JPH1017982A - 耐破壊性能に優れた建築用低降伏比高張力鋼材及びその製造方法 - Google Patents

耐破壊性能に優れた建築用低降伏比高張力鋼材及びその製造方法

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JPH1017982A
JPH1017982A JP17026296A JP17026296A JPH1017982A JP H1017982 A JPH1017982 A JP H1017982A JP 17026296 A JP17026296 A JP 17026296A JP 17026296 A JP17026296 A JP 17026296A JP H1017982 A JPH1017982 A JP H1017982A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大地震などによる大きく且つ繰り返し塑性歪
を受けるような場合にも、塑性歪による材質の劣化が非
常に小さく、塑性変形後においても脆性き裂発生・進展
を容易にする延性き裂の発生や進展を抑制し、かつ万一
破壊が発生した場合でも、その脆性き裂の進展を停止で
きる安全性の極めて高い耐破壊性能に優れた鋼材を製造
する。 【解決手段】 母材強度および靱性、ならびに溶接継手
確保のために化学成分範囲を限定し、延性破壊の発生特
性及びき裂伝播停止特性の繰り返し塑性変形後の劣化を
抑制するためにP,S,Oを低減する。さらに固溶N低
減のために全N量の低減とともにN固定元素Al,T
i,Zr,Nb,Ta,V,Bを添加し、さらにマルテ
ンサイトの分散による低降伏比化を図り、かつ靱性・脆
性き裂伝播停止特性のために板厚中心部の結晶粒径微細
化を図り、板厚の表層10〜33%の厚み範囲に平均粒
径が3μm以下の超細粒組織を付与する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、使用中に大地震等
による大きくかつ繰り返しの塑性歪を受けるような構造
物に使用される強度部材用の鋼材及びその製造方法に関
するものである。例えば、この方法で製造した鋼材は海
洋構造物、圧力容器、造船、橋梁、建築物、ラインパイ
プなどの溶接鋼構造物一般に用いることができるが、低
降伏比鋼であることから、特に耐震性を必要とする建
築、橋梁等の構造物用鋼材として有用である。また、鋼
材の形態は特に問わないが、構造部材として用いられ、
低温靱性が要求される鋼板、特に厚板、鋼管素材、ある
いは形鋼で特に有用である。
【0002】
【従来の技術】近年、建築物の高層化、橋梁の大スパン
化等に見られるように構造物は大型化の傾向にあり、該
用途に使用される鋼材には、地震、台風等による構造物
の崩壊防止のための性能確保が重要な課題となってい
る。特に、阪神大震災の経験から、設計、施工上の特段
の配慮無しに構造物の安全性を鋼材の性能によって確保
しようとすると、延性破壊、脆性破壊の両面で安全性の
高い鋼材が必要であることが認識されつつある。
【0003】最近、高層建築用鋼材に延性破壊性能に配
慮した低降伏比鋼(低YR鋼)や高一様伸び鋼の使用が
検討されつつある。低降伏比特性については、地震、台
風等によるエネルギーを吸収する能力に優れ、また、構
造物の局所的な崩壊を抑制する上で有用であることが認
識されてきている。
【0004】地震による構造物の崩壊が材料の延性破壊
のみによって引き起こされるのであれば、このような鋼
材の使用は構造物の安全性向上につながる。しかし、阪
神大震災のような巨大地震においては、鋼材は必ずしも
延性破壊で終局的な崩壊に至っているわけではなく、延
性破壊の後に引き続いて脆性破壊を生じ、脆性き裂が全
体に伝播することによって最終的な構造物の崩壊を引き
起こす場合があることが、震災後の様々な調査によって
示された。
【0005】また、地震による変形は単純ではなく、特
に巨大地震の場合にはその巨大かつ継続的な振動によっ
て、鋼材に塑性変形が生じるようなレベルの大きな力が
繰り返しかかると考えることが妥当である。
【0006】以上の観点から、数十年〜数百年に1回と
いうような巨大地震や巨大台風によっても構造物が崩壊
しないためには、エネルギー吸収能に優れた低降伏比特
性に加えて、鋼材が追加的に具備すべき特性の内、特に
下記の〜の特性を追加することが重要となる。
【0007】延性特性の向上により、地震のエネルギ
ーを吸収し得る延性破壊能に優れるとともに、延性き裂
の発生、伝播抵抗が大きい。 繰り返し塑性変形による靱性劣化が小さい。 一旦脆性き裂が発生しても、途中で停止して部材及び
構造物全体の破壊、崩壊につながらない。 従来から、上記特性の確保に対しては種々の分野におい
て、個々の特性に関しては一部その向上技術が開発され
てきた。
【0008】エネルギー吸収能向上のための低降伏比化
の手段については数多く提案されている。例えば、C量
の増加等の化学組成の調整による方法、結晶粒を粗大化
させる方法、焼入れと焼戻し熱処理の間にフェライト
(α)+オーステナイト(γ)二相域に加熱する中間熱
処理を施す方法(以降、QLT処理と略)に代表される
ように、軟質相としてのαと硬質相としてのベイナイト
あるいはマルテンサイトを混在させる方法等がある。
【0009】例えば、軟質相と硬質相の混合組織を得る
ための製造方法として、特開昭53−23817号公報
には鋼板を再加熱焼入れした後、Ac1 変態点とAc3
変態点の間に再加熱して、γとαの二相としてから空冷
する方法が示されており、また、特開平4−31482
4号公報には同様に二相域に再加熱した後、焼入れる方
法が開示されている。
【0010】また、再加熱処理を施さずにオンラインで
製造する方法として、例えば特開昭63−286517
号公報にはγ域から二相域にかけて熱間圧延を施した
後、Ar3 変態点より20〜100℃低い温度まで空冷
してα相を生成させ、その後急冷する方法が開示されて
いる。
【0011】脆性き裂の停止に対しては従来からNiの
含有が有効であることが知られている。また、最近では
特開平4−141517号公報に示されるような、表層
部に超細粒組織を付与することによりNi量を高めるこ
となく、脆性き裂の伝播停止特性を向上させる技術が開
発されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、阪神大
震災を経験する以前には、必要な鋼材特性としては想像
もされなかった前記〜の特性、特に,について
は必ずしも十分認識されておらず、そのため、〜の
特性を同時に満足して、設計、施工上の特段の配慮なし
に数十年〜数百年に1回というような巨大地震や巨大台
風に遭遇しても、構造物を崩壊させずにすむような耐破
壊性能に優れた鋼材及びその製造技術は現段階で確立さ
れているとは言えない。
【0013】構造物としての安全性確保の観点からは、
当然のことながら脆性破壊の発生の抑制を考慮すること
が第一である。しかし、希に見る巨大地震時の安全性確
保の観点から見るとさらに、脆性破壊の発生を容易にす
る延性き裂の発生・進展の抑制を図ること、及び延性き
裂進展後のき裂先端で生じる塑性域での大きな靱性劣化
や、繰り返しの塑性変形後での大きな靱性の劣化が生じ
ないことまでもが鋼板に課せられた新たな課題となる。
【0014】ただし、構造物は特性の劣化した溶接部を
有し、また脆性破壊の起点となるような欠陥の存在を皆
無にすることは不可能であり、溶接部及び欠陥の存在を
前提とした場合には、脆性破壊の発生自体を完全に抑制
することは非常に困難であり、経済的にも非常に不利で
ある。従って、万が一の脆性破壊を許容した上で、その
き裂の伝播を阻止できる脆性き裂の伝播停止特性を延性
破壊特性、塑性変形後の靱性確保と両立させることが課
題となる。
【0015】表層部に超細粒組織を形成せしめて脆性き
裂の伝播停止特性を向上する技術は、特開平4−141
517号公報等で開示されているが、本発明が目的とし
ているような大地震等により大きな塑性変形を受けるよ
うな場合には、表層部に超細粒組織を形成させただけで
は靱性、延性、脆性き裂伝播停止特性等、破壊に対する
抵抗を確保することは困難である。
【0016】また、特開平4−141517号公報では
耐震性向上に大きな効果を有する低降伏比を付与する技
術は開示されておらず、低降伏比でかつ表層に超細粒組
織を形成させるための新たな技術が必要となる。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、延性破壊
の発生特性及びき裂の伝播停止特性の向上には不純物と
してのP,S、さらにO(酸素)を極力低減する必要が
あり、繰り返し塑性変形後もその特性を維持するために
は固溶Nの低減が重要であること、さらに繰り返し塑性
変形等の塑性歪による靱性劣化を抑制するためにも鋼中
の固溶Nを低減する必要があると考えた。
【0018】そのためには、窒化物を形成してNを固定
する効果のあるAl,Ti,Zr,Nb,Ta,V,B
を適切に含有させることが重要であることを詳細な実験
解析により知見し、さらに、鋼種、成分範囲によらず延
性破壊特性、脆性破壊発生特性(靱性)と脆性き裂の伝
播停止特性を両立させ得る手段としては、表層に超細粒
組織を付与することにより脆性き裂の伝播停止特性向上
を図ることが最も好ましいことを見出した。
【0019】また、特にその平均フェライト粒径が3μ
m以下となるような超細粒組織では、塑性歪が10%を
超えるような厳しい塑性変形を受けた場合においても、
シャルピー衝撃特性や脆性き裂の伝播停止特性の劣化が
通常の組織に比べて顕著に小さくなることを明らかにし
た。
【0020】また、塑性変形後の脆性き裂伝播停止特性
確保のためには、表層部だけでなく、内部の靱性の塑性
変形による劣化をある程度抑制する必要があり、そのた
めには、内部の結晶粒径を微細化する必要があることも
実験的に明かにした。
【0021】さらに、N量の低減、窒化物形成元素によ
るNの固定、表層部への超細粒層の付与は溶接継手の靱
性や延性向上にも有効であることが実験的に確かめられ
た。
【0022】本発明は、以上の知見を総合的に解析する
ことによって、化学成分の限定により延性の向上や塑性
変形による靱性の劣化を図り、さらに表層部に超細粒組
織を形成させて脆性き裂の伝播停止特性を向上させた鋼
においては、低降伏比特性を得るための手段として、組
織中に適正量のマルテンサイト相を組織中に分散させる
手段が最も好ましいことを見いだした。
【0023】即ち、低降伏比特性を得るための手段は種
々考えられるが、表層に超細粒組織が存在する場合に
は、マルテンサイトのような脆い硬質相が分散しても靱
性劣化が抑制されるため、鋼成分の制限が比較的少ない
マルテンサイトの分散による低降伏比化を用いるのに最
も適している。表層部を除く内部の結晶粒径を粗大化し
て鋼材全体としての低降伏比化を図る方法では、内部の
靱性劣化が避けられない。
【0024】以上述べたように、本発明は表層超細粒層
組織を有する鋼材での低降伏比化に対しては、マルテン
サイトの分散が最も好ましい手段であることを知見する
とともに、該表層超細粒組織とマルテンサイトの分散と
を同時に達成できる製造方法を確立し、発明するに至っ
たものであり、その要旨とする所は以下の通りである。
【0025】(1)重量%で、C:0.01〜0.15
%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0
%、Al:0.003〜0.1%、N:0.001〜
0.006%を含有し、かつ、N(%)−Al(%)/
3.0≦0で、不純物としてのP,S,Oの含有量が、
P:0.01%以下、S:0.01%以下、O:0.0
06%以下で、残部鉄及び不可避不純物からなる鋼材で
あって、板厚中心部の平均結晶粒径が30μm以下であ
り、さらに、鋼材体積に占めるマルテンサイト割合が1
0〜60%であり、さらに、該鋼材を構成する外表面の
うち少なくとも2つの外表面に関して、表層から全厚み
の10〜33%の範囲内の平均フェライト粒径が3μm
以下の超細粒組織であることを特徴とする耐破壊性能に
優れた建築用低降伏比高張力鋼材。
【0026】(2)重量%で、Ti:0.003〜0.
