JPH101742A - 溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶接構造用鋼板及びその製造方法 - Google Patents

溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶接構造用鋼板及びその製造方法

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JPH101742A
JPH101742A JP23938396A JP23938396A JPH101742A JP H101742 A JPH101742 A JP H101742A JP 23938396 A JP23938396 A JP 23938396A JP 23938396 A JP23938396 A JP 23938396A JP H101742 A JPH101742 A JP H101742A
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welded
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haz
fatigue strength
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JP23938396A
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Tadashi Koseki
正 小関
Riyuuji Uemori
龍治 植森
Hidesato Mabuchi
秀里 間渕
Shuji Aihara
周二 粟飯原
Naoki Saito
直樹 斉藤
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶接ままでHAZのミクロ組織がマルテンサ
イトとなる組成を持つ突き合わせ溶接継手または隅肉溶
接継手の疲労強度の向上を目的とする。 【解決手段】 重量比にて、C:0.02〜0.20
%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.050%以下、
S:0.050%以下、Nb:0.005〜0.30
%、V:0.005〜0.30%、B:0.0003〜
0.0020%、0.40≦Ceq(%)≦0.80
で、残部Fe及び不可避成分からなり、さらに、必要に
応じCu:0.1〜2.5%、Ni:0.1〜10.0
%、Cr:0.1〜3.0%、Mo:0.1〜1.5%
を一種あるいは二種以上含有し、HAZの組織がマルテ
ンサイト60%以上となる組成を有した溶接継手の疲労
強度に優れた高張力溶接構造用鋼板及びその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は造船、建設構造物、
海洋構造物、橋梁、などの分野に用いられる溶接継手の
HAZ組織がマルテンサイト60%以上となる組成を有
した、溶接部の疲労強度に優れた引張強さ60〜100
kgf/mm2 級の高張力溶接構造用鋼板及びその製造方法の
開発に関するものである。
【0002】
【従来の技術】溶接構造物の大型化と環境保全に対する
要求の高まりに伴い、構造物部材は従来にも増した信頼
性が要求されるようになってきている。溶接構造物で想
定される破壊形態としては疲労破壊、脆性破壊、延性破
壊などがあるが、これ等のうち、疲労破壊は実使用環境
下において最も頻繁に発生しやすい破壊形態であり、溶
接構造物の信頼性向上のために最も留意すべき問題であ
る。最近の大型タンカーにおける疲労き裂発生、海洋構
造物における疲労き裂を発端とした倒壊など、疲労破壊
が問題となった事例は少なくない。
【0003】これまで、疲労破壊強度向上に関する技術
が多数公開されているが、そのほとんどは薄鋼板の母
材、あるいは、スポット溶接部の疲労強度向上に関する
ものである。例えば、特開昭61−96057号公報に
おいて、ベイナイトの面積率を5〜60%とすることで
疲労強度向上が図れることが記載されている。
【0004】溶接熱影響部(HAZ)の微視組織と疲労
強度の関係はこれまでほとんど明らかにされていない
が、特開平5−34592号公報では、HAZ組織の疲
労強度は島状マルテンサイトの生成により向上すること
が明らかにされている。すなわち、硬質の島状マルテン
サイトがHAZ組織中に存在すると、一旦発生した微視
疲労き裂は伝播を阻止し遅延され、実質的に疲労強度が
向上することが記載されている。
【0005】また本発明者等は溶接部の疲労き裂発生・
伝播と、そのミクロ組織依存性に関する系統的な実験を
