JP4631137B2 - 末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体およびその製造方法 - Google Patents

末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、末端に官能基であるメルカプト基を有し、機能性重合体として新しい用途が期待できるモノアリルアミン類重合体やジアリルアミン類重合体、およびこのものを効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
末端にメルカプト基を有する重合体は、該メルカプト基の反応性の点から、機能性重合体として様々な用途が期待できる。
従来、末端にメルカプト基を有する重合体の製造方法としては、例えばチオ酢酸などのチオ酸の存在下に、ラジカル重合可能なモノマーをラジカル重合したのち、得られた重合体を加水分解処理する方法が知られている(特公平2−7325号公報)。この方法は、チオ酸が連鎖移動剤として作用し、重合体の末端にチオ酸エステルの形で導入され、これをアルカリまたは酸で加水分解処理して、末端にメルカプト基を有する重合体を得る方法である。
【0003】
この方法においては、ラシカル重合可能なモノマーとして、α−オレフィン類、(メタ)アクリル酸またはそのエステル類、(メタ)アクリルアミドまたはそのN置換体類、スチレン類、さらには(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、フッ素化モノマーが例示されているが、アリルアミン類については、なんら言及されていない。
アリルアミン類は、一般に、破壊的連鎖移動によって重合しにくいことが知られており、したがって、これまで、末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体は見出されていないのが実状である。
【0004】
ところで、本出願人は、アリルアミン類の重合について鋭意研究を重ね、特定のラジカル開始剤を用い、特定の条件でアリルアミン類を重合させることにより、高重合度のアリルアミン類重合体が高収率で得られることを見出し、例えば、先に、モノアリルアミンの無機酸塩を、極性溶媒中において、分子内にアゾ基とカチオン性の窒素原子をもつ基とを含むラジカル開始剤の存在下で重合させるモノアリルアミン重合体の製造方法(特開昭58−201811号公報)を出願した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、末端に官能基であるメルカプト基を有し、機能性重合体として新しい用途が期待できるアリルアミン類重合体、およびこのものを効率よく製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、極性溶媒中において、水溶性アゾ系触媒とチオ酸の存在下に、モノアリルアミン類の付加塩および/またはジアリルアミン類の付加塩または第四級アンモニウム塩を重合させたのち、加水分解処理することにより、末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体が効率よく得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、一般式(I)
【0008】
【化5】
Figure 0004631137
【0009】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表される構成単位およびその付加塩、並びに一般式(II−a)および(II−b)
【0010】
【化6】
Figure 0004631137
【0011】
(式中、R3は水素原子または水酸基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表される構成単位、その付加塩および第四級アンモニウム塩の中から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ末端にメルカプト基を有することを特徴とするアリルアミン類重合体を提供するものである。
【0012】
上記の末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体は、本発明に従えば、極性溶媒中において、水溶性アゾ系触媒およびチオ酸の存在下に、一般式(III)
【0013】
【化7】
Figure 0004631137
【0014】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表されるモノアリルアミン類の付加塩、および/または一般式(IV)
【0015】
【化8】
Figure 0004631137
【0016】
(式中、R3は水素原子または水酸基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表されるジアリルアミン類の付加塩または第四級アンモニウム塩を重合させたのち、加水分解処理することにより、製造することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体は、構成単位として、一般式(I)
【0018】
【化9】
Figure 0004631137
【0019】
で表される単位およびその付加塩、並びに一般式(II−a)および(II−b)
【0020】
【化10】
Figure 0004631137
【0021】
で表される単位、その付加塩および第四級アンモニウム塩の中から選ばれる少なくとも1種を含むものである。すなわち、前記各単位を1種のみ有する単独重合体であってもよいし、前記各単位を2種以上含む共重合体であってもよく、また、この共重合体はランダム、ブロックのいずれであってもよい。
