JP4380063B2 - 新規水溶性架橋性ポリマー - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は水溶性ポリマーおよびその製造法に関するものである。さらに詳しくは、ポリカチオン架橋剤と水溶性ビニルモノマーを重合して得られる水溶性ポリマーおよびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーは、紙力増強剤などの製紙用添加剤として用いられている。紙力増強剤として用いる(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーでは、その分子量が抄紙した紙の紙力に大きく影響し、一般的には紙力増強剤の分子量が大きいものほど紙力増強効果が高い。また製紙原料前処理剤として用いる(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーは、縮合系カチオンポリマーと比較して高分子量である。一方で、高分子量である(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを用いた製紙用添加剤は、パルプを凝集し紙の地合を崩ため、結果として抄紙した紙の紙力を低下させる。高分子量で凝集力の小さい紙力増強剤を得るための改良法として、架橋性モノマーを用いてポリマーを架橋する手法が知られている。二重結合を持つ水溶性の架橋性モノマーとして、例えばメチレンビスアクリルアミド、トリアリルアミンあるいはアリル化セルロースがあげられ、架橋型の水溶性ポリマーの製造に用いられている。
【0003】
しかしながら、メチレンビスアクリルアミドは二重結合間の距離が短く、立体障害により架橋が均一に行われないといった欠点があった。この欠点を改良するために、特開平10−218797では(メタ)アクリルアミド系水溶性モノマーとの共重合性比がよく、架橋が均一に行われる架橋剤が提案されているが、架橋剤の分子量が小さく二重結合間の距離は十分に長くはない。また、架橋剤の分子量が小さいと、製造する水溶性ポリマーの架橋度の制御が困難である。一方でトリアリルアミンやアリル化セルロースといったアリル化合物は、(メタ)アクリルアミド系モノマーと共重合する場合、反応性が低く(メタ)アクリルアミド系の水溶性ポリマーの重合反応には架橋剤として不向きであるといった問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するものである。すなわち、(メタ)アクリルアミド系モノマーとの共重合性比が良好で、しかもメチレンビスアクリルアミドと比較して架橋点間に長い連鎖を有する架橋剤を提供することにより、水溶性ビニルモノマーと共重合した場合、カチオン性成分を長い側鎖として有するグラフト共重合体ないしは長いカチオン構造単位を架橋点間に有するブロック共重合体からなる架橋型水溶性ポリマーを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、(A)下記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤、(B)(メタ)アクリルアミド、(D)下記一般式(5)で表されるα、β−不飽和カルボン酸ないしその塩類および/または(C)下記一般式(3)ないし(4)で表される水溶性カチオン性ビニルモノマーないしその塩類とを構成モノマー成分とするカチオン成分を架橋点間に含んだブロック共重合体を含有してなる架橋型水溶性ポリマーにより上記課題を解決できることを見出し本発明に到達した。
【化1】
一般式(1)
(R1、R2、R3、R4:水素、炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基又はAであり、同種でも異種でも良い、n:0〜70の整数、X1 −、X2 −は陰イオン)
ただしAは、
【化2】
一般式(2)
(R 5 、R 6 :水素、炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基又はAであり、同種でも異種でも良い、R 7 :水素又はメチル基、R 8 :炭素数2〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、X 3 − は陰イオン)
【化3】
一般式(3)
(R 9 、R 10 、R 11 、R 12 :水素、炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基又はAであり、同種でも異種でも良い、R 13 は水素またはメチル基、R 14 :炭素数2〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、n:0〜70の整数、X 4 − 、X 5 − は陰イオン、Eは水素、グリシジル基、ハロヒドリン構造である)
【化4】
一般式(4)
(R 15 、R 16 :水素、炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基又はA、R 18 :水素又はメチル基、R 17 :炭素数2〜4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基、n:0〜70の整数、Fは水素、メチル基、ベンジル基又はグリシジル基、X 6 − は陰イオンである。)
【化5】
一般式(5)
(R19、R20:水素又はカルボキシル基、ただし一方がカルボキシル基の場合他方は水素となる。R21:R19、R20が水素の時、水素、メチル基あるいは−CH2COO−M+、M+:水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオン)
【0006】
【発明実施の形態】
本発明の新規水溶性架橋性ポリマーは、前記化学式(1)で表されるポリカチオン架橋剤を必須の構成単位として含有する。初めにポリカチオン架橋剤について説明する。本発明の(A)成分は、(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミンまたは第2級アミンのうち、一種以上のアミン類と(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーとを反応させ、その反応物の末端の少なくとも2つがビニル基を有するポリカチオン架橋剤である。すなわち、R1〜R4、R6、R7は水素または炭素数1〜3のアルキル基のなかから選ばれた同種または異種のアルキル基が結合したエピハロヒドリン残基を示す。このエピハロヒドリン残基は、一種類のアミンを使用すれば、同種の繰り返し単位が重合したものとなる、一方、二種以上のアミンを使用すれば異なった繰り返し単位が重合したものとなる。