実施した結果、疲労き裂の発生と伝播を最も効果的に抑
制するHAZミクロ組織はフェライトであることを明ら
かにし、Ceq値を限定することによりHAZフェライ
ト組織分率を増加させれば、溶接継手部の疲労強度は向
上することを先に提案した(特開平8−73983号公
報)。
【0006】さらに本発明者らは、80kgf/mm2 高張力
鋼のようにHAZ組織がマルテンサイトとなる場合、疲
労き裂発生・伝播の抑制は、高BとTi添加、Ceqと
N量の制限が有効であることを明らかにし、すなわちB
添加はオーステナイト粒界を強化し、Ceqの限定はマ
ルテンサイトのラス境界を強化すれば、HAZ組織がマ
ルテンサイトからなる溶接部の疲労強度を向上できるこ
とも提案した(特願平7−015451号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】特開昭61−9605
7号公報は、ベイナイト面積率を特定範囲に限定するこ
とにより疲労強度を向上させるものであるが、これは薄
鋼板母材の疲労強度向上に関するものであり、本願が対
象とする厚鋼板の突き合わせ溶接、または隅肉溶接の疲
労強度向上には効果がない。
【0008】特開平5−34592号公報の発明では、
島状マルテンサイトを生成させるために、溶接後に溶接
部をAc1 〜Ac3 の中間温度域に加熱後冷却する特殊
な溶接後熱処理を施すものであり、溶接ままで疲労強度
を向上させることはできない。
【0009】特開平8−73983号公報は、Ceq値
を限定しHAZフェライト組織分率を増加させることに
より溶接継手部の疲労強度を向上させるものである。図
2は各種鋼材における再現HAZ材の引張強度と疲労限
度比の関係を示したもので、HAZ組織をフェライトと
することによりHAZ疲労強度を向上でき、すなわち溶
接継手部とした場合も疲労強度が向上できることを示し
ている。
【0010】しかしこの方法は、溶接構造用軟鋼鋼板と
引張強さが50kgf/mm2 高張力鋼板でHAZ組織がフェ
ライトの場合であり、溶接入熱が小さく冷却速度が速い
場合や、60〜100kgf/mm2 高張力鋼でHAZのミク
ロ組織がマルテンサイトとなる場合に対して特に改善を
目指したものではない。
【0011】特願平7−015451号は、B添加によ
るBのオーステナイト粒界偏析で粒界を強化し疲労き裂
発生・伝播を抑制するものであるが、十分な効果を得る
には0.0020%以上の高B添加とTi添加及びN量
の制限が必要となっており、Ti添加とN量の制限は製
鋼処理のコスト増加や処理の煩雑化は特に考慮していな
い。
【0012】本発明は、応力集中度の低減や溶接残留応
力の低減を実現するための付加的な溶接施工法による疲
労強度向上ではなく、鋼材成分を制御することにより、
特にどうしても溶接ままではマルテンサイト60%以上
になってしまう場合に対して、溶接ままで突き合わせ溶
接継手または隅肉溶接継手の疲労強度を向上した、製造
コストの安い、特に引張強さ60〜100kgf/mm2 高張
力鋼板およそれらの製造方法を提供することを目的とし
ている。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、HAZの
組織がマルテンサイトとなる高張力鋼板で、溶接部の疲
労き裂発生・伝播と成分との関係を系統的に調査した結
果、HAZの組織がマルテンサイト60%以上になると
疲労強度は極端に低くなり、そのHAZ組織に対する疲
労き裂発生・伝播の抑制は、高Nb添加とB添加、又は
高V添加とB添加、さらにCeqの限定が有効である知
見を得た。
【0014】すなわち高V添加又は高Nb添加は、高B
添加とTi添加及びN量の制限を必要とすることなくオ
ーステナイト粒界を強化し、さらにCeqの限定はマル
テンサイトのラス境界を強化してHAZの組織がマルテ
ンサイト60%以上となる組成を有した溶接継手部の疲
労強度が向上できることを明らかにした。
【0015】すなわち、本発明の要旨とするところは次
の通りである。 (1)重量比にて、 C :0.02〜0.20%、 Mn:0.5〜2.0%、 P :0.050%以下、 S :0.050%以下、 V :0.005〜0.30%、 Nb:0.005〜0.30%、 B :0.0003〜0.0020% を含有し、かつ0.40≦Ceq(%)≦0.80を満
足し、残部Fe及び不可避成分からなることを特徴とす
る溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶接構造用鋼板。
ただし Ceq(%) = C+ Mn/6 + (Cu+Ni)/15+ (Cr+Mo+V)/5
+ Nb/3
【0016】(2)前記(1) 記載の成分に加えてさら