020%、Zr:0.003〜0.10%、Nb:0.
002〜0.050%、Ta:0.005〜0.20
%、V:0.005〜0.20%、B:0.0002〜
0.003%、の1種または2種以上を含有し、N
(%)−Al(%)/3.0−Ti(%)/3.4−Z
r(%)/6.5−Nb(%)/13.2−Ta(%)
/25.8−V(%)/10.9−B(%)/2.0≦
0であることを特徴とする前記(1)記載の耐破壊性能
に優れた建築用低降伏比高張力鋼材。
【0027】(3)重量%で、Cr:0.01〜2.0
%、Mo:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜4.
0%、Cu:0.01〜2.0%、W:0.01〜2.
0%の1種または2種以上を含有することを特徴とする
前記(1)または(2)記載の耐破壊性能に優れた建築
用低降伏比高張力鋼材。
【0028】(4)重量%で、Mg:0.0005〜
0.01%、Ca:0.0005〜0.01%、RE
M:0.005〜0.10%のうち1種または2種以上
を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいず
れか1項に記載の耐破壊性能に優れた建築用低降伏比高
張力鋼材。
【0029】(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記
載の成分の鋼片を、Ac3 変態点以上、1250℃以下
の温度に加熱し、950℃以下のオーステナイト域での
累積圧下率が10〜50%の粗圧延を行った後、その段
階での鋼片厚みの10〜33%に対応する少なくとも2
つの外表面の表層部領域をAr3 変態点以上の温度から
2〜40℃/sの冷却速度で冷却を開始し、Ar3 変態点
以下で冷却を停止して復熱させることを1回以上経由さ
せる過程で、最後の冷却後の復熱が終了するまでの間に
累積圧下率が20〜90%の仕上げ圧延を完了させ、該
圧延完了後の鋼材の前記表層域を(Ac1 変態点−50
℃)〜(Ac3 変態点+50℃)の範囲に復熱させた
後、さらに復熱終了後の鋼材を0.2〜2℃/sの冷却速
度で(該冷却速度における変態開始温度(Ar3 )−5
0℃)〜500℃の範囲に冷却した後、5〜40℃/sの
冷却速度で20〜300℃まで冷却して前記(1)〜
(4)のいずれか1項に記載の鋼材を製造することを特
徴とする耐破壊性能に優れた建築用低降伏比高張力鋼材
の製造方法。
【0030】(6)前記(1)〜(4)のいずれかに記
載の成分の鋼片を、Ac3 変態点以上、1250℃以下
の温度に加熱し、950℃以下のオーステナイト域での
累積圧下率が10〜50%の粗圧延を行った後、その段
階での鋼片厚みの10〜33%に対応する少なくとも2
つの外表面の表層部領域をAr3 変態点以上の温度から
2〜40℃/sの冷却速度で冷却を開始し、Ar3 変態点
以下で冷却を停止して復熱させることを1回以上経由さ
せる過程で、最後の冷却後の復熱が終了するまでの間に
累積圧下率が20〜90%の仕上げ圧延を完了させ、該
圧延完了後の鋼材の前記表層域を(Ac1 変態点−50
℃)〜(Ac3 変態点+50℃)の範囲に復熱させた
後、復熱終了後の鋼材を放冷するか、あるいは復熱終了
後の鋼材を5〜40℃/sの冷却速度で20〜650℃ま
で冷却した後、さらに0.1〜50℃/sの昇温速度で
(Ac1 変態点+10℃)〜(Ac3 変態点−30℃)
の範囲に加熱し、該温度範囲で1〜60s保持した後、
0.5〜50℃/sで冷却する二相域熱処理を施して前記
(1)〜(4)のいずれか1項に記載の鋼材を製造する
ことを特徴とする耐破壊性能に優れた建築用低降伏比高
張力鋼材の製造方法。
【0031】(7)450〜650℃で焼戻しを行うこ
とを特徴とする前記(5)または(6)記載の耐破壊性
能に優れた建築用低降伏比高張力鋼材の製造方法。 なお、ここで言う高張力鋼材とは高張力鋼板(厚板)の
みならず、形鋼、管材をも含む鋼材を指すものである。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明における化学成分に関して
の要件は、塑性変形後における延性特性の向上のための
不純物としてのP,S,O量の制限、及び、巨大かつ繰
り返し塑性変形による靱性劣化の抑制のためのNの固定
のための化学成分の限定にある。以下、先ずこれらの要
件について詳細に説明する。
【0033】塑性変形能の向上、延性き裂の発生、進展
の抑制のためには、鋼のフェライト母地の延性を高める
必要があり、そのためには固溶P,C,Nを低減するこ
とが好ましい。Cに関してはフェライト中の固溶限が小
さく、析出物を形成しやすいため、実用鋼ではその延性
特性に対する悪影響は無視できる。また、Cは強度確保
の上で必須の元素であるため、完全に除くことは好まし
くない。
【0034】Nは窒化物による加熱オーステナイト粒径
の微細化に有効であり、また不純物としてその含有は避
けられないが、Cと異なり、実用鋼でも一定量フェライ
ト母地中に固溶し、延性特性に悪影響を及ぼす。さら
に、固溶Nが存在する状態で塑性変形後あるいは延性き
裂進展後、鋼が塑性変形を受けると、塑性変形で生じた
転位との相互作用や転位線上への微細析出により靱性が
顕著に劣化するため、固溶Nは極限まで低減すべきであ
る。
【0035】そのためには窒化物形成元素によりNを固
定する必要がある。窒化物形成元素としては、他の特性
への影響が最も小さい点でAlが好ましく、脆性き裂の
伝播停止特性に最も重要な表層部の超細粒組織に10%
の塑性歪を付与したことによる靱性の劣化が、シャルピ
ー試験の破面遷移温度の上昇で20℃以下となるために
必要なAl量を実験的に求めると、(1)式のような関
係が得られた。従って、本発明においては、後述する理
由により限定した範囲内のAl,Nの含有量を前提とし
た上で、NとAl量を(1)式の関係に限定する。
【0036】 N(%)−Al(%)/3.0≦0 …………………(1)
【0037】また、窒化物形成元素として、Alに加え
て、Ti,Zr,Nb,Ta,V,Bの1種または2種
以上を選択的に用いることもできる。その場合、Al,
Ti,Zr,Nb,Ta,V,Bの含有量は(1)式と
同様の判定基準のもとに、塑性変形による靱性劣化が抑
制されるために必要なN量との関係式((2)式)が成
立するように、その含有量を調整する必要があるため、
N量との関係でTi,Zr,Nb,Ta,V,Bは
(2)式の関係が成立するように限定する。 N(%)-Al(%)/3.0-Ti(%)/3.4-Zr(%)/6.5-Nb(%)/13.2-Ta(%)/25.8 -V(%)/10.9-B(%)/2.0≦0 ……………(2)
【0038】不純物としてのP量を限定することも重要
である。即ち、Pはフェライト母地の延性を劣化させる
ため、塑性変形能、延性き裂の発生、進展特性向上のた
めにその含有量を限定する必要がある。P量は少ないほ
ど好ましいが、P量を低減することは精練工程へ負荷を
かけて生産性の低下、コストの上昇を招くため、延性特
性劣化に対して許容できるPの下限量を実験結果に基づ
いて0.01%以下とする。
【0039】即ち、P量の増加にともなう延性特性の劣
化の度合いは、0.01%を超えるとその程度が顕著に
なる。P量が0.01%以下ではPの悪影響の程度は小
さくなる。従って、本発明においては不純物としてのP
量を0.01%以下に限定する。ただし、偏析部での局
所的な塑性変形や、延性破壊特性の劣化が影響を及ぼす
ような構造物に使用される場合には、精練の問題を度外
視すれば、P量は0.007%以下に限定する方がより
好ましい。
【0040】SはMnSを形成するため延性破壊特性を
劣化させる。特に延性き裂の伝播特性を劣化させる。固
溶P,Nが多い条件のもとでは延性破壊の発生特性が低
下しているため、Sによる延性き裂の伝播特性の劣化
は、鋼材全体の塑性変形能や延性破壊特性に大きく影響
を及ぼし、Sを10ppm 以下程度まで極端に低減する必
要が生じる。
【0041】ただし、本発明のようにP,N量の低減や
固溶Nの窒化物形成元素による固定が図られていれば、
