JP3871322B2 - 水溶性重合体分散液の使用方法 - Google Patents

水溶性重合体分散液の使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水溶性重合体分散液の使用方法に関するものであり、詳しくは水処理薬剤としての凝集剤、脱水剤あるいは製紙プロセスに用いる製紙用薬剤、また各種懸濁溶液の分散安定剤、さらに土壌改良剤などに広く使用されている水溶性重合体の微粒子と、ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物とが共存する流動性の高い水溶性重合体分散液の使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、製紙用薬剤あるいは廃水処理用の凝集剤として使用されているカチオン性水溶性重合体分散液の製造方法として、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを塩化ベンジルや疎水性モノハロゲン化アルキルにより四級化したカチオン性単量体を用いて共重合を行う時、該単量体の重合体あるいは共重合体を溶解しない塩水溶液中で、且つその塩水溶液に溶解可能な高分子の共存下で重合を行って、分散状態で重合体を得る製造方法が提案されている(特開昭61−123610、特開平5−32722)。この方法は、使用するカチオン性単量体がジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを塩化ベンジルや疎水性モノハロゲン化アルキルにより四級化した特定の疎水性カチオン性単量体を使用しなければならない問題点を有している。また共存させる塩水溶液に溶解可能な高分子は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート類の単独重合体あるいは共重合体、またはアクリルアミドとの共重合体などを使用している。
【0003】
一方、ポリエチレングリコール等の高分子水溶液を分散媒とする水溶性重合体微粒子の分散液を製造する方法が、昭62−5170号公報に開示されている。上記特許公報に開示された方法を実施する場合、製紙および廃水処理薬剤としてジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級化物の単独重合物を製造する場合、製造中の増粘が大きく、また生成した分散液の粘性も高いなど問題を有する。また、高価で製紙用薬剤、凝集剤として効果の少ないポリエチレングリコールのような低分子量水溶性ポリマーを多量に使用するため、原料コストを押し上げる欠点があった。しかし、ポリアルキレンイミンの一種であるポリエチレンイミンは、製紙用薬剤として濾水性向上剤や歩留向上剤として使用されているので、ポリアルキレンイミンの共存する水溶性重合体分散液は非常に効率の良い形態を有していると考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように水溶性重合体は、製紙工程に用いる濾水性向上剤、歩留り剤、白水中の有価物回収剤等の製紙に広範囲に使用されている。また、製油工程あるいは油分を含む産業排水の油分離工程及び処理に用いる油分離剤、都市下水、屎尿、一般産業排水の生汚泥、余剰汚泥、凝集汚泥、消化汚泥あるいはこれらの混合汚泥の凝集処理、また、脱水機などで凝集脱水する際に添加する薬剤としても使用できる。しかし、上記記載の水溶性重合体分散液は、保存安定性が十分ではなく、各種製紙用薬剤として用いた場合、必ずしも十分な性能を有しているわけではない。例えば、濾水性向上剤として用いた場合、湿紙の脱水プレス後の含水率が低下しない、製紙原料の前処理剤として用いた場合、カチオン要求量が低下しないなどの点である。従って本発明の目的は、保存安定性に優れ、且つ流動性がよく溶解性にすぐれ、低コストの製造設備で容易に製造可能な分散液を用いて、製紙用薬剤として各種用途に優れた性能を発現する処理方法を開発することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を解決する方法を各種検討した結果、以下のような発明に達した。すなわち請求項1の発明は、下記単量体に対し40〜150重量%のポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物の硫酸中和物を分散媒として共存させ、分散重合し製造されたカチオン性及び両性から選択された一種以上のイオン性を有する粒径100μm以下の水溶性重合体微粒子分散液を、抄紙前の製紙原料中に添加することを特徴とする水溶性重合体分散液の使用方法である。
【化1】
Figure 0003871322
一般式(1)
R1は水素又はメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、X1は陰イオンをそれぞれ表わす
【化2】
Figure 0003871322
一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、X2は陰イオンをそれぞれ表わす
【化3】
