JPH10175990A - 新規テトラヒドロキサントン化合物 - Google Patents

新規テトラヒドロキサントン化合物

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JPH10175990A
JPH10175990A JP8334003A JP33400396A JPH10175990A JP H10175990 A JPH10175990 A JP H10175990A JP 8334003 A JP8334003 A JP 8334003A JP 33400396 A JP33400396 A JP 33400396A JP H10175990 A JPH10175990 A JP H10175990A
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JP
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butanol
compound
tetrahydroxanthone
ethanol
assembly
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JP8334003A
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Inventor
Koji Hase
耕二 長谷
Tsuneo Nanba
恒雄 難波
Shigetoshi Kadota
重利 門田
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Yamanouchi Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Yamanouchi Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルコール,薬物を原因とする中毒性肝障
害,及びウイルス等を原因とする免疫性肝障害に抑制効
果を示し,肝障害の予防・治療薬として有用である。 【解決手段】センブリより抽出・分離して得たブタノー
ル可溶部,該ブタノール可溶部より単離して得た下式で
示される化合物,上記ブタノール可溶部又は化合物を有
効成分とするヒト又は動物の肝障害の予防・治療薬,及
び上記ブタノール可溶部又は化合物を含有する食品類。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,センブリより抽出・分
離して得られる肝障害抑制作用を有するブタノール可溶
部,該ブタノール可溶部より単離して得られる新規テト
ラヒドロキサントン化合物,及び該ブタノール可溶部又
は該新規テトラヒドロキサントン化合物を有効成分とす
る,特に肝障害の予防・治療に有用な医薬組成物若しく
は食品類に関する。
【0002】
【従来の技術】肝臓は自然治癒力が強く少々の障害では
表立った症状が表れないことから「沈黙の臓器」とも呼
ばれ,物質代謝,血糖の調節,解毒,胆汁循環の調節,
栄養素の貯蔵等,人の生命の維持に不可欠な機能を担っ
ている。ところが近年わが国においては飲酒量の増加に
伴い肝機能異常を示す患者が増えている。肝障害の病
因,病態は多種多様であるが,治療薬の開発が最も求め
られているのは医療ニーズの高い慢性活動性肝炎であ
り,本疾患を標的として肝保護薬をはじめ原因療法とし
ての抗ウイルス剤や免疫調節薬に至るまで様々な治療薬
の研究開発が活発に行われている。このような肝疾患に
対して,漢方療法においては,古来より小紫胡湯(紫胡
・半夏・人参・大棗・甘草・生姜・黄ごん),降ばい湯
(茵陳・土茯苓・草河車・五味子・烏梅・大棗)等の生
薬が「肝を清める」「肝の熱を除く」「肝の気を助け
る」として用いられているが,その有効成分は明らかで
はない。センブリ(Swertia japonica MAKINO)は,
日本固有種のリンドウ科の植物であって,生薬名を当薬
と称し,その全草を苦味健胃薬として,消化不良,食欲
不振に応用され[「原色和漢薬図鑑」46−47頁(1
994),(株)保育社発行参照],当薬散,健胃散な
どの家庭薬の原料として多くの処方に配合されている。
なお,朝鮮半島産当薬としてムラサキセンブリ,台湾産
当薬としてニイタカセンブリが知られている。また,セ
ンブリと同属近縁種の植物としては,ウキンソウ(Swer
tia heterantha Ling),タンミトウヤク(Swertia
diluta),セイヨウタン(Swertia vacillans Maxi
m.又はSwertia pulchella Buch.-Ham.),テンショ
ウガサイ(Swertia yunnanensis Burkill)等が挙げ
られる[「中薬大事典」55−56頁,1408−14
09頁,1739頁,1858頁(1985),上海科
学技術出版社(株)及び小学館 参照]。センブリから
は,これまでスウェルチアニン(swertianin),ノルス
ウェルチアニン(norswertianin),スウェルチアノリ
ン(swertianolin),ベリディフォリン(bellidifoli
n),メチルベリディフォリン(methylbellidifolin)
等の9H−キサンテン−9−オン骨核を有するキサント
ン類化合物(Samoto,I.etal.,Chem.Pharm.Bull.
