JPH10182732A - チオ尿素基を有する高分子およびそれよりなる重金属捕捉剤 - Google Patents

チオ尿素基を有する高分子およびそれよりなる重金属捕捉剤

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JPH10182732A JP8343879A JP34387996A JPH10182732A JP H10182732 A JPH10182732 A JP H10182732A JP 8343879 A JP8343879 A JP 8343879A JP 34387996 A JP34387996 A JP 34387996A JP H10182732 A JPH10182732 A JP H10182732A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 重金属捕捉剤などの用途に適当な新規な高分
子を提供する。 【解決手段】 下記(1)で表される繰り返し単位を1
〜100モル%含有することを特徴とするチオ尿素基を
有する高分子それよりなる重金属捕捉剤。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規なチオ尿素基を
有する高分子に関する。該高分子は重金属捕捉剤として
利用できる。
【0002】
【従来の技術】近年、ごみ焼却場、メッキ工場、写真現
像所、廃棄物処理場等の廃水中に含まれる重金属による
汚染が問題になっており、その除去方法が各種検討され
つつある。例えば、現在、行われている方法としては、
中和凝集沈殿、硫化ソーダにより溶解度積の小さい硫化
物沈殿にする方法、キレート樹脂による捕捉方法等が知
られている。しかしながら、中和凝集沈殿は重金属のな
かでも水銀は十分除去できない。また、硫化ソーダによ
る方法では水銀の除去も可能であるが、処理液のpHに
よっては有害ガスである硫化水素発生の恐れがあり、ま
た、悪臭が強く実使用に難がある。更に、キレート樹脂
による方法は重金属捕捉能力に優れるが、共存金属の吸
着があり効率が悪く、コスト高となる。
【0003】以上の技術の欠点を改善する方法として、
水溶性高分子による重金属捕捉剤を用いた方法がある。
現在、実用化されているものとして、ポリアミンのジチ
オカルバミン酸誘導体が高い重金属捕捉性能を有する
が、分子量の高い高分子が得られにくく、また、分解に
よる二硫化炭素の発生などの問題がある。他にポリアミ
ドアミンのチオ尿素誘導体を重金属捕捉剤として用いる
方法が特開平3−221579に開示されているが、性
能としてなお十分ではない。
【0004】一方、金属と錯体形成能力があるポリアミ
ンとしてポリビニルアミンが知られている。このポリビ
ニルアミンは、近年、N−ビニルカルボン酸アミドを重
合してから加水分解することにより工業的に入手が容易
な高分子となっていること、ポリエチレンイミン等のポ
リアミンに比べ、1級アミンの含有率が高いこと、更に
凝集性の高い高分子量のものも容易に得られること、な
どの利点がある。もっとも、このポリビニルアミンの金
属との錯体形成能力は十分とは言えず、特に、需要が大
きい水銀などの重金属に対する錯体形成能力が低く、重
金属捕捉剤として利用されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のよう
な従来の重金属捕捉剤が有する欠点を克服できるような
新規な高分子を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の状況
に鑑み検討した結果、ポリビニルアミンより容易に製造
することができるチオ尿素基を有する高分子が、重金
属、特に水銀に関して高い吸着力があることを見出し、
本発明に到達した。即ち、本発明は、下記(1)で表さ
れる繰り返し単位を1〜95モル%含有し、チオ尿素基
を有する高分子に関するものであり、該高分子は重金属
捕捉剤として好適に使用することができる。
【0007】
【化5】
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の高分子(以下「ポリチオ尿素」という)は、上
記(1)で表される繰り返し単位(以下「チオ尿素単
位」という)を1〜100モル%、好ましくは10〜9
0モル%、特に好ましくは20〜80%である。このポ
リチオ尿素が水溶性である場合は、1規定の食塩水中
0.1g/dlの溶液として、25℃で測定した還元粘
度が、通常0.1〜10dl/gである。また、チオ尿
素単位70%を越えると水不溶化するので水溶性用途の
場合は、チオ尿素単位が70%以下、好ましくは65モ
ル%以下とする。ポリチオキサン尿素を固体として用い
る場合は転化率をあげても全く差しつかえない。また、
転化率が低すぎるとポリビニルアミンへの重金属捕捉能
力が低下するので、ポリチオ尿素を重金属捕捉剤として
使用する場合はあまり好ましくない。
【0009】以上のポリチオ尿素の製造方法は特に限定
されないが、好適には、ポリビニルアミンとチオシアン
酸アンモンとを反応させることにより得られる。チオシ
アン酸アンモンは通常0.1〜10当量用いられるが、
過剰量用いる方が反応速度の点から好ましい。通常、ポ
