JPH087071Y2 - 内燃機関のシリンダー構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、内周に耐摩耗性のメッキを施したシリン
ダースリーブを有する内燃機関のシリンダー構造の改良
に関する。

〔従来の技術とその問題点〕

内燃機関のシリンダーでは、軽合金などで鋳造したシ
リンダーブロックのシリンダー内周に耐摩耗性のメッキ
を施して使用することがある。しかし、この場合、単気
筒の場合は、直接シリンダーブロックにメッキを施して
も、メッキ設備が簡単にできるが、多気筒のシリンダー
ブロックの場合は、メッキ設備が大がかりになり、費用
がかかると共に、作業能率も悪くて、大巾にコストアッ
プする。このため、多気筒のシリンダーブロックの場合
は、第３図に示すように、上端外周に鍔Ａを設けたシリ
ンダースリーブＢの内周に、耐摩耗性のメッキ層Ｃを施
したものを設け、このシリンダースリーブＢをシリンダ
ーブロックＤの孔Ｅに挿入固定し、メッキはシリンダー
スリーブＢが単体のうちに施してメッキ設備が小さく作
業性もよいように工夫している。そして、シリンダーブ
ロックＤにシリンダースリーブＢを挿入固定した場合
に、図に二点鎖線で示すように、シリンダーブロックＤ
の上面とシリンダースリーブＢの上面に不揃いができる
ので、僅かに切削代を設けておいて、切削加工を施して
上面を均一にする。この上面には、ガスケットを挟んで
シリンダーヘッドを締着し、ガスケットでシールする必
要があるので、シール性を保つ面精度が求められる。

ところで、上面を切削加工によって平面に仕上げると
きに、バイトがメッキ層Ｃにもかかり、メッキ層Ｃの上
端に細かい剥離ができたり、加工面の面精度不良ができ
ることがあり、特に剥離ができると、使用中に拡がっ
て、著しく耐久性が低下する不都合がある。又、メッキ
層Ｃは硬く、切削バイトの寿命を低下させる問題があ
る。メッキシリンダースリーブ又はメッキシリンダーに
は、実公昭56-1010号公報、実公昭55-23442号公報、特
開昭49-127016号公報などが知られている。

また、前記不都合や問題に対して、実開昭58-193027
号に、ピストンが上死点にあるときにこのピストンのト
ップランドと対向する上端部分の耐摩耗性を欠如させた
シリンダライナが提案されている。しかしながら、この
技術は、シリンダライナ内周面にメッキを施す際に、上
端部分をマスキングするのにメッキマスクの位置決めが
しにくく、従って、作業性が悪いという問題点がある。

〔考案の目的〕

この考案は、シリンダースリーブ内周上端に内径を大
きくした拡径部を形成して、メッキ層を施さない部分を
設け、上面の切削加工上の不都合を排除できて、かつ、
マスキングの作業性を向上させて生産性を高めることが
できる内燃機関のシリンダー構造を得ることを目的とす
る。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案は、前記問題点を解決するため、内周面にメッ
キ層（６）を施したシリンダースリーブ（１）をシリン
ダーブロック（３）に挿入固定する内燃機関のシリンダ
ー構造に於て、シリンダースリーブ（１）は、ピストン
が作動する内径（ｄ₁）を有する内径部（1b）と、シリ
ンダースリーブ（１）上端部に前記内径部（1b）の内径
（ｄ₁）より大きな内径（ｄ₂）の拡径部（５）とが形成
され、かつ、内径部（1b）と拡径部（５）とが大きな曲
率で急激に結ばれると共に、シリンダースリーブ（１）
およびシリンダーブロック（３）の上端面（1a、3a）が
同一面に切削形成されたことを特徴とする内燃機関のシ
リンダー構造の構成を有する。

〔作用〕

本考案によれば、シリンダースリーブは、ピストンが
作動する内径を有する内径部と、シリンダースリーブ上
端部に前記内径部の内径より大きな内径の拡径部とが形
成されるので、この拡径部にメッキ層が付着し難い。

また、前記内径部と拡径部とが大きな曲率（小さな半
径）で急激に結ばれるので、拡径部にメッキ層が付着す
るのを防止するためマスキングする際に、拡径部にメッ
キマスクを精度良く位置決めして装着し易く、マスキン
グの作業が容易になる。

〔実施例〕

以下、本考案を第１図及び第２図に示す実施例によっ
て説明する。

第１図及び第２図において、シリンダースリーブ１
は、上端外周に鍔２が設けてあって、鍔２はシリンダー
ブロック３の孔４にシリンダースリーブ１を嵌入したと
きにそれらの軸７方向の位置決めをするものである。

