JPH10182191A - 透明導電膜およびその形成用組成物 - Google Patents

透明導電膜およびその形成用組成物

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JPH10182191A
JPH10182191A JP8345778A JP34577896A JPH10182191A JP H10182191 A JPH10182191 A JP H10182191A JP 8345778 A JP8345778 A JP 8345778A JP 34577896 A JP34577896 A JP 34577896A JP H10182191 A JPH10182191 A JP H10182191A
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layer
transparent conductive
conductive film
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年治 林
Akira Nishihara
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ブラウン管表面に、可視光最低反射率が1%
以下、ヘーズが1%以下、全可視光線透過率が60%以
上、表面抵抗が 102〜103 Ω/□台と低抵抗の透明導電
膜を形成して、外部映像の映り込みによる視認性低下の
防止、コントラストの向上、電磁波漏洩の防止を図る。 【解決手段】 シリカ質マトリックス中に平均一次粒子
径2〜30 nm の金属微粉末の二次粒子が網目構造に分布
した導電層からなる下層の上に、シリカ質の上層を被覆
した2層構造の透明導電膜とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブラウン管などの
透明基体に帯電防止、電磁波シールド、映り込みの防止
などの機能を付与するのに適した、低反射性で低抵抗の
透明導電膜に関する。
【0002】
【従来の技術】TVや各種ディスプレイ用CRTを含む
ブラウン管の画像表示部であるフロントパネルのガラル
表面には、静電気によりほこりが付着し易く、また表面
が高反射性であるため、スクリーンへの外部の光の反射
や外部映像の映り込みにより画像が不明瞭になるといっ
た問題点がある。また、最近ではブラウン管から出る電
磁波の人体に対する影響が懸念されるようになり、低周
波の漏洩電磁波に対する規格も各国で制定されるように
なってきた。
【0003】ほこりの付着防止や電磁波の漏洩防止に
は、帯電防止効果や電磁波シールド効果のある透明導電
膜をスクリーン外面に形成する手段が一般に採用されて
いる。映り込みの防止対策としては、スクリーンのガラ
ス表面をフッ酸等を用いて微細凹凸処理して光を散乱さ
せるノングレアー処理が一般に行われてきた。しかし、
ノングレアー処理は画像の解像度を悪化させ、視認性が
低下するという問題がある。
【0004】そのため、最近では高屈折率の透明導電膜
の上に低屈折率の透明オーバーコート膜を形成した2層
膜によって、帯電防止(ほこり付着防止)と映り込み防
止の両方の機能を付与することが試みられている。この
ような2層膜では、高屈折率膜と低屈折率膜の屈折率差
が大きければ、上層の低屈折率膜表面からの反射光が下
層の高屈折率膜との界面からの反射光の干渉によって打
ち消され、結果として映り込みが防止される。この透明
導電膜の導電性が高い場合には、電磁波シールド効果も
同時に付与される。
【0005】例えば、特開平5−290634号公報には、Sb
ドープ酸化錫 (ATO) 微粉末を界面活性剤を用いて分
散させたアルコール分散液をガラス基体に塗布し、乾燥
して、高屈折率の導電膜を形成し、その上にフッ化マグ
ネシウムを含有していてもよいアルコキシシランから形
成されたシリカの低屈折率膜を形成することによって、
反射率を0.7 %まで低減させた2層膜が提案されてい
る。
【0006】特開平6−12920 号公報には、基体上に形
成した高屈折率層−低屈折率層の光学的膜厚nd (n:
膜厚、d:屈折率)をそれぞれ 1/2λ−1/4λ (λ=入
射光の波長) とした場合に低反射性となることが記載さ
れている。この公報によれば、高屈折率層はATOまた
はSnドープ酸化インジウム (ITO) 微粉末を含有する
シリカ質の膜であり、低屈折率層はシリカ膜である。
【0007】特開平6−234552号公報にもITO含有シ
リケート高屈折率導電膜−シリケートガラス低屈折率膜
からなる2層膜が開示されている。特開平5−107403号
公報には、導電性微粉末とTi塩を含有する液を塗布して
形成した高屈折率導電膜と低屈折率膜との2層膜が記載
されている。
【0008】特開平6−344489号公報には、ATO微粉
末と黒色導電性微粉末 (好ましくはカーボンブラック微
粉末) とからなる、固形分が密に充填された高屈折率の
第1層膜と、その上に形成したシリカ質の低屈折率膜と
からなる、黒色味を帯びた2層膜が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ATOやIT
Oといった半導体性の導電性粉末を使用した透明導電膜
では、電磁波シールド効果を生ずるように低抵抗化する