延性破壊の発生までの抵抗が大となるためにSの許容量
は広がることから、本発明では実験結果に基づいて不純
物としてのSを0.01%以下に限定する。
【0042】さらに、Oも延性に有害な介在物を形成す
るために極力低減することが好ましいが、Sと同様、固
溶P,Nが低減されていれば母地の延性がある程度確保
されるため、固溶P,Nの低減が図られていない場合に
比べて許容量は高く、実験結果に基づけば、0.006
%以下に限定する必要がある。
【0043】上記が本発明の要件である塑性変形能及び
延性破壊特性の向上、さらに塑性変形後の靱性劣化抑制
のための成分限定範囲であるが、本発明のもう一つの重
要な要件である脆性き裂の伝播停止特性向上のために
は、前記成分の限定に加えて後述するその他の成分限定
を前提とした上で、鋼材の少なくとも2つの面の表層部
において、平均フェライト粒径が3μm以下の超細粒組
織を表層から板厚の10〜33%の厚さにわたって存在
させることが必要となる。
【0044】表層部に超細粒組織を形成させることによ
って、脆性き裂の進展中に、表層部に延性破壊であるシ
アリップが形成され、脆性き裂伝播停止特性が向上す
る。この方法によれば、合金成分の添加、調整によらず
に脆性き裂伝播停止特性が向上できる点で有利である。
【0045】高速で進展している脆性き裂に抵抗してシ
アリップを確実に生成させるためには、表層部の脆性破
壊の発生及び伝播停止特性を鋼板の要求靱性よりも顕著
に向上させる必要があり、そのためには該表層部のフェ
ライト粒径を顕著に微細化させることが必須条件とな
る。
【0046】また、超細粒組織は、塑性変形による靱
性、脆性き裂伝播停止特性の劣化が非常に小さいため、
本発明が対象としているような、大地震等による塑性変
形を受ける可能性があって、塑性変形後においても安全
性を確保できる程度に靱性や脆性き裂伝播停止特性を有
する必要がある鋼材において、脆性き裂伝播停止特性向
上のための最も有利な手段である。
【0047】該表層部のフェライト粒径は当然微細であ
るほど好ましいが、シアリップの形成が確実で、製造工
程に過大な負荷をかけない範囲として、本発明において
は、該表層部の平均フェライト粒径を3μm以下に限定
する。
【0048】なお、該表層部のフェライト粒組織は結晶
粒径にばらつきの少ない整粒であることが好ましいが、
平均粒径の2倍超の粗大粒が存在してもその存在割合が
該表層部全体に対して10%以内であれば、表層部の脆
性破壊特性に対して実質的に悪影響を及ぼさないため、
許容される。
【0049】万一、欠陥部や溶接部等から脆性破壊が発
生し、伝播に至っても、表層部が確実に延性破壊してシ
アリップとなるためには、上記フェライト粒径の限定が
必須条件となるが、脆性き裂の伝播停止特性の向上に対
してはさらに該表層超細粒層の厚みも重要な要件とな
る。
【0050】即ち、鋼板内部の通常組織の脆性き裂を停
止させるためには、シアリップ部でその伝播エネルギー
を吸収する必要があるが、シアリップの厚みが不十分で
あると、たとえシアリップが形成されても脆性き裂の停
止に至らない場合が生じる。
【0051】脆性き裂の伝播を確実に停止するには、シ
アリップはある程度の厚みが必要となる。当然シアリッ
プの厚みは厚ければ厚いほどき裂の停止効果が大となる
が、必要以上の超細粒層の厚みを確保しようとすると、
製造工程に過大な負荷をかけたり、製造条件によっては
母材の延性や鋼板の形状、表面性状等の劣化につなが
る。
【0052】これらの問題を生じない範囲として、本発
明においては平均フェライト粒径が3μm以下の表層超
細粒組織の厚みを表裏面各々について、下限を表層から
板厚の10%、上限を表層から極厚の33%と限定す
る。
【0053】該表層超細粒層は鋼材の全ての表面に付与
することが好ましいが、上記条件を満足すれば、最低限
2つの表面に該超細粒層を付与することにより脆性き裂
の停止には有効である。
【0054】表層部に超細粒組織があれば、塑性変形後
も表層部において脆性き裂の伝播に対する抵抗があるた
め、極端に脆性き裂伝播停止特性が劣化することはない
が、内部の特性の寄与が全くないわけではなく、内部の
靱性確保にも留意する必要がある。
【0055】内部の靱性に対しても塑性変形の悪影響が
あるが、その悪影響を軽減するためにも、また靱性のレ
ベル確保のためにも、結晶粒の微細化が有効な手段とな
る。内部の粒径も当然微細であるほど有利であるが、内
部の組織微細化を図ると、表層部の微細化が困難となっ
たり、製造工程への負荷が大きくなったりするため、本
発明では、調査結果に基づいて、鋼材全体の脆性き裂伝
播停止特性が塑性変形前後で、十分なレベルを保持する
のに必要なレベルに基づいて、板厚中心部の結晶粒径を
30μm以下に限定する。
【0056】表層の超細粒層以外の粒径全体が30μm
以下となることが好ましいが、鋼材の破壊に際しては板
厚中心部が最も厳しい応力条件になることと、一般的に
は板厚中心部の粒径が最も粗大になるため、本発明にお
いては板厚中心部での結晶粒径を規定する。
【0057】なお、ここでの結晶粒径とは破壊に対する
抵抗を表す指標となり得る、いわゆる“有効結晶粒径”
を示す。従って、フェライト主体組織でほぼフェライト
結晶粒径に、ベイナイトあるいはマルテンサイト主体組
織ではほぼ各々ベイナイトパケットサイズ、マルテンサ
イトパケットサイズに対応する。
【0058】なお、塑性変形後の靱性、脆性き裂伝播停
止特性、延性の確保に有効な、N量の低減、窒化物形成
元素によるNの固定、表層部への超細粒層の付与は溶接
継手の靱性や延性を向上させる付加的な効果も有してい
ることが有効であることが実験的に確かめられた。即
ち、大入熱溶接における溶接熱影響部の靱性に対しては
固溶Nの悪影響が大きいが、本発明のようにN量や固溶
N量を厳密に制御しておけば固溶Nの溶接熱影響部靱性
への悪影響は極小化される。
【0059】また、表層部に形成された超細粒層は溶接
熱影響部の内で溶接ビード直近の1300℃以上に再加
熱される様な領域では完全に消滅するが、より低温に加
熱されている熱影響部では超細粒組織は消滅するものの
変態前の超細粒組織の影響が残存して該溶接熱影響部の
組織を微細化する効果があるため、溶接熱影響部の靱性
向上に対しても効果がある。
【0060】以上のように延性破壊特性の向上、脆性き
裂の伝播停止特性向上のために化学組成の限定、鋼材表
層部の超細粒化が重要ではあるが、耐破壊性能の確保の
ためには前提として鋼材の低降伏比化が図られていなけ
ればならない。
【0061】表層部に超細粒組織を形成させて脆性き裂
の伝播停止特性を向上させた鋼においては、低降伏比特
性を得るための手段としては、組織中に適正量のマルテ
ンサイト相を組織中に分散させる手段が最も好ましい。
即ち、低降伏比特性を得るための手段は種々考えられる
が、表層に超細粒組織が存在する場合には、マルテンサ
イトのような脆い硬質相が分散しても靱性劣化が抑制さ
れるため、鋼成分の制限が比較的少ないマルテンサイト
の分散による低降伏比化を用いる場合に最も適してい
る。
【0062】他の低降伏比化の手段、例えばC,Cr,
Mo等の添加による第二相の増加では、合金コストの上
昇を招き、かつ溶接性等への悪影響の懸念があり、ま
た、表層部を除く内部の結晶粒径を粗大化して鋼材全体
としての低降伏比化を図る方法では、内部の靱性劣化が
避けられない。本発明は表層超細粒層組織を有する鋼材
での低降伏比化に対してはマルテンサイトの分散が最も
好ましい手段であることを知見するとともに、該表層超
細粒組織とマルテンサイトの分散とを同時に達成できる
製造方法を確立した。
【0063】延性特性を劣化させずに低降伏比化するた
めの組織要件は、硬質相であるマルテンサイト相の鋼材
体積に対する割合を10〜60%とすることである。即
ち、低降伏比化のためには母相中に母相に比べて十分強
度の高い第二相を分散させることによって、引張強度を
高めて降伏比(降伏応力/引張強度)を低下させる手段
が最も有効である。
【0064】本発明においては実験結果に基づいて、硬
質相としてはマルテンサイト相が最も好ましく、その割
合としては鋼板体積中の平均として10〜60%の範囲