【0007】
本発明の(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤を構成する(E)エピハロヒドリンは、特に制限はなく、例えばエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどを挙げることができる。これらのエピハロヒドリンは1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらのエピハロヒドリンの中で、好ましくは、エピクロロヒドリンである。
【0008】
本発明の(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤を構成する(F)アンモニア、第1級アミン及び第2級アミンは、それぞれを単独で用いることができ、アンモニアと第1級アミン、アンモニアと第2級アミン、第1級アミンと第2級アミンの2成分を組み合わせて用いることもでき、あるいは、アンモニアと第1級アミンと第2級アミンの3成分を組み合わせて用いることもできる。前記第1級アミンは、特に制限はなく、例えばメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミンなどを挙げることができる。これらの第1級アミンは1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの第1級アミンの中で、好ましくは、メチルアミン及びエチルアミンである。前記第2級アミンは、特に制限はなく、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、ジベンジルアミンなどを挙げることができる。これらの第2級アミンは1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの第2級アミンの中で、好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びメチルエチルアミンである。
【0009】
本発明の(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤を構成する(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーは、特に制限はなく、例えばN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。これらの第3級アミノ基含有アクリルモノマーは1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの第3級アミノ基含有アクリルモノマーのうち、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドは、分子中にエステル結合をもつ第3級アミノ基含有アクリルモノマーよりも耐アルカリ加水分解性があるので、本発明に用いる第3級アミノ基含有アクリルモノマーとして好ましい。
【0010】
本発明の(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤は、その末端の少なくとも2つがビニル基を有するものである。それ以外の末端の構造については特に制限はなくアミノ基、第2級アミン構造、第3級アミン構造、ハロヒドリン構造、グリシジル基、ヒドロキシプロピル基などとすることができる。本発明の(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤は、(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミン、および(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーを反応させて製造することができる。本発明の水溶性ポリカチオン架橋剤の製造方法に特に制限はなく、例えば(E)エピハロヒドリンを反応器に仕込み、(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンを滴下し、(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンを反応した後、(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーを加えて反応することができる。あるいは(E)エピハロヒドリンを反応器に仕込み、(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンと(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーの混合物を滴下して反応することもできる。さらに、例えば、(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンと(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーを同時に反応器に仕込み、(E)エピハロヒドリンを滴下して反応することもできる。
【0011】
本発明の(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤は、(E)エピハロヒドリンを反応器に仕込み、(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンを滴下し、(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンを反応した後、(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーを加えて反応する方法が好ましい。(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンと(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーを混合するとミカエル付加反応により反応し不都合である。また、(E)エピハロヒドリンを先に反応器に仕込むことで、(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンを反応して得られるカチオン樹脂の末端が、ハロヒドリン構造になりやすくなり、(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーを反応するのに好都合である。