ことが困難であるか、或いは電磁波シールド効果を生ず
るように低抵抗化できても、それにより透明性が著しく
阻害される。特に最近では、ブラウン管からの漏洩電磁
波に対する規格がより厳しくなり、上述した従来技術で
は電磁波シールド効果が不十分で対応が困難になってお
り、より低抵抗で電磁波シールド効果の大きい透明導電
膜が求められている。
【0010】本発明の目的は、高度の電磁波シールド効
果を発揮するように低抵抗化され、しかもブラウン管の
視認性を阻害しない高い透明性と低ヘーズ値を保持し、
ブラウン管に外部映像の映り込み防止機能を付与するこ
とができる低反射性を備えた、透明導電膜を提供するこ
とである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ブラウン
管の電磁波シールド性に対する最近の厳しい規格を考慮
すると、透明導電膜に使用する導電性粉末として、AT
OやITOといった半導体性の無機微粉末ではなく、よ
り導電性が高い金属微粉末の使用が望ましいとの結論に
達し、さらに検討を進めた結果、金属微粉末を含有する
下層の透明導電膜にシリカ質の低屈折率の上層皮膜を設
けた2層膜がこの目的に適していることが判明した。
【0012】しかし、金属微粉末は可視光を反射するた
め、得られた2層膜の透明性が低くなるが、金属微粉末
の二次粒子を網目構造を形成するように分散させて皮膜
化すると、網目構造内の空孔を可視光が透過できるた
め、透明性が大きく向上し、上記目的を達成することが
できることを見出した。
【0013】ここに、本発明は、透明基体の表面に設け
たシリカ質マトリックス中に金属微粉末を含有する下層
と、その上に設けたシリカ質の上層とからなる、2層構
造の透明導電膜であって、該下層内において、該金属微
粉末の二次粒子が、内部に金属微粉末を含まない空孔を
持った二次元網目構造を形成するように分布しているこ
とを特徴とする、低反射性で低抵抗の透明導電膜であ
る。
【0014】好適態様にあっては、前記網目構造の空孔
の平均面積が 2,500〜30,000 nm2の範囲内であり、該空
孔が膜の全面積の30〜70%を占める。かかる金属微粉末
の二次粒子の網目構造は、例えば、平均一次粒子径が2
〜30 nm の金属微粉末を、1〜30wt%のプロピレングリ
コールメチルエーテル、1〜30wt%のイソプロピルグリ
コール、および1〜10wt%の4−ヒドロキシ−4−メチ
ル−2−ペンタノンの少なくとも1つを含む溶媒中に分
散剤を用いて分散させた塗料を用いて形成することがで
きる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の透明導電膜を形成する透
明基体は特に制限されず、低反射性と電磁波シールド性
を付与することが望ましい任意の透明基体でよい。代表
的な透明基体はガラスであるが、透明プラスチック等の
基体上に本発明の透明導電膜を形成することもできる。
【0016】前述したように、低反射性と電磁波シール
ド性の付与が特に求められている透明基体は、TVやコ
ンピュータ等の表示装置として使用されるブラウン管の
フロントパネルガラスである。本発明の透明導電膜は、
低反射性と電磁波シールド性(低抵抗) に加えて、反射
スペクトルが平坦で、従来のある種の透明導電膜のよう
に青〜紫味または赤〜黄色味を帯びておらず、無色であ
り、視感度がよいという特徴を持つ。従って、この導電
膜をブラウン管の画面表示部の表面に形成すると、健康
に有害でコンピュータの誤動作の原因ともなる電磁波の
漏洩、ほこりの付着、および外部映像の映り込みを防止
ないし低減でき、膜の透明性 (可視光透過率) とヘーズ
が良好で、反射光が無色であるため、映像の視感度が良
好に保持される。
【0017】本発明の透明導電膜は、シリカ質マトリッ
クス中に導電性粉末として金属微粉末を含有する下層
(導電層) と、粉末を含有しないシリカ質の上層とから
なる2層膜である。下層は金属微粉末を密に含有するた
め屈折率が高いのに対し、上層は低屈折率である。この
2層膜構成により、本発明の透明導電膜は、低反射性と
低抵抗という特性を有し、上記の機能を発揮することが
できる。
【0018】本発明の透明導電膜において、下層の導電
層のシリカ質マトリックスと、シリカ質の上層は、いず
れもアルコキシシラン (より広義には、加水分解性シラ
ン化合物) から形成することができる。
【0019】アルコキシシランとしては、少なくとも1
個、好ましくは2個以上、さらに好ましくは3個以上の
アルコキシル基を有する任意の1種または2種以上のシ
ラン化合物が使用できる。加水分解性の基としてハロゲ
ンを含有するハロシラン類も、アルコキシシランと一緒
に、またはアルコキシシランに代えて使用することがで
きる。
【0020】アルコキシシランの具体例としては、テト
ラエトキシシラン (=エチルシリケート) 、テトラプロ
ポキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジ
メトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、クロル
トリメトキシシラン、各種のシランカップリング剤
(例、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピル
トリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシ
シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メ
タクリロキシプロピルトリメトキシシラン、 N−フェニ
ル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−β−
(アミノエチル) −γ−アミノプロピルトリメトキシシ
ラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリ
メトキシシラン) などが挙げられる。好ましいのは、最
も安価で容易に加水分解するエチルシリケートである。
【0021】アルコキシシランからなる皮膜は、加水分
解を受けるとアルコールが脱離し、生成したOH基同士
が縮合して、シリカゾルになる。このゾルを加熱して焼
付けると、縮合がさらに進んで最終的に硬質のシリカ
(SiO2) 皮膜になる。従って、アルコキシシランは、無
機皮膜形成剤としてシリカ質皮膜を形成するのに利用で
き、粉末と一緒に皮膜化した場合には、粉末を結合する
無機バインダーとして機能して、皮膜のマトリックスを
構成することになる。なお、ハロシランも加水分解によ
り同様に最終的にシリカ皮膜を形成できるが、以下では
アルコキシシランを使用する場合について説明する。
【0022】下層導電層 本発明の透明導電膜の下層導電層は、シリカ質マトリッ
クス中に金属微粉末を含有する。シリカ質マトリックス
は、前述したように、アルコキシシランから形成するこ
とができる。
【0023】金属微粉末としては、アルコキシシランの
皮膜形成性に悪影響を及ぼさない限り、任意の金属もし
くは合金の粉末、または金属および/もしくは合金粉末
の混合物が使用できる。金属微粉末の材質として好まし
いのは、Fe、Co、Ni、Cr、W、Al、In、Zn、Pb、Sb、B
i、Sn、Ce、Cd、Pd、Cu、Pt、AgおよびAuよりなる群か
ら選ばれた1種もしくは2種以上の金属、ならびに/ま
たはこれらの金属の合金、ならびに/またはこれらの金
属および/もしくは合金の混合物である。これらの中で
特に好ましい金属種は、Ni、W、In、Zn、Sn、Pd、Cu、
Pt、Ag、BiおよびAuであり、最も好ましいのは低抵抗の
Agである。好ましい合金は、Cu−Ag、Ni−Ag、Ag−Pd、
Ag−Sn、Ag−PbなどのAg合金であるが、これに限定され
るものではない。また、Agと他の金属(例、W、Pb、C
u、In、Sn、Bi) との混合物も金属微粉末として好まし
い。
【0024】金属微粉末には、P、B、C、N、Sなど
の1種もしくは2種以上の非金属、またはNa、Kなどの
アルカリ金属および/もしくはMg、Caなどのアルカリ土
類金属の1種もしくは2種以上が固溶していてもよい。
【0025】金属微粉末は、平均一次粒子径が2〜30 n
m の範囲内の微粒子状のものが好ましい。平均一次粒子
径がこの範囲外であると、本発明の特徴である、金属微
粉末の二次粒子の網目構造を形成することが困難とな
る。平均一次粒子径はより好ましくは5〜25 nm であ
る。このような微粒子状の金属微粉末は、コロイド生成
の手法 (例、保護コロイドの存在下で金属化合物を適当
な還元剤により金属に還元させる) を利用して製造する
ことができる。
【0026】前述したように、本発明の2層構造の透明
導電膜においては、導電性粉末として下層に存在する金
属微粉末が特定の分布状態を取る。即ち、サブミクロン
の微粒子は、一般に一次粒子 (個々の粒子) が凝集した
二次粒子の形態を取る傾向があるが、本発明において
は、図1に模式的に示すように、金属微粉末の二次粒子
が二次元的に連結することにより形成された二次元網目
構造をとり、この網目構造の中に空孔が存在する。この
ような網目構造は、後述する方法により形成することが
できる。
【0027】空孔はほぼ完全にシリカ質マトリックスだ
けで充填されており、金属微粉末はほとんど存在しな
い。従って、下層のこの空孔部分は実質的に透明であ
り、この空孔部分の位置で透明導電膜に入射した可視光
線の多くは、この空孔を透過することができる。その結
果、可視光の透過率が増大し、透明導電膜の透明性が向
上する。
【0028】一方、網目構造の空孔以外の部分 (金属微
粉末の二次粒子が連結することにより密に充填されてい
る部分) の位置に入射した可視光は、金属微粉末により
反射する。しかし、この部分の透明導電膜においては、
下層は金属微粉末の存在により高屈折率であり、シリカ
質で低屈折率の上層との屈折率差が大きい。そのため、
この部分の透明導電膜に入射した可視光は、従来の2層
膜と同様に、上層と下層の屈折率差により低反射性とな
る。
【0029】このように、内部に空孔を多数有する網目
構造となるように金属微粉末の二次粒子を下層内に分布
させることにより、2層膜に固有の低反射性を保持しな
がら、空孔の存在によって透明導電膜の透明性を高くす
ることができる。この効果を確実に得るには、空孔の平
均面積が 2,500〜30,000 nm2の範囲内であり、空孔が膜
の全面積の30〜70%を占めるようにすることが好まし
い。
【0030】導電性粉末として、金属微粉末に加えて、
ITOやATOなどの無機酸化物系の透明導電性微粉末
(平均一次粒子径が0.2 μm以下、好ましくは0.1 μm
