JPS641477Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、アルミライナをもつた往復動内燃機
関のピストンの構造に関する。

エンジンの軽量化をはかるために、シリンダブ
ロツクのアルミ化と同時にシリンダライナもアル
ミ化しようとする動きがある。アルミライナの場
合には、ピストンが通常アルミ合金製でであるの
で、同種材料間の摺動によりかじり等が生じ易
い。このためアルミライナに対して従来Feメツ
キが行なわれていたが、地肌が出易く耐久性およ
び低温スカツフ性が良くないという問題があつ
た。また、電気メツキのため、メツキ膜厚のコン
トロールが非常に困難で、ピストンプロフイル、
オーバリテイに影響を与える等の問題もあつた。

このようなアルミライナ内で往復動するピスト
ンの問題を解消するためには、ピストンのスカー
ト部をアルミ以外の材料、望ましくは鉄系材料か
ら形成することが有効であると考えられる。すな
わち、アルミと鉄系材間の良好な摺動性を利用す
るのである。このような内燃機関では、ピストン
ヘツド部はアルミ合金製から成り、スカート部は
鋼板製から成るが、このような鋼板製スカート
部、アルミ合金製ヘツドを有するピストンは、た
またま実公昭57−32281号に提案されている。

しかしながら、上記実公昭57−32281号のピス
トンは、ピストンのアルミライナとの干渉の問題
を解決すべき技術問題としているものではない。
実公昭57−32281号のピストンは、第１図および
第２図に示すように、鋼板製スカート部１′の上
端に内向きフランジ２′を一体に形成し、このス
カート部１′にアルミ合金製ヘツド部３′を、それ
により前記内向きフランジ２′を鋳包むことによ
り結合したものから成つており、このような構成
のピストンをアルミライナに用いてもライナとの
干渉の問題は解消されず、かえつてつぎに述べる
新たな問題が生じる。すなわち、スカート部１′
がピストンヘツド部３′の外周からヘツド部３′内
に埋入されているので、スカート部１′とヘツド
部３′とで熱膨脹差の繰返しが生じてヘツド部
３′の鋳包端部４′が疲労損傷してきたときにそこ
がライナとの摺動面になつているので摺動性をか
えつて悪化させ、かじりや焼付の問題を惹起させ
てしまう。また、スカート部１′が横断面円形に
形成されているので、ピストンヘツド部３′に熱
が加わつてピストンピンの長手方向にピストンヘ
ツド部３′が若干量伸長するように変形したとき
に、スカート部１もそれに引張られて円形断面が
ピストンピン長手方向に長く延びる楕円形に変形
し、これによつてライナとの干渉が生じてしま
い、摺動摩擦の増加、耐久性の低下を生じてしま
う。すなわち、実公昭57−32281号のピストンは
鋼板製スカートを開示してはいるものの、アルミ
ライナとの干渉解消を目的とするものではないの
で、これを実際のアルミライナエンジンに用いた
場合には、かえつてライナとの干渉を生じ、耐久
性を低下させてしまうという問題がある。

本考案は、アルミライナのエンジンに装着され
るピストンのアルミライナとの干渉を除去し、低
摩擦でかつ耐スカツフ性、耐久性の良いピストン
を提供することを目的とする。そして、さらに具
体的には、本考案はアルミライナとの摺動性をよ
くするために、鉄系材料から成るスカート部を有
し該スカート部上端をアルミ合金製ヘツド部に接
合したピストンにおいて、接合部がピストンの摺
動に対して与える悪影響を除去するとともに、ヘ
ツド部とスカート部との熱膨脹差によつて生じる
スカート部の熱変形がピストンの摺動に対して与
える悪影響を除外し、もつて鉄系材スカート部を
有するピストンを実現性あるものにすることを目
的とする。

この目的に沿う本考案のピストンは、アルミラ
イナ内で往復動するピストンであつて、スカート
部を鉄系材料から形成するとともにその横断面を
ピストンピンと直角方向に互いに平行に延びる二
辺を両端には円弧で接続した形状に形成し、かつ
ピストンヘツド部をアルミ合金より形成してスカ
ート部の上端をピストンヘツド部にピンボス部の
内周側で接合したものから成る。

