JPH10182174A - 光学素子の成形型 - Google Patents

光学素子の成形型

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JPH10182174A
JPH10182174A JP35556696A JP35556696A JPH10182174A JP H10182174 A JPH10182174 A JP H10182174A JP 35556696 A JP35556696 A JP 35556696A JP 35556696 A JP35556696 A JP 35556696A JP H10182174 A JPH10182174 A JP H10182174A
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JP
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optical element
corner
mold
molding
glass
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Takeshi Nomura
剛 野村
Kiyoshi Yamamoto
潔 山本
Nobuyuki Nakagawa
伸行 中川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 角部形状を必要とするレンズ等の光学素子を
形成する際に、角部や角部付近の型加工を容易にすると
ともに成形時に角部に発生しやすいガラスのバリや欠
け、融着を防止することができる光学素子の成形型を提
供する。 【解決手段】 上下二つの型の間でガラス素材をプレス
して、型の成形面に対応する表面を有する光学素子30
を得るための成形型において、少なくとも成形用上型
を、光学有効面を成形する成形面1aを有する上型部材
1と、光学有効面以外の部分を成形するリング部材10
と、光学有効面以外でかつ角部を成形する角部形成部材
20とから構成し、角部形成部材20として、例えば黒
鉛やグラッシーカーボンのようなガラスとの摩擦抵抗が
小さくかつ型加工が容易な材質を用いることにより、成
形時に角部に発生しやすいガラスのバリや融着を防止す
ることができ、角部を有する光学素子を高精度に成形す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加熱されたガラス
素材をプレスして所定の形状の光学素子に成形するため
の光学素子の成形型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、カメラ・ビデオ等の光学系には非
球面レンズが使われてきており、光学系のコンパクト化
やコストダウンに寄与している。そして、この非球面レ
ンズを効率良く製造する方法として、所定の表面精度を
有する成形用型の間にガラス素材を挟み、プレス成形す
る方法が知られているが、光学系に使用されるレンズは
精度ならびに外観が厳しいこともあり、比較的単純形状
で成形が容易な凸レンズを中心に生産が行なわれてい
た。しかしながら、凸レンズに限らず、凹レンズや角形
レンズ等さまざまな形状のレンズについても要求が出さ
れてきている。例えば、製品の小型化や位置決め部形成
などの必要性により、角部形状を有する光学素子なども
要求されてきている。しかし、このような稜線のような
エッジ形状もしくはそれに近い角部をもつ形状をガラス
成形をする場合は、成形後のガラスが欠けやすいのはも
ちろんのこと、成形時の圧力の集中によるガラスと型と
の融着を考えても避けたい形状であった。
【0003】ところで、この種の角部形状を有する光学
素子を成形する場合、例えば、図5に示すように、角部
形状を有する光学素子30に対応するように成形面41
a、41bおよび角部41cを備えた上型41を一体で
形成するか、あるいは、図6に示すように、型を形成し
やすいように、上型を中心部材43とリング状の外周部
材13の2体構造とし、光学素子の角部がその境界とな
るように構成していた。
【0004】また、特公平6−102555号公報に
は、成形品外周部かつこば面を2体化された胴型で成形
する形態の成形方法が開示され、外周部の欠けやバリ等
の発生を防止できるとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図5に