が、低降伏比化と他の材質特性との両立の点で最も好ま
しいことを見いだした。マルテンサイト相の割合が10
%未満であると、硬質相による引張強度の向上効果が得
られないため、低降伏比化が図られない。
【0065】一方、マルテンサイト相の割合が60%超
であると、マルテンサイトへのCの濃化が十分でないた
めにマルテンサイトの硬さが低下して母相の硬さとの差
が小さくなるためと、硬質相であるマルテンサイト相の
降伏応力への影響が生じ始めるため、降伏応力の上昇と
引張強度の低下のために降伏比が高くなる。
【0066】また、マルテンサイト相の割合が60%超
ではマルテンサイトの粗大化が生じて、延性や靱性が劣
化するため好ましくない。なお、ここでのマルテンサイ
ト相には、一部残留オーステナイト相が含まれたM−A
相(Martensite-Austenite Constituent)も含んでいる。
【0067】マルテンサイト相を一部含んだ組織形態を
得る手段としては、特開昭53−23817号公報等に
開示されているように、熱処理により一旦二相域温度に
再加熱してオーステナイト(γ)相を再析出させた後、
放冷あるいは急冷により冷却中にγ相をマルテンサイト
相に変態させる方法が代表的である。
【0068】しかしながら、本発明では、低降伏比化と
同時に表層部に超細粒組織を有し、これによって脆性き
裂の伝播停止特性の向上を図る必要がある。超細粒組織
は熱的に不安定であるため、該超細粒組織のフェライト
粒径の粗大化あるいは超細粒組織の消滅が生じないよう
に、製造方法に対する工夫が必須となる。
【0069】本発明においては、詳細な実験の結果によ
り、他の材質特性との関係や製造の簡便さ、製造への負
荷の観点から、表層部の超細粒組織と低降伏比化に必要
な割合のマルテンサイト相の導入とを両立させる製造方
法として、以下の二つの方法が最も適当であるとの結論
に至った。
【0070】第1の方法は、表層部に超細粒層を形成さ
せるために、鋼片をAc3 変態点以上、1250℃以下
の温度に加熱し、950℃以下でのオーステナイト域で
の累積圧下率が10〜50%の粗圧延を行った後、その
段階での鋼片厚みの10〜33%に対応する少なくとも
2つの外表面の表層部領域を、Ar3 変態点以上の温度
から2〜40℃/sの冷却速度で冷却を開始し、Ar3
態点以下で冷却を停止して復熱させることを1回以上経
由させる過程で、最後の冷却後の復熱が終了するまでの
間に累積圧下率が20〜90%の仕上げ圧延を完了さ
せ、該圧延完了後の鋼材の前記表層域を(Ac1 変態点
−50℃)〜(Ac3 変態点+50℃)の範囲に復熱さ
せる。
【0071】該復熱終了後の鋼材を0.2〜2℃/sの冷
却速度で冷却し、(該冷却速度における変態開始温度
(Ar3 )−50℃)〜500℃の範囲に冷却した後、
5〜40℃/sの冷却速度で20〜300℃まで冷却する
ことによって、所要のマルテンサイト相を形成させる。
【0072】即ち、低降伏比化のために、フェライト
相、ベイナイト相、及びこれらの組織の混合相からなる
母相にマルテンサイト相を導入するが、そのためにはフ
ェライト/オーステナイト二相域の適切な温度域まで冷
却した後、オーステナイト相をマルテンサイトに変態さ
せるために急冷する。このような製造方法によって、表
層部の超細粒組織の形態を損なうことなく所要のマルテ
ンサイト組織を導入することが可能となる。
【0073】第2の方法は、鋼片をAc3 変態点以上、
1250℃以下の温度に加熱し、950℃以下でのオー
ステナイト域での累積圧下率が10〜50%の粗圧延を
行った後、その段階での鋼片厚みの10〜33%に対応
する少なくとも2つの外表面の表層部領域を、Ar3
態点以上の温度から2〜40℃/sの冷却速度で冷却を開
始し、Ar3 変態点以下で冷却を停止して復熱させるこ
とを1回以上経由させる過程で、最後の冷却後の復熱が
終了するまでの間に累積圧下率が20〜90%の仕上げ
圧延を完了させ、該圧延完了後の鋼材の前記表層域を
(Ac1 変態点−50℃)〜(Ac3 変態点+50℃)
の範囲に復熱させて、復熱終了後の鋼材を放冷するか、
あるいは復熱終了後の鋼材を5〜40℃/sの冷却速度で
20〜650℃まで冷却することによって、表層部に超
細粒層を形成した鋼材に以下の特殊な二相域熱処理を施
す方法である。
【0074】即ち、通常の熱処理によってマルテンサイ
トの形成のための二相域熱処理を施すと、表層部の超細
粒組織は完全に、あるいは一部その形態が損なわれるた
め、採用できないが、二相域温度まで加熱するまでの昇
温速度を高め、かつ加熱温度での保持時間を短時間に限
定することによって、表層超細粒組織の機能を損なうこ
となく、組織中に低降伏比化に有効なマルテンサイト相
を導入することが可能となる。
【0075】その場合、0.1〜50℃/sの昇温速度で
(Ac1 変態点+10℃)〜(Ac3 変態点−30℃)
の範囲に加熱した後、該温度範囲での潜在時間を1〜6
0sとする必要がある。加熱保持後の冷却は急冷の方が
マルテンサイト形成には好ましいが、0、5〜50℃/s
の範囲であれば良い。以上のマルテンサイト相導入のた
めの製造条件の、具体的な限定理由については後述す
る。
【0076】以上が本発明の耐破壊性能に優れた建築用
高張力鋼材の要件であるが、個々の化学成分についても
下記に述べる理由により、各々限定する必要がある。
【0077】即ち、Cは鋼の強度を向上させる有効な成
分として含有するもので、0.01%未満では構造用鋼
に必要な強度の確保が困難であるが、0.15%を超え
る過剰の含有は延性破壊特性の劣化により、本発明が目
的としている耐破壊性能の低下を招く。また、靱性や耐
溶接割れ性なども低下させるので、0.01〜0.15
%の範囲とした。
【0078】次に、Siは脱酸元素として、また母材の
強度確保に有効な元素であるが、0.01%未満の含有
では脱酸が不十分となり、また強度確保に不利である。
逆に1.0%を超える過剰の含有は粗大な酸化物を形成
して延性や靱性の劣化を招く。そこで、Siの範囲は
0.01〜1.0%とした。
【0079】また、Mnは母材の強度、靱性の確保に必
要な元素であり、最低限0.l%以上含有する必要があ
るが、溶接部の靱性、割れ性など材質上許容できる範囲
で上限を2.0%とした。
【0080】Alは本発明の要件の一つであるNの固定
に有効な元素であり、かつ、脱酸、γ粒径の細粒化等に
有効な元素であるが、効果を発揮するためには0.00
3%以上含有する必要がある。一方、0.1%を超えて
過剰に含有すると、粗大な酸化物を形成して延性を極端
に劣化させるため、0.003〜0.1%の範囲に限定
する必要がある。
【0081】Nは、固溶Nが存在すると、前述したよう
に延性破壊特性の劣化や塑性変形後の靱性劣化が生じる
ため、前記(1)式あるいは(2)式に従って、Al,
Ti,Zr,Nb,Ta,V,Bを適正量含有させる必
要がある。ただし、全含有量としても下記の理由により
限定する必要がある。
【0082】即ち、NはAlとTiと結びついてγ粒微
細化に有効に働くため、微量であれば機械的特性に有効
に働く。また、工業的に鋼中のNを完全に除去すること
は不可能であり、必要以上に低減することは製造工程に
過大な負荷をかけるため好ましくない。
【0083】そのため、工業的に御御が可能で、製造工
程への負荷が許容できる範囲としてNの下限を0.00
1%とする。過剰に含有すると、(1)式あるいは
(2)式を満足しても、製造履歴によっては延性破壊特
性や塑性変形後の靱性に悪影響を及ぼす可能性があるた
め、許容できる範囲として上限を0.006%とする。
【0084】Pについては、前述したように、フェライ
ト母地の延性を劣化させるため、塑性変形能、延性き裂
の発生、進展特性向上のためにその含有量を限定する必
要がある。P量は少ないほど好ましいが、P量を低減す
ることは精錬工程へ負荷をかけて生産性の低下、コスト
の上昇を招くため、延性特性劣化に対して許容できるP
の下限量を実験結果に基づいて0.01%以下とする。
即ち、P量の増加にともなって延性特性は劣化するが、
0.01を超えるとその程度が顕著になる。P量が0.