Figure 0003871322
一般式(3)
R8は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO3、C6H4SO3、
CONHC(CH3)2CH2SO3、C6H4COOあるいはCOO、R9は水素またはCOOY2、Y1あるいはY2は水素または陽イオン
【0006】
請求項の発明は、前記ポリアルキレンイミン変性物が、エピハロヒドリンに対するアンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンから選択された1種以上のアミン類と0.25〜0.9の範囲で反応させて得られる下記一般式(4)で表されるポリカチオン物質によりポリアルキレンイミンを架橋させた下記一般式(5)の構造を有するものであることを特徴とする請求項に記載の水溶性重合体分散液の使用方法である。
【化4】
Figure 0003871322
一般式(4)
【化5】
Figure 0003871322
一般式(5)
但し、式(4)、(5)中のPはエポキシ基あるいはハロヒドリン基、pは0〜20の整数であり、R10〜R13は水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基あるいはベンジル基、X3〜X4は陰イオンである。
【0007】
請求項の発明は、前記ポリアルキレンイミン変性物が、エピハロヒドリンに対するアンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンから選択された1種以上のアミン類と0.8〜1.2の範囲で反応させて得られる下記一般式(6)で表されるポリカチオン物質ポリアルキレンイミンにグラフトした下記一般式(7)の構造を有するものであることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の水溶性重合体分散液の使用方法である。
【化6】
Figure 0003871322
一般式(6)
【化7】
Figure 0003871322
一般式(7)
但し、式(6)、(7)中のPはエポキシ基あるいはハロヒドリン基、pは0〜20の整数であり、R14〜R18は水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基あるいはベンジル基、X7〜X8は陰イオンである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴は、製紙用薬剤として有用なポリエチレンイミン及び/又はポリエチレンイミン変性物を、単量体と共存させて攪拌下、重合することにより製造した水溶性重合体微粒子からなる分散液を各種製紙用途に応用することにある。従来の水溶性重合体分散液の製造方法は、前記一般式(1)あるいは(2)で表される単量体をポリエチレングリコールやジメチルジアリルアンモニウム塩化物中で重合を行うと、生成した重合物分散液は、粘性の高い分散液になり、重合物分子量も高くはならなかった。しかし、本発明のポリエチレンイミン及び/又はポリエチレンイミン変性物中において重合すると、これらの問題が解決することができる。
【0009】
以下、まず製造法を説明する。初めにポリエチレンイミン及び/又はポリエチレンイミン変性物の20〜50重量%水溶液を用意し、有機又は無機酸によりアミン当量の50〜100%を中和する。この時の水溶液pHは、2〜12に調整し、この水溶液に単量体を加え、混合する。単量体濃度としては、10〜40重量%であり、好ましくは15〜30重量%である。ポリエチレンイミン及び/又はポリエチレンイミン変性物の単量体に対する添加量は、20〜200重量%であるが、好ましくは20〜150重量%、さらに好ましくは40〜150重量%である。
【0010】
その後、窒素雰囲気下にて、重合開始剤、例えば2、2−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物または2、2−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物のような水溶性アゾ系重合開始剤、あるいは過硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素ナトリウム併用のような水溶性レドックス系重合開始剤を添加し、撹拌下ラジカル重合を行う。重合の反応温度は0〜100℃の範囲で重合開始剤の性質に応じて任意に選ぶ事ができるが、好ましくは10〜60℃であり、更に好ましくは20〜50℃である。
【0011】
本発明で使用するポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミンあるいはポリプロピレンイミンなどであるが、実用的にはポリエチレンイミンである。分子量は、5000以上あれば本発明の分散重合に使用できるが、あまり重合度が高いと分散液の粘性が高くなり好ましくない。従って好ましくは5000以上、500,000以下であり、更に好ましくは5000以上、200,000以下である。また、ポリアルキレンイミン変性物の場合も同様に、変性後の分子量が好ましくは50,000以上、1,000,000以下であり、更に好ましくは50,000以上、500,000以下である。