示すように、角部形状を有する光学素子に対応する上型
41を一体で形成する場合は、型の材質が光学機能面の
転写を重視して選択されるため、超硬やセラミックスの
ような難削材を使用しており、そのため角部41cの形
状の加工が難しく、特に成形面41a、41bにおける
角部形状付近の鏡面仕上げ加工は困難を伴ない、現実的
でなく、また、たとえこのような加工ができたとして
も、超硬やセラミックスのような材料では、成形時の圧
力の集中により、角部における型とガラスの融着が発生
しやすく、成形においても困難を伴なうという問題があ
った。
【0006】また、図6に示すように、上型を中心部材
43とリング状の外周部材13の2体構造とし、光学素
子の角部がその境界となるように構成する場合は、型の
加工は容易となり、また外周部材の材質を変えられるな
どの自由度は上がるけれども、成形時に圧力の集中しや
すい角部に2体構造の境界部があるため、中心部材43
と外周部材13のわずかな隙間にガラスが入りやすく、
バリや欠け、融着が発生するため、やはり成形において
困難を伴なうという問題があった。
【0007】さらに、前記特公平6−102555号公
報における成形品外周部かつこば面を2体化した胴型で
成形する形態の成形方法は、光学素子の光軸方向に開閉
自在な一対の胴型と成形型とを嵌合、離脱自在に構成し
たことを特徴としており、これによりレンズ外周部の欠
けやバリ等の発生を防止している。そして、その実施例
の中に光学機能面とこば面との境界部に角部を形成する
形状の胴型が記載されている。しかしながら、胴型の段
部にガラス素材を載置する旨の記載があるように、この
角部はガラス素材を載置する目的で設けられた段部の設
置により生じたものと解釈される。また、角部を別体に
する目的で胴型が設置されたとしても、角部による欠
け、融着についての効果的な方策の記載は一切ないた
め、やはり成形上問題となる。
【0008】そこで、本発明は、上記従来技術の有する
未解決な課題に鑑みてなされたものであって、角部形状
を必要とするレンズ等の光学素子を形成する際に、角部
や角部付近の型加工を容易にするとともに成形時に角部
に発生しやすいガラスのバリや欠け、融着を防止するこ
とができる成形型を提供することを目的とするものであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の光学素子の成形型は、変形可能な状態に加
熱された素材を相対向する少なくとも二つの型でプレス
し、前記型によって、光学有効面以外の部位に角部を有
する形状の光学素子を成形する光学素子の成形型におい
て、前記型の少なくともいずれか一方の型における、前
記光学素子の角部を規制する光学有効面以外でなおかつ
角部の形状を含む部分を、それ以外の部分とは別の部材
で形成することを特徴とする。
【0010】さらに、本発明の光学素子の成形型は、変
形可能な状態に加熱された素材を相対向する少なくとも
二つの型でプレスし、前記型によって、隣り合う両光学
機能面の境界部を角部とする形状の光学素子を成形する
光学素子の成形型において、前記光学素子の角部を規制
する光学有効面以外でなおかつ角部の形状を含む部分
を、それ以外の部分とは別の部材で形成することを特徴
とする。
【0011】そして、本発明の光学素子の成形型におい
て、光学有効面以外でなおかつ角部の形状を含む部分を
それ以外の部分とは異なる材料で構成され、さらに他の
部分に比べて成形素材との摩擦抵抗が小さい材料で構成
することが好ましく、そして、光学有効面以外でなおか
つ角部の形状を含む部分が黒鉛またはグラッシーカーボ
ンで構成されていることが好ましい。
【0012】
【作用】相対向する少なくとも上下二つの型間で変形可
能な状態に加熱された素材をプレスし、冷却した後に前
記型から取り出して、前記型の成形面によって、光学有
効面以外の部位に角部を有する形状の光学素子を成形す
る光学素子の成形型において、前記型の少なくともいず
れか一方の型における、光学有効面以外でなおかつ角部
の形状を含む部分を、それ以外の光学有効面の型材とは
別の部材として形成することにより、角部の型材を型の
加工性やガラスとの密着性などを考慮した材質を選定す
ることができ、特に、黒鉛やグラッシーカーボンのよう
なガラス素材との摩擦抵抗が小さい材料を使用すること
ができるために、成形時の角部における型とガラス素材
との密着性を低減することができ、成形時の角部形状に