【0012】
本発明の(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤における、(E)エピハロヒドリンに対する(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンのモル比は、所望する架橋剤の性状、構造、分子量などによって適宜選択されるが一般的には0.25〜1.20の範囲である。(E)エピハロヒドリンに対する(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンのモル比が0.25以下の場合、(E)エピハロヒドリンが残存する。(E)エピハロヒドリンに対する(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンのモル比が1.20以上の場合、(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンの反応により得られるカチオン樹脂の末端にハロヒドリン構造が存在せず、(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーと反応しない。本発明の(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤における、(E)エピハロヒドリンに対する(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーのモル比は特に制限はないが、好ましくは0.24以下の範囲である。(E)エピハロヒドリンに対する(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーのモル比が0.24より大きいとポリカチオン架橋剤中に(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーが残存する。
【0013】
本発明の(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤に関して、(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンは容易に反応せしめ、カチオン性樹脂を得ることができる。またエピハロヒドリンに対してモル比で1.0以下の範囲の、水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を加えて反応を行うこともできる。反応を行う温度の範囲は、所望する架橋剤の性状、構造、分子量などによって適宜選択されるが一般的には10〜90℃、好ましくは20〜60℃の範囲である。反応を行う温度が20℃以下では、反応速度が遅く実用的でないし、60℃以上では(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンの反応により得られるカチオン樹脂の末端のハロヒドリン構造が加水分解され(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーと反応せしめることができなくなる。反応時間は反応温度などにより左右されるが通常は24時間以内で充分である。
【0014】
(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンを反応せしめて得られるカチオン性樹脂は、その末端にハロヒドリン構造を2つ以上持つものを含んでおり、これは(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーと容易に反応せしめることができる。反応を行う温度の範囲は一般的に10〜90℃、好ましくは20〜60℃の範囲である。反応を行う温度が20℃以下では、反応速度が遅く実用的でないし、60℃以上では(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンの反応により得られるカチオン樹脂の末端のハロヒドリン構造が加水分解され、(G)第3級アミノ基含有アクリルモノマーと反応せしめることができなくなる。反応時間は反応温度などにより左右されるが通常は24時間以内で充分である。
【0015】
本発明の(B)成分であるアクリルアミドまたはメタアクリルアミドは、単独でも併用使用でも良いが、原料コストの面からすると好ましくはアクリルアミドである。
【0016】
本発明の(C)前記一般式(2)ないし(3)で表される水溶性カチオン性ビニルモノマーおよび/またはその塩類としては、例えばN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニルモノマーまたは、塩酸、硫酸あるいは酢酸等の無機または有機酸の塩類、あるいは、第三級アミノ基含有ビニルモノマーとメチルクロライド、ベンジルクロライドもしくはエピクロロヒドリン等の四級化剤との反応によって得られる第四級アンモニウム塩、さらには(A)ポリカチオン架橋剤の副生成物であるマクロモノマー等があげられる。これらの(C)水溶性カチオン性ビニルモノマーおよび/またはその塩類は、その一種または二種以上を用いることができる。これらの(C)水溶性カチオンビニルモノマーのうち、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドは、分子中にエステル結合をもつ第3級アミノ基含有アクリルモノマーよりも耐アルカリ加水分解性があるので、本発明に用いる水溶性カチオンビニルモノマーとして好ましい。また、前記一般式(4)で表されるマクロモノマーは、(A)ポリカチオン架橋剤製造時に(E)エピハロヒドリンと(F)アンモニア、第1級アミン、または第2級アミンの反応比率を変え、その末端のハロヒドリン構造の量を調節することでその生成量を操作することができ、本発明における水溶性ポリマー中の側鎖のカチオン量を自由に調節することができる。