01%以下ではPの悪影響の程度は小さくなる。従っ
て、本発明においては不純物としてのP量を0.01%
以下に限定する。
【0085】ただし、偏析部での局所的な塑性変形や延
性破壊特性の劣化が影響を及ぼすような構造物に使用さ
れる場合には、精錬の問題を度外視すれば、P量は0.
007%以下に限定する方がより好ましい。
【0086】Sについても、前述したように、MnSを
形成するため延性破壊特性を劣化させる。特に延性き裂
の伝播特性を劣化させる。固溶P,Nが多い条件のもと
では延性破壊の発生特性が低下しているため、Sによる
延性き裂の伝播特性の劣化は鋼材全体の塑性変形能や延
性破壊特性に大きく影響を及ぼし、Sを0.001%以
下程度まで極端に低減する必要が生じる。
【0087】ただし、本発明のようにP,N量の低減や
固溶Nの窒化物形成元素による固定が図られていれば、
延性破壊の発生までの抵抗が大となるためにSの許容量
は広がることから、本発明では実験結果に基づいて不純
物としてのSを0.01%以下に限定する。
【0088】さらに、Oについても前述したように、O
は延性に有害な介在物を形成するために極力低減するこ
とが好ましいが、Sと同様、固溶P,Nが低減されてい
れば母地の延性がある程度確保されるため、固溶P,N
の低減が図られていない場合に比べて許容量は高いが、
実験結果に基づけば、0.006%以下に限定する必要
がある。
【0089】Ti,Zr,Nb,Ta,V,BはN固定
を主目的として、必要に応じて1種または2種以上を選
択的に含有するが、個々の元素についても下記に示す理
由によりその成分量を限定する必要がある。
【0090】TiはN固定に有効な元素であり、さら
に、析出強化により母材強度向上に寄与するとともに、
TiNの形成によりγ粒微細化にも有効な元素である
が、効果を発揮するためには0.003%以上の含有が
必要である。一方、0.02%を超えると、粗大な析出
物、介在物を形成して靱性や延性を劣化させるため、上
限を0.02%とする。
【0091】Zrも窒化物を形成する元素であり、Nの
固定に有効であるが、その効果を発揮するためには0.
003%以上の含有が必要である。一方、0.10%を
超えると、Tiと同様、粗大な析出物、介在物を形成し
て靱性や延性を劣化させるため、0.003〜0.10
%の範囲に限定する。
【0092】NbもNの固定に有効な元素であるが、過
剰の含有では析出脆化により靱性が劣化する。従って、
靱性の劣化を招かずに効果を発揮できる範囲として、
0.002〜0.05%の範囲に限定する。
【0093】TaもNの固定に有効な元素であるが、効
果を発揮するためには0.005%以上の含有が必要で
ある。一方、0.20%を超えると、析出脆化や粗大な
析出物、介在物による靱性劣化を生じるため、上限を
0.20%とする。
【0094】VもVNを形成してNの固定に有効な元素
であるが、Nbと同様、過剰の含有では析出脆化により
靱性が劣化する。従って、靱性の劣化を招かずに効果を
発揮できる範囲として、0.005〜0.20%の範囲
に限定する。
【0095】Bは微量で確実にNと結びつくため、N固
定に有効な元素であり、効果を発揮するためには0.0
002%以上必要である。一方、0.003%を超えて
過剰に含有するとBNが粗大となり、延性や靱性に悪影
響を及ぼす。また溶接性も劣化させるため、上限を0.
003%とする。
【0096】以上に加えて、所望の強度レベルに応じて
母材強度の上昇、靱性確保の目的で、必要に応じてC
r,Ni,Mo,Cu,Wの1種または2種以上を含有
することができる。先ず、Cr及びMoはいずれも母材
の強度向上に有効な元素であるが、明瞭な効果を生じる
ためには0.01%以上必要であり、一方、2.0%を
超えて添加すると、靱性及び溶接性が劣化する傾向を有
するため、各々0.01〜2.0%の範囲とする。
【0097】また、Niは母材の強度と靱性を同時に向
上でき、非常に有効な元素であるが、効果を発揮させる
ためには0.01%以上含有させる必要がある。含有量
が多くなると強度、靱性は向上するが4.0%を超えて
添加しても効果が飽和する一方で、溶接性が劣化するた
め、上限を4.0%とする。
【0098】次に、CuもほぼNiと同様の効果を有す
るが、2.0%超では熱間加工性に問題を生じるため、
0.01〜2.0%の範囲に限定する。Wは固溶強化及
び析出強化により母材強度の上昇に有効であるが、効果
を発揮するためには0.01%以上必要である。一方、
2.0%を超えて過剰に含有すると靱性劣化が顕著とな
るため、上限を2.0%とする。
【0099】さらに、延性の向上、継手靱性の向上のた
めに、必要に応じて、Mg,Ca,REMの1種または
2種以上を含有することができる。Mg,Ca,REM
はいずれも硫化物の熱間圧延中の展伸を抑制して延性特
性向上に有効である。酸化物を微細化させて継手靱性の
向上にも有効に働く。その効果を発揮するための下限の
含有量は、Mg及びCaは0.0005%、REMは
0.005%である。一方、過剰に含有すると、硫化物
や酸化物の粗大化を生じ、延性、靱性の劣化を招くた
め、上限を各々、Mg,Caは0.01%、REMは
0.10%とする。
【0100】次に、本発明の耐破壊性能に優れた建築用
低降伏比高温力鋼材の製造に際しての限定理由を述べ
る。上記理由により限定した化学成分を有する鋼におい
て、脆性き裂伝播停止特性の向上のために、鋼材の少な
くとも2つの面の表層部において、平均フェライト粒径
が3μm以下の超細粒組織を表層から板厚の10〜33
%の厚さにわたって存在させる必要がある。本発明で限
定する特徴を有する表層超細粒層は以下に示すように製
造条件を限定することによって形成させることができ
る。
【0101】鋼片を熱間圧延するに際し、熱間圧延中あ
るいは熱間圧延途中で表層部の適当な厚みの領域を水冷
等の手段により、Ar3 変態点よりも低い温度まで一旦
冷却して内部と温度差を付けた後、温度差のついたまま
の状態からさらに熱間圧延を行うと、Ar3 変態点より
も低い温度まで一旦冷却された領域は復熱及びその過程
の加工によりフェライト主体組織となる。
【0102】そのため、該フェライト主体組織を有する
表層部は内部の顕熱により復熱されながら加工を受ける
ことになり、この復熱中の加工条件を適正化することに
より、表層部のフェライト結晶粒が顕著に細粒化する。
従って、最終的な鋼材における表層超細粒層の割合は、
表層を一旦冷却した際にAr3 変態点まで低下した領域
の割合とほぼ一致することになる。
【0103】上記熱間圧延工程において、以下に示すよ
うな条件を満足することによって超細粒化が達成され
る。先ず、鋼片をオーステナイト域に再加熱するが、こ
の場合の温度としてはAc3 変態点以上、1250℃以
下が好ましい。即ち、Ac3 変態点未満ではオーステナ
イト単相にならず、フェライト相が残存し、該フェライ
ト相が残存すると後の工程の如何によらず、表層に均一
な超細粒組織を形成することができない。
【0104】また、内部も二相域加工されるため、鋼材
の異方性が増大する問題も生じる。一方、1250℃超
では加熱オーステナイト粒径が極端に粗大となるため、
後の圧延によっても粒径の微細化ができず、板厚中心部
の靱性確保ができない。従って、本発明では鋼片の加熱
温度をAc3 変態点〜1250℃に限定する。
【0105】鋼片を加熱後、950℃以下のオーステナ
イト域で累積圧下率が10〜50%の圧延を行う。これ
は変態前のオーステナイト粒径を実質的に微細化して、
後の工程で表層を超細粒組織とするためと、板厚中心部
の結晶粒径を30μm以下として内部の通常組織の靱性
を確保するためである。なお、オーステナイト粒の実質
的な微細化とは、再結晶オーステナイトの微細化ととも
に未再結晶圧延によるオーステナイト粒の展伸化も指
す。
【0106】低温のオーステナイト域での圧下がオース
テナイトの実質的な微細化に有効であるが、950℃超
の圧下はオーステナイトの微細化に有効でないため、本
発明においては950℃以下の温度での圧下率を限定す
る。950℃以下の圧下率は10%未満では加工の効果
が不足するため、オーステナイトの微細化に効果がな
い。
【0107】950℃以下のオーステナイト域での圧下
率は大きければ大きいほどオーステナイトの微細化に有
効であるが、その効果は50%超では飽和傾向にあるこ
とと、該圧下率が50%超と大きくなると、オーステナ
イトの細粒化には有効であるものの、後の表層部のフェ
ライトを超細粒化する上で必須である復熱過程での圧下
率が確保できなくなるため、本発明では950℃以下で
の圧下率の上限を50%とする。
【0108】なお、950℃超の温度での圧下はオース
テナイトの微細化に対する効果が小さいが、後の復熱工
程での必要圧下率を確保できる範囲であれば、材質に悪
影響を及ぼすものではないので、初期スラブ厚みが大き
い場合等、必要に応じて950℃超の温度での加工を行
ってもかまわない。
【0109】上記の条件で十分オーステナイト粒の微細