以下のもの) を併用することもできる。その場合でも、
導電性粉末の50重量%以上が金属微粉末となるようにす
ることが好ましく、より好ましくは導電性微粉末の60重
量%以上が金属微粉末からなる。
【0031】下層の導電層におけるシリカ質マトリック
スの量は、金属微粉末を結合するのに十分な量であれば
よい。この導電層はシリカ質の上層で被覆されるので、
特に高い膜強度や硬度を必要としない。好ましくは、シ
リカ質マトリックスの量は5〜30重量%である。
【0032】透明導電膜の形成方法 本発明の2層構造の透明導電膜の形成方法は特に制限さ
れるものではないが、例えば、以下に説明する方法を採
用することができる。
【0033】まず、透明基体の上に、下層形成用の塗料
を塗布して、金属微粉末の二次粒子が前述した網目構造
をとるように分布した膜を形成する。この下層形成用の
塗料は、一般に、分散剤を含有する溶媒中に金属微粒子
を分散させた分散液からなる。この塗料は、焼付け後に
シリカ質マトリックスとなるアルコキシシランを含有し
ていても、含有していなくてもよい。
【0034】下層形成用の塗料がバインダーとなるアル
コキシシランを含有しない場合には、この塗料を塗布
し、乾燥して溶媒を蒸発させると、実質的に金属微粉末
のみからなる皮膜が基体表面に形成される。金属微粉末
がサブミクロンの微粒子からなり、凝集性が強いため、
バインダーが存在しなくても皮膜化できる。その後、上
層形成用のアルコキシシランの溶液からなる塗料を塗布
すると、塗布した溶液の一部は下層の金属微粉末の粒子
間の空隙や、前述した網目構造の空孔に浸透し、金属微
粉末を結合するバインダーとして機能する。この上層形
成用の塗料の塗布は、下層皮膜中に浸透しきれなかった
塗料が下層皮膜の上に残るように行う。
【0035】次いで加熱して皮膜を焼付けると、アルコ
キシシランはシリカ質皮膜に変化し、下層の粒子間に浸
透したアルコキシシランは、粒子間の空隙や空孔を埋め
るシリカ質マトリックスとなり、浸透しきれなかったア
ルコキシシランは上層のシリカ質皮膜を形成し、本発明
の2層構造の透明導電膜が得られる。
【0036】この方法では、時間とエネルギーコストの
かかる焼付け工程が1回で済み、製造工程が単純化され
る。即ち、この方法では、塗料の塗布は2回行うが、ス
ピンコート法で塗布すれば、1台のスピンコーター上で
順に下層用塗料と上層用塗料を滴下することにより連続
的に塗布を実施でき、その後に一度に焼付けを行うた
め、実質的には1回の塗布と同様の単純な作業工程で2
層膜を形成することができる。また、最初に形成した金
属微粉末の皮膜にバインダーが存在しないため、金属微
粉末が直接接触した状態にあり、この状態がアルコキシ
シランを含浸させた後でも保持されるため、皮膜がより
低抵抗化する点でも有利である。
【0037】下層形成用の塗料がアルコキシシランを含
有する場合には、この塗料を透明基体に塗布した後、塗
膜を焼付けてアルコキシシランをシリカ質マトリックス
に転化させ、下層の導電層を形成する。その後、アルコ
キシシラン溶液からなる上層用塗料を塗布し、再び焼付
ける。従って、2回の焼付け工程が必要である。
【0038】いずれの場合でも、下層形成用の塗料は、
この塗料を基体表面に塗布した時に、金属微粉末の二次
粒子が網目構造に分布するように調整する。塗料を塗布
した時の塗料中の金属微粉末の二次粒子の分布状態は、
金属微粉末の平均一次粒子径、塗料の粘度、溶媒の表面
張力などの因子に依存する。従って、溶媒種、金属微粉
末の平均一次粒子径、金属微粉末の濃度などのパラメー
タを、塗布後に金属微粉末の二次粒子の網目構造の分布
状態が得られるように選択すればよく、これは当業者で
あれば実験により可能である。
【0039】例えば、下層形成用の塗料がバインダーと
なるアルコキシシランを含まない、即ち、分散剤を含有
する溶媒中に金属微粉末を分散させた分散液からなる場
合、金属微粉末の平均一次粒子径が2〜30 nm であっ
て、溶媒が1〜30wt%のプロピレングリコールメチルエ
ーテル、1〜30wt%のイソプロピルグリコール、および
1〜10wt%の4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタ
ノンの少なくとも1種を含んでいると、塗料を塗布した
時に金属微粉末の二次粒子が網目構造を形成し易い。
【0040】溶媒の残りの部分は、水および/またはメ
タノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール
などの低級アルコールから構成することが好ましい。し
かし、溶媒はこれに限定されるものではなく、塗料を塗
布した時に上記の網目構造を形成することができれば、
任意の溶媒を用いて塗料を作製することができる。使用
しうる他の溶媒としては、アセトン、メチルエチルケト
ン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソ
ホロン等のケトン類;トルエン、キシレン、ヘキサン、
シクロヘキサン等の炭化水素類;N,N-ジメチルホルムア
ミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメ
チルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられ
る。
【0041】下層形成用の塗料がバインダーとしてアル