30,4088−4901,1982)のほか,各種の
イリドイド配糖体や各種のフラボノイド配糖体などが単
離されているが,本発明によって提供されるテトラヒド
ロキサントン化合物についてはこれまで単離された報告
はない。また,センブリのエタノールエキスや下式化2
【0003】
【化2】 (式中,R1,R2及びR3は水素原子,水酸基又はメト
キシ基を示す)で表されるキサントン類化合物の一部に
肝細胞保護作用のあることが報告されている(Hikono,
H.et al.,Syouyakugaku Zasshi 38,359−
360,1984)。更に,センブリのメタノールエキ
スが抗コリン作用を示すこと(Yamahara,J.et a
l.,J.Ethanopharm.33,31−35,199
0),酢酸エチルエキス及びその酢酸エチルエキスより
単離されたベリディフォリン(bellidifolin)が血糖降
下作用を示すこと(特開平7−206673)等が既に
報告されている。しかしながら,本発明によって提供さ
れるセンブリのブタノール可溶部が肝障害抑制作用を有
することについてはこれまで知られていない。また,本
発明によって提供されるテトラヒドロキサントン類は9
H−キサンテン−9−オン骨核の芳香環の一部が飽和し
た5,6,7,8−テトラヒドロ−9H−キサンテン−
9−オン骨核を有する化合物であり,上記キサントン類
とは構造を異にしている。一方,天然物から単離された
テトラヒドロキサントン化合物としては,これまでに,
Gentiana campestrisから単離され
た下式化3
【0004】
【化3】 で示されるカムペストロサイド(campestroside)(Kal
das et al.,Phytochemlstry,17,295−29
7,1978)や麦角菌から単離されたエルゴクロムA
(ergochrome A)やセカロン酸A(secalonic acid
A)[「天然物化学」改訂第3版,第217−218頁
(1989)]が報告されているが,特に本発明化合物
は3位の置換基が水酸基ではなくメトキシ基である点に
おいて構造を異にする新規化合物であり,またこれらの
公知テトラヒドロキサントン化合物と肝障害抑制作用と
の関係については全く報告されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】慢性活動性肝炎等の治
療には,その性質上長期間に渡る薬剤の投与が必要であ
り,応々にして副作用が問題となる。従って,ウイル
ス,薬物中毒,アルコール等の肝疾患の原因を問わず高
い治療効果を有するより優れた肝疾患予防・治療薬の開
発が待たれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は,種々の生
薬について検討を重ねた結果,センブリより抽出・分離
して得られるブタノール可溶部が肝疾患に対して顕著な
障害抑制効果を有することを見出した。また,センブリ
から抽出・分離されたブタノール可溶部から更に新規テ
トラヒドロキサントン化合物である1,5−ジヒドロキ
シ−3−メトキシ−8−β−D−グルコピラノシル−
5,6,7,8−テトラヒドロキサントン(本発明者等
により「テトラヒドロスウェルチアノリン(tetrahydro
swertianolin)」と命名された)を単離することに成功
し,この化合物が新規であり,且つより顕著な肝障害抑
制作用を示すことを知見して本発明を完成した。
【0007】前記の如く,天然物から単離されたテトラ
ヒドロキサントン化合物の報告例としては,リンドウ科
の植物ゲンチアナ カムペストリス(Gentiana campest
ris)より単離されたカムペストロシド(campestrosi
d)が知られている。しかし,このカムペストロシド
が,その化学構造中,3位に水酸基を有するものである
のに対し,本発明による新規テトラヒドロキサントン化
合物は3位にメトキシ基を有する点において構造を明確
に異にする。更に前記カムペストロシドと肝障害抑制作
用との関係については全く報告されていない。なお,セ
ンブリから単離された化合物の報告例としては,前記の
肝細胞保護作用を有するキサントン類が知られている
が,該キサントン類がキサントン骨格を有するのに対
し,本発明による新規テトラヒドロキサントン化合物は
テトラヒドロキサントン骨格を有するので,本発明化合
物とは基本骨格を異にするものである。即ち,本発明
