JP3952892B2 - 紙力増強剤及び紙力増強方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は紙力増強剤と紙力増強方法に関するものであり、詳しくはカチオン性、両性及びアニオン性から選択された一種以上のイオン性を有する粒径100μm以下の微粒子からなる水溶性重合体とポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物とが、塩水溶液中に共存する分散液からなる紙力増強剤に関するものであり、またそれを使用した紙力増強方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水溶性重合体分散液の製造方法として、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを塩化ベンジルや疎水性モノハロゲン化アルキルにより四級化したカチオン性単量体を用いて共重合を行う時、該単量体の重合体あるいは共重合体を溶解しない塩水溶液中で、且つその塩水溶液に溶解可能な高分子の共存下で重合する方法が開示されている(特開昭61−123610、特開平5−32722)。共存させる塩水溶液に溶解可能な高分子は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート類の単独重合体あるいは共重合体、またはアクリルアミドとの共重合体などである。また、ポリエチレングリコール等の高分子水溶液を分散媒とする水溶性重合体微粒子の分散液を製造する方法も、特公昭62−5170号公報に開示されている。
【0003】
一方、従来から紙力増強剤は、実用化されているものは水溶液タイプであり、有効成分濃度は15〜20重量パーセントが一般的である。有効成分濃度30重量パーセントというタイプも現場での試験的使用という段階までは達したが、紙力増強効果がユーザーの要求する水準にまで到達せず定常的に使用されなかった。この原因として紙力増強剤は、凝集剤に較べれば分子量は低いが、一定の分子量を有していなければ効果がレベルに達しない。一方、分子量を増加させると、見かけ水溶液粘度が上昇して、取り扱いが困難になる。架橋剤を共重合し見かけ水溶液粘度を低下させる試みもされているが、有効成分濃度30重量パーセントにおいて、容易に取り扱い可能な範囲として製品粘度10,000mPa・s前後以内という障壁は、クリヤできていない。このような状況下において、当然、分散型紙力増強剤という考えが出てくる。これは分散型凝集剤の応用であるが、分散媒としてなにを選択するかという問題がポイントとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来開示されている高分子分散液のうち、ポリエチレングリコール中分散重合品は、共存するポリエチレングリコールが紙力に影響を与え、その効果を低減させること、原料コストを押し上げる欠点がある。また、塩水溶液中分散重合品でも、機械パルプや古紙の配合比が増えると、それらの中に共存するピッチやアニオン性物質の影響を受け、十分紙力効果を発揮しないなど水溶液タイプの紙力増強剤と状況は変わらなかった。従って本発明の目的は、機械パルプや古紙の配合比が増えても十分紙力効果を発揮することが可能な分散液からなる紙力増強剤を開発することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を解決する方法を各種検討した結果、以下のような発明に達した。すなわち請求項1の発明は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表わされる単量体3〜40モル%、下記一般式(3)で表わされる単量体3〜30モル%、水溶性非イオン性単量体30〜94モル%からなる単量体混合物を攪拌下、ポリアルキレンイミン硫酸中和物をポリアルキレンイミン換算で10〜100重量%共存させ、2〜15質量%の塩水溶液中において分散重合し製造された重量平均分子量が100万〜600万の両性水溶性重合体により構成され、粒径100μm以下の微粒子分散液からなる紙力増強剤である。
【化1】
一般式(1)
R1は水素又はメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、X1は陰イオンをそれぞれ表わす
【化2】
一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、X2は陰イオンをそれぞれ表わす
【化3】
一般式(3)
R8は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO3、C6H4SO3、
CONHC(CH3)2CH2SO3、C6H4COOあるいはCOO、R9は水素またはCOOY2、Y1あるいはY2は水素または陽イオン
【0000】
請求項2の発明は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表わされる単量体3〜30モル%、水溶性非イオン性単量体70〜97モル%からなる単量体混合物を攪拌下、ポリアルキレンイミン硫酸中和物をポリアルキレンイミン換算で10〜100重量%共存させ、2〜15重量%の塩水溶液中において分散重合し製造された重量平均分子量が100万〜600万のカチオン性水溶性重合体により構成され、粒径100μm以下の微粒子分散液からなる紙力増強剤である。
【化1】
一般式(1)
R1は水素又はメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、X1は陰イオンをそれぞれ表わす
