JPH1017482A - 催眠剤組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】副作用のない催眠剤を提供する。 【解決手段】(1)カノコソウ（吉草根）および酸棗仁か
らなる群から選ばれる少なくとも１種と(2)ジフェンヒ
ドラミンまたはその塩を有効成分とする催眠剤組成物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、催眠剤組成物に関
する。

【０００２】なお、本明細書において「催眠剤」は、不
眠傾向のある成人の就眠を円滑に行わせる作用を有する
薬剤の意味で用いる。

【０００３】

【従来の技術】催眠剤は、バルビツール酸系、ベンゾジ
アゼピン系、バルビタール酸系等に分類され、いずれも
中枢抑制作用があり、依存性を生ずることがある。従っ
て、不眠症の治療にはより副作用の心配の少ない薬物を
使用するのが好ましい。

【０００４】副作用の少ない催眠薬を得るために、西洋
チャボトケイソウ抽出エキスと抗ヒスタミン剤物質を併
用することが試みられている（特開平４−３６２４３号
公報）。

【０００５】しかしながら、この公報はラットでのヘキ
ソバルビタールとの併用効果を確認したにとどまり、実
際に睡眠障害を有するヒトに使用した場合に、どのよう
な催眠効果が得られるかは明らかにされていない。

【０００６】鎮静作用を有する生薬としてカノコソウが
知られているが、カノコソウ抽出物を不眠の被験者に投
与しても、睡眠開始時間、睡眠から起床までの時間、睡
眠の質の自己評価のいずれの項目についても効果がない
ことが報告されている(H. Schulzら、Pharmacopsychia
t, 27 (1994) 147-151)。

【０００７】また、精神安定、不眠、不安、健忘などに
用いられる漢方薬として酸棗仁が知られているが、その
催眠効果は全く不十分なものであった。

【０００８】一方、塩酸ジフェンヒドラミンなどの抗ヒ
スタミン剤はアナフィラキシーやアレルギーの治療に用
いられるが、眠気の副作用を生じる欠点がある。この副
作用を利用して、塩酸ジフェンヒドラミンは米国で就眠
薬として市販されている。しかしながら、塩酸ジフェン
ヒドラミンは抗ヒスタミン剤であり、眠気が生じるよう
な投与量では、めまい、口渇、悪心、興奮などの副作用
を伴う問題があった。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、副作用がな
く、安全で優れた催眠作用を有する薬剤を提供すること
を目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に
鑑み検討を重ねた結果、本来催眠作用がほとんど或いは
全くないカノコソウないし酸棗仁を塩酸ジフェンヒドラ
ミンに配合すると、めまい等の副作用がない催眠剤組成
物が得られることを見出した。

【００１１】すなわち、本発明は、(1)カノコソウ（吉
草根）および酸棗仁からなる群から選ばれる少なくとも
１種と(2)ジフェンヒドラミンまたはその塩を有効成分
とする催眠剤組成物に関する。

【００１２】

【発明の実施の形態】本発明で使用するジフェンヒドラ
ミンは、遊離の塩基、あるいは塩酸塩、硫酸塩等の無機
酸塩、サリチル酸、タンニン酸、ラウリル硫酸等の酸付
加塩が挙げられるが、特に好ましくは塩酸ジフェンヒド
ラミンが使用される。

【００１３】ジフェンヒドラミンに配合する他の成分と
しては、カノコソウ、酸棗仁が挙げられ、これらは単独
でジフェンヒドラミンに配合してもよく、カノコソウ及
び酸棗仁をジフェンヒドラミンに配合してもよい。カノ
コソウ及び酸棗仁の少なくとも１種に加えて、さらに、
カンゾウ、ブクリョウ、センキュウ及びホップからなる
群から選ばれる少なくとも１種を配合することができ
る。

【００１４】カノコソウは、カノコソウ末のように生薬
成分の乾燥物を粉砕してそのまま用いてもよいが、好ま
しくはカノコソウ抽出物が用いられる。カノコソウ抽出
物は、カノコソウを水、エタノール、メタノールなどの
アルコール、アセトン、ジクロルメタン、クロロホル
ム、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリ
セリンなどの溶媒で抽出して得られる。好ましい抽出溶
媒としてはエタノール、ジクロルメタン、水或いはこれ
らの混合溶媒が挙げられる。カノコソウの産地は、特に
限定されず、日本産のほか、中国産、韓国産、台湾産、
インド産、ヨーロッパ産等の各産地のものが使用でき
る。