【0017】
本発明の(D)前記一般式(5)で表されるα、β−不飽和カルボン酸および/またはその塩類は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸あるはイタコン酸およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類、またはアンモニウム塩等があげられ、その一種または二種以上を用いることができる。
【0018】
本発明の請求項1の水溶性ポリマーは、(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤と(B)(メタ)アクリルアミド、または(A)一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤と(C)前記一般式(3)および(4)で表される水溶性カチオン性ビニルモノマーないしその塩類、あるいは(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤、(B)(メタ)アクリルアミド、と(C)前記一般式(3)および(4)で表される水溶性カチオン性ビニルモノマーを構成モノマー成分とする共重合体を含有してなる水溶性ポリマーであり、その構造は架橋点間に同一の構造単位を持つブロック共重合体である。この架橋点間の構造単位中にカチオン成分を含むことでカチオン成分がポリマーの内部に閉じこめられ、製紙用添加剤として用いた場合、パルプの凝集を妨げる働きをすると考えられる。
【0019】
発明の請求項1の水溶性ポリマー中に含まれる(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤中の二重結合のモル比は、水溶性ポリマーの使用目的により適宜選択されるが0.01〜20モル%の範囲である。0.01モル%より少ないと架橋剤としての効果が現れず、20モル%より多いと重合時の粘度制御が困難になる。この水溶性ポリマー中の(B)(メタ)アクリルアミドと(C)前記一般式(3)および(4)で表される水溶性カチオン性ビニルモノマーないしその塩類のモル比は(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤以外の部分であり、その使用目的により適宜選択されるが0〜99.99モル%の範囲である。
【0020】
本発明の請求項2の水溶性ポリマーは、(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤、(B)(メタ)アクリルアミドと(D)前記一般式(5)で表されるα、β−不飽和カルボン酸および/またはその塩類、または(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤、(C)前記一般式(3)および(4)で表される水溶性カチオン性ビニルモノマーないしその塩類と(D)前記一般式(5)で表されるα、β−不飽和カルボン酸および/またはその塩類、あるいは(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤、(B)(メタ)アクリルアミド、(C)前記一般式(3)および(4)で表される水溶性カチオンビニルモノマーないしその塩類と(D)前記一般式(4)で表されるα、β−不飽和カルボン酸および/またはその塩類をそれぞれ構成モノマー成分とする共重合体を含有してなる水溶性ポリマーである。この水溶性ポリマー中の(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤中の二重結合のモル比は、水溶性ポリマーの使用目的により適宜選択されるが0.01〜20モル%の範囲である。0.01モル%より少ないと架橋剤としての効果が現れず、20モル%より多いと重合後の粘度制御が困難になる。この水溶性ポリマー中の(D)前記一般式(5)で表されるα、β−不飽和カルボン酸および/またはその塩類のモル比は、水溶性ポリマーの使用目的により適宜選択されるが1〜20モル%の範囲である。この水溶性ポリマー中の(B)(メタ)アクリルアミドと(C)前記一般式(3)および(4)で表される水溶性カチオンビニルモノマーないしその塩類のモル比は(A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤と(D)前記一般式(5)で表されるα、β−不飽和カルボン酸および/またはその塩類以外の部分であり、その使用目的により適宜選択されるが0〜98.99モル%の範囲である
【0021】
本発明の水溶性ポリマーは、一般的なラジカル重合にて重合することができる。その方法については特に制限はなく、塊状重合、水溶液重合、沈澱重合、分散重合、逆相乳化重合等で得ることができる。本発明の水溶性ポリマーを重合する場合、目的とするポリマーの分子量、重合発熱、反応容器の形状を考慮してモノマーの濃度、反応方法は適宜選択され、モノマー濃度5〜30%の範囲で水溶液重合を行う方法、モノマー濃度20〜70%の範囲でモノマーあるいはポリマーを溶解しない溶媒中で分散重合、もしくは逆相乳化重合を行う方法が例示される。
【0022】
本発明の水溶性ポリマーを重合する場合、ラジカル重合開始剤としては一般的な水溶性ポリマーの重合に用いられるラジカル重合開始剤のいずれも用いることができる。例えば2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩あるいは酢酸塩等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム等の過硫酸化合物と亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を用いたレドックス開始剤等があげられる。重合開始剤の濃度は、通常アゾ化合物ではモノマーの重量に対して0.001〜1重量%の範囲、レドックス開始剤の過硫酸化合物と亜硫酸水素ナトリウムはどちらも0.001〜1重量%の範囲である。
【0023】