【化2】
一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、X2は陰イオンをそれぞれ表わす
【0006】
請求項3の発明は、下記一般式(3)で表わされる単量体2〜50モル%、水溶性非イオン性単量体50〜98モル%からなる単量体混合物を攪拌下、ポリアルキレンイミン硫酸中和物を共存させ、2〜15重量%の塩水溶液中において分散重合し製造された重量平均分子量が100万〜600万のアニオン性水溶性重合体により構成され、粒径100μm以下の微粒子分散液からなる紙力増強剤である。
【化3】
一般式(3)
R8は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO3、C6H4SO3、
CONHC(CH3)2CH2SO3、C6H4COOあるいはCOO、R9は水素またはCOOY2、Y1あるいはY2は水素または陽イオン
【0007】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の分散液からなる紙力増強剤を、抄紙前の製紙原料中に添加し、紙の強度を向上させることを特徴とする紙力増強方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴は、塩水溶液中において、製紙用薬剤として有用なポリエチレンイミン及び/又はポリエチレンイミン変性物を、単量体と共存させて攪拌下、重合することにより製造した水溶性重合体微粒子からなる分散液を紙力増強剤に応用することにある。従来の水溶性重合体分散液の製造方法は、前記一般式(1)あるいは(2)で表される単量体をポリエチレングリコールやジメチルジアリルアンモニウム塩化物中で重合を行うと、生成した重合物分散液は、粘性の高い分散液になり、重合物分子量も高くはならなかった。しかし、本発明のポリエチレンイミン及び/又はポリエチレンイミン変性物中において重合すると、これらの問題が解決することができる。
【0013】
以下、まず製造法を説明する。初めにポリエチレンイミン及び/又はポリエチレンイミン変性物の20〜50重量%水溶液を用意し、有機又は無機酸によりアミン当量の50〜100%を中和する。この時の水溶液pHは、2〜12に調整し、この水溶液に単量体を加え、混合する。単量体濃度としては、10〜40重量%であり、好ましくは15〜30重量%である。ポリエチレンイミン及び/又はポリエチレンイミン変性物の単量体に対する添加量は、5〜200重量%であるが、好ましくは10〜150重量%、さらに好ましくは10〜100重量%である。また、無機塩を全量に対し2重量%〜15重量%となるよう溶解する。
【0014】
その後、窒素雰囲気下にて、重合開始剤、例えば2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物または2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物のような水溶性アゾ系重合開始剤、あるいは過硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素ナトリウム併用のような水溶性レドックス系重合開始剤を添加し、撹拌下ラジカル重合を行う。重合の反応温度は0〜100℃の範囲で重合開始剤の性質に応じて任意に選ぶ事ができるが、好ましくは10〜60℃であり、更に好ましくは20〜50℃である。
【0015】
本発明で使用するポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミンあるいはポリプロピレンイミンなどであるが、実用的にはポリエチレンイミンである。分子量は、5000以上あれば本発明の分散重合に使用できるが、あまり重合度が高いと分散液の粘性が高くなり好ましくない。従って好ましくは5000以上、500,000以下であり、更に好ましくは5000以上、200,000以下である。また、ポリアルキレンイミン変性物の場合も同様に、変性後の分子量が好ましくは50,000以上、1,000,000以下であり、更に好ましくは50,000以上、500,000以下である。
【0019】
重合は一般的には中性〜酸性で行うのが、単量体も安定であり、反応性も良好であり、重合度や重合率も向上するので、ポリアルキレンイミンあるいはポリアルキレンイミン変性物は、中和して弱アルカリ〜酸性の水溶液とすることが好ましい。pHとしては12〜2であるが、好ましくは10〜3であり、更に好ましくは6〜3である。中和する酸は、有機あるいは無機の酸を使用する。有機酸としては、蟻酸、酢酸、アジピン酸、無機酸としては、塩酸、硫酸、スルファミン酸などで中和する。中和度としては、分子中のアミノ基に対して、50〜100当量%である。
【0020】
重合時、ポリアルキレンイミンと併用する塩としては、ハロゲン化アルカリ金属塩や、硫酸塩、燐酸塩などである。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、塩化アンモニウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸水素アンモニウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム等を例示することができ、これらの塩を液中濃度として2重量%〜飽和濃度として用いることが好ましい。
【0021】
