JPH0111952Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は内燃機関に用いられるシリンダライナ
に係り、特にピストンと摺接する内周面にメツキ
等の耐摩耗層を形成して耐摩耗性を向上させるよ
うにしたシリンダライナに関する。

シリンダライナは円筒状に形成され、このライ
ナがシリンダブロツクに形成された貫通孔に嵌装
されてシリンダを構成するようになつている。そ
してこのシリンダ内にはピストンが組込まれ、ピ
ストンに組込まれたピストンリングとともにライ
ナが気密保持の役割を果すようになつている。そ
してシリンダ内において燃焼、爆発が行なわれる
と、ピストンは上記シリンダライナに案内されな
がら上下運動を行なう。従つてシリンダライナの
内周面は高温の燃焼ガスにさらされることにな
り、ピストンリングの摺動により摩耗をおこし易
い。

そこで第１図に示すようにピストン１を案内す
るシリンダライナ２の内周面に、従来はメツキや
溶射等によつて耐摩耗性の材料から成る耐摩耗性
層３を形成するようにしていた。この耐摩耗層３
はシリンダライナ２の長さ方向のほぼ全長にわた
つて形成されるとともに、耐摩耗層３の内径寸法
はライナ２の全長にわたつてピストン１との間に
微少のクリアランスを生ずるようになされてい
た。従つてこのシリンダライナ２をシリンダブロ
ツクに挿入した後に、シリンダブロツクの上面に
シリンダヘツドを取付けるようにすると、シリン
ダヘツドの締付け固定に伴つてシリンダライナ２
の上部、特にピストン１の一番上側のリング溝４
とピストンの頂部との間のトツプランド部５と対
向する部分が変形をおこし、局部的にピストン１
とシリンダライナ２との間のクリアランスが小さ
くなり、このためにシリンダライナ２の上部にお
いてピストン１とシリンダライナ２との間でスカ
ツフが発生するという問題点があつた。

本考案はこのような問題点に鑑みてなされたも
のであつて、シリンダライナの上部におけるこの
シリンダライナとピストンとのスカツフを効果的
に防止するようにしたシリンダライナを提供する
ことを目的とするものである。

以下本考案を図示の一実施例につき説明する
と、第２図および第３図に示すように本実施例に
係るシリンダライナ１０はほぼ円筒状に構成され
ており、その内部に組込まれるピストン１１の外
径よりもやや大きな内径を有している。そしてこ
のシリンダライナ１０の内径加工は、旋盤等の機
械加工によつてなされたものであつて、その内周
面は25〜50μの粗さに仕上げられている。すなわ
ち第３図に示すようにシリンダライナ１０の内周
面は比較的粗い面になつている。そしてこのシリ
ンダライナ１０内に配されるピストン１１はほぼ
円柱状に構成されており、その外周面上には３つ
のリング溝１２，１３，１４がそれぞれ形成され
ている。これらのリング溝１２，１３，１４には
それぞれピストンリング１５，１６，１７が装着
されており、これによつてピストン１１とシリン
ダライナ１０との間の気密を保つようにしてい
る。なおピストン１１はピストンピン１８および
コンロツド１９を介して図外のクランクシヤフト
に連結されている。そしてこのピストン１１の一
番上側のリング溝１２とピストン１１の頂部との
間の部分がトツプランド２０を形成している。

さらに上記シリンダライナ１０のピストン１１
の外周面と対向する内周面側には、例えばクロム
メツキ、ニツケルメツキ等から成る耐摩耗層２１
が形成されている。このメツキ層２１は例えば30
〜80μの厚みに形成されており、これによつてシ
リンダライナ１０の内表面の摩耗を防止するよう
にしている。そしてこのメツキ層２１の表面の粗
さは、例えば２〜8μの粗さにホーニング加工等
によつて仕上げられている。なお耐摩耗層２１を
メツキ層によつて構成する代りに、シリンダライ
ナ１０の内表面に耐摩耗性の材料を溶射し、これ
によつてシリンダライナ１０の内表面の摩耗を防
止するようにしてもよい。

さらに上記耐摩耗層２１は、特に第３図に示す
ようにシリンダライナ１０の上部側、すなわちピ
ストン１１が上死点にある状態において、このピ
ストン１１のトツプランド２０と対向する部分は
欠如されており、これによつてシリンダライナ１
０の上部の内表面の地肌２２が露出されるように
なつている。なおこのメツキ層２１の上側の終端
部、すなわちシリンダライナ１０の地肌２２の露
出される部分との境界位置は、例えば90mmの直径
のピストン１１の場合において、一番上側のリン
グ溝１２の上縁からピストン頂面の方向に約２mm
程度離れた位置であつてもよい。そして上述の如
くシリンダライナ１０の内表面においてこのライ
ナ１０の地肌２２を露出させるために、上記メツ
キ層２１を形成する場合に、シリンダライナ１０
の内表面の上部側にマスクを施してメツキ加工が
なされるようになつている。