リビニルアミンの水溶液にチオシアン酸アンモンを加え
て反応させる。50〜100℃で加温して反応させるこ
とが好ましく、反応時間は通常0.5〜500時間であ
る。
【0010】上記原料に用いるポリビニルアミンとは、
本願においては後述の式(3)で表されるくり返し単位
(以下「ビニルアミン単位」という)を含有する高分子
を意味する。その製造方法は特に限定はなく、古くから
知られているポリアクリルアミドのホフマン反応法や、
N−ビニルコハク酸イミドの重合してから加水分解する
方法であってもよいが、製造が容易な点、分子量のコン
トロールが容易な点、更に共重合等による改質が容易な
点などから、一般式CH2 =CHNHCOR(式中、R
は水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表
す。)で示されるN−ビニルカルボン酸アミドを含むモ
ノマーを重合し、得られた重合体であるポリビニルアミ
ドを加水分解する方法が最も望ましい。N−ビニルカル
ボン酸アミドとしては、N−ビニルホルムアミド又はN
−ビニルアセトが好ましい。重合方法はバルク重合、水
溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の方法によっ
て製造される。重合はイオン重合、ラジカル重合のいず
れによってもよいが、アゾ開始剤を用いたラジカル重合
が特に好ましい。なお、他の単量体、例えば、アクリロ
ニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、酢酸
ビニル、アクリル酸などで共重合を行ってもよい。
【0011】かかる重合により得られるポリビニルアミ
ドは、そのアミド基部分を所望量、加水分解することに
よりポリビニルアミンに誘導する。その加水分解率は通
常5〜100モル%である。加水分解は酸又はアルカリ
を用いた方法のいずれであってもよい。酸としては、塩
酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸、スルフ
ァミン酸、アルカンスルホン酸等が挙げられるが、好ま
しくは塩酸である。また、アルカリとしては、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウム、第4級アンモニウムヒドロ
キサイド等が挙げられる。酸又はアルカリの使用量は、
ポリビニルアミドのアミド基に対して、通常0.1〜5
倍モルの範囲で所望の加水分解率に応じて適宜使用され
る。加水分解温度は、通常40〜150℃、好ましくは
90〜130℃であり、反応時間は通常0.5〜10時
間程度である。また、このようにして得られるポリビニ
ルアミンは前記の重合条件により所望の分子量のものを
得ることができるが、1規定の食塩水中0.1g/dl
の溶液として、25℃で測定した還元粘度の値が、通常
0.1〜10dl/gである。
【0012】以上のような方法で得られる本発明のポリ
チオ尿素は、前記(1)で表されるチオ尿素単位以外の
任意成分として、ポリビニルアミド及びポリビニルアミ
ン由来の下記(2)で表されるくり返し単位(以下「ビ
ニルアミド単位」という)を通常0〜95モル%、特に
1〜90モル%含有し、同時に下記(3)で表されるビ
ニルアミン単位を通常0〜95モル%、特に1〜90モ
ル%含有する。
【0013】
【化6】
【0014】
【化7】
【0015】(上式(2)において、Rは水素原子もし
くは炭素数1〜4のアルキル基を表す。) 以上のポリチオ尿素は、そのまま各種用途に利用しても
よいし、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の
公知の架橋剤を用いてゲル化させてもよい。
【0016】
【実施例】次に、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施
例に限定されるものではない。 実施例1 (ポリチオ尿素の合成)ポリビニルアミン塩酸塩5gと
チオシアン酸アンモン80gを100mlの水に溶解
し、攪拌しながら90〜95℃で3日間反応させた。そ
の後、透析により精製し、更に、凍結乾燥により粉末の
生成物を得、IRスペクトルにより、チオ尿素化されて
いることを確認した。原料ポリビニルアミンでは観測さ
れなかった1354cm-1、1094cm-1にC=Sの
伸縮振動による吸収が確認された。また、ポリビニルア
ミン塩酸塩と該生成物を1規定の食塩水中0.1g/d
lの溶液として、25℃で測定した還元粘度は各々約4
dl/gであった。
【0017】実施例2 (ポリチオ尿素ゲルの合成)ポリビニルアミン水溶液1
0mlにエチレングリコールジグリシジルエーテルを加
えさらに流動パラフィン200gを加えて5時間攪拌し
て架橋度4.5%のポリビニルアミンゲルを得た。この
ゲルを3日間水洗した後塩酸でpH2.0にした溶液に
一昼夜浸漬し、塩酸塩とした。次に、充分水洗したあ
と、60gのチオシアン酸アンモンを溶解した。50m
lの水中に加え、90〜95℃で5日間反応させた。そ
の後充分水洗した。実験1と同様にIRによりチオ尿素
基の導入が確認された。
【0018】実施例3〜9 表−1に示したように反応原料と反応時間を適宜変更し