【0012】
またポリアルキレンイミン変性物も使用することができる。例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどで架橋により変性したポリアルキレンイミンも使用することができるが、一般式(4)あるいは(5)で表される構造単位を有するポリアルキレンイミン変性物を使用することが好ましい。これはポリアルキレンイミンあるいはポリアルキレンイミンとポリアミンとの混合物と、一般式(6)及び/又は(7)で表されるポリカチオン物質との反応とによって合成されるものである。この物質は、アンモニア、脂肪族第1級〜第3級アミン(以下第1級アミンなどと記載する)から選択された1種以上のアミン類とエピハロヒドリンを反応させて製造することができる。
【0013】
変性反応時のモル比については以下の範囲で行う。すなわちポリアルキレンイミン中あるいはポリアルキレンイミンとポリアミンとの混合物中のアミノ基をC(モル単位)と、前記一般式(6)及び/または(7)で表されるポリカチオン物質中のハロヒドリン基及び/またはエポキシ基をD(モル単位)とすると、C/D=5〜300(モル%)の範囲で反応する。例えばポリアルキレンイミンの分子量が数万〜数十万と高い場合は、特に上記一般式(6)で表されるポリカチオン物質を高い比率でし込むと、架橋反応が進み過ぎてポリアルキレンイミンが水不溶化してしまう。したがってし込みモル%としては、通常5〜50モル%、好ましくは5〜30モル%である。一方ポリアルキレンイミンの分子量が1,000〜10,000など低い場合は、し込みモル%としては、通常50〜300モル%、好ましくは70〜150モル%である。
【0014】
前記ポリカチオン物質は、一般式(6)で表される両末端反応性のある架橋作用のあるものと、一般式(7)で表される片末端反応性のあるグラフト反応作用のあるものとがある。前者の架橋作用のあるものは、エピハロヒドリンに対するアンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンから選択された1種以上のアミン類のモル比が、凡そ0.25〜0.9の範囲で反応させると一般式(6)で表されるポリカチオン物質の生成比率が高く、後者のグラフト作用のあるものは、エピハロヒドリンに対するアンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンから選択された1種以上のアミン類のモル比が、凡そ0.8〜1.2の範囲で反応させると一般式(7)で表されるポリカチオン物質の生成比率が高くなる。
【0015】
重合は一般的には中性〜酸性で行うのが、単量体も安定であり、反応性も良好である。そのため重合度や重合率も向上するので、ポリアルキレンイミンあるいはポリアルキレンイミン変性物は、中和して弱アルカリ〜酸性の水溶液とすることが好ましい。pHとしては12〜2であるが、好ましくは10〜3であり、更に好ましくは6〜3である。中和する酸は、有機あるいは無機の酸を使用する。有機酸としては、蟻酸、酢酸、アジピン酸、無機酸としては、塩酸、硫酸、スルファミン酸などで中和する。中和度としては、分子中のアミノ基に対して、50〜100当量%である。
【0016】
分子量調節のため通常のラジカル重合に用いられるようなイソプロピルアルコールやメルカプタン等の連鎖移動剤を添加することも任意に選択することができる。重合体微細粒子の分散安定化の為、撹拌を行う必要がり、撹拌速度の上限は無く、任意の撹拌条件を選ぶことができる。
【0017】
次にイオン性水溶性重合体を製造する際使用する単量体について説明する。カチオン性水溶性重合体を製造する場合には、カチオン性単量体の一種以上を使用し、また非イオン性単量体との共重合をすることもできる。カチオン性単量体の例としては、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルジアリルアミンなどの重合体や共重合体が上げられ、四級アンモニウム基含重合体の例は、前記三級アミノ含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。また、一般式(2)で表されるジメチルジアリルアンモニウム系単量も使用可能であり、その例としてジメチルジアリルアンモニウム塩化物、ジアリルメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。
【0018】
水溶性非イオン性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドアクリロイルモルホリン、アくリロイルピペラジンなどがあげられる。
【0019】
両性水溶性重合体を製造する場合には、前記カチオン性と非イオン性単量体に加えて、さらに一般式(3)で表されるアニオン性単量体を共重合する。その例としては、スルフォン基でもカルボキシル基でもさしつかいなく、両方を併用しても良い。スルフォン基含有単量体の例は、ビニルスルフォン酸、ビニルベンゼンスルフォン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸などである。またカルボキシル基含有単量体の例は、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸あるいはp−カルボキシスチレンなどである。