起因する欠けや融着の発生を防ぐことができ、また、角
部の型部材とその他の型部材の境界部を角部ではなく平
坦部に位置させたことによって、境界部には圧力が集中
することがなく、この部分においてもガラスのバリを防
ぐことができる。このように、本発明に基づく光学素子
の成形型によれば、角部を必要とする形状の光学素子を
高精度に成形することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明する。
【0014】図1は、本発明の光学素子の成形型の第1
実施例の構成の要部を詳細に示す断面図であり、図2
は、本発明の光学素子の成形型の第1実施例の構成全体
を示す断面図であり、図3は、本発明の光学素子の成形
型の第2実施例にかかる構成の要部を詳細に示す断面図
であり、図4は、本発明の光学素子の成形型の第3実施
例にかかる構成の要部を詳細に示す断面図である。
【0015】
【実施例】
(第1実施例)本発明の光学素子の成形型の第1実施例
を、図1および図2に基づいて、説明する。
【0016】成形型の外殻部を構成する胴型50は、支
持基板52上に載置され、上面視正方形の角柱状に形成
されて、その中心軸上には胴型50を上下方向に貫通す
る貫通穴50aが形成されている。この貫通穴50aの
上方部には、円柱状に形成された上型部材1が嵌合した
状態で上下方向に沿って摺動可能に挿入され、上型部材
1の上端部には、円板状のフランジ部1fが形成されて
いる。このフランジ部1fの下面が胴型50の上面に上
方から当接することにより、上型部材1の下方への移動
が阻止され、これによって、上型部材1の下方へのプレ
スストロークが規定されている。また、上型部材1の下
面には、ガラス素材を押圧して、その表面に所望の形状
を転写して光学機能面を形成するための成形面1aが形
成されている。
【0017】また、上型部材1の成形面1aの外周に
は、光学有効面以外の部分を形成するためのリング部材
10が配設されており、このリング部材10の下部外周
側には、光学有効面ではない成形面10aが形成され、
またリング部材10の下部内周側には、成形品である光
学素子30の角部を形成するための角部20aを含む形
状の角部形成部材20が組み込まれて配設されている。
【0018】一方、胴型50の貫通穴50aの下方部に
は、上型部材1と同様に円柱状に形成された下型部材2
が嵌合した状態で上下方向に沿って摺動可能に挿入され
ている。下型部材2の下部には円板状のフランジ部2f
が形成され、このフランジ部2fの下面は、胴型50が
載置されている支持基板52の上面に当接している。そ
して、この支持基板52により上型部材1からガラス素
材を介して下型部材2に加えられる下方へのプレス圧を
受けるように構成されている。下型部材2の上端面に
は、ガラス素材の下面に所望の形状を転写して光学機能
面を形成するための成形面2aが形成されている。
【0019】上型部材1の上方には、ガラス素材に印加
するプレス圧を発生させるためのエアシリンダのピスト
ンロッド(図示しない)が配置され、このピストンロッ
ドの下端部が上型部材1の上端面に接続される。したが
って、エアシリンダが作動されてピストンロッドが下方
に向けて押し出し動作されることにより、ガラス素材に
プレス圧が印加される。また、上型部材1には、成形面
1a近傍の温度を測定するための温度センサー(図示し
ない)が設置されており、さらに、図示しないN2 ガス
供給源からN2 噴出管を通して上型部材1を冷却するた
めの冷却管(図示しない)が設置されている。
【0020】下型部材2にも同様に成形面2a近傍の温
度を測定するための温度センサー(図示しない)が設置
されており、さらに、図示しないN2 ガス供給源からN
2 噴出管を通して下型部材2を冷却するための冷却管
(図示しない)が設置されている。
【0021】以上のような構成によって、ガラス素材に
は、上型部材1の成形面1aおよび下型部材2の成形面
2aにより光学機能面が転写され、また、リング部材1
0により光学有効面以外の部分が転写され、角部形成部
材20により成形品として必要とされる角部形状が形成
されることとなる。このように、角部形状を必要とする
光学素子の成形型において、角部形成部材を、光学有効
面の型部材とは別体として、異なる材質で形成すること
ができ、型の加工性やガラス素材との密着性などを考慮
した材質を選定することができる。そして、ガラス素材
との摩擦抵抗が小さい材料を用いることにより、型とガ