【0022】
前記一般式(I)で表される構成単位において、R1およびR2は、それぞれ水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。該炭素数1〜10のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基を、さらにはシクロヘキシル基を好ましく挙げることができる。
また、この一般式(I)で表される構成単位の付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
【0023】
一方、前記一般式(II−a)、(II−b)で表される構成単位において、R3は水素原子または水酸基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示す。この水酸基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、特に水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。
【0024】
また、この一般式(II−a)、(II−b)で表される構成単位の付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩などが挙げられ、第四級アンモニウム塩としては、例えばN,N−ジメチルアリルアンモニウムクロリド、N,N−ジエチルアリルアンモニウムクロリド、N,N−ジプロピルアリルアンモニアムクロリド、N,N−ジブチルアリルアンモニウムクロリド、N,N−メチルベンジルアリルアンモニウムクロリド、N,N−エチルベンジルアリルアンモニウムクロリド、およびこれらのクロリド類に対応するブロミド類、ヨージド類、メチルサルフェート類などを挙げることができる。
【0025】
この末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体においては、分子量は、通常500〜20000、好ましくは1000〜10000の範囲である。したがって、SH当量値は、通常0.05〜2meq/gの範囲、好ましくは0.1〜1meq/gの範囲となる。
前記の構成単位を有し、かつ末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体は、以下に示す本発明の方法により、効率よく製造することができる。
【0026】
本発明の方法においては、まず極性溶媒中において、水溶性アゾ系触媒とチオ酸の存在下に、モノアリルアミン類の付加塩および/またはジアリルアミン類の付加塩または第四級アンモニウム塩を重合させる。
【0027】
上記極性溶媒としては、特に水系溶媒が好ましい。この水系溶媒としては、例えば水、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸)、有機酸水溶液、無機酸塩(塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)水溶液等が挙げられる。
【0028】
また、水溶性アゾ系触媒としては、分子中にアゾ基とカチオン性窒素をもつ基とを有するラジカル重合開始剤が好ましく、このようなラジカル重合開始剤としては、従来公知の化合物の中から、任意に選択して用いることができ、中でも一般式(V)
4−N=N−R5 …(V)
[式中のR4とR5の少なくとも一方がアミノヒドロカルビル基、アミジニルヒドロカルビル基およびシアノアミノヒドロカルビル基の中から選ばれるカチオン化しうる窒素原子を含む基で、残りはヒドロカルビル基またはシアノヒドロカルビル基であり、R4とR5は、これらが一緒になって一般式(VI)
【0029】
【化11】
Figure 0004631137
【0030】
(Rはアルキレン基、Xはカチオン化しうる窒素原子を含む基であり、共有結合(a)および(b)はそれぞれアゾ基の窒素原子と結合してアゾ基を含む環を形成している。)
で示される単一のアルキレン基を形成してもよい。]
で表されるアゾ化合物の無機酸塩または有機酸塩が、合成の容易さなどの点で実用に供される。
【0031】
この一般式(V)におけるR4およびR5の中で、アミノヒドロカルビル基としては、例えばアミノアルキル基、アミノアリール基、アミノアルカリール基、アミノアラルキル基などが挙げられ、アミジニルヒドロカルビル基としては、例えばアミジニルアルキル基、アミジニルアリール基、アミジニルアルカリール基、アミジニルアラルキル基などが挙げられ、シアノアミノヒドロカルビル基としては、例えばシアノアミノアルキル基、シアノアミノアリール基、シアノアミノアルカリール基、シアノアミノアラルキル基などが挙げられる。また、ヒドロカルビル基としては、例えばアルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基などが挙げられ、シアノヒドロカルビル基としては、例えばシアノアルキル基、シアノアリール基、シアノアルカリール基、シアノアラルキル基などが挙げられる。
【0032】
一方、一般式(VI)のRで示されるアルキレン基としては、例えば直鎖状アルキレン基、アルキルアルキレン基、アリールアルキレン基などが挙げられる。
【0033】