【0020】
上記カチオン性水溶性重合体の各単量体組成としては、カチオン性単量体5〜100モル%、水溶性非イオン性単量体0〜95モル%であり、好ましくはカチオン性単量体10〜100モル%、水溶性非イオン性単量体0〜90モル%である。また、両性水溶性重合体の各単量体組成としては、カチオン性単量体10〜95モル%、アニオン性単量体5〜50モル%、水溶性非イオン性単量体0〜85モル%であり、好ましくはカチオン性単量体20〜100モル%、アニオン性単量体10〜50モル%、水溶性非イオン性単量体0〜70モル%である。またこれら水溶性重合体の重量平均分子量は、10万〜2000万であり、好ましくは30万〜1500万である。
【0021】
重合開始は、ラジカル重合開始剤を用いる。そのような開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系,過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2−アゾビスイソブチロニトリル、1、1−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)、4、4−アゾビス(4−メトキシ−2、4ジメチル)バレロニトリルなどがあげられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。
【0022】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。
【0023】
本発明の水溶性重合体分散液は、単量体を重合する際、ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物にいて重合するので、ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物の一部に一般式(1)〜(3)で表される単量体がグラフト重合していると推定される。さらにポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物は、非常に枝分かれした構造をしているため、それだけグラフト重合も起こりやすいと考えられ、分散液の安定化にも大いに寄与すると推定され、重合の分散媒としては非常に適した材料である。
【0024】
また、本発明のイオン性水溶性重合体分散液は、ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物の他、分子量の比較的低い他のカチオン性水溶性重合体を併用することも好ましい。そのようなカチオン性水溶性重合体としては、前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で表されるカチオン性単量体一種以上の重合体あるいは共重合体である。あるいは前記カチオン性単量体一種以上と水溶性非イオン性単量体との共重合体も使用できる。これらカチオン性水溶性重合体は、重合時、あるいは重合後添加する。分子量は、1,000〜3,000,000であり、好ましくは10,000〜2,000,000である。
【0025】
本発明の水溶性重合体は、古紙や機械パルプに由来するピッチ類あるいはアニオン性物質の前処理を行うため、抄紙前の製紙原料中に添加して使用することができる。添加場所としては、種々のパルプが混合される混合チェストなどが考えられるが、最も汚れの原因となる原料パルプに直接添加すると顕著な効果を発現する場合がある。そのため添加場所の例としては、処理を目的とする原料パルプチェストに直接あるいは配合後の原料パルプチェスト配管出口などが上げられる。
【0026】
本発明で使用する水溶性重合体の製紙原料への添加量としては、製紙原料のカチオン要求量により異なるが、対乾燥製紙原料当たり高分子純分として、凡そ200〜5000ppmであり、好ましくは300〜2000ppm、最も好ましくは300〜1000ppmである。カチオン性水溶性重合体の添加量は、ミュ−テック社製のPCD−03型などを使用して製紙原料のカチオン要求量を測定し決定していく。例えば使用製紙原料中に本発明の高分子を添加、攪拌処理した後、ワットマン製濾紙NO.41によって原料を濾過し、濾液のカチオン要求量と濁度を測定していく。濁度が最も低下したところが適性添加量の目安と推定されるが、製紙現場へ適用してみなければ正確には判定できない。
【0027】