に、重量比で、 Cu:0.1〜2.5%、 Ni:0.1〜10.0%、 Cr:0.1〜3.0%、 Mo:0.1〜1.5%、 の一種あるいは二種以上含有することを特徴とする前記
(1) 記載の、溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶接構
造用鋼板。 (3)前記各項記載の成分に加えてさらに、重量比で、 Si:0.1〜2.0%、 Al:0.01〜0.08%、 Ti:0.005〜0.030%の一種あるいは二種以上 を含有することを特徴とする前記(1) または (2)記載
の、溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶接構造用鋼
板。
【0017】(4)前記(1) 乃至 (3)のいずれかの項に
記載の鋼と同一成分を含有する鋼塊を、熱間圧延・冷却
後にAc3 以上1000℃以下に再加熱した後、水冷も
しくは空冷し、引き続き400℃〜Ac1 の温度範囲で
焼戻し処理することを特徴とする溶接継手の疲労強度に
優れた高張力溶接構造用鋼板の製造方法。 (5)前記(1) 乃至 (3)のいずれかの項に記載の成分を
含有する鋼塊を、Ac3以上1200℃以下の温度で熱
間圧延を終了した後、水冷もしくは空冷し、引き続き4
00℃〜Ac1 の温度範囲で焼戻し処理することを特徴
とする溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶接構造用鋼
板の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明者らは、まず、溶接継手の
疲労試験片のき裂発生・伝播の状況をミクロ的に詳細に
観察を行った。その結果、ほとんどの疲労き裂は溶接金
属とHAZの境界部、すなわち溶接融合線( fusion li
ne;溶接金属とHAZ境界)付近から発生し、HAZ内
を伝播し、さらに、母材部に突入して試験片の全体破壊
に至ることを知見した。溶接融合線付近は溶接止端部に
一致し、この部分で最も応力集中が高くなるためであ
る。このように、疲労き裂は溶接融合線付近から発生
し、HAZ内を伝播するために、疲労強度はHAZのミ
クロ組織に大きく影響を受けることが明らかとなった。
【0019】上記のように、疲労き裂の発生部は溶接融
合線近傍であり、さらに、き裂伝播の初期段階ではHA
Z内である。これらの領域は応力集中部に一致してい
る。従って、HAZミクロ組織と応力集中の両因子を再
現することにより、HAZミクロ組織が疲労強度に及ぼ
す影響を調査することができる。そこで、溶接再現熱サ
イクルを与えた鋼材から応力集中を設けた試験片を加工
し、疲労試験に供試し、HAZミクロ組織と疲労強度の
関係を求めた。試験片の外形寸法は10×10×55m
m、切欠深さは2mm、先端半径は0.75mmで、支点間
距離を40mmとして3点曲げ繰り返し荷重を与え、疲労
破壊させた。応力集中係数は2.6である。
【0020】図1及び図2は、次の4種についての疲労
試験を実施した結果で、疲労限度比(疲労限/再現HA
Z材の引張強さ)を各種鋼材のCeqに対してプロット
したものである。 軟鋼及び引張強さが50kgf/mm2 を有する実験室溶
解鋼を素材として、最高加熱温度1400℃、800〜
500℃の冷却時間を1〜3秒とした溶接再現熱サイク
ルを与えてHAZの組織をマルテンサイト60%以上と
したもの。 V及びB(図2ではNb及びB)を含まない引張強
さが60〜80kgf/mm2 を有する実験室溶解鋼を素材と
して、最高加熱温度1400℃、800〜500℃の冷
却時間を7秒とした溶接再現熱サイクルを与えて、HA
Zの組織をマルテンサイト60%以上としたもの。 V(図2ではNb)を0.1%含んだ引張強さが6
0〜80kgf/mm2 を有する実験室溶解鋼を素材として、
最高加熱温度1400℃、800〜500℃の冷却時間
を7秒とした溶接再現熱サイクルを与えて、HAZの組
織をマルテンサイト60%以上としたもの。 V(図2ではNb)を0.1%、Bを0.0005
%程度含んだ引張強さが60〜80kgf/mm2 を有する実
験室溶解鋼を素材として、最高加熱温度1400℃、8
00〜500℃の冷却時間を7秒とした溶接再現熱サイ
クルを与えて、HAZの組織をマルテンサイト60%以
上としたもの。
【0021】ここで示したCeqは、一般に使用されて
いるIIWの炭素当量式にNbの焼入性上昇効果を考慮
した次式によるものである。 Ceq(%) = C+ Mn/6 + (Cu+Ni)/15+ (Cr+Mo+V)/5
+ Nb/3
【0022】同図から明らかなように、(1) 疲労限度比
は、HAZの組織をマルテンサイト60%以上の条件の