このような構成のピストンではスカート部が鉄
系材料から成つているので、アルミライナとの摺
動性は良くなり、したがつて低摩擦のピストンと
なり、耐スカツフ性、耐久性が向上される。また
スカート部のヘツド部内への接合部がピンボス部
の内側にあるので該部分が直接シリンダライナと
摺動することが避けられ、さらに、ピストンに熱
負荷がかかつてピストンヘツドがピストンピン軸
線に沿う方向に伸長するように変形したとき、ス
カート部がそれにつれて変形してもピストンピン
軸線方向は平行二辺からなつているので該二辺が
外径側に変形してもシリンダライナと干渉するこ
とはない。またスカート部はピストンピンと直角
方向で縮もうとするが、この変形はシリンダライ
ナから離れる方向の変形であるため、ライナとの
干渉はやはり生じない。すなわち、鉄系材料スカ
ート部を採用しても、シリンダライナとの干渉は
除去されている。このような構成、作用を有する
ピストンをシリンダライナに適用してもとくに問
題を生じることはなく、鉄系材スカート部を有す
るピストンを実現性あるものとしている。

以下に、本考案のピストンに係る望ましい実施
例を図面を参照して説明する。

第３図および第４図は本考案の第１実施例に係
るピストンを示している。図中１はピストンのヘ
ツド部でありアルミ合金製から成る。２はスカー
ト部であり、鉄系材料から成る。鉄系材料として
はSPC、SPH、STKM、FC等が使用に適する。
スカート部２の厚さはサイドスラスト力に耐えか
つなるべく軽量となる厚さであり、ガソリンエン
ジンでは0.2〜２mmとなつており、サイドスラス
ト力の大きいデイーゼルエンジンでは0.5〜４mm
である。

スカート部２の横断面形状は、一対の互いに平
行に延びる二辺３，３と該二辺３，３をその両端
で接続する円弧部４，４とから成るトラツク状形
状をしている。そして、二辺３，３はピストンピ
ン軸線５方向と直角方向に延びている。

スカート部２の上端はヘツド部１に接合されて
いる。接合は鋳包みまたはアルフイン処理によ
る。図は鋳包みの場合を示している。スカート部
２のヘツド部１への接合はヘツド部１から下方に
向つて突出するピンボス部６の内側で行なわれ
る。すなわち平行二辺３，３をピンボス部６の内
壁面７にあてるとともに、平行二辺３，３の上端
８を外方に折り曲げてヘツド部１内に埋入させ鋳
包む。この折り曲げ部９はスカート部２のヘツド
部１からの抜止めを果している。また、スカート
部２とヘツド部１との接合にピンボス部６の内側
を利用することにより、スカート部２とオイルリ
ング溝１０、ピストンリング溝１１との干渉が防
止される。なおスカート部２のうち円弧部４，４
の上端部はオイルリング溝１０より下側で止まつ
ており、オイルリング溝１０と干渉することはな
い。スカート部２のうち円弧部４，４はアルミ製
シリンダライナと摺動する。そして、円弧部４，
４以外のスカート部２ではシリンダライナと接触
しない。このようにピストンピン軸線方向と直角
方向のみにピストンスラスト荷重を受ける面を形
成したのは、ピストンがピストンピン軸線まわり
に揺動するのでピストンピンと直角方向に主にス
ラスト荷重が作用するからであり、かつ全周を円
形にするより平行二辺３，３を形成した方が周長
が短くなつて軽量化できるからである。なお、ス
カート部２の摺動面積を小にしたためにスラスト
力を受けたときの面圧は上るが、スカート部２が
鉄系材料からできているので十分に耐える。

つぎに上記構成を有する第１実施例のピストン
における作用について説明する。

まず摺動性については、スカート部２が鉄系材
料であるため、アルミライナとの間にかじり、焼
付きは生じ難く、信頼性のある摺動性能が得られ
る。また、Feメツキと異なり地肌があらわれて
摺動性が変わることもない。

つぎに鋳包部の熱疲労についてであるが、ヘツ
ド部１とスカート部２との接合部は両者の熱膨脹
差により繰返しの熱応力を受け、ヘツド部１の接
合部のコーナ１２が変形したり該コーナ１２に亀
裂等の損傷が万一発生したとしても、該コーナ部
１２はピンボス部６の内側に位置してシリンダラ
イナと接触しないので、摺動性に支障をきたすこ
とはない。