は,前記のブタノール可溶部から単離された,下記の化
学構造式を有する新規テトラヒドロキサントン化合物又
はその塩である。
【0008】
【化4】 また,本発明の他の形態は,センブリから抽出し分離し
て得られうる,肝障害抑制作用を有するブタノール可溶
部,特に下記(a),(b)の工程により得られうるこ
とを特徴とするブタノール可溶部である。 (a)センブリよりエタノール又はエタノール/水系溶
媒にて抽出物を抽出し,(b)次いでn−ブタノールで
処理することにより,ブタノール可溶部を分離する。更
に本発明は,前記のブタノール可溶部又は新規テトラヒ
ドロキサントン化合物を有効成分とする,ヒト又は動物
用の医薬組成物,特にヒト又は脊椎動物の肝障害の予防
・治療に有用な医薬組成物,及び前記のブタノール可溶
部又は新規テトラヒドロキサントン化合物を含有する食
品類に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明を更に詳細に説明す
る。前記化1で示される本発明化合物はその構造中に不
斉炭素原子を有するので,これに基づく光学異性体が存
在する。また,更に本発明化合物には,その構造中のカ
ルボニル基の存在に基づく互変異性体,又はグルコピラ
ノシル基に基づく幾何異性体が存在する。本発明にはこ
れら光学異性体,互変異性体及び幾何異性体等の単離さ
れたもの,あるいはこれら混合物の全てが含まれる。本
発明の化合物(化1)は,塩にすることができるが,そ
のような塩としては,好適にはナトリウム塩,カリウム
塩又はカルシウム塩のようなアルカリ金属又はアルカリ
土類金属の塩;弗化水素酸塩,塩酸塩,臭化水素酸塩,
沃化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩;炭酸塩,硝
酸塩,過塩素酸塩,硫酸塩,燐酸塩等の無機酸塩;メタ
ンスルホン酸塩,トリフルオロメタンスルホン酸塩,エ
タンスルホン酸塩のような低級アルキルスルホン酸塩;
ベンゼンスルホン酸塩,p−トルエンスルホン酸塩のよ
うなアリールスルホン酸塩;フマール酸塩,コハク酸
塩,クエン酸塩,酒石酸塩,シュウ酸塩,マレイン酸塩
等の有機酸塩;及びグルタミン酸塩,アスパラギン酸塩
のようなアミノ酸塩をあげることができる。これらの塩
は,本発明化合物(化1)を通常の造塩反応に付すこと
により,容易に製造できる。また,本発明には,本発明
化合物(化1)の水和物,製薬学的に許容される各種溶
媒和物や結晶多形のもの等も含まれる。本発明におい
て,「センブリ」とは,センブリ自体の他,本発明化合
物を含むセンブリの同属近縁種,具体的にはウキンソ
ウ,タンミトウヤク,セイヨウタン,テンショウガサイ
等を意味する。「ブタノール可溶部」とは,センブリ又
は上記センブリの同属近縁種の乾燥粉末よりエタノール
又はエタノール/水系溶媒を用いて抽出された抽出物
を,更にn−ブタノールで処理することにより,n−ブ
タノール層に分離,分配されて得られるブタノール可溶
部を意味する。ここで「エタノール/水系溶媒」とは,
エタノールを20〜99%(好ましくは60〜80%程
度),水を1〜80%(好ましくは20〜40%程度)
含有する溶媒を意味する。本発明のブタノール可溶部又
は新規テトラヒドロキサントン化合物は,センブリ又は
本発明化合物を含有する同属近縁種,好ましくはこれら
の全草乾燥粉末からエタノール,エタノール/水系溶媒
等にて抽出を行い,次いで該抽出物をn−ブタノールで
処理しブタノール可溶部を分離し,更に該ブタノール可
溶部を精製に付して新規テトラヒドロキサントン化合物
を単離することにより得られうる。
【0010】本発明のブタノール可溶部を抽出・分離
し,更に本発明の新規テトラヒドロキサントン化合物を
単離する方法は以下の通りである。 (1)抽出工程 抽出は,センブリの全草乾燥粉末からエタノール又はエ
タノール/水系溶媒を用いて抽出することにより行われ
る。抽出溶媒であるエタノール/水系の水は,常水でも
かまわないが,好ましくは精製水が用いられる。またエ
タノールの代わりにメタノール,アセトン,アセトニト
リルを用いても良い。なお抽出溶媒の使用量は,抽出方
法によっても異なるが,抽出物を抽出可能な量であれば
特に限定はなく,例えばセンブリの全草乾燥粉末に対し
て0.5〜15倍が適当である。本工程により抽出され
る抽出物及びテトラヒドロキサントン化合物に含まれる