【００１５】酸棗仁は、サネブトナツメの種子であり、
jujuboside類などのサポニンを含有する。酸棗仁の産地
は特に限定されないが、主として中国産のものが用いら
れ、ビルマ等の他の産地のものでもよい。酸棗仁は、カ
ノコソウと同じ抽出溶媒で抽出した抽出物を用いてもよ
い。

【００１６】本発明の催眠剤組成物を治療上用いる場合
の投与量は、患者の年齢、性別、治療すべき症状及び投
与方法により左右されるが、ジフェンヒドラミンとして
塩酸ジフェンヒドラミンを用い、カノコソウ及び酸棗仁
として抽出物を用い、催眠剤として投与する場合を例に
取ると、通常成人１日当たりの投与量として： (1) 塩酸ジフェンヒドラミンとカノコソウの組成物の場
合、塩酸ジフェンヒドラミン１０〜１５０ｍｇ程度、カ
ノコソウ１３０〜１６００ｍｇ程度、好ましくは、塩酸
ジフェンヒドラミン２０〜８０ｍｇ程度、カノコソウ２
６０〜１０４０ｍｇ程度、より好ましくは、塩酸ジフェ
ンヒドラミン２０〜５０ｍｇ程度、カノコソウ４０５〜
８１０ｍｇ程度； (2) 塩酸ジフェンヒドラミンと酸棗仁の組成物の場合、
塩酸ジフェンヒドラミン１０〜１５０ｍｇ程度、酸棗仁
は１８０〜２５００ｍｇ程度、好ましくは、塩酸ジフェ
ンヒドラミン２０〜８０ｍｇ程度、酸棗仁は３９０〜１
１７０ｍｇ程度、より好ましくは、塩酸ジフェンヒドラ
ミン２０〜５０ｍｇ程度、酸棗仁は５８５〜９７５ｍｇ
程度である。

【００１７】塩酸ジフェンヒドラミンとカノコソウ及び
酸棗仁の３種を含む組成物の場合、各成分の投与量は上
記の２成分の場合を参考にして適宜決定することができ
る。

【００１８】本発明の催眠剤組成物は、錠剤、散剤、顆
粒剤、細粒剤、カプセル剤、シロップ剤などの経口剤、
貼付剤、軟膏剤等として投与することができ、経口剤が
好ましい。

【００１９】本発明の催眠剤組成物は、上記有効成分の
他に各種の製剤用添加剤を添加することができる。

【００２０】経口剤用の添加剤としては、乳糖、マンニ
ット、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、低置換
ヒドロキシプロピルセルロースなどの賦形剤；デンプ
ン、α−デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、ポリ
ビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロー
ス、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロースな
どの結合剤；デンプン、カルボキシメチルセルロースカ
ルシウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カル
ボキシメチルスターチなどの崩壊剤；ステアリン酸マグ
ネシウム、タルク、無水ケイ酸などの滑沢剤；白糖、タ
ルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、
プルラン、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチル
フタレートなどのコーティング剤、更に各種の光沢化
剤、矯味剤、安定化剤、着色剤等を目的に応じて加えて
もよい。

【００２１】

【発明の効果】本発明によれば、ジフェンヒドラミンに
カノコソウ及び／又は酸棗仁を配合しているため、有効
成分の配合量を副作用の発現しない程度まで減らして
も、催眠作用を有するため、非常に安全で催眠効果の高
い催眠剤が提供できる。

【００２２】

【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例に基づきよ
り詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定され
るものではない。

【００２３】なお、以下において、カノコソウとしてカ
ノコソウ抽出物および酸棗仁として酸棗仁抽出物を用い
た。

【００２４】比較例１ 酸棗仁の服用モニター結果 軽度の不眠傾向にある健常成人８名を対象に、酸棗仁の
錠剤（７８０ｍｇ）を連続１０日間、就寝前約３０分に
服用させ、以下の５つの評価項目についてＳＤ法（５段
階）に従い評価した。