分子量調節のため通常のラジカル重合に用いられるようなイソプロピルアルコールやメルカプタン等の連鎖移動剤を添加することも任意に選択することができる。重合体微細粒子の分散安定化の為、撹拌を行う必要がり、撹拌速度の上限は無く、任意の撹拌条件を選ぶことができる。
【0022】
次に分散液からなる紙力増強剤を製造する場合に使用する単量体について説明する。カチオン性単量体の例としては、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが上げられる。四級アンモニウム基含重合体の例は、前記三級アミノ含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。また、一般式(2)で表されるジメチルジアリルアンモニウム系単量も使用可能であり、その例としてジメチルジアリルアンモニウム塩化物、ジアリルメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。
【0023】
また、これらカチオン性単量体のうち好ましいものは、一般式(1)及び/又は(2)で表される(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びメチルジアリルアミンなどの三級アミン型単量体である。
【0024】
水溶性非イオン性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドアクリロイルモルホリン、アクリロイルピペラジンなどがあげられる。最も好ましい水溶性非イオン性単量体は、アクリルアミドである。
【0025】
両性重合体の分散液からなる紙力増強剤を製造する場合には、前記カチオン性と水溶性非イオン性単量体に加えて、さらに一般式(3)で表されるアニオン性単量体を共重合する。その例としては、スルフォン基でもカルボキシル基でもさしつかいなく、両方を併用しても良いが、好ましくはカルボキシル基含有単量体である。スルフォン基含有単量体の例は、ビニルスルフォン酸、ビニルベンゼンスルフォン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸などである。またカルボキシル基含有単量体の例は、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸あるいはp−カルボキシスチレンなどである。最も好ましい単量体は、アクリル酸やイタコン酸である。
【0026】
また、アニオン性重合体の分散液からなる紙力増強剤を製造する場合には、前記一般式(3)で表されるアニオン性単量体と前記水溶性非イオン性単量体を共重合する。この場合も前記と同様に、スルフォン基でもカルボキシル基でもさしつかいなく、両方を併用しても良いが、好ましくはカルボキシル基含有単量体である。すなわち最も好ましい単量体は、アクリル酸やイタコン酸であり、最も好ましい水溶性非イオン性単量体は、アクリルアミドである。
【0027】
各イオン性重合体中の単量体組成としては、以下のようになる。両性重合体の分散液からなる紙力増強剤の場合は、カチオン性単量体1〜50モル%、アニオン性単量体1〜50モル%、水溶性非イオン性単量体0〜98モル%であり、好ましくはカチオン性単量体3〜40モル%、アニオン性単量体3〜30モル%、水溶性非イオン性単量体30〜94モル%である。アニオン性重合体の分散液からなる紙力増強剤の場合は、アニオン性単量体2〜50モル%、水溶性非イオン性単量体50〜98モル%であり、好ましくはアニオン性単量体3〜30モル%、水溶性非イオン性単量体70〜97モル%である。またこれらイオン性重合体の重量平均分子量は、10万〜1000万であり、好ましくは100万〜600万であり、最も好ましくは200万〜600万である。
【0028】
重合開始は、ラジカル重合開始剤を用いる。そのような開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系,過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)、4、4−アゾビス(4−メトキシ−2、4ジメチル)バレロニトリルなどがあげられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。
【0029】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。
【0030】
本発明の分散液からなる紙力増強剤は、単量体を重合する際、ポリアルキレンイミンを共存させるので、ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物の一部に一般式(1)〜(3)で表される単量体がグラフト重合していると推定される。さらにポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物は、非常に枝分かれした構造をしているため、それだけグラフト重合も起こりやすいと考えられ、分散液の安定化にも大いに寄与すると推定され、重合の分散助剤としては非常に適した材料である。
【0031】
また、本発明の分散液からなる紙力増強剤は、ポリアルキレンイミンの他、分子量の比較的低い他のカチオン性水溶性重合体を併用することも好ましい。そのようなカチオン性水溶性重合体としては、前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で表されるカチオン性単量体一種以上の重合体あるいは共重合体である。あるいは前記カチオン性単量体一種以上と水溶性非イオン性単量体との共重合体も使用できる。これらカチオン性水溶性重合体は、重合時、あるいは重合後添加する。分子量は、1,000〜3,000,000であり、好ましくは10,000〜2,000,000である。