さらに、スカート部２の熱変形については、一
般にピストンヘツド部１に熱負荷がかかつたとき
にはヘツド部１はピストンピン軸線方向に伸長し
それと直角方向には短縮しようとする。したがつ
て、スカート部２もヘツド部１に引張られてピス
トンピン軸線方向には伸長し、それと直角方向に
は短縮しようとする。この場合、ピストンピン軸
線方向の伸長はスカート部２の平行二辺３，３の
互いに離反する方向の変形によつて吸収され、該
平行二辺３，３の変形がシリンダライナとの摺動
摩擦を増加させたり、かじりを生じさせたりする
ことはない。また、ピストンピン軸線方向と直角
方向の短縮はスカート部２の円弧部４，４のシリ
ンダライナから離反する方向の変形によつて吸収
されるので、円弧部４，４とシリンダライナとの
摺動摩擦が増加することもない。このように、ピ
ストンに熱負荷がかかつたときに、スカート部２
の変形がピストンの動作に支障を与えることはな
い。

第５図および第６図は本考案の第２実施例に係
るピストンのスカート部を示している。本実施例
ではスカート部２に複数本の縦方向に延びる溝１
３が形成されている。これによつてスカート部２
のシリンダライナとの摺動面が少なくなり、摺動
摩擦が低下する。摺動面の面積を少なくするとサ
イドスラスト力を受けたときの面圧は上るが、ス
カート部２が鉄系材料から成つているため耐え得
る。ただし円弧部４，４の円弧面積は溝１３を形
成した場合においても元の円弧面積の1/3以上程
度でかつ円弧中央部４ａは少なくともボア径の約
１／５以上なければならず、これより摺動面積を小
にすると面圧の増加より油の膜切れが生じるおそ
れが出てくる。その他の構成、作用は第１実施例
に準じる。

第７図および第８図は本考案の第３実施例に係
るピストンのスカート部を示している。本実施例
ではスカート部２に複数本の横方向に延びる溝１
４が形成されている。これによつてスカート部２
のシリンダライナとの摺動面が少なくなり、摺動
摩擦が低下する。摺動面の面積を少なくするとサ
イドスラスト力を受けたときの面圧は上るが、ス
カート部２が鉄系材料から成つているために耐え
得る。ただし溝１４面積はスカート摺動面４，４
の約3/5以下となつており、面圧の増加による油
膜切れが防止されている。また、溝１４はスカー
ト部２の上端および下端よりスカート長の1/5以
下の長さの範囲には設けられていない。これは、
スカート部２の上端、下端はピストン首振り時に
面圧が上るからであり、その部分に溝１４を設け
ないようにしたものである。その他の構成、作用
は第１実施例に準じる。

以上説明したように、本考案のピストンはスカ
ート部を鉄系材料で形成するとともにスカート部
を横断面トラツク形状にしてヘツド部のピンボス
部の内側でヘツド部に接合するようにしたもので
あるから、本考案によるときは、アルミライナと
の摺動性が良好となり、また、スカート部とヘツ
ド部との熱膨脹も摺動性に悪影響を与えることは
なく、ピストンの摩擦の低下、耐久性の向上をは
かることができるという効果がが得られる。

さらに、スカート部に縦溝または横溝を設けれ
ば、摺動面積が少なくなるので、より一層ピスト
ンの摩擦を低下させることができるという効果も
得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のピストンの断面図、第２図は第
１図のピストンの底面図、第３図は本考案の第１
実施例に係るピストンの断面図、第４図は第３図
のピストン−線に沿う断面図、第５図は本考
案の第２実施例に係るピストンの正面図、第６図
は第５図のピストンの底面図、第７図は本考案の
第３実施例に係るピストンの正面図、第８図は第
７図のピストンの底面図、である。 １……ヘツド部、２……スカート部、３……ス
カート部の平行二辺、４……スカート部の円弧
部、５……ピストンピン軸線、６……ピンボス
部、７……ピンボス部の内壁面、９……折り曲げ
部、１０……オイルリング溝、１３……縦溝、１
４……横溝。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) アルミライナ内で往復動するピストンであつ
   て、スカート部を鉄系材料から形成するととも
   にその横断面をピストンと直角方向に互いに平
   行に延びる二辺を両端にて円弧で接続した形状
   に形成し、かつピストンヘツド部をアルミ合金
   より形成して前記スカート部の上端をピストン
   ヘツド部にピストンボス部の内側で接合したこ
   とを特徴とするピストン。 (2) スカート部上端をピストンヘツド部に鋳包
   み、ピストンヘツド部に鋳包まれたスカート部
   上端に抜き止め用の折り曲げ部を形成した実用
   新案登録請求の範囲第１項に記載のピストン。 (3) スカート部にアルミライナとの接触を防止す
   る溝を形成した実用新案登録請求の範囲第１項
   に記載のピストン。