化、未再結晶域圧延を施した上で、該鋼材の超細粒層と
すべき表層部を水冷等の手段により冷却し、該鋼材の水
冷前の熱間圧延時点での板厚の10〜33%に対応する
各表層部の領域をAr3 変態点以下まで冷却するととも
に、表層部と内部に温度差をつける。
【0110】その際、該鋼材の水冷前の熱間圧延時点で
の板厚の10〜33%に対応する各表層部の領域の冷却
速度は2℃/s以上にする必要がある。これは冷却速度が
2℃/s未満では冷却前の熱間圧延によりオーステナイト
を微細化しておいても冷却後の変態組織が粗大となり、
その後の復熱中の圧延で均一な超微細フェライト組織を
得ることが困難となるためである。
【0111】冷却速度は大きい方が組織微細化の観点か
らは好ましいが、40℃/sを超えて急冷しても効果が飽
和する上に、不必要に急冷することは鋼板の形状維持の
ためには好ましくないため、上限を40℃/sとする。
【0112】また、上記の950℃以下での圧延を行っ
た後の冷却はAr3 変態点以上から開始する。これは、
単相オーステナイトから冷却することで表層超細粒層を
均一に形成させるためである。即ち、該表層部が強制冷
却前にAr3 変態点未満となると、フェライトが一部粗
大に生成し、その部分での超細粒化が阻害されるためで
ある。
【0113】以上の理由により、該鋼材の冷却前の熱間
圧延時点での板厚の10〜33%に対応する各表層部の
領域を2〜40℃/sの冷却速度でAr3 変態点以下まで
冷却し、その後仕上げ圧延を行う際、内部の顕熱による
か、及び/または外部からの加熱を利用して板厚の10
〜33%に対応する各表層部の領域を昇温中に圧延を施
すことにより、該領域の組織が超微細化し、脆性き裂伝
播停止特性向上に寄与できるようになる。
【0114】後述するように、上記復熱過程の加工は1
回もしくは2回以上繰り返してもよいが、最後の冷却後
の復熱過程での圧延後の復熱温度は、(Ac1 変態点−
50℃)〜(Ac3 変態点+50℃)の範囲にする必要
がある。即ち、該最終復熱温度が(Ac1 変態点−50
℃)よりも低いと、加工後の加工フェライトの回復・再
結晶が十分でないため、超細粒化が不十分で、脆性き裂
伝播停止特性が向上しない。
【0115】一方、該最終復熱温度が(Ac1 変態点+
50℃)よりも高いと、加工により超細粒化したフェラ
イトの一部が再度オーステナイトに逆変態することによ
って消失してしまい、その割合が無視できないほど多く
なって靱性及び脆性き裂伝播停止特性を損なう。従って
本発明においては、最後の冷却後の復熱過程での圧延後
の復熱温度は(Ac1 変態点−50℃)〜(Ac3 変態
点+50℃)の範囲に限定する。
【0116】以上のAr3 変態点以下への冷却と復熱中
の加工工程は1回でも良いが、複数回繰り返すことによ
り効果が重畳するため、2回以上繰り返しても所望の微
細組織を得ることが可能である。
【0117】その場合、各復熱段階の最高温度あるいは
最低温度は任意であっても本発明の温度条件に従えば超
細粒化する。ただし、好ましくは途中の復熱温度の上限
は(Ac3 変態点+100℃)以下とする方が、細粒化
の効果が確実に重畳する点で好ましい。
【0118】最初の冷却後から最後の復熱に至るまでの
圧延としての仕上げ圧延の累積圧下率は、大きい方が均
一かつ安定に超細粒組織を得られる。そのためには、仕
上げ圧延の累積圧下率は最低限20%必要である。圧下
率は大きいほど超細粒化には有利であるが、圧下率が9
0%を超えるような圧延は効果が飽和し、生産性を極端
に阻害するため好ましくない。従って、本発明では仕上
げ圧延の累積圧下率は20〜90%に限定する。
【0119】上記の限定条件に従った製造方法により、
表層部に超細粒層を付与することが可能であるが、さら
に低降伏比化のために、圧延終了後の冷却条件あるいは
鋼材製造後の熱処理条件を下記に示すように限定する必
要がある。
【0120】最後の復熱が終了した後の冷却段階でマル
テンサイト相を導入する方法においては、復熱終了後の
鋼材を0.2〜2℃/sの冷却速度で(該冷却速度におけ
る変態開始温度(Ar3 )−50℃)〜500℃の範囲
に冷却した後、5〜40℃/sの冷却速度で20〜300
℃まで冷却する。
【0121】先ず、復熱終了後の鋼材を二相域温度まで
冷却するが、その際の冷却速度が0.2℃/s未満では冷
却速度が遅すぎるため、変態により生成するフェライト
あるいはベイナイト、あるいはこれらの混合相である母
相組織が粗大化するため、靱性の劣化を生じるためと、
前段階で形成された超細粒層の結晶粒径が粗大化して脆
性き裂伝播停止特性を劣化させる可能性があるため、好
ましくない。
【0122】また、冷却速度が2℃/s超であると変態開
始温度が低くなりすぎるため、変態相とオーステナイト
相との二相組織とすることが困難となったり、母相とマ
ルテンサイトとの硬さの差が小さくなって低降伏比化で
きない等の問題が生じるため好ましくない。
【0123】以上の理由により、本発明においては最後
の復熱から(該冷却速度における変態開始温度(A
3 )−50℃)〜500℃までの冷却速度の範囲を
0.2〜2℃/sに限定する。
【0124】復熱終了後、0.2〜2℃/sで二相域温度
まで冷却して変態により生じた母相と未変態のオーステ
ナイト相の割合を適正化した後、未変態のオーステナイ
トをマルテンサイト相に変態させるために急冷する。そ
の際、0.2〜2℃/sでの冷却を停止する温度として
は、(該冷却速度における変態開始温度(Ar3 )−5
0℃)〜500℃の範囲とする必要がある。
【0125】低降伏比化に必要な10〜60%のマルテ
ンサイト相を安定して組織中に形成させるためには、オ
ーステナイト中にCが一定以上濃縮する必要があるが、
そのためには二相域に入るまでの冷却速度での変態開始
温度(Ar3 変態点)よりも50℃以下とする必要があ
る。ただし、この温度が低くなりすぎると、その後の急
冷段階の前に変態が生じてしまい、Cの濃化した硬いマ
ルテンサイトではなく、母相との硬さの差の小さいベイ
ナイト相が生成する可能性が高くなる。
【0126】実験結果によれば、10〜60%のマルテ
ンサイトの割合を確保するための下限温度は500℃と
なる。そのため、本発明における急冷前の冷却停止温度
は、(該冷却速度における変態開始温度(Ar3 )−5
0℃)〜500℃の範囲に限定する。
【0127】Ar3 −50〜500℃から急冷して未変
態のオーステナイトをマルテンサイト相に変態させる
が、マルテンサイト変態のためには冷却速度は速ければ
速いほど有利であるが、Cの濃縮したオーステナイトか
らの変態であることを考慮すれば、冷却速度の下限は5
℃/sとする必要がある。
【0128】また、冷却速度を速くするとマルテンサイ
ト変態のためには有利であるが、製造コストの上昇を招
き、鋼材に残留応力が残って鋼材の変形を生じる問題も
あるため、マルテンサイト生成に十分で、前記の問題点
の生じない範囲として冷却速度の上限は40℃/sとす
る。
【0129】5〜40℃/sで冷却してマルテンサイト変
態を生じた後は、残留応力の軽減や材質の向上を目的と
して途中で冷却を停止することが可能である。マルテン
サイト変態後の急冷停止温度としては、20℃を超えて
低温まで冷却することはマルテンサイトの特性になんら
影響を及ぼさないため無意味であり、また300℃超の
高温で急冷を停止すると、まだマルテンサイト変態が完
了しておらず、未変態のオーステナイトがベイナイト相
へ変態して必要量のマルテンサイトが確保できない恐れ
があるため、該急冷停止温度は20〜300℃の範囲に
限定する。
【0130】圧延・冷却後の鋼材を再加熱熱処理により
マルテンサイト相を生成させる場合は、復熱終了後の鋼
材を放冷するか、あるいは復熱終了後の綱材を5〜40
℃/sの冷却述度で20〜650℃まで冷却した後、さら
に0.1〜50℃/sの昇温速度で(Ac1 変態点+10
℃)〜(Ac3 変態点−30℃)の範囲に加熱した後、
該温度範囲で1〜60s保持した後、0.5〜50℃/s
で冷却する。
【0131】本発明の条件に従った復熱工程での圧延を
含む熱間圧延を施して表層部に超細粒組織を形成させた
後は、その後の粒成長を抑制できる程度の冷却速度で変
態が実質的に終了する温度まで冷却すればよい。
【0132】鋼材の最も厚い断面の板厚が100mm以下
の場合は放冷でも十分である。また、強度調整や製造時
間の短縮を目的として急冷することも当然可能であり、
その場合の冷却条件を、本発明では5〜40℃/sの冷却
速度で20〜650℃まで冷却することとする。
【0133】冷却速度を5〜40℃/sに限定するのは、
5℃/s未満では強度調整に効果がないためであり、40
℃/s超では強度上昇効果や組織制御効果が飽和する一方
で、鋼材の変形や残留応力が大となる傾向があり、実用
上これ以上冷却速度を高めても意味がないためである。
【0134】5〜40℃/sでの急速冷却を停止する温度
は20〜650℃の範囲とするが、これは、急速冷却を
20℃未満まで行っても材質や組織制御に対して全く効