シリンダースリーブ１は、ピストンが作動する内径ｄ
₁を有する内径部1bと、上端部に前記内径部1bの内径ｄ₁
より僅かに大きな内径ｄ₂の拡径部５とが形成され、か
つ、内径部1bと拡径部５とが大きな曲率（小さな半径）
で急激に結ばれる。また、その拡径部５の内周面の軸７
を含む縦断面形状が該軸７にほぼ平行な直線状に形成さ
れている。さらに、拡径部５は、内径で1mm程度、内径
部1bより大きく、上端からの深さで1mm程度に形成され
ればよく、拡径部５の下端の部分5aは、大きな曲率の曲
面であってシリンダースリーブ１の内径部1bに連続させ
てある。

このようにしたシリンダースリーブ１の内径ｄ₁の内
周部1b内周面に、耐摩耗性のメッキ層６を施す。メッキ
層６は、硬質クロムメッキ、セラミック粒子を入れた複
合メッキなどが適する。拡径部５は、シリンダースリー
ブ１の内周より凹んでいるので、メッキ層６は、殆んど
つかない。又、拡径部５の下端の曲面にした部分5aは、
メッキ層６が、拡径部５に向かって、徐々に薄く付着す
るように仕上がる。

このようにして、メッキ層６を施したシリンダースリ
ーブ１をシリンダーブロック３の孔４に、冷し嵌め又は
焼嵌めなどによって挿入固定する。挿入後は、シリンダ
ーブロック３の上端面3aと、シリンダースリーブ１の上
端面1aの不揃いを、切削加工によって切削し、同一平面
に仕上げる。切削代は、例えば0.5mm程度に設定すれば
よい。

つぎに実施例の作用を説明する。

シリンダースリーブ１の上端部内周に僅かに内径を大
きくして設けた拡径部５は、シリンダースリーブ１の内
周面より凹んでいて、メッキ加工によってメッキ層６を
施す場合に、メッキ層６が付着し難く、殆んどメッキ層
６がないようにできる。このため、シリンダースリーブ
１とシリンダーブロック３の上面の不揃いを切削加工に
よって切削し同一面に仕上げるとき、メッキ層６に切削
バイトが入らず、加工面の面精度を高めることができ、
メッキ層の剥離も防げる。又、バイトに対してもよい。
こうして、加工精度を高めてメッキ層の剥離も防げる。
切削後の拡径部５は、深さ0.5mm程度になり、ピストン
リングがかかることもないので、使用上の不都合もな
い。

尚、シリンダースリーブの内径が大きいもので、拡径
部５にもメッキ層ができる場合には、メッキ加工のと
き、拡径部５だけマスキングすればよい。又、拡径部５
の内周面は軸７に沿う断面が直線状に形成されているの
で、そのマスキングに際してマスクが装着し易く、マス
キングの作業が容易になる。また、前記内径部1bと拡径
部５とが大きな曲率で急激に結ばれるので、拡径部５に
メッキ層６が付着するのを防止するためマスキングする
際に、拡径部５にメッキマスクを精度良く位置決めして
装着し易く、マスキングの作業が容易になる。

〔考案の効果〕

以上説明したように、この考案によれば、拡径部にメ
ッキ層が付着し難いため、上面の不揃いを切削加工して
平面に仕上げるとき、メッキ層の剥離が防げ、加工面の
精度も向上して、生産性の向上が図れる。そして、バイ
トの寿命も長くなる。又、使用中のメッキ層の剥離が拡
がることもないので、耐久性も向上する。又、シリンダ
ースリーブの内周にメッキ加工するに際して、例えばシ
リンダースリーブの内径が大きいもので、拡径部にもメ
ッキ層ができる場合には、マスキングが必要であるが、
拡径部の内周部と大きな曲率で急激に結ばれているため
メッキマスクを精度良く位置決めして装着しやすく、マ
スキング作業が容易なため生産性が向上する。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本考案の一実施例を示し、第１図は
縦断面図、第２図は要部の拡大縦断面図、第３図は従来
例を示す縦断面図である。 １……シリンダースリーブ、1a……シリンダースリーブ
の上端面、1b……内径部、３……シリンダーブロック、
3a……シリンダーブロックの上端面、５……拡径部、６
……メッキ層、７……シリンダースリーブの軸。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】内周面にメッキ層を施したシリンダースリ
   ーブをシリンダーブロックに挿入固定する内燃機関のシ
   リンダー構造に於て、 シリンダースリーブは、ピストンが作動する内径を有す
   る内径部と、シリンダースリーブ上端部に前記内径部の
   内径より大きな内径の拡径部とが形成され、かつ、内径
   部と拡径部とが大きな曲率で急激に結ばれると共に、 シリンダースリーブおよびシリンダーブロックの上端面
   が同一面に切削形成されたことを特徴とする内燃機関の
   シリンダー構造。