もとでは素材成分に依存し、0.1%V又は0.1%N
b、0.0005%Bを含んだ60〜80kgf/mm2
鋼、0.1%V又は0.1%Nbを含んだ60〜80kg
f/mm2 級鋼、V及びB又はNb及びBを含まない60〜
80kgf/mm2 級鋼、50kgf/mm2 級鋼の順に高いこと、
(2) 疲労限度比はB添加の有無にかかわらず、Ceqが
0.40%以下になると低いこと、などがわかった。
【0023】疲労強度が同じマルテンサイト60%以上
の組織の場合に、V,Nb,B,Ceqなどの素材成分
に依存する原因は以下の点に起因すると考えられる。 (1) Ceqが小さい域ではマルテンサイトのラスとラス
界面の強度差は大きく、また粒内と粒界の強度差も大き
いことから、マルテンサイトのラス界面とオーステナイ
ト粒界で疲労き裂が容易に発生する。すなわち、Ceq
が高いところではラスとラス界面の強度差が小さくな
り、ラス界面での疲労き裂の発生を遅らせること。
【0024】(2) V又はNbの添加は、V及び微細なV
(CN)あるいはV4 (CN)、Nb及び微細なNb
(CN)がオーステナイト粒界及びマルテンサイトのラ
ス界面に偏析及び析出して強化し、粒界及びラス界面か
らの疲労き裂の発生を遅らせること。 (3) Bの添加は、Bがオーステナイト粒界に偏析するこ
とで粒界を強化して、オーステナイト粒界での疲労き裂
の発生を遅らせること。
【0025】上記の検討結果から明らかなように、本発
明の骨子はHAZの組織がマルテンサイト60%以上か
らなる溶接部の疲労強度向上に対してオーステナイト粒
界強化を狙った高V添加とB添加、マルテンサイトのラ
ス界面強化を狙った高V添加又は高Nb添加とCeqを
限定することが重要である。
【0026】ここで、オーステナイト粒界強化を狙った
高V又はNb添加とB添加、マルテンサイトのラス界面
強化を狙った高V又はNb添加などの効果は、HAZの
組織がマルテンサイト60%以上となる高張力溶接構造
用鋼板で特に有力である。
【0027】以上の基本思想を基に、最初に基本成分を
限定した理由を以下に述べる。Cは強度を高めるために
必須の元素であり、0.02%未満ではHAZの組織が
マルテンサイト60%以上の組織とならず本発明の対象
からはずれる。一方、0.20%を超えるとHAZ靭性
が極端に劣化し、さらにマルテンサイトラス界面よりき
裂が容易に発生するため、上限を0.20%とし、そこ
でその量を0.02〜0.20%とした。
【0028】Mnは強度を高めるために必須の元素であ
るが、0.5%未満ではHAZ組織はマルテンサイト主
体組織とならず本発明の対象からはずれる。一方、2.
0%を超えるとHAZ靭性が極端に劣化し、さらにマル
テンサイトラス界面よりき裂が容易に発生するため、上
限を2.0%とし、そこでその量を0.5〜2.0%と
した。
【0029】Pは偏析率が高く、且つ低融点物質を形成
して凝固割れの原因となるため、極力少ない方がよく、
その量を0.050%以下とした。SもPと同じ理由で
その量を0.050%以下とする。
【0030】V及びNbは本発明の成分として最も重要
な元素である。すなわちマルテンサイト組織を示すオー
ステナイト粒界に偏析及び析出してオーステナイト粒界
を強化すると共に、マルテンサイトのラス界面に偏析及
び析出してラス界面を強化し、溶接継手部の疲労強度を
向上できる。このような効果を得るためには0.05%
を超えて添加する必要がある。また両元素は焼戻し時に
炭・窒化物を生成して析出硬化により強度を上昇させ
る。そのためには夫々0.005%以上の添加が必要で
ある。しかし、両元素を0.05%を超えて多量に添加
するとHAZ靭性が低下するので、いずれか一方の元素
は0.05%以下に制約することが好ましい。一方、夫
々の元素を0.30%を超えて添加すると、粗大なV
(CN)あるいはV4 (CN)又はNb(CN)が析出
し、それが起点となってき裂が発生しやすくなり、疲労
強度が低下する。以上のことから、V及びNbは強度確
保の点から0.005〜0.30%添加するのがよく、
また、オーステナイト粒界を強化するためにはV或いは
Nbのいずれか一方を0.05超〜0.3%の範囲とし
て添加するのが好ましい。従って、V:0.05%超〜
0.3%、かつNb:0.005〜0.05%にする
か、若しくはV:0.005%〜0.05%、かつN
b:0.05超〜0.3%にすることが最も好ましい。
【0031】また、Nb及びVは、焼戻し時に炭・窒化
物を生成して析出硬化により強度を上昇させる。そのた
め0.005%以上の添加が必要であるが、Nb含有量
が0.050%を超えた場合で、V含有量が0.05%
超になる本発明鋼ではHAZ靭性が低下する。従って、
Nbの添加量はVが0.05超〜0.30%のとき0.