【0032】
本発明の紙力増強剤は、ポリエチレンイミンが共存しているため古紙や機械パルプに由来するピッチ類あるいはアニオン性物質の表面電荷中和作用を行うことができる。すなわち、製紙原料中のカチオン要求量の低減、ピッチ類の均一分散化によって抄紙の安定操業化を促進する。従って、今日のように製紙原料中に古紙や機械パルプの配合比が増加した状況に非常に適したものと考えられる。添加場所としては、種々のパルプが混合される混合チェストなどが考えられる。そのため添加場所の例としては、処理を目的とする原料パルプチェストに直接あるいは配合後の原料パルプチェスト配管出口、あるいはマシンチェストなどが考えられる。
【0033】
本発明で使用する分散液からなる紙力増強剤の製紙原料への添加量としては、対乾燥製紙原料当たり高分子純分として、凡そ0.1〜数%であり、通常0.1〜1.0%、最も好ましくは0.1〜0.5%である。抄紙pHとしては、酸性抄紙〜中性抄紙において他の処理法に比較して優れた効果を発揮する。従って、抄紙pHとして4.0〜9.0の範囲においてメリットがある。対象となる紙製品として、上質あるいは中質の印刷用紙であるが、最も好ましくは中芯原紙やライナ−などの板紙などである。
【0034】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0035】
【実施例1】
攪拌機および温度制御装置を備えた反応器に50重量%(以下濃度は同様)ポリエチレンイミン水溶液(重量平均分子量;50,000)50gを、イオン交換水21.5gに溶解し、75重量%硫酸28.5gを冷却攪拌下添加し、pHを4.8に調整した。攪拌機、窒素曝気管および温度制御装置を備えた反応器に前記中和操作により得たポリエチレンイミン水溶液60.0gを仕込んだ。別にアクリル酸60%水溶液、10.2g、アクリルアミド50%溶液、108.0g、塩化ナトリウム12.0g及びイオン交換水40.0gを加えた。窒素で置換しながら10重量%の2,2アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチルアミジン)ジハイドロクロライド水溶液を重合開始剤として対モノマーあたり重量で500ppm添加し、撹拌下36℃で18時間重合した。その結果、粒径10〜100μmの微粒子の重合体分散液が得られた(試料−1)。生成したポリマ―分散液をB型粘度計により測定した分散液の粘度、また静的光散乱法による分子量測定器(大塚電子製DLS−7000)によって重量平均分子量を測定した。
【0036】
【実施例2〜5】
上記操作と同様に表ー1記載の組成のモノマーを表1記載の単量体濃度になるように仕込み、重合操作を行い、水溶性重合体分散液を得た(試料−2〜試料−5)。組成を表1、結果を表2に示す。
【0040】
【比較例1〜4】
重合時使用する分散媒を構成する水溶性高分子として、それぞれ(2;ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合物、分子量100,000(比較例1〜3)、(2;ポリエチレングリコール#5,000、(比較例4)を使用する場合についておこなった。組成を表1、結果を表2に示す。
【0041】
【表1】
AAM:アクリルアミド、DMM:メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルDMA:アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、AAC:アクリル酸、IA:イタコン酸、(1共存高分子;ポリエチレンイミン、(2共存高分子;ポリエチレンイミン変性物、(3共存高分子;ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合物、(4共存高分子;ポリエチレングリコール#5,000
共存高分子添加量;対単量体重量%、共存塩濃度;分散液中重量%濃度
共存塩種類;(a)塩化ナトリウム、(b)硫酸ナトリウム、(c)硫酸アンモニウム、
【0042】
【表2】
分散液粘度;mPa・s、分子量単位;万
【0043】
【実施例6〜10】
中質紙原料(LBKP/DIP/TMP=10/60/30、pH7.1、全ss2.40%、灰分0.30%)を用い、パルプ濃度0.9重量%に水道水を用いて希釈、TAPPIスタンダードシートマシン(1/50)により坪量70g/m2の紙を抄紙した。初めに液体硫酸バンド2.0%、エマルジョン型ロジンサイズ、0.15%、表2の試料−1〜試料−5を対製紙原料0.4%添加し、歩留向上剤としてカチオン性ポリアクリルアミド(分子量;750万、カチオン等量値;2.80meq/g)を対製紙原料0.02%添加した。薬剤の添加順は上記の順で15秒間隔により下記試験条件で行い、攪拌を開始する。定法により乾燥、調湿を行い、引っ張り強度の測定より裂断長を算出した(JIS−P8113)。またステキヒトサイズ測定(JIS−P8122)、及び800℃で焼却し灰分を測定することにより無機物歩留率を算出した。以上の結果を表3に示す。
【0044】
【比較例5〜9】
比較として表2の比較−1〜比較−4、及び市販のポリアクリルアミド系両性紙力増強剤(分子量;300万、乾燥固形分;21.4%、カチオン等量値;0.097meq/g、アニオン等量値;0.049meq/g、比較−5)を用いて試験を行った。結果を表3に示す。
【0045】
【実施例11〜15】