ラス素材との密着力を低減して、成形時の角部形状に起
因する欠けや融着の発生を防ぐことができる。
【0022】また、成形された成形品の厚みは、上述し
たように、上型部材1のフランジ部1fの下面が、胴型
50の上面に当接することにより規定され、加工する毎
に成形品の厚みが変化しないようになされている。
【0023】さらに、下型部材2の下面には、エアシリ
ンダのピストンロッド(図示しない)が設置され、この
ピストンロッドは、支持基板52に形成された貫通穴5
2aを介して下型部材2の下面に接続されている。この
エアシリンダのピストンロッドは、成形品30のプレス
変形動作が終了した後の冷却過程において、成形品30
の面形状が崩れることを防止するために、下型部材2を
上方に押し上げて、成形品30に圧力を作用させるため
のものである。
【0024】一方、胴型50の側面には、開口穴50b
が形成されており、この開口穴50bを介して、成形型
の内部にガラス素材を供給するとともに、成形の完了し
た成形品30を成形型の内部から取り出すことができ
る。
【0025】なお、胴型50内には、この胴型50、上
型部材1および下型部材2を加熱するとともにこれらの
胴型50、上型部材1および下型部材2を介してガラス
素材を加熱するためのヒータ51、51…が配置されて
いる。これらのヒータ51、51…は、上型部と下型部
がそれぞれ独立した温度調節器(図示しない)に接続さ
れ、それぞれのセンサー(図示しない)により温度を検
出し、その結果に応じてそれぞれ制御されるように構成
されている。
【0026】次に、上述のように構成された成形型によ
りレンズを成形する手順について説明する。
【0027】先ず、上型部材1のエアシリンダのピスト
ンロッド(図示しない)を引き込み動作をさせて、上型
部材1を胴型50に対して上方にスライドさせ、下型部
材2から離間させておく。この状態において、胴型50
の開口穴50bを介して、オートハンド等により、所定
の高温に加熱されたガラス素材を下型部材2の成形面2
a上に供給する。また、胴型50、上型部材1および下
型部材2は、所定の成形条件に対応した温度に加熱され
ている。
【0028】ガラス素材が、下型部材2の成形面2a上
に供給された後、上型部材1のエアシリンダのピストン
ロッドを押し出し動作させて、ガラス素材の上面に上型
部材1の成形面1aを当接させ、ガラス素材にプレス圧
を印加させる。このプレス圧の印加により、上型部材1
を徐々に下方に移動させると、ガラス素材は、次第に水
平方向に押しつぶされて、最終的には、図1および図2
に図示するような状態となる。この状態において、成形
品30の厚みは所望の厚みに成形されている。
【0029】この後、成形品30は冷却されるが、この
とき上型部材1と下型部材2はそれぞれN2 噴出管を通
して冷却管に供給されるN2 ガスによって冷却が促進さ
れる。また、この冷却過程においては、成形品30の面
形状が崩れないように、下方のエアシリンダのピストン
ロッドを作動させて、下型部材2を押し上げ、成形品3
0に圧力を印加する。そして、温度が所定の温度まで低
下したときに、下方のエアシリンダのピストンロッドを
引き込み動作させて、圧力を解除し、その後に、上型部
材1のエアシリンダのピストンロッドが引き込み動作さ
れて、上型部材1が上方に移動し、この成形品30は、
オートハンド等により、胴型50の開口穴50bを介し
て外部に取り出される。
【0030】上記のような一連の動作により、レンズが
成形加工される。
【0031】ここで、さらに詳細な例を挙げて説明する
と、ガラス素材としてランタン系ガラス(屈折率1.7
3、アッベ数49.4、転移点571℃)を使用して、
上面側凹非球面(近似R17mm)で有効径φ17m
m、下面側凸R170mmで有効径φ22mm、中心肉
厚1.6mm、最大肉厚5.6mmの凹メニスカスレン
ズを成形する。なお、このレンズ形状は、図1に示すよ
うに、上面の光学有効径外周部が最大肉厚で角部形状と
なっており、この部分は光学性能は必要ないものの、製
品組込み時の位置決め部となっているために、形状精度
が必要となっている。
【0032】また、このときの上型部材1、下型部材2
およびリング部材10には、超硬を使用し、角部形成部
材20には黒鉛を用いて、以下のように成形を行なっ
た。
【0033】図1および図2において、上型部材1およ
び下型部材2の温度が550℃のときに、ガラス素材を