005〜0.050%とし、反対にNbが0.05超〜
0.30%のときはVの量を0.005〜0.05%に
するのが良い。
【0032】Bはマルテンサイト組織を示すオーステナ
イト粒界に偏析して、オーステナイト粒界を強化して溶
接継手部の疲労強度を向上できる。その効果を得るには
0.0003%以上必要であり、安定してその効果を得
るには0.0020%以上が必要であるが、0.002
0%を超えるとBNが析出し、それが疲労き裂の起点と
なって疲労強度を低下させるため、その量を0.000
3〜0.0020%とする。
【0033】以上が本発明における基本成分系である
が、さらに本発明においては上記成分の添加量と溶接熱
影響部の焼入性となる硬化性Ceqとの間に、0.40
≦Ceq(%)≦0.80を満足せしめることを重要な
骨子としており、これによってHAZの組織がマルテン
サイトを示すラス境界を強化して溶接部の疲労強度を向
上させるものである。すなわち、0.40%未満ではマ
ルテンサイトのラスとラス界面の強度差が大きく、ラス
界面で疲労き裂が容易に発生する。従ってCeqは高い
ほどよいことになるが、0.80%を超えるとHAZ靭
性が極端に劣化する。従って、その範囲を0.40〜
0.80%、HAZ靭性も考慮するならば、好ましくは
0.40〜0.70%とした。
【0034】次に、選択的に添加するCu,Ni,C
r,Moは、全て焼入性を高めてCeqを高める元素で
あり、基本成分に一種あるいは二種以上含有することが
効果的である。以下に、各元素の強度及びその他の効果
に対する成分限定理由を述べる。
【0035】Cuは強度を向上させる元素として有効で
あるが、0.1%未満では強度向上の効果は見られず、
一方、2.5%超では溶接時に熱間割れを生じやすくす
るため、その添加量を0.1〜2.5%以下とする。
【0036】Niは焼入性を高めて強度を上昇させる。
この効果を得るにはその添加量は0.1%以上必要であ
るが、10%を超えると溶接硬化性が増し溶接性の低下
を招くことと、経済性を損なう。そこでその添加量を
0.1〜10%とする。
【0037】Crは焼入性を上げ強度を確保する上で
0.1%以上必要である。一方、3.0%を超えると炭
化物が異常に増加し靭性を低下させる。従って、その添
加量を0.1〜3.0%とする。
【0038】Moは焼入性の強度を向上させる他、焼戻
し脆性を防止する。また未再結晶温度域を拡大して低温
圧延による細粒化効果を助長する。これ等の効果は0.
1%未満では十分に現れない。また、1.5%を超える
と粗大な炭化物を生成して靭性を低下させる他、HAZ
を著しく硬化させる。従って、その添加量を0.1〜
1.5%とする。
【0039】以上が本発明における構成成分であるが、
さらに本発明においてはSi,Al,Tiを添加すると
効果的である。これらは全て脱酸元素であるため、その
効果を発揮するには一種あるいは二種以上添加すればよ
く、全て添加する必要はない。
【0040】まず、もともとSiは強度確保のほか製鋼
の脱酸元素として必須の元素であり、0.1%未満では
脱酸が不十分となり、介在物が増加し、母材の延性や靭
性を低下させる。従って、最低0.1%は必要である
が、2.0%を超えると鋼材とHAZの靭性が著しく劣
化するため、その量を0.1〜2.0%とした。
【0041】Alは脱酸元素としても必要であり、また
鋼中の不純物として存在するNを固定し、溶接熱影響部
の靭性を向上させる。この効果を得るにはsol.Alとし
て0.01%以上必要であり、またその量が0.08%
を超えると、鋼中にAl2 3 系のクラスターを多く生
じ、溶接時の割れの問題を生じるので、その範囲を0.