本発明のブタノール可溶部は熱に安定な物質であり,ま
た熱時抽出した場合の収率が特に良好であるので,本工
程における抽出にあたっては熱時抽出が好ましい。抽出
は,実験室規模の加熱還流抽出器だけでなく,生薬等か
ら生理活性物質を抽出するために通常用いられる工業用
規模の抽出機,例えば各種パーコレーターによって有利
に実施できる。このようにして得られた抽出物は,常法
に従い,これを濃縮し,濾過などで固液分離する。 (2)分離工程 抽出工程により得られた抽出物は,そのまま分離工程に
付すこともできるが,通常分離工程の有機溶媒処理によ
る分離効率を高める上で,乾燥するのが好ましい。乾燥
は,通風乾燥,真空乾燥,凍結乾燥,噴霧乾燥等生薬エ
キスを乾燥する上で汎用される乾燥手段のいずれも適用
可能であるが,凍結乾燥が有利である。抽出乾燥物は,
次いで,n−ブタノール/水にて分配を行うことによ
り,n−ブタノール可溶性の低極性物質をn−ブタノー
ル不溶性の高極性物質より分離する。このn−ブタノー
ルを用いた処理によって,本発明の水に不溶なn−ブタ
ノール可溶部は,n−ブタノール層に分離,分配され
る。分配されたブタノール可溶部は,蒸発,乾固などの
常法により水層と分離し,上記と同様に常法により乾燥
する。
【0011】(3)単離工程 乾燥された上記のブタノール可溶部は,次いでクロマト
グラフィー等,低分子化合物を主成分とする生薬抽出物
の精製に汎用される精製手段が適用されることにより,
本発明の新規テトラヒドロキサントン化合物が単離され
る。クロマトグラフィーは通常,ゲル濾過クロマトグラ
フィー,吸着クロマトグラフイー,HPLC,TLCな
どが用いられるが,本発明の化合物の単離手段として
は,ゲル濾過クロマトグラフィーや吸着クロマトグラフ
ィーが有利である。ゲル濾過クロマトグラフィーの充填
剤としてはセファデックス(Sephadex)LH−20(フ
ァルマシアバイオテク社製),トヨパール(Toyopeal)
HW−40(東ソー社製),MCI−GelCHP20
(三菱化成社製),Bio−GelP−20(バイオラ
ッドラボラトリー社製)などが有利に用いられる。吸着
クロマトグラフィーの充填剤としてはワコーゲル(Wako
-gel)C−200(和光純薬工業社製),イアトロビー
ズ(Iatrobeads)(Iatraon Laboratories社製),S
ilica gel60(Mcrck社製)などが有利に用
いられる。溶離液はゲル濾過クロマトグラフィーに対し
ては,メタノール,エタノール,アセトン,アセトニト
リル又はそれらの有機溶媒と水との混合溶媒が,吸着ク
ロマトグラフィーに対しては,クロロホルム,酢酸エチ
ル,メタノール,エタノール又はそれらの混合溶媒が好
適である。上記単離手段の中で特に好適な方法は,まず
セファデックスLH−20を用いたゲル濾過クロマトグ
ラフィーで,30%メタノール水にて溶出を行い,3.
5〜5.0L目の画分(テトラヒドロスウェルチアノリ
ンを最も多く含む画分)を得る。次いでこの画分をシリ
カゲルカラムを用いた吸着クロマトグラフィーに付し,
30%メタノール/クロロホルムで溶出させて,テトラ
ヒドロスウェルチアノリンを単離する。
【0012】
【発明の効果】ウイルス性肝炎,自己免疫性肝炎,エン
ドトキシンによる肝障害においては,病因自体に肝毒性
は無く,むしろ病因によって引き起こされる生体内の免
疫系の過剰な亢進によって自己の肝細胞が破壊されるこ
とが知られている。また,アルコール性肝炎においても
患者の大多数にエンドトキシン血症が認められることか
ら,その障害機序における免疫系の関与が取り沙汰され
ている。本発明のセンブリ由来のブタノール可溶部及び
新規テトラヒドロキサントン化合物は,免疫学的機序を
介した実験的肝障害モデルに有効であったことからアル
コール,ウイルス,エンドトキシンを原因とする免疫性
肝炎に抑制効果を示し,肝障害の予防・治療に有用と考
えられる。本発明のセンブリ由来のブタノール可溶部及
び新規テトラヒドロキサントン化合物の肝障害に対する
予防・治療作用は以下の方法により確認された。〔D−
ガラクトサミン(D-galactosamine:以下D−GalN
と略す)/リポポリサッカライド(Lipopolysaccharid
e:以下LPSと略す)誘発肝障害モデル(J.Wang et
al.,Biochem.Pharm.39,267(1990),A.Wendel