重合反応は、不活性ガス雰囲気下で反応温度15〜100℃にて行われ、好ましくは20〜90℃の範囲である。反応温度が20℃以下では重合速度が遅く非効率的であるし、90℃以上では反応速度が速く反応熱の制御が困難である。
以上のようにして得られる本発明の水溶性ポリマーは、側鎖に同一のカチオン性単位構造を持つグラフト共重合体、かつ架橋点間に同一のカチオン性構造を持つブロック共重合体の構造からなる架橋型ポリマーである。その分子量は一般的に10,000〜15,000,000の範囲のものである。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
(ポリカチオン架橋剤合成例)
温度計、攪拌機、滴下漏斗を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、エピクロロヒドリン146.6gを仕込み、ジメチルアミンの50重量%水溶液123.8gを40〜45℃で2時間かけて滴下し、滴下終了後45℃で1時間反応した。コロイド滴定を行った結果、このもののジメチルアミンの反応率は100.0%だった。またアミンの中和滴定を行った結果、第3級アミンは0.43%だった。反応物をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、残存するエピクロロヒドリンの量は0%だった。その後、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド21.0g添加して25℃で15時間反応し、36.5gのイオン交換水を加えて、70.0重量%濃度の淡黄色透明の水溶性ポリカチオン架橋剤327.9gを得た。アミンの中和滴定を行った結果、第3級アミンは8.5%であり、分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリアクリルアミド換算の重量平均分子量は、1,460であった。また、カチオン当量値は、6.52meq/gであった。(試料−PC)
【0026】
【実施例1】
温度計と攪拌機を備えた3つ口のセパラブルフラスコに、上記ポリカチオン架橋剤を50重量%濃度に希釈した水溶液17.8g、アクリルアミドの50重量%水溶液95.0gとアクリル酸の60重量%水溶液6.0gを仕込み、アンモニア水と精製水を添加しpH3.5に調製した総量270gのモノマー濃度22.2重量%濃度の水溶液を得た。この水溶液を窒素雰囲気下でペルオキソ二硫酸アンモニウムの10重量%水溶液1.5gと亜硫酸水素ナトリウムの10重量%水溶液4.8gを添加し、室温25℃の部屋に12時間静置し重合を行った。重合終了後、精製水23.7gを添加し、20重量%濃度の水溶液とした。評価結果を第1表に示す。(試料−1)
【0027】
【実施例2】
温度計と攪拌機を備えた3つ口のセパラブルフラスコに、合成例1と同様な方法で合成したポリカチオン架橋剤を50重量%濃度に希釈した水溶液16.8g、アクリルアミドの50重量%水溶液84.0g、アクリル酸の60重量%水溶液5.7gとジメチルアミノエチルメタクリレート6.2gを仕込み、塩酸と精製水を添加しpH3.5、総量270gに調製したモノマー濃度22.2重量%の水溶液を得た。この水溶液を窒素雰囲気下でペルオキソ二硫酸アンモニウムの10重量%水溶液1.5gと亜硫酸水素ナトリウムの10重量%水溶液4.5gを添加し、室温25℃の部屋に12時間静置し重合を行った。重合終了後、精製水24.0gを添加し20重量%濃度の水溶液とした。評価結果を第1表に示す。(試料−2)
【0028】
【実施例3】
温度計と攪拌機を備えた3つ口のセパラブルフラスコに、合成例1と同様な方法で合成したポリカチオン架橋剤を50重量%濃度に希釈した水溶液0.96g、メタクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの80重量%水溶液30.0g、メタリルスルホン酸ナトリウムの10重量%水溶液0.48gと精製水を添加し、総量120gに調製したモノマー濃度20.4重量%の水溶液を得た。この水溶液を、窒素雰囲気下で2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライドの10重量%水溶液0.60gを添加し、60℃の恒温槽中で4時間静置し重合を行った。重合終了後、精製水1.8gを添加し20重量%濃度の水溶液とした。評価結果を第1表に示す。(試料−3)
【0029】
【実施例4】
温度計と攪拌機を備えた3つ口のセパラブルフラスコに、合成例1と同様な方法で合成したポリカチオン架橋剤を10重量%濃度に希釈した水溶液4.8g、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド24.0g、メタリルスルホン酸ナトリウムの1重量%水溶液5.28gと精製水を添加し、総量120gに調製したモノマー濃度20.4重量%の水溶液を得た。この水溶液を、窒素雰囲気下で2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライドの10重量%水溶液0.60gを添加し、60℃の恒温槽中で4時間静置し重合を行った。重合終了後、精製水1.8gを添加し20重量%濃度の水溶液とした。評価結果を第1表に示す。(試料−4)
【0030】
【実施例5】
温度計と攪拌機を備えた3つ口のセパラブルフラスコに、合成例1と同様な方法で合成したポリカチオン架橋剤を10重量%濃度に希釈した水溶液6.6g、アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの80重量%水溶液30.0g、メタリルスルホン酸ナトリウムの1重量%水溶液0.72gと精製水を添加し、総量120gに調製したモノマー濃度20.6重量%の水溶液を得た。この水溶液を、窒素雰囲気下で2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライドの10重量%水溶液0.60gを添加し、60℃の恒温槽中で4時間静置し重合を行った。重合終了後、精製水2.7gを添加し20重量%濃度の水溶液とした。評価結果を第1表に示す。(試料−5)
【0031】
【比較例1】