01〜0.08%とした。
【0042】Tiは脱酸元素として効果がある他、鋼中
の不純物として存在するNを固定することによって、T
iNを生成してHAZのオーステナイト粒の粗大化を抑
制すると共に、固溶Nを低下させ溶接部の靭性を向上さ
せる。さらにBがBNとして析出するのを抑える効果も
ある。その量は0.005%未満では効果がなく、多い
とTiCを生成して、それが疲労き裂の起点となって疲
労強度を低下させるので、その添加範囲は0.005〜
0.030%とした。
【0043】次に、鋼板の製造条件を限定した理由を述
べる。本発明は、溶接継手のHAZ組織がマルテンサイ
ト60%以上となる組成を有した溶接部の疲労強度に優
れた高張力溶接構造用鋼板、特に引張強さ60〜100
kgf/mm2 高張力溶接構造用鋼板を提供するものである。
【0044】まず、熱間圧延・冷却後における再加熱処
理の温度をAc3 以上1000℃以下に限定した理由
は、母材組成をマルテンサイト及びベイナイトにし、か
つ母材の強度−靭性バランスを得るための温度範囲であ
る。この温度以下では十分な強度が得られず、これ以上
の再加熱温度ではオーステナイト粒が粗大化し靭性が劣
化するためである。また熱間圧延の上限温度を1200
℃の高温域までと拡大した理由は、圧延処理による細粒
化効果が期待でき、再加熱処理に比べて靭性の劣化が抑
制されるためである。
【0045】圧延・冷却に引き続き実施する焼戻し処理
は、回復による母材組織の靭性向上を目的としたもので
あり、加熱温度の上限はAc1 以下とする。また、本発
明ではCu,Mo,Nb,Vの析出元素を含有している
ため、熱処理で微細析出物を生成させることにより母材
強度を向上させることができるので、下限を400℃と
する。なお、析出硬化を最も有効に作用させるための加
熱温度は、析出硬化元素にも依存するが400〜650
℃の範囲が好ましい。
【0046】以上が溶接継手の疲労強度に優れた引張強
さ60〜100kgf/mm2 高張力溶接構造用鋼板及びその
製造方法の限定理由であるが、溶接継手のHAZ組織が
マルテンサイトとした本発明における好ましい溶接条件
範囲としては、実溶接の小入熱から中入熱に相当する1
5〜45KJ、800〜500℃の冷却時間で5〜45
秒である。
【0047】
【実施例】以下に、実施例により本発明の効果を具体的
に示す。表1 (a)及び(b) に示す化学成分の鋼A〜Q及
びA′〜Q′を、50ton 転炉で溶製して得た厚さ20
0mm×幅1500mm×長さ3000mmのスラブを作り、
更に各スラブを、熱間圧延で20mmにした後空冷した
ものを、Ac3 以上1000℃以下に再加熱後水冷もし
くは空冷し、引き続き400℃〜Ac1 の温度範囲で焼
戻し処理したもの(再加熱後・焼戻し処理)、Ac3
以上1200℃以下の温度で熱間圧延して20mmにした
後、水冷もしくは空冷し、引き続き400℃〜Ac1
温度範囲で焼戻し処理したもの(熱間圧延後・焼戻し処
理)、を供試鋼とした。その製造条件と鋼材の引張特性
を表2 (a)及び(b) に示す。これらの供試鋼を用いて表
3に示す溶接条件でT字隅肉溶接継手を作成した。溶接
条件は小入熱とした。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】図4に、T字隅肉溶接継手から作成した3
点曲げ疲労試験片形状を示す。繰り返し最大荷重と最低
荷重の比が0.1の条件で疲労試験を実施した。表4
(a)及び(b) は疲労試験結果で、1〜6及び21〜26
は本発明例で、7〜17及び27〜37は比較例であ
る。溶接継手疲労強度は106 回疲労強度及び疲労限を
指標として比較した。同表にはHAZ組織も併せて示
す。これより、HAZの組織がマルテンサイト60%以
上となる組成を有した引張強さ60〜100kgf/mm2
張力の溶接継手の疲労強度の向上を目的とした本発明例
は、比較例に比べて向上することが確認された。
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明はHAZの
組織がマルテンサイト60%以上となる組成を有した高
張力鋼板、特に引張強さ60〜100kgf/mm2 高張力溶
接構造用鋼板において、疲労き裂発生・伝播の抑制に対
してNb又はV添加及びB添加とCeqを限定すること
により、付加的溶接による応力集中低減などによらずに
溶接継手の疲労強度を向上することが可能であり、本発
明鋼を用いることにより溶接構造物の疲労破壊に対する
信頼性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】新たに行った切欠付き再現HAZ材の疲労試験
における疲労限界比とCeqの関係の調査結果を示す図