上記一般式(V)で表されるラジカル重合開始剤の例としては、2,2′−ジアミジニル−2,2′−アゾプロパン・塩酸塩、2,2′−ジアミジニル−2,2′−アゾブタン・塩酸塩、2,2′−ジアミジニル−2,2′−アゾペンタン・塩酸塩、2,2′−ビス(N−フェニルアミジニル)−2,2′−アゾプロパン・塩酸塩、2,2′−ビス(N−フェニルアミジニル)−2,2′−アゾブタン・塩酸塩、2,2′−ビス(N,N−ジメチルアミジニル)−2,2′−アゾプロパン・塩酸塩、2,2′−ビス(N,N−ジメチルアミジニル)−2,2′−アゾブタン・塩酸塩、2,2′−ビス(N,N−ジエチルアミジニル)−2,2′−アゾプロパン・塩酸塩、2,2′−ビス(N,N−ジエチルアミジニル)−2,2′−アゾブタン・塩酸塩、2,2′−ビス(N−ジn−ブチルアミジニル)−2,2′−アゾプロパン・塩酸塩、2,2′−ビス(N−ジn−ブチルアミジニル)−2,2′−アゾブタン・塩酸塩、3,3′−ビス(N,N−ジn−ブチルアミジニル)−3,3′−アゾペンタン・塩酸塩、アゾ−ビス−N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン・塩酸塩;2,2′−アゾ−ビス(2−メチル−4−ジエチルアミノ)−ブチロニトリル・塩酸塩、2,2′−アゾ−ビス(2−メチル−4−ジメチルアミノ)−ブチロニトリル・塩酸塩、2,2′−アゾ−ビス(2−メチル−4−ジエチルアミノ)−ブチロニトリル・塩酸塩、2,2′−アゾ−ビス(2−メチル−4−ジエチルアミノ)−ブチロニトリルまたは2,2′−アゾ−ビス(2−メチル−4−ジメチルアミノ)−ブチロニトリルを、ジメチル硫酸またはp−トルエンスルホン酸メチルなどで四級化して得た第4アンモニウム塩型アゾニトリル;3,5−ジアミジニル−1,2−ジアゾ−1−シクロペンテン・塩酸塩、3−メチル−3,4−ジアミジニル−1,2−ジアゾ−1−シクロペンテン・塩酸塩、3−エチル−3,5−ジアミジニル−1,2−ジアゾ−1−シクロペンテン・塩酸塩、3,5−ジメチル−3,5−ジアミジニル−1,2−ジアゾ−1−シクロペンテン・塩酸塩、3,6−ジアミジニル−1,2−ジアゾ−1−シクロヘキセン・塩酸塩、3−フェニル−3,5−ジアミジニル−1,2−ジアゾ−1−シクロペンテン・塩酸塩、3,5−ジフェニル−3,5−ジアミジニル−1,2−ジアゾ−1−シクロペンテン・塩酸塩などが挙げられる。
【0034】
また、水溶性アゾ系触媒として、一般式(VII)
【0035】
【化12】
Figure 0004631137
【0036】
[式中、R6〜R9は、それぞれ独立に低級アルキル基、R10およびR11は、それぞれ独立に、一般式(VIII)
【0037】
【化13】
Figure 0004631137
【0038】
(ただし、Zは炭素数1〜12のアルキレン基)
で示されるヒドロキシアルキルアミド基またはヒドロキシアルキルエステル基を示す。]
で表される化合物も用いることができる。
【0039】
前記一般式(VII)において、R6〜R9で示される低級アルキル基としては、炭素数1〜10の飽和または不飽和のアルキル基が挙げられ、このアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、1つ以上の炭素原子がO、SまたはNによって置換されていてもよい。例えば、R6〜R9は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基などであってもよい。
【0040】
この一般式(VII)で表される化合物の中で、R6〜R9がいずれもメチル基であって、R10およびR11として、一般式(VIII)におけるZがエチレン基であるものが好ましく、特に2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が好適である。
【0041】
これらの水溶性アゾ系触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組みわせて用いてもよく、また、その使用量は、モノマーに対して1〜20モル%が好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。
【0042】
一方、チオ酸は、−COSH基を有する化合物を指し、このようなものとしては、例えばチオ酢酸、チオプロピオン酸、チオ酪酸、チオ吉草酸などを挙げることができるが、これらの中で、チオ酢酸が、重合体末端のチオ酸エステルの加水分解性が良好であることなどから、特に好適である。
【0043】
このチオ酸は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その使用量は、用いる水溶性アゾ系触媒に対して、0.5〜3.0当量が好ましく、0.8〜2.5当量が特に好適である。
【0044】
本発明の方法においては、原料モノマーとして、一般式(III)
【0045】
【化14】
Figure 0004631137
【0046】
(式中、R1およびR2は前記と同じである。)
で表されるモノアリルアミン類の付加塩、および/または一般式(IV)
【0047】
【化15】
Figure 0004631137
【0048】
(式中、R3は前記と同じである。)
で表されるジアリルアミン類の付加塩または第四級アンモニウム塩が用いられる。
【0049】
前記一般式(III)で表されるモノアリルアミン類の付加塩の例としては、モノアリルアミン、N−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N−プロピルアリルアミン、N−シクロヘキシルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、N,N−ジプロピルアリルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアリルアミン、N,N−(メチル)シクロヘキシルアリルアミン、N,N−(エチル)シクロヘキシルアリルアミンなどの塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
【0050】