以上のようにこの実施例のシリンダライナ１０
は、その上部側であつて、第２図および第３図に
示すようにピストン１１が上死点にあるときにそ
のトツプランド２０と対向する部分のメツキ層２
１を欠如させ、これによつてシリンダライナ１０
の内周面の上部において地肌２２を露出させるよ
うにしたものである。従つてこのシリンダライナ
１０をシリンダブロツクに装着するとともに、こ
のシリンダブロツクの上部にシリンダヘツドを配
し、かつこのシリンダヘツドをシリンダブロツク
に締付け固定すると、シリンダブロツクを介して
シリンダライナ１０に力が加わり、これによつて
第３図において鎖線で示すようにシリンダライナ
１０の上部側が局部的に変形する。これは燃焼室
の回りのシール部の面圧を高めるために、シリン
ダライナ１０の上端部をシリンダブロツクの上面
よりも突出させているからであつて、シリンダヘ
ツドをシリンダブロツクに固定するボルトの締付
け力によつてシリンダライナ１０の上端の突出部
を押圧することによつて確実なシール圧を得るよ
うにしているからである。従つて上記ボルトの締
付け力がシリンダライナ１０に作用し、とくにそ
の上端側が変形するようになる。すなわちシリン
ダライナ１０はその上部においてピストン１１と
の間のクリアランスが局部的に小さくなる。しか
しこの変形し易いシリンダライナ１０の上部にお
いてメツキ層２１が存在していないために、この
メツキ層２１の厚さ分だけピストン１１とライナ
１０との間のクリアランスが大きくなり、この結
果シリンダライナ１０とピストン１１との間にお
けるスカツフを効果的に防止することが可能とな
る。またシリンダライナ１０の上部において耐摩
耗層２１を形成しないようにしているためにメツ
キ材料の使用量が少なくなるとともに、メツキに
要する時間も短縮できる。このために耐摩耗層２
１を形成するコストの低減も可能となる。

またこの実施例のシリンダライナ１０によれ
ば、その内周面の上部側は粗い地肌２２が露出さ
れており、ライナ１０を内径加工するときに形成
された粗い凹凸が現われているために、ピストン
１１のトツプランド２０にカーボンが付着しにく
くなる。すなわちライナ１０内における燃焼によ
つて発生したカーボンは一般にピストン１１のト
ツプランド２０あるいはシリンダライナ１０の内
壁面に付着する。しかもこのカーボンの付着は、
ピストン１１のトツプランド２０とシリンダライ
ナ１０の内周面の上部のうちのいずれかに選択的
に付着することが知られている。そしてカーボン
が上述の２つの部分の内のいずれに付着するか
は、ピストン１１のトツプランド２０とシリンダ
ライナ１０の内表面の内のいずれが粗いかによつ
て決定される。すなわちカーボンは粗い面により
多く付着することになる。従つてこの実施例の如
く、シリンダライナ１０の粗い地肌２２が露出さ
れている内周面側に選択的にカーボンが付着する
ことになり、この結果ピストン１１のトツプラン
ド２０にはカーボンが付着しにくくなる。そして
ピストン１１のトツプランド２０にカーボンが付
着しないために、ピストン１１が往復運動をして
もカーボンがピストン１１とシリンダライナ１０
との間の隙間の部分に入り込むことが少なくな
り、これによつて耐摩耗層２１、ピストン１１、
およびピストンリング１５，１６，１７の摩耗量
を少なくすることが可能になる。

以上に述べたように本考案によれば、ピストン
が上死点にあるときにこのピストンのトツプラン
ドと対向する部分のの耐摩耗層を円周方向の全周
にわたつて欠如させ、これによつてシリンダライ
ナの内周面の上部を前記耐摩耗層が形成されてい
る部分よりも大径とし、該大径の内周面に粗面か
ら成る地肌を露出させるように構成されているた
めに、シリンダライナの上部側においてはピスト
ンに対するクリアランスが大きくなる。従つてこ
のシリンダライナが取付けられたシリンダブロツ
クにシリンダヘツドを締付け固定することにより
シリンダライナが局部的に変形しても、ピストン
とシリンダライナとの間におけるスカツフが効果
的に防止される。またシリンダライナの内表面の
上部においては、耐摩耗層が欠如されて粗面から
成る地肌が露出されているために、この露出され
た粗い地肌の部分に選択的にカーボンが付着する
ことにより、ピストンのトツプランドへのカーボ
ンの付着を少なくして、ピストン、シリンダライ
ナ、ピストンリング等の摩耗を減少させることが
可能となる。またシリンダライナの上端側の部分
の耐摩耗層を欠如させることによつてピストンと
の間のクリアランスを大きくするようにしたもの
であつて、シリンダライナそれ自身を切削してク
リアランスを大きくしたものではないので、薄肉
鋼板から成るいわゆるドライライナにも容易に適
用することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はピストンが組込まれた従来のシリンダ
ライナの縦断面図、第２図は本考案の一実施例に
係るシリンダライナの縦断面図、第３図は同拡大
断面図である。 なお図面に用いた符号において、１０……シリ
ンダライナ、１１……ピストン、２０……トツプ
ランド、２１……耐摩耗層（メツキ層）、２２…
…シリンダライナの地肌である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストンと摺接する内周面にメツキ等の耐摩耗
   層を形成して耐摩耗性を向上させるようにしたシ
   リンダライナにおいて、前記ピストンが上死点に
   あるときにこのピストンのトツプランドと対向す
   る部分の耐摩耗層を円周方向の全周にわたつて欠
   如させ、これによつてシリンダライナの内周面の
   上部を前記耐摩耗層が形成されている部分よりも
   大径とし、該大径の内周面に粗面から成る地肌を
   露出させるようにしたことを特徴とするシリンダ
   ライナ。