et al.,Biochem.Pharm.35,2115(1986))によ
る評価〕 後記実施例a)で得た,センブリを70%エタノール水
にて抽出した抽出物,及び後記実施例c)にて得たテト
ラヒドロスウェルチアノリンのD−GalN/LPS誘
発肝障害に対する効果を調べた。一晩(PM11:00
〜AM11:00)絶食したddY系雄性マウス(6週
齢)の腹腔内にD−GalN(700mg/kg)/L
PS(10μg/kg)を注射して肝障害を惹起した。
被検薬はD−GalN/LPSを注射する前に2通りの
方法即ち18及び2時間前に計2回皮下投与,又は
1日1回1週間計7回経口投与した。対照群(プラセボ
投与群)には生理食塩水を同様に投与した。また,薬効
比較のために既存の肝臓保護薬であるグリチルリチン投
与群(皮下投与時:100mg/kg,経口投与時:2
00mg/kg)を設けた。D−GalN/LPS注射
の8時間後,肝障害の度合いを判定するため,臨床検査
値として日常的に用いられる血中アラニンアミノトラン
フェラーゼ(Alanine aminotransferase:以下ALT
と略す)値を測定した。本障害モデルにおいて誘発され
る肝障害機構は,免疫担当細胞の活性化,肝組織への浸
潤,ロイコトリエンD4(以下LTD4と略す)や腫瘍壊
死因子(以下TNFと略す)−α等のオータコイド,サ
イトカインの分泌,肝細胞のアポトーシスなど一連の過
程を経由するため,免疫学的肝障害発生のモデルとして
臨床成績との相関性が高いと思われる。
【0013】D−GalNは肝実質細胞内で代謝され,
ウリジン二リン酸(UDP)−ガラクトサミンとなり,
ウリジンリン酸化物(ウリジン一リン酸(UMP),U
DP,ウリジン三リン酸(UTP)の欠乏が起こる。こ
のため,UDP−グルコース,UDP−グルクロン酸含
量が低下し,蛋白質及び脂質代謝の阻害が起きる結果,
細胞壊死に至る。また,RNA合成能が低下するため,
肝細胞での急性期蛋白の合成が阻害され,Endoto
xin(LPS)への感受性が通常時の数千倍までに上
昇する。そのため,一般にマウスはラットと異なりD−
GalN単独投与では肝障害を起こさないが,D−Ga
lNで感作したマウスに微量のEndotoxin(L
PS)を投与することで顕著な肝障害モデルが得られ
る。この過程において,LPSの役割はLTD4を産生
し,虚血・再還流を導き活性酸素の発生を誘導し,間接
的に免疫担当細胞の一つである肝内マクロファージ(ク
ッパー細胞)を活性化する。又は,LPSはマクロファ
ージに貪食されることで直接活性化を促す。こうしてL
PSによって直接・間接的に活性化されたマクロファー
ジは細胞障害作用を有するTNF−αを分泌し,肝細胞
を破壊する。以上が現在考えられているD−GalN/
LPSによる肝障害の作用機構である(広岡慎吾ら,医
薬品研究13,1046(1982),Sommer B.G.et al.,
Tiegs G.et al.,Biochem.Pharm.38,627(198
9),Wendel A.,Methods Enzymol.186,675-680
(1990),Keppler D.et al.,Eur.J.Biochem.1
0,219(1969))。
【0014】結果は後記表1に示す通りで,後記実施例
b)のセンブリを70%エタノールで抽出後n−ブタノ
ールで分画した,n−ブタノール可溶部は200mg/
kgの投与量で,血中ALT上昇をコントロールに対し
73.2%抑制し,有意な肝障害抑制作用を示した。次
に後記実施例c)によるセファデックスLH−20カラ
ム溶出画分,即ち画分1〜画分5の計5つの画分におけ
る肝障害抑制作用を検討した。その結果は表2に示す通
りで画分4及び画分5は100mg/kgの投与量で,
血中ALT上昇をコントロールに対しそれぞれ47.7
及び75.4%抑制し,有意な肝障害抑制作用が観測さ
れた。次に,後記実施例c)にて画分5から単離したテ
トラヒドロスウェルチアノリンの肝障害抑制作用を調べ
た。その結果は表3に示す通りで,テトラヒドロスウェ
ルチアノリンは25及び50mg/kgの投与量で,血
中ALT上昇をコントロールに対しそれぞれ68.5及
び84.7%抑制し,用量依存的かつ有意な肝障害抑制
作用を示した。また,経口投与によるテトラヒドロスウ
ェルチアノリンの肝障害抑制作用を調べたところ,20
及び200mg/kgの用量でやはり用量依存的かつ有