コキシシランを含有する場合にも、前述したプロピレン
グリコールメチルエーテル、イソプロピルグリコール、
4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンの3種類
の溶媒の使用は、網目構造の形成に有効であるが、その
量は変更する必要があるかも知れない。いずれにして
も、使用溶媒は実験により決定すればよい。
【0042】下層形成用の塗料は、チタネート系もしく
はアルミニウム系カップリング剤、高分子分散剤、およ
び界面活性剤の1種もしくは2種以上を含有することが
好ましい。チタネート系もしくはアルミニウム系カップ
リング剤の例としては、イソプロピルトリイソステアロ
イルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスル
ホニルチタネート、イソプロピルトリス (ジオクチルパ
イロホスフェート) チタネート、テトライソプロピルビ
ス (ジオクチルホスファイト) チタネート、テトラオク
チルビス (ジトリデシルホスファイト) チタネート、テ
トラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル) ビス
(ジ−トリデシル) ホスファイトチタネート、ビス (ジ
オクチルパイロホスフェート) オキシアセテートチタネ
ート、トリス (ジオクチルパイロホスフェート) エチレ
ンチタネート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプ
ロピレートなどが挙げられる。高分子分散剤の例は、ポ
リビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチ
レングリコール−モノ−p−ノニルフェニルエーテル等
である。界面活性剤はノニオン系、カチオン系、アニオ
ン系のいずれでもよく、その例としては、p−アミノベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホ
ン酸ナトリウム、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム
塩 (例、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド)
などがある。これらの添加剤の添加量は、例えば、分散
液 (塗料) の 0.001〜0.200 重量%の範囲内の少量でよ
い。
【0043】下層形成用の塗料の粘度は好ましくは 0.8
〜10 cps、より好ましくは 0.9〜5cpsである。塗料中
の金属微粉末の量は、塗料の 0.1〜15重量%、特に 0.3
〜10重量%の範囲内が適当である。アルコキシシランを
含有する場合には、アルコキシシランの量 (SiO2に換算
した量) は、金属微粉末との合計量に対して1〜18重量
%の範囲内が好ましい。
【0044】アルコキシシランは予め加水分解させて、
塗料に使用することもできる。それにより、塗布後の焼
付けを短時間で完了させることができる。この場合の加
水分解は、反応を促進させるため、酸触媒 (例、塩酸な
どの無機酸、またはp−トルエンスルホン酸などの有機
酸) と水の存在下で行うことが好ましい。アルコキシシ
ランの加水分解は、室温ないし加熱下で行うことがで
き、好ましい反応温度は20〜80℃の範囲内である。
【0045】下層形成用の塗料の塗布は、スプレー法、
スピンコート法、浸漬法などによって行うことができる
が、成膜精度の点からスピンコート法が好ましい。塗布
は、乾燥後に10〜200 nm、特に25〜150 nmの範囲の膜厚
の下層導電層が形成されるように行うことが好ましい。
膜厚が10 nm 未満では導電性や低反射性を十分に付与で
きず、200 nmより厚くなると金属微粉末の二次粒子の網
目構造の形成が困難となる。
【0046】下層形成用の塗料がアルコキシシランを含
有する場合には、塗料の塗布後に塗膜を加熱して、アル
コキシシランをシリカに転化させる。それにより、シリ
カ質マトリックス中に金属微粉末の二次粒子が網目構造
状に分布している、導電性の下層塗膜が形成される。こ
の焼付け条件は、後述する上層形成用塗料の塗布後の焼
付けと同様でよい。
【0047】塗料がアルコキシシランを含有しない場合
には、塗膜から適宜手段で溶媒を蒸発させ、実質的に金
属微粉末のみからなる皮膜を基体上に形成する。この溶
媒の蒸発は、使用した溶媒の沸点に応じて、無加熱また
は加熱により実施することができる。例えば、塗布をス
ピンコート法で行う場合には、溶媒の種類にもよるが、
回転時間を十分にとれば、加熱せずに回転中に溶媒を蒸
発させることができる。なお、溶媒の蒸発は完全に行う
必要はなく、溶媒が一部残っていてもよい。
【0048】こうして形成された下層皮膜の上に、上層
形成用のアルコキシシラン溶液からなる塗料を塗布し、
焼付けてシリカ質皮膜を形成する。この塗料中のアルコ
キシシランは、塗布後のアルコキシシランの加水分解を
促進させるため、予め加水分解した、シリカゾルと呼ば
れるものでもよい。シリカゾルは、アルコキシシラン溶
液を酸触媒 (好ましくは塩酸または硝酸) の存在下で室
温または加熱下に加水分解することにより調製できる。
【0049】シリカゾルを使用する場合、上層形成用の
塗料中のシリカゾル濃度は、SiO2換算で 0.5〜2.5 重量