【００２５】結果を以下の表１に示す。

【００２６】

【表１】

【００２７】上記の結果に示すように、酸棗仁処方の服
用による不眠改善傾向は認められなかった。

【００２８】比較例２ カノコソウの服用モニター結果 軽度の不眠傾向にある健常成人８名を対象に、カノコソ
ウの錠剤（５２０ｍｇ）を連続１０日間、就寝前約３０
分に服用させ、以下の５つの評価項目についてＳＤ法
（５段階）に従い評価した。

【００２９】結果を以下の表２に示す。

【００３０】

【表２】

【００３１】上記の結果に示すように、、カノコソウ
（５２０ｍｇ）処方の服用による不眠改善傾向は認めら
れなかった。

【００３２】なお、カノコソウ抽出物を不眠の被験者に
投与しても、睡眠開始時間、睡眠から起床までの時間、
睡眠の質の自己評価のいずれの項目についても効果がな
いことが報告されており(H. Schulzら、Pharmacopsychi
at, 27 (1994) 147-151)、上記表２の結果は、この報告
と一致している。

【００３３】実施例１ 健常成人３名を対象にし、塩酸ジフェンヒドラミン（２
０ｍｇ）及びカノコソウ（５２０ｍｇ）の組成物につい
て１日間服用モニター試験を実施した。なお、服用時間
は就寝前３０分〜１時間とし、服用の際、アルコールや
他の精神神経用薬は併用しなかった。

【００３４】実施例２ 実施例１の組成物の代わりに塩酸ジフェンヒドラミン
（２０ｍｇ）及び酸棗仁（７８０ｍｇ）の組成物を服用
した他は実施例１と同様にして服用モニター試験を実施
した。

【００３５】比較例３ 実施例１の組成物の代わりに塩酸ジフェンヒドラミン
（２０ｍｇ）のみを服用した他は実施例１と同様にして
服用モニター試験を実施した。

【００３６】なお、実施例１〜２、比較例３において、
塩酸ジフェンヒドラミン及び酸棗仁は錠剤として投与
し、カノコソウはニオイがあるため糖衣錠とした。

【００３７】評価結果 実施例１〜２及び比較例３の結果を、以下に示す。

【００３８】 （１）寝付き：いつもに比べて よかった ややよかった 変わらなかった やや悪かった 悪かった 比較例３ ３名 実施例１ １名 ２名実施例２ ２名 １名 （２）眠りの深さ：いつもに比べて よかった ややよかった 変わらなかった やや悪かった 悪かった 比較例３ ３名 実施例１ ２名 １名実施例２ ２名 １名 （３）睡眠中の目覚め： 比較例３：いつもと変わらなかった ３名 実施例１：睡眠途中で目覚めなかった ３名 実施例２：睡眠途中で目覚めなかった ３名 （４）目覚めの状態：いつもに比べて よかった ややよかった 変わらなかった やや悪かった 悪かった 比較例３ ３名 実施例１ ３名実施例２ ３名 （５）副作用 実施例１〜２、比較例３のいずれの場合にも、塩酸ジフ
ェンヒドラミン服用による一般的な副作用（動悸、めま
い、発疹、倦怠感、頭痛、悪心、嘔吐、下痢、口渇、翌
日（日中）の眠気／倦怠感）はいずれもなかった。

【００３９】また、実施例１及び２については、カノコ
ソウ及び酸棗仁に基づく副作用（生理機能低下、下痢、
頭痛、めまい感、耳鳴りなど）も観察されなかった。

【００４０】上記の結果は、塩酸ジフェンヒドラミン・
カノコソウ・酸棗仁の各々の単独投与では催眠剤として
無効であるにもかかわらず、塩酸ジフェンヒドラミンと
カノコソウ、酸棗仁を併用することにより、優れた催眠
剤が得られるという本発明の優れた効果を示している。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】(1)カノコソウ（吉草根）及び酸棗仁から
   なる群から選ばれる少なくとも１種と(2)ジフェンヒド
   ラミンまたはその塩を有効成分とする催眠剤組成物。