表であり、V単独又はV,Bの添加と、V,B無添加の
例を示す。
【図2】新たに行った切欠付き再現HAZ材の疲労試験
における疲労限界比とCeqの関係の調査結果を示す図
表であり、Nb単独又はNb,Bの添加と、Nb,B無
添加の例を示す。
【図3】過去に本発明者らが行った切欠付き再現HAZ
材の疲労試験における疲労限界比の引張強度及びミクロ
組織依存性に関する試験結果を示す図表。
【図4】T字隅肉溶接継手疲労試験片を示す説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 粟飯原 周二 東海市東海町5−3 新日本製鐵株式会社 名古屋製鐵所内 (72)発明者 斉藤 直樹 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比にて、 C :0.02〜0.20%、 Mn:0.5〜2.0%、 P :0.050%以下、 S :0.050%以下、 V :0.005〜0.30%、 Nb:0.005〜0.30%、 B :0.0003〜0.0020%を含有し、かつ
    0.40≦Ceq(%)≦0.80を満足し、残部Fe
    及び不可避成分からなることを特徴とする溶接継手の疲
    労強度に優れた高張力溶接構造用鋼板。ただし Ceq(%) = C+ Mn/6 + (Cu+Ni)/15+ (Cr+Mo+V)/5
    + Nb/3
  2. 【請求項2】 請求項1記載の成分に加えてさらに、重
    量比にて、 Cu:0.1〜2.5%、 Ni:0.1〜10.0%、 Cr:0.1〜3.0%、 Mo:0.1〜1.5%、の一種あるいは二種以上含有
    することを特徴とする請求項1に記載の、溶接継手の疲
    労強度に優れた高張力溶接構造用鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の成分に加えてさ
    らに、重量比にて、 Si:0.1〜2.0%、 Al:0.01〜0.08%、 Ti:0.005〜0.030%の一種あるいは二種以
    上含有することを特徴とする請求項1または2に記載
    の、溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶接構造用鋼
    板。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
    成分を含有する鋼塊を、熱間圧延・冷却後にAc3 以上
    1000℃以下に再加熱した後、水冷もしくは空冷し、
    引き続き400℃〜Ac1 の温度範囲で焼戻し処理する
    ことを特徴とする溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶
    接構造用鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
    成分を含有する鋼塊を、Ac3 以上1200℃以下の温
    度で熱間圧延を終了した後、水冷もしくは空冷し、引き
    続き400℃〜Ac1 の温度範囲で焼戻し処理すること
    を特徴とする溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶接構
    造用鋼板の製造方法。
JP23938396A 1995-09-28 1996-09-10 溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶接構造用鋼板及びその製造方法 Withdrawn JPH101742A (ja)

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JP7-251408 1996-04-11
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005238305A (ja) * 2004-02-27 2005-09-08 Nippon Steel Corp 高疲労強度隅肉溶接継手
WO2018159719A1 (ja) * 2017-02-28 2018-09-07 新日鐵住金株式会社 隅肉溶接継手及びその製造方法

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US11235415B2 (en) 2017-02-28 2022-02-01 Nippon Steel Corporation Fillet welded joint and method of manufacturing thereof

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