投入し、この状態で、上型部材1および下型部材2の温
度が640℃になるまで、なおかつ、図示しない加熱源
にてガラス素材が所定の温度になるまで待機した後に、
プレス圧4200Nで上型部材1を押圧して成形し、さ
らに、転移点の温度になるまで、最終的に4200Nの
力を下型部材2にかけながら冷却し、その後、成形品3
0を取り出した。
【0034】このようにして成形した結果、成形品30
は角部までしっかり充填されており、最大肉厚5.6m
mに対して、ばらつきは8μm以下であり、角部形状精
度の良好な成形品が得られた。さらに、角部形成部材2
0の角部20a付近や上型部材1と角部形成部材20の
境界部にガラスのバリや融着等が発生することもなく、
良好な成形を行なうことができた。
【0035】なお、型の加工においても、図5のような
一体型の上型部材41に比べ、本実施例では、上型部材
1の光学機能面の成形面1aの周辺部まで良好な面精度
に仕上げることが可能であり、また、角部形成部材20
を黒鉛としたため、超硬などに比べ容易に角部形状を加
工することができる。また、ここでは角部形成部材20
を黒鉛としたが、型の加工性のみの問題を解決するので
あれば、ステンレス材など超硬より硬度の低い材料を適
宜選定することができる。
【0036】(第2実施例)図3は、本発明の第2実施
例における成形品付近の成形型の構成の要部を詳細に示
す断面図であり、成形品31は角形レンズ形状であり、
第1実施例のものとは外周形成部材を設けていない点で
相違するが、下側には2つの隣り合う光学機能面があ
り、その境界部が角部を形成している。そこで、型構造
としては、下型部材4に2つの隣り合う光学機能面の成
形面4a、4aを形成し、その境界部に角部形成部材2
1を組み込んで構成している。また、この種のレンズ
は、角部の形状精度はそれほど厳しくないものの、光学
有効径は角部形成部材21との境界ぎりぎりまで及んで
おり、境界付近の面精度を良好にする必要がある。
【0037】次に、詳細な例を挙げて説明するに、上記
以外の型構造および成形手順については上述した第1実
施例と同様であるために、重複する部分については省略
して説明する。
【0038】ガラス素材31として重クラウンガラス
(屈折率1.58、アッベ数59.4、転移点550
℃)を使用して角形レンズを成形する。またこのときの
上型部材3および下型部材4には超硬を使用し、角部形
成部材21にはグラッシーカーボンを用いて以下のよう
に成形を行なった。
【0039】図3において、上型部材3および下型部材
4の温度が500℃のときに、ガラス素材を投入し、こ
の状態で、上型部材3および下型部材4の温度が620
℃になるまで、なおかつ、図示しない加熱源にてガラス
素材が所定の温度になるまで待機した後に、上型部材3
で押圧成形し、さらに、転移点の温度になるまで、下型
部材4に力をかけながら冷却し、その後、成形品31を
取り出した。
【0040】このようにして成形した結果、成形品31
はバリや融着が発生することなく角部までしっかり充填
されており、その結果、型との有効転写面は角部形成部
材21との境界ぎりぎりまで及んでおり、境界付近の面
精度の良好な成形品を得ることができた。また、型の加
工に関しても第1実施例と同様に光学機能面の成形面4
aの境界部まで良好な面精度に仕上げることが可能とな
り、また角部形成部材21も容易に角部形状を加工する
ことができた。
【0041】(第3実施例)図4は、本発明の第3実施
例における成形品付近の成形型の構成の要部を詳細に示
す断面図であり、ここでは、下型部材6の外周にリング
部材12を形成し、さらにリング部材12の上面内周側
と下型部材6との間に角部形成部材22をリング状に組
み込んだ構成としている。この構成により、成形時の圧
力に対してリング部材12が角部形成部材22を補強す
る構造となっている。また、上型部材5は、角部形成部
材22の内周にとび込む構造となっており、上型部材
5、下型部材6および角部形成部材22により囲まれた
キャビティーを形成している。
【0042】次に、詳細な例を挙げて説明するに、上記
以外の型構造および成形手順についてはやはり上述した
第1実施例と同様であるために、重複する部分について
は省略して説明する。
【0043】ガラス素材32として重クラウンガラス
(屈折率1.58、アッベ数59.4、転移点506
℃)を使用し、下面側凸非球面(近似R16mm)、上
面側凹R23mm、中心肉厚2.0mm、コバ肉厚1.