LBKPを主体とした上質紙製造用の製紙原料pH6.23、全ss分2.37%、灰分0.41%を用いて試験を行った。パルプ濃度0.9重量%に水道水を用いて希釈、TAPPIスタンダードシートマシン(1/50)により坪量70g/m2の紙を抄紙した。添加薬品として、中性ロジンサイズ、0.2%(対製紙乾燥分、以下同様)、硫酸バンド1.0%、表2の試料−1〜試料−5をそれぞれ0.2%、歩留向上剤としてカチオン性ポリアクリルアミド(分子量;750万、カチオン等量値;2.80meq/g)を対製紙原料0.015%、それぞれこの順で15秒間隔により添加した。実施例6〜10と同様に裂断長の算出及びステキヒトサイズを測定した。また乾燥後、濾紙を600℃で焼却し灰分を測定することにより炭酸カルシウムの歩留率を算出した。結果を表4に示す。
【0046】
【比較例10〜14】
比較として表2の比較−1〜比較−4、及び前記市販のポリアクリルアミド系両性紙力増強剤(分子量;300万、乾燥固形分;21.4%、カチオン等量値;0.097meq/g、アニオン等量値;0.049meq/g、比較−5を用いて同様な操作により試験を行った。結果を表4に示す。
【0047】
【実施例16〜20】
ダンボールライナ−用製紙原料pH5.75、全ss分2.4%、灰分0.13%、を用いて試験を行った。パルプ濃度0.9重量%に水道水を用いて希釈、TAPPIスタンダードシートマシン(1/50)により坪量70g/m2の紙を抄紙した。添加薬品として、エマルジョン型ロジンサイズ0.1%、硫酸バンド2.5%、表2の試料−1〜試料−5をそれぞれ0.2%、歩留向上剤としてカチオン性ポリアクリルアミド(分子量;750万、カチオン等量値;2.80meq/g)を対製紙原料0.015%、それぞれこの順で15秒間隔により添加した。実施例6〜10と同様に裂断長の算出及びステキヒトサイズを測定した。また乾燥後、800℃で焼却し灰分を測定することにより無機物の歩留率を算出した。結果を表5に示す。
【0048】
【比較例15〜19】
比較として表2の比較−1〜比較−4、及び前記市販のポリアクリルアミド系両性紙力増強剤(分子量;300万、乾燥固形分;21.4%、カチオン等量値;0.097meq/g、アニオン等量値;0.049meq/g、比較−5を用いて同様な操作により試験を行った。結果を表5に示す。
【0049】
【表3】
裂断長;Km、ステキヒトサイズ;秒、無機物歩留率;重量%
【0050】
【表4】
裂断長;Km、ステキヒトサイズ;秒、炭酸カルシウム歩留率;重量%
【0051】
【表5】
裂断長;Km、ステキヒトサイズ;秒、無機物歩留率;重量%
Claims (4)
- 下記一般式(1)及び/又は(2)で表わされる単量体3〜40モル%、下記一般式(3)で表わされる単量体3〜30モル%、水溶性非イオン性単量体30〜94モル%からなる単量体混合物を攪拌下、ポリアルキレンイミン硫酸中和物をポリアルキレンイミン換算で10〜100重量%共存させ、2〜15重量%の塩水溶液中において分散重合し製造された重量平均分子量が100万〜600万の両性水溶性重合体により構成され、粒径100μm以下の微粒子分散液からなる紙力増強剤。
R1は水素又はメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、X1は陰イオンをそれぞれ表わす
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、X2は陰イオンをそれぞれ表わす
R8は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO3、C6H4SO3、
CONHC(CH3)2CH2SO3、C6H4COOあるいはCOO、R9は水素またはCOOY2、Y1あるいはY2は水素または陽イオン - 下記一般式(1)及び/又は(2)で表わされる単量体3〜30モル%、水溶性非イオン性単量体70〜97モル%からなる単量体混合物を攪拌下、ポリアルキレンイミン硫酸中和物をポリアルキレンイミン換算で10〜100重量%共存させ、2〜15重量%の塩水溶液中において分散重合し製造された重量平均分子量が100万〜600万のカチオン性水溶性重合体により構成され、粒径100μm以下の微粒子分散液からなる紙力増強剤。
R1は水素又はメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、X1は陰イオンをそれぞれ表わす
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、X2は陰イオンをそれぞれ表わす - 下記一般式(3)で表わされる単量体2〜50モル%、水溶性非イオン性単量体50〜98モル%からなる単量体混合物を攪拌下、ポリアルキレンイミン硫酸中和物を共存させ、2〜15重量%の塩水溶液中において分散重合し製造された重量平均分子量が100万〜600万のアニオン性水溶性重合体により構成され、粒径100μm以下の微粒子分散液からなる紙力増強剤。
R8は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO3、C6H4SO3、
CONHC(CH3)2CH2SO3、C6H4COOあるいはCOO、R9は水素またはCOOY2、Y1あるいはY2は水素または陽イオン - 請求項1〜3のいずれかに記載の分散液からなる紙力増強剤を、抄紙前の製紙原料中に添加し、紙の強度を向上させることを特徴とする紙力増強方法。
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