%の範囲内が好ましい。この塗料の粘度は好ましくは
0.8〜10 cps、より好ましくは 1.0〜4.0 cps である。
シリカゾル濃度が低すぎると、下層の粉末の結合や上層
の膜厚が不十分となり、高すぎると成膜精度が低下し、
上層の膜厚の制御が困難となる。また、この塗料の粘度
が高すぎると、シリカゾルが下層の粉末粒子間の間隙に
十分に含浸しなくなり、導電性が低下する上、成膜精度
が低下して、上層の膜厚の制御も困難となる。
【0050】この塗料の塗布後の焼付けは、特に透明基
体がブラウン管である場合には、ブラウン管の寸法精
度、蛍光体の脱落防止のため、250 ℃以下、好ましくは
200 ℃、さらに好ましくは180 ℃以下に加熱することに
より行う。透明基体がブラウン管以外のものである場合
には、その基体材質に許される範囲内でこれより高い乾
燥温度を採用してもよい。
【0051】下層皮膜をアルコキシシランを含まない塗
料から形成した場合には、前述したように、上層塗料の
塗布により、この塗料中のアルコキシシラン (またはそ
の加水分解物、特にシリカゾル) が、金属微粉末の二次
粒子が網目構造状に分布している下層皮膜の金属微粉末
粒子間の空隙や網目構造の空孔内に浸透して、これらの
空隙や空孔を充填し、焼付け後にシリカ質マトリックス
を形成する。一方、浸透しきれなかった塗料は、焼付け
後にシリカ質の上層を形成する。この場合、浸透性の調
整のための界面活性剤などの添加剤を、塗料に添加して
もよい。
【0052】金属微粉末を含有しないシリカ質の上層
は、金属微粉末を含有する下層に比べて屈折率が低く、
それにより従来の導電性2層膜と同様に、低反射性の2
層膜が得られる。この機能に好ましい上層皮膜の膜厚は
20〜150 nm、より好ましくは50〜120 nm、最も好ましく
は60〜100 nmである。上層形成用塗料の塗布方法は、下
層の場合と同様でよいが、膜厚が非常に薄いため、膜厚
の制御が容易なスピンコート法が特に好ましい。
【0053】本発明の2層膜構造の透明導電膜の厚み方
向の断面を調査した結果、下層形成用の塗料がアルコキ
シシランを含有しなかった場合には、下層の導電層にお
ける粉末の含有率が、上層との界面から急激な増大を見
せるのではなく、緩やかに増大することが判明した。こ
のような2層膜構造は、下層の導電層の膜厚が変動した
時の可視光最低反射率の変動が少ないという特徴があ
る。即ち、反射率は、膜厚(nm)×屈折率の値がλ/4
(λは入射光線の波長<nm>) に等しい時に最低になる
が、下層の膜厚がこの値から大きく外れても、可視光最
低反射率を低く保つことができる。
【0054】一方、下層形成用の塗料がアルコキシシラ
ンを含有していた場合には、下層の導電性の粉末の含有
率は、上層との界面から急激に増大する。この場合に
は、各層ごとの膜厚の制御が容易であり、可視光最低反
射率が最も低くなるように上層と下層の膜厚を容易に制
御できるという特徴がある。
【0055】いずれの方法で形成しても、本発明の2層
構造の透明導電膜は、反射光が青みを帯びず、無色に近
く、透明性が高く、低反射性という光学的特徴を持つ。
具体的には、可視光透過率が60%以上、好ましくは70%
以上、さらに好ましくは75%以上と高く、ヘーズは1%
以下と低い。可視光反射率は、最低反射率が1%と低い
上、反射スペクトルが平坦であり、従来の2層導電膜の
反射光の青みの原因であった短波長側 (例、400 nm) で
の反射率の増大が、長波長側(例、800 nm) とそれほど
違わないレベルの抑えられている。そのため、反射光は
青みがなく、実質的に無色であり、映像の視感度が高ま
る。
【0056】この透明導電膜は、導電性粉末である金属
微粉末の二次粒子が網目構造を形成するように連結して
いて、この金属微粉末の連結構造を伝わって電気が流れ
るため、金属微粉末の充填度が比較的低い (空孔があ
る) にもかかわらず、表面抵抗が 102〜103 Ω/□台と
いう低抵抗を示し、電磁波シールド機能を十分に果たす
ことができる。
【0057】
【実施例】下層形成用の塗料 界面活性剤または高分子分散剤を含む溶媒中に金属微粉
末を加え、直径0.3 mmのジルコニアビーズを用いてペイ
ントシェーカーで混合することにより金属微粉末を溶媒
中に分散させて、アルコキシシランを含有しない下層形
成用の塗料を調製した。使用した金属微粉末、添加剤お
よび溶媒の種類と塗料中のそれぞれの量(%は重量%)
は表1に示す通りであった。金属微粉末は、コロイド的
手法 (保護コロイドの存在下で金属化合物を還元剤と反
応させて還元する) により調製したものであり、その平
均一次粒子径も表1に示す。表1に示した添加剤および
溶媒 (かっこ内は重量比) の記号の意味は次の通りであ
る。
【0058】添加剤: A=ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド B=ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム C=ポリビニルピロリドン (関東化学製K-30) 溶媒: 水/プロピレングリコールメチルエーテル/4−ヒド
ロキシ−4−メチル−2−ペンタノン (85/10/5) 、 メタノール/イソプロピルグリコール (71/29) 、 水/プロピレングリコールメチルエーテル (98.5/1.