意な肝障害抑制作用が観測された(表4)。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
【表4】 本発明のセンブリ由来のブタノール可溶部又は新規テト
ラヒドロキサントン化合物に許容される担体又は賦形剤
と共存させることができ,経口又は非経口のいずれでも
投与可能であるが,通常胃腸管からの吸収に好適な形態
で投与することが望ましい。例えば,経口投与用組成物
は,固体でも液体でもよく,粉末,シロップ,カプセ
ル,粒剤,乳剤,懸濁剤,ドロップ等でもよい。この種
の組成物のための担体又は賦形剤は周知である。錠剤用
賦形剤の例は,ラクトース,ポテト及び可溶性澱粉,ス
テアリン酸マグネシウム等で,注射用担体の例は,滅菌
水,生理的食塩水,アーモンド油等で,これらをアンプ
ルに入れても,又は使用前に活性物質に加えてもよい。
所望により,組成物は更に結合剤,安定剤,乳化剤,懸
濁剤,分散剤,潤滑剤,防腐剤,増量剤等の常用の材料
を含んでもよい。非経口投与の形態としては,注射剤,
坐剤等が適用可能であり,注射剤の場合には無菌の水性
又は非水性の溶液剤,懸濁剤,乳濁剤を包含する。水性
の溶液剤,懸濁剤としては,例えば注射剤用蒸留水及び
生理食塩水が含まれる。非水溶性の溶液剤,懸濁剤とし
ては,例えばプロピレングリコール,ポリエチレングリ
コール,オリーブ油のような植物油,エタノールのよう
なアルコール類,ポリソルベート80等がある。このよ
うな組成物は,さらに防腐剤,湿潤剤,乳化剤,分散
剤,安定化剤(例えば,ラクトース),溶解補助剤(例
えば,グルタミン酸,アスパラギン酸)のような補助剤
を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保管フィル
ターを通す濾過,殺菌剤の配合又は照射によって無菌化
される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し,使用
前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用するこ
ともできる。
【0019】また,本発明のセンブリ由来のブタノール
可溶部又は新規テトラヒドロキサントン化合物は食品
類,即ち食品,嗜好品,食品添加物(香味料,着色料,
保存料など)あるいは健康食品,機能性食品等の分野に
も用いることができる。本発明に係わる肝障害の予防又
は治療用組成物の1日投与量は,主成分である新規テト
ラヒドロキサントン化合物の量に換算して,経口投与の
場合10〜10,000mg/成人であることが望まし
い。なお,本発明の医薬組成物又は肝障害の予防・治療
用組成物を実際の治療に用いる際には,その有効量を,
治療を必要とする脊椎動物に対して上記投与方法のいず
れかを適用して投与を行う。この場合の,「脊椎動物」
とは,特に制限されず,ヒト及びその他の霊長類,哺乳
類(イヌ,ネコ,牛,豚,馬等),魚類,鳥類等を包含
するが,中でもヒト及びその他の霊長類や哺乳類が好ま
しく,更にヒトが好ましい。
【0020】
【実施例】以下に実施例を掲記し,本発明のセンブリ由
来のブタノール可溶部及び新規テトラヒドロキサントン
化合物の製造例を詳細に説明する。 a)センブリ全草の乾燥粉末5kgに70%エタノール
水を加えて加熱還流抽出器により3時間熱時抽出した。
次いで混合物を濾過し,得られた水溶性濾液を凍結乾燥
して70%エタノール水抽出物1,330gを得た。 b)前記実施例a)で得た70%エタノール水抽出物
1,300gを水5Lに懸濁後,分液ロートに入れ,酢
酸エチル6Lを加え振盪後静置し,上層を分取後蒸発乾
固を行い,これを4回繰り返して酢酸エチル可溶部45
5.5gを得た。次に残った下層(水層)にn−ブタノ
ール6Lを加え,同様の操作を4回行った後,n−ブタ
ノール可溶部438.7gを得た。残った下層の溶媒を
蒸発後,凍結乾燥して水可溶部495gを得た。 c)実施例b)で得たn−ブタノール可溶部150gを
40%メタノール水(400ml)に溶解する。4,0
00rpmで10分間遠心分離を行い不溶物を除去後,
セファデックスLH−20カラムクロマトグラフィー
(7.4×55cm)に付した。30%メタノール水で
溶出を行い溶出液を順次2.0L,0.5L,0.5
L,0.5L,2.0Lずつ分取後,溶媒を蒸留し,画
分1(2.5g),画分2(15g),画分3(16.