次に濾水性向上剤としての使用方法について説明する。本発明の水溶性重合体分散液は、単量体を重合する際、ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物中において重合するので、濾水性向上剤として優れた作用のあるポリアルキレンイミン系高分子が共存する。しかし、ポリアルキレンイミン系高分子は、重合度が低いため凝集作用は弱い、その結果、添加量が増加するなどマイナス面が存在する。その点、本発明の水溶性重合体分散液は、高分子量の重合体が補完し性能を高める作用がある。ポリアルキレンイミン系高分子は、製紙原料中の微細繊維やピッチ、アニオン性成分の電荷中和作用を行い、共存する高分子量の重合体は、架橋吸着に起因する凝集作用を行い、濾水度を向上させる。添加場所としては、抄紙機に近いほうが効率的であり、ファンポンプの手前、スクリ−ン入り口あるいは出口などが考えられる。
【0028】
本発明の濾水性向上方法の適用可能な抄紙pHとしては、酸性抄紙〜中性抄紙において他の処理法に比較して優れた効果を発揮する。従って、抄紙pHとして4.0〜9.0の範囲においてメリットがある。対象となる紙製品として、上質あるいは中質の印刷用紙、あるいは中芯原紙やライナ−などの板紙などである。
【0029】
更に本発明の水溶性重合体分散液は、歩留向上を目的として抄紙前の製紙原料中に添加し使用することもできる。また、無機あるいは有機のアニオン性物質と組み合わせて、歩留向上を目的として、抄紙前の製紙原料中に添加し使用することもできる。前記アニオン性物質のうち、無機物としては、ベントナイト、カオリン、クレイあるいはタルクなどであり、またコロイダルシリカも使用できる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0031】
(合成例1)攪拌機および温度制御装置を備えた反応器に50重量%ポリエチレンイミン水溶液(重量平均分子量;50,000)50部をイオン交換水21.5gに溶解し、75重量%硫酸28.5部を冷却攪拌下添加し、pHを4.8〜5.5に調整した。攪拌機、窒素曝気管および温度制御装置を備えた反応器に前記中和操作により得たポリエチレンイミン水溶液120.0gを仕込み、メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド80%水溶液75.0g、イオン交換水93.0gを仕込み混合した。窒素で置換しながら10重量%の2,2アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチルアミジン)ジハイドロクロライド水溶液を重合開始剤として対モノマーあたり重量で500ppm添加し、撹拌下36℃で18時間重合した。その結果、粒径10〜100μmの微粒子の重合体分散液が得られた(試料−1)。生成したポリマ―分散液をB型粘度計により測定した分散液の粘度、また静的光散乱法による分子量測定器(大塚電子製DLS−7000)によって重量平均分子量を測定した。
【0032】
(合成例2〜6)また上記操作と同様に表ー1記載の組成のモノマーを表1記載の単量体濃度になるように仕込み、重合操作を行い、水溶性重合体分散液を得た(試料−2〜試料−6)。組成を表1、結果を表2に示す。
【0033】
(合成例7)温度計、攪拌機、滴下漏斗を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、エピクロロヒドリン146.6gとイオン交換水29.6gを仕込み、ジメチルアミンの50重量%水溶液123.8gを40〜45℃で2時間かけて滴下し、滴下終了後45℃で1時間反応後、イオン交換水29.6gを加えた。
【0034】
次ぎに温度計、攪拌機を備えたセパラブルフラスコに、ポリエチレンイミン(重量平均分子量;10,000)、100%品を23.3gとイオン交換水を60.0g加えて撹拌後、合成例1のポリカチオン生成物を26.9g加え、28℃で45分間反応させ、反応物の粘度上昇が認められた時点で、75%硫酸4.5gを加えて反応を停止させた。重量平均分子量を測定すると50,000であった。
【0035】
次に攪拌機および温度制御装置を備えた反応器に、上記の操作によって調製したポリエチレンイミン変性物109gを採取し、硫酸で溶液pHを5.5に中和した。その後、合成例1〜6と同様な操作により微粒子の重合体分散液、試料−7を得た。組成を表1、結果を表2に示す。
【0036】
(比較合成例1〜3)重合時使用する分散媒を構成する水溶性高分子として、それぞれ(1;ジメチルアミン/エピクロロヒドリン反応物、分子量10,000、(比較合成例1)、(2;ポリエチレングリコール#5,000、(比較合成例2)、(3;ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合物、分子量100,000(比較合成例3)を使用する場合についておこなった。組成を表1、結果を表2に示す。
【0037】
【表1】
Figure 0003871322
DMC:メタクロルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド
DMQ:アクリロルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、AAC:アクリル酸、AAM:アクリルアミド、(1共存高分子;ジメチルアミン/エピクロロヒドリン反応物、(2共存高分子;ポリエチレングリコール#5,000、(3共存高分子;ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合物、共存高分子添加量;対単量体重量%、