5)、 エタノール/イソプロピルグリコール/プロピレング
リコールメチルエーテル/4−ヒドロキシ−4−メチル
−2−ペンタノン (84/1.5 /5/9.5)、 エタノール (100)、 水/プロピレングリコールメチルエーテル (68/32)
【0059】上層形成用塗料 エトキシシラン (エチルシリケート) を、少量の塩酸と
水を含有するエタノール中で60℃に1時間加熱して加水
分解させ、シリカゾルを合成した。得られたシリカゾル
溶液を、エタノール/イソプロパノール/ブタノールの
重量比5:8:1の混合溶媒で希釈して、SiO2換算濃度
が 1.0重量%、粘度が1.65 cpsの塗料を調製した。
【0060】成膜方法 100 mm×100 mm×厚さ3mmの寸法のソーダライムガラス
(青板ガラス) からなる基体の片面に、スピンコーター
を用いて、下層形成用塗料と上層形成用塗料を順に滴下
して成膜した。各塗料とも、滴下量は5〜10g、回転数
は 140〜180rpm、回転時間は60〜150 秒の範囲内であっ
た。その後、基体を大気中において170℃に30分間加熱
して塗膜を焼付け、ガラス基体上に透明導電膜を形成し
た。得られた膜の特性を次のようにして評価し、それら
の結果を表1に一緒に示した。
【0061】膜特性の評価 金属微粉末二次粒子の網目構造の空孔の平均面積と占有
率:膜上面のTEM写真から測定した。 膜厚:各層の膜厚はSEM断面により測定した。 密着性:ライオン社製の消しゴムER-20Rを用い、荷重1
kgf/cm2 、ストローク幅5cm、往復50回後、キズの状態
を目視で観察した。○はキズなし、×はキズ認められ
る、を意味する。
【0062】表面抵抗:四探針法 (ロレスタAP:三菱油
化製) により測定した。 光透過率 (全可視光線透過率) :自記分光光度計 (U-40
00型:日立製作所製)により測定した。 ヘーズ:ヘーズメーター (HGM-3D:スガ試験機製) によ
り測定した。
【0063】可視光反射率:ガラス基体の背面に、黒色
ビニールテープ (No.21:日東電工)を貼り、50℃で30分
保温してブラックマスクを形成した後、自記分光光度計
によって12°の正反射による可視域波長の反射スペクト
ルを測定した。この反射スペクトルから反射率の最小値
(最低反射率) と400 nmおよび800 nmでの反射率とを求
め、最低反射率となった波長と一緒に表1に示した。
【0064】また、試験No. 2の本発明例の透明導電膜
の表面のTEM写真を図2に、その透過スペクトルおよ
び反射スペクトルを図3(a) および(b) に、試験No.11
の比較例の透明導電膜の表面のTEM写真を図4に、そ
の透過スペクトルおよび反射スペクトルを図5(a) およ
び(b) に示す。
【0065】
【表1】
【0066】表1からわかるように、本発明例では、平
均一次粒子径が2〜30 nm の金属微粉末を特定の条件を
満たす溶媒中に分散剤を用いて分散させた塗料を用いた
結果、下層の導電層において、例えば、図2のTEM写
真に示すように、金属微粉末の二次粒子が網目構造を形
成するように分布し、この網目構造内に空孔が存在して
いた。
【0067】但し、本発明の透明導電膜の形成方法は、
実施例に示した方法に限定されるものではなく、同じよ
うな網目構造が生成するのであれば、どのような方法で
膜を形成してもよい。また、金属微粉末が下層内に一様
に分布せず、二次粒子の網目構造を形成しているにもか
かわらず、膜の密着性は良好であった。
【0068】これに対して、比較例では、溶媒の種類ま
たは金属微粉末の平均一次粒子径が不適切であったた
め、金属微粉末の二次粒子は網目構造を形成せず、図4
に示すように比較的バラバラに分布していた。また、特
に平均一次粒子径が60nmと規定よりもはるかに大きい場
合 (No.12)には、膜の可視光透過率と密着性が著しく低
下し、ヘーズも高いため、実用に耐える密着性が得られ
なかった。
【0069】本発明例では、下層導電層の膜厚が28nmか
ら146 nmと広い範囲にわたっている(λ/4から大きく
はずれる場合がある) にもかかわらず、得られた導電膜
は1%以下の可視光最低反射率、1%以下のヘーズ、60
%以上、多くは70%以上の全可視光線透過率を示し、画
像の映り込みを防止することができる低反射性で、かつ
映像の視認性を妨害しない十分な透明性を有しているこ
とがわかる。
【0070】また、400 nmおよび800 nmでの反射率を最
低反射率と比較すると、いずれの透明導電膜も400 nmで
の反射率の方が高くなったが、その反射率の値は比較的
小さく、図3(b) に示すように、反射スペクトルは比較
的平坦であった。即ち、低反射性である上に、反射光に
青みがなく、映像の視感度に優れていることがわかる。
さらに、図3(a) に示すように、透過スペクトルも非常
に平坦であり、膜自体も無色である。