5mmの凸メニスカスレンズを成形する。このレンズの
外形寸法は、製品組込み時の位置決めとして使用される
ために、形状精度が必要な部分となっており、また上記
のように比較的コバ肉厚の小さい形状であることから
も、できるだけコバ面の転写性を上げる必要がある。
【0044】そこでこのときの上型部材5、下型部材6
およびリング部材12には超硬を使用し、角部形成部材
22には黒鉛を用いて、以下のように成形を行なった。
【0045】図4において、先ず上型部材5および下型
部材6の温度が450℃のときに、ガラス素材を投入
し、この状態で、上型部材5および下型部材6の温度が
580℃になるまで、なおかつ、図示しない加熱源に
て、ガラス素材が所定の温度になるまで待機した後に、
プレス圧2900Nで上型部材5を押圧して成形し、さ
らに、転移点の温度になるまで、2000Nの力を下型
部材6にかけながら冷却し、その後、成形品32を取り
出した。
【0046】このようにして成形した結果、成形品32
はバリや融着が発生することなく成形品の下面角部32
cまでしっかり充填されており、その結果、外形寸法1
3.5mmに対してばらつきは7μm以下であり、外形
寸法の良好な成形品が得られた。また、中心肉厚2.0
mmに対してもばらつきが5μm以下であり、さらに上
下面とも光学有効径まできちんと転写しており、面精度
上も良好な成形品が得られた。また、角部形成部材22
が側面形成部材を兼ねており、この部分も黒鉛を使用し
ているためにガラスとの滑り性も良く、型から成形品を
取り出す際に何の支障もなく行なうことができた。
【0047】なお、本実施例においては、レンズの下面
側をしっかり充填させることで、外形寸法の安定化を図
り、また上面側周辺は光学有効径の転写性に影響しない
程度にダレた形状となるように成形条件の調整を行なう
ことで、上型部材5と角部形成部材22との間にバリが
発生することを防ぐとともに、密閉されたキャビティー
の中でガラス素材の容量ばらつきを成形品のダレ部32
dで吸収させて、肉厚寸法を安定させており、これによ
り外形寸法と肉厚寸法の安定の両立化を図っている。ま
た、たとえ外形寸法精度が必要でなくても、本実施例の
ように片側に角部形成部材を設けることなく、両側とも
型がとび込み形状となっている構成の型とした場合に
は、ガラスのバリが出ないようにレンズの上下面とも外
周がダレた形状とする必要が出てくるため、ガラスの容
量ばらつきがあると、成形条件の調整が難しくなる。よ
って、本実施例では、ガラスのバリを気にせずにレンズ
の片側にガラスを充填できるため、ガラスの容量ばらつ
きを成形条件で調整しやすくなる。もちろん、レンズの
片側だけでなく上下両方の型にそれぞれ角部形成部材を
設けることも考えられ、その場合はさらに前述の効果は
大きくなる。
【0048】
【発明の効果】本発明は、上述のように構成されている
ので、角部を必要とする形状の光学素子を成形する場
合、少なくとも一つの型において、光学有効面以外でな
おかつ角部の形状を含む部分を、それ以外の部分とは別
の部材で形成することで、その部分の材質を自由に選定
でき、黒鉛やグラッシーカーボンのようなガラスとの摩
擦抵抗の小さい材質を使用できるため、角部にガラスを
充填して成形した時に発生しやすいガラスのバリや融着
を防ぐことができ、また型部材と角部形成部材の境界部
が角部ではなく平坦部にあるために境界部には圧力が集
中することがなく、この部分においてもガラスのバリを
防ぐことができる。さらにガラスを充填しても、ガラス
のバリや融着等が生じることがないことから、角部付近
の形状精度や光学面精度においても周辺までダレること
なく高精度な光学素子を得ることができる。また、光学
素子の周辺部に角部形成部材を設けた場合は、その部分
にガラスを充填したとしてもバリの発生を気にせずに済
むため、たとえその形状が必要でない場合でも、ガラス
素材の容量ばらつきを吸収する部分として使用した時
に、そのばらつき許容量を大きくすることができる。ま
た同様に型に対してガラス素材が多少ズレて成形された
場合でも、バリの発生を気にせずに済むため、成形品の