5g),画分4(17.9g),画分5(5.5g)を
得た。画分5(5.5g)については更に,シリカゲル
カラムクロマトグラフィー(4.0×30cm)に付
し,15%メタノール/クロロフォルムで溶出を行い溶
出液を順次1.0L,0.4L,0.4Lずつ分取後,
2番目の溶出画分の溶媒を蒸留することより単一化合物
の(950mg)の乾燥品を得た。本化合物の化学構造
は,1H−及び13C−NMRスペクトルや1H−1Hco
sy,1H−13Ccosy,1H−13Clong ran
ge cosyなどの2次元NMRスペクトルデータを
始め,各種スペクトルデータによって1,5−ジヒドロ
キシ−3−メトキシ−8−β−D−グルコピラノシル−
5,6,7,8−テトラヒドロキサントン(テトラヒド
ロスウェルチアノリン(tetrahydroswertianolin)と命
名)と判明した。
【0021】以下に,上記実施例c)により得られたテ
トラヒドロスウェルチアノリンの理化学的特性を記載す
る。 (1)分子式 C202411(高分解能マススペクトルにて確認) (2)分子量 440(ポジティブイオンFAB−MS:m/z441
[M+H]+) (3)融点 145℃ (4)紫外吸収スペクトル 後記図1の通り(メタノール中で測定) (5)赤外吸収スペクトル 後記図2の通り(KBr法) (6)NMRスペクトル 後記図3(1H−NMR)及び図4(13C−NMR)の
通り(メタノール−d4中で測定) (7)Massスペクトル 後記図5の通り (8)溶剤に対する溶解性 メタノール,エタノール,アセトン,アセトニトリルに
よく溶解する。水,クロロホルム,エーテルに難溶 (9)呈色反応 第二塩化鉄に陽性 (10)比旋光度 [α]D=+8.0°(c=0.2:メタノール)
【0022】
【図面の簡単な説明】
【図1】テトラヒドロスウェルチアノリンの紫外線吸収
スペクトルデータを示すグラフである。
【図2】テトラヒドロスウェルチアノリンの赤外線吸収
スペクトルデータを示すグラフである。
【図3】テトラヒドロスウェルチアノリンのNMRスペ
クトルデータ(1H−NMR)を示すグラフである。
【図4】テトラヒドロスウェルチアノリンのNMRスペ
クトルデータ(13C−NMR)を示すグラフである。
【図5】テトラヒドロスウェルチアノリンのMassス
ペクトルデータを示すグラフである。
【図6】センブリからブタノール可溶部及びテトラヒド
ロスウェルチアノリンを抽出,分離,単離する過程を示
す図である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下式で示される化合物又はその塩。 【化1】
  2. 【請求項2】 センブリより抽出し,分離して得られう
    る,肝障害抑制作用を有するブタノール可溶部。
  3. 【請求項3】 下記(a)及び(b)の工程により得ら
    れうることを特徴とし,請求項2記載のブタノール可溶
    部。 (a)センブリの全草乾燥粉末よりエタノール又はエタ
    ノール/水系溶媒にて抽出物を抽出し,(b)次いでn
    −ブタノールで処理することにより,ブタノール可溶部
    を分離する。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の化合物又は請求項2若し
    くは3記載のブタノール可溶部を有効成分として含有す
    る医薬組成物。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の化合物又は請求項2若し
    くは3記載のブタノール可溶部を有効成分として含有す
    る,ヒト又は脊椎動物の肝障害の予防・治療用組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の化合物又は請求項2若し
    くは3記載のブタノール可溶部を有効成分として含有す
    る食品類。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001076580A1 (en) * 2000-04-11 2001-10-18 Takara Bio Inc. Remedies

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