【0071】これに対し、比較例では、全可視光線透過
率が低く、膜の透明性に劣る上、最低反射率は低いもの
の、図5(b) に示すように特に短波長側における反射ス
ペクトルの増大が大きく (反射スペクトルが平坦ではな
く) 、400 nmでの反射率が本発明例に比べて大きくなっ
た。そのため、反射光は青みを帯び、映像の視感度に悪
影響が出る。
【0072】導電性を見ると、本発明例の透明導電膜の
表面抵抗は、 102〜103 Ω/□台であり、電磁波シール
ド性を十分に付与することができる高い導電性を有す
る。これに対し、比較例の透明導電膜では、金属微粉末
を同じような量で使用しているにもかかわらず、金属微
粉末が網目構造で連結しておらず、ばらばらに分布して
いるため、表面抵抗値が 104〜105 Ω/□台と導電性が
大きく低下した。
【0073】
【発明の効果】本発明の2層構造の透明導電膜は、金属
微粉末の充填度が比較的低いにもかかわらず、表面抵抗
が 102〜103 Ω/□台と低抵抗であるので、特にパソコ
ン用CRTおよび大型TV用ブラウン管で問題となって
いる電磁波の漏洩を防止できる電磁波シールド性をブラ
ウン管に付与できる。
【0074】また、この透明導電膜は、金属微粉末を含
有するにもかかわらず、可視光最低反射率が1%以下、
ヘーズが1%以下、全可視光線透過率が60%以上、好ま
しくは70%以上という、低反射性と十分な透明性を備え
ている。その上、この透明導電膜は、従来より問題にな
っていた紫〜青味または赤〜黄色味の反射光が少なく、
反射光が実質的に無色である。
【0075】従って、本発明の透明導電膜をブラウン管
の画像表示部に形成した場合、反射による外部映像の映
り込みが防止できると同時に、映像の色調を変化させる
ことがないので、画像の視認性が大きく向上する。従っ
て、本発明の透明導電膜は、映像を見やすくする上、電
磁波の漏洩による人体への悪影響やコンピュター誤動作
の防止にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の2層構造の透明導電膜の下層における
金属微粉末の二次元網目構造を示す説明図である。
【図2】実施例で作製した本発明の透明導電膜のTEM
写真である。
【図3】図3(a) は実施例で作製した本発明の透明導電
膜の透過スペクトル、図3(b)は同じく反射スペクトル
を示す。
【図4】実施例で作製した比較例の透明導電膜のTEM
写真である。
【図5】図5(a) は実施例で作製した比較例の透明導電
膜の透過スペクトル、図5(b)は同じく反射スペクトル
を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年12月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基体の表面に設けたシリカ質マトリ
    ックス中に金属微粉末を含有する下層と、その上に設け
    たシリカ質の上層とからなる、2層構造の透明導電膜で
    あって、該下層内において、該金属微粉末の二次粒子
    が、内部に金属微粉末を含まない空孔を持った二次元網
    目構造を形成するように分布していることを特徴とす
    る、低反射性で低抵抗の透明導電膜。
  2. 【請求項2】 金属微粉末が、Fe、Co、Ni、Cr、W、A
    l、In、Zn、Pb、Sb、Bi、Sn、Ce、Cd、Pd、Cu、Pt、Ag
    およびAuよりなる群から選ばれた1種もしくは2種以上
    の金属、ならびに/またはこれらの金属の合金、ならび
    に/またはこれらの金属および/もしくは合金の混合物
    からなる、請求項1記載の透明導電膜。
  3. 【請求項3】 網目構造の空孔の平均面積が 2,500〜3
    0,000 nm2の範囲であり、該空孔が膜の全面積の30〜70
    %を占める、請求項1または2記載の透明導電膜。
  4. 【請求項4】 透明基体がブラウン管の画像表示部であ
    る請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透明導電
    膜。
  5. 【請求項5】 下層の形成に用いた塗料が、平均一次粒
    子径が2〜30 nm の金属微粉末を分散剤を含有する溶媒
    に分散させた分散液からなり、該溶媒が1〜30wt%のプ
    ロピレングリコールメチルエーテル、1〜30wt%のイソ
    プロピルグリコール、および1〜10wt%の4−ヒドロキ
    シ−4−メチル−2−ペンタノンの少なくとも1種を含
    む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透明導電
    膜。
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