果がない一方で、製造コストの上昇や鋼材形状の劣化を
生じる懸念があるためと、急速冷却停止温度が650℃
超では、板厚中心近傍の変態がまだ進行中のため、組織
の粗大化や高温変態生成物の増加により所望の材質が得
られなくなり、材質制御を目的とした急速冷却の意図が
全く失われてしまうためである。
【0135】以上の方法により製造した鋼材を二相域に
再加熱して、マルテンサイト相を必要量生成させる。そ
の熱処理の要件は、0.1〜50℃/sの昇温速度で(A
1変態点+10℃)〜(Ac3 変態点−30℃)の範
囲に加熱した後、該温度範囲で1〜60s保持した後、
0.5〜50℃/sで冷却することにある。
【0136】二相域熱処理を行う場合に問題となるの
は、圧延工程で形成された表層部の超細粒組織をいかに
保存するかにある。該表層部の超細粒組織は、特別に工
夫された熱履歴によって形成された組織であるため、変
態温度を超える温度はもちろん、高温に焼戻し処理を受
けただけでも、再度晶、粒成長等により、その特異な超
細粒組織が損なわれる可能性が高くなる。
【0137】該超細粒組織を保有しつつ、マルテンサイ
ト導入のための熱処理としては、急速加熱かつ短時間保
持の二相域熱処理が必須となる。即ち急速に加熱するこ
とにより、超細粒組織がその熱を駆動力として変化する
前に二相域温度まで到達することが可能であり、同様
に、短時間保持により保持段階での超細粒組織の粒成長
を抑制することが可能となる。
【0138】その場合、昇温速度は0.1〜50℃/sの
範囲とする必要がある。昇温速度が0.1℃/s未満では
急速加熱の効果がなく、超細粒部の粒成長を抑制するこ
とが難しい。一方、50℃/s超では、超細粒部の粒成長
の抑制には有効ではあるものの、保持温度がオーバーシ
ュートしやすく、工業的に安定した制御が難しくなるた
め、本発明では上限を50℃/sに限定した。
【0139】なお、加熱のはじめから保持温度までこの
昇温速度範囲内に制御されることが好ましいが、500
℃から保持温度までの平均の昇温速度が本発明の範囲内
にあれば、表層部の超細粒組織を損なうことなく二相域
熱処理が可能となる。
【0140】上記の加熱速度及び後述の保持時間の限定
範囲内において加熱温度を適正化して、熱処理後に鋼材
中のマルテンサイト相の割合が、低降伏比化に適した1
0〜60%の範囲となるように制御する。そのために
は、(Ac1 変態点+10℃)〜(Ac3 変態点−30
℃)の範囲の二相域温度に加熱する必要がある。
【0141】加熱温度が(Ac1 変態点+10℃)未満
であると加熱時に形成されるオーステナイト相の割合が
少ないため、冷却中の変態により形成されるマルテンサ
イト相の割合が10%以上確保できない。
【0142】逆に加熱温度が(Ac3 変態点−30℃)
超であると、加熱時に形成されたオーステナイト相中へ
のCの濃化が十分でなく、化学組成によらないオーステ
ナイトの焼入性が確保されないため、加熱保持後の冷却
中のオーステナイトからマルテンサイトヘの変態が確実
でなくなり、安定して必要量のマルテンサイト量を得る
ことが困難になるためと、加熱温度が高くなると表層部
の超細粒組織の形態が崩れる危険性が増加する。
【0143】従って、本発明においては、昇温速度が
0.1〜50℃/sで該加熱温度での保持時間が1〜60
sであることを前提とした場合に、安定して必要量のマ
ルテンサイト量を確保でき、かつ表層部の超細粒組織の
形態を損なわないために、二相域熱処理の加熱温度は
(Ac1 変態点+10℃)〜(Ac3 変態点−30℃)
の範囲に限定する。
【0144】加熱温度での保持時間を1〜60sに限定
するのは、昇温速度を高めるのと同様、表層部の超細粒
組織の形態を損なわないためである。保持時間が1s未
満では工業的に制御が困難であり、60s超では表層部
の超細粒組織の再結晶、粒成長が開始する。
【0145】なお、昇温速度を高めること、及び、加熱
温度での保持時間を短時間に限定することは、表層部の
組織保存に効果があると同時に、二相域熱処理時のマル
テンサイト相の微細化にも補足的に効果があり、靱性向
上に対しても有効である。
【0146】(Ac1 変態点+10℃)〜(Ac3 変態
点−30℃)に1〜60s保持した後の冷却条件は、冷
却変態時に必要量のマルテンサイト相が形成される範囲
内であればよい。本発明においては、冷却速度が0.5
℃/s未満であるとマルテンサイト相の形成が確実でな
く、冷却速度は速ければ速いほど有利ではあるが、50
℃/s超では二相域熱処理時のマルテンサイト相の形成に
対して効果が飽和する一方、鋼材の形状やコスト面での
デメリットも生じるため、冷却速度は0.5〜50℃/s
の範囲に限定する。
【0147】以上の、請求項5に示した超細粒層を形成
させた後、ただちに二相域温度から急速冷却する製造方
法、あるいは、請求項6に示した急速加熱、短時間保持
を特徴とする二相域熱処理による製造方法で製造された
鋼材に対して、強度調整、靱性向上、形状改善の目的
で、さらに焼戻し処理を施すことも可能である。その場
合には、表層部に形成された超細粒組織を損なわないこ
とが必須条件となる。
【0148】本発明では焼戻し温度を450〜650℃
の範囲に限定するが、これは、450℃未満では焼戻し
の効果が明確ではなく、650℃超では表層部の超細粒
組織の形態を損なう恐れがあるためである。なお、該焼
戻し温度範囲であれば、焼戻しの加熱保持時間は任意で
あるが、表層部の超細粒組織保存の観点からは、保持時
間は5h以内であることが好ましい。
【0149】
【実施例】表1に示す化学成分の供試鋼を用いて、表2
に示す製造条件で製造した板厚50mmの厚鋼板につい
て、製造まま及び歪を10%付与した後の母材の強度及
びシャルピー試験による靱性(破面遷移温度vTrs)、
ESSO試験による脆性き裂伝播停止特性(Kca値が4
00 kgf・mm-3/2となる温度)、延性破壊発生の限界C
TOD値(δi)、及び溶接継手特性(溶接ままでのシ
ャルピー特性(−20℃での吸収エネルギーの平均
値)、溶接まま及び10%歪付与後のδi)を表3に示
す。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
【表4】
【0154】
【表5】
【0155】
【表6】
【0156】
【表7】
【0157】
【表8】
【0158】
【表9】
【0159】
【表10】
【0160】
【表11】
【0161】
【表12】
【0162】
【表13】
【0163】
【表14】
【0164】
【表15】
【0165】
【表16】
【0166】母材の引張特性は、板厚のt/4部から試
験方向が圧延方向と直角となるようにして採取した、平
行部直径が6mmで評点間距離が25mmの丸棒試験片によ
り実施した。母材のシャルピー衝撃特性も引張試験片と
同一の位置、方向で採取し、破面遷移温度(vTrs)を
求めた。
【0167】延性破壊発生の限界CTOD値(δi)
は、板厚中心部から試験片の長手方向が圧延方向と直角
となるように採取した疲労ノッチ付き3点曲げ試験片に
より実施した。
【0168】溶接条件は、両面1層のサブマージアーク
溶接とした。溶接入熱を約190〜200kJ/cmの範囲
に入るように調整して溶接を実施した。継手の2mmVノ
ッチシャルピー衝撃試験片及びδi測定用の試験片は、
表面下7mmの位置が試験片の中心部となるようにして、
溶接金属とHAZの境界(融合部:FL)からHAZ側
に1mm入った位置がノッチ位置となるよう採取した。引
張特性及び母材、継手のδiの測定は全て室温で求め
た。なお、予歪試験については、鋼板からの板状試験片
を切り出して引張歪を10%付与した後、各試験片を採
取して特性調査に供している。
【0169】表1,表2に示すように、鋼番A1〜A1
6の鋼板は本発明の範囲内の化学成分及び表層超細粒組
織を有し、かつ80%未満の低降伏比を示しており、
脆性き裂の伝播停止特性の指標であるESSO試験によ
り求められたKca値が400kgf/mm-3/2となる温度が非
常に良好であるばかりでなく、10%の大きな歪を付与
した後にもその劣化が非常に小さい、通常の丸棒引張
試験で求められる伸びに加えて、き裂が存在する場合の
延性破壊の発生特性を示すδiも、歪付与有無にかかわ
らず良好な値を維持する、溶接継手のシャルピー特性
も、建築、橋梁等の構造物に安全に用いるために必要な
特性を有しており、継手のδiも母材と同様、歪付与後
でも十分高い値が得られており、本発明により製造され
た鋼材は、使用中に大地震等による大きくかつ繰り返し
の塑性歪を受けるような構造物に使用された場合にも、
従来にない高い安全性を有した低降伏比鋼材であること
が明白である。
【0170】一方、鋼番B1〜B10は比較例であり、
本発明の要件を満足していないために、表3に示した特
性のいずれかが本発明の鋼に比べて劣っている。即ち、
鋼番B1は全N量が過剰であるため、歪付与前のESS
O特性も本発明の鋼に比べて劣るが、特に歪付与後のE
SSO特性及びδiが劣る。
