、即ちピスト
ンリング４ａ、４ｂ、４ｃが摺動する範囲は、常時ピス
トンリングが当接し摺動するため、メッキ不良鋳巣があ
ると、剥離の可能性が高いことと、オイル消費に影響を
与えることを考慮し鋳巣の許容範囲が狭い。
【００１６】ピストンスカート３Ａが当接する領域Ｂに
存在する鋳巣の設定許容値は、例えば鋳巣をその最大大
きさを１．０ｍｍφ×深さ０．８ｍｍ以内とし、鋳巣間
の最小距離を６．０ｍｍ、鋳巣を同一円周上で４個以内
とする。このピストンスカート３Ａが当接する領域Ｂ
は、メッキ不良鋳巣が若干存在しても、ピストンリング
が当接する領域Ａほどは摩耗等の影響が少ないため、鋳
巣の許容範囲が広くなっている。
【００１７】高速メッキを行う時にシールするメッキシ
ール領域Ｃに存在する鋳巣の設定許容値は、例えば鋳巣
をその最大大きさを０．５ｍｍφ×深さ０．８ｍｍ以内
とし、鋳巣間の最小距離を６．０ｍｍとする。このメッ
キシール領域Ｃは、メッキ液がメッキ不良鋳巣から洩れ
るのを防止するため、鋳巣径の大きさをピストンスカー
ト３Ａが当接する領域Ｂよりも許容範囲が狭くなってい
る。なお、シリンダ内面８全体に亘って、鋳巣はその径
が０．１ｍｍφ×深さ０．８ｍｍ以内のものは、影響は
少ないため、存在していても差し支えない。なお、各領
域Ａ，Ｂ，Ｃに存在する鋳巣の設定許容値は、メッキ条
件によって異なるものであり、上記数値に限定されるも
のではない。鋳造シリンダブロックの種類、メッキ液の
種類、メッキ速度、メッキ液温およびメッキ時間等を考
慮し、そのものに最適な設定許容値を選択することが望
ましい。
【００１８】本発明のスリーブレス鋳造シリンダブロッ
クの製造法は、鋳造されたシリンダブロック１のシリン
ダ内面８に存在する鋳巣の大きさ、深さ等を、光学的機
器又は電気的機器等を用いて測定し、その測定と上記設
定許容値と照合させてメッキするか否かを区別し、存在
する鋳巣が設定許容値の範囲以内あるシリンダ内面８の
みに高速メッキ法でメッキを施し高速メッキ層９を形成
する。従って、メッキ不良の可能性が高い鋳巣が設定許
容値の範囲以外にあるシリンダ内面８を有するシリンダ
ブロック１は、高速メッキは行わないため、無駄が生じ
ない。
【００１９】このように選択されたシリンダブロック１
のみをメッキすることで、メッキを施されたものは、鋳
巣の奥まで侵入し、良好な高速メッキ層９で覆うことが
できる。高速メッキ法でメッキを施す高速メッキ層９
は、耐摩耗性のあるニッケル、鉄系又はクロム等を用い
る。
【００２０】このような方法でスリーブレス鋳造シリン
ダブロックにメッキを施すことにより、シリンダ内面８
に鋳巣が存在しても、メッキ不良鋳巣のない良好な高速
メッキ層９で覆われたスリーブレス鋳造シリンダブロッ
クが得られる。従って、燃料生成物、潤滑油、燃料によ
るシリンダ内面８の腐食が防止され、耐久性のあるもの
となる。
【００２１】本発明は、アルミ合金製のスリーブレス鋳
造シリンダブロック以外の金属のスリーブレス鋳造シリ
ンダブロックにも適用できる。
【００２２】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、存
在する鋳巣が設定許容値の範囲以内にあるシリンダ内面
に高速メッキ層を施すため、燃料生成物、潤滑油、燃料
による変質はなく腐食が防止される。従って、耐久性の
あるスリーブレス鋳造シリンダブロックが得られる。ま
た、存在する鋳巣が設定許容値の範囲以内にあるシリン
ダブロックのみメッキを施すため、無駄がなく、効率が
よい。しかも、高速メッキ法によりメッキを施すため、
メッキ時間を短縮し、コスト低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明を適用したエンジンの断面図である。
【図２】 図１のエンジンに用いるスリーブレス鋳造シ
リンダブロックの断面図である。
【図３】 浸析メッキ法でメッキを施した鋳巣の拡大断
面図である。
【図４】 高速メッキ法でメッキを施した鋳巣の拡大断
面図（ａは鋳巣径が大きい場合，ｂは鋳巣径が小さい場
合）である。
【符号の説明】
１：シリンダブロック、３：ピストン、３Ａ：ピストン
スカート、４ａ，４ｂ，４ｃ：ピストンリング、８：シ
リンダ内面、９：高速メッキ層。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 シリンダブロックのシリンダ内面にメッ
    キを施したスリーブレス鋳造シリンダブロックにおい
    て、 存在する鋳巣が設定許容値の範囲以内にあるシリンダ内
    面に、高速メッキ層を施したことを特徴とするスリーブ
    レス鋳造シリンダブロック。
  2. 【請求項２】 前記シリンダ内面を、ピストンリングが
    当接する領域とピストンスカートが当接する領域と高速
    メッキを行う時にシールするメッキシール領域の３つの
    領域に区分し、 前記各領域に存在する鋳巣がそれぞれの設定許容値の範
    囲以内にあるシリンダ内面に高速メッキ層を施したこと
    を特徴とする請求項１に記載のスリーブレス鋳造シリン
    ダブロック。
  3. 【請求項３】 シリンダブロックのシリンダ内面にメッ
    キを施したスリーブレス鋳造シリンダブロックの製造方
    法において、 鋳造したシリンダブロックのシリンダ内面の鋳巣を測定
    し、該測定により存在する鋳巣が設定許容値の範囲以内
    にあるか否かを区別し、 存在する鋳巣が設定許容値の範囲以内にあるシリンダ内
    面に、高速メッキ法により高速メッキ層を施すことを特
    徴とするスリーブレス鋳造シリンダブロックの製造方
    法。
  4. 【請求項４】 前記シリンダ内面を、ピストンリングが
    当接する領域とピストンスカートが当接する領域と高速
    メッキを行う時にシールするメッキシール領域の３つの
    領域に区分し、 該各領域の鋳巣を測定し、該測定により存在する鋳巣が
    それぞれの設定許容値の範囲以内にあるか否かを区別
    し、 各領域に存在する鋳巣が設定許容値の範囲以内にあるシ
    リンダ内面に高速メッキ法により高速メッキ層を施すこ
    とを特徴とする請求項３に記載のスリーブレス鋳造シリ
    ンダブロックの製造方法。
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