一方、前記一般式(IV)で表されるジアリルアミン類の付加塩の例としては、ジアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、N−エチルジアリルアミン、N−プロピルジアリルアミン、N−ブチルジアリルアミン、N−2−ヒドロキシエチルジアリルアミン、N−2−ヒドロキシプロピルジアリルアミン、N−3−ヒドロキシプロピルジアリルアミンなどの塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。また、一般式(IV)で表されるジアリルアミン類の第四級アンモニウム塩の例としては、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、臭化ジアリルジメチルアンモニウム、沃化ジアリルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ジアリルジメチルアンモニウム、塩化ジアリルジエチルアンモニウム、臭化ジアリルジエチルアンモニウム、沃化ジアリルジエチルアンモニウム、メチル硫酸ジアリルジエチルアンモニウム、塩化ジアリルメチルベンジルアンモニウム、臭化ジアリルメチルベンジルアンモニウム、沃化ジアリルメチルベンジルアンモニウム、メチル硫酸ジアリルメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアリルエチルベンジルアンモニウム、臭化ジアリルエチルベンジルアンモニウム、沃化ジアリルエチルベンジルアンモニウム、メチル硫酸ジアリルエチルベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
【0051】
本発明においては、前記原料モノマーの中から1種を選び単独重合させてもよいし、2種以上を選び共重合させてもよい。
重合温度は特に制限はないが、30〜90℃の範囲が好ましく、特に40〜80℃の範囲が好ましい。
【0052】
重合反応終了後、重合体末端のチオ酸エステル基を加水分解してメルカプト基を導入するが、本発明においては、この加水分解処理には、塩酸などの酸を、使用したチオ酸に対して、実質上化学量論的量添加して、20〜60℃程度の温度で行うことが好ましい。
【0053】
このようにして生成した末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体は、付加塩および/または第四級アンモニウム塩を形成しているので、公知の方法により、付加塩および/または第四級アンモニウム塩の形で取り出し、精製してもよいし、所望により、アルカリで処理したのち、遊離の形で取り出し、精製してもよい。さらに、このようにして精製された遊離の形の重合体に、所望の酸を付加させ、完全付加塩または部分付加塩にすることができる。
【0054】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0055】
なお、重合体の重量平均分子量の測定、並びに片末端メルカプト(SH)基の定量および分子量の算出は、下記の方法に従って行った。
【0056】
(1)重合体の重量平均分子量の測定
重合体の重量平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC法)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI SE−61示差屈折率検出器、カラムはアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS−220HQ(排除限界分子量3,000)とGS−620HQ(排除限界分子量200万)とをダブルに接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調整し、20μlを用いた。溶離液には、0.4mol/lの塩化ナトリウム水溶液を使用した。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準サンプルとして分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000などのポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に重合体のMwを求めた。
【0057】
(2)片末端メルカプト(SH)基の定量および分子量の算出
片末端メルカプト基の定量はヨウ素の標準液の一定過量を試料に加えた後、残余のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムの標準液で逆滴定するヨウ素酸化滴定で求め、その値から分子量を算出した。
すなわち、精製した重合体を50mlメスフラスコに約0.1g秤量し、蒸留水40mlを加え、撹拌・溶解し、この重合体溶液に0.1N−ヨウ素溶液を1mlメスピペットで正確に約0.9ml入れた。そしてこの溶液に標線まで蒸留水を加え、50℃で2時間、撹拌した。この試料に澱粉溶液数滴加え、0.01N−チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、青色が、ちょうど消えるところで終了した。
また、SH当量値(eq/g)から分子量を算出した。
【0058】
実施例1〜6
共栓付き30ml試験管中に濃度20重量%のジアリルアミン類水溶液20mmolとチオ酢酸(対モノマー10〜20mol%)を入れ、次いで、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩(ABAP)(対モノマー5〜10mol%)を加え、60℃で72時間静置重合を行なった。重合終了後、GPC法により重合収率及びMwを求めた。その結果を表1に示した。
【0059】
重合終了後、チオ酢酸と等モルの35重量%塩酸を加え、40℃で24時間かけて加水分解を行なった。