ズレの許容量も大きくすることができる。
【0049】さらに型の加工において、型を2体化して
もガラスのバリを防止できるため、光学機能面の仕上げ
加工が容易になり、角部付近でも高精度に型を仕上げる
ことができるようになり、また角部形成部材の材質を光
学機能面とは別の材質とすることができるため、より加
工性の良い材質を選定でき、型のコストを下げることが
できる。
【0050】このように、様々な形状の光学素子に対応
した成形が可能となり、その効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子の成形型の第1実施例にかか
る構成の要部を詳細に示す断面図であり、プレス動作の
終了した成形品付近の詳細図である。
【図2】本発明の光学素子の成形型の第1実施例にかか
る全体構成を示す断面図である。
【図3】本発明の光学素子の成形型の第2実施例にかか
る構成の要部を詳細に示す断面図である。
【図4】本発明の光学素子の成形型の第3実施例にかか
る構成の要部を詳細に示す断面図である。
【図5】従来の光学素子の成形型の構成を示す断面図で
ある。
【図6】従来の他の光学素子の成形型の構成を示す断面
図である。
【符号の説明】
1、3、5 上型部材 2、4、6 下型部材 1a、2a、4a 成形面 10、12 リング部材 20、21、22 角部形成部材 20a 角部 30、31、32 成形品(光学素子) 50 胴型

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変形可能な状態に加熱された素材を相対
    向する少なくとも二つの型でプレスし、前記型によっ
    て、光学有効面以外の部位に角部を有する形状の光学素
    子を成形する光学素子の成形型において、 前記型の少なくともいずれか一方の型における、前記光
    学素子の角部を規制する光学有効面以外でなおかつ角部
    の形状を含む部分を、それ以外の部分とは別の部材で形
    成することを特徴とする光学素子の成形型。
  2. 【請求項2】 変形可能な状態に加熱された素材を相対
    向する少なくとも二つの型でプレスし、前記型によっ
    て、隣り合う両光学機能面の境界部を角部とする形状の
    光学素子を成形する光学素子の成形型において、 前記光学素子の角部を規制する光学有効面以外でなおか
    つ角部の形状を含む部分を、それ以外の部分とは別の部
    材で形成することを特徴とする光学素子の成形型。
  3. 【請求項3】 光学有効面以外でなおかつ角部の形状を
    含む部分が、それ以外の部分とは異なる材料で構成され
    ていることを特徴とする請求項1または2記載の光学素
    子の成形型。
  4. 【請求項4】 光学有効面以外でなおかつ角部の形状を
    含む部分が、それ以外の部分に比べて成形素材との摩擦
    抵抗が小さい材料で構成されていることを特徴とする請
    求項1ないし3のいずれか1項記載の光学素子の成形
    型。
  5. 【請求項5】 光学有効面以外でなおかつ角部の形状を
    含む部分が、黒鉛またはグラッシーカーボンで構成され
    ていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1
    項記載の光学素子の成形型。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010083724A (ja) * 2008-09-30 2010-04-15 Konica Minolta Opto Inc レンズの製造方法及びレンズ

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JP2010083724A (ja) * 2008-09-30 2010-04-15 Konica Minolta Opto Inc レンズの製造方法及びレンズ

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