0038
表2
Figure 0003871322
分散液粘度;mPa・s、分子量単位;万
0039
【実施例1〜7
新聞古紙を2%分散液に離解した後、カナデイアン・スタンダ−ド・フリ−ネス(CSF)値表示で180mLに叩解した。この分散液を0.4重量%に希釈し濾水性の試験に用いた。調製した0.4重量%分散液を1000mLのメスシリンダ−に採取し、液体硫酸バンド2.0%添加し、メスシリンダ−を5回転倒することにより攪拌し、その後試料−1〜試料−を各々対液500ppm添加し、更にメスシリンダ−を5回転倒することにより攪拌しCSFテスタ−に投入し濾水量を測定した。この後、CSFテスタ−のメッシュ上に残ったパルプを低部が100メッシュの濾布を敷いてある二重底になった遠心管に充装し、デジタル式遠心分離機を用い3000rpm、5分の条件によりパルプの脱水を行った(マシン上の脱水ク−チロ−ルを想定)。脱水されたパルプの重量を測定後、105℃、20時間乾燥しその重量を測定する。その後、900℃、2時間の条件で焼却し無機分重量を測定することにより灰分歩留率の測定を行う。結果を表に示す。
0040
【比較例
比較合成例試料−1〜試料−3を用いた他は、実施例28〜34と同様に試験を行った。また同時にポリエチレンイミン(分子量;50、000、比較−)も試験した。結果を表に示す。
0041
【表
Figure 0003871322
濾水量;ml、パルプ含水率(%)、灰分歩留率(%)

Claims (3)

  1. 下記単量体に対し40〜150重量%のポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物の硫酸中和物を分散媒として共存させ、分散重合し製造されたカチオン性及び両性から選択された一種以上のイオン性を有する粒径100μm以下の水溶性重合体微粒子分散液を、濾水性を向上させることを目的として抄紙前の製紙原料中に添加することを特徴とする水溶性重合体分散液の使用方法。
    Figure 0003871322
    一般式(1)
    R1は水素又はメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、X1は陰イオンをそれぞれ表わす
    Figure 0003871322
    一般式(2)
    R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、X2は陰イオンをそれぞれ表わす
    Figure 0003871322
    一般式(3)
    R8は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO3、C6H4SO3、
    CONHC(CH3)2CH2SO3、C6H4COOあるいはCOO、R9は水素またはCOOY2、Y1あるいはY2は水素または陽イオン
  2. 前記ポリアルキレンイミン変性物が、エピハロヒドリンに対するアンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンから選択された1種以上のアミン類と0.25〜0.9の範囲で反応させて得られる下記一般式(4)で表されるポリカチオン物質によりポリアルキレンイミンを架橋させた下記一般式(5)の構造を有するものであることを特徴とする請求項に記載の水溶性重合体分散液の使用方法。
    Figure 0003871322
    一般式(4)
    Figure 0003871322
    一般式(5)
    但し、式(4)、(5)中のPはエポキシ基あるいはハロヒドリン基、pは0〜20の整数であり、R10〜R13は水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基あるいはベンジル基、X3〜X4は陰イオンである。
  3. 前記ポリアルキレンイミン変性物が、エピハロヒドリンに対するアンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンから選択された1種以上のアミン類と0.8〜1.2の範囲で反応させて得られる下記一般式(6)で表されるポリカチオン物質ポリアルキレンイミンにグラフトした下記一般式(7)の構造を有するものであることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の水溶性重合体分散液の使用方法。
    Figure 0003871322
    一般式(6)
    Figure 0003871322
    一般式(7)
    但し、式(6)、(7)中のPはエポキシ基あるいはハロヒドリン基、pは0〜20の整数であり、R14〜R18は水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基あるいはベンジル基、X7〜X8は陰イオンである。
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