加水分解後の重合体は濃縮し、イソプロパノール(IPA)で再沈して1G5ガラスフィルターでろ別し、40℃で72時間以上真空乾燥を行なった。
再沈で得られた試料はヨウ素酸化滴定により末端基定量を行ない、分子量を求めた。その結果を表1に示した。
【0060】
【表1】
Figure 0004631137
【0061】
(注)
DAA・HCl:ジアリルアミン塩酸塩
DAMA・HCl:N−メチルジアリルアミン塩酸塩
【0062】
実施例7
濃度20重量%のDAA・HCl水溶液801.73gにチオ酢酸4.57g(対モノマー5mol%)を加えた。その溶液の内温が60℃に達したところで約50rpmの撹拌速度下で開始剤としてABAP16.27g(対モノマー5mol%)を一括で添加し、重合を開始した。72時間後重合を終了し、GPC法により重合収率及びMwを求めた。その結果、重合収率は96%でMwは5,000であった。
【0063】
重合終了後、重合溶液にチオ酢酸と等モルの35重量%塩酸を加え、40℃で24時間かけて加水分解を行なった。
加水分解後、溶液の一部を取り出して濃縮し、IPAで再沈して1G5ガラスフィルターでろ別し、40℃で72時間以上真空乾燥を行なった。
再沈で得られた試料はヨウ素酸化滴定により末端基定量を行ない、その結果、SH当量値は2.26×10-1meq/gであり、分子量は4,400であった。
【0064】
実施例8
濃度15重量%のDAMA・HCl水溶液836.63gにチオ酢酸3.23g(対モノマー5mol%)を加えた。その溶液の内温が60℃に達したところで約50rpmの撹拌速度下で開始剤としてABAP11.53g(対モノマー5mol%)を一括で添加し、重合を開始した。72時間後重合を終了し、GPC法により重合収率及びMwを求めた。その結果、重合収率は84%でMwは6,000であった。
実施例7と同様に加水分解を行ない、ヨウ素酸化滴定によりSH当量値は1.73×10-1meq/gであり、分子量は5,800であった。
【0065】
実施例9
濃度15重量%のジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)水溶液808.38gにチオ酢酸2.85g(対モノマー5mol%)を加えた。その溶液の内温が60℃に達したところで約50rpmの撹拌速度下で開始剤としてABAP10.17g(対モノマー5mol%)を一括で添加し、重合を開始した。72時間後重合を終了し、GPC法により重合収率及びMwを求めた結果、重合収率は92%でMwは6,100であった。
実施例7と同様に加水分解を行ない、滴定は困難であったがヨウ素酸化滴定によりSH当量値は1.39×10-1meq/gであり、分子量は7,200であった。
【0066】
実施例10
濃度60重量%のモノアリルアミン塩酸塩(MAA・HCl)水溶液389.82gにチオ酢酸9.51g(対モノマー5mol%)を加えた。その溶液の内温が60℃に達したところで約50rpmの撹拌速度下で開始剤としてABAP33.90g(対モノマー5mol%)を一括で添加し、重合を開始した。72時間後重合を終了し、GPC法により重合収率及びMwを求めた結果、重合収率は95%でMwは2,100であった。
実施例7と同様に加水分解を行ない、ヨウ素酸化滴定によりSH当量値は4.47×10-1meq/gであり、分子量は2,200であった。
【0067】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体(モノアリルアミン類やジアリルアミン類の単独重合体または共重合体)を、収率よく製造することができる。
このアリルアミン類重合体は、末端に官能基であるSH基を有するので、機能性重合体として新しい用途が期待できる。

Claims (5)

  1. 一般式(I)
    Figure 0004631137
    (式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
    で表される構成単位およびその付加塩、並びに一般式(II−a)および(II−b)
    Figure 0004631137
    (式中、R3は水素原子または水酸基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
    で表される構成単位、その付加塩および第四級アンモニウム塩の中から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ末端にメルカプト基を有することを特徴とするアリルアミン類重合体。
  2. SH当量値が0.05〜2meq/gである請求項1に記載のアリルアミン類重合体。
  3. 極性溶媒中において、水溶性アゾ系触媒およびチオ酸の存在下に、一般式(III)
    Figure 0004631137
    (式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
    で表されるモノアリルアミン類の付加塩、および/または一般式(IV)
    Figure 0004631137
    (式中、R3は水素原子または水酸基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
    で表されるジアリルアミン類の付加塩または第四級アンモニウム塩を重合させたのち、加水分解処理することを特徴とする、請求項1または2に記載のアリルアミン類重合体の製造方法。
  4. チオ酸がチオ酢酸である請求項3に記載の方法。
  5. 極性溶媒が水系溶媒である請求項3または4に記載の方法。
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