【0171】鋼番B2は全N量が過剰な上、固溶N固定
のためのAl,Ti,Nbの量が不十分であるため、歪
付与後の脆性き裂伝播停止特性やδiの値が本発明鋼に
比べて劣化している。鋼番B3は全N量としては本発明
の化学成分範囲であるが、Nの固定が不十分であるた
め、即ち(1)式の値が正の値となるため、歪付与によ
る材質劣化が大きい。
【0172】鋼番B4は固溶Nの固定に最も有効なAl
の含有量が不十分であるため、Nの固定が十分でなく、
歪付与によるESSO特性及びδiの劣化が顕著であ
る。鋼番B5はPが過剰であるため、延性破壊特性及び
ESSO特性が歪付与前でも低めであり、さらに、歪付
与後の延性破壊特性及びESSO特性は大きく低下す
る。
【0173】鋼番B6はSが過剰であるため、特に延性
特性(伸び、δi)が歪付与前、付与後とも本発明鋼に
比べて大幅に劣る。鋼番B7はCが過剰であるため、歪
付与前後における延性破壊特性及びESSO特性は低め
である上に、溶接継手の靱性が顕著に劣る。
【0174】鋼番B8は化学成分としては本発明の範囲
内であるが、表層部の超細粒組織を有していないため、
ESSO特性が歪付与前、付与後とも顕著に劣化してい
る。鋼番9は表層部に中心部に比較して細粒の組織を有
しているが、その粒径が本発明の要件を満足せず、粗大
であるため、十分な脆性き裂伝播停止特性が歪付与前後
とも得られない。
【0175】鋼番10は表層超細粒層の厚さが不十分で
あるため、十分な脆性き裂伝播停止特性が歪付与前後と
も得られない。鋼番B11は、圧延後の二相域温度から
の加速冷却がなく、二相域への急速加熱焼戻し処理も施
されていないため、組織中のマルテンサイト割合が過小
となり、降伏比が建築用低降伏比鋼としては不十分であ
る。
【0176】鋼番B12は逆に、二相焼戻しの加熱温度
が高すぎてマルテンサイトが遇剰なため、シャルピー特
性、脆性き裂伝播停止特性ともに顕著に劣化している。
鋼番B13は二相域焼戻しの条件が、本発明の特徴であ
る二相域への急速加熱、短時間保持の要件を満足してい
ない。即ち、二相域焼戻しの昇温速度が遅く、保持時間
も過剰なため、一旦形成された表層部の超細粒層の形態
がくずれ、平均粒径が粗大化したため、歪付与前におい
ても、脆性き裂伝播停止特性の向上が認められない。
【0177】鋼番B14はO量が過剰であるため、特に
延性破壊特性が劣る。鋼番B15は表層部の冷却の前の
γ域での圧延が行われていないため、板厚中心部の平均
結晶粒径が粗大となり、内部の靱性が劣り、塑性変形に
よる脆性き裂伝播停止特性劣化が顕著である。
【0178】以上の実施例から、本発明によれば、予歪
を付与する前はもちろん、及び大地震等で大きな変形を
受けた場合を想定した10%の予歪付与後においても、
シャルピー特性、脆性き裂伝播停止特性及び延性破壊特
性(絞り値、δi)が非常に良好な鋼材を得ることが可
能であることが明白である。
【0179】
【発明の効果】本発明は、使用中に大地震等による大き
くかつ繰り返しの塑性歪を受けるような場合にも、塑性
歪による材質の劣化が非常に小さく、塑性変形後におい
ても脆性き裂を容易にする延性き裂の発生や進展を抑制
し、かつ万一破壊が発生した場合でも、その脆性き裂を
停止できる安全性の非常に大きな低降伏比化高聴力鋼材
を、特殊な合金成分を用いることなく、通常の鋼材の製
造プロセスにおいて可能にしたものであり、その産業上
の効果は極めて大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/58 C22C 38/58

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.01〜0.15% Si:0.01〜1.0% Mn:0.1〜2.0% Al:0.003〜0.1% N :0.001〜0.006%を含有し、かつ、 N(%)−Al(%)/3.0≦0で、 不純物としてのP,S,Oの含有量が P :0.01%以下 S :0.01%以下 O :0.006%以下で、残部鉄及び不可避不純物か
    らなる鋼材であって、板厚中心部の平均結晶粒径が30
    μm以下であり、さらに、鋼材体積に占めるマルテンサ
    イト割合が10〜60%であり、さらに、該鋼材を構成
    する外表面のうち少なくとも2つの外表面に関して、表
    層から全厚みの10〜33%の範囲内の平均フェライト
    粒径が3μm以下の超細粒組織であることを特徴とする
    耐破壊性能に優れた建築用低降伏比高張力鋼材。
  2. 【請求項2】 重量%で、 Ti:0.003〜0.020% Zr:0.003〜0.10% Nb:0.002〜0.050% Ta:0.005〜0.20% V :0.005〜0.20% B :0.0002〜0.003% の1種または2種以上を含有し、 N(%)-Al(%)/3.0-Ti(%)/3.4-Zr(%)/6.5-Nb(%)/13.2-Ta
    (%)/25.8-V(%)/10.9-B(%)/2.0 ≦0 であることを特徴とする請求項1記載の耐破壊性能に優
    れた建築用低降伏比高張力鋼材。
  3. 【請求項3】 重量%で、 Cr:0.01〜2.0% Mo:0.01〜2.0% Ni:0.01〜4.0% Cu:0.01〜2.0% W :0.01〜2.0% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1または2記載の耐破壊性能に優れた建築用低降伏比
    高張力鋼材。
  4. 【請求項4】 重量%で、 Mg:0.0005〜0.01% Ca:0.0005〜0.01% REM:0.005〜0.10% のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする
    請求項1〜3のいずれか1項記載の耐破壊性能に優れた
    建築用低降伏比高張力鋼材。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の成分の
    鋼片を、Ac3 変態点以上、1250℃以下の温度に加
    熱し、950℃以下のオーステナイト域での累積圧下率
    が10〜50%の粗圧延を行った後、その段階での鋼片
    厚みの10〜33%に対応する少なくとも2つの外表面
    の表層部領域をAr3 変態点以上の温度から2〜40℃
    /sの冷却速度で冷却を開始し、Ar3 変態点以下で冷却
    を停止して復熱させることを1回以上経由させる過程
    で、最後の冷却後の復熱が終了するまでの間に累積圧下
    率が20〜90%の仕上げ圧延を完了させ、該圧延完了
    後の鋼材の前記表層域を(Ac1 変態点−50℃)〜
    (Ac3 変態点+50℃)の範囲に復熱させた後、さら
    に復熱終了後の鋼材を0.2〜2℃/sの冷却速度で(該
    冷却速度における変態開始温度(Ar3 )−50℃)〜
    500℃の範囲に冷却した後、5〜40℃/sの冷却速度
    で20〜300℃まで冷却して請求項1〜4のいずれか
    1項に記載の鋼材を製造することを特徴とする耐破壊性
    能に優れた建築用低降伏比高張力鋼材の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載の成分の
    鋼片を、Ac3 変態点以上、1250℃以下の温度に加
    熱し、950℃以下のオーステナイト域での累積圧下率
    が10〜50%の粗圧延を行った後、その段階での鋼片
    厚みの10〜33%に対応する少なくとも2つの外表面
    の表層部領域をAr3 変態点以上の温度から2〜40℃
    /sの冷却速度で冷却を開始し、Ar3 変態点以下で冷却
    を停止して復熱させることを1回以上経由させる過程
    で、最後の冷却後の復熱が終了するまでの間に累積圧下
    率が20〜90%の仕上げ圧延を完了させ、該圧延完了
    後の鋼材の前記表層域を(Ac1 変態点−50℃)〜
    (Ac3 変態点+50℃)の範囲に復熱させた後、復熱
    終了後の鋼材を放冷するか、あるいは復熱終了後の鋼材
    を5〜40℃/sの冷却速度で20〜650℃まで冷却し
    た後、さらに0.1〜50℃/sの昇温速度で(Ac1
    態点+10℃)〜(Ac3 変態点−30℃)の範囲に加
    熱し、該温度範囲で1〜60s保持した後、0.5〜5
    0℃/sで冷却する二相域熱処理を施して請求項1〜4の
    いずれか1項に記載の鋼材を製造することを特徴とする
    耐破壊性能に優れた建築用低降伏比高張力鋼材の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 450〜650℃で焼戻しを行うことを
    特徴とする請求項5または6記載の耐破壊性能に優れた
    建築用低降伏比高張力鋼材の製造方法。
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