温度計と攪拌機を備えた3つ口のセパラブルフラスコに、アクリルアミドの50重量%水溶液96.2g、アクリル酸の60重量%水溶液5.6gとジメチルアミノエチルメタクリレート8.6gを仕込み、塩酸と精製水を添加しpH3.5、総量270gに調製したモノマー濃度22.2重量%の水溶液を得た。この水溶液を窒素雰囲気下でペルオキソ二硫酸アンモニウムの10重量%水溶液1.35gと亜硫酸水素ナトリウムの10重量%水溶液1.35gを添加し、室温25℃の部屋に12時間静置し重合を行った。重合終了後、精製水27.0gを添加し20重量%濃度の水溶液とした。評価結果を表1に示す。(試料−A)
【0032】
【比較例2】
温度計と攪拌機を備えた3つ口のセパラブルフラスコに、アクリルアミドの50重量%水溶液96.2g、アクリル酸の60重量%水溶液5.6g、ジメチルアミノエチルメタクリレート8.6g、メチレンビスアクリルアミドの1重量%水溶液3.0gとメタリルスルフォン酸ナトリウムの10重量%水溶液1.8gを仕込み、塩酸と精製水を添加しpH3.5、総量270gに調製したモノマー濃度22.2重量%の水溶液を得た。この水溶液を窒素雰囲気下でペルオキソ二硫酸アンモニウムの10重量%水溶液1.74gと亜硫酸水素ナトリウムの10重量%水溶液1.74gを添加し、室温25℃の部屋に12時間静置し重合を行った。重合終了後、精製水26.5gを添加し20重量%濃度の水溶液とした。評価結果を第1表に示す。(試料−B)
【0033】
20%水溶液粘度は、ブルックフィールド回転型粘度計を使用し測定を行った(25℃測定)。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、ポリアクリルアミド換算分子量として計算を行った。使用したカラムはTOSOH TSKgel G6000PWで、カラムの排除限界以下のポリマーを除外して計算を行った。分子量分布Mn/MWは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、ポリアクリルアミド換算分子量として計算を行った。重量平均分子量と同様に、カラムの排除限界以下のポリマーを除外して計算を行った。第1表の評価結果を考察すると明らかなように、試料1〜5は試料A、Bと比較して架橋により幅広い分子量分布をしていることが判る。またポリカチオン架橋剤は、本実施例のゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィーでは排除限界となる。従って、試料−Aまたは試料−Bとポリカチオン架橋剤の混合物では、試料−Aまたは試料−Bの測定値のみ現れる。
【0034】
【発明の効果】
本発明の水溶性架橋性ポリマーは、カチオン成分を長い側鎖として有するグラフト共重合体ないしは長いカチオン構造単位を架橋点間に有するブロック共重合体からなるものであり、イオン性としてカチオン性あるいは両性とすることが可能である。この性質を利用して種々の応用が期待される。
【0035】
【表1】
20%水溶液粘度:mPa・s
重量平均分子量:MW
分子量分布:Mn/MW
Claims (3)
- (A)下記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤、(B)(メタ)アクリルアミド、(D)下記一般式(5)で表されるα、β−不飽和カルボン酸ないしその塩類および/または(C)下記一般式(3)ないし(4)で表される水溶性カチオン性ビニルモノマーないしその塩類を構成モノマー成分とする共重合体を含有してなる新規水溶性架橋性ポリマー。
(R1、R2、R3、R4:水素、炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基又はAであり、同種でも異種でも良い、n:0〜70の整数、X1 −、X2 −は陰イオン)
ただしAは、
(R 5 、R 6 :水素、炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基又はAであり、同種でも異種でも良い、R 7 :水素又はメチル基、R 8 :炭素数2〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、X 3 − は陰イオン)
(R 9 、R 10 、R 11 、R 12 :水素、炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基又はAであり、同種でも異種でも良い、R 13 は水素またはメチル基、R 14 :炭素数2〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、n:0〜70の整数、B:酸素原子またはNH、X 4 − 、X 5 − は陰イオン、Eは水素、グリシジル基、ハロヒドリン構造である)
(R 15 、R 16 :水素、炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基又はA、R 18 :水素又はメチル基、R 17 :炭素数2〜4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基、n:0〜70の整数、Fは水素、メチル基、ベンジル基又はグリシジル基、X 6 − は陰イオンである。)
(R19、R20:水素又はカルボキシル基、ただし一方がカルボキシル基の場合他方は水素となる。R21:R19、R20が水素の時、水素、メチル基あるいは−CH2COO−M+、M+:水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオン) - (A)前記一般式(1)で表されるポリカチオン架橋剤を、ポリカチオン架橋剤中に含まれる二重結合の量として0.01〜20モル%、(B)(メタ)アクリルアミド0〜98.99モル%、(D)前記一般式(5)で表されるα、β−不飽和カルボン酸ないしその塩類1〜20モル%および/または(C)前記一般式(3)ないし(4)で表される水溶性カチオン性ビニルモノマーないしその塩類0〜98.99モル%とを重合してなる共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の新規水溶性架橋性ポリマー。
- 重量平均分子量が10,000〜15,000,000であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の新規水溶性架橋性ポリマー。」
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