た以外は、実施例1と同様の方法で以下の条件でポリチ
オ尿素を合成した。転化率は反応終了後の液に一定量の
硝酸銀を加え過剰のチオシアン酸アンモンを沈殿させて
除き、更に、ミョウバンを加え、チオシアン酸アンモン
で滴定してFeSCNの赤色になる点から銀の残量を測
定して反応終了後の残チオシアン酸量を測定した。結果
を表−1に示す。
【0019】
【表1】 * 水から析出 ** 実施例2と同様のポリマーゲルを使用
【0020】(金属吸着測定)実施例9のポリマーゲル
を用いチオ尿素化前のポリビニルアミンゲルと、ポリチ
オ尿素ゲルへの金属イオンの吸着試験を行った。数値は
ゲル1gあたりの金属の吸着量(mmol)である。条
件はゲル重量10mgを250ppmの金属イオンを含
む水溶液(pH=2.9)に浸漬して吸着量を測定し
た。結果を表−2に示す。表−2より、チオ尿素化する
ことで吸着量が増加していることがわかる。
【0021】
【表2】
【0022】また、水銀イオンと他の金属イオンの共存
下での結果を表−3に示す。いずれの場合も金属イオン
の吸着量は増加し、特に、水銀イオンの吸着量がポリビ
ニルアミンの15倍ほどに増加していることが判明し
た。
【0023】
【表3】
【0024】
【発明の効果】本発明の高分子であるポリチオ尿素は安
定であり、分解して有害ガスを発生したり、悪臭を発す
る等の問題は生じないと同時に、重金属に対して強い親
和性を示す。特に、水銀に対しても高い錯体形成能力が
ある。この理由として、ポリチオ尿素のイオウ含有アミ
ノ基であるチオ尿素基が、従来からのポリビニルアミン
等でのアミノ基と比較して、いわゆるソフトな塩基(s
oft base)となり、ソフトな酸(soft a
cid)である水銀イオンにより高い親和性を示せるよ
うになったものと考えられる。
【0025】また、本発明の高分子であるポリチオ尿素
は、溶液中の塩濃度やpH変化に対してもその吸着性の
変化が小さく、重金属のイオンの吸着力を高く維持する
ことができる。この理由として、チオ尿素基が通常のア
ミノ基と異なり、pHによりその乖離性が変化しないた
めと考えられる。以上の本発明のポリチオ尿素は、重金
属を含む廃水、例えばメッキ工業での廃水の処理などに
おいてその重金属分を吸着除去するための重金属捕捉剤
としての応用が期待される。他に重金属の担体として用
い、導電性高分子として電子材料分野の応用も規定され
る。
【0026】更に、本発明のポリチオ尿素は、原料とし
てポリビニルアミンを用いる場合、そのポリビニルアミ
ンが数千から数百万の分子量まで自在に調製できるの
で、ポリチオ尿素もその広い範囲の分子量で合成でき
る。ポリチオ尿素が低分子量であれば水に溶解した場合
にその粘性が低いメリットがあり、溶解や希釈も容易で
ある。また、高分子量にすれば凝集力を持つことが期待
でき、それにより、重金属イオンを含む懸濁液に用いて
凝集沈殿と重金属の除去や固定を同時にできる利点もあ
る。この場合、公知の凝集剤、例えば、ポリビニルアミ
ン等を併用することも効果的である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(1)で表される繰り返し単位を1
    〜100モル%含有することを特徴とするチオ尿素基を
    有する高分子。 【化1】
  2. 【請求項2】 下記(1)で表される繰り返し単位を1
    〜100モル%、下記(2)で表されるくり返し単位を
    0〜95モル%、及び下記(3)で表されるくり返し単
    位を0〜95モル%含有する高分子。 【化2】 【化3】 【化4】 (上式(2)において、Rは水素原子もしくは炭素数1
    〜4のアルキル基を表す。)
  3. 【請求項3】 水溶性であって、1規定の食塩水中0.
    1g/dlの溶液として、25℃で測定した還元粘度が
    0.1〜10dl/gであることを特徴とする請求項1
    又は2のチオ尿素基を有する高分子。
  4. 【請求項4】 ポリビニルアミンとチオシアン酸アンモ
    ンとを反応させることを特徴とする請求項1ないし3の
    いずれかのチオ尿素基を有する高分子の製造方法。
  5. 【請求項5】 ポリビニルアミンが、一般式CH2 =C
    HNHCOR(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜
    4のアルキル基を表す。)で示されるN−ビニルカルボ
    ン酸アミドを含むモノマーを重合し、得られた重合体を
    加水分解することにより得られることを特徴とする請求
    項4のチオ尿素基を有する高分子の製造方法。
  6. 【請求項6】 N−ビニルカルボン酸アミドがN−ビニ
    ルホルムアミド又はN−ビニルアセトアミドであること
    を特徴とする請求項5のチオ尿素基を有する高分子の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし3のいずれかのチオ尿素
    基を有する高分子からなる重金属捕捉剤。
  8. 【請求項8】 重金属が水銀であることを特徴とする請
    求項